Comments
Description
Transcript
(57)【要約】 【課題】 糖摂取が好ましくない消費者や糖摂取を敬遠 する
JP 2005-46144 A 2005.2.24 (57)【要約】 【課題】 糖摂取が好ましくない消費者や糖摂取を敬遠 する消費者でも摂食が可能な、優れた食品の原材料とな るキノコ菌糸体培養物の製造方法を提供すること。 【解決手段】 糖をキノコ菌糸体の成長により消費され る量よりも過剰に添加して調製された培地を用いてキノ コ菌糸体を所定期間培養した後、キノコ菌糸体培養物と 発酵菌を混合し、キノコ菌糸体培養物を発酵させるとと もに、残糖を分解して糖含有量を低減化することを特徴 とする。 【選択図】 図6 (2) JP 2005-46144 A 2005.2.24 【特許請求の範囲】 【請求項1】 糖をキノコ菌糸体の成長により消費される量よりも過剰に添加して調製された培地を用 いてキノコ菌糸体を所定期間培養した後、キノコ菌糸体培養物と発酵菌を混合し、キノコ 菌糸体培養物を発酵させるとともに、残糖を分解して糖含有量を低減化することを特徴と する発酵キノコ菌糸体培養物の製造方法。 【請求項2】 培地が液体培地であることを特徴とする請求項1記載の製造方法。 【請求項3】 水100重量部に対して糖を0.3∼10重量部添加して調製された液体培地を用いて 10 キノコ菌糸体を培養することを特徴とする請求項2記載の製造方法。 【請求項4】 発酵キノコ菌糸体培養物に含まれる残糖の量が調製当初の液体培地に含まれていた糖の 量の少なくとも2/3以下になるまで分解により低減することを特徴とする請求項2また は3記載の製造方法。 【請求項5】 発酵菌が乳酸菌および/または酵母菌であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれ かに記載の製造方法。 【請求項6】 キノコ菌糸体がアガリクス・ブラゼイ菌糸体であることを特徴とする請求項1乃至5の 20 いずれかに記載の製造方法。 【請求項7】 キノコ菌糸体がメシマコブ菌糸体であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに 記載の製造方法。 【請求項8】 請求項1記載の製造方法で製造されてなることを特徴とする発酵キノコ菌糸体培養物。 【請求項9】 請求項8記載の発酵キノコ菌糸体培養物を加工してなることを特徴とする発酵食品。 【請求項10】 キノコ菌糸体培養物と発酵菌を混合し、キノコ菌糸体培養物を発酵させることで製造さ 30 れてなることを特徴とする発酵キノコ菌糸体培養物。 【発明の詳細な説明】 【技術分野】 【0001】 本発明は、糖摂取が好ましくない消費者や糖摂取を敬遠する消費者でも摂食が可能な、 優れた食品の原材料となるキノコ菌糸体培養物の製造方法に関する。 【背景技術】 【0002】 近年、数多くのキノコに種々の生理活性物質が含まれていることが報告されている。例 えば、アガリクス・ブラゼイ(Agaricus blazei)は、ブラジル原産の担 40 子菌類キノコであり、多糖の一種であるβ−グルカンを多く含むことで知られている。こ のβ−グルカンは、免疫賦活能力が高く、NK(ナチュラルキラー)細胞などの免疫細胞 を活性化させることにより、ガン細胞を攻撃して殺滅させる効果を有することから、アガ リクス・ブラゼイは、ガンやその他の成人病などに対して優れた効果を有し、健康食品な どとして重宝されている。とりわけ、その菌糸体は子実体に比べてβ−グルカンをより多 く含むことから、菌糸体を用いた製品開発が盛んに行われている。 アガリクス・ブラゼイの菌糸体は、糖を添加して調製された培地を用いて培養すること により生産されるが、糖を菌糸体の成長により消費される量よりも過剰に添加して調製さ れた培地を用いて培養すれば、菌糸体の成長が良好であることが知られている。従って、 アガリクス・ブラゼイの菌糸体の培養には、通常、このような糖を菌糸体の成長により消 50 (3) JP 2005-46144 A 2005.2.24 費される量よりも過剰に添加して調製された培地が用いられる。