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PVJapan 2010 Report

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PVJapan 2010 Report
Vol.26 No.3
July-September 2010
Contents
ii
ii
SEMIの最近の活動から −PVJapanと2つのイベントのご報告
P.1
巻頭言:太陽光発電に対しSEMIの寄与を期待している
P.2
PVJapan2010開催報告 −横浜の地に太陽光発電のすべてが集結−
P.4
PVJapan 併催セミナー、
イベント報告
P.6
PVJapanと同時期開催
「再生可能エネルギー 2010国際会議」
P.7
海外便り:15年目のベトナムで
P.8
SEMI新会員企業のご紹介
P.9
SFJ
(SEMI Forum Japan)2010 開催報告
2010-2011年 SEMI役員紹介
P.11 SEMICON West レポート
P.12 GFPC
(Global FPD Partners Conference)
2010 開催報告
(2)
P.14 太陽光発電分野における新分野のスタンダード委員会発足
P.16 「第17回STS Award」
受賞論文紹介 1
P.18 躍進するLED市場とLEDパッケージ関連技術の進展
P.20 RoHS Recastを巡る最近の動きと対応
P.22 MEMSが変える日本のハイテク産業
P.24 開発秘話:CCDイメージセンサ
P.26 SEMIマーケット・レポート
・半導体メーカーは投資計画をさらに上方修正
・シリコン再生ウェーハ市場は2011年まで緩やかな回復を続ける
iii
コラム:ベルトの話 −アナログとデジタル−
PVJapan 2011
特典付 出展早期申込み受付中!
>>> www.pvjapan.org
表2_26-03 10.7.22 6:14 PM ページ 1
PVJapanと 2 つのイベントのご報告
SEMI ジャパンは、4 月に SFJ( SEMI Forum Japan )、5 月に GFPC( Global FPD Partners
、6月にはPVJapanと、3つのイベントを次々に開催いたしました。
Conference)
6月30日から7月2日までの3日間、JPEA(一般社団法人 太陽光発電協会)殿と共同主催の第
3回目となるPVJapanがパシフィコ横浜で開催されました。今回は、同時開催イベントである
JCRE(再生可能エネルギー協議会)殿主催の「第5回新エネルギー世界展示会」に加え、
「再生
可能エネルギー2010国際会議」が開催され、例年以上に国際色が強まりました。PVJapanでは、
日本の主要太陽電池メーカーが勢揃い、さらにPVターンキー装置の世界の3大メーカーの出
展が加わり、豪華なラインアップとなりました。これはPVJapanならではのものです。出展小間
数は12%増となり、各出展企業殿の展示にはより一層力が入り、会場全体が上質な雰囲気と
なりました。JPEA殿、JCRE殿とのチームワークが今回も成功につながりました。
SEMIジャパン 代表
中川 洋一
今年10回目を迎えたSFJは、グランキューブ大阪にて、半導体技術を機軸に多様なトピックに
ついてのセッションに多くの方々にお集まりいただきました。SFJでは、JASVA、SSIS、応用物理
学会、VANSの各団体殿に協賛・協力をいただき、それぞれのセミナー、シンポジウムも開催されています。
6回目のGFPCでは、3D、有機EL、eブック、クラウド・コンピューティング、中国市場など、世界が注目する話題をそれぞれの権威の
方々にお話いただくとともに、業界トップの方々によるパネルディスカションも有意義でした。今回は、日本から110名、韓国から19
名、ほかに台湾、中国、北米、香港からもご参加をいただき、昨年度から12%増での開催となりました。
SEMIは、マイクロエレクトロニクス産業発展に寄与するため、業界の見識者の皆さまからお力をお借りしながら、展示会、セミナー、
VIP交流会などのイベントを提供させていただいております。これらすべてのイベントにおいて、SEMIの活動は多くの方々のご支援に
支えられていることを、改めて実感いたしました。
2010年−2011年 SEMI役員が、SEMI年次総会で発表されました
会 長 Chairman
Richard Wallace
Chief Executive Officer
KLA-Tencor Corporation
Zhengrong Shi, PhD.
Founder, Chairman /CEO
Suntech Power Holdings Company
Michael Splinter
Chairman, President and CEO
Applied Materials, Inc.
副会長 Vice Chairman
Douglas Neugold
CEO
ATMI, Inc.
日立化成工業(株)
執行役専務 経営戦略本部長
戸川 清
役 員 Board of Directors
André-Jacques Auberton-Hervé
東京エレクトロン(株)
取締役副会長
常石 哲男
President and CEO
Soitec
コバレントマテリアル(株)
取締役会長
香山 晋
Yong Han Lee
Chairman,
Wonik Group(Korea)
日立ハイテクノロジーズ シンガポール会社
代表取締役 取締役社長
中村 修
Stephen G. Newberry
President & CEO
Lam Research Corporation
(株)
アドバンテスト
代表取締役会長
丸山 利雄
Stanley T. Myers
President and CEO
SEMI
Mary G. Puma
Chairman & CEO
Axcelis Technologies, Inc.
Gerhard Rauter
COO
Q-Cells SE
Way Tu
President and CEO
Allegro Intanden.
(株)ニコン
取締役兼専務執行役員
精機カンパニープレジデント
牛田 一雄
Professor Eicke R. Weber
Director
Fraunhofer Institute for Solar Energy Systems
前役員 Ex-officio
Robert P. Akins
Chairman & CEO
Cymer, Inc.
J. C. Kim
Representative Director and Chairman
Edwards Korea Ltd
ウルトラテックジャパン(株)
会長
野宮 紘靖
Franz Richter
President & CEO
Thin Materials AG
名誉役員 Directors Emeritus
Edward H. Braun
CEO & Chairman
Veeco Instruments, Inc.
Joel A. Elftmann
President
Custom Fab Solutions LLC
Kenneth Levy
Chairman Emeritus
KLA-Tencor Corporation
James C. Morgan
Chairman Emeritus
Applied Materials, Inc.
Dan Quernemoen
Chairman Emeritus
Entegris, Inc.
Ed Segal
Director
Simax Global Services
(株)
ディスコ
ディレクター・エメリタス
関家 憲一
伯東(株)
取締役名誉会長
高山 成雄
(株)ニコン
特別顧問
吉田 庄一郎
Arthur W. Zafiropoulo
Chairman and CEO
Ultratech, Inc.
※順不同 2010 年7月14日現在
SEMI News • 2010, No.3
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Contribution Article
太陽光発電に対しSEMIの寄与を期待している
太陽光発電技術研究組合 理事長 桑野 幸徳
半導体の進歩は人類に多くの豊かさをもたらした。特に、ベル
2. 苦難が続いた太陽電池産業
研におけるショックレイらによる1947年から1951年にかけての
しかし、太陽電池の時代はそ
トランジスタの発明は、近代エレクトロニクスに対し大きな進
んなに簡単には来なかった。■
歩をもたらした。あまり知られていないが、現在主流になってい
1973年のオイルショックを契機
トランジスタの開発と密接にかかわっ
るSi系太陽電池の開発は、
に、代替エネルギー源として注
ている。今後も半導体産業と太陽電池産業は、お互い連携し合
目され、国家 プロジェクトで開発が推進されたが、既存の化石
いながら発展していくものと思う。半導体分野における国際工業
燃料による発電コストには、当時太刀打ちできなかった。一方、
(太陽光発電協会)
会であるSEMI、特に、SEMIジャパンとJPEA
Si 半導体デバイスは、MOS 型トランジスタの発明、集積回路
(太陽光発電技術研究組合)
は、この数年ともに
およびPVTEC
、大規模集積回路(LSI)
と進歩して、大きな産業になった。
(IC)
手を携え、技術開発、普及活動を行ってきた。今後も親密な連携
アモルファスSi太陽電池、
アモルファ
アモルファスSiの発明から、
を期待している。
スSi TFTが誕生
1. トランジスタの発明の過程でSi太陽電池が誕生した
1975年に英国のダンディー大学のスピアらが、当時半導体で
半導体産業の人なら常識であるが、1947年に点接触トランジ
盛んになっていた新製法であるプラズマ放電法を用いて、シラ
スタが発明され、4年後の1951年にショックレイらがジャンク
ン中のプラズマ反応で形成したアモルファスSiにおいて、価電子
ション型トランジスタを発明した。この時代には、現在では当た
制御、つまりp-n制御ができることを発見した。それまでアモル
り前となっている、気相から不純物をSi 基板へ拡散する方式は
ファス物質で価電子制御はできないとされていたので、この分
開発されていなかった。1952年、フーラーは、n型Si 基板の表面
野で大きなブレイクスルーをもたらした。そして翌年、RCAの
に液相からLiを拡散してp-n接合を作成することに成功した
カールソンたちは、アモルファスSi太陽電池を開発した。
(その後、気相からの不純物拡散にも成功する)
。この技術はそ
1979年には、ルカンバーらにより、アモルファスSiを用いた
の後のトランジスタの発展に大きく寄与するとともに、太陽電
薄膜トランジスタが開発された。このトランジスタは、アクティ
池の開発に大きな武器になっていく。
ブマトリックス型液晶ディスプレイ
(LCD)のスイッチングトラ
ベル研で太陽電池の研究はSeを中心に当時進められていた
ンジスタとして最適であった。また、製造方法も、当時量産化
1953年にベル研のシャピンは、独立電源の研究としてSe太陽
されていたa-Si太陽電池の技術が利用でき、大量生産が可能と
電池のテストをしていた(SiではなくSeである)。1953年3月、
なった。これを契機に、a-Si TFT LCDは著しい進化を遂げ、現
ピアソンがフーラーの拡散法を用いて、p型Siウェーハの表面に
在の液晶テレビの時代を切り開いた。
薄いLiをドープしたn型Siを形成したSi 整流器を作成した(現
3. 今後も半導体産業と太陽電池産業は手を携えて
在考えるとこれはSi 太陽電池であるが、当時は整流器として考え
地球環境、エネルギー問題が重大になってきた。これまでの多
ていた)
。このp-n接合型整流器にピアソンが光を当てると、強い
くの人の努力や各国の支援制度が実り、太陽光発電が多くの
光起電力効果を見出した。ピアソンは驚いて、Se太陽電池を研究
、大規模な発電
住宅に設置されたり
(日本では前年比約2.5倍)
していたシャピンにこのデバイスを提供した。彼は、このSiデバ
所が建設される時代が到来した。世界の太陽電池産業は、PV
イスが従来のSe太陽電池に比べて5倍の出力があることを確認
NEWSによると、2009年は約10GWで前年比約50%成長した。
した。この発見が、Si 太陽電池の誕生なのである。
産業規模も約2.5兆円位までになった。しかし、まだ太陽光発電
Si太陽電池の最初の記者発表
は発展途上にある。今後も、既存の電力料金と同じ発電価格に
66年前の1954年4月25日のベル研の記者発表に対し、ニュー
ヨークタイムズは、
「新しい時代の始まりがやってきた。やがて人類の最も大切な夢
が実現するであろう。−ほぼ無限の太陽エネルギーを活用して
(つまり太陽電池を活用し)
文明に役立てる時代がやってくる−
(筆
者の意訳)
」
と評した。
このように、新しい不純物拡散法を用いたSiデバイスの誕生が、
現在主流のSi太陽電池の誕生を引き起こしたのである。
No.3, 2010 • SEMI News
するグリットパリティー実現への努力が必要である、また、太陽光
発電の持つ潜在的能力は、世界の砂漠の4%に太陽電池を敷き
つめれば、全人類の全てのエネルギーを賄うだけの能力を持って
いる
(ジェネシス計画)。
真の太陽光発電時代の実現を考えると、さらに多くの人、特に
半導体産業にかかわる皆さん、特に、SEMIの皆さんのご協力の
もと、太陽光発電が人類を救うエネルギー源になる時代を築き
たいと思っている。
1
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PVJapan 2010 Report
PVJapan 2010 開催報告
−パシフィコ横浜に太陽光発電のすべてが集結−
PVJapan 2010は、
SEMIと太陽光発電協会
(JPEA)
との共同主催に
パネル製造など、太陽光発電ビジネス分野からの来場者数
よる太陽光発電に関する総合イベントとして、
去る6月30日
(水)
∼
の伸びは堅調であり、パネルメーカーからの来場者数が3割程
7月2日
(金)
の3日間、
パシフィコ横浜で開催されました。
経済産業
昨年を上回りました。その結果を反映して、出展各社へのヒア
省、
環境省、
東京都、
横浜市、
(独)
新エネルギー・産業技術総合開発
リングを行った結果では、ビジネス面に関しては例年以上の成
機構の後援と25団体の協賛、
「第5回 新エネルギー世界展示会」
果があったというお声を多数いただきました。
との同時開催に加え、
今年は、
4年に一度日本で開催される
「再生
しかし一方で、一般の方の来場者数が減ったことにより、全
可能エネルギー2010国際会議」
が同時期開催
(6月27日
(日)
∼7月
来場者数が残念ながら昨年を越えることができませんでした。
2日
(金)
)
となり、
新エネルギーに関する世界の英知が一堂に結
これは、1年前よりも太陽光発電機器に関する情報を、展示会
集する場として、
認知度が一層高まる盛大なものとなりました。
以外の場、たとえば大型電気量販店などでも入手できるように
なったことや、開催日前後のワールドカップの影響からTV報道
が激減したことが関係しているものと分析しています。
この結果を受け止め、来年はより一層来場者へのピ−アー
ルを行う予定です。
■ パネルメーカー、
装置メーカーが揃い、
盛り上がった展示会場
住宅用設置補助金の継続や従来比倍額での余剰電力買取制
度の後押しがあり、パネル・モジュールメーカーによる自社製品の
紹介には例年以上に熱が入りました。一方、セル・モジュールメ
ーカー以外にも、インストーラー、システムインテグレーター、
製造装置・材料メーカー、部材メーカーなどが、こぞって新製品
■ イベント基本情報
や新サービス、そして最新技術を展示紹介し、会場は熱気に満ち
・PVJapan 2010
ていました。
・出展社・団体数:311
参加国・地域数:11
初出展のUpsolarやサンテックパワーなどの中国勢、そしてQ‐
・展示小間:671(1小間 3mx3m) 来場者数:以下表に含む
CellsやINDOSOLARなどの海外ブランドが、日本ブランドに
・再生可能エネルギー世界フェア
対抗するように品質と性能を強調し、対峙する日本メーカーがそ
・出展社・団体数:約450
れに応戦するかのようなプレゼンテーションを繰り広げるたびに
展示小間:約920小間
・再生可能エネルギー世界フェア 来場者数
人だかりとなり、パネル・モジュールメーカーストリートは、混雑で
身動きができないほどでした。また、パナソニック
(パナソニック
来場者数
( )内は昨年実績
電工と三洋電機との共同展示)
ブースをはじめ、各社の太陽電
―
国際会議 3,580(−)
池パネル展示が壮観で、注目を集めていました。住宅用発電
6月30日(水)
曇り
12,189(13,014)
システムを提案する東芝、屋根向けをアピールするカネカ、変換
7月1日(木)
晴れ時々曇り
13,378(18,527)
効率を謳う三菱電機とシャープなどなど、主要国内メーカーの
7月2日(金)
晴れ
15,143(18,535)
ブースは、どこも軒並み大賑いとなりました。追尾式の巨大な
44,290(50,779※)
パネル駆動部を実機展示するグリーンテックのブースはひとき
日付
天気
6月27日(日)∼7月2日(金)
合 計
※昨年合計数には、6月22・23日開催の太陽光発電研究センター成果報告会参加者を含む
わ目を惹き、また大同特殊鋼ブースに並ぶ集光レンズ付パネル
会場は、太陽光発電の主要関連分野別に以下の6つの展示ゾ
(球状のレンズで光を集める太陽電池)
もTV で報道される
ーンに分かれ、出展社・来場者ともにカテゴリーごとに纏まった情
など注目が集まりました。さらには、京セラをはじめとして、昭和
報発信や交流が行えるようにしました。
シェル石油から名前を改めたソーラーフロンティア、富士電機
・太陽電池/応用製品関連ゾーン
システムズ、プレイソーラー
(中国)
、YOCASOL、ホンダソル
・太陽光発電システム/周辺機器関連ゾーン
テック、フジプレアムなどの大手パネルメーカーのほか、最先端
・部品・材料・施設関連ゾーン ・製造装置関連ゾーン
