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地中埋設した光電界センサ型レーダによる水位

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地中埋設した光電界センサ型レーダによる水位
社団法人 電子情報通信学会
THE INSTITUTE OF ELECTRONICS,
INFORMATION AND COMMUNICATION ENGINEERS
信学技報
TECHNICAL REPORT OF IEICE
SANE2003-69(2003-9)
地中埋設した光電界センサ型レーダによる水位モニタリングの検討
海老原
聡†、名児耶 薫‡、阿部 泰典‡、戸井田
克‡
†大阪電気通信大学工学部電子工学科 〒572-8530 大阪府寝屋川市初町 18-8
‡鹿島技術研究所 〒182-0036 東京都調布市飛田給 2-19-1
E-mail:
あらまし
†[email protected], ‡[email protected]
無電源でアンテナ周囲に金属が存在しない光電界センサを地中に多数埋設固定すれば、長期間、地下深部にある
物体の動きを精度よくモニタリングできる可能性がある。本報告では、埋設固定した光電界センサアレー型レーダによって、土
槽中の水面の動きを数時間にわたって高精度に推定した結果を報告する。土槽中に水を流し込み砂中の水面を上昇させていき、
砂中に置いた光電界センサアレーによって砂中の水面からの反射波を受信した。受信したレーダ信号を解析し、砂中の水面位置
の1次元推定と2次元推定を試みた。その結果、垂直坑井内の水面位置とレーダによって受信された水面位置は明確な相関が存
在することがわった。これは埋設固定した光電界センサアレー型レーダによる地中物体のモニタリング実現に関する可能性を示
唆している。
キーワード 光電界センサ、埋設固定型レーダ、モニタリング、地下水
Examination on Monitoring Water Level with E-field Sensor Type Radar in Underground
Satoshi EBIHARA†, Kaoru NAGOYA‡, Noriyasu ABE‡, Masaru TOIDA‡
†Osaka Electro-Communication University 18-8 Hatsucho, Neyagawa-shi, Osaka, 572-8530 Japan
‡Kajima Technical Research Institute 2-19-1 Tobitakyu, Chofu-shi, Tokyo, 182-0036 Japan
E-mail:
†[email protected], ‡[email protected]
Abstract We have proposed a method to monitor movement of some targets accurately in deep depth with E-field sensor
array-type radar, which are varied and fixed in underground. In this paper, we report on estimation of water level movement in
a sand tank for a few hours with the E-field sensor array-type radar. We increased height of the water level in the sand tank,
and we measured reflected waves from boundary between a saturated and an unsaturated layer with the E-field sensors. We
analyzed the radar signals, and tried 1-D and 2-D estimation of a scattering center on the boundary. We found that a water level
position estimated by the radar is related to water level in a vertical borehole, which is made in the sand tank. This implies that
we could monitor movement of some targets in subsurface with the E-field sensor array-type radar which is varied and fixed.
Keyword E-field sensor using an optical modulator,varied and fixed radar, monitoring, underground water
として、2本の坑井を用いた坑井間トモグラフィー計