そして、所定時間培養し た後、菌糸体培養物から菌糸体を分離精製することでアガリクス・ブラゼイの菌糸体を用 いた製品とされる。 ところで、最近では、人が食することができる培地を用いてアガリクス・ブラゼイの菌 糸体を培養し、菌糸体培養物から菌糸体を分離精製することなく培養物自体を製品化する 方法が注目されている。このような方法は、菌糸体培養物から菌糸体を分離精製する工程 を必要としないので製造工程の簡略化が図れ、また、アガリクス・ブラゼイの有用な菌体 外生産物や培地由来の栄養成分の摂取が同時に可能となるといった利点を有する。 しかしながら、糖を菌糸体の成長により消費される量よりも過剰に添加して調製された 培地を用いて得られた菌糸体培養物には、多量の残糖が含まれているので、糖摂取が好ま 10 しくない消費者や糖摂取を敬遠する消費者にはこのような菌糸体培養物を用いた製品は嗜 好されないという問題があった。 【0003】 他方、近年、アガリクス・ブラゼイが有する優れた食効と機能が保持乃至増強され、ま た、品質面、安全面、風味、食感などの点において優れた食品の提供を図るべく、種々の 検討がなされている。このような技術背景をもとに、本出願人も、下記の特許文献1にお いて、アガリクス・ブラゼイの子実体および/または菌糸体を乳酸菌により乳酸発酵して 乳酸発酵食品とする技術を既に提案している。しかしながら、この文献においては、菌糸 体の発酵食品について具体的な開示はない。 【特許文献1】特開2001−128641号公報 20 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0004】 そこで本発明は、糖摂取が好ましくない消費者や糖摂取を敬遠する消費者でも摂食が可 能な、優れた食品の原材料となるキノコ菌糸体培養物の製造方法を提供することを目的と する。 【課題を解決するための手段】 【0005】 上記の点に鑑みてなされた本発明の発酵キノコ菌糸体培養物の製造方法は、請求項1記 載の通り、糖をキノコ菌糸体の成長により消費される量よりも過剰に添加して調製された 30 培地を用いてキノコ菌糸体を所定期間培養した後、キノコ菌糸体培養物と発酵菌を混合し 、キノコ菌糸体培養物を発酵させるとともに、残糖を分解して糖含有量を低減化すること を特徴とする。 また、請求項2記載の製造方法は、請求項1記載の製造方法において、培地が液体培地 であることを特徴とする。 また、請求項3記載の製造方法は、請求項2記載の製造方法において、水100重量部 に対して糖を0.3∼10重量部添加して調製された液体培地を用いてキノコ菌糸体を培 養することを特徴とする。 また、請求項4記載の製造方法は、請求項2または3記載の製造方法において、発酵キ ノコ菌糸体培養物に含まれる残糖の量が調製当初の液体培地に含まれていた糖の量の少な 40 くとも2/3以下になるまで分解により低減することを特徴とする。 また、請求項5記載の製造方法は、請求項1乃至4のいずれかに記載の製造方法におい て、発酵菌が乳酸菌および/または酵母菌であることを特徴とする。 また、請求項6記載の製造方法は、請求項1乃至5のいずれかに記載の製造方法におい て、キノコ菌糸体がアガリクス・ブラゼイ菌糸体であることを特徴とする。 また、請求項7記載の製造方法は、請求項1乃至5のいずれかに記載の製造方法におい て、キノコ菌糸体がメシマコブ菌糸体であることを特徴とする。 また、本発明の発酵キノコ菌糸体培養物は、請求項8記載の通り、請求項1記載の製造 方法で製造されてなることを特徴とする。 また、本発明の発酵食品は、請求項9記載の通り、請求項8記載の発酵キノコ菌糸体培 50 (4) JP 2005-46144 A 2005.2.24 養物を加工してなることを特徴とする。 また、本発明の発酵キノコ菌糸体培養物は、請求項10記載の通り、キノコ菌糸体培養 物と発酵菌を混合し、キノコ菌糸体培養物を発酵させることで製造されてなることを特徴 とする。 