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複式簿記編第4回 [PDFファイル/146KB]
平成18年4月1日作成 複式簿記編第4回 財産目録の作成Ⅲ 財産目録の作成について,3回目になります。第3回では,資産の中の流動資産について,そのあり高の決め方について説明しま した。今回と次回は,資産の中の固定資産のあり高の決め方について説明しましょう。 固定資産って何? 第2回で説明いたしましたが,固定資産とは「1年以上の長期にわたって使用される資産」をいいますね。また,固定資産は有形固 定資産と無形固定資産に分かれていますが,農業関係で無形固定資産としてあげられる地上権や借地権は特に計上しなくてもかま わないでしょう。 それでは,有形固定資産のあり高の決め方について,考えてみましょう。 有形固定資産は減価する! 有形固定資産とは,それ自体が形を持っている資産ですね。農業関係ですと,成牛や成木の果樹,機械や建物,農地などが該当 します。有形固定資産の中でも,使うことによって,また,時間の経過によってその価値が減ずる(これを減価するといいます。)資産 を償却資産といいました。 農業経営に利用して減価するということは,この減価部分は生産物に価値が移転したと考えられます。つまり,資産が費用に移転 したということになりますね。この減価分を減価償却費,この減価償却費を計算することを償却費計算といいます。 償却資産の範囲 「1年以上使われるもの」(これを,1年基準といいます。)で形があるものといったら,鎌だって,衣類だって,1年以上使えばボール ペンだって償却資産に該当しますね。ここで棚卸資産と償却資産の区分方法について説明しましょう。 20万円が目安 1年基準だけでは,区分があいまいなので,所得税法の中にある「使用可能期間が1年未満であるものまたはその取得価額が20 万円未満であるものについては,その取得価額に相当する金額を,その年分の必要経費に算入する。」に基づき,1年以上使用する ものでも,1台または1個,一揃いの金額が20万円未満(平成4年4月1日以前に取得したものは10万円未満)のものは,棚卸資産 として処理することになります。 つまり,償却資産に該当するものは,1年以上使用でき,かつ,その取得価額が20万円以上のものということになります。 取得価額も覚えよう! 購入した償却資産の取得価額は,購入の代価だけでなく,引き取り運賃,荷役費,運送保険料,購入手数料,据え付け費なども含 まれます。 自己で建設したものは,材料費や労務費などの経費と利用するまでに要した費用の合計額です。 牛,果樹などは,成牛,成木(育成から移行時点は第2回を参照)になるまでの育成に要した費用が取得価額となります。 また,国庫補助金などを利用して取得したものは,その資産の実際の取得価額から国庫補助金などの額を控除した金額が取得価 額となります。 なお,消費税の免税事業者(基準期間の課税売上高が3,000万円未満)の方は,取得価額に消費税も含まれます。 償却資産の現在価はどのように計算するの? 償却資産の現在価は,取得価額から,それまでに減価した分を除いた部分となります。つまり, 現在価=取得価額-既償却額 となります。現在価は,帳簿価額ともいいます。 取得価額は,説明したとおりですから,現在価を計算するためには,「既償却額」が分からないと計算できません。 既償却額の計算方法 既償却額を算出するためには,減価償却の方法を覚えないといけませんね。減価償却の方法は,二つあります。ご存じの方も多い でしょうが,定額法と定率法というものです。 定額法・・・・毎年の償却費が同額となる方法で,動物,植物はこの方法だけになります。 計算方法は,算式1のとおりです。 青色申告者で,「減価償却資産の償却方法の届出書」を提出していない場合は,償却資産はすべてこの方法で計算することになり ます。 定率法・・・・初期に償却費を多くし,年がたつにしたがって償却費が少なくなる方法です。前記「届出書」を提出する場合は,定率法の 選択も可能となります。計算方法は,算式2のとおりです。 知っておきたい専門用語 残存価額・・・・農業生産の目的に使えなくなった時に残る価値をいいます。生物は,5~50%,その他の固定資産は10%と定めら れています(大蔵省令「減価償却資産の耐久年数別表第10」)。 償却率・・・・定率法,定額法それぞれ耐用年数によって定められています(同別表第9)。 耐用年数・・・・建物,構築物,機械,生物など種類別に定められています(同別表第1から第8)。 なお,残存価額,償却率,耐用年数については,紙面の関係上掲載ができませんので,最寄りの農業改良普及センターにご照会 願います。 今回は,理論的な説明が中心になりましたが,次回は具体例をあげて説明したいと考えております。