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Contemporary Chinese Studies
人間文化研究機構 現代中国地域研究 拠点連携プログラム Contemporary Chinese Studies Newsletter No.7 2011 年3月 発行人 : NIHU プログラム 現代中国地域研究幹事拠点 早稲田大学現代中国研究所 天児慧 〒 169-8050 東京都新宿区西早稲田 1-6-1 早稲田大学 早稲田キャンパス 9 号館 9 階 914 号室 TEL〔&FAX〕03-5287-5091(5092) http://www.china-waseda.jp/ NIHU「現代中国地域研究」プログラム 各研究拠点 2010 年度の活動総括と予定 NIHU 現代中国地域研究の拠点連携プログラムは第 1 期目 5 年間のう ちの 4 年目が終わる。第 1 期の最終年に際して各拠点はプログラムの総括 を進め、出版刊行に力が入れられている。日本における中国研究を世界に広 めるべく中国語で刊行する 『日本当代中国研究』は既に第 2 号を HP に掲載 した。 拠点 HP(http://www.china-waseda.jp/index.html) からのダウンロー ドが可能である。現在 2011 年号の翻訳編集作業が進められ、最終段階に 入っている。また当プログラムでは HP の充実化を図っており、既に英語の ページも整備された。今後更に一層研究情報や研究成果等の掲載を目指 していく。活動については 1 月 29 日に第 4 回シンポジウムが慶應義塾大学 拠点において 「 『台頭する』中国と共存する」と題して盛大に開催され立ち見 が出るほどであった。 (詳細は本ニューズレター p4 を参照ください) 英語 HP 『日本当代中国研究 2010』 早稲田大学幹事拠点 アジア研究機構 現代中国研究所 http://www.china-waseda.jp/wiccs/index.html 研究成果の刊行に尽力 体像と中国」の編集作業を進めている。そ のほか信訪研究班も信訪を巡る様々な問 題について、 また早大拠点としての成果とし ての論文集 「乱反射する中国」 (仮)の刊 行を予定している。 早稲田大学拠点 (早大現代中国研究所:WICCS)は成果刊行に力を入 れると同時に世界各国の研究者と盛んに議論、意見交換を行った。中国社 会科学院米国研究所の黄平所長 (11 月) 、スウェーデン国際問題研究所の リヌス研究員 (12 月) 、香港の若手オピニオンリーダー一行 (12 月) 、台湾の 大学の日本研究グループ (12 月) 、米国シンクタンクの研究者一行 (1 月) 、中 国博源基金会の左軍秘書長、同基金理事で香港科技大学の丁学良教授 (1 月)などが当研究所を訪問した。研究班の研究会として信訪研究会 〔石塚迅 氏、但見亮氏報告〕 (1 月) 、次世代研究会 〔松村史紀氏、中島琢磨氏、平川 幸子氏、徐顕芬氏、堀内賢志氏〕 (12 月、1 月) 、社会階層研究会 〔潘允康 氏〕 、冷戦史ワークショップ 〔中国 3 名、韓国 2 名、日本 5 名による報告〕 (3 月) を開いた。 これらの研究会は全て成果刊行を前提に開かれたものである。貧困と教 育研究班は 「少数民族女子青年の進路選択をめぐる教育学的研究」と題し てフォーラムを行った (1 月) 。活動成果としては 「WICCS 研究シリーズ」を 刊行しており、園田茂人著 「天津市定点観測調査 (1997 - 2010) 」 を刊行し た。さらに現在、経済班が中兼和津次氏を編者として 4 号 「改革開放以後 の経済制度・政策の変遷とその評価」 、次世代研究班が 5 号 「東アジアの立 「WICCS 研究シリーズ」 3 冊 ワークショップでの熱心な議論 京都大学研究拠点 人文科学研究所 現代中国研究センター http://www.zinbun.kyoto-u.ac.jp/~rcmcc/index.htm 社会との対話―公開講演活動 巨龍中国はどこへ向かおうとしているのか、市民の方々からそうした質問を 受けることが多い。