...

GPR による深部路面下空洞検出のためのモデル検証実験

by user

on
Category: Documents
3

views

Report

Comments

Transcript

GPR による深部路面下空洞検出のためのモデル検証実験
全地連「技術フォーラム2014」秋田
【71】
GPR による深部路面下空洞検出のためのモデル検証実験
(独)土木研究所(応用地質㈱)
(独)土木研究所
1. はじめに
○青池
邦夫
稲崎
富士
推定され、ワイドアングル測定の結果から舗装も含めた
RTK-GNSS(Real Time Kinematic Global Navigation
平均的な比誘電率は16.4である。使用した GPR は中心周
Satellite System) を利用した GPR (Ground Penetrating
波数が300MHz であるが、受信波形における当該深度から
Radar) の適用試験を目的に、
弥生時代の大規模な環濠集
の反射波は167MHz 付近が中心を示した(図-3)
。電磁波
落跡として知られる吉野ヶ里遺跡周辺で調査を実施し
の波長は約46cm と考えられる。図-3の GPR 断面例では、
た。調査の結果、吉野ヶ里歴史公園に隣接する道路にお
アノマリの反射波がアノマリの右側で反射波が分離し始
いて、深度1.5m 付近を上面とするやや深い路面下空洞ア
めているが、これは埋設物の形状を推定する上で重要な
ノマリを6箇所検出した1)。調査区間には、下水道等の埋
手がかりとなる。対象物の厚さは、波長以下~波長の倍
設管が敷設されておらず、アノマリの原因としては弥生
程度で変化し、長径は1.5m 程度と推定される。
時代の遺物の可能性が考えられる。吉野ヶ里遺跡の発掘
(3) モデル実験
調査はほぼ終了し、
遺構は盛土により覆土して保存され、
埋設物のモデルとして甕棺を想定した。甕棺とは弥生
大部分が公園として整備されつつある。1958年から現在
時代に九州北部で良く見られる遺体の埋葬様式で2つの
までの航空写真を閲覧したところ、調査地周辺の耕作状
素焼きの甕を合わせて埋設した棺である。これまで出土
況や家屋等の分布の様子は変わってきているが、対象路
したものから4パターンの典型的な形状が想定できるの
線については大きな改変を受けていないことが推測され
で、今回はそのうちの A 型式の甕棺を想定した。電気的
た。古くから道路として利用されてきたことにより、浅
な性質としては空洞と等価であるので、発砲スチロール
部地下空間が手つかずに保存されてきた可能性がある。
で模型を作成した(図-4左上)
。また、アンテナの中心周
本研究では、GPR データの解析により埋設物を特定する
波数は現地調査の300MHz から、鉄筋探査用の2GHz(図-4
ための検討作業として、物理モデル実験を行った。
左下)に変更することによって、波長相当で約15%に縮
小できると仮定し、約1.5m 規模と想定される甕棺は全長
2. 物理モデル実験
23cm に縮小したものを作成して埋設した(図-4中)
。図
(1) 解析対象のアノマリ
-4右に模型の長軸方向に測定した GPR 断面の例を示す。
図-1に調査区間の路面オルソモザイク画像、検出され
概ね反射波の形状は再現できたが、実験に使用した土層
た6箇所のアノマリの反射強度の平面分布および南北断
の砂質土の比誘電率は6.7程度とやや低く、
受信波形のス
面投影図を示した。反射強度は、背景除去とマイグレー
ペクトルの中心周波数から波長が約13cm と推定できた
ションした GPR 波形の包絡線を用い、平面分布では
ため、現地調査の場合と比較して、埋設模型が波長に対
15-100ns のウィンドウで振幅を積分したものを、南北断
して小さいことがわかった。甕棺を特定する上で空洞上
面では最大振幅を投影したものを示した。実験の対象と
面と空洞下面で反射波の分離する状況が再現することは
しては K-1を選定した。図-2に示すように、K-1の GPR 断
重要であるため、模型をさらに大きくする必要がある。
面はシンプルな反射面でやや傾斜し、反射強度が大きい
特徴を有する。
(2) 対象物の大きさと波長
3. おわりに
実験は、波長と対象物の大きさの関係に着目しながら
図-3にアノマリの中心波形を抽出し、平均波形との比
模型の大きさを変えて引き続き継続している。現地調査
較からその特徴を示した。アノマリの反射波の初動は、
で検出されたアノマリは今後発掘調査される予定はな
直接波と同相であるため、境界面での反射係数は正であ
く、当該箇所は遺跡保存・公園整備のため盛土される予
ると考えられる。一般に路面下空洞では、舗装中の境界
定であるため、できる限り GPR のデータ解析とモデル検
面では、舗装構成の比誘電率の関係から負の反射係数に
証実験から、埋設物の形状・特性を推定し、遺跡保存の
なることが多いが、そのなかで空洞上面は反射係数が正
ための基礎資料を得ることと、GPR による埋設物の解釈
になる。空洞調査ではこの性質に着目し、孤立した正の
技術を高度化させることを目標としている。
反射係数を有するアノマリを抽出することで高い空洞検
出率を得ている。今回のアノマリは空洞と同じセンスを
《引用・参考文献》
示し、当該深度で周辺の地質と比較して比誘電率が相対
1) 青池
邦夫,稲崎 富士 (2014.5):RTK-GPS を用いた
的に低いものが存在することになる。なお、調査地周辺
吉野ヶ里遺跡周辺の GPR 探査,
物理探査学会第130回学
の露頭観察から、
アノマリの深度は阿蘇4火砕流堆積物と
術講演会講演論文集,pp74-77.
Fly UP