Comments
Description
Transcript
持続可能な行政経営について
平成 23 年度市町村課研修生卒業研究報告書 持続可能な行政経営について ~民間経営手法の更なる活用~ 平成 24 年(2012 年)3月 はじめに 地方分権改革から始まった一連の行政改革の流れの中で、行政評価制度、人事評価制度 等様々な制度が導入され、 「行政経営」や「公共経営」等の言葉が市町村の総合計画や行政 改革計画等で頻繁に使われている。又長引く景気低迷の影響から地域経済の不振が著しく、 市町村では地域再生や地域振興に取組んでおり、「地域経営」という言葉もある。さらには 自治体間競争や都市間競争に勝ち抜くための「自治体経営」、「都市経営」や「マネジメン ト」という言葉も使われており、行政運営において、「経営」や「マネジメント」という言 葉は当然のものとなっている。 「経営」がキーワードとなり、首長には経営者としての経営能力が求められるとともに、 職員にも経営能力が求められる時代となっている。 市町村の運営は、ある「決まり」から外れないように統制しながら、 「仕組み」の中で「成 果」を上げる「行政管理」の手法から、「成果」を上げ続けられる「仕組み」を構築し、持 続的な組織の存続を目指す「行政経営」の手法へと組織運営の在り方の転換期にあると思 われる。そこで、これまでの一連の改革や経営手法の取組みにより導入された制度の成果 と問題点を検証し、市町村における「持続可能な行政経営」とはどういったことなのか、 又それはどういった観点で行われる運営なのかについて考察することとする。 なお、文中の意見に係る部分は筆者の私見であることを予めお断りしておく。 目 次 はじめに 第1章 市町村を取巻く状況 第2章 市町村における行政管理の現状 1 人についての取組み (1) 人材育成の推進 (2) 人事評価制度 (3) 職員提案制度 (4) 給与制度 2 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1 意見公募手続制度の導入 (2) 住民協働 (3) 事業仕分け 3 4 8 サービスについての取組み (1) コストについての取組み (1) 職員数の削減 (2) 民間委託等の推進 (3) 新公会計制度の導入 第3章 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4 民間企業の経営改善の取組み 10 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・13 (1) 組織が目標に向かうための手法 (2) グローバル企業の人材評価 (3) 長期的な課題に対する対処法 (4) システム効率化への取組み (5) 財務体質の改善への取組み (6) マーケティング・リサーチの実施 第4章 1 民間企業における経営改善の取組みの活用 民間企業と市町村 (1) 理念 (2) 組織の構成 (3) サービスの提供 (4) 組織の運営 2 18 民間企業の取組みを行政に活かす手法の検討 (1) 手法の目的化 (2) 施策と住民ニーズの乖離 (3) 改革意識の欠如 (4) その他 3 行政経営へ 第5章 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・25 1 行政経営方式の分類と発展方向 25 2 職員の能力を結集できる組織へ 28 参考文献等一覧 21 24 持続可能な行政経営について おわりに ・・・・・・・・・・・・・・・18 第1章 市町村を取巻く状況 現在の市町村を取巻く状況は厳しいものがある。当たり前のように財政再建、行財政改 革等が市町村の総合計画等にうたわれている状況であり、行政運営に対する何らかの改革 を行わなければ立ち行かなくなるという認識は、市町村に共通認識として存在している。 そこで、市町村を取巻く状況を概観してみると、大きく次の3点が挙げられる。まず第 1に、人口構造の変化である。我が国の人口は、平成 17 年に戦後初めての減少に転じて以 来、減少傾向が続いており、今後は、急速に少子高齢化しながら大幅な人口減少の進行が 見込まれている。三大都市圏においても人口減少が見込まれているが、地方圏においては、 より深刻な人口減少が進行していくものと見込まれている。少子高齢化は、高齢者への医 療、福祉に係る行政需要の増大につながるとともに、現在の都市環境や生活環境を高齢社 会にも対応した環境へと街づくり政策の転換が求められることになる。又生産年齢人口の 減少は、税収入の減少や消費活動の減少となり、都市の経済活動力の低下へとつながって いくものである。さらに、このまま人口減少と高齢化が進行すれば、限界集落ひいては限 界自治体となり、その存続すら危ういものとなっていくものである。 国立社会保障・人口問題研究所の将来推計人口を基に、大阪府(以下「府」という。 )の 平成 17 年から平成 47 年の人口構造の変化を見てみると、図表1のとおりとなる。又府内 の市町村の様子について、平成 17 年人口を基準とした平成 47 年の推計人口は、年少人口 (0~14 歳)は、半数の市町村で 60%以下に、中には 30%以下になるところも見られる。 生産年齢人口(15~64 歳)は、府全体としては 70%程度で推移するが、町村においては 50% 以下になるところもある。一方、老年人口(65 歳以上)は、半数の市町村で 1.5 倍以上に 増加し、75 歳以上人口ではほとんどの市町村で2倍以上になっており、人口減少と高齢化 は避けられない見通しである。 【図表1】大阪府人口ピラミッド図(平成 17 年、平成 47 年) 国立社会保障・人口問題研究所「日本の市区町村別将来推計人口(平成 20 年 12 月推計) 」から作成 第2には、社会経済環境の変化に伴い、国及び地方を通じて財政状況が依然として厳し い状況に置かれているということである。バブル経済の崩壊以降、長引く景気低迷の影響 1 により、我が国の経済は深刻な状況が続いている。府においても、平成になって以降、全 国に比して経済成長率が低い年度が多く、より一層厳しい状況が続いている。