単純明快に答えることが難しいのは言うまでもないが、現 代中国を研究している以上、 我々が知っていることを市民に向けてわかりやす く説明し、そんな疑問に答える糸口を提供することはきわめて重要である。市 民の方々との対話の場として、京大拠点は積極的に公開講演会を開催してい る。拠点の設立時 (2007 年)に行われた記念講演会 「京都モデルの現代中 国研究をめざして」 、2009 年に東京で開催した 「漢字文化と西洋近代思想 の出会い―梁啓超を中心に」 、そして昨年秋には 「現代中国―そのイメー ジ」 を 4 週連続で開催した。幸いいずれの講演会も盛況で、講師をつとめた 我々は、 改めて現代中国にたいする人々の関心の高さを実感したのであった。 1 漁船問題のおかげで、会場に入りきれないほどの聴衆が集まった。その演題 が 「なぜ中国はあんなにも横暴なのか」という方向に読みかえられてしまった らしい。講演自体は “ 眠れる獅子 ” なる言い回しが、1900 年前後にどのよ うに登場したのかを謎解きする歴史話だったが、講演後の質疑応答は果たし て、漁船問題を巡る中国側の対応はなぜあんなに強硬なのかという点に集中 した。 聴衆や一般市民は所詮、自らの考えに合致するように講演を聴いてしまう のだと言ってしまえばそれまでだが、それなら尚更のこと丁寧に、辛抱強く説 明することが求められるのだ、ということを実感したのであった。その意味で は、 我々研究者にとっても公開講演会は貴重な学びの場である。 専門の研究内容を、わかりやすい形で伝 えるのは難しい。講演後の質疑応答のさい に、会場から寄せられる質問や意見が、講演 内容からずれていたり、さらには無関係だっ たりすることは珍しくない。そんな反応に接 するたびに、講演者は専門の内容をかみ砕い て説明する工夫が足りなかったのではない かと反省することになる。昨年秋の連続セミ ナーの初回演題は、 「なぜ中国は “ 眠れる 獅子 ” なのか」 だったが、折からの尖閣諸島 連続セミナー 「現代中国――そのイメージ」 のポスター 慶應義塾大学研究拠点 東アジア研究所 現代中国研究センター http://cccs.kieas.keio.ac.jp/ 現代中国研究シリーズの刊行開始と国際シンポジウムの成功 授など著名な研究者を交えて、中国の発展モデルの優位性と限界や政治改革 の可能性を分析し、今後の中国との 「共存」 のあり方を論じた。また翌週の 2 月 5日 (土) には、米外交問題評議会 (CFR) との共催で国際ワークショップ 「中印 の台頭と日米関係」を開催した。CFR ディレクターのエリザベス・エコノミー氏 やゴールドマンサックス・ムンバイ代表のブルックス・エントウィッスル氏らを招 聘して、非公開の形で専門性の高い議論を行い、福田康夫元首相の総論で幕 を閉じた。 その他の活動としては、毎月のランチセミナー開催、若手研究者の海外派 遣、全メンバーを対象とする研究合宿 (9 月) などを実施した。来年度にはこ れらの活動を継続すると同時に、3 つの研究グループに横断的な研究プロ ジェクトを立ち上げ、 益々の研究の深化を図る予定である。 2010 年度に慶應義塾大学拠点では、研究成果の刊行および国際的な学 術交流において大きな成果を得た。まず研究書の刊行では慶應義塾大学 東アジア研究所・現代中国研究シリーズの第 1 弾として 9 月に 『救国、 動員、 秩序―変革期中国の政治と社会』 (以下、 いずれも慶應義塾大学出版会) を 出版し、清朝末期から中華人民共和国建国にいたるまでの統治の再編成を、 新しい視点から実証的に論じた。2011 年 3 月には 『中国外交の六十年— 変化と持続』 を出版し、多元化する中国外交を様々な角度から解析した。引 き続き 6 月には 『党国体制の変容: 「要求」への 「対応」 (仮) 』が刊行される 予定である。また本年度は海外との学術交流に注力し、7 度の全体研究会 を開催して海外の中国研究者との討論を行った。オーストラリア国立大学の ピーター・ヴァン・ネス氏、 カリフォルニア大学ロサンゼルス校の R. ビン・ウォ ン氏、ソウル大学の鄭在浩氏、台北国史館修纂処処長の呉淑鳳氏、北京大 学の印紅標氏、臧運祜氏、そして中国社会科学院日本研究所の張伯玉氏ら による報告はいずれも知的刺激に富み、興味 深い議論を行うことが出来た。 