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米国の利上げと「金利」水準 - 日興アセットマネジメント
2015年12月18日 米国の利上げと「金利」水準 ~原油安がハイイールド債券市場に与える影響~ 足元で原油価格が軟調に推移する中、ハイイールド債券に投資する欧米のファンドの清算 が相次ぎました。12月16日には米国で利上げが行なわれたこともあり、ハイイールド債券に 対する不透明感が強まっています。以下では、弊社ストラテジストによる、利上げと金利水 準についての、原油価格の動向を踏まえた見解をお伝えします。 16日の米国の利上げ前後に一部の投資家の混乱がみられたのは、「利上げ」と「金利上 昇」という二つの言葉が、あたかも同じ意味で捉えられていたからなのかもしれません。利 上げとは、FRB(米連邦準備制度理事会)による政策金利の引き上げを指し、金利上昇はそれ よりも大きな概念で、債券の利回りが上昇(価格が下落)することです。金利上昇は利上げ と無関係ではありませんが、一般的にクレジット・リスク(信用リスク)の増大が大きな要 因となります。つまり、「金利上昇」とは、リスクの小さい国債などの利回りの上昇(たとえば 期待インフレ率の上昇などと関わります)とクレジット・リスク(金利支払いや償還への懸 念)の上昇を合わせたもの、ということになります。 米国の利上げが社債などのさまざまな金利にどのような影響を与えるのか、という質問は多く 聞かれます。仮に、米国の利上げが米国債券市場の全体的な利回り水準の上昇と期待インフ レ率の上昇を意味しているとすれば、日本の投資家から見た場合、おおむね同程度の米ドル 高・円安となり、利回りの上昇(債券価格の低下)が為替リターンでカバーされやすくなる と考えられます。ただし、完全にカバーできないこともあれば、タイミングがずれる場合も あります。米国の景気回復が続くと、設備投資などへの資金が必要となって金利が上昇する ほか、人びとが預金をするよりも家や自動車を購入することでインフレになりやすくなる、 と考えることもできます。また、雇用が増えて賃金は上昇傾向にあることから、消費はさら に強くなる可能性もあります。 では、クレジット・リスクはどうでしょうか。一般的に景気が良いほど倒産は減少傾向となり、金 利の支払いや償還への懸念が後退すると考えられます。ところが、現時点での懸念は、原油 価格の急落に関係しているとみられます。2014年6月に1バレル100米ドル以上だった原油価格 が、わずか1年半程度で同40米ドル以下まで下落しました。この急激な原油安は、いわゆる シェール革命の影響が要因の一つとみられ、シェール・ガスやオイル産出に際し想定以上の 技術的向上で、瞬く間に安い価格で原油が市場に出回ったことが背景にあるようです。 これは、高い原油価格で売れると予想して設備投資を行なった石油関連業界の返済リスク に影響を与えることになります。2014年頃まで積極的に資金調達して投資を行ない、十分に 収益を上げていた石油関連企業が、返済能力を維持することが困難になれば、クレジット・ リスクが高まり、投資家に損失を与える可能性があります。米国のハイイールド債券の発行 ■当資料は、日興アセットマネジメントが投資環境についてお伝えすることを目的として作成したものであり、特定ファンドの勧誘資料ではあり ません。また、弊社ファンドの運用に何等影響を与えるものではありません。なお、掲載されている見解は当資料作成時点のものであり、将来 の市場環境の変動等を保証するものではありません。■投資信託は、値動きのある資産(外貨建資産は為替変動リスクもあります。)を投資 対象としているため、基準価額は変動します。したがって、元金を割り込むことがあります。投資信託の申込み・保有・換金時には、費用を ご負担いただく場合があります。詳しくは、投資信託説明書(交付目論見書)をご覧ください。 1/2 体には、石油関連企業が多く含まれており、中でも米国のMLP(多くがパイプラインや石油貯 蔵施設の使用料などを収益源として配当を支払っています)は、取引先の使用料の不払いリ スクの影響を受けることになるかもしれません。また、産油国の米ドル建て社債発行企業は、 米ドル高で負債額が増加することにもなります。 クレジット関連指数と原油価格との相関関係が変化する理由は時期によって異なります。 今回については、原油価格が急激に値下がりしたことを受け、突然、原油価格の値動きが市 場の関心事となって投資家心理を悪化させ、米国のMLPやハイイールド債券、新興国ハイイー ルド債券の指数と原油価格との相関関係を急速に強くしたと思います。 主なクレジット関連指数と原油価格との相関関係(12ヵ月) (2014年1月~2015年12月*) 1.0 MLP(左軸) 新興国ハイイールド債券(左軸) 米国ハイイールド債券(左軸) (ご参考)原油先物価格(右軸) (米ドル) 140 0.8 120 0.6 100 0.4 80 0.2 60 負の相関が強い 0.0 40 正の相関が強い -0.2 20 *12月は16日の数値 -0.4 14/1 0 14/4 14/7 14/10 15/1 15/4 15/7 15/10 MLP:S&P MLP Total Return Index 米国ハイイールド:US High Yield Master II Index 新興国ハイイールド:JPモルガンCEMBIディバーシファイド・ノン-インベストメント・グレード 原油先物価格:WTI原油先物価格 (信頼できると判断したデータをもとに日興アセットマネジメントが作成) (年/月) ※上記グラフ・データは過去のものであり、将来の運用成果等を約束するものではありません。 本来、米国をけん引役とした世界景気の回復は、政策金利の上昇やリスクの小さな国債など の利回り上昇(インフレ期待増大)、クレジット・リスクの低下などをもたらし、ガソリン価 格の低下は、先進国の消費を刺激する要因になります。いま、クレジット・リスクに関わる利回り上 昇について注目すべきことは、石油業界や産油国企業が、原油価格下落のデメリットだけを受け て金利支払い遅延などを起こしてしまうのか、それとも消費の回復で需要増がもたらされて価 格下落を供給量の拡大でカバーして収益を得る、すなわち返済能力を維持することができるの か、といった点になると思います。 一般的に、景気回復が明確になれば、石油価格の変動が大きくなったとしても、返済能力を 維持する可能性が高くなると考えられます。現時点のクレジットに対する懸念は、世界の景気回 復に対する信頼感がまだ十分ではないことに起因しています。また、一部ファンドの清算を金 融危機時にみられた出来事と同様に扱う向きもありますが、行き過ぎのようにも思います。な ぜなら、世界経済のファンダメンタルズ(基礎的条件)は、危機当時のように悪化しているの ではなく、危機からの回復トレンドにあると考えているからです。利上げした後の市場の落ち 着きは、これを支援する材料に思えます。 チーフ・ストラテジスト 神山直樹 ■当資料は、日興アセットマネジメントが投資環境についてお伝えすることを目的として作成したものであり、特定ファンドの勧誘資料ではあり ません。また、弊社ファンドの運用に何等影響を与えるものではありません。なお、掲載されている見解は当資料作成時点のものであり、将来 の市場環境の変動等を保証するものではありません。■投資信託は、値動きのある資産(外貨建資産は為替変動リスクもあります。)を投資 対象としているため、基準価額は変動します。したがって、元金を割り込むことがあります。投資信託の申込み・保有・換金時には、費用を ご負担いただく場合があります。詳しくは、投資信託説明書(交付目論見書)をご覧ください。 2/2