の研究成果をアピールする産総研のブースも常に満員の人だ
・検査 /測定機器関連ゾーン
かりでした。
2
・各種施工関連ゾーン
SEMI News • 2010, No.3
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PVJapan 2010 Report
ターンキーソリューションを提案する大手製造装置メーカー
太陽電池のそれぞれの製造工程について、わかりやすく図解パネ
としては、アプライドマテリアルズ
や東京エレクトロン/
(AMAT)
ルで解説しました。
Oerlikon Solar(スイス)
、アルバックといった製造装置大手が、
◇ 世界に羽ばたく高校生の手作り太陽電池
最新成果をアピールしました。この3社は、アモルファスSi膜と
微結晶Si膜を重ねたタンデム構造のパネルを採用しています。
協力:山形県立東根工業高校
2008年1月から取り組んでいる、高校生の手作り太陽電池パネ
シリコンを研磨する老舗大手の石井表記が巨大な実機を前面
ルを通した環境教育と国際貢献活動を紹介。ハンダ付け工程の
に配置して注目を集め、日清紡メカトロニクスやメディア研究所
実演も行いました。毎日数回行われた高校生による実演の時間
など多くの検査装置メーカーも実機を展示してその性能を紹介
には、たくさんの見学者が幾重にも取り巻き、今年も大盛況でし
しました。デュポンや大日本印刷などがフィルムの性能で競う中、
た。この高校生の草の根的な取組みは、すでに世界的にも話題
熊本県、岐阜県、宮崎県、神戸市、尼崎市などの地方自治体か
となり、モンゴルやアフリカなどと交流の輪が広がっていること
らの参加や、アメリカ州政府協会
(ASOA)
など多種多様な展示
から、今後ますます大きくなることは間違いがなく、今後、教
が並びました。
育現場での太陽光発電によるエコ活動がどういった展開をす
施工エリアでは、国際航業の宮崎プロジェクトの大きな模型
が目を惹く一方で、パワーコンディショナーでは、明電舎と山洋
がその世界最高レベル変換効率の高さを競っていました。
■ 連日賑わった特別展示エリア
るのかも注目されます。
■ 最新研究成果と今後の研究動向をアカデミックエリアで確認
最先端の研究状況・成果について、太陽電池研究に携わる主要
な大学や研究機関が展示を行い、先端研究情報の発信と交流の
太陽光発電に関する幅広い業界情報を提供し、PVJapanを通
場として、アカデミックエリアは連日盛況で、産学連携の場とし
して業界の認知度を高め、来場者が知りたいと思う情報を提供す
て大いに活躍しました。また、応用物理学会や新エネルギー世
べく、基礎から経済動向そして普及教育まで、多岐にわたるパネ
界展示会に出展の研究機関・大学も、同じ場所で発表を行った
ルや実物を特別展示しました。
ため、日本の大学等研究機関の動向を一挙に知ることができ
◇ パネル展示コーナー
る場ともなり、多くの研究者や関係者が集まりました。
・太陽光発電研究開発の変遷とこれから
■ 展示会場プレゼンテーションステージ
協力:
(独)新エネルギー・産業技術総合開発機構
(NEDO)
(新製品・新技術リリース、
プロダクト&テクノロジーアップデート)
NEDOの太陽光発電技術開発の変遷について、歴史年表パネ
約30の出展社セミナーを展示会場内ステージで実施し、連日
ルと過去に開発された太陽電池モジュール・応用製品の実物を
熱心な聴講者で賑わいました。セミナーの中では、米国の動向を
展示。オイルショック直後に始まったサンシャイン計画からの
紹介するSolarbuzz、太陽光発電協会
(JPEA)
と太陽光発電普及
技術開発の流れと、2030年ターゲットの
「太陽光発電ロードマッ
拡大センター
(J-PEC)
による住宅用太陽光発電導入支援対策費
プ
(PV2030+)
」
を併せて解説しました。
補助金申請の説明、JPEAと太陽光発電施工技術センター
(J-COT)
・環境・エネルギー技術と人材育成ビジョン
が行う講習会の説明、アメリカ州政府協会(ASOA)
による米国
協力:
(社)応用物理学会
のクリーンエネルギー政策と各州の取組みの紹介、そして、台湾
応用物理学会による環境・エネルギー技術と人材育成分野の
貿易センター
(TAITRA)
による台湾の太陽光発電や新エネル
ロードマップを紹介。太陽電池、リチウムイオン電池、光励起水
ギー関連産業の最新技術とトレンド、ビジネスの紹介などが、人
分解水素発生技術に関する主要な論文・特許を、発展史マップと
気を集めました。
した環境・エネルギー技術史の展示。そして、若手研究者、女性研
究者・技術者等の人材育成に関するロードマップとアクション
プランを提言しました。
・PV産業・市場の最新動向 協力:
(株)資源総合システム
世界市場と国内市場の概況、日本における支援施策概要等の
PVJapan展示会場内セミナー
セミナー合計数
参加者合計数
6月30日(水)
11
1,575
7月1日(木)
09
1,464
7月2日(金)
10
1,659
合 計
30
1,698
最新情報を、パネルで紹介しました。
(国別・材料別・企業別太陽電池生産量推移、太陽光発電システ
ム市場規模、システム累積導入量、各国の太陽光発電の導入目
標、余剰電力の固定価格買取制度他)
・図解 太陽電池製造工程
監修:
(独)産業技術総合研究所太陽光発電研究センター
太陽電池初心者向けに、結晶シリコン系太陽電池、薄膜シリコ
ン系太陽電池、CIGS太陽電池、色素増感型太陽電池、有機薄膜
No.3, 2010 • SEMI News
PVJapan 2011 開催概要
日
時 2011年7月27日(水)
−29日(金)
場 所 幕張メッセ
共同主催 SEMI、太陽光発電協会(JPEA)
同時開催 第6回 新エネルギー世界展示会
問合せ先 SEMIジャパン 営業部
Tel:03.3222.5988 Email:pvj@semi.org
3
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PVJapan 2010 Report
PVJapan 併催セミナー、イベント報告
−PVJapanならではの太陽光発電の幅広い領域をカバーした構成−
PVJapan 2010では、会期を通して多彩な併催セミナー、イベ
池を両輪で展開する一方、次世代技術として多接合型化合物太
ントが開催されました。技術開発の最新動向のみならず、市場や
陽電池の開発も進めており、研究セルレベルでは変換効率35.8%
ビジネスの最新情報、太陽光発電の普及拡大のための啓蒙、EHS
を達成しています。結晶シリコン・薄膜シリコン太陽電池の量産
(環境・安全)
やスタンダード
(標準化)
等の業界情報の共有や提
の生産拠点としては、今年稼動を開始したグリーンフロント堺
案等、多角的な視点から太陽光発電について活発な議論が行わ
太陽電池工場をマザー工場として、世界の消費地に展開を計画し、
とSEMIが主催し、太陽
れました。これは、太陽光発電協会
(JPEA)
来年にはイタリアで薄膜工場が稼動を開始すると語りました。
光発電関連諸団体より協力を得ているPVJapanだからこそ実現
◇ 三洋電機の太陽光発電事業と今後の展望
した企画と言えます。併催セミナーとイベントは総数20を超え、
◇ −パナソニックグループの目指す
『環境革新企業』
への展開−
最新情報の入手や意見交換のために、3日間で延べ約3,300人が
参加しました。
三洋電機
(株)
ソーラー事業部 執行役員ソーラー事業部長 前
田哲宏氏は、パナソニックグループの目指す「環境革新企業」
に
ついて、HIT太陽電池モジュールを中心とする三洋電機の技術
力が、パナソニックのデザイン、開発、生産、コスト削減のノウハウ
と結びつくことで、世界第三位圏内の太陽電池メーカーを目指
すと述べました。そのために同社は、2012年度までの中期経営計
画で予定される2,900億円の投資のうち、約60%を太陽光発電シ
ステムと二次電池のエネルギー事業に振り向けます。技術開発
分野では、同社特有のセル構造であるHIT型太陽電池は、研究
レベルで変換効率23%、量産で20%を達成しており、2010年度
内には量産で21%達成を目指すと語られました。
◇ グローバルPV産業の将来展望:LGのソーラー事業戦略と
技術展開
LG Electronics, Solar R&D Laboratory, Vice President, Ji-Weon
■ Executive Forum
Jeong氏は、2050年には世界のエネルギー需要の50%が再生可
−グローバルリーダーがPVの潮流を語る−
能エネルギーで賄われるという長期見込みの中、その一翼を担う
PVJapanの基調講演として、7月1日
(木)
に
「Executive Forum」
太陽電池セル・モジュールの生産を、LGも開始したと述べました。
が開催されました。
(独)
産業技術総合研究所 太陽光発電研究
2009年10月から2010年4月にかけて、欧州(TUV)
、米国
(UL)
、
センター センター長 近藤道雄氏と、
(独)
新エネルギー・産業技術
、韓国
(KSC)
等、各地域向けのモジュール認証も
カナダ
(CEC)
新エネルギー技術開発部長 市村知也
総合開発機構
(NEDO)
取得済で、結晶シリコン系太陽電池の量産を進めているほか、
氏をチェアに迎え、太陽電池製造および太陽光発電産業分野で
タンデム型薄膜シリコン太陽電池の開発も行なっています。また
マーケットリーダーであるシャープ、三洋電機、LG Electronics、東
変換効率のほか長期的耐久性も重視しており、25年の使用で
芝の各ソーラービジネス事業の責任者が、各社の動向と業界の将
損失が20%未満となることを目指しています。
来展望 について語りました。
◇ 太陽光発電システムにおける東芝の取組み
◇ エコポジティブカンパニーを目指すシャープの太陽電池事業
(株)
東芝 電力流通・産業システム社 統括技師長 兼務 太陽光
について
発電システム推進統括部 統括部長の竹中章二氏は、現在は欧州
シャープ(株)常務執行役員 ソーラー事業統轄兼ソーラーシ
が世界最大の太陽光発電システム市場であるが、中長期的には
ステム事業本部長 大西徹夫氏は、2012年までに温室効果ガス排
北米がトップになるとの見解を示しました。長期的には新興国
出量に対し、創エネ・省エネ製品による削減貢献量を2倍にする
市場も有望視されています。国内市場は住宅用がメインですが、
「エコ・ポジティブカンパニー」の実現を目指すと述べました。シ
長期的には産業用も拡大を見込んでいます。ただし、電力用は限
ャープの太陽電池事業は、結晶シリコン・薄膜シリコン太陽電
定的であるとの見方です。そのような中、同社は太陽光発電シス
4
SEMI News • 2010, No.3
P04-05_26-03/43L 10.7.22 6:12 PM ページ 5
PVJapan 2010 Report
テム分野の事業を拡大しており、高効率パワーコンディショナ
件解除ができないこと等がポイントとして挙げられました。
ーや新型二次電池の開発に加え、スマートメータリングやメガ
ソーラーシステム技術の開発も強化しています。グリッド接続
■ 環境規制やスタンダードワークショップから見える
される太陽光発電量の増加に伴う電力系統への影響について、
■ 製造分野の課題
電力会社やNEDOとの共同プロジェクトのもと、スマートグリッ
ドによる課題解決への取組みが進められています。
(環境・安全)
、スタン
昨年に引き続き、SEMI主催によるEHS
ダード関連の委員会やワークショップも開催されました。
「PV関
連環境規制と環境インパクト」では、欧州で進められている廃
■ 8つの専門セミナーでは、
■ 各技術分野とマーケットについて専門家が議論
リサイクルと特定有害物質使用規制
電気電子機器( WEEE )
に関する法制度見直しの動向が紹介され、これらの動
(RoHS)
PVJapanでは、2009年より、太陽電池メーカーおよび材料 ・製
きに対し、SEMI RoHS WGを中心とするロビー活動の結果、議会
造装置メーカーの両者から組織される
「PVプログラム委員会」が
の担当委員会レベル修正案に半導体や太陽電池製造装置の大型
設立されました。本年の専門セミナーは、PVJapanセミナーとし
除外に関する文言が入るなど、一定の成果が出
据付装置
(LSIT)
ては初めてPVプログラム委員会の企画により実施され、セッシ
ていることも報告されました。また、LCA手法に基づく太陽光発
ョンの枠組みと今年のテーマ、講演者など、業界のニーズを取り
電システムの環境影響評価についても触れられました。
入れた設定となりました。
SEMIスタンダードワークショップ「あなたの製品戦略は世界
専門セミナーは、1.材料・部材、2.マーケットトレンド、3.次世代
の標準化の流れに乗っているか?」
では、太陽電池市場における
太陽電池、4.結晶シリコン系太陽電池、5.認証・規格・標準化、6.製
供給構造の変化を踏まえて、標準化が競争優位の喪失につなが
造装置、7.薄膜系太陽電池、8.電力システム・アプリケーションの
るケースの検証結果、製造装置メーカーがいかに標準化に向き合
8セッションで構成され、各分野の代表メーカーや研究機関から
うべきか、インタフェース標準のもたらすビジネス効果の考察を
講師を招きました。専門セミナー8セッションは、PV産業全体を
通して技術力の比較優位性を維持するためのツールとして標
俯瞰して分野が切り分けられており、その年々の状況に合わせ
準化にどのように向き合うべきか等が語られました。また、今後
たテーマ設定のもと、各分野の
「定点観測」
の情報交流の場とし
の材料・製造装置分野におけるSEMIの標準化活動の具体的
て、来年以降も期待されています。
活用が議論されました。
■ 太陽光発電システムの購入や設置技術への情報需要は
■ 再生可能エネルギー世界フェアVIPレセプション
■ 高まる一途
会期の中日には、VIPレセプションが行われました。今年は再
太陽光発電の導入拡大のための啓蒙セミナーとして、太陽光
生可能エネルギー2010国際会議が同時開催されたことにより、
主催により「
、住宅用太陽光発電の最近の状況」
発電協会
(JPEA)
レセプションは一層国際色が高まり、300名以上の関連業界のエ
「公共産業(非住宅)
分野の太陽光発電システムの設計と施工
グゼクティブが交流を行う賑やかな懇親の場となりました。来
セミナー」
「将来のアジアにおけるPV普及と日本の役割」の3セ
賓挨拶では、経済産業省資源エネルギー庁省エネルギー・新エ
ミナーが開催されました。いずれも定員を大幅に上回る参加
ネルギー部政策課長 増山壽一氏が、太陽光および再生可能エ
希望者で溢れ、会場は熱気に包まれました。
ネルギー全般への更なる期待、支援を語られました。
としかず
「住宅用太陽光発電の最近の状況」
では、補助金制度により
急成長する住宅用太陽光発電市場と、電力の全量買取制度の
現在の検討状況について概説されました。このような市場・政策の
盛り上がりに比例して、個人で住宅用太陽電池を導入する場合
の、販売業者と一般ユーザーとのトラブルやクレーム件数も増
えている状況を受け、セミナーでは一般ユーザー向けのシステ
ム導入の基礎知識
(太陽電池種類やシステム、屋根形状の種類、
資金検討へのアドバイス、システム選定と契約等)
が解説された
後、クレジット契約の仕組みについても触れられました。トラブル
を事前回避するために、販売業者が自宅に来た場合は必ず名刺
の提示を求めること、クーリングオフが適用されない契約は無条
No.3, 2010 • SEMI News
5
P06_26-03/43L 10.7.22 6:08 PM ページ 6
PVJapan 2010 Report
PVJapanと同時期開催「再生可能エネルギー2010国際会議」
−日本で 2 回目の開催、
活発な議論が展開−
PVJapan 2010の開催期間を含む6月27日
(日)
から7月2日
(金)
会式・基調講演が行われました。国際会議組織委員長の柏木孝
(主催:再
の一週間にわたり、
再生可能エネルギー2010国際会議
夫氏は、再生可能エネルギーの成長は21世紀を通じて持続し、総
が開催されました。
生可能エネルギー2010国際会議組織委員会)
エネルギーに占める割合は、2050年には1/2、2100年には2/3に
4年ごとに日本で開催という趣旨から、2006年幕張で
本会議は、
なると見通し、このエネルギーのパラダイムシフト実現のため
今回横浜で第2回の開催となりました。その間の年にはアジ
第1回、
には、これからの10年が重要になると説きました。再生可能エ
2008年に韓国・釜山で開催されました。
アを持ち回るということで、
ネルギー世界フェアの開会を告げるテープカットは、来賓に経
地球環境問題、
代替エネルギー、
経済活性化策など複数の観点よ
済産業省大臣官房総括審議官 上田隆之氏、国際太陽エネルギー
り、再生可能エネルギーに対する需要は年々高まっており、
クリー
学会会長David Renne氏、国際再生可能エネルギー機関マネー
ンテクノロジー分野への各国の支援政策や企業の事業強化は、
拡
ジャHugo Lucas氏、IEA再生可能エネルギー技術普及実施協定
大の一途です。そのような潮流の中、国際会議は幅広い分野にわ
こ
議長Hans Jorgen Koch氏、横浜市副市長 山田正人氏を迎え、
たる情報交流の場として、
大きな期待の中で開催されました。
れに世界フェア主催団体の代表者を交えて、産官学が一堂に会
■ グローバルな参加者による、活発な議論が展開
しました。
太陽光発電、風力、グリッドシステム、海洋エネルギー、バイオ
マス他、再生可能エネルギー全12分野を幅広く網羅する、世界で
も数少ない国際会議として注目を集め、65ヵ国から1,360名の研
■「グローバル サステナビリティ:持続可能な社会」を
■ 合言葉にコミュニケ発表
国際会議の最後には、
“Advanced Technology Paths to Global
究者や技術者が集まり、900件以上の論文発表が行われました。
Sustainability
(持続可能な地球を創るため先進技術を道しるべ
期間中には、経済産業省、
(独)
新エネルギー・産業技術総合開発
にしよう!)”