【発明の効果】 【0006】 本発明の発酵キノコ菌糸体培養物の製造方法は、糖をキノコ菌糸体の成長により消費さ れる量よりも過剰に添加して調製された培地を用いてキノコ菌糸体を所定期間培養した後 、キノコ菌糸体培養物と発酵菌を混合し、キノコ菌糸体培養物を発酵させるとともに、残 糖を分解して糖含有量を低減化することを特徴とするものである。 10 本発明によれば、糖摂取が好ましくない消費者や糖摂取を敬遠する消費者でも摂食が可 能な、優れた食品の原材料となるキノコ菌糸体培養物の製造方法が提供される。 【発明を実施するための最良の形態】 【0007】 本発明が適用されるキノコとしては、アガリクス・ブラゼイの他、メシマコブ、冬虫夏 草、ハナビラタケ、カンゾウタケ、マイタケ、シイタケ、ヤマブシタケ、カバノアナタケ 、マツタケ、霊芝、鹿角霊芝などが挙げられる。 【0008】 キノコ菌糸体の培養に用いる培地は、人が食することができる培地であれば液体培地で も固体培地でもよいが、一般に、菌糸体の大量生産には液体培地を用いた培養が適してい 20 る。液体培養によれば、効率よく栄養成分が吸収されるので菌糸体の成長が固体培養に比 べて良好である他、液体培養は、タンク培養ができるので場所をとらないといった利点や 滅菌がしやすいといった利点を有するからである。また、メシマコブや冬虫夏草などのキ ノコは、液体培養した場合、生理活性を持つ有効な物質を液体培地中に大量に排出すると いった事情もある。ここで、人が食することができる培地の構成成分としては、酵母エキ ス、麦芽エキス、ポリペプトン、おからやふすまなどの食品加工残さ、大豆粉末や乳清( ホエー)粉末、スキムミルクなどの他、下記の糖類などが挙げられる。 【0009】 培地を調製する際に用いられる糖としては、スクロース、グルコース、マルトース、フ ラクトース、ラクトース、トレハロース、スターチなどが挙げられる。これらの糖をキノ 30 コ菌糸体の成長により消費される量よりも過剰に添加して調製された培地における好適な 糖量は、本発明が適用されるキノコごとに異なるが、好適な液体培地としては、水100 重量部に対して糖を0.3重量部以上、望ましくは0.5重量部以上添加して調製された ものが挙げられる。なお、糖の添加量が多すぎると、キノコ菌糸体の成長がピークを超え てしまい逆に低下する恐れや、後の工程における発酵菌によるキノコ菌糸体培養物の糖含 有量の低減化が効率的に行われない恐れがある。従って、糖の添加量の上限は、水100 重量部に対して10重量部以下が望ましく、6重量部以下がより望ましい。 【0010】 キノコ菌糸体の培養期間は、本発明が適用されるキノコごとに異なるが、通常、1週間 ∼2ヶ月程度である。培養条件はキノコごとに知られている条件を採用すればよい。 40 【0011】 キノコ菌糸体を所定期間培養した後、キノコ菌糸体培養物と発酵菌を混合し、キノコ菌 糸体培養物を発酵させる。発酵菌がキノコ菌糸体培養物に含まれている残糖を資化して作 用することで、キノコ菌糸体培養物は、キノコ菌糸体が有する優れた食効と機能が保持乃 至増強され、また、品質面、安全面、風味、食感などの点において優れたものとなる一方 、残糖が分解されて糖含有量が低減化され、糖摂取が好ましくない消費者や糖摂取を敬遠 する消費者でも摂食が可能な、優れた食品の原材料となる。発酵の程度は、発酵キノコ菌 糸体培養物に含まれる残糖の量が調製当初の液体培地に含まれていた糖の量の少なくとも 2/3以下になるまで行うことが望ましい。 【0012】 50 (5) JP 2005-46144 A 2005.2.24 本発明において用いることができる発酵菌は、キノコ菌糸体培養物を発酵可能な微生物 のうち、病原性を有する微生物を除いたものであればその種類は問われない。好適な発酵 菌としては、乳酸菌、酵母菌、両者の複合菌であるケフィア菌が挙げられる。 