1. は じ め に
近年では、地中で生じている現象の長期間モニタリ
測を長時間繰り返し行うことで、地下水中に投入した
ング技術の確立が必要となってきている。例えば、放
トレーサーの流動状況を2次元的にモニタリングする
射性廃棄物地層処分の安全性を確保するためには、地
等 の 研 究 が な さ れ て い る [7]-[11]。こ れ ら は 、こ れ ま で
下水分布の動きに関するモニタリングは重要な課題の
2 本の坑井が使用可能な場合に有力な地中の計測手法
1 つ で あ る [1]。
として研究されてきた坑井間トモグラフィーをモニタ
電磁波を用いたモニタリング手法としては、地表で
リングへ発展させたものと考えられる。近年では、米
地中レーダ装置を長時間使用することで地下水のモニ
国地質調査所はキャビティをつけたダイポールアンテ
タ リ ン グ を 行 っ た 研 究 が あ る [2]-[5]。 こ れ ら の 研 究 で
ナを坑井内で機械的に回転させることで指向性ボアホ
は、地表ではレーダ装置を走査させることが比較的容
ールレーダを実現し、坑井近傍のトレーサーの流動状
易 で あ る た め [6]、 従 来 の 地 中 レ ー ダ 計 測 を 長 時 間 行
況 モ ニ タ リ ン グ を 試 み た 研 究 を 報 告 し た [12]。 以 上 の
うことで地中モニタリングへ発展させたものと考える
研究では、地表や坑井内でアンテナの走査や回転のた
ことができる。計測対象が地下深部にある場合、坑井
め、必ず機械的な動きを伴うことになる。しかし、数
を用いて送受信アンテナを計測対象へ接近させた上で
ヶ月以上の長期間のモニタリングを考える場合、アン
モニタリングすることが考えられる。このような方法
テナの機械的な動きを要することは電磁波による地中
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モニタリングの応用範囲を狭めることになりかねない。
受信ダイポールアンテナの給電点電圧を光変調器によ
さらに、機械的な操作に必要な電源ケーブルや高周波
って光信号に変換する。ダイポールアンテナの受信信
受信信号の伝送のための同軸ケーブルは電流の誘導を
号は光ファイバで伝送する。図 4 に、実験システムの
も た ら し 、電 磁 界 に 擾 乱 を 与 え る こ と に な る 。こ れ は 、
ブロック図を示す。本システムはネットワークアナラ
計測対象が送受信アンテナの近くにあることが多い地
イザを用いて周波数領域で送受信アンテナ間の伝達特
下電磁波計測では、計測データに深刻な影響を与える
性を測定する。ネットワークアナライザの出力ポート
こともある。
を同軸ケーブルによって、送信アンテナの給電点に接
もし無電源かつ無誘導で電磁界の計測が可能な受
続 す る 。受 信 ア ン テ ナ は 4 Ch.存 在 し 、そ の う ち の 1 つ
信アンテナ素子を地中に多数埋設固定することができ
が高周波スイッチによってネットワークアナライザの
れば、計測対象が地下深部であってもアンテナの機械
入力ポートにつながる。高周波スイッチの制御はシリ
的な動きを伴わずに、電磁波計測によって地中物体の
アルポートを介して行う。鉛直井の地下水位面は超音
モニタリングが実現する可能性がある。著者らは光電
波を用いて行う。
界 セ ン サ [13]-[15]を 地 中 に 多 数 埋 設 固 定 し レ ー ダ の 受
信アンテナとして使用することで、地下の含水率分布
受信アンテナ用水平井
(光電界センサアレー)
送信アンテナ用水平井
(送信用ダイポールアンテナ)
が時間変化する現象を3次元モニタリングすることを
目標としている。本報告では、このモニタリングの原
木材
0.1m
理確認の第一段階として、砂中で制御した地下水位面
位置を、坑井内に配列した光電界センサアレーによっ
てモニタリングすることを実験によって確かめること
水タンク
0.3m
水面観測用鉛直井
砂層(不飽和)
0.06m
0.75m
にする。
可変
水面
砂層(飽和)
2. 埋 設 固 定 型 レ ー ダ シ ス テ ム
0.1m
図 1 に 、 鹿 島 建 設 (株 )技 術 研 究 所 内 に 製 作 さ れ た 土
コンクリート
4m
槽を示す。土槽は2槽に分かれており、大きな槽には
図 1
砂 を い れ 、「 砂 地 盤 」と す る 。一 方 、小 さ な 槽 は「 水 タ
実験で使用した土槽の断面
ンク」として使用する。砂地盤槽と水タンクとの間に
ある仕切り板には孔が開いており、水が水タンクから
砂地盤槽へ浸透しやすくしてある。さらに、水タンク
光変調器
に接続された「水の浸透用塩ビパイプ」には無数に孔
5cm
が開いており、砂地盤槽の下部に均等に水が浸透しや
すくしてある。土槽には3つの坑井を設置した。その
うち2本は水平井でありレーダ用のアンテナを設置す
る。鉛直井は地下水面を測定するために使用する。
アンテナ
受信アンテナの受信信号を光伝送する場合、高周波
図 2
電気信号を光に変換する必要がある。光電界センサと