と題したコミュニケが出されました。コミュニケに
機構、
(独)
産業技術総合研究所、横浜市、国際太陽エネルギー
は、
「21世紀後半の持続可能な社会に向け、再生可能エネルギー
、国際エネルギー機関
(IEA)
など、国内外の関連団
学会
(ISES)
とエネルギー効率改善は最も重要な鍵である」
「再生可能エネ
体主催による10以上の国際ワークショップが開催され、活発な
ルギーが主要エネルギーの一つとなるよう、導入拡大を推し進
議論が展開されました。多様な関連団体による最先端技術の
めるべきである」
「エネルギー貯蔵と連系システムの制御がま
発表やグローバルな情報交流が行われたことは、他には類を見
すます重要になる」等の内容に加え、
「再生可能エネルギー分野
ない特色と言えます。
の専門家や政策担当者として、今世紀の持続可能かつ豊かな社
会の実現のために、先進的な技術的課題に挑み、再生可能エネ
中小水力、未利用エネルギー 3.4%
新エネルギーシステム 6.3%
ルギー分野の成長に貢献する。そのためには持続的なネットワ
政策 5.2%
ークづくりが不可欠である」
という力強いメッセージが採択され、
新電力システム 5.0%
太陽光発電
19.0%
地熱エネルギー
5.3%
2012年にはアジアのどこかで再会することを約束して、会期を
閉幕しました。
海洋エネルギー
4.2%
太陽熱利用
8.6%
水素・燃料電池
6.1%
バイオマス 14.1%
省エネルギー建築
6.7%
風力 16.0%
分野別の論文割合(総数986)
■ 国際会議に花を添えた
「再生可能エネルギー世界フェア2010」開会式・基調講演
6月30日
(水)
には「再生可能エネルギー世界フェア2010」開
6
国際会議でのポスター発表風景
SEMI News • 2010, No.3
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Column
海外便り ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
15年目のベトナムで
RORZE ROBOTECH CO., LTD. ジェネラル ダイレクター 中村 秀春
RORZE ROBOTECH CO., LTD. は、1996年10月、ベトナム政
いことがほとんどです。
府より投資許可を受け 、ベトナム第 3の都市 ハイフォン市
ベトナム人とのコミュニケーションは、私たち日本人がベト
ノムラハイフォン工業団地に設立されました。今年は、設立15
ナム語を話すことから始まり、下手なベトナム語でも、話すこと
年目を迎える節目の年になります。弊社は、ローツェグループ
で打ち解けることができ、さらに、飲みニケーションは重要なコ
(本社日本、台湾、韓国、米国)の生産拠点として、ロボット部品
加工、モーター制御製品組立て、クリーンロボットの組立てを行
ミュニケーションの手段です。
従業員の定着率と、現地従業員への権限移譲
っており、原材料から最終製品まで一貫した社内生産が特徴で
少量多品種変動生産を行っている弊社では、従業員が長く働
す。2002年6月には、VINA BINGO CO., LTD.(ローツェ株式
き、技術を身につけ、その技術を向上してもらうことが必須です。
会社他3社合弁)
を設立し、板金、溶接、塗装部品の現地調達が可
従業員(446名:2010年5月)のうち、勤続年数10年以上15%、
能になりました。現在では、親会社のOEM生産だけでなく、親会
5年以上50%、3年以上68%であり、ベテラン従業員により、安定し
社以外のお仕事もいただいております。
た品質を維持できています。
私を含めた日本人2名体制で会社運営ができているのは、従業
員の高定着率により、権限委譲を進めることができる環境にな
ったためだと思っております。
ローカル企業の育成
地域への貢献として、ローカル企業の育成に取り組んできま
した。機械加工が主であり、品質管理、納期管理、コスト管理を指
導しながら、育成への取組みから6年経過した現在では、重要な
外注先になっています。従業員の教育の一環で初めたローカル
広大な工業団地の一角を占めるRORZE ROBOTECH
企業育成の成果が出てきたところです。
ゴルフ事情
私がベトナムに赴任したのは、1996年10月であり、会社同様、
ゴルフは、ベトナムではまだまだ一般的ではなく、ベトナム人
私も今年で15年を迎えることになります。私の任期は、「会社を
にとって超高級な娯楽ですが、外国人にとっては、情報交換、社
黒字にすること、ベトナム人が運営する会社にすること」が達成
交の場として重要な場になっています。5月から9月は、気温35
できるまでということで、ベトナム人を育成するための16年プ
度を超える日も多く、湿度は80%程度と、非常に不快指数の高い
ランを計画しスタートしました。途中18年プランに変更し、現在
環境でのプレイであり、体力と健康管理は必須です。
に至っております。18年プランのうち、すでに15年が経過しよ
ルールの違いとしては、日本ではローカルルールで「6インチ
うとしていますが、私のベトナム駐在経験の中から、いくつか紹
プレース」OKですが、ベトナムでは「ノータッチ」ルールです。
介させていただきます。
ベトナムでゴルフをされる方はご注意を。
ベトナム人
タンロン建都1000年祭
一般的に「手先が器用で勤勉」と言われています。そのとおり
今年、首都ハノイは建都1000年を迎えます。1010年に現在の
ですが、さらに、「辛抱強く、あわてず、いい加減なことをしない」
ハノイに遷都され、タンロン(昇龍)
と名付けられたときが起源
「家族と友人を大事にする」「プライドが高い」というのが、私の
です。日本大使館、JETRO、JICA、VJCC、国際交流基金は、「タンロ
従業員への印象です。仕事で従業員に問題がないか聞くと、必ず
ン建都1000年」を祝う各行事が成功裏に実施されることを支援
と言っていいほど、「Khong Sao
(問題ないの意味)
」と言います。
し、また、これまでの日越両国の協力関係を一般のベトナム人に
これは、実際には大問題が起きていることが多く、自分たちで何
広報することで、ベトナムにおける日本の存在感を高めるため、
とかして解決しようとしていることがわかったのが、赴任して
日本の関連機関・企業を含むオールジャパンとしての取組みを
間もなくでした。
「Khong Sao」と言ってくるときには、要注意で、
行っています。
問題解決のためのアクションが必要です。それから、教育や指示
を出したときに、「わかりましたか?理解できましたか?」と聞
ベトナムは良いところです。活気のあるベトナム人、おいしい
くと、ほぼ100%の人は、すぐに「わかりました」と答えます。これ
食事、世界遺産、観光地、自然も多くあります。ゴルフも楽しめま
は、「わからない」と言うことに抵抗があり、充分理解できていな
す。10月から2月がベストシーズンです。ぜひお越しください。
No.3, 2010 • SEMI News
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SEMI Membership
SEMI新会員企業のご紹介
−日本で入会された会員企業をご紹介します(2009年10月‐2010年 6 月)−
■ 会社名 1)所在地、連絡先(URL、電話) 2)設立年度
3)取扱製品/サービス
www.parkAFM.co.jp Tel:03-3219-1001
2)―
■ アイディール販売株式会社
3)Park Systems 社製 走査型プローブ顕微鏡/原子間力顕微鏡
1)〒104-0042 東京都中央区入船3-7-2 山京ビル9F
■ 株式会社マイクロキャッツ
www.ibrain.jp Tel:03-5541-7600
2)2009年
1)〒229-1124 神奈川県相模原市田名3039-32
www.microcats.com Tel:042-760-7237
3)免震装置「ミューソレーター」製造・販売
2)1990年
■ 株式会社エーディエフ
3)産業用コンピューターの開発および販売、WindowsとLinux
1)〒555-0012 大阪府大阪市西淀川区御幣島5-13-18
www.adf-al.com Tel:06-6474-9995
2)―
3)独自の技術でクリーン環境 をサポートします。
OSを使用した計測制御ソフトの開発
■ マテックス株式会社
1)〒581-0856 大阪府八尾市水越1-125
www.matex-japan.com Tel:072-941-8651
■ コスモ・テック株式会社
2)1950年
1)〒103-0023 東京都中央区日本橋本町4-2-9
3)色素増感型太陽電池、遊星歯車減速機、メカトロニクス製品、
www.cosmotec-co.jp Tel:03-3270-5761
プラスチック射出成形品、プラスチック成形金型
2)1992年
■ 株式会社みくに工業
3)スイスEVAC 社製チェーンクランプ、アルミエッジシール、
1)〒394-8520 長野県岡谷市田中町2-8-13
CeFiX、ガラス製真空配管部品
www.mixnus.jp Tel:0266-23-5611
■ コネクテックジャパン株式会社
2)―
1)〒944-0020 新潟県妙高市工団町3-1
3)半導体製造装置の開発・設計・製造。半導体検査用プローブ
www.connectec-japan.com Tel:0255-72-7020
ピンの製造・販売。その他、各種専用装置の開発・設計・製造
2)2009年
■ ムラテックオートメーション株式会社
3)新規半導体パッケージのマーケティング、設計・開発、製造、
1)〒484-8502 愛知県犬山市橋爪中島2
販売、技術コンサルティング
www.muratec.jp/mac Tel:0568-65-2732
■ 株式会社スリオンテック
2)2009年
1)〒224-0006 神奈川県川崎市多摩区登戸3819
3)半導体工場向け搬送システム・FPD工場向け搬送システムの
www.sliontec.co.jp Tel:044-922-1131
2)―
開発設計
(ソフトウェア含む)
、製造、組立、販売、据付工事、
導入指導、保守、メンテナンス
3)粘着テープの総合メーカーです。半導体製造プロセス用テー
プなど、粘着テープでお困りの際はお問合せください。
■ テスト技術研究所株式会社
1)〒225-0013 神奈川県横浜市青葉区荏田町72-1
Tel:045-914-5100
2)2009年
3)半導体テスト関連部品(コネクター、プローブカードとソケッ
ト)
の設計、製造、販売
■ ニフロン株式会社
1)〒173-0005 東京都板橋区仲宿39-6
www.niflon.cn Tel:03-5943-1780
2)2008年
3)PTFEを中心とした素材および各種機械部品の製造販売
■ パーク・システムズ・ジャパン株式会社
SEMI会員制度について
半導体およびFPD、ナノテクノロジー、MEMS、PV、その他関
連産業に従事する企業や団体にご入会いただいています。
■ 業種による4種類の会員区分
① 正会員(Corporate Member)
上記関連業界に装置・材料、部品等を供給されている企業が該
当します。
② 準会員(Associate Member)
半導体および上記デバイスの設計、製造、販売に従事されてい
る企業が該当します。
③ 賛助会員(Allied Member)
研究、教育、規制機構、協会・団体等が該当します。
④ 関連会員(Affiliate Member )
半導体および上記関連業界に出版、コンサルティング、保険、運
送等のサービスを提供している企業が該当します。
1)〒101-0054 東京都千代田区神田錦町1-17-1 NK第一ビル1F
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SEMI News • 2010, No.3
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SFJ 2010 Report
SFJ(SEMI Forum Japan)2010 開催報告
−基調講演はシャープ
(株)太田取締役専務執行役員−
去る5月31日
(月)
・6月1日
(火)
の2日間、
グランキューブ大阪
(大
2日間で32のプログラ
阪国際会議場)
で開催されたSFJ 2010は、
◇ エコ・ポジティブ戦略
シャープの事業ビジョンとしては、
成功裡に閉幕した。
SFJは、SEMI
ムに、
延べ1,802名の参加を得て、
・省エネ・創エネ機器を中心とした環境・健康事業で世界に貢献する
が2001年より毎年大阪で開催しているイベントで、
本年で10回目
・オンリーワン液晶ディスプレイでユビキタス社会に貢献する
の開催を迎えた。
システム、
デバイス、
装置、
材料など、
半導体バリ
エコ・ポジティブ カンパニーとは、すべてのステークスフォル
ューチェーンを包括したセミナー主体のイベントで、
応用物理学
ダーとともに、事業活動による環境負荷(ネガティブインパク
(
、社)
日本半導体ベンチャー協
会、
(社)
半導体シニア協会
(SSIS)
ト)
を大幅に上回る環境貢献(ポジティブインパクト)
を果たす
、
VANSより協賛・協力を受け、
各団体主催のプログラ
会
(JASVA)
企業のことである。製品・サービスを通じて、温室効果ガスの削
ムも開かれた。
今回開催されたプログラムの一部をご紹介する。
減などの環境貢献をしていくことである。
■ 基調講演:
「サスティナブル社会に向けた新たな技術開発」
シャープ株式会社 取締役専務執行役員 技術担当 兼
知的財産権本部長 太田 賢司
太田氏の講演には、約250名が聴講し、
大変活気ある講演会となった。
主な内容は下記の通り。
1)地球環境の変化、社会・経済動向の変化
と新たな対応
2)
シャープが目指すエネルギー・環境ビジョン
3)省エネと創エネの実現に向けて
4)省エネルギーの取組み−液晶ディスプレイ、LED照明
5)創エネルギーの取組み−太陽電池(PV)
、水素エネルギー
6)エネルギー・マネジメントと将来に向けた技術研究開発取組み
◇将来事業に向けた技術・研究開発の取組み分野
◇ エコハウス構想
省エネ家電としては、カラーTV=10%、冷蔵庫=16%、エアコ
ン=25%で、これら3品目合計=50%を占める。すべての一般家
地球環境変化に対する社会的取組みは、企業活動の取組み
庭がこれらの3品目を省エネ家電に置き換えると、一般家庭の電
に落とし込んで推進する必要がある。将来事業に向けた技術・研
(2,500万トン/年のCO2削減
力使用量の25%以上が削減できる
究開発の取組み分野は下図のような分野といえる。
。
に相当:基準年比2%)
このような背景の中で、シャープは「エコ・ポジティブ カンパ
ニー」
を目指す。
No.3, 2010 • SEMI News
家庭の照明をすべてLED照明に置き換えると、白熱電球比90%
(40Wクラス換算)
の省エネが実現。
削減、蛍光灯比50%削減
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SFJ 2010 Report
これを、戸建住宅
(2階建て)
の場合についてシミュレーション
すると、照明の消費電力を60%削減。一般家庭の電力使用量の
(1,000万トン/年のCO2削減の相当:基
約10%削減になるという
。
準年比0.8%)
シャープは太陽電池の生産に力を入れており、結晶系・薄膜
PV
(タンデム型薄膜シリコン太陽電池)
や、多接合化合物・集光
型PV(トリプルセル構造)用途に適した製品を生み出してお
り、これらの省エネ、創エネ技術をエコハウス構想に取り入れて
いる。
◇ 次世代創エネルギーへの取組み
従来のバイオ水素生成法の欠点を打破する新規バイオ水素生
成技術の開発である。蟻酸を用いた基礎的アプローチで、コスト
競争力のある糖類からの水素生成技術を確立する。
■ リニューアブルエネルギーセミナー
−低炭素社会の実現を支える半導体技術−
今年新しく企画された本セミナーは、再生可能エネルギーが
創り出す低炭素社会を実現するための半導体技術を、より広い
視野で探求することをテーマに、社会インフラ・住宅アプリケー
ション・デバイスといった幅広い分野から最新のトピックスまで
が盛り込まれ、多くの人が聴講に訪れ、盛況であった。
◇ 社会インフラ
京都大学の松山教授は、家庭やオフィス等での多様なエネル
ギーの流れや変化を可視化し、エネルギーの蓄積や異なるエネ
ルギー間の相互変換機能を駆使して超省エネ生活環境の実現
を目指す
「エネルギーの情報化」
について解説した。また、低炭素
社会実現に向けた電力会社の取組みを、関西電力の辻氏が紹
◇ サスティナブル社会に向けた新たな取組み
介した。中でも、松山教授が解説した電力センサと通信モジュー
スマートグリッドへの対応、高齢社会に向けた予防医療・介
ルからなる
「スマートタップ」
は、電力の見える化による節電意識の
護システム、
トリ・ジェネレーションとエネクトロニクスの融合/利
向上に留まらず、電気機器の不具合の早期発見や、生活者の行
活用が挙げられる。今後に向けて、
動パターンの学習を通じた健康管理面への応用など、将来の生
1)地球規模の地域アンバランス:新興国との融合
活様式の変化や新サービス創出に繋がる可能性を秘めており、
2)価値観の多様性の容認:高齢化社会での生き方
活発な議論が交わされた。
3)産官学連携によるオープンイノベーション
◇ 住宅アプリケーション
が大きな取り組むべきポイントと思われる。
積水化学工業の塩氏は、再生可能エネルギー設備と省エネル
ギー設備を住宅内で共存させたCO2ゼロ住宅のコンセプトと、
新築市場における省エネ・創エネ住宅の高い採用率、太陽光発
電導入時の消費電力データの見える化がユーザーの自発的な省
エネに繋がることなどを紹介した。また、家庭用燃料電池の事業
化の取組みについて、パナソニックの栗林氏が解説した。家庭か
らのCO2排出は上昇 の一途 をたどっており、既築住宅も含めた新
たな省エネ・創エネ商品の開発による市場拡大が期待される。
◇ デバイス
シャープの佐賀氏、三洋電機の寺川氏からは、結晶系と薄膜
系それぞれの太陽電池の特色と、低コスト化への取組み状況が
紹介された。太陽光発電の導入は始まったばかりであり、急速な
10
SEMI News • 2010, No.3
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SFJ 2010 / SEMICON West 2010 Report
市場拡大が見込まれること、設置条件によって結晶系、薄膜系を
これはNEDOのプロジェクトで、設計からテストまで、薄化から
使い分けていくこと、材料の安定供給面からシリコン中心に進ん
インターポーザまでと、TSVに限らず、広範な技術領域をカバ
でいくであろうことなどが説明された。そのほか、再生可能エネ
ーしている。続いて、関東学院大の小岩教授には、ウェーハレベル
ルギーを有効利用するために欠かせない低損失SiCパワーデバ
CSPの要素技術を紹介いただいた。TSV実現に向けて、MEMS
イスの性能、発展経緯、最新状況についての報告
(JSTイノベーシ
技術を応用したマイクロマシンレンズドリリングによるTSV加
ョンプラザ京都 松波館長)
や、太陽電池パネル製造技術につい
工や、チップ間の低ストレス樹脂など、LSIプロセスの範疇にな
ての紹介
(アルバック 菊池氏)
がなされた。
かった技術に言及いただいた。さらに、日本の 3次元実装の草
以上のように、再生可能エネルギーをキーワードに、半導体技
分け的存在である東北大から田中教授に、本技術の最新動向
術を応用する新たな分野と、今後の大いなる市場拡大の可能性
について、スループット、歩留り、異なるチップサイズの接合などの
が示されたが、いずれもグローバルな開発競争の中で先んじる
課題を明示いただき、その対処例として、チップ積層セルフアッセ
ことが必要であり、発展への期待と国を挙げての開発加速の必
ンブリー技術の優位性を、動画を交えて講演いただいた。最後
要性が感じられた。
に、製品への応用例として、エルピーダメモリの安達氏に、DRAM
■ TSV/3次元実装セミナー
向けTSV積層パッケージ技術の特長と課題を紹介いただいた。
−多層配線 / JISSOジョイント企画−
メモリでの積層は、
「パッケージサイズ不変・容量増大」
の観点で
ここ数年、3次元集積化のキーテクノロジーとして注目を浴び
非常に有用な技術であり、また、プロセス面では、
トランジスタ工
(シリコン貫通ビア)
は、配線、実装双方の技術者に
ているTSV
程前にTSV穴を形成しておくことで、高品質のTSV内壁酸化膜
関心が高いことから、SFJでは初めてジョイントセッションとし
を得ることができ、高信頼TSVの実現の特長技術であるとした。
て企画した。プログラムの構成は、概要から要素技術、課題と
TSVは、その加工寸法ではMEMS領域の数十μmまからLSIに