経済不況は、 当然ながら市町村財政にも影響を及ぼし、地方税をはじめとした歳入の減少や社会保障費 をはじめとした歳出の増加を招いている。そして、その財源不足を補填するため、また景 気対策のための地方債の増発が地方債残高を年々増加させ、将来の財政を圧迫する要因と なる。 府内の市町村においても、歳入面では、税源移譲のあった平成 19 年度の地方税収入をピ ークに減少(平成 22 年度決算で、地方税収入の合計は平成 19 年度比 6.2%の減少)してい る一方、歳出面では、扶助費の増加(平成 22 年度決算で、平成 19 年度決算比 33.2%の増 加)が目立っており、経常収支比率は全国平均より高い状況が続いている(平成 22 年度決 算で、全国平均 91.8%に対し、府内市町村平均 97.6%)ことから、財政状況は非常に厳し いと言える。又図表2では、前述の少子高齢化が進行すると社会保障給付費も増加すると いった関係性がわかる。 【図表2】少子高齢化と社会保障給付費の関係 昭和 45 年 平成2年 平成 23 年 平成 37 年 (1970 年) (1990 年) (2011 年) (2025 年) 財務省「日本の財政を考える ホームページ」 「6.少子高齢化と財政の関係は?」から作成 第3には、地方分権の進展である。住民に身近な行政はできる限り市町村に委ねること 2 を基本として、平成 11 年に「地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律」 (以下「地方分権一括法」という。)が成立したのを契機とし、国、都道府県及び市町村の 関係が主従関係から対等な協力関係へと移行した。そして平成 14 年には、一層の地方分権 と財政再建を進展させるため、 「経済財政運営と構造改革に関する基本方針 2002」が閣議決 定され、その中で「三位一体改革」が検討された。さらに平成 18 年には、地方分権改革を 総合的かつ計画的に推進するために「地方分権改革推進法」が成立し、同法に基づき設置 された地方分権改革推進委員会が調査審議を行い、4つの勧告と2つの意見を内閣総理大 臣に提出した結果、平成 21 年に「地方分権改革推進計画」が策定され閣議決定に至った。 同計画に基づく地域主権改革の第一弾として、「地域の自主性及び自立性を高めるための改 革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律案」、「国と地方の協議の場に関する法 律案」及び「地方自治法の一部改正法案」の3法が平成 23 年第 177 回通常国会において成 立したところである。これら3法に基づき、国と地方の協議の場の法制化、義務付け・枠 付けの見直し、条例制定権の拡大等今後の地域主権改革の推進が図られているところであ る。 府においては、平成8年より分権時代にふさわしい府と市町村の関係を確立するため、 現行法制度の枠組みの中で、市町村の自主的判断と選択に基づき、市町村への事務移譲、 市町村に対する関与の廃止縮小等、府から市町村への分権を推進するとともに、府・市町 村間の連携を一層強化することにより、まちづくりの推進、住民サ-ビスの向上等、市町 村行政の充実を図り、あわせて大阪が地方分権を先導する役割を果たすことを目的に大阪 版地方分権推進制度を実施している。 また、平成 23 年3月 11 日に発生した東日本大震災では、被害が極めて甚大で広範囲に わたり、市町村の行政機能が破壊されているところもある中、被災市町村に対する市町村、 都道府県及び国からの水平・垂直連携による様々な復興支援において適切に役割分担を行 い、復興に向けた取組みが進んでいる。その復興の主体は住民に最も近い市町村であり、 復興への道筋を示し、地域主体で進めていく責務がある。ここでも、基礎自治体である市 町村の果たすべき役割が重要であると再認識されているところである。 これらのことから、市町村を取巻く状況は時々刻々と変化し厳しさを増している。そし て、市町村が果たすべき責任と役割も増大してくることがわかる。このような状況は、市 町村にとって今まで経験したことがないものであり、今後、これらの状況に対して、今ま でどおりの行政運営を行うようであれば、破綻するおそれは、どの市町村においても起こ り得る話である。そこで本稿では、どのような行政運営を行えば、あるいは行政改革を行 えば、求められる責任と役割を果たしつつ持続可能な行政運営が可能となるのか考察する こととする。第2章では、市町村の行政管理の現状について検証をすることとし、第3章 では、民間企業での経営改善の取組みについて紹介する。第4章では、第3章までの内容 を踏まえ、民間企業での取組みを市町村に活かす方法を検討することとし、第5章で、持 続可能な行政経営について考察することとする。 3 第2章 市町村における行政管理の現状 地方分権一括法に表れているように、「地方のことは地方で」との考えから地方分権が推 進され、地方の担う行政サービスもその範囲に広がりを見せている。高度経済成長期のよ うな右肩上がりの経済成長を背景とした税収入の伸びが見込めない中、急激な少子高齢化 による社会保障費の増大、社会の成熟化による住民ニーズの多様化、高度化等により、歳 出が増加する傾向にある。 こうした状況下において、市町村がすべての行政サービスを提供していくということは、 人的、物的資源等の限界もあり、困難なことである。又住民意識やライフスタイルの多様 化に伴い、行政のみによるサービスでそのニーズに的確に応えていくということも容易で はない。しかし、市町村はこのような厳しい状況にあっても必要な行政サービスを持続的 に提供することが求められる。そのためにも、限られた人的、物的資源等を効果的かつ効 率的に配分し、行政サービスを実施していくことは当然のことであるが、多様なニーズに 対応すべく、住民団体やNPO法人、民間企業等の様々な主体との連携を図っていくとと もに、身近な公共の分野において、共助の精神で活動する「新しい公共」の担い手として 支援していくことも必要である。 これらのことを踏まえ、ここでは、市町村が直面するさまざまな課題に対する取組みと 具体的な手法について、人・サービス・コストの側面から分析する。