2010 年度の慶應拠点における最大の活動 は、1 月 29 日 (土)に三田キャンパス北館ホー ルで開催された NIHU 現代中国地域研究拠 点連携プログラム第 4 回国際シンポジウムの 開催である。同シンポジウムでは 「 『台頭する』 中国と共存する」 と題し、丁学良香港科技大学 教授、ロバート・S・ロス・ボストンカレッジ教 国際シンポジウム第 3 セッション CFR と共催の国際ワークショップ 東京大学研究拠点 社会科学研究所 現代中国研究拠点 http://web.iss.u-tokyo.ac.jp/kyoten/index.html 多彩なゲストによる公開セミナーを開催 する講演会を法律部会主催で実施した。常 凱教授は 2010 年 5 月から 6 月にかけて世界 を震撼させた南海ホンダの労働争議にみずか ら労働側法律顧問として参与し、収拾に導い た体験を踏まえ、紛争処理に向けた問題点を 指摘した。これを受けて 2011 年 1 月 13 日 には、ILO 日本事務所との共催による 「現代 中国の労使関係」と題する社研公開セミナー 常凱・中国人民大学教授 を開催、労働組合制度の現状と役割をテーマ (2010.12) に、Chan-Hee Lee 研究員 (ILO 北京事務所 /社研客員教授 ) 、Bill W.K. Taylor 准教授 ( 香港城市大学/社研客員 教授 ) による報告が行われた。 また中国の信用保証制度の専門家である孫建国河南大学経済学院教授 (社研客員教授)による社研公開セミナー「信用保証制度の展開:日中比 較研究」 が 2011 年 1 月 11 日に開催され、東アジアにおける信用保証制度 の展開と問題点を踏まえた中国における制度設計の必要性について、活発 東大拠点では社会科学研究所の外国人客員教授制度を活用し、海外の 著名な中国専門家を招聘して研究活動の国際化を図っている。 2010 年 12 月 9 日には常凱中国人民大学労働人事学院教授 (2009 年 度社研客員教授)らによる 「中国の労働争議 ― 新しい特徴と問題点」と題 「現代中国の労使関係」セミナー(2011.1) 2 農村部会の吉林省トウモロコシ調査(2010.3) タを用いた計量分析」 (星野真社研非常勤講師・北大スラブ研究センター 学術研究員)が、また 3 月 9 日には世界穀物価格の再高騰と中国農業の行 方をテーマに農村部会による第6回中国農業研究会が開催され、池上彰英 (明治大学) 、張馨元 (東大院)両氏による報告が行われた。3 月 1 日には 中国化学工業史研究の第一人者である陳歆文研究員 (元・大連化工研究 設計院) を招聘し、日本化学工業協会、日本ソーダ工業会との共催で、公開 講演会 「侯徳榜と中国化学工業の発展」 を開催した。 このように東大拠点では、各方面の専門家を海外から招聘するとともに、 自然科学を含む多様な分野との連携を通じ、日本における中国研究のネット ワークづくりに努めている。 な議論が展開され た。そのほか中国 の農業農村問題を テーマに、2 月 28 日には産業集積部 会の主催による研 究会 「中国 農 村に おける所得格差と 社会的安定性 ― 四川農村世帯デー 中国環境問題研究拠点 総合地球環境学研究所 http://www.chikyu.ac.jp/rihn-china/ 日中両国を包括する環境問題研究ネットワークの展開 近年のめざましい中国の経済的な発展は、近隣諸国へもその影響を強め シンポジウム」 を共催した。日本、中国に加えて、韓国、モンゴルなど各国の参 ている。特に、中国と国境を接し、歴史的なつながりも深いインドシナ半島諸 加者が一堂に会し、国際共同研究への足がかりを得た。2011 年度は中国 国との間では、経済的な交流による物資の往来ばかりでなく、資本や人的な を取り巻くアジア諸国を中心として、国内外の研究者・研究機関とのさらな 移動も活発化している。これに起因して、中国、近隣諸国双方に社会や環境 るネットワーク化に努め、今後の中国環境問題の研究レベル向上のための基 の面で大きな変容が見られるようになってきた。 盤拡充を目指す計画である。 2010 年度は、 こうした 「中国圏」 の拡大にともなう周辺 諸国も含めた地域社会の変容と環境への影響を明らか にするため、急速に経済発展を遂げつつある 「西南中国」 と 「環境と健康 (エコヘルス) 」に着目した。