応用例と、TSV/3次元実装の全体をカバーすることを意識した。
近い数μmまで、材料面ではLSI配線で主流であるCuめっき技
ASETの嘉田氏には、TSV/3次元実装における世界各極のコ
術、積層にはバンプ、アッセンブリーという汎用の実装技術が適
ンソーシアムや学会等の組織・体系と、日本において、幅広い視
用されることになり、MEMS、配線、実装技術が英知を持ち寄る
点からの3次元実装の位置づけとその実現に向けて取り組んで
ことで、この要素技術確立が進められると言える。次年度以降も
を紹介いただいた。
いるASETの「ドリームチッププロジェクト」
活発な議論の場を提供できれば幸甚である。
SEMICON West 2010/Intersolar North America 2010レポート
去る7月13日からの3日間、サンフランシスコのモスコーニ・セ
これからのSEMICON Westはどうなるのか
半導体業界の好況を
ンターで開催されたSEMICON West 2010は、
今年の開催が、今後のSEMICON Westの形を示したという声
背景にした活気のある展示会となった。展示会入場の事前登録
も出展社から聞こえてきた。市場の成長に伴うある程度の規模
しかし、
開催規模の点では、
昨年を下回
数も昨年を14%上回った。
拡大はあるものの、過去最高水準まで回復することは考えにく
1,141小間に留まった。
一方、同時開催のIntersolar
る出展630社、
く、規模よりも今後の業界が進むべき方向を示す豊富な情報を
North Americaは、出展586社、1,251小間までに成長した。
発信するコンテンツ・リッチなイベントとして、参加者が満足する
開催を目指すべきだという考え方である。実際に、基調講演、
半導体製造装置の売上げは今年倍増
開会式の基調講演に登壇したIBM Fellowのバーナード・メ
サミット、技術セミナー、企画展示、無料講演など、さまざまな形
での情報が、会場の各所から連日発信され、溢れるほどの情報
イヤーソン氏は、水、交通、食料といった地球規模の問題を解
提供を実感させるイベントとなった。
決するためには、IT技術によるスマート・プラネットの実現が必要
躍進する米ソーラー市場で開催されるIntersolar
だが、そのための技術革新を提供できるのは半導体であり、
SEMICON Westがその可能性を示すだろうと述べた。
今後、世界最大の太陽電池市場に成長することが確実視され
る米国での開催となるIntersolar North Americaは、開催を重ねる
同日にプレス発表されたSEMIの市場予測によると、2010年の
ごとに規模を拡大しているが、SEMICON Westとの同時開催とい
装置市場は前年比104%増の成長が見込まれ、材料市場は2011
うこともあり、装置・材料メーカーの出展が盛んである。ただ、装
年には過去の記録を超えることが示された。こうした状況を反
置メーカーによってはSEMICON Westに出展の比重を戻した場
映して、会場の雰囲気は昨年とは打って変わった明るさと活気
合もあり、両展が相互に交流しながら成長をすることが今後の
に溢れた。
課題となると思われる。
No.3, 2010 • SEMI News
11
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GFPC 2010 Report
GFPC開催報告(2)テック・アンド・ビズ株式会社 代表取締役社長 北原 洋明
ディスプレイのBeyondを探求した 2 日間
−製品・市場・製造の正の循環で持続的な成長を目指せ−
「Green, Growth&Beyond -For the Future of the FPD Industry-」
の
た。激しい競争に打ち勝つために、各社がより高性能なデバイス
テーマの元で開催されたGFPC 2010(第6回Global FPD Partners
を開発し製造を競ってきた結果である。その結果、実用化されて
Conference)は、FPD産業の
“Beyond”
を考える絶好の機会で
わずか20年あまりでブラウン管を置き換え、大きな市場を作り
あった。今回のディスカッションの中から、将来のFPD産業の
あげることができた。
姿を、筆者なりの切り口でまとめた。
その切り口とは、産業を考える上で重要な
「製品」
「市場」
「製造」
今回の3Dも、同様にメーカー主導で普及が進んでいく面は残
る一方で、コンテンツサイドの力が強くなっていくであろう。ま
である。これまでにもFPD産業は、この3つの要素が絡み合いなが
ったく新しい使い方も生まれてくると期待している。単に映像
これからの超
ら拡大してきた。
今回のGFPCのディスカッションでも、
を超臨場感で楽しめるようになるということだけではなく、オ
、
産業の一層の拡大を後押しす
臨場感の世界を実現する
「3D製品」
フィス使用などでも、より生産性の高い使い方が出てくるだろ
「脱
る
「中国市場」
、
そしてFPD産業を健全に発展させていくための
う。机上のドキュメントとディスプレイ上のドキュメントの区別
クリスタル・サイクルを目指した製造」
について議論された。
これら
がつかなくなるような状況になるかもしれない。3Dが身の回
の議論を通して見えてきたものは、
今回のテーマである
“Beyond”
りに当たり前のように存在するようになれば、ディスプレイの
が、将来に向けた
「持続的成長」
を意味しているということである。
存在そのものが意識すらされなくなるかもしれない。このよう
「製品」
「市場」
「製造」
の3つの要素が正の循環で廻っていくことに
よって、FPD業界の持続的な発展を望むことができる。
なディスプレイ開発者が夢見ている究極の製品に向けた進化が、
新しい応用分野を生み出し、産業構造も変化していくであろう。
■ 市場:最大の関心事である中国FPD-TV市場の現状
夢のある将来のディスプレイ製品の市場がある一方で、現実
のビジネスでは、現在の中心的な製品であるFPD-TV市場の拡
大を支える新興国、特に中国市場の動向に業界の熱い目が向い
ている。まず、China Video Industry AssociationのHao Ya-Bin氏
の講演 から、中国市場の状況を整理する。
中国政府による
「家電下郷」政策で、2009年に880万台のカラ
ーTVに加えて、携帯電話、PCを含む3,768万セットが売れ、売
上高で693億 人民元であった。これは、年間500万台のカラーTV
FPD産業の持続的な成長を支える製品・市場・製造の正の循環
売上げ増、都市および農村部でのFPD消費動向を4年前倒し、
カラーTV産業が60%の成長を示し、産業成長を2年前倒し、経
■ 製品:超臨場感の世界を実現する3Dディスプレイ
済効果として1,800∼3,000億 人民元に相当する。
GFPCを終えた2週間後に、家庭用の3Dディスプレイが一斉
また、買い換え制度「以旧換新」
を、2009年5月から9の県と
に発売された。今回のGFPCでは、この話題の3D普及を先取
市で試験的に行っている。この結果、春節期間中に50万台のカラ
りした議論 だけではなく、その先を見据えた議論がなされた。
ーTVの売上げ増につながった。買い換え制度によって、CRT-TV
3Dの民生元年と期待されている今年、この3Dの普及を本物に
を1∼2%ずつ置き換えている。家電下郷と併せて、1,000万台の
し、超臨場感の世界を構築していくためには、まだ多くの技術的
カラーテレビが買い換えまたはアップグレードされ、FPD-TVの
課題をクリアしていかなければならない。ハードウェアとして
浸透を早めている。今後は、省エネ補助政策もまもなく発布され
のディスプレイ技術の進歩もまだまだ必要であり、それ以上に
る予定 である。
コンテンツの重要性がある。疲労など人体への影響を生じさせ
このような製品市場の拡大とともに、Net-TVのインフラ拡充
ない映像の作り方、画像の安全性も必要である。この点が、これ
やDigital-TVの推進も図っており、このようなインフラの後押し
までのFPD製品の進化とは異なる。これまでブラウン管という
が、中国市場での家電製品の普及を加速させていく。
ハードの置き換えが大きな目標であったが、今後はFPD独自の
世界を開拓していく努力が、3Dの普及では欠かせない。これ
までのFPD製品の普及は、パネルメーカー主導で実現されてき
12
■ 製造:クリスタル・サイクルは本当に収斂するのか?
グランドフィナーレでは、パネル/セットメーカー、装置メーカ
SEMI News • 2010, No.3
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GFPC 2010 Report
ー、材料メーカーのキーパーソンによるFPDの技術と産業動向
に関する議論が行われ、今後のクリスタル・サイクルの行方につ
いてディスカッションされた。これまでの数々の経験を糧にし
て、業界全体が賢くなっており、
「クリスタル・サイクルの幅は小
さくなっていくであろう」
との楽観的な結論が導かれた。この
見方を変えれば、FPD産業が「安定成長」の時代に入っていく
と捉えることもできる。しかし、2日間を通して聴講した筆者の正
直な感想は、この逆であった。その理由は、先の「製品」
と
「市
場」の中にある。
「製品」から見える将来の産業像では、これまでのブラウン管
の置き換えを目指して進んできた拡大一筋の方向ではなく、新
求められてくる。この結果、従来のパネルメーカーを中心とした
GFPCグランドフィナーレのパネルディスカッション
日経BP社、シャープ、Samsung Electronics、パナソニック、LG Display、
Applied Materials、Corningからパネリストが集う
産業構造が大きく変化する可能性がある。
面でこの中国の力が増してくる2012∼2013年以降には、産業界
しいディスプレイの世界を作り上げるための新たな取組み方が
また、
「市場」
から見える産業像では、中国や新興国での市場
が大きく変化していくであろう。
拡大がこれまでとは異なっており、特に、中国で立ち上がってくる
「市場」
高世代ラインからの供給が本格的に始まる2012年以降、
■ FPD産業の持続的な発展を目指すために
と
「製造」をセットとしたサプライチェーンの様相が大きく変わ
■ GFPCが果たす役割
っていくだろう。この新たな時代に備えていくことが、今後の
2010年代の幕開けとなる2011年は、上述のように「製品」
「市
FPD産業の最大の課題であり、持続的成長を実現するための
場」
「製造」
の視点で、FPDの産業構造が大きく変わっていく状況
重要なポイントである。この状況を整理するために、改めてHao
が見えてくると予想している。
「製品」では、今年立ち上がる3D
Ya-Bin氏の発言を引用する。
の行方がはっきりと見えてくるであろう。そして、もう一つ忘れ
中国では、
「産業調整と再活性化計画」が2008年4Qに発表
てはならないのが、Greenの視点、特に低消費電力化の流れであ
され、電子情報産業に対しては、2009年2月18日にガイドラインが
る。2012年に米国で適用されるEnergy Star 5.0や、中国でも近々発
発布された。対象は、IC、FPD、TD-SCDMA、Digital-TV、PC
布されるであろうエネルギー標準が、Green化の具体的な指標
と次世代インターネット、ソフトウェアと情報サービス、の6プロジ
として業界の方向を決めて行くことになる。また、中国および新
ェクトである。FPD産業に関わる所では、現在、中国TFT液晶工
興国の
「市場」拡大の状況や、
「製造」面での中国高世代ライン
場の高世代は、北京BOE、深
稼働の全体像も見えてくる。
TCL、昆山FVOの3社が承認さ
れ、そのための産業チェーン構築を中央政府も支援しており、融資、
FPD産業の転換期となる2011年以降、FPD産業の持続的な
技術開発、人材育成の面でも強力な支援を進めている。具体的に
成長を世界のFPD産業界全体で議論していくことは、大変重要な
は、2,000億 人民元以上の投資によって、ガラス基板工場、高世代
ことである。そして、製造国としてのアジアの国々だけではなく、
TFT液晶製造ライン、モジュール、製造装置などのFPD関連産業チ
市場としての世界の国々をとりまとめて議論を進めていくために
ェーンを構築していく。また、高世代のTFT液晶ラインおよびPDP
は、世界的な組織を持つSEMIがバックとなっているGFPCの
ラインから生産されるFPD‐TVに牽引される形で、この産業チ
果たす役割は大きい。
ェーンの3から5年での構築を目指している。その波及効果とし
また、FPD産業を最初に立ち上げてきた日本の産業界および
「4 in 1」の
て、R&D、生産、応用製品、サービスをカバーする
企業にとっても、継続的にこの産業を牽引していけるかどうか
FPD産業体系を完成させる。FPDとDigital-TV生産にかかる直
の正念場に立たされる時であり、真剣にその将来を見直す時期
接投資は、この1年から1年半の内に4,000億 人民元に達する計
にある。その日本の企業が生き残りのために考えていかなけれ
画である。
ばならないことは、世界に出て判断していくことであり、その判
「過剰投資の
その一方で、中国FPD産業のチャレンジとして、
「未
危険性と不完全な産業構造」
「R&Dおよびコア技術の不足」
完の産業 チェーン」
を挙げ、今後の課題としてとらえている。
すなわち、FPD産業には後から参入してきた中国ではあるが、
断のスピードを速めることである。実際に海外に出ていると、世
界は日本の数倍のスピードで動いていることを実感する。
「製品」
「市場」
「製造」の3つの循環をきちんと回していくた
めの議論を、GFPCのホスト国である日本が継続的に担い、この
先行する日韓台の経験を踏まえながら、この産業をキャッチア
産業の健全な発展のために尽くす役割は、ますます欠かせなく
ップするための準備を着々と進めていることが伺える。
「製造」
なっている。
No.3, 2010 • SEMI News
13
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SEMI Standards
太陽光発電分野における新規のスタンダード委員会発足
−
「PV Automation委員会」の新設と同委員会主催ワークショップ(PVJapan 2010併催)から−
昨年のSEMI News No.3
(7-9月号)
で、欧米に続いてSEMIスタ
重要かつ本質的な観点に基づいて、PV分野の製造ラインビジネ
ンダード日本地区においてもPV委員会が発足したことを報告し
スの変化と標準化戦略を今考える必要があることから、本ワー
ました。一例を挙げれば、PV分野における日本地区発最初のSEMI
クショップが企画されたことが説明された。半導体製造分野に
スタンダードであるSEMI PV4
(薄膜用第5世代基板サイズ群の
おける
「300mm標準化」時代からの豊富で卓越した知見を持つ
仕様)
が発行されるなど、同委員会では活発に活動が展開してい
同氏ならではの標準化の本質論に裏付けられた危機意識を核に、
PV製造の自動化に関する分野
ますが、
同委員会のスコープの内、
それに続く、第一線のPVアナリスト・標準化研究者・関連SEMI
が
(世界の他地区に先
が分離する形で、
「PV Automation委員会」
スタンダード委員らのセッションとパネルディスカッションによっ
(本年
駆け)
日本地区において本年6月初頭に正式承認されました。
て検討を深めていく、というワークショップ全体のコンセプトが
6月現在のSEMI全体のPV関連スタンダード委員会組織図は図1
示された。
を参照)
。
そして、
その直後に開催されたPVJapan 2010において、
■ PV製造ラインの供給構造の変化:野村證券(株)金融経済
(7月2日)
と、同委員
「PV Automation委員会」のキックオフ会議
研究所シニアアナリスト 和田木哲哉 氏
が開催されました。このワーク
会主催のワークショップ
(7月1日)
まず、最悪期を脱したPV市場が迎えようとしている現下の成
ショップは、PV製造装置間ならびにPV製造装置と工場間のイン
長局面が解説された。市場調整局面で各太陽電池メーカーは、材
タフェース標準化がSEMIの欧州地区で先行中であるという現況
料からシステム設置、発電事業までの垂直統合に動いたが、製造
を受けて、
「ある標準に装置や工場が準拠しているか否かでコス
プロセス・装置についてもブラックボックス化や内製化を指
トパフォーマンス面での有利・不利が鮮明に分かれるような、本
向するメーカーが増加していること、国際競争の点からは欧州
来の技術力とは別の原因によって競争力低下が招かれるという
勢が席巻していた海外市場で日系メーカーがシェアを伸ばす可
状況を回避しなければならない」
という危機感に基づいて緊急に
能性が出てきたこと、一部の工程では新興国企業の台頭が著し
開催されました。以下に同ワークショップのハイライトを記します。
いこと、などが詳述された。このような環境下で留意すべきなのが
搬送・通信プロトコルなどの標準化であること、標準化が「競争
障壁」
となり、その結果として
「競争優位の喪失」
につながるケー
スが検証され、装置メーカーが標準化にどう向き合うべきかが
提示された。特にPV製造装置産業の強みと弱みにも言及され、
コストダウンや製造方式変更といったビジネスチャンスの契機が
明確に存在はするものの、その一方で、
「発電→太陽電池製造→
製造装置」
という、例えれば「二階微分産業」
とも言えるような
(特
PV産業構造のシンプル
に半導体製造産業と比較した場合の)
さが脆弱性の要因でもあることが指摘された。
■ PV製造ライン構築における標準化の影響:一橋大学イノベー
ション研究センター教授 江藤 学 氏
各種ある標準の中でも
「インタフェース標準」にフォーカス
図1 SEMIにおけるPV関連スタンダード委員会組織図
(2010年6月現在/グローバルベース)
「設
し、PV産業以外の各産業における事例と考察が展開された。
備
(製造装置)
における標準化活動とは、独自技術のブラックボ
ックス化と、それを取り巻くインタフェース技術公開のパッケ
■ワークショップ全体の動機・趣旨・方向性について:PV Auto-
ージであり、インタフェースの設定次第でブラックボックス領
mation委員会委員長/東京エレクトロン(株) 浅川輝雄 氏
域の囲い込み
(当該各社の得意・不得意領域や内製・外部調達
SEMIスタンダードを含めて、そもそも業界標準とは、見かけ
といった基準での線引きによる
「市場の分断」
)
が実現すると、そ
は「技術仕様」の形をしてはいても本質的には「ビジネス戦略ツ
れと同時に競争領域が限定され、開発競争が先鋭化する。その
ール」
であり、時として参入障壁や業界構造変化要因として作用
結果、一旦参入した事業者が急速に振い落とされ、少数の勝者
し、結果的に業界の成熟化や寡占化を促進させる、
という極めて
が市場を占有する。このため、どこに、いつ、どのようなインタフェー
14
SEMI News • 2010, No.3
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SEMI Standards
スを設定するか、そしてそれをどこまで自らに有利に仕上げるか
は、事業の競争優位を実現するうえで欠かせないツールであ
る」
との前提に立って、インタフェース標準化が起こすビジネス
効果を、半導体製造や液晶パネル部材などの他産業での事例
なども参照しつつ整理された。その上で、基本的に先行メーカ
ーに比肩 できる高い技術力を持つと言われるわが国PV装置メ
ーカーが、先行メーカーと互角に競合し、それを維持するための
ツールとして、
「標準化」
にどのように向かい合えばよいかが示さ
れた。
「標準化はルール作りではなく、むしろ任意規格であるこ
とに重要な意味がある」
「(規格の完成ですべてが完結する
のではなく)できた標準を『使わない』あるいは『使わせる』た
めの方策や、
『標準化を止める』努力がビジネス的には重要」
図2 現在のPV業界の位置づけ
「標準は開発参加者にすら必ずしも公平ではなく、自社の有利
なポジショニングが重要」
「趨勢であるマルチスタンダードへの
れたような「団体(コンソーシアなど)
」による標準化が起こ
対応が重要で、開発段階からの関与がものをいう」などの、簡
り得るか?
潔かつ実務的にクリティカルな指摘がなされた。
・PV分野では水平寡占型で進行するのか?
■ PVの標準化の現状:東京エレクトロン(株)コーポレート事業
・半導体は小型かつ高価であるので一極生産に適しているが、
戦略本部スペシャリスト 村田尚子 氏
PVは大型のため現地生産化しやすい、という性質の差が標準
本稿冒頭で述べた、SEMIにおけるPV分野標準化活動の経
化の特長差をもたらすのか?