乳酸菌としては、例えば、ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus c asei)、ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plant arum)、ラクトバチルス・ブレビス(Lactobacillus brevis) 、ラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum )、ラクトバチルス・ルーテリ(Lactobacillus reuteri)、ラク トバチルス・ヘルベティカス(Lactobacillus helveticus)な どのラクトバチルス(Lactobacillus)属に属するもの、ストレプトコッカ 10 ス(Streptococcus)属に属するもの、ラクトコッカス・ラクチス(Lac tococcus lactis)などのラクトコッカス(Lactococcus)属 に属するもの、ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属に属するも の、ロイコノストック・メセンテロイデス(Leuconostoc mesenter oides)などのロイコノストック(Leuconostoc)属に属するもの、ペデ ィオコッカス・アシディラクティシ(Pediococcus acidilactic i)などのペディオコッカス(Pediococcus)属に属するものなどが挙げられ る。これらは単独で用いてもよいし、混合して用いてもよい。 酵母菌としては、例えば、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)などのサッカロミセス(Saccharomyces)属に属 20 するもの、チゴサッカロミセス(Zygosaccharomyces)属に属するもの 、クルイフェロミセス(Kluyveromyces)属に属するもの、トルラスポラ・ デルブルッキ(Torulaspora delbrueckii)などのトルラスポラ (Torulaspora)属に属するものなどが挙げられる。これらは単独で用いても よいし、混合して用いてもよい。 乳酸菌自身や酵母菌自身およびこれらの発酵生産物は、例えば、NK細胞などの免疫機 能に関わる細胞を活性化し、免疫賦活作用を有する他、抗変異原性作用、高脂血症改善作 用、細胞賦活作用、抗アトピー作用、抗酸化作用、整腸作用などを有することが知られて おり(乳酸菌研究集談会編,乳酸菌の科学と技術,学会出版センター出版)、発酵キノコ 菌糸体培養物は、キノコ菌糸体そのものの有する優れた生理作用に加え、複合的な効果を 30 与えることができる。また、乳酸菌や酵母菌を用いる発酵により、雑菌の増殖を抑制する ことができ、風味や食感の点においても優れた食品材料とすることができる。複数種類の 発酵菌を混合して用いることで、それぞれの発酵菌の作用による複数の効果や相乗効果を 有する発酵キノコ菌糸体培養物を得ることも可能である。 【0013】 キノコ菌糸体培養物の発酵は、用いる発酵菌に適した公知の条件にて行えばよいが(例 えば好適な発酵温度は用いる発酵菌ごとに異なるが、通常、20∼45℃の範囲である) 、キノコ菌糸体培養物に発酵菌を接種するに際しては、予備培養によりある程度増殖させ た発酵菌をスターターとして用いることが望ましい。スターターは、キノコ菌糸体培養物 100重量部に対して0.05∼5重量部程度接種することが望ましい。発酵菌として乳 40 酸菌を用いる場合、例えば凍結保存しておいた乳酸菌を一般的な乳酸菌培養培地(例えば 、グルコース1重量部、酵母エキス0.5重量部、ペプトン0.5重量部、酢酸ナトリウ ム0.5重量部、無機塩類0.01重量部、水100重量部:pH7.0)に接種し、3 0∼45℃で4∼48時間程度静置培養し(例えばLactobacillus cas eiを用いる場合には37℃で24時間程度静置培養するのが好適である)、これにより 5 9 得られる対数増殖期の乳酸菌を約10 ∼10 CFU/mL(コロニー寒天平板法による 測定。CFUはコロニー形成単位である)で含む培養液をスターターとして用いることが 作業効率などの点において望ましい。