研究会やシン ポジウム開催を通じて、ラオスやミャンマーなど大メコン 圏に及ぶ中国の影響の実態に迫った。議論の内容の一 部は、当拠点のニュースレター『天地人』13 号で紹介 している。 一方、日中両国を包括する関係諸国の研究者・研究 機関のネットワークを展開し、研究成果を共有してきた。 2012 年 12 月に日本、中国、韓国の研究者を主体とした 「森林をめぐる伝統知と文化に関する国際会議 第 3 回 『里山と多様性』 」を共催した。また、2010 年 10 月 に地球研と九州大学東アジア環境研究機構との間で結 ばれた研究協力協定を基礎として、 2011 年 2 月には 「東 九州大学での国際シンポジウム(2011.2) 「天地人」 13 号 アジアにおける黄砂と砂漠化の長期変動に関する国際 東洋文庫拠点 東洋文庫 現代中国研究資料室 http://www.tbcas.jp 研究成果の公刊と新本館完成で新たなステージへ る貴重な書籍などが展示される予定である。なお、展示室も含めたグランド オープンは本年秋を予定しているが、今秋が辛亥革命百周年にあたることも あり、現代中国研究資料室と辛亥革命百周年記念日本会議が協力して、東 洋文庫での特別展示・特別講演会などの開催を予定している。 なお、それに先行して新閲覧室が 5 月にオープンし、研究者への資料閲覧 サービスを再開する予定である。 東洋文庫現代中国研究資料室は 「現代中国研究資料の収集・利用の促 進と現代中国資料研究の推進」 を研究テーマとして掲げており、具体的に前 者は NACSIS Webcat への登録とデジタルライブラリの構築として進められ、 後者は、昨年末にこれまでの研究成果をまとめた論文集 『新史料から見る中 国現代史―口述・電子化・地方文献』 を、東方書店株式会社より出版する ことで結実した。 この論文集は、初年度から進められた各種資料研究の成果、具体的には 口述資料、電子資料、地方文献といった新し い資料について、当拠点の研究分担者およ び、NIHU 現代中国地域研究プログラム他 拠点の研究者、 あるいは海外の研究者による 様々な実践や研究についてのコロキアムやシ ンポジウムの成果を纏めたものとなっている。 また、拠点が置かれている財団法人東洋 文庫では、昨年末新本館が完成した。現 在、旧書庫にある90万冊以上にのぼる蔵書 の新書庫への移動を行っている。また新本 館には展示室も設けられ、当文庫が所蔵す 新共同研究室 新閲覧室 3 『新史料からみる中国現代史』 第 4 回国際シンポジウム「『台頭する』中国と共存する」 2011 年 1 月 29 日 (於:慶應義塾大学) 人間文化研究機構 (NIHU)現代中 国地域研究プログラムの国際シンポジ ウムは今回で 4 回目を迎え、いよいよ プログラム第 1 期の佳境に差し掛かっ ている。今回のシンポジウムは前回の 京都から東京に場所を移し、慶應義塾 大学拠点において 1 月 29 日に開催さ れた。会場は立ち見の人が出るほど 平野健一郎氏 盛況であった。中国への関心が高まっ ていると同時に、平野健一郎氏が開会の挨拶 で指摘されたように 「 『台頭する』中国と共存す る」というテーマが時機に適っているということ もあったようである。NIHU プロジェクトでは中 国に先行するイスラム地域で政権に対して異議 申し立てが起きており、中国ではどうか考えるの も非常に重要であり、研究者は正念場であると 喝破された。続いて 国分良成氏 挨拶した慶大拠点の 国分良成氏は慶應義塾大に根付く石川忠雄氏か ら山田辰雄氏への脈々と続く中国研究の時代に流 されないようなリアリズムが生きた伝統を紹介した。 そして今回のシンポジウムとして中国が国家発展の 新しいモデルを提供しているのか、中国の政治体制 は変容しうるのか、責任ある大国として責任の部分 を果たせるか、という3 点の問題提起をした。シン ポジウムは 3 つのセッションに分けて実施されその 後交流会も行われた。 第 1 セッション:このセッションは 「中国はいかに成長を遂げたか:中国 的発展モデルを問う」と題して近現代史の視点から現代中国の問題を考え た (司会:久保亨氏;東洋文庫拠点、信州大) 。