緯と地域ごとの活動傾向などが概括された後、
「そもそも標準化
が世界規模でサプライチェインをコントロールし業界シェアに影
・PV分野では、半導体製造分野で見られたような寡占化がそも
そも起こるのか?
響を与える性質のツールである」
という大命題を軸に、300mm半
・半導体製造装置は機能の格差が寡占化のファクターとなった。
導体製造分野の標準化活動からの教訓、つまり、装置サプライヤ
PVでは低コストや高スループットがキーファクターであるよ
から見れば当初は互換性促進や多様性の低減という効用を与え
うだが、どのように達成されていくのか?
てくれた標準化が、ある変節点で業界の成熟化や寡占化を促進
などの、具体的かつ本質的な問題提起で議論が活発に展開した。
させるものとなった「両刃の剣」であること、しかし、結局誰かが
/ 株)アトリエ イシカワ
■ 総括:PV Automation委員会委員長 (
いつか抜く
「剣」であることが解説された。そして、実際に「PV
代表取締役 石川恵美 氏
Automation委員会」分野においても、先行した欧州が業界フレ
と題して総括がなされた。標準化とは
「PV標準化のご利益」
ームワークを作ろうとしている状況であるので、日本の関連企業は
経営資源を最適かつ戦略的に割り当てる指針である、との経営
危機意識を持って委員会活動に参加すべき局面であることが
的視点から全体像がまとめられ、
「自社のコンピタンスを守り、
喚起された。
その外側を標準化することで、ひいては自社の競争基盤を有利
■ PVのFactory Integration(FI)標準化ドラフトの紹介:
にする」
という観点が示され、まさにその場が標準化会議である
■ 日清紡メカトロニクス(株)技術部担当課長 石川 誠 氏
ことが強調されて締めくくられた。
■(株)アルバック 制御ソリューション事業部課長 日山桂一 氏
同委員会における活動の最前線にいる立場から、仮に冒頭
ト」
となり得る標準案を作成する、あるいは、将来のハードウェ
SEMIスタンダード(規格)とは:半導体やFPD製造、太陽光発電
分野などにおける、コンセンサスベースの国際業界自主基準で
す。エレクトロニクス製品製造の源流から最終消費材に近い部分
まで、広範囲な標準化対象をカバーしていることが特色で、現在
12分野、約800のスタンダードが出版されています。
ア刷新に追従できるよう論理と物理を分ける、等々の戦略案が
スタンダード委員会活動へは登録すればどなたも参加可能です
で述べられたような欧州が先行中という状況を放置した場合の
問題点が述べられ、日本側が具体的にどうすべきなのかが示
された。日本としては、先行中の標準案に対して「スーパーセッ
紹介された。
(図2参照)
■ パネルディスカッション:プログラムチェア、講師全員
以上の講演を受けてパネルディスカッションが行われた。
・そもそもPV分野においては、半導体製造分野の標準化で見ら
No.3, 2010 • SEMI News
ので、関心のある方、本稿もしくはPV分野のSEMIスタンダード活
動に関しては下記へお問合せくだい。
SEMIジャパン スタンダード部(奥田)
E-mail:kokuda@semi.org Tel. 03. 3222. 5873
15
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STS Award
「第17回 STS Award」
受賞論文紹介 1
受賞者:NECエレクトロニクス株式会社 高橋 宏通
SoCのテストコストをスケーリングするための設計技術
並列テスト数を増加させることが、最も有効な手段のひとつと
■ 概要
SOC製品のテストコストは増加の一途を辿り、すでに製品コ
なる。特にメモリやMCUでは、適切なDFT設計と端子配置の
ストにおいて無視できないレベルに達している。SOC製品のテ
最適化を合わせて行うことにより、32並列・64並列・・・と、並列テ
ストコスト削減は急務の課題であり、そこに我々テストエンジニ
スト数を増加させてきた。これらの製品はテスト端子数が少な
アのチャレンジがある。我々は劇的にSOC製品のテストコストを
く、並列テスト数を増やすために有効なDFT設計や端子配置の
削減するために、並列テストの並列数を増加させることを検討
最適化を行いやすいため、比較的容易に並列テスト数を増加さ
した。そしてSOC製品での並列テスト数を増加するために、DFT、
せることが可能だった。一方SOC製品では、(メモリやMCU
プローブカード、ATEの3つの側面からの技術開発を行った。
と比較して)
テストに必要な信号端子数、電源端子数がそれぞれ
本稿では、特にウェーハテストにおける、SOC製品でのテスト
100Pin以上と膨大で、かつ端子の物理的配置制約も厳しくて、最
コストをスケーリングするための技術開発と、その効果につい
適化に対する自由度が低い。そのためSOC製品では、品質を保
て述べる。
ちながら並列テスト数を増加させることが容易にはできず、テ
ストコストは高留まったままで、テストコストのス ケーリング
■ テストコストのスケーリング
に成功していない。
プロセスの微細化・高集積化により、LSIの1素子当りの製造コ
ストは減少を続けている。一方で、LSIのテストコストは増加の
■ SOC製品での並列テスト数増加のための技術開発
一途を辿っている。これはChip当りの素子数の増加に加えて、
そこで我々は、SOC製品での並列テスト数増加を実現させる
遅延故障・ブリッジ故障などの故障を検出する必要性が高まり、
ために、DFT、プローブカード、ATEの3つの側面からの技術開
十分な品質を保証するために必要なテストパタンが増加してい
発を行った。
ることに起因する。もし、我々テストエンジニアがこのまま何も
1. DFT技術開発
手を打たなければ、近い将来、1素子当りのテストコストが製造
新DFT技術開発のターゲットは、『より少ない端子で十分な
コストを上回る日が訪れるだろう。その時、LSIの微細化・高集積
品質を保証』である。並列テストでは、Chipの信号端子数の一部
化は、その物理的な製造限界に達する前に、経済的な要因により
だけをATEに接続することになるため、より少ない端子で高品
止まってしまう可能性が高い。我々のなすべきことは、『プロセ
質なテストを実現することが要求される。我々はまず、ウェーハ
スが微細化してもテストコストを削減する』こと、すなわち『テ
テストにおいて並列テスト中針の当たらない端子がOpenな入
ストコストのスケーリング』である。
力になることを避けるため、それらの端子を双方向端子にして、
出力方向にモード制御した。さらに、それらの双方向端子には全
てテストポイントとして観測用SCANFFを挿入し、並列テスト
Background of
Test Cost Scaling on SoC
中針が当たらない端子があっても必要十分な品質を確保した。
また、削減されるテスト端子としては、SCAN入出力端子も例
Test Time & Cost keeps increasing.
外ではなく、SCANチャネル数も削減する必要がある。SCANチ
Test Cost
BridgeFault
N-Detect
SDQL
TransitionDelay
…
TransitionDelay
Fault
1998
SingleStuckAt
Fault
SingleStuckAt
Fault
SingleStuckAt
Fault
1996
Fault
2000
2002
2004
ャネル数を削減した分、SCAN圧縮率を50∼100倍に上げ、内部
SCANチェーン長を短くすることで、1パタン当りのテスト時間
を短縮した。一方で、SCAN圧縮率を上げることにより、十分な
品質を保証するのに必要なパタン数は増加してしまうが、それ
らは並列化による吸収が十分可能なレベルであり、我々はSCAN
2006
2008
2010
Hiromichi Takahashi - SEMICON Japan 2009 - Slide 1
図1
チャネル数を削減しても十分な品質を確保することに成功した。
これらの新DFT技術によって、SOC製品においても、より少な
い端子で十分な品質を保証するテストが可能となった。
2. プローブカード技術開発
■ SOC製品での並列テスト数増加の難しさ
テスト時間を大幅に削減するためには、同時測定数、すなわち
16
新プローブカード技術開発のターゲットは、『端子の物理的配
置制約の緩和』である。従来技術のカンチレバータイプのプロ
SEMI News • 2010, No.3
P16-17_26-03 10.7.22 5:50 PM ページ 17
STS Aword
Break Through for Test Cost
Scaling on SoC
DFT
Probe Card
Reduce the test signals, and
achieved a high-quality test
Eliminate physical arrangement
constraint of pins
Result of Test Cost Reduction
Probe Card
Cost
Total Test Cost
-1.4
%
Test Cost
(Package Test)
-33%
-33
%
Test Cost
(Wafer Test)
-45
%
Loss Cost
+5%
Previous
ATE
8Multi Wafer Test &
4Multi Package Test
Test Cost reduction by 33%!!
High Signal/DPS Pin Counts, and
High Multi-site Efficiency
図2
図3
ーブカードでは、針立て位置やDUT数からくる制限のため、並
我々は、それぞれのDUT配置での、端子の物理的配置制約、1枚
列テスト数を増加させるのは困難であった。そこで、新プローブ
のウェーハをテストするのに必要なコンタクト回数、製品の生
カードには端子の物理的配置制約を緩和し、より多くの信号端
涯所要数とプローブカード価格などを考慮した上で、コスト計
子数・電源端子数を確保することが要求される。テストに必要な
算を行った。その結果、トータルコストミニマムなプローブカー
信号端子や電源端子を確保するため、新たに垂直針技術や
ドとして、8×1タイプのプローブカードを選択した。DUT配置
MEMS(Micro-Electro-Mechanical Systems)技術を適用したプロー
の決定により、ウェーハテストで使用可能な端子数とその物理
ブカードを評価・導入し、端子の物理的配置制約を事実上排除し
的配置制約が生じ、ウェーハテスト時に針を当てる端子数を全
た。その結果、従来のカンチレバータイプでは難しかったSOC
信号端子の約半数に削減した。また、これにより、SCANチャネ
製品の並列テスト数増加に成功した。
ルを従来の32Chから8Chへと1/4に削減した。一方で、高SCAN
3. ATEの技術開発
圧縮率の適用とテストポイントの挿入により、従来とほぼ同等
新ATE開発のターゲットは、『多信号・多電源で高並列効率』
のテスト時間で99%以上の縮退故障検出率を達成し、新DFT技
である。SOC製品の並列テスト数増加を実現するには、より多く
術のコンセプトである『より少ない端子で十分な品質の保証』
(Device Power
の信号端子数、電源端子数が必要である。DPS
を実現した。その結果、本製品においては、8並列テスト適用前と
Supply)Unitが多数搭載されてなお、高い並列効率を実現する
比較して、トータルテストコストの約33%削減に成功した。
ATEであることが仕様となる。そこで、ATEの電源容量・種類の
現在では、新DFTの適用に加えて、垂直針方式プローブカード
強化とピンエレクトロニクスのアーキテクチャ改良を中心に、
の製品適用を順次進めており、従来並列数が平均2程度であった
ATEの仕様策定を行った。実際のATEの実現はメーカーに委ね
SOC製品群において、8並列のウェーハテストまで実現している。
たが、その結果として、SOC製品において並列効率98%以上、チ
ャネル単価従来比50%以下というATEを、メーカーとともにを
実現した。
■ まとめ
我々は、SOC製品でのテストコストのスケーリング行うため
に、ウェーハテストでの並列テスト数増加が可能なDFT、プロー
■ 適用実例
製品適用実例として、パイロット製品における並列テスト適
ブカード、ATEを開発・適用した。パイロット製品において、新
DFTの適用によりトータルコスト33% 削減を実現し、その有効
用によるテストコスト削減効果について紹介する。この製品は、
性を証明した。さらに新プローブカードの製品適用を順次進め、
今回開発した上記新DFT技術と、従来技術であるカンチレバー
SOC製品のウェーハテストにおける並列数増加を実現した。そ
タイプのプローブカードを適用し、8並列テストの実現をターゲ
の結果、従来平均2並列程度であったSOC製品の並列テスト数
ットとした。これは、プローブカードやATE等から来る制約を考
を8並列に引き上げ、SOC製品のテストコスト大幅削減を達成し
慮した上で可能な最大並列数である。8並列テストを実現する際
た。今後さらに新ATEの導入が進み、更なるSOC製品でのテス
に考えられるDUT配置は、8DUTを一列に配置する8×1タイプ
トコストのスケーリング効果を実証していく。
と、4DUTを2列に配置する4×2タイプの二通りがある。この2
一方、パッケージテストでのコスト削減には、更なるテスト端
タイプのプローブカードから、8並列テストに最適で、かつトー
子の削減方法の確立等課題が残っており、SOC製品でのテスト
タルコストミニマムとなるプローブカードを選択する。そこで
コスト削減へのチャレンジはまだまだ続いていく。
No.3, 2010 • SEMI News
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Semiconductor Design
躍進するLED市場とLEDパッケージ関連技術の進展
半導体新技術研究会 代表 / 株式会社元天 代表取締役 村上 元
■ はじめに
1960年代後半に開発された電気を光に変える赤色系の発光ダ
は、1993年に日亜化学社から青色LEDが開発
イオード
(LED)
・緑(G)
・青(B)の3色が揃うこととなり、RBG3
され、赤(R)
色の光を合成した白色LED、青色の光を黄色の蛍光体を通過さ
せることにより、擬似白色など、多用な光を合成することができ
るようになっているが、LED用パッケージ材料や組立装置面で
も日本が材料・装置面からも世界をリードしてきている。
そこで、第32回半導体新技術研究会シンポジウムでは、「次代
を担うLEDパッケージ材料・装置技術」をテーマとして、去る4
月16日に乳業会館
(東京都千代田区)
に集い交流した。白色LED
図1
用パッケージ技術を述べる。
LED素子技術の変遷
■ 切替えが進む液晶テレビへのLED灯採用
LED素子は、白熱電球に比べ低消費電力であり、蛍光灯のよ
ドギャップエネルギーの高い半導体として、シリコンカーバイ
うに水銀などを含まないため、地球温暖化防止に対応した電灯
(GaN)
などの半導体基板が開
ト
(SiC)やガリウムナイトライド
として、白熱電球からの切替えが加速している。中でも、液晶表
発されてきている。
から、よ
示素子のバックライトに使っている冷陰極管(CCFL)
化合物半導体のウェーハ径は、赤色LED(GaAs系)では4イ
り小型薄型への対応としてLED灯への切替えが加速している。
ンチ以上のものが使われているが、青色(GaInN系)では、安価
LEDの高輝度特性を液晶表示と組み合わせることで、演色性の
であることから2インチ径の透明アルミナ基板であるサファイ
高い表示ができることや、電源のON-OFFの切替えが容易であ
ア基板が使われている。サファイア基板は、波長400nmi以下の
ることにより、深みのある黒色を出せることから、色特性を付加
紫外領域での光透過特性が99%以上あり、耐熱性や熱放散性も高
した液晶テレビが、LEDテレビと称して新聞紙上などで紹介され
いことから、青色系などのLED素子の基板材料として使われて
ている。
いる。サファイア基板上にGaInNなどの薄膜半導体層を形成す
これらのテレビ用LED灯は、液晶表示面の枠部に青色 LEDと
ると、格子定数の不整合が起こり光特性などへの影響が高くな
黄色の蛍光体とを組み合わせたLEDを数百個配置し、導光板を
るので、GaNなどの格子定数整合するためのバッファー層が形
通して液晶表示面の下から前面部に光を誘導する方式と、液晶
成されている。
表示素子の裏面のRGBで組み合わせたLED点光源をマトリッ
電源から供給される電気エネルギーが全て光エネルギーに変
クス状に配置して点灯する方式とがある。後者は、部分的にLED
換されることが望まれるが、一部が熱エネルギーに変換される。
のON-OFFができることから、ローカルデミング方式とも呼ば
この変換効率を量子効率と呼んでいるが、一般に熱に対する
れ、高い色再現ができるとされている。
LEDの発光特性の劣化は顕著であり、熱影響を少なくして発光
■ LED素子形状と高輝度化
効率を高める工夫がされている。ひとつはLED素子の小型化
LED素子からの光を多く取り出すために、高輝度化が進んで
(0.15mm□)である。小型化素子をMCM実装し、発生する熱
いて、150ルーメン/W以上の輝度の素子も開発競争が加速して
(Pals Width Modulation)
制
はパルス波長の電圧を制御するPWM
いる。図1にLED素子開発の変遷を示す。
御のマイコン素子やLED素子をドライブするLEDドライバー素
LED素子のチップサイズ寸法は0.3mm□程度であり、光の取
子などを組み合わせて、高発光効率に向けたシステム構成がな
出し効率を高めるために、素子の中にテクスチャーと呼ばれる
されている。
凹凸反射構造を採用したり、素子の断面形状を台形にしたりす
■ 白色LEDのパッケージ構造
る工夫もされているが、更なる高輝度化を目的として複数の素
白色系LEDのパッケージ構造の概念図を示す。熱放散性の高
子を修集合したMCM(Multi Chip Module)構造や、よりバン
いシリコン系やエポキシ系の銀ペーストを用いて、プリント基
18
SEMI News • 2010, No.3
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Semiconductor Design
図2 白色LEDパッケージ技術の課題
図3 白色LED灯の内部構造
板や銅製のリードフレームにLED素子をダイボンドする
(図2
はプリント基板の例)
。ダイボンド材料は200℃程度の温度で樹
脂硬化させた後、金線ワイヤーボンディングし、セリウム(Ce)
(Yttrium Aluminum Garnet)溶液をポッティングし、溶
入りYAG
剤硬化させ、その上にシリコン系の透明樹脂をコーティングす
る。ダイボンディングでは、電気特性や信頼性面から、Agペース
ト材のLED素子側面への這い上がりを少なくすることや、LED
素子の下のAgペースト層を均一に塗布することが求められる。
YAG溶液塗布では、均一な白色光への変換のために、均一に厚み
のある塗布が必要である。
白色LEDの発表は、1996年のエレクトロ二クスショーに日亜
化学が出展したのが最初である。青色LEDは、有機金属化学蒸
図4 小型白色LED灯の組立技術と電源回路小型化
が開発されたことにより開発が加速されてきた
着法
(MOCVD)
灯では、8行×7列の素子をWB後、一括して蛍光体入り樹脂を
が、白色LEDの開発は世紀の大発明であったことを強調したい。
コーティングする方法が採用されている。組立装置・放熱配線基
しかしながら、パッケージ品質面で見ると、青色LEDの波長は、
波長が短く樹脂を形成している樹脂母材を光劣化させることが
板の改良が進行している。
■ LED素子のダイシング技術
知られている。特に樹脂のベンゼン環などの芳香族系樹脂(エ
サファイア基板は硬いので、一般ICのシリコン基板のような
ポキシ樹脂)
や、二重結合部を持つ樹脂は劣化が早い。目標とす
薄いダイヤモンド砥石ではなく、レーザーダイシング法が用い
る4万時間以上にわたって光劣化の少ない樹脂として、二重結合
られている。レーザーダイシングでは、表面から溶融して切断す
を持たないシリコン系の樹脂が採用されている。しかしながら、
る方法のほか、レーザー光の焦点を基板内層に収束させ、熱によ
シリコン樹脂は、パッケージ基板やLED素子との密着性に課題
る膨張応力を利用して切断するステルスダイシング法と呼ばれ
があり、シリコン樹脂にエポキシ樹脂などを添加したハイブリ
る、浜松ホトニクス社が開発した切断方法が採用されている。
ッド型の樹脂も検討されている。加えて、樹脂カバーレンズの寿
■ 終わりに
命も課題になっている。
■ LED灯の構造と組立技術
LEDパッケージ技術と関連して、LED灯は、商用周波数からデ
ジタル電源により所定の電源を作り出す電源回路の小型化が図
図3にはシャープ社が販売しているLED灯、図4には東芝ライ
られている。電源回路部は、LED灯中心部の放熱フィン部内部の
テック社が販売しているLED灯の内部構造例を比較して示す。
空洞部に収納されている。この電源回路部では、小型実装ができ
図3では6個のLEDデバイスがアルミ放熱基板に実装されてい
て電圧変換ロスの少ない回路の工夫も進んでいる。
るのに対して、最近は図4に示すように、多数個のLED素子を放
今後は、LED灯の高帯域周波数を用いた可視光を使った電磁
熱性の高いセラミック基板に実装後、1.0mm厚みのアルミ放熱
波信号を利用して、大容量無線LANなどへの応用が期待されて
基板にシリコン樹脂で接着したり、東芝の例に見るように、
いる。LED技術とLSIなど他の半導体技術との融合技術により、
1.5mmと厚いアルミ放熱に直接実装したりしている。このLED
新たな新製品が誕生することを期待している。
No.3, 2010 • SEMI News
19
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EHS
RoHS Recastを巡る最近の動きと対応
株式会社堀場製作所 ブラッセル駐在事務所 小山 師真
日々状況が変わり行く世界:
RoHS Recastができるまで:
6月2日時点での主な論点に対する状況をまとめたものを別表
はじめに、現在審議が行われている案件について書かせてい
ただきますので、本号が発刊されるころには状況が変わってい
に記します。
そこに記載のとおり、現在有効な公式/非公式文書は、①欧
ることも予想されます。常に最新の情報に留意していただきま
州委員会提案、②欧州議会環境委員会で採択された修正案、
すよう、お願い申し上げます。
そのようなお断りをしなければならないほど、EUの立法プロ
③理事会の議長国提案、の3つとなります。
本論に入る前に、EUではどのように法律が作られるのかにつ
セスにおける状況変化の速さは凄まじいものがあります。すべ
てに対してウォッチし続けることは難しく、どうしても関心があ
いて、簡単に触れさせていただきます。
欧州での立法手続きは大きく2つ存在し、今回のRoHS Recast
るところを中心に見ていくことになろうかと思います。
現在私は、ベルギーのブラッセルにある在欧日系ビジネス協
の環境委員会担当事務局を、会社業務の傍ら兼務
議会
(JBCE)
のように法律を策定する場合には、
「共同決定手続き」
と呼ばれ
る手法 によって審議 されます。
1)
させていただいており、そのような立場から、自社の関心にとら
共同決定手続きの流れについては、欧州委員会資料 でご確
われず、可能な限り業界全体の関心に注意を払うよう心がけて
認いただけますが、基本的には、唯一共同体法の起草権限を持
おりますが、めまぐるしく変わる状況は、まるでファッションのト
つ欧州委員会が法案を作成し、その後欧州議会 と理事会 にて
レンドを追いかける若者のようでもあります。
審議・修正が行われ、両者が合意することで法案が成立します。
Issues
(reference to proposal)
Open Scope(Art. 2.1)
(Enlargement to all
electrical and electronic
equipment)
Exclusions from an Open
Scope(Art. 2.3)
Review of the exclusions
Scope
(Inclusion of cables, consumables and accessories)
Definition of “dependent”
(Art. 3)
Priority Substances
(Art. 4.7, Annex III)
New Banned Substances
(Art. 4.1, Annex IV)
Nanomaterials
Criteria for Exemptions
from Substance Ban
(Art. 5.1)
20
2)
3)
Commission
Commission’s proposal(3.12.2008)
Parliament
EP Environment Committee voting result(2.06.2010)
Council
Presidency’s compromise text
(01.07.2010)
No
Yes
Yes[Four MS are not supportive.]