そしてその内容と結 果を踏まえ、それによってもなお残る課題及び新たに直面する課題について考察する。 1 人についての取組み (1) 人材育成の推進 地方分権の進展や市町村合併に伴い、市町村の役割や責任が増大する一方、行政改 革による職員数の削減が進められる中で、住民ニーズの多様化、高度化等に対応し、 適切な行政サービスを提供していくためには、市町村が自らの政策立案及び職務遂行 能力を強化することが重要であり、個々の職員には困難な課題を解決する能力と高い 業績をあげることが求められている。そういった中、市町村においては、職員の能力 開発を長期的かつ総合的な観点で効果的に推進するため、人材育成の目的や方策、こ れからの時代に求められる職員像等を明確にした人材育成基本方針を策定し、職員研 修の充実を図っている。職員研修は、①他の市町村や民間企業の職員等と接触・交流 する機会の提供や自己啓発度をチェックするリストの配付などにより、職員が自分自 身を知る自己啓発のための研修、②職場において上司や先輩等が仕事を通じて行う職 場研修(OJT)、③本来の職務から離れて都道府県、市町村間、自治大学校等へ派遣・ 出向して行われる職場外研修が主な研修となっており、それぞれの特性を踏まえた研 修内容が策定されているところである。 しかし、府内市町村では、平成 23 年4月現在で、6市町村でこの人材育成基本方針 4 が未策定となっており、地方公務員法第 39 条第3項に基づく研修に関する基本的な方 針についても1市が未策定となっている。 このように府内市町村では人材育成に 対する取組みや実施状況にばらつきがある。 府内市町村における研修事例を挙げると、岸和田市においては、費用対効果を意識 しながら9か月にわたってグループで調査研究を続け、その成果をまとめる行政課題 実践研修を実施している。研究課題は、研修生自身が日々の業務の中で直面している 課題の中から、重要度が高く、自分たちの関心が高いテーマを選んでいる。この研修 では、採用後5年を経過した中核的な業務を担う職員に「問題の発見、解決能力」を 身につけてほしいという点を重視し、研修生が「主体的に考え、自主的に学ぶ」こと を目的として実施している。 また、広域的な研修実施組織として、府内市町村において、政令指定都市を除く 41 市町村職員の研修を実施する目的で、おおさか市町村職員研修センター(愛称:マッ セ OSAKA)が設置されており、市町村振興宝くじ(通称:サマージャンボ宝くじ)の収 益金を活用した基金の運用により、様々な研修を実施している。平成 23 年度の内容と しては、個人の能力を活かす目的の「能力向上研修」や職務に必要な知識や技能を習 得する目的の「専門実務研修」等 100 を超えるプログラムが実施されている。これら の実施については、府内 41 市町村職員の共同研修の場であるという認識に立ち、研修 生相互の交流と情報交換に配慮しながら、講師の招聘や研修の性質上の理由で市町村 単独では実施することが困難であるようなものを実施している。 しかし、人材育成については、どれほど研修制度が充実しても、実際にそれを受講 する職員が受け身であれば、研修の本来の目的が果たされない。職員が自主的・能動 的に受講することでその研修の効果が上がることは自明のことである。故に、職員の 積極性を引き出す研修制度を構築することが必要となる。 (2) 人事評価制度 市町村が住民の期待に応える行政サービスを提供していくための人事行政のあり方 が問われているなかで、人事評価制度は、評価結果を任用や給与等の処遇、人材育成 等に活かすことにより、職員のモチベーションを高め、組織の士気や公務能率を向上 させる効果があると考えられている。国においては平成 19 年の国家公務員法改正に基 づき、既に平成 21 年4月から新たな仕組みが実施されているが、地方公務員について は、平成 19 年に人事評価制度の導入を含む地方公務員法改正案が国会に提出されたが、 平成 21 年の衆議院の解散に伴い、審議未了で廃案となっている。しかし、能力・実績 主義に基づく人事管理を推進し、従来の勤務成績の評定(地方公務員法第 40 条)にと どまらず、公正かつ客観的な人事評価を実施することが求められている。 府においても、府内市町村に対して人事評価制度を導入するよう助言を行っている ところであるが、平成 22 年度において、府内では、未だ地方公務員法に定める勤務成 5 績の評定すら実施していない団体が7市町存在している状況である(図表3参照)。 一方、勤務成績を昇給に反映している団体は豊中市、吹田市、枚方市及び箕面市の 4市、勤勉手当に反映している団体は豊中市、枚方市、茨木市、寝屋川市、熊取町及 び田尻町の6市町であり(図表3参照)、まだまだ導入が進んでいないのが現状である。 導入に至らない理由としては、「評価制度が確立されておらず、評価者によって評価に ばらつきがあるため現段階での給与反映には抵抗がある」というものが多い。このよ うに府内市町村では、人事評価制度の必要性については十分認識はされているものの、 様々な事情で導入が進んでいない状況である。今後は、能力・実績主義に基づく公正 な人事管理を推進するためにも、適宜、人事評価制度を導入して組織の士気や公務能 率の向上を図るとともに、人材育成にも活用していく必要がある。 また、この人事評価制度において、被評価者が納得できるような公平・公正な評価 を実現しなければ、職員同士に不信感が生じるとともに、モチベーションの低下を招 くおそれがある。制度の試行と評価者研修を重ね、より客観的で公平・公正な制度と なるよう努めなければならない。市町村ごとに事情は異なるが、住民からの理解が得 られるよう、研究・検討を進めていく必要がある。 