丁学良氏 (香港科技大) 、 薛進軍氏 (名大) 、堀井伸浩氏 (九大) が報告を行い、丸川知雄氏 (東大) 、岩 井茂樹氏 (京大)がコメント を行った。丁氏がイデオロ ギーなど中国モデルの概念 的特殊性について指摘した のに対して、薛氏はマクロ経 済、堀井氏はエネルギー面 での制度改善を主張した。 丸川氏は国有企業による市 場参入の減少に言及し、同 第 1 セッション 時に拡大する所得格差も必 ずしも弊害面ばかりでもないことを指 摘した。岩井氏は中国のマイナス面を プラスに変えるたくましさがあると同時 に、党国資本主義の 「鉄の三角形」は 利益がその原動力となっており、それ は国家統合の力の 「弱さ」が中国には 伝統的に存在しているという。 次に第 2 セッションでは 「中国はい 会場いっぱいの聴衆 かなる変貌を遂げるか:政治体制移 行の可能性を問う」 をテーマに議論が行われた (司会:天児慧氏;早大、プ ログラム幹事長) 。K.E. ブロスガード氏 (コペンハーゲンビジネススクール) 、 小嶋華津子氏 (筑波大)が労働者組合や利益団体という側面から共産党の 統治の現状について報告を行い、唐亮氏 (早大) 、高橋伸夫氏 (慶大) がコメ ンテータを務めた。 ブロスガード氏は中国経済における民間の力を指摘しつつも依然として党 (国)の力が強大であり、私営化する経済においても特権階級の権力の盤石 さを指摘し、今後もそれが維持されるであろうと予測した。小嶋氏はそうした 体制がある一方で、労働者のストライキという下からの突き上げの動きがある ことに注目し、多元化する現状への対処の必要性を強調した。高橋氏は政 府と経営者の密接な関 係に対して労働者が離 れている感があるがそう した関係に変化はあり 得るのか、と疑問を呈し た。またフロアから毛里 和子氏 (前プログラム幹 事長) は、労働組合のあ り方が我々の概念のも 第 2 セッション のとは違うの ではないかと 指摘し、 その客 観的合理性の 有無の如何に ついて疑問を 提 起した。ま た国 有 企 業 云々よりも企 業の寡占性の ほうが重要で 熱心な質問と議論が繰り広げられた はないか、と指 摘した。また望ましい労使関係とは何か、人事権の範囲などについて議論が 行われた。 第 3 セッションは 「“ 台頭する ” 中国といかに共存するか」と題して国際 関係や外交の分野からのアプローチによる議論が行われた (司会:神保謙 氏;慶大) 。ロバートロス氏 (ボストンカレッジ) 、王勇氏 (北京大) 、添谷芳 秀氏 (慶大)が 報 告を行 い、 任暁氏 (復旦 大) 、高木誠一 郎氏 (青学大) がコメンテー タとして登壇し た。 論 点とし ては既存の秩 第 3 セッション 序を支える覇 権国としての米国と新興国中国との間の攻防があり秩序変化において米国 と中国がどのような関係にあるのか、その未来はいかなるものか、また別の論 点として既存の秩序と中国の台頭、その際の国益の衝突の是非について議 論された。ロス氏は中国の台頭の際におけるナショナリズムの高まりを指摘 しつつも、衝突が避けられてきた点を評価し、王氏は現実主義と自由主義の 間のせめぎ合いを主張し、 「新冷戦」の可能性にも触れた。添谷氏は中国 が抱く被害者意識と自信の併存が中国のナショナリズムに内在し、問題を複 雑にしていると主張し、日本にとっては日米同盟を基軸に多角的な協力関係 が東アジアには重要だと述べた。任氏は 「振り子理論」という視点からどちら かに振れ過ぎる外交は問題だと主張した。高 木氏はバンドワゴン的な中国との 「共存」では なく 「競存」が必要だと主張した。最後に山 田辰雄氏 (慶大名誉教授)が閉会の辞におい て 「見取り図」としての中国論の重要性を主張 した。権威主義体制は引き続き続くであろう という視点、単に楽しい共存だけでなく、競争 しつつ戦争回避する関係の可能性についても 山田辰雄氏 言及した。中国の台頭が簡単に平和的という 題目だけでない 「共存」 の模索が続くのであろう。 いよいよ第 1 期の最終年である来年度 (2011 年度)のシンポジウムは 2012 年 1 月に早大大隈小講堂で開催の予定である。詳細は HP 等で確 認をいただき皆様のご支援をいただければ幸いです。 (編集構成:慶應義塾大学東アジア研究所現代中国研究センター、 早稲田大学現代中国研究所) 4