(a)National security related
(b)Specifically designed for another
type of equipment
(c)Multi-functional / non-commercial
None
(a)National Security related
(b)Specifically designed for another type of equipment
(aa)means of transport for persons or goods;
(ab)large scale fixed installations, except monitoring and control
equipment;
(ac)large scale stationary industrial tools, except monitoring and
control equipment;
(ad)specifically designed for the purposes of research and
development
(ae)non-road mobile machinery intended exclusively for
professional use;
(af)equipment designed to be sent into space;
(cd)renewable energy generation technology intended to be
used in a system that is designed, assembled, and installed
for permanent use at a defined location to produce energy
for public, commercial and residential application
By 31 December 2014 at the latest, the Commission shall
submit a report examining the scope of the Directive to the
European Parliament and the
Council, as mentioned in article (
2 3);
No
Undescribed
Yes
(aa)‘dependent’ means that the electrical and electronic
equipment needs electricity to fulfil at least one of its basic
functions
(a)National security related
(aa)
Equipment designed to be sent into space
(b)Specifically designed and installed for another
type of equipment
(ca)Large-scale stationary industrial tools except their
monitoring and control instruments;
(cb)large scale fixed industrial installations, except
their monitoring and control instruments;
(cc)means of transport for persons and goods
including cars, buses, trucks trams, trains, ships,
aircrafts but excluding electric two wheel vehicles;
(cd)non-road mobile machinery as defined in
Directive 97/68/EC
(ce)active implantable medical devices;
(cg)photovoltaic panels intended to be used in a
system that is designed, assembled and installed
by professionals for permanent use at a defined
location to produce energy for public,
commercial and residential applications
All the above exclusions shall be reviewed by the
Commission before 2020 with a view to proposing
their possible inclusion within the scope of the
Directive if appropriate.
Yes, but Cables only.
“dependent” means that the electrical and electronic
equipment needs electric currents or electromagnetic
fields to fulfil at least one intended function;
Four
Around 30 subsutance groups
Four
None
Nanosilver, Carbon nanotubes
None
None
Containing nanomaterials should be labelled
Manufacturers should be obliged to provide safety data to COM
None
・4 years maximum validity period
・Scientific or technical impracticability
・Little availability or reliability of
substitutes
・More negative consumer safety or
socio-economic impacts due to
substitution
・Maximum validity period 4years for Cats 1-7, 10, 11.
・Maximum validity period 8years for Cat 8 and 9.
・Technical impracticability
・Little reliability of substitutes
・More negative consumer safety impact due to substitution
・Maximum validity period 6years.
・Scientific or technical impracticability
・Little availability or reliability of substitutes
・More negative consumer safety impact or
disproportionately negative socio-economic impact
due to substitution
SEMI News • 2010, No.3
P20-21_26-03/43L 10.7.22 5:47 PM ページ 21
EHS
日本における立法手続きと大きく異なる要素としては、最初
に欧州委員会によって提案された法案に対し、欧州議会・理事
の定義の問題や、直ちに禁止する根拠、さらにイノベーションへ
の影響などが業界で懸念されています。
会によって変更が加えられることが多いことです。
RoHS Recastの場合も例外ではなく、欧州委員会提案に対して
生産設備などの大型産業設備の扱い:
339件に上る修正意見が議員から出されました。理事会側も2009
特筆すべきこととしては、これまでカテゴリー6から除外され
年から議論が引き続き行われている状況で、議長国折衷案が
るものとして明記されていたLSITが指令本文で明記されること、
幾度となく提示されています。
そしてこれまで指令では一切言及がなかったFixed Installationの
除外が明記されたことです。
RoHS Recastの論点:
2010年6月時点までの大きな論点として、以下6つが挙げられ
ます。
(Open Scope)
① すべての電気電子機器をRoHSの対象に含める
SEMIにも関係が深いこれらの除外規定は、半導体・液晶パネ
ル・PVパネル製造装置などのRoHS指令での扱いを決める上で、
極めて重要 な項目です。
これまで各企業は、LSITを比較的広く解釈することで、いわゆ
② RoHS指令から除外される機器の特定(Exclusions)
る生産設備類がRoHS指令の対象には当たらないと考えてきた
③ 禁止物質を追加する手法(Methodology)
傾向があり、現在の法案審議の状況は概ね良い方向と考えるこ
④ 禁止物質の追加(Immediately Ban)
とができると思います。
⑤ ナノ規制の追加
⑥ RoHS指令から適用を除外される用途(Exemptions)の見
しかし、LSITおよびFixed Installationの除外について、カテゴリ
(Monitoring and Control Instruments)
には、こ
ー9にあたる機器
直し期間と認定基準
の除外を適用できない文言が付記されている点を、どのように判
①の論点については、かなり早い段階から議論が開始され、欧
断するかは問題として残っています。これまでもたびたび、カテ
州議会・理事会双方とも、すべての電気電子機器をRoHSの対
ゴリー6とカテゴリー9の重複問題が指摘されてきたところです
象に含める方向で一致している状況であり、これまでのRoHS指
が、難しい判断を迫られていると考えられます。
令の対象製品範囲が拡大されることは必至 です。
その上で議論の中心は②となっており、とりわけ、これまでカ
最後 に:
から除外されるものとして明記されてい
テゴリー6(電動工具)
繰り返しになりますが、2010年6月時点での状況を基に原稿
た据付型大型産業用工具
(LSIT:Large-scale stationary industrial
を執筆させていただきましたので、本号が発刊されているころに
tools)
、および太陽電池をはじめとする再生可能エネルギー機器
は、状況が異なっていることと思います。ぜひ、最新の情報に基
の扱いが焦点です。
づいてご対応を判断されることをお勧めします。
禁止物質については、欧州議会 緑の党を中心に、数種類の
最後に、欧州規制は、意図的に曖昧なところを残すことが文化
直ちに禁止すべき物質が提案されていましたが、基本的にそれ
でもあります。指令でクリアーにならなかった部分は、法的拘束
らは将来の禁止候補物質としてリストすることで妥協が図られた
力がないにしても、欧州委員会が発行する
(予定)
のFAQなど
模様です。すなわち、将来の禁止候補物質にREACH規則の
で明らかにしていくことになろうかと思います。1社ではなかな
SVHC(高懸念物質)
や砒素などが リストされることで、6月2日に
かそれらの対応が難しい面も多く、業界活動を通じた対応が求
採択されました。理事会側では直ちに禁止すべき物質を提案し
められることと思います。
ている加盟国は少数に留まっており、禁止物質を追加する手法
が論点となっています。
昨今、中国のみならずインドなどでもRoHS指令が広がりつつ
ある状況です。各国事情に応じて法は変化していますが、規制
ナノ規制は最も悩ましい論点のひとつです。当初の欧州委員
の根本は欧州発である、という点は揺るがない事実でもありま
会提案には盛り込まれておらず、さらに理事会でも議論されてい
すので、そのような観点からも、欧州規制をモニターしていかれ
ない状況ですが、6月2日の欧州議会環境委員会で採択されま
ることをお願いしたいと思います。
した。ナノの安全性考慮は昨年の欧州議会で決議され、最近で
規制案などでも検討されています。
は機能性食品
(Novel food)
欧州議会環境委員会で採択されたナノ規制は、①ナノシルバ
ーとカーボンナノチューブを禁止物質として指定、②その他の
ナノについては届出と表示の義務化、となっています。ナノ物質
No.3, 2010 • SEMI News
<注釈>
1)http://ec.europa.eu/codecision/stepbystep/diagram_en.htm
2)直接選挙によって選ばれた736名の議員によって構成。人口割
合によって加盟国あたりに配分される議席数が異なる。
3)EU加盟27カ国の政府代表によって構成。
21
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MEMS
MEMSが変える日本のハイテク産業
野村證券株式会社 金融経済研究所 企業調査部 エレクトロニクス産業調査室 シニアアナリスト 和田木 哲哉
1. MEMSとは
MEMSとは、半導体微細加工技術を用いて、可動部品等の機械
構造と電子回路等を集積したシステムをシリコン基板上などに
製作するもので、高付加価値製品の主要部に使われる。
MEMS製品の例としては、用途が限定されているが、小型モー
ター、ジャイロセンサーなども含む加速度センサー、最も大きな
用途のひとつであるインクジェットヘッド、タイヤなどに使わ
れている圧力センサー、最も成功したMEMSといえるDLP、期待
が大きいバイオチップなどがある。
DLP Board
つある。当初はFormFactor社の独占だったが、2005年に日本マイ
Processor
Memory
VS(垂直スプリング接軸型プローブカード)
の外観
(非MEMS型)
アドバンスト・プローブカード
(出所:日本電子材料ホームページ)
クロニクスが事業化に成功して売上げを大きく伸ばし、日本電
Projection Lens
子材料も2010年は30億円程度の売上げを目指す。韓国企業も売
上げを拡大している。
そのほかの市場は少量多品種生産の用途向けであり、市場規
DMD
模は小さい。
Optics
Shaping Lens
3. MEMSの問題点
Color Filter
Screen
Condenslng Lens
Light Source
DLPデバイス
(出所:Texas Instrumentホームページ)
MEMS市場がブレークしないのは、さまざまな問題を抱えて
いることにあるが、根源的な問題点として挙げられるのは、一部
を除いて少量多品種であり、大企業が取り組むのになじまない
こと、製造工程は複雑で材料もプロセスもノードも多様である
LSIが、プロセッサによる「信号
こと、期待価格は安価にもかかわらず、オーダーメイド品が多く
処理」、メモリによる「記憶」の機
高コストであることが挙げられる。しかし、現状の市場規模は小
能を主に果たしてきたのに対し、
さいものの、潜在性が高い市場であり、我々はMEMS市場を軽視
MEMSは外界との「インターフェ
すべきではないと考えている。
イス」の役割を担うことができる。
しかもセンサが処理するような
4. MEMSによる新市場創出の期待
インク ジェットヘッド
信号だけではなく、 エネルギー
(出所:コニカミノルタホームページ)
産業レベル、国家レベルでは、MEMSは、半導体や液晶のよう
を生み出したり、 液体など実体
な製品として捉えるのではなく、核融合、超伝導、カーボンナノ
のある物質の流量などを制御したりできるため、既存のLSIとは
チューブのような、有望基礎技術として考えるべきであろう。
比べ物にならないほど、多様な機能を持ったデバイスを実現す
MEMSの特徴は小さいことである。小さく作ることでいろいろ
ることができる。
なメリットがあり、そこから新しい市場を創出する可能性があ
る。また、半導体製造技術を応用しているので、性能のばらつき
2. MEMS市場の概要
現在のMEMSの市場規模は8,000億円前後と考えられる。市
がないものを安く大量生産できる。
寸法を小さくすることによって、使用材料を少なくでき、材料
場の85%程度を、センサー、インクジェットヘッド、DLPが占める。
コストに対する付加価値の比率を高められる。結果、材料コスト
近年、MEMSを応用した半導体用プローブカード市場が急拡
の変動による利益の増減の影響を抑えられる。小型化した部品
大しており、非MEMS型のプローブカードを急速に置き換えつ
は、高精度な制御、測定が可能になる。この結果、MEMS化したセ
22
SEMI News • 2010, No.3
P22-23_26-03 10.7.22 5:46 PM ページ 23
MEMS
部材のコンパクト設計という点では、省スペース化、省力化
1)
小さいので高精度 → センサ、
インクジェットのプリンタヘッド
2)
反応効率の向上 → バイオチップ
というSiP同様のメリットが得られる。スペース、電池容量に限り
があるデジタル家電向けデバイスとして有望である。また、携帯
3)
機構の小型化 → リチウムイオン電池の数十倍のエネルギ
ー密度を持つマイクロガスタービン
4)
部材のコンパクト設計 → 携帯型デジタル家電用SiP MEMS
電話でゴルフの素振りができるものや、血圧計付腕時計なども
発売されていたが、いずれもMEMSが内蔵されている。デジタ
ル家電の高機能化と差別化の武器として、MEMSが活用できる。
MEMSの特徴と応用範囲 (出所:野村證券金融経済研究所)
5. 半導体との相互作用
家庭用インクジェットプリンタによる
写真印刷
(出所:キヤノンホームページ)
ンサーやインクジェッ
MEMSは、既存のデバイス技術開発を加速する効果も期待で
トヘッドは、半導体産業
きる。半導体各社は、微細化の進展とは別に、チップまたはウェ
の技術進化に後押しさ
ーハを積層する三次元実装技術を研究しており、その実用化が
れる形で、技術進化する
MEMSの要素技術の活用で加速できる可能性がある。MEMS
ことができた。
デバイス製造のインフラが、三次元実装デバイスを安価に量産
インクジェットプリ
するための手段として生かせることになる。現在、TSV(貫通
ンタはこの10年で長足
電極型三次元実装)
が大手メモリメーカーで実用化されているが、
の進歩を遂げ、制御用の
TSV用エッチング装置は、MEMSのものをベースに開発されたもの
ASICの技術進化もあっ
が少なくない。
て 、 今や写真並みの画
質のカラー画像を高ス
ピードで印刷することが可能となった。インクジェットプリン
6. MEMSによるビジネスモデルの強化
半導体製造装置メーカーによるMEMSの活用法は、製造をブ
なっせん
ト技術は、産業分野にも幅広く応用されており、捺染、自動車の
ラックボックス化できることであろう。自社のMEMSをキーパ
内装、家具、液晶製造プロセス、屋外広告に使用されている。
ーツとして半導体製造装置に絡ませることで、コピー製品対策、
また、容積を小さくすることで、液体の反応効率を高めること
ができる。この特性を利用したのはバイオチップである。
リバースエンジニアリング対策ができ、また、消耗品とMEMSを
合体させることで、高収益な消耗品ビジネスへのサードパーテ
ィーの参入を防止できる可能性がある。ただし、独占禁止法との
絡みには注意しておく必要があろう。
7. 日本ハイテク業界への影響
以上、述べてきた通り、MEMSを完成された製品の市場として