光電界センサ
はアンテナの受信電圧を光へ変換する際に、無電源か
つ小型の光変調器を使用するダイポールアンテナであ
光電界センサアレー
(受信)
る 。 本 研 究 で は 、 NEC TOKIN 製 OEFS1 シ ス テ ム の 光
ダイポールアンテナ
(送信)
変調器を使用した。この光変調器はマッハツェンダー
型 光 干 渉 器 で あ り 、 動 作 周 波 数 帯 域 は 0.3MHz-1GHz
で あ る 。光 変 調 器 と ダ イ ポ ー ル ア ン テ ナ を 図 2 に 示 す 。
地下水面
図 3 に、砂中の水位面をレーダによって推定する際
のアンテナ図と水面の配置を示す。2本の坑井うち1
R/O
PD
本 に は 、送 信 用 ア ン テ ナ と し て 、全 長 2l = 2 m の ダ イ
PD
PD
PD
Switch
ポールアンテナを設置した。片方の坑井には、4個の
VNA
光電界センサを受信アレーアンテナとして配列した。
図5 水平坑井中のアンテナ配置
図 3
そのうち3個の光電界センサを坑井断面で円状に配列
し、もう1台は水平井の軸方向にずらして設置した。
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水平井中のアンテナ配置
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る 。 本 図 で は 、 図 6(a)同 様 、 直 接 波 の 成 分 が 差 し 引 か
3. 土 槽 内 の 地 中 水 位 モ ニ タ リ ン グ
れている。本図によると、光電界センサ1と2で受信
3.1. レーダ受 信 波 形
した波形は注水を開始するトレース番号8以降でよく
似ている。また、同一トレースでは、2つの受信アン
実験では、水タンクに適度に水を継ぎ足していくこ
テナ間で波の到達時間差がみられる。
とによって、砂中の水位面がほぼ一定速度で上昇して
い く よ う に し た 。 図 5(a)に 、 受 信 ア ン テ ナ 素 子 の う ち
1 ch. の み を 用 い て 測 定 さ れ た 時 間 領 域 波 形 を 示 す 。
約 3 分に 1 回の割合で周波数領域のデータを取得し、
金属ケーブル
Vector Network
Analyzer
100-200MHz の 帯 域 通 過 型 バ ン ド パ ス フ ィ ル タ を か け
高周波信号
た後、逆フーリエ変換をかけることによって時間領域
送信アンテナ部
光ファイバ 受信アレーアンテナ部
LD
PD
波 形 を 得 た 。 ま た 、 1 , 2, 3 … ト レ ー ス の 波 形 は 約 3
RFSW
分間隔で順次測定された時間領域波形である。簡潔な
HP87106A
option100
GPIB
表 示 の た め 、14 ト レ ー ス 以 降 は 3 ト レ ー ス ご と に 間 引
LD
PD
LD
シリアル
ポート
いて受信波形を表示してある。8 トレース目で、注水
PD
PC
GPIB
が 開 始 さ れ た 。 図 5(b)は 、 各 ト レ ー ス の 測 定 を し た 時
刻における鉛直井内の水位を示している。8 トレース
LD
DC成分
PD
光変調器
データ収集/スイッチユニット
Agilent 34970A
目以降で水タンクに注水を開始するので、測定トレー
地表測定装置部
ス時間が経過するともに水位が上昇することがわかる。
図 4
図 5(a)を 見 る と 、全 て の ト レ ー ス で 7 ns 付 近 で 最 も 振
地中部
超音波水位計
図8 実験システムのブロック図
実験システムのブロック図
幅が大きく、鉛直井内での水位上昇にもかかわらずレ
ーダの受信波形にほとんど変化が生じていないことが
テナからの直接波成分に比べて、振幅の大きさが非常
Number of trace (index)
に小さいためである。
図 6 に、水タンクから注水を開始する前に受信した
波 形 を 差 し 引 い た 後 の 波 形 を 示 す 。 こ れ ら は 、 図 5(a)
で 注 水 開 始 以 前 の 受 信 波 形 を 平 均 し た 波 形 を 図 5(a)の
それぞれの観測時波形から差し引いた波形とみなせる。
本図では、全てのトレースごとに最大振幅で振幅を正
10
注水開始
10
20
20
30
30
Number of trace (index)
わかる。これは砂中水面からの反射波成分は送信アン
40
50
60
70
規化してある。注水開始以前の受信波形は直接波や砂
50
60
70
80
中水面以外からの反射波の成分のみをもつと考えられ、
水平井の位置
40
80
-10
0
その波形を差し引けば水面からの反射波成分のみを強
10
20
30
0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7
Water level in a vertical borehole (m)
Time (ns)
(a) 時 間 領 域 波 形 ( 処 理 な し ) (b) 鉛 直 井 内 の 水 面 位 置