【図表3】平成 22 年度勤務成績の評定の実施状況 平成22年度勤務成績の評定の実施状況 対象:平成22年度 給与への反映 勤務成績の評定 22年度 実施していない 市町村名 22年度 実施 岸和田市 豊中市 池田市 吹田市 泉大津市 高槻市 貝塚市 守口市 枚方市 茨木市 八尾市 泉佐野市 富田林市 寝屋川市 河内長野市 松原市 大東市 和泉市 箕面市 柏原市 羽曳野市 門真市 摂津市 高石市 藤井寺市 東大阪市 泉南市 四條畷市 交野市 大阪狭山市 阪南市 島本町 豊能町 能勢町 忠岡町 熊取町 田尻町 岬町 太子町 河南町 千早赤阪村 計 試 行 中 未 実 施 上 位 の 区 分 を 適 用 昇給 勤勉手当 (標準以外の適用) (標準以外の適用) 適 用 職 員 ○ ○ ○ ○ 上 位 の 成 績 率 を 適 用 下 位 の 区 分 を 適 用 適 用 職 員 ○ 管理職・一般職 ○ 管理職・一般職 ○ 管理職 適 用 職 員 下 位 の 成 績 率 を 適 用 適 用 職 員 ○ 管理職・一般職 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 管理職 ○ ○ ○ ○ 管理職・一般職 管理職・一般職 管理職 ○ 管理職 ○ 管理職 ○ ○ 管理職・一般職 ○ ○ 管理職・一般職 管理職・一般職 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 管理職・一般職 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 管理職 管理職 ○ ○ ○ 29 5 7 1 4 5 6 【 備考 】 ・「勤務成績の評定」とは、地方公務員法第40条に規定するものをいい、能力評価、業績評価、また、その他簡易な評価であっても、同条文 を根拠とし、書面で行ってるもの全てをいう。 ・評定に関する規程はあるが、運用していない(実際に評定を行っていない)場合は、「実施していない」とする。 6 (3) 職員提案制度 市町村は行政の事務処理について、職員の研究心及び職務意識の高揚を図り、行政 運営への職員参画及び行政運営の向上に資することを目的として職員提案制度を取り 入れている。職員提案制度は、①提案者は、個人であるかグループであるかを問わな い、②提案内容は、事務の簡素化・効率化、住民サービスの向上及び収入の増加又は 経費の削減、③提案の種類は、新規提案又は実施中のものの改善提案が主な構成とな っている。 寝屋川市では、職員の能力を最大限に活用して、市民サービス等の向上と行政運営 の効率の向上を目指すことを目的に、平成3年度から職員提案制度に取り組んでいる。 日々の業務改善に対する取組みを奨励していくことで、「生き生き楽しく働く職場づく り」を目指し、全庁的な改善意識の定着を図りながら職員の意識改革に努め、持続的 な市民サービス向上の連鎖に繋げることも狙いとしている。具体的には、個人あるい はグループ単位で①改善報告、②自由提案、③課題提案のいずれかの区分で提案し、 優秀な提案には努力賞、優秀賞、委員特別賞などが与えられる。平成 22 年度の報告・ 提案数は 790 件にも上ることから、職員の意識にも十分定着してきたと考えられる。 導入についての注意点としては、制度の運用方法によっては、提案件数を上げるこ とが目的となり、所属長から与えられたノルマにより、半ば強制的に提案させられる 場合もあり、職員の負担感が募るとともに、提案内容についても精度の低いものが増 加することも考えられる。そうなると、「質より量」の提案制度となってしまい、制度 そのものが形骸化することになる。また、審査過程が不明瞭であれば、職員の提案意 欲がそがれる場合もあるため、審査過程の透明性、審査基準の客観性・公平性を確保 する必要がある。 (4) 給与制度 地方公務員の給与制度については、平成 18 年度の国家公務員の給与構造改革を踏ま え、「地域民間給与の反映」 、「職務・職責に応じた給与構造への転換」や「勤務実績の 給与への反映の推進」等を趣旨として、大きな改正が行われたところである。又地方 公務員の給与水準は、厳しい財政状況等により平成 16 年度から7年連続で国家公務員 の給与水準を下回る結果となっている(図表4参照)。 府内市町村においても同様に国家公務員の水準を下回る結果となっているが、未だ に不適切な給与制度が残っている市町村もある。平成 23 年4月1日現在では、実際の 役職に相当する額より高水準の給料に格付ける、いわゆる「わたり」が残っている市 町村は 20 市町存在し、手当についても、住居手当、通勤手当、特殊勤務手当等で国家 公務員よりも手厚い内容としている市町も存在する。なかには、そのような制度によ り上昇した給与水準を給与の特例減額(給与カット)により国家公務員の水準と均衡 させている市町も見受けられる。そもそも給与カットは、財源を確保するために一定 7 期間給与を減額するものであり、給与水準を調整するためのものではない。住民に理 解され、職員の努力が報われる給与制度とするためには、給与構造改革の趣旨に沿っ た適切な給与制度に改めるべきであり、給与カットについては、各市町村の財政状況 等に応じて独自に判断されるべきものである。年功的な要素を色濃く残す「わたり」 等を是正することなく給与カットを続けていると、職員のモチベーションの低下を招 くおそれがある。 【図表4】ラスパイレス指数の推移 ※ラスパイレス指数:一般行政職について、地方公務員と国家公務員の給与水準を、国家公務員の構成 を基準として、 学歴別、経験年数別に平均給料月額を比較し、国家公務員の給与 を 100 とした場合の地方公務員の給与水準を示したもの。 2 サービスについての取組み (1) 意見公募手続制度の導入 意見公募手続制度(以下「パブリックコメント」という。)は、国においては、平成 11 年4月から「規制の設定又は改廃に係る意見提出手続」 (平成 11 年3月 23 日閣議決 定)に基づき各省庁で導入され、平成 17 年には、行政手続法の改正により「意見公募 手続等」の規定が法制化されたため、 「規制の設定又は改廃に係る意見提出手続」は平 成 18 年4月1日に廃止された。 市町村においても、政策等を決定する時に、その政策案の影響が及ぶ住民に政策案 を公表し、意見等を求め政策案に反映させているところである。又寄せられた意見に 対する行政側の考え方も公表することで、住民に行政参画の機会を提供するとともに、 行政の公正性と透明性の向上を図る手続きとして、制度化されてきている。