発酵菌として酵母菌を用いる場合、例えば凍結保存 しておいた酵母菌を一般的な酵母菌培養培地(例えば、酵母エキス0.3重量部、麦芽エ キス0.3重量部、ペプトン0.5重量部、グルコース1重量部、水100重量部:pH 50 (6) JP 2005-46144 A 2005.2.24 6.0)に接種し、20∼35℃で4∼48時間程度振とう培養し、これにより得られる 5 8 対数増殖期の酵母菌を約10 ∼10 CFU/mL(上記に同じ)で含む培養液をスター ターとして用いることが作業効率などの点において望ましい。 複数種類の発酵菌を混合して用いる場合、予備培養の時点で混合培養すると菌種によっ てはpHや酵素などに対して感受性の高いものが存在するために発酵菌が均等に生育しな い場合がある。予備培養液に含まれる菌数が菌種ごとによって異なると、発酵生産物の官 能的好ましさや生理活性作用の増大に大きく影響する。従って、予備培養は個別に行うこ とが望ましい。 なお、予備培養に用いることができる培地としては、上記の培地以外にも、例えば、ス クロース、マルトース、フラクトース、ラクトース、トレハロース、スターチなどの糖や 10 、おからやふすまなどの食品加工残さ、大豆粉末や乳清(ホエー)粉末、スキムミルクな どの栄養源を基質とした培地などがある。 【0014】 以上の方法で製造された発酵キノコ菌糸体培養物は、所定の方法で加工され、発酵食品 とされる。発酵キノコ菌糸体培養物が液体培養物である場合、そのまま発酵飲料品などと して製品化することもできるし、凍結乾燥後に粉末化することで粉末品や錠剤品などとし て製品化することもできる。製品化の際には、必要に応じて所定の食品添加剤を添加して もよいことはいうまでもない。食品添加剤としては、カロリーを気にせず食することがで きるもの、例えば、低分子糖質が少ない難消化性デキストリンなどの低カロリーな食物繊 維、キシリトール、アスパルテーム、エリスリトール、アセスルファムカリウムなどの低 20 カロリーまたはカロリーゼロの甘味料などを用いることが望ましい。 【0015】 なお、キノコ菌糸体培養物を発酵させる前に、ヘミセルラーゼを主体とする酵素剤で菌 糸体を分解処理してもよい。このような処理を行うことで、例えば、β−グルカンの吸収 が容易な発酵キノコ菌糸体培養物を得ることができる。 【実施例】 【0016】 以下、本発明を実施例によってさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定して解釈 されるものではない。 【0017】 30 次に掲げる8種類の乳酸菌と2種類の酵母菌を発酵菌として用いてアガリクス・ブラゼ イ菌糸体とメシマコブ菌糸体の発酵菌糸体培養物を製造した。 (A)乳酸菌 1.Lactobacillus casei 2.Lactobacillus plantarum 3.Lactobacillus brevis 4.Lactobacillus fermentum 5.Lactobacillus reuteri 6.Lactococcus lactis 7.Leuconostoc mesenteroides 40 8.Pediococcus acidilactici (B)酵母菌 9.Torulaspora delbrueckii 10.Saccharomyces cerevisiae 【0018】 実施例1:発酵アガリクス・ブラゼイ菌糸体培養物の製造 アガリクス・ブラゼイ菌糸体を液体培地(酵母エキス2重量部、麦芽エキス2重量部、 グルコース2重量部、水100重量部:pH無調整でオートクレーブ滅菌したもの)に植 菌し、25℃で55rpmの条件にて33日間振とう培養することで、アガリクス・ブラ ゼイ菌糸体培養物を得た。次に、得られた菌糸体培養物100重量部に8種類の乳酸菌と 50 (7) JP 2005-46144 A 2005.2.24 2種類の酵母菌のスターター培養液をそれぞれ1重量部ずつ接種し、乳酸菌については3 5℃で、酵母菌については30℃で65時間静置して発酵菌糸体培養物とした。