見ると、あまり魅力的には見えない。MEMSは発展性に富んだ基
礎技術であり、国家レベルでは製造業の競争力強化と新産業の
小型化による反応効率の向上 (出所:野村證券金融経済研究所)
創出力を高め、企業レベルでは自社製品の差別化要素となり得
る、長期視点と、大局観を持って育成すべき技術であると言える。
メカニカル機構を小
型化することによるメ
リットもある。マイクロ
ガスタービンを小型化
することで、燃料の使用
効率は大型のガスター
マイクロガスタービン
(出所:Wikipedia)
ビンに対して劣るもの
の、熱密度では、リチウ
ムイオン電池を大きく上回るものが製造できる。小型で高出
MEMS関連セミナーのご案内
SEMIジャパンでは、セミコン・ジャパン会期中に開催される
STS(SEMIテクノロジーシンポジウム)
に、今年もマイクロシス
テム/MEMSセッションを設けます。
「MEMS成功学―その事例と技術―」
と題し、材料技術、プロセ
スからアプリケーション、市場動向まで、国内外の第一線で活躍
する講師陣の講演を予定しています。
詳細は順次Webサイトにてご紹介します。ご期待ください。
力のエネルギー発生源として有望である。
No.3, 2010 • SEMI News
23
P24-25_26-03 10.7.22 5:45 PM ページ 24
Innovation Stories
開発秘話:CCDイメージセンサ
元ソニー株式会社 常務 半導体事業本部長 工学博士
■ CCDイメージセンサ発明のころ
越智 成之
■ 日本企業の活躍
CCD
(Charge-Coupled Device)の発明者Willard BoyleとGeorge
CCDにノーベル賞との発表の翌日、日本経済新聞2009年10
E. Smithが、2009年度ノーベル物理学賞を受賞した。心から祝福
月7日朝刊は「日本企業陰の立役者」と報じている。その記事
を贈りたい。Boyleはカナダ海軍で活躍した後、持続動作するル
を要約すれば、「ソニーは70年代にCCDの開発に着手、半導体の
ビーレーザを発明。Smithもアメリカ海軍で活躍した後、レーザ
製造法などを改良して画質や感度を大幅に高め、解像度の飛躍
の研究者となっている。彼らはベル電話研究所を退職した後も
的向上に成功。85年に25万画素のCCDを搭載した初の8ミリ
海を愛し、筆者がコンタクトをとったときも、Boyleは日々カナダ
ビデオカメラを発売した。カシオ計算機やキヤノンなども90年
の海に潜り、Smithは南太平洋をヨットで航行中であった。
代にデジタルカメラを製品化。オリンパスは85年にCCD搭載
時代背景として、1960年代はコンピュータ技術が著しく発展
し、そのメインメモリの性能、コストの改善に注力。ベル研でも
の内視鏡を開発」と記されている。
■ 研究ターゲットの設定
1967年、磁気バブルメモリが開発された。1969年当時、磁気部門、
筆者は、1970年にソニーでCCDの研究開発を始めた。後日、
半導体部門を統括していたJack Mortonは、磁気バブルメモリと
MBA、Management of Technology(MOT:技術経営)やジャーナ
のシナジーで半導体メインメモリを開発するよう、BoyleとSmith
リストの方々から、「CCDというダイアモンドをどのようにして
に指示したと言われている。彼らは1日(2時間以内とも)で
見つけたのか?」という質問をしばしば受けた。しかし、「石こ
CCDを発明した。ノーベル物理学賞が、高度に理論的な深い洞
ろをどのようにして至宝にしたのか?」と聞くのが真相に近い。
察や独創性とともに、永年にわたる苦闘の研究開発の結果によ
1969年に発明は瞬間芸で成し遂げられたが、1980年の世界最
る受賞が多い中で、CCDは言わば瞬間芸による成果と言える。
(ソニーXC-1)
の商品化、1985年のCCD
初のCCDカラーカメラ
メインメモリをターゲットにしたCCDの発明も、1970年、
カムコーダ
(ソニーCCD-V8)
まで、日本の技術者はそれぞれ、10
ISSCCで発表されたHoneywell/Intelの1Kbit MOS DRAMが主役
年、15年間の死の谷と呼ばれる苦闘の商品開発を経験した。
に躍り出て、その目的を失う。当時、ベル研の親会社は撮像管な
当時のソニーはいかなる状況にあっただろうか。1968年にト
どによるテレビ電話の開発に熱中。しかし、約5億ドル(1,500
リニトロンカラーテレビを発売。1969年にはU-matic VTRの規
億円以上)
もの開発投資の後、1972年撤退に至り、ベル研のCCD
格を統一、1975年のBetamax発売に向けて家庭用VTRの商品開
はイメージセンサとしての道も断たれた。アメリカの主たる企
発に集中。ビデオカメラの市場はVTRの3%産業規模と言われ
(MBA:経
業で、技術経営者からMaster of Business Administration
ていたが、筆者はVTRの次は未開拓の家庭用ビデオカメラ市場
営修士)
に権力が移行し、当時の経営判断に多くの技術的誤りが
だと狙いをつけて、1970年CCDの研究開発を始めた。学生時代、
あったと言われている。本社機構による行き過ぎた企業統治、過
エサキダイオードをソニーに買いに来て、入社。世の中で扇情的
剰な垂直統合、長期ビジョンを持たない短期間での利益回収な
に扱われている半面、ソニーでは既に開発を断念。エサキダイオ
どが指摘されている。テレビ電話は、市場の誤判断、回線投資の
ードの革新的応用商品がなかったそうだ。CCDで同じ轍を踏ま
不足、画像圧縮、撮像素子技術の不足、顧客クレームなどで打撃
ないよう、社内で応用商品のアンケートをとり、同一組織内で
を受けたようだ。
CCDデバイスとビデオカメラシステムの両輪を同時開発するこ
■ CCDイメージセンサの技術的背景
とにした。また、8画素、64画素の画出しを行ったが、嬉しさより
CCDが1969年に発明され、1970年に発表される以前に、時代
も画質の酷さに驚き、商品開発に最低10年はかかるという印象
背景がCCDイメージセンサやビデオカメラに技術的影響を与
を受けた。そして、低照度での画質最優先というターゲットを立
えた。
て、ランダムおよび固定雑音との長い戦いが始まった。幸い、こ
セルロイド・ロールフィルムは1889年に商品化。最初のMOS
の考えは、未だにソニーのイメーセンサに受け継がれ、画質の良
構造は、1925年から1928年にかけて特許出願。最初の蓄積型撮
さを誇っている。CCDは半導体の欠点がそのまま理論通り画質
像管は1930年から1933年にかけて開発。電荷転送の概念は1948
に現れる。この面白さに熱中し、絶望的で長い研究開発期間では
年に示され 、1967 年にはバイポーラ電荷転送素子を報告。
しばしば救いになった。結晶起因の固定欠陥を抜本的に改善す
Bucket-Brigade Device(BBD)
は、1969年、1970年に発表された。
るために、石英るつぼから不純物や酸素の引き込みを抑制する、
24
SEMI News • 2010, No.3
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Innovation Stories
磁界をかけてシリコン単結晶引き上げを行うMCZ法が考案さ
カ」を開発した。もう写真フイルムやフイルムカメラは要らな
れた。不純物拡散ではなく、 原子炉で素粒子を打ち込み 、
いとセンセーショナルな報道がされた。イメージセンサ特許は、
transmutation dopingによる純度の高い不純物発生などを、島田孝
この時期からフイルム写真3社からも出願が急増した。
さんたちが実用化。生産には海外の原子炉を使用した。また、画
■ CCD8ミリカムコーダの商品化
素効率を上げるために、画素の市松配列、蛇行読出し構造を考案、
当時のCCDは、固定雑音、歩留り、解像度、縦輝線状偽信号「ス
実証。筆者らが発明した、等価残像を半減したフィールド蓄積イ
ミア」など、多種多様の問題点を抱えていた。CCDの画期的な
ンターライントランスファ
(IT)CCD、汎用的な可変速電子シャ
画質向上に伴い、撮像管で商品化計画を進めていた8ミリカムコ
ッタ付IT-CCD、スミアを1/100に改善した可変速電子シャッタ
ーダは急遽CCDに変更され、1985年1月、CCD8ミリカムコー
付放送、映画制作用FIT-CCD、静止画用垂直解像度倍増CCDな
ダ「CCD-V8」を商品化できた。
どが、後日次々と主要特許成立となった。
■ 航空用CCDカラーカメラの商品化
研究開始の10年後、1980年になってようやく成果が出始めた。
事業本部トップの河野文男さん、高橋昌宏さん、清木正信さん
(現㈱バイテック代表取締役社長)
が中心になり、経営革新を断
行、ビジネス環境が整った。
1976年、アメリカ上院公聴会でロッキード事件が発覚、丸紅―田
1985年3月にCCD事業部が発足し、本格的なビジネス展開を
中角栄首相(当時)への5億円贈収賄ルートが解明され、全日空
開始。1985年9月にはCCD事業部長として、筆者は岩間社長の
はロッキード社トライスターから、ボーイング社スーパ
(ANA)
墓前で、「月産10万個体制を完成し、世界市場の90%以上を占有
ージャンボB747に機種変更した。搭乗客に外界を見せるサービス
し、年間売上高見込みは約150億円」と報告できた。
として、当初撮像管カメラを予定していたが、B747の狭いコック
■ 液晶ビューファインダの開発と商品化
ピットには入る余地がなく、CCDカラーカメラの開発依頼をいた
CCDカムコーダのビューファインダ(VF)
は依然として白黒
だいた。1980年1月、B747への搭載を新聞発表し、世界最初のCCD
ブラウン管で、1983年に液晶VFを開発した。しかし、残念にも開
カラーカメラ「XC-1」を商品化した。衝撃テストなどCCDには
発禁止となり、1989年に解禁された。本社人事に無謀な求人を行
100Gをかけ、テスト法の規定もない運輸省航空機仕様承認試験に
ったが、水嶋康雅人事部長が顔を見に来られ、CCD事業部への別
無事合格させた。プロセスは困難を極め、厚木工場のCCD専用ラ
枠、大量配属の英断となった。この生産技術は、高温ポリシリコ
インで連日連夜作り続け、1年がかりで必要な52個のCCD
ンプロジェクタ、低温ポリシリコンVF、ディジタルシネマの
「ICX008」を完成させた。歩留りは%表示でなく、100万分率
LCOSや有機ELテレビ駆動へと発展した。
の良品出現率で表現した。1973年11月に、岩間和夫副社
(PPM)
■ 技術革新の継承
長から指示された5年での商品化は、6年2ヵ月で実現できた。
その後CCD技術はCMOSセンサにも引き継がれ、同僚、後輩
また、「XC-1」のCCD出力のフロントエンドで撮像信号をAD
たちの挑戦でソニーにおける技術革新が続いている。1981年
変換し、全デジタルカラーカメラを開発。デジタルカメラの先駆
CCDプロセスデバイスシミュレーションの開発、1984年 暗信
性が評価され、IEEEよりOutstanding Papers Awardを1981年に受賞
(HAD)構造の実
号を1/10に改善したHole Accumulation Diode
した。
用化、1986年オンチップカラーフィルタの実用化、1989年 縦構
■ CCDカラーカメラ一体型8ミリビデオと電子スチルカメラの開発
の実用化、1989
造を容易にしたメガイオンインプランタ
(MeV)
1980年にCCD8ミリカムコーダの原型「ビデオムービー」を
開発した。Eduald Rhein Preisをベルリンで受賞。
翌1981年にはデジカメの原型、CCD電子スチルカメラ「マビ
年オンチップマイクロレンズの実用化(1994年エミー賞受賞)
、
1990年 High Definition( HD)用 200万画素 CCDの開発( 1991
年エミー賞受賞)
、2004年CMOS読出し回路の共有化技術、そし
て2006年 高速度CMOSイメージセンサ、2008年開発
の高感度裏面照射CMOSイメージセンサは圧倒的な
商品価値を誇っている。成功の要因は、面白い仕事、絶
え間ない独創性、組織のダイナミズムといったところ
か。イメージセンサは技術、ビジネスともに、依然と
して日本が世界をリードしている。
<参考文献>
1)
越智成之「イメージセンサのすべて」
ビデオムービー
(写真左)
とマビカ
(写真右)ソニー
(株)
発表資料より
No.3, 2010 • SEMI News
工業調査会 2009年11月10日初版第2刷
25
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Market Report
半導体メーカーは投資計画をさらに上方修正
−2010年のファブの投資額は117%増まで拡大−
SEMI 市場調査統計部門 マネージャー Christian Gregor Dieseldorff
今年の半導体前工程ファブの設備投資額が前年比倍増となっ
ても、驚くことではありません。このたび発行されたWorld Fab
億ドル
25
Forecast最新レポートによると、ファブの2010年の投資額成長率
120%
LEDファブ
その他のディスクリート
LEDファブのシェア
20
は117%に達しています。現在でも、投資計画のさらなる増額が発
100%
80%
表されるのではないかとの噂が複数浮上しており、成長率がさ
15
60%
らに上昇する可能性もあります。しかし、こうした急成長には、
10
懸念の影が差す恐れもありそうです。
40%
表1に、ディスクリートを含む場合と含まない場合の投資額を
5
20%
まとめました。建設費は、一般的に総設備投資額の15∼20%程
0
度となります。
■ ディスクリート設備投資の中ではLEDファブが割合を増やす
2007
2008
2009
2010
2011
0%
グラフ1 ディスクリートおよびLEDファブの世界投資額
出典:SEMI World Fab Forecastレポート(2010年5月)
市場が急成長を始めています。米エネルギー
固体照明
(SSL)
「2年前には、国際照明展LIGHTFAIR
省のJim Broderick氏は、
で固体照明が占めていたのは10%ほどにすぎなかったが、今
ブに対する投資が急増しています
(グラフ1)
。2006年の時点で
と述べています。
年は製品の75%が固体照明だった」
は、ディスクリートファブ全体に占めるLEDファブの投資比率
実際に、SEMIのWorld Fab Forecastレポートでも、LED専用ファ
は約40%でしたが、2010年と2011年には90%かそれ以上に増加
することが予想されます。こうした投資額は、メ
表1 ファブ世界投資額(建設費および装置購入費)の推移、百万米ドル
ファブ設備投資
ディスクリート*含む
前年比%
ファブ設備投資
ディスクリート*抜き
前年比%
モリやファウンドリのメガファブと比較できる規
2007
2008
2009
2010
2011
$46,559
$30,931
$16,339
$35,514
$42,035
11.5%
−33.6%
−47.2%
117.4%
18.4%
$45,290
$29,694
$15,554
$33,553
$40,728
―
−34.4%
−47.6%
115.7%
21.4%
模ではありませんが、成長率は注目すべきもの
です。
■ 投資熱は戻ってきた
今年初めの時点では、2010年に10億ドル以上
を投資する企業は、限られた数社に絞られるこ
とが明白でした。しかしこれが急転します。記
録的水準の設備投資計画を発表する企業が、
複数登場したのです。歴史的な低水準であった
表2 2009年11月時点と2010年5月現在での2010年ファブ投資計画の変化
2009年の後で、投資資金源はどこから出てく
るのか不思議なほどです。2010年に5億米ドル
主要製品
昨年11月時点の
2010投資額
今年5月時点の
2010投資額
増加率
TSMC
ファウンドリ
$2,360
$4,680
98%
Hynix
メモリ
$1,190
$2,090
76%
Samsung
メモリ
$4,588
$7,558
65%
東芝(ソニーとの合弁)
メモリ
$465
$760
63%
資するのは6社になると予測されました。TSMC、
UMC
ファウンドリ
$860
$1,380
60%
Globalfoundries、東芝、Samsung、Intel、Inoteraの
Nanya
メモリ
$540
$660
22%
6社です。2009年11月のレポートで、これにHynix
IM Flash(Micron/Intel)
メモリ
$610**
$740
21%
が加わりました。その後、UMCとElpida
(Rexchip
Inotera(Micron/Nanya)
メモリ
$1,290
$1,500
16%
を含む)
が加わり、この9社で世界のファブ投資
Flash Alliance(東芝
/Sandisk)
メモリ
$1,950
$2,145
10%
額の75%に相当する260億ドル以上を支出する
Elpida(Rexchip含む)
メモリ
$900
$950
6%
ことになります。
Globalfoundries
ファウンドリ
$2,530
$2,650
5%
グラフ2に、2006年以降の装置購入額の推移を
SMIC他
ファウンドリ
$630
$640
2%
まとめました。2009年第2四半期を底に、大きな
MPU
$3,720
$3,640
−2%
落ち込みからの回復が予測されます。今年の設
企業名
Intel
26
以上を投資する企業のリストを、6ヵ月前になる昨
年11月時点の金額と並べて表2にまとめました。
2009年9月の時点では、2010年に10億ドル投
SEMI News • 2010, No.3
P26-28_26-03/45L 10.7.22 5:44 PM ページ 27
Market Report
備投資額は大幅に増加しますが、ディスクリートも含めた310億
る投資も増えています
(表3)
。ファウンドリの生産能力は、前年
ドルという数字は、2007年の380億ドルにも2006年の340億ド
比で13%の増加が見込まれており、2011年はさらに11%の増加
ルにも及びません。2011年末には装置購入額は約370億ドル
があるでしょう。メモリの生産能力は昨年8%以上の減少をしま
となりますが、それでも2007年の水準を下回ります。
したが、メモリメーカー各社は、再び建設と成長を開始しようとし
■ 企業は投資増を再度発表
ています。メモリの生産能力は2010年に9%、2011年には8%の
昨年の半導体産業は投資不足となりましたが、今年は好調な
業績、堅調な需要、チップ価格の上昇に刺激され、多くの企業が
増加をするでしょう。しかし、ロジックとアナログの生産能力の
成長率は、今年5%未満に留まる見込みです。
積極的な拡張計画を打ち出しています。2010年の設備投資の大
特筆すべきなのは、LED産業の生産能力の年間成長率で、2
半は依然としてアップグレードですが、新たな生産能力に対す
桁成長が続く目覚しいものです。LED生産能力の成長率はメモリ
の3倍、ファウンドリの2倍となることが、今年から来
。
年にかけて予測されます
(グラフ3参照)
億ドル
■ 高揚感の後に差す懸念の影
100
MEMS/Other
80
MPU
60
40
投資計画は何度も上方修正が繰り返され、新し
Logic
いチップ工場が発表され、そしてLEDという産
Foundry
業分野全体が、過去に例のない勢いで新工場と生
Analog
0
1Q