府内市町 村におけるパブリックコメントの制定状況については、条例、要綱、要領等による規 定を含めて 33 市町村において制定されており、8市町が未制定となっている(平成 22 8 年 10 月1日現在)。制度は多くの市町村で制定されつつあるが、住民の意見を聴いた というアリバイづくりの制度とならないように更なる研究・検討を進めなければなら ない。 (2) 住民協働 地域社会の課題が複雑かつ多様化してきた中、従来の行政サービスだけでは、住民 ニーズに十分に対応できなくなってきている。そこで住民、自治会・町内会、ボラン ティア団体、民間事業者及び行政がお互いの立場を理解し、不特定多数の利益の増進 を図るという共通目標に向かって対等な立場で努力し、その成果と責任を共有しあう ことで、行政にとっては新しい行政サービスや有効な取組みが可能となり、又職員の 意識改革を図ることができると考えられる。そして住民にとっては、身近な地域環境 づくりに取組み、今までになかった行政サービス等を受けられるようになる。住民協 働の形態は様々であり、共催、協議会、委託、補助、後援等があるが、その取組み内 容は、新たな行政サービスの提供、環境や地域の課題への取組み等となっている。又 その取組みや結果を公開することで、行政運営について透明性を高めることにも繋が っていると考えられる。 熊取町では、 「協働によるまちづくり」や「協働の理念」を実現するために、住民 提案協働事業制度を平成 22 年度より実施している。具体的には、公益性を有し、主に 町内で実施される等の要件を満たした事業を個人又は団体で提案し、審査を経て、採 択された場合に補助金が交付される仕組みである。実績としては、平成 23 年度事業実 施分として環境保護や観光振興等様々な分野で8件の提案があり、その全てが採択さ れている。 住民協働の取組みにおいては、行政だけが声高に「協働」と叫んでも、住民等に協 働の理念や考え方があまり浸透していない例も見受けられる。住民協働の推進は、行 政と住民等が共通認識を持ち、一緒になって進んでいくことが重要となる。 (3) 事業仕分け 事業仕分けについては、平成 21 年に鳩山民主党政権が平成 22 年度予算編成のため に行ったものが記憶に新しい。予算の編成過程において、それまで軽視されがちであ った事業執行の実態について、外部の視点からその妥当性を検証するという点で画期 的なものであった。 市町村においてもこうした事業仕分けの趣旨に鑑み、同様の検証を実施しはじめて いるところもある。例えば枚方市においても、試行的ではあるが実施している。具体 的には、対象 36 事業の実施方法、費用対効果等について、その妥当性を検証・検討す るものであった。同市ホームページによれば、仕分けにより事業の改善、再構築及び 廃止を行った 19 事業を平成 23 年度当初予算に反映している。その削減額は、平成 22 9 年度当初予算との比較で、合計 5,146 万5千円というもので、一定の効果が表れたも のといえる。 国の事業仕分けについては、まだその歴史が浅く、その結果が軽視されるなど、課 題も多く抱える。今後、その効果と課題の克服が検討されるであろうが、 「外部の視点 からその妥当性を検証する」事業仕分けの趣旨は、いわゆるPDCAサイクルの「チ ェック」機能として非常に意義深いものであると思われる。 また、市町村では行政内部での評価制度として、事業評価制度や行政評価制度がす でに導入されているところも多い。今後は、行政内部でのチェック機能の充実を図り 積極的な情報公開を進めるとともに、外部の視点を導入していくなど、これらの制度 の充実・発展を図っていくことも検討していく必要がある。 3 コストについての取組み 市町村においては厳しい財政状況を踏まえ、簡素で効率的な行財政システムを構築し てきたところである。平成 17 年の国の「地方公共団体における行政改革の推進のための 新たな指針」を受け、平成 17 年度を起点としておおむね平成 21 年度までの具体的な取 組みを明示した「集中改革プラン」を作成・公表している。さらに平成 18 年に閣議決定 された「経済財政運営と構造改革に関する基本方針 2006」を踏まえた平成 18 年「地方公 共団体における行政改革の更なる推進のための指針」 (以下「18 年指針」という。)を受 け、人件費改革、公共サービス改革及び公会計改革について、より一層の行政改革に取 組んでいる。 (1) 職員数の削減 18 年指針では、市町村の職員数について、平成 17 年4月から平成 22 年4月までの 5年間で、国と同程度の 5.7%の減を行うこととされていたが、それを上回る 7.5%の 純減を達成した。府内の市町村(政令市除く。 )においては、全体として 9.8%減を目 標とし、結果として 11.4%(5,477 人)の純減を達成した。この取組みにより、財政 状況の改善や行政組織のスリム化に一定の効果があった。しかし職員数の削減を優先 するがために新規採用を抑制した結果、年齢構成の偏在化が生じ、若年層が大幅に減 少し組織の活力が低下するといった問題が生じている。 市町村においては、依然として厳しい財政状況にあり、人件費に対しては住民から の厳しい目が向けられている。こういった実情を踏まえつつ、行政サービスと職員数 のバランスについての分析や情報の開示を行い、住民への説明責任を果たしながら、 地域の実情に応じた適切な職員数の維持に向けた長期的な取組みが必要である。 (2) 民間委託等の推進 ほとんどの市町村では、庁舎の清掃、総務関係事務、公用車運転、ホームページ作 10 成・運営、電話交換等の定型的業務等について、類似団体の状況や民間の受託提案な どを参考にしながら、組織の規模を踏まえ、メリットが生じるような委託の可能性に ついて検討し、実施している。又委託した事務・事業については、行政としての説明 責任を果たし得るよう適切に評価・管理を行うことができるような措置を講じている。 また現在、公の施設において、指定管理者制度が多くの市町村において導入されて いる。施設管理の委託化に関する計画やガイドライン等を作成し、施設管理の在り方 の見直しを実施している。 