スタータ ー培養液は、乳酸菌については凍結保存しておいた乳酸菌を一般的な乳酸菌培養培地(グ ルコース1重量部、酵母エキス0.5重量部、ペプトン0.5重量部、酢酸ナトリウム0 .5重量部、無機塩類0.01重量部、水100重量部:pH7.0)に接種し、30∼ 45℃で4∼48時間程度静置培養することで予備培養し、これにより得られる対数増殖 8 期の乳酸菌を約10 CFU/mL(コロニー寒天平板法による測定)で含む培養液を用 いた。酵母菌については凍結保存しておいた酵母菌を一般的な酵母菌培養培地(酵母エキ ス0.3重量部、麦芽エキス0.3重量部、ペプトン0.5重量部、グルコース1重量部 、水100重量部:pH6.0)に接種し、20∼35℃で4∼48時間程度振とう培養 10 7 し、これにより得られる対数増殖期の酵母菌を約10 CFU/mL(上記に同じ)で含 む培養液を用いた。得られた発酵菌糸体培養物の特性を以下に示す。 【0019】 (1)生菌数について 図1に示す。図1から明らかなように、10種類のすべての発酵菌が発酵菌糸体培養物 中で生育していることを確認することができた。 なお、生菌数の測定は、コロニー寒天平板法に拠った。 【0020】 (2)pHについて 図2に示す。図2から明らかなように、乳酸菌発酵菌糸体培養物のpHは約4であった 20 。酵母菌発酵菌糸体培養物のpHは約5.5であった。 【0021】 (3)乳酸含有量について 図3に示す。図3から明らかなように、乳酸菌が乳酸を生成していることから、乳酸菌 発酵が進行していることを確認することができた。中でも、Lactobacillus reuteriの乳酸生成量が最も多かった(5.2g/L)。 なお、乳酸含有量の測定は、Roche社の測定キット(Fキット:D−乳酸/L−乳 酸)を用いて行った。 【0022】 (4)エタノール含有量について 30 図4に示す。図4から明らかなように、酵母菌がエタノールを生成していることから、 酵母菌発酵が進行していることを確認することができた。 なお、エタノール含有量の測定は、Roche社の測定キット(Fキット:エタノール )を用いて行った。 【0023】 (5)残糖量について 培地のみ(調製当初の培地)を100%とした時の割合(%)を図5に示す。図5から 明らかなように、10種類のすべての発酵菌による発酵菌糸体培養物の残糖量は、発酵前 に比べて低減化されていることを確認することができた。残糖量の低減化率に優れる発酵 菌は、乳酸菌では、Lactobacillus fermentum,Lactoba 40 cillus reuteri,Leuconostoc mesenteroides であった。酵母菌では、Torulaspora delbrueckiiであった。 なお、全糖量の測定は、フェノール−硫酸法に拠った。 【0024】 (6)抗酸化能(活性酸素消去能)について 大久保一良らのXYZ微弱発光法(ジャパンフードサイエンス、第38巻、8号、18 −21(1999))に従って測定した。本方法は、天然ラジカル消去物質が活性酸素及 びアセトアルデヒド存在下で微弱発光する現象を利用して、活性酸素消去能の測定に用い られている。この微弱発光は、X(活性酸素種)、Y(プロトン、エレクトロン供与体) 、Z(触媒種)の三つ巴反応で生じ、Y(活性酸素消去電子供与体)としての作用、及び 50 (8) JP 2005-46144 A 2005.2.24 Z(活性酸素消去反応触媒)としての能力、つまり活性酸素消去能力の強弱が発光輝度と してビットマップイメージ上に現れ、数値化することができるので、活性酸素消去物質の 分析に有用である。 具体的な測定方法は次の通りである。