調することができる。本図では注水開始以前では時刻
図 5
に対しランダム変動する雑音の振幅が大きい。これは
実験結果
1
地 下 水 面 が 存 在 し て い な い た め で あ る 。注 水 開 始 以 降 、
10 ns 付 近 で 雑 音 レ ベ ル に 対 し 振 幅 が 大 き く な る こ と
10
注水開始
10
20
20
30
30
水面ができ、水面からの反射波の成分が受信されてい
Number of trace (index)
ることを示す。さらに、注水を進めることによって、
反射波の到達時刻が早くなることがわかる。これは水
面が上昇することで水面において反射する波の伝搬時
間が短くなるためである。
水平井内には4つの光電界センサが配列してある
Number of trace (index)
がわかる。これは注水を開始することによって砂中に
40
50
60
が、図 7 にそのうち2つの受信時間領域波形を表示す
70
る。水平井断面の円上で3個の光電界センサが等間隔
80
50
60
70
80
-10
で配列してあり、本図では、最も送信アンテナに近い
水平井の位置
40
0
10
20
Time (ns)
光電界センサ1での受信波形を実線で、最も土槽底面
30
0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7
Water level in a vertical borehole (m)
(a) 時 間 領 域 波 形 ( 減 算 後 ) (b) 鉛 直 井 内 の 水 面 位 置
に近い光電界センサ2での受信波形を破線で示してい
図 6
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実験結果
2
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3.2. 到 達 時 刻 による1次 元 推 定
3.3. 到 達 時 刻 と到 達 時 間 差 による2次 元 推 定
図 7 のように 2 台のセンサ間で波の到達時間差が生
本節では、前節までに示したアレー受信信号のうち、
1個の光電界センサの受信信号のみを用いて、砂中の
じる。この時間差は波の到来方向を反映していると考
水面は水平面であるとの仮定を置いて、この深度を推
えてよい。この場合、到達時刻と到達時間差から、物
定する。推定結果を図 8 に示す。各トレースの波形か
体を水平面と仮定することなく、2次元的に反射点の
ら推定された水面深度が丸印で示されている。あわせ
位置を推定可能になる。この際、光電界センサ間で生
て、鉛直井で観測された水面位置も示した。本推定で
じる相互干渉や水平井の壁で生じる散乱波の影響も考
は 、反 射 波 の 到 達 時 刻 t[ns]を 図 6(a)で 瞬 時 包 絡 線 の 振
慮した上で、波の到来方向を推定する必要がある。本
幅が最も大きくなる時刻と推定した。さらに、水に飽
和 し て い な い 砂 の 比 誘 電 率 ε r を 4 と 仮 定 し 、水 面 の 深
研究では、これらを補正するため、モーメント法
度 (-y [m])を 以 下 の 式 で 推 定 し た 。
行 っ た [14]. [15] 。さ ら に 、波 長 に 対 し 小 さ な 空 間 に あ
( Method of Moment ) に よ る 理 論 モ デ リ ン グ を 用 い て
るアレーを用いた場合でも、到来方向推定に関する精
− y[m] = (
度の劣化をできる限り抑えるため、超解像法の1つで
0.3m 2
vt
) − ( 0 )2
2
2 εr
(1)
あ る MUSIC 法 を 反 射 点 位 置 推 定 法 と し て 導 入 し た
[14], [16] 。 水 平 坑 井 の 軸 に 対 し 垂 直 な 2 次 元 平 面 上 で
の反射点位置推定のながれを図 9 に示す。水面からの
上式による推定では、送受信アンテナ間を結ぶ線分の
反射波以外の不要な波のパワーを抑えるため、時間領
垂直2等分線上に反射点が存在すると仮定している。
域において最も振幅が大きくなる時間を中心にタイム
こ こ で 、0.3m は 送 受 信 ア ン テ ナ 間 の 間 隔 、v 0 [m/ns] は
ゲーティングをかけてから、再びデジタルフーリエ変
真空中の伝搬速度である。送受信アンテナが存在する
換 (DFT) で 周 波 数 領 域 の デ ー タ に 変 換 す る 。 そ の 後 、
深 度 は y = 0 m で あ り 、砂 と 底 面 と の 境 界 は y = -0.375
波の到達時刻 t 及び水平坑井の軸に対する周方向角
m に存在する。図 8 では、鉛直井の水面の上昇ととも
度 φ に 関 す る パ ラ メ ー タ 推 定 を 2 次 元 MUSIC 法 に よ
に、レーダで推定された水面の深度も上昇しているこ
っ て 行 う 。 推 定 し た パ ラ メ ー タ (t, φ ) か ら 、幾 何 光 学
とがわかり、推定結果が砂中の水面位置を反映してい