岸和田市においては、市の指定有形文化財である「五風荘」(旧岸和田城主の新御茶 屋跡に築造した邸宅・日本庭園)の管理運営について、厳しい財政状況の中、維持管 理費が必要なことから「民間による保全と活用」と「日本庭園を活かしたゲストハウ スとして活用することで岸和田城周辺の日帰り観光へのアピール」を図るため、指定 管理者の公募を実施した。結果として、年間の維持管理費約 2,900 万円の削減が図ら れるとともに指定管理者の売上げの一部が市の収入となった。さらに五風荘の利用者 が増加することによって岸和田城の入場者数も増加し、城周辺に賑わいが出るなどの 波及効果も出ている。 (3) 新公会計制度の導入 18 年指針において、市町村に対して新地方公会計モデルによる公会計整備が要請さ れ、全国的に財務書類の整備は進展してきている。 市町村において財務書類を整備する目的については、①住民に対する説明責任の履 行、②財政の効率化・適正化の2点、そしてその効果については、①発生主義による 正確な行政コストの把握、②資産・負債(ストック)の総体の一覧的把握、③連結ベ ースでの財務状況の把握の3点が挙げられる。 しかし、財務書類を作成したものの、十分に分析・活用できていない市町村も多い。 財務書類の公表に関して、必要な説明や分析を加えてわかりやすくすることや、市町 村の財政運営上の目標設定・方向性の検討に活用すること等が期待されている。 新公会計制度については、府において、平成 23 年度から試験運用を開始しており、 市町村にも導入が期待されているところであるが、初期コストが多額になること、公 会計制度の目的・効果が浸透していないこと等により、進んでいない状況である。 上記の様々な取組みによって、期待していた効果が出たと考えられるものがある一方、 取組みに対する姿勢や進め方によっては、思うような効果が出ていない事例や弊害も見受 けられる。これら市町村が実施した様々な取組みについて、思うような効果が出なかった 事例における課題や弊害を以下にまとめてみる。 まず、はじめに挙げられるのは、改革効果を目的として導入した手法が、主客転倒を起 こして、その導入が目的となってしまい効果が出ない場合である。これは、他の市町村の 11 成功例を自らの市町村における導入目的や期待される効果等を深く検討することなくその まま導入し、予算を使って導入したことのみが成果になり、それだけで満足している場合 である。これでは、実際に事業を実施する職員もどういう目的で実施するのかわからない ままであるので、当然、成果も出てこない。又導入自体が目的になってしまっているので、 導入した効果がどうであったかも問われない。先進市町村の様子を見て、それを模倣する だけでは改革は成功しない。このような導入した手法が目的化することを防ぐため、本来 の目的を確認することや効果測定等の導入も併せて検討しておく必要がある。 次に挙げられるのは、各種行政改革の取組みが、住民のニーズとは無関係に実施される 場合である。財政状況の悪化を契機として改革を実施する場合が多いため、施設の統廃合 や保育料等の値上げ等、住民負担を前提とした議論に終始することになり、その結果、財 政面では歳出削減、歳入増加という目的が達せられる。しかし、この取組みを住民目線で 考えると、負担は変わらないがサービスの内容・質が落ちた、あるいは負担は増えたが内 容・質が何も変わっていないという事態になる。つまり、単に行政改革の目標達成を目指 すことから、住民の行政ニーズに柔軟に対応できないということである。厳しい財政状況 ではあっても、施策と住民ニーズの乖離を防ぎ、一致させていく手法を検討して、導入し ていく必要がある。 最後は、職員自身の行政改革意識の欠如である。首長がどれほど素晴らしい改革の方向 性を打ち出しても、管理部門職員の一部のみで推進するなど、それを実施する職員自身が その首長の理念、方向性を共有していないと、市町村全体でまとまりがなくなり、目的を 達成できなくなる。又職員の中には、これまで築いてきた慣習やシステムを変えたくない と考えている者もおり、そもそも改革に着手しづらい面も指摘できる。改革を成功に導く 改革意識の欠如を防ぐため、改革の必要性を説き、それによる到達点や効果を示し続け、 組織一体となって取組んでいける組織づくりが必要である。 また、行政改革の効果を急ぐあまり、急激な職員数の削減や、それに伴う事務処理能力 の低下、新規事業の抑制により、職員の自由な発想と新たな取組み等が生まれにくくなっ たこと、時間外勤務の増加や余裕の無さから職場内のコミュニケーションが不足するとい ったことも考えられる。さらに、職員数の削減は、退職者の不補充という方法を採らない と実現せず、その結果、新規採用が極端に減り、意欲あふれる若い人材が少なくなること により、職員の年齢構成のバランスを欠くといった状況も生まれている。又正規職員を削 減した代わりに、嘱託職員や臨時職員等が増員されることがあるが、これらは人件費の削 減には役立つが、不安定な雇用を生み出すといった側面も指摘されている。 このように、行政改革により市町村の活力を削いだり、必要な部分まで削り取ったりし ていることがある。こういった行政改革を続けていると、見かけ上の歳出は削減できるか もしれないが、行政の体質や職員の意識改革は一向に進まないことになる。そして、削減 手法による改革が徐々に限界に近づいてきていると思われるため、これまでの枠組みの中 だけでは、これ以上の削減効果はあまり期待できなくなってきていると言える。 12 第3章 民間企業の経営改善の取組み ここまでで、市町村が行う行政管理の現在の状況と課題について見てきた。 それでは、民間企業ではどのような課題があり、どのように対応し解決してきたのか。 本章では、そういった民間企業での改善・改革の成功事例について紹介するとともに、そ こに市町村の課題と重複し、解決のヒントになるようなものはないかを考察する。 (1) 組織が目標に向かうための手法 ある企業は、組織全体が1つの目標に向かって進むためには、トップから末端の社 員までの意識の共有が不可欠であると考えた。 会社設立当初から「企業を通じての社会への貢献」、「人材第一」及び「合理性の追 求」という3つの経営理念を掲げていた。