X試薬として2%過酸化水素水溶液、Y試薬とし て10%アセトアルデヒド没食子酸飽和溶液、Z試薬として10%アセトアルデヒド炭酸 水素ナトリウム飽和溶液を用い、24穴マイクロプレートのウェル中にて、発酵菌糸体培 養物の凍結乾燥物50mgに、X活性を測定するためにはY試薬とZ試薬を、Y活性を測 定するためにはX試薬とZ試薬を、Z活性を測定するためにはX試薬とY試薬を、それぞ れ500μL添加し、反応させることによって発せられた光の輝度を、高感度CCDカメ ラを備えた東洋紡績社のLumino Imaging Analyzer FAS−1 10 000を用いて30分間測定し、Media Cybernetic社のGel−Pro Analyzerを用いて定量した。 Lactobacillus fermentum,Lactobacillus r euteri,Leuconostoc mesenteroides,Torulas pora delbrueckii,Saccharomyces cerevisia eを用いて得た発酵菌糸体培養物についてのY活性とZ活性の測定結果(発酵前を100 とした時の相対活性)を図6に示す。図6から明らかなように、Y活性についてはすべて の発酵菌糸体培養物において発酵前に比べて若干の活性増大が見られた。Z活性について は乳酸菌発酵菌糸体培養物では発酵前に比べて活性低下傾向にあったが、酵母菌発酵菌糸 体培養物については著しい活性増大が見られ、抗酸化能が増強されていることを確認する 20 ことができた。 【0025】 (7)抗酸化能(ラジカル消去能)について 抗酸化能を評価する方法として一般的な方法として知られているDPPH(1,1−ジ フェニル−2−ピクリルヒドラジル)分光測定法により、Lactobacillus reuteri,Torulaspora delbrueckiiを用いて得た発酵菌 糸体培養物についての抗酸化能を評価した。その結果を図7に示す。図7から明らかなよ うに、いずれの発酵菌糸体培養物も、発酵前に比較して抗酸化能が増強されていることが わかった。 【0026】 30 実施例2:発酵メシマコブ菌糸体培養物の製造 メシマコブ菌糸体を液体培地(酵母エキス0.4重量部、ペプトン0.4重量部、スク ロース1重量部、水100重量部:pH無調整でオートクレーブ滅菌したもの)に植菌し 、25℃で55rpmの条件にて36日間振とう培養することで、メシマコブ菌糸体培養 物を得た。次に、得られた菌糸体培養物100重量部に8種類の乳酸菌と2種類の酵母菌 のスターター培養液をそれぞれ1重量部ずつ接種し、乳酸菌については35℃で、酵母菌 については30℃で72時間静置して発酵菌糸体培養物とした。スターター培養液は、実 施例1に記載のものと同様のものを用いた。10種類の発酵菌を用いて得た発酵菌糸体培 養物のうち、Lactobacillus plantarum,Lactococcu s lactis,Leuconostoc mesenteroides,Torul 40 aspora delbrueckiiを用いて得た発酵菌糸体培養物についての生菌数 、pH、乳酸含有量、エタノール含有量、残糖量、抗酸化能(活性酸素消去能)について 、実施例1と同様にして測定した結果をそれぞれ図8∼図13に示す。図10から明らか なように、Lactobacillus plantarum,Lactococcus lactis,Leuconostoc mesenteroidesを用いて得た発 酵菌糸体培養物は乳酸菌発酵が進行していることを確認することができた。図11から明 らかなように、Torulaspora delbrueckiiを用いて得た発酵菌糸 体培養物は酵母菌発酵が進行していることを確認することができた。図12から明らかな ように、いずれの発酵菌糸体培養物についても、残糖量は発酵前に比べて低減化されてい ることを確認することができた。図13から明らかなように、いずれの発酵菌糸体培養物 50 (9) JP 2005-46144 A 2005.2.24 も、発酵前に比べてY活性の増大が見られた。また、Leuconostoc mese nteroides,Torulaspora delbrueckiiを用いて得た発 酵菌糸体培養物についての抗酸化能(ラジカル消去能)を、実施例1と同様にして測定し た結果を図14に示す。図14から明らかなように、Torulaspora delb rueckiiを用いて得た発酵菌糸体培養物は、発酵前に比較して抗酸化能が増強され ていることがわかった。 