的な伝搬経路を考えることで、物体の反射点位置を鉛
ることがわかる。しかし、推定位置と鉛直井内での水
直 井 の 軸 に 垂 直 な 面 内 ( x, y) で 推 定 す る 。
面 位 置 と で は 相 違 が 存 在 し て い る 。こ の 原 因 と し て は 、
もともと、砂中でレーダによって水面と推定される位
置と鉛直井内の水面位置には差が存在していることが
考えられる。これは、砂中では、毛細現象によって、
飽和した層よりも上へ水が浸透していると考えられ、
レーダによって推定される水面は坑井内の水面よりも
上に存在する可能性がある。
0.05
0
-0.05
-0.1
y(m)
-0.15
-0.2
-0.25
-0.3
-0.35
ダイポール1
ダイポール2
1-D Estimation by radar
Water level in a vertical borehole
-0.4
10
20
30
40
50
60
Number of trace(index)
図 8
水平井の断面
図 7 時間領域波形
( 光 電 界 セ ン サ 1( 実 線 )と 光 電 界 セ ン サ 2( 破 線 ))
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水 面 位 置 1-D 推 定 結 果
70
80
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図 10 に 、 注 水 後 、 4 つ の 時 刻 で の 反 射 点 位 置 の 推
定 結 果 を 示 す 。こ れ ら の 図 で 白 丸 の 部 分 で 最 も MUSIC
法の評価関数が大きくなる。この評価関数が大きくな
信号処理のながれ
るところが推定された反射点位置と考えることができ
IDFT
る。図では、鉛直井内の水位と推定された反射点位置
水注入前の受信波形を各受信波形から差し引く
の高さは近いことがわかる。また、鉛直井内の水位の
バンドパスフィルター(100-200MHz帯域通過)
上昇とともに、推定された反射点位置が上昇している
タイムゲーティング
ことがわかる。これらにより、レーダによる反射点位
DFT
置の推定結果は鉛直井内の水位面の位置測定結果と調
2-D MUSIC algorithm
アンテナのMoM解析
デコレレーション
time-φ で推定
和的である。しかし、推定結果では、推定点が水平方
向に大きく揺らいでいることがわかる。この原因とし
ては、推定アルゴリズムの特性に起因して推定値にバ
イアスが生じたり、アレー素子間の到達時間差の推定
x-y 空間断面に変換し、坑井断面上でのMUSICイメージ
精度に比べ素子間隔が狭すぎたことによる可能性があ
図 9
り、今後の検討課題である。
水平坑井
水 面 位 置 2-D 推 定 方 法
水平坑井
推定位置
推定位置
地下水面測定用垂
直坑井内の水位
図10.2 地下水面位置推定結果(注水後1時間4分)
(a) 注 水 後 27 分
(b) 注 水 後 1 時 間 4 分
推定位置
(c) 注 水 後 3 時 間 43 分
(d) 注 水 後 4 時 間 35 分
図 10 水 面 位 置 2-D 推 定 結 果
水 平 井 の 断 面 を 白 線 の 半 円 で 示 し て い る 。ま た 、土 槽 の 底 面 で あ る コ ン ク リ ー ト と 砂 の 境 界 は “ Lower
boundary ” で 示 さ れ る 白 線 で 示 し て い る 。各 図 で 、右 側 に 出 て い る 矢 印 は 鉛 直 井 内 の 水 位 面 の 高 さ を 示
す 。 左 上 で 、 上 段 に は 注 水 直 後 を 時 刻 0 と し た 場 合 の 時 刻 、 下 段 に は 図 5-8 に 対 応 す る 測 定 波 形 の ト レ
ース番号が示されている。
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4. ま と め
本 実 験 に よ っ て 、光 電 界 セ ン サ を 地 中 に 多 数 埋 設 固 定
しレーダの受信アンテナとして使用することで、砂中
の水面の位置を推定可能であることが確認された。周
波 数 100MHz-200MHz と い う 地 中 で の 計 測 に 実 用 的 な
周 波 数 を 用 い な が ら 、 0.3 m ほ ど の 空 間 で 水 面 の 動 き
をモニタリングすることができた。本実験で用いた計
測システムと推定法を用いれば、坑井を用いて地下深
部での水面位置の遠隔計測が可能になると考えられる。
5. 謝 辞
2001 年 9 月 に 行 っ た 実 験 の 一 部 は 東 北 大 学 大 学 院
高 橋 一 徳 氏 の 協 力 を 受 け た 。 3.2 節 の 信 号 解 析 の 一 部
は大阪電気通信大学工学部電子工学科
長谷川譲氏に
よって行われた。
文
献
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