中でも人材を会社の資産として集め育てる ことに最善を尽くしてきたというCEO(最高経営責任者)は、社員の研修制度を重 要視している。それは、経営トップの考え方を直接伝え、理念を共有できる機会とな りうるからである。 現在では研修専門の部署を組織し、役員・グループ長・担当幹部・新入社員といっ た階層別に、職種別・ポジション別のリーダーを養成するための研修を行っており、 どの階層の研修にもCEOが講師として参加している。 その研修では、CEOは自らの哲学、経営理念あるいはその階層・職種の社員に求 めることを直接伝え、社員達に自分のやるべきことを考える機会を与えている。文書 等の間接的手法ではなく、経営のトップが直接的に伝えることで、CEOが何をやり たいのか、何を自分に求めているのかを熱意とともにはっきりと肌で感じることがで きる。又自分は末端だからという意識を持たなくなる。その結果、全社員がCEOと 目的意識を共有し、組織全体で目標に向かって努力していく必要性を共有することが できるようになった。 その他にも、CEOを講師に招聘することで、CEOが講師になるにふさわしい研 修を行う必要があり、研修専門部署には「CEOが興味を持たない研修はするな」と いう意識が働く。又この考え方に基づき研修を実施することにより、社員が仕事の第 一人者になるために本当に必要な教育を行うことにつながる。 (2) グローバル企業の人材評価 近年、国内市場の低迷により、海外市場に進出して収益拡大を目指している企業が 増えている。そのような中、一時の収益拡大のために安価な労働力を頼りにしている ようでは、持続性のある収益力は確保できず、長期的な成長は見込めないと考えたあ るグローバル企業は、流動性の高い労働市場の特性を踏まえ、人材の登用と活用を柱 とする人材マネジメントの視点から、企業全体にとって効果的な人事配置を行うとい 13 う課題に取組んでいる。 通常、人事配置は人事担当部署の主導で行われる。人事担当部署は各部署の長より 所属社員の勤務状況などを聴取し、その情報を基に人事配置が行われるのが一般的で ある。しかし、この企業では主要部門にそれぞれキャリアコーチを設置している。こ のキャリアコーチとは、企画、開発及び営業分野の幹部を経験した者で構成されてお り、人事担当部員ではあるが、人事担当部署外で業務を行っており、社員一人ひとり のキャリア開発を業務としている。社内全体のあらゆる社員と面談し、有能な社員や 潜在能力の高い人材をリストアップしているため、社内で新規事業が立ち上がった時 に必要な社員を常にリストアップすることができる。さらに、このコーチは社内のあ らゆる会議に出席することを許され、社内全体の動向やどの部門にどのような人材が 必要かを常に把握している。また、このコーチは人事担当部署の長の支配下にはなく、 その業務活動については、定期的に経営トップに報告することとなっている。 つまり、社員はその所属のための社員ではなく、企業全体の資産ととらえ、特定の 職場に埋もれてしまわないようにする必要がある。そのため、この企業は人事担当部 署の評価だけでなく、キャリアコーチが各職場から、将来、企業全体に利益をもたら してくれるであろう優秀な社員を登用及び活用することにより、適切で効果的な人事 配置を行えるようにした。 (3) 長期的な課題に対する対処法 ある企業では、組織の意思決定に関わる所属長が2~3年程度で異動していた。こ のため、自身が在任中の2~3年で結果を出せる仕事のみに特化し、人事部門もそれ によって社員の評価をしていた。 しかし、新しい所属長の現部署での知識の低さ、引継ぎがうまくできなかったこと、 そしてなにより2~3年でできる仕事のみに特化したことが影響し、各部署が抱える 慢性的な問題への対応や顧客サービスの向上といった時間をかけて行う組織としての 仕事が、放置されることになってしまっていた。 そこで、その人事異動のサイクルを 10 年程度に伸ばすこととした。これにより、所 属長は、結果が出るまで何年もかかるような課題に取組む意識を持つことができるよ うになった。また、深い知識をもって長期的な戦略を打ち出し、コストの削減やサー ビスの向上に資するものとなった。 これと併せて、一般社員の異動については、同分野の事業を担当する部署を渡り歩 くようにし、その分野での知識を蓄積させた。このようにすることで、その社員が部 署を総括する立場になったとき、よりきめ細かなところまで目を行き届かせることが できるようになる。また製造部門では、ムダを削減していくなど、会社の増収増益に 貢献することができるようになった。 一つの分野、一つの事業、さらにはその関連部門でたくさんの経験を積ませること 14 により、社員はより専門的な知識を得ることができ、会社にとっても、より大きな問 題を効率的に解決していく組織に成長していくことができるようになった。 (4) システム効率化の取組み 世界市場で主要な企業になることを目標としていたある企業は、その目標達成のた めには、自社の生産システムの効率化、そして世界に通用する人材育成が必要である と考え、TPM活動に取組んでいる。 TPMとは、トータル・プロダクティブ・メンテナンス(全員参加の生産保全)の 略称で、社団法人日本プラントメンテナンス協会よって「生産システム効率化の極限 追求(総合的効率化)をする企業体質づくりを目標にして生産システムのライフサイ クル全体を対象とした“災害ゼロ・不良ゼロ・故障ゼロ”などあらゆるロスを未然に 防止する仕組みを現場現物で構築し、生産部門をはじめ、開発・営業・管理などのあ らゆる部門にわたってトップから第一線従業員にいたるまで全員が参加し、重複小集 団活動により、ロス・ゼロを達成すること」と定義されている。 このTPM活動は、生産部門の設備の異常や故障が目立っている原因が、その設備 を使用するオペレーターの保守管理に関する技能不足や知識不足にあるとして取組み 始めたことが発端ではあったが、全ては人の問題であるとし、一人ひとりの育成計画 を明確にして望まれる人づくりを目指した。こうした経緯もあり、このTPM活動を、 人材を人財に変える教育訓練活動として取組むことになった。 