【0027】 実施例1と実施例2から、キノコ菌糸体培養物の発酵の程度と残糖量の低減化率は、キ ノコ菌糸体の種類と用いる発酵菌によって異なることがわかったが、上記の実験条件にお いてキノコ菌糸体培養物の発酵の程度と残糖量の低減化率に劣っていた発酵菌であっても 10 、実験条件の最適化を図ることにより、キノコ菌糸体培養物の発酵の程度と残糖量の低減 化率を向上することができるものと推察される。 【0028】 製造例1:発酵飲料品の製造 実施例1で得たLactobacillus reuteri発酵アガリクス・ブラゼ イ菌糸体培養物を滅菌処理した後、キシリトールを加えて味覚を調整して発酵飲料品を製 造した。 【0029】 製造例2:粉末品の製造 製造例1で得た発酵飲料品を凍結乾燥した後、凍結乾燥物を粉砕機にて粉砕し、粉末品 20 を製造した。 【0030】 製造例3:錠剤品の製造 製造例2で得た粉末品を打錠機にて打錠し、錠剤品を製造した。 【産業上の利用可能性】 【0031】 本発明は、糖摂取が好ましくない消費者や糖摂取を敬遠する消費者でも摂食が可能な、 優れた食品の原材料となるキノコ菌糸体培養物の製造方法を提供することができる点にお いて、産業上の利用可能性を有する。 【図面の簡単な説明】 30 【0032】 【図1】実施例1における発酵菌糸体培養物中の発酵菌生菌数を示すグラフ。 【図2】同、発酵菌糸体培養物のpHを示すグラフ。 【図3】同、発酵菌糸体培養物の乳酸含有量を示すグラフ。 【図4】同、発酵菌糸体培養物のエタノール含有量を示すグラフ。 【図5】同、発酵菌糸体培養物の残糖量を示すグラフ。 【図6】同、発酵菌糸体培養物の抗酸化能(活性酸素消去能)を示すグラフ。 【図7】同、発酵菌糸体培養物の抗酸化能(ラジカル消去能)を示すグラフ。 【図8】実施例2における発酵菌糸体培養物中の発酵菌生菌数を示すグラフ。 【図9】同、発酵菌糸体培養物のpHを示すグラフ。 【図10】同、発酵菌糸体培養物の乳酸含有量を示すグラフ。 【図11】同、発酵菌糸体培養物のエタノール含有量を示すグラフ。 【図12】同、発酵菌糸体培養物の残糖量を示すグラフ。 【図13】同、発酵菌糸体培養物の抗酸化能(活性酸素消去能)を示すグラフ。 【図14】同、発酵菌糸体培養物の抗酸化能(ラジカル消去能)を示すグラフ。 40 (10) 【図1】 【図2】 JP 2005-46144 A 2005.2.24 (11) 【図3】 【図4】 JP 2005-46144 A 2005.2.24 (12) 【図5】 JP 2005-46144 A 2005.2.24 (13) 【図6】 【図7】 JP 2005-46144 A 2005.2.24 (14) 【図8】 【図9】 JP 2005-46144 A 2005.2.24 (15) 【図10】 【図11】 JP 2005-46144 A 2005.2.24 (16) 【図12】 JP 2005-46144 A 2005.2.24 (17) 【図13】 JP 2005-46144 A 2005.2.24 (18) 【図14】 JP 2005-46144 A 2005.2.24 (19) JP 2005-46144 A 2005.2.24 フロントページの続き 7 (51)Int.Cl. C12R FI テーマコード(参考) 1:645 ) C12N 1/00 K (C12N 1/00 C12R 1:645 C12R 1:01 C12N 1/00 K (C12N 1/14 C12R 1:01 1:645 ) C12N 1/14 E C12R 1:645 C12R ) (72)発明者 平間 稔 山梨県中巨摩郡玉穂町乙黒326番地 株式会社応微研内 (72)発明者 堀内 勲 山梨県中巨摩郡玉穂町乙黒326番地 株式会社応微研内 Fターム(参考) 4B018 MD81 MD82 MD84 MD86 ME06 MF13 4B065 AA01X AA71X AA72X BB14 BC13 BC50 CA42