06
3Q
06
1Q
07
3Q
07
1Q
08
3Q
08
1Q
09
3Q
09
1Q
10
3Q 1Q
10 11
あらゆるものが急速に成長をしています。設備
Memory
Discrete
20
■ −しかし誰かが勝利 をする
3Q
11
産能力を増加させています。SEMIが発行するレ
ポートに最近大きな変更を加えたのが、Samsung
による2010年投資計画のほぼ倍増という発表
でした。
積極的な投資の反動がチップメーカーを襲う
グラフ2 世界ファブ装置購入金額の製品タイプ別推移
出典:SEMI World Fab Forecastレポート(2010年5月)
という懸念を述べ始める人もいます。急激な投
資増は再び供給過剰を発生させ、結局は収益
表3 世界ファブ生産能力の推移(200mmウェーハ換算の月産枚数)
ファブ生産能力
ディスクリート含む
前年比%
2007
2008
2009
2010
2011
15,030,511
16,170,208
15,647,484
16,827,643
17,905,172
―
7.6%
−3.2%
7.5%
6.4%
12,963,151
13,955,106
13,477,357
14,577,160
15,586,892
―
7.7%
−3.6%
8.4%
6.9%
性を損なっていくという考えです。
また別の懸念として、ある種の装置が需要の
急増に対応しきれない可能性が取りざたされて
います。納期の遅延など、需要の倍増に対応する
困難が予想されます。これがボトルネックとな
ファブ生産能力
ディスクリート抜き
前年比%
って、拡張やアップグレードの計画が遅延する
場合もあるでしょう。新しいバブルが発生した
のか、あるいは歴史的に投資が低かった昨年
に対する調整にすぎないのかは、将来振り返っ
60.0%
たときに分かるでしょう。ひとつだけ明らかと思
Discrete/
LED
40.0%
えるのは、今年が装置・材料業界にとって当た
り年となることです。
Memory
SEMIのファブレポートの詳細については、
20.0%
Foundry
http://www.semi.org/fabsをご覧ください。なお、
SEMIのファブレポートは、SEMIの世界半導体
All other
0.0%
2004
2005
2006
2007
2008
2010
2011
2009
−20.0%
グラフ3 製品別生産能力成長率の推移 出典:SEMI World Fab Forecastレポート(2010年5月)
No.3, 2010 • SEMI News
とは異なり、前工程
製造装置統計
(WWSEMS)
ファブで使 用される、新品、中古、内製のすべ
ての装置を対象としています。WWSEMSは、新
品の装置だけが対象となります。
(初出:SEMI Globa Update 2010年6月号)
27
P26-28_26-03/45L 10.7.22 5:44 PM ページ 28
Market Report
シリコン再生ウェーハ市場は2011年まで緩やかな回復を続ける
SEMI 市場調査統計部門 シニア・マーケット・アナリスト Lara Chamness
300mm再生ウェーハの平均価格推移
テストウェーハの需要は、半導体工場稼働率の低下と、厳しい
コストダウンの必要から、2009年の前半に大幅に減少しました。
そのため、多くの再生ウェーハのサプライヤが、自社のラインを
埋めるために値下げを提案しました。2009年の再生ウェーハ市
300mm再生ウェーハ単価
前年比%
2006
$49
−12%
2007
$44
−10%
2008
$40
−9%
2009E
$24
−40%
出典:SEMI Silicon Reclaim Wafer Characterization Report, February 2010
場は、82%ものつらい縮小をし、2億8,700万ドルとなりましたが、
今後は2010年に3億300万ドル、2011年に3億1,200万ドルと徐々
的に日本のサプライヤが支配していました。しかし、2007年を境
に増加することが予測されます。
に流れが変わりつつあり、2007年に67%であった日系サプライヤ
2007年から2008年前半にかけて、シリコンウェーハのスクラ
の世界シェアは、2009年に57%まで収縮しています。日本は、国
ップ品が、急成長する太陽電池市場に流れ、再生ウェーハの価
内サプライヤが100%シェアを占める唯一の地域です。アジア太
格も上昇しました。しかし、不況とシリコン供給の増加により、ス
平洋地域では、特に台湾で2009年に国内サプライヤのシェアを
クラップシリコンの市場は崩壊し、再生ウェーハ業界は太陽電
大きく伸ばしました。北米もまた、国内サプライヤが2009年にシ
池向けという収入源を失いました。非常に低価格でサービスを
ェアを拡大しています。
提供するか、もしくは競合にビジネスを奪われるリスクを犯し
日本の再生ウェーハ市場は、金額ベースで世界の33%を占め
てまで値上げをするしかなくなったのです。5社の再生ウェーハ
る最大市場となっており、今回の予測範囲の期間ではその地位
サプライヤは、この状況を生き残ることができませんでした。
は変わらないでしょう。台湾は24%を占める第2位の市場で、第3
300mm再生ウェーハは、サプライヤが最も成長を期待する分
野ですが、300mm再生ウェーハの生産能力は過剰となっており、
2006年第4四半期より厳しい価格下落が始まっています。その結
果、300mm再生ウェーハの価格は、2009年に約40%下がりました。
この厳しい値下げ圧力の結果、市場における国内サプライヤ
位は19%の北米です。日系以外のサプライヤは、それぞれの地域
市場 でのシェアを今後も伸ばしていくことが予測されます。
本稿のデータは、SEMIが発行するシリコン再生ウェーハレポ
ートからのものです。半導体のIC製造および装置製造で使用さ
れる再生ウェーハが調査対象となります。
(SEMI Global Update 2010年5月号より抄訳 )
のシェアが高まりました。歴史的に、再生ウェーハ市場は、世界
世界半導体製造装置市場統計
2010年2-3月 販売額データ
SEMI Book-to-Billデータ
装置カテゴリー別月間販売高
(単位 1,000米ドル)
マスク・レチクル製造用装置
ウェーハ製造用装置
ウェーハプロセス用装置
組立・パッケージング用装置
テスト用装置
半導体製造装置用関連装置
合 計
2月
0,049,652
0,007,530
1,637,531
0,228,775
0,194,565
0,076,398
2,194,451
3月
0,135,264
0,012,034
2,257,790
0,321,742
0,392,729
0,091,947
3,211,506
装置市場別月間販売高
(単位 1,000米ドル)
2月
3月
日 本
0,213,125
0,452,098
北 米
0,254,030
0,395,609
欧 州
0,095,156
0,118,807
韓 国
0,705,587
0,783,616
台 湾
0,607,790
0,912,464
中 国
0,118,083
0,205,956
その他
0,200,680
0,342,956
合 計
2,194,451
3,211,506
出典:Worldwide Semiconductor Equipment Statistics(SEMI, SEAJ)
28
1.30
1,600
受注額
販売額
BBレシオ
1.23
1.22
1,400
1.20
1.21
1.13
1.17
1,200
1.12
1.06 1.06
1.09
1.06
1.10
1.07
1,000
1.00
800
0.90
600
0.80
0.80
400
0.70
200
0.60
0.50
0
09年6月 7月
8月
9月
10月
11月
12月 10年1月 2月
3月
4月
5月
SEMI BBレシオの12ヵ月間推移(単位:百万米ドル、3ヵ月移動平均)
SEMI News • 2010, No.3
表3_26-03/44L 10.7.22 5:43 PM ページ 1
Column
SEMI Newsコラム・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ベルトの話 −アナログとデジタル −
志村 史夫
先日、電車の座席に座っていた私の前に立った初老の男の人
のズボンのベルトが私の目の前にきた。そのベルトには五つの
べてアナログ(連続的)
なのだが、これらをデジタル化してしま
えば、情報処理が極めて容易になるのである。
パンチ穴があり、留め金が四つ目の穴に入っていた。それまでに
たしかに、情報や現象を
「白か黒か」
という二つの両極端の性
使われていたと思われる三つの穴は長楕円形に変形し、まだ使
質の組み合わせに変換してしまえば処理が楽であるし、誤認の
われていない五つ目の穴だけが真新しい真円のままだった。
確率も小さくなる。例えば、印刷が不鮮明であったり、文字が小
この男の人が、そのベルトをどれくらいの期間使っているの
さくて、3なのか8なのか、5なのか6なのか判別し難いような場
かは知る由もないが、ベルトの穴は、この男の人のウエストが
合があるが、これらが「白」
と
「黒」の組み合わせで処理されれ
徐々に太くなっていったことを物語っている。その男の人がい
ば、紛らわしい両者の違いは明瞭になるのである。また、日常生
かにも元気そうで血色がよかったこともあり、私はベルトの穴
活の中でも、白と黒との間に中間色の灰色が混じったりすると、
を眺めながら何となく微笑ましい気持ちになった。逆に、その男
途端にわかりにくくなってしまうことがある。黒色政治家と灰
の人がいかにも病身で、ベルトの穴から、ウエストが徐々に細く
色政治家との区別がつきにくいのも、この例であろう。
なっていることが知れたならば、私は何となく寂しい気持ちに
音楽の世界では、アナログのレコードがデジタルのコンパク
なっただろう。昔は恰幅がよかった叔父が、病気で亡くなる一年
にすっかり駆逐されてしまったが、最近は
ト・デイスク
(CD)
ほど前から次第に痩せて、ウエストが細くなっていった様子を、
映画やテレビのデジタル化も急速に進んでおり、アナログ方式
私は見ていたからである。
のフィルムを使う従来のカメラや映画に替わるデジタルカメラ
電車の中で私はヒマだったので、私の目の前にあるベルトの
穴を眺めながらいろいろなことを考えた。
普通、ベルトの穴は数センチメートル間隔にあけられるもの
やデジタル映像が一般的になっている。映像がデジタル化され
ると、前述の情報処理の容易化に加え、撮影結果がすぐに確認
できる、いつまでもキズのない鮮明な画像を保てる、画面の合成・
だから、ベルトを締める人の実際のウエストの周囲と留め金が
修整が簡単である、他のメデイアへの変換・転送が簡単である、
入れられる穴の位置で決められるベルトの長さとの「ずれ」
は、
といった利点が生まれる。私自身は、テレビ映画でも、独特の味
最大で数センチメートルになる。つまり、ベルトを締める人のウ
と深みを感じるフィルムのアナログ画像の方が圧倒的に好きな
エストにもベルトにも、最大で数センチメートルの「無理」がか
のであるが。
かることになる。ベルトにかけられた「無理」が、穴の真円から
いずれにせよ、その「便利さ」
と
「容易さ」のために、これか
楕円への変形に現われるわけである。ウエストへの「無理」は
らの世の中も人間も、万事「白か黒か」のデジタル化に向かうの
ベルトを締める人が感じる窮屈さとしても現われる。見栄を張
は避けられない。そして、それに伴い、人間の感覚が鈍化し、世
って、ウエストを細く見せようとすれば、その分、いずれへの「無
の中が無機化していくのも避けられないように思われる。
理」
も大きくなる。
しかし、自然界にも、世の中にも、そして人間同士の付き合い
ところが、
「留め金・穴」式ではなくて、ウエストの周囲に合わ
の中にも、
「白か黒か」や「理屈」では決められない「中間色の
せて長さを自在に調節できる
「バックル」式のベルトであれば、
味わい」
、つまり
“機微”
というものがあるのだ。われわれの食べ
いま述べたような「ずれ」はなくなるので、
「無理」がかからな
物や飲み物に対する
「好み」だって、
「理屈」で「白黒」つけられ
くなる
(しかし、バックル式でも、見栄を張って、ウエストを細く
るものではない。もちろん、人生の中には「理屈」
を通し、
「白
見せようとする場合の「無理」は不可避である)。
黒」
をはっきりさせなければならない場合も多々あるが、世の中
ベルトの長さを留め金・穴で調節するのは、いわば“段階的デ
全般にわたる
「デジタル化」
によって、人間の感性も社会も、次
ジタル方式”
である。一方、バックルで調節するのは“連続的アナ
第に、
“機微”
に無頓着になり、
「中間色の味わい」
を理解できな
ログ方式”
である。
くなっていくのではないか、と私は危惧する。私自身はいつも、さ
現代が「情報化社会」
といわれるようになってから既に久し
まざまな“機微”
に触れるのを楽しみたいと思うのである。
(情報通信技術)
においては、文字や白黒写真に限
いが、ICT
ところで、私が愛用するベルトはバックル式の ものである。
らず、色でも音でも何でも、あらゆる情報をデジタル化、つまり
それは、ベルトにも私のウエストにも余計な「無理」
をかけた
あるいは「白か黒か」の二進法で扱う。われわれ人間
「1か0か」
くないからであり、私のウエストが徐々に太くなっているという
が実感する自然界や社会の現象、色や音や像や時間などはす
No.3, 2010 • SEMI News
ことに「白黒」をつけたくないためである。
SEMI
News
Vol.26 No.3 2010
SEMIイベント・カレンダー
PVJapan 2011
2010年(7-12月)
2011年7月27日(水)
‐29日(金)10:00-17:00 幕張メッセ
出展社募集中 ‐9月末までがお得!‐
●
7 月 13 日(火)∼15 日(木)
SEMICON West / Intersolar NA
サンフランシスコ
●
7 月 28 日(水)∼30 日(金)
SOLARCON India
ハイデラバード
●
9 月 8 日(水)∼10 日(金)
SEMICON Taiwan
台北
●
10 月 19 日(火)∼21 日(木)
SEMICON Europa
ドレスデン
●
10 月 26 日(火)∼28 日(木)
PVTaiwan
台北
●
11 月 8 日(月)∼10 日(水)
Int l Trade Partners Conference(ITPC)
ハワイ
●
11 月 10 日(水)∼12 日(金)
FPD International
幕張メッセ
(主催:日経 BP 社 共催:SEMI)
12 月 1 日(水)∼3 日(金)
セミコン・ジャパン
幕張メッセ
>>> www.pvjapan.org
SEMIと太陽光発電協会(JPEA)の共同開催による、
太陽光発電に
関する総合イベント「PVJapan」は、2010年の開催を成功裡に終え、
す
でに2011年に向けて準備が始まっております。4回目の開催となる
来年は、規模拡大に伴い幕張メッセに会場を移します。
2010年9月30日(木)までに出展のお申込みをいただいた場合、
早
期申込み特典による特別価格が適用されます。
加えて、
先着400小
間に限り、出展社セミナー枠の無償提供などの特典があります。
お問合せ:SEMIジャパン 営業部
Tel:03-3222-5988 Email:[email protected]
FPD International 2010 開催のお知らせ
2010年11月10日(水)
‐12日(金)10:00-17:00 幕張メッセ
●
1 月 26 日(水)∼28 日(金)
SEMICON Korea / LEDKorea /
ソウル
FPD Internationalは、日経BP社主催・SEMI共催によるフラットパネ
ルディスプレイの総合術展で、今年で17回目の開催を迎えます。
3Dテレビの量産が各社で始まり、
一般家庭への普及が期待され
る今、世界各国からパネルや製造装置、
部材など、
FPDやその応用製
品の設計・製造に関連する技術、製品が幕張メッセに集います。
展示会入場登録(無料)は、
9月上旬より開始の予定です。
●
3 月 15 日(火)∼17 日(木)
SEMICON China / SOLARCON China / FPD China
上海
お問合せ:日経BP社 FPD International 事務局
Tel:03-6811-8084 Email:fpd@nikkeibp.co.jp
●
3月
ハイテク・ユニバーシティ
調整中
●
4月
Global FPD Partners Conference
調整中
第25回記念
ITPC 国際トレードパートナーズ会議開催決定!
●
5 月 10 日(火)∼12 日(木)
SEMICON Singapore
シンガポール
2010年11月8日(月)-10日(水) The Fairmont Orchid, ハワイ島
●
5 月 31 日(火)・6 月 1 日(水)
SEMI Forum Japan
グランキューブ大阪
半導体関連産業の経営者のための国際会議です。自由な雰囲気
の中でグローバルな交流を深めていただくとともに、ビジネスの
方向性や技術の潮流を掴んでいただけます。
●
6 月 8 日(水)∼10 日(金)
Intersolar Europe
ミュンヘン
●
2011 年(1-7 月)
お問合せ: SEMIジャパン プログラム部
Tel: 03.3222.5993 Email: [email protected]
●
6 月 14 日(火)∼16 日(木)
Display Taiwan
台北
●
6 月 14 日(火)∼16 日(木)
SEMICON Russia
モスクワ
最近のニュースリリース
7 月 12 日(火)∼14 日(木)
SEMICON West / Intersolar NA
サンフランシスコ
2010年
●
www.semi.org/jp/News/
7月21日
2010年「カレル・アーバネック記念賞」受賞者発表
7月15日
SEMI会長にKLA-TencorのRichard Wallace氏が就任
7 月 27 日(水)∼29 日(金)
PVJapan
幕張メッセ
7月14日
2010年の半導体製造装置販売額は325億米ドルの見込み
6月25日
太陽光発電に関する総合イベント「PVJapan 2010」、間もなく開催
*予定は変更される場合があります。
6月17日
太陽光発電に関する総合イベント「PVJapan 2010」について
6月 9日
世界半導体製造装置統計発表 2010年第1四半期の出荷額は74億6,000万ドル
SEMI ジャパン
5月14日
シリコンウェーハ出荷面積発表 2010年第1四半期のシリコンウェーハ出荷面積
〒102-0074
東京都千代田区九段南4-7-15
Tel: 03.3222.5755
Fax: 03.3222.5757
4月26日
●
SEMI OnLine:www.semi.org
Email:[email protected]
©2010 SEMI ジャパン
は増加
「SEMIテクノロジーシンポジウム 2010」講演論文募集のお知らせ
SEMI News No.3 2010 年 7 月 28 日発行
(季刊)
発行人:中川 洋一 / 編集人:浦田 玉恵
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