その活動の一例として、製造部門及び技術部門のそれまでの教育訓練体系を全面的 に見直し、入社から2年までに初級の保全技能教育、6年までに初級の品質管理教育 といった計画を作成するほか、技能習得の段階を表すスキルレベル一覧表やスキル評 価表を作成し、それを公開した。また、全員が機械保全技能士の国家資格を取得する こと等も目標とした。これらの取組みで、オペレーターが自ら設備に触れ、保守管理 に関わることによって、設備の異常や故障に気づくようになり、ロスの排除が進み、 品質向上、コスト削減が進んだ。さらに、一人ひとりの技術力を向上させたことによ って、複数の工程や作業を一人でこなせる多能工化が進み、それが生産工程の全体を 見渡せる人材の育成に貢献するとともに、その取組みは自主的な取組みとなって進む こととなった。 (5) 財務体質の改善への取組み ある企業では、市場でのシェア拡大を重視した結果、売上重視に陥り、長所であっ たベンチャー精神が、様々な分野への投資により多くの無駄を生み出し借金が膨らむ 財務体質となっていた。又組織体制としては、事業部制を採用していたが、事業部ご との独立性が高くなりすぎたことにより、事業部の利益が優先され、会社全体の利益 が見えにくくなっていた。このような課題に対し、売上重視から利益重視へ、部分最 15 適から全体最適への転換へ取組んだ。 まず、マーケティングや財務内容を確認するなどにより、利益を上げるためにどの 事業から撤退し、どの事業に力を注ぐのかを決定した。撤退する事業としては、成長 分野ではあるがその企業としての市場の優位性はなく、赤字続きで将来展望が見えな いものを選び、逆に注力する事業としては、成長分野に限らず、今まで積み上げてき た技術があるなど社会情勢の変化にも迅速に対応できる基盤やノウハウがある事業を 選び決定した。その結果、無駄が縮小するとともに新たなシェアの獲得にも成功し、 利益率が向上することになった。 また、組織改革として事業部間の縦の壁を取り除くため、社長を委員長とし、各事 業部のトップが委員となる経営戦略委員会を設置した。この委員会では、全社的な改 革テーマごとに専門委員会を作り、そのトップにはテーマと直接関係のない事業部長 が就任し課題に取組むこととした。このことにより、事業部ごとの垣根を取除いて協 力関係を築くことができ、全体最適の視点で事業に取組むことができるようになった。 さらに、人事制度では、実力主義の給与体系を導入した。又社員が安心して仕事に 没頭できるよう、雇用体系としては終身雇用制を採用することとした。終身雇用制の 場合、社員の流動性が低いため、教育が無駄になることがなく、安心して社員教育に 費用と時間を投資できるというメリットがあるからである。しかし、終身雇用制と併 せたベアと定期昇給という、会社の業績とは無関係に給料が上がる年功序列の給与シ ステムでは、組織の活性化は図れないと考えた。そこで、厳格な昇任試験を導入し、 合格すると昇任とともに賃金もアップすることとした。又定期昇給を廃止し役割給制 度を導入した。年齢や経験に関係なく、職階に応じて固定給を決め、さらに業績を加 味して給与が決まる。その結果、社員のワークスタイルに合わせた昇任管理が可能と なり、頑張った社員は報われるという社員のモチベーションアップにもつながった。 (6) マーケティング・リサーチの実施 企業競争では、他の企業が持たない特徴で他社との差別化を実現することにより、 競争に勝とうとする「差別化戦略」によって業績を伸ばしている。差別化に成功した 企業は、顧客からブランドへの忠実性を獲得できることになる。又他には宣伝戦略に 力を入れ、テレビCMや雑誌とコラボレーションすることにより、勢いのあるブラン ドに成長した企業もある。 多くの企業では、市場や顧客に関する事実を客観的かつ詳細に把握するため、様々 な手法のマーケティング・リサーチを実施し意思決定を行っている。ある飲料関連企 業では、市場規模拡大のため、5,000 人の消費者を対象に大規模な嗜好調査を行い、20 代及び 30 代の若い世代が求めている嗜好を把握した。それにより、今後のメインユー ザーの嗜好がどのような方向にシフトしていくのかという情報をつかみ、日本初の飲 料を開発した。その飲料は、飲料市場の勢力図を大きく変え、当時低迷していた企業 16 を、一躍業界トップに押し上げた。又別のある洗剤関連企業では、商品開発の焦点で ある「白くする技術」がすでに限界に達しており、差別化が難しい状況である中、顧 客満足度向上のため、主婦を対象にしたマーケティング・リサーチを実施した。そし て、約8割の人が洗濯物を室内に干し、その約9割の人が、「室内に干した時の生乾き の臭いが気になる」という悩みを持っていることが判明した。そのマーケティング結 果を基に、独自の分析技術で生乾きの臭いの原因を解明し、酵素の活用によって臭い を抑制することに成功した。誕生した新製品はもちろん大ヒット商品となった。 このように、民間企業においても業種によって課題は様々ではあるが、どの問題であれ、 課題解決に向けた取組みでは、次の3点で共通していることがわかる。 1点目は、同業他社のやり方等に迎合することなく、社会情勢等から独自に判断し、そ の責任を負った策を打出していることである。これは、その企業ごとに社風、企業風土と いったものがあるため、他社の模倣では、同様の効果が得られない場合があることに起因 すると考えられる。また模倣によって効果が発揮されるレベルの改善は、すぐにどこの企 業でも対応するため、それでは本当の改革とは言わないということもあるだろう。 2点目は、社員に意識付けをしっかりさせることに注力していることである。民間企業 では、市町村に比べて定年退職まで勤める社員は少なく、社員の動きも流動的である。こ うしたことから、企業側も社員のモチベーションを維持・向上させるため、より良い人材 を確保し育成することに重点を置く傾向にあるといえる。又担当部署や役職にかかわらず、 全ての社員がトップと理念・方針を共有し、問題意識を持っていることも挙げられるだろ う。 3点目は、ターゲットとする顧客の行動や意識を調査し、迅速に対応していることであ る。サービスや品質の向上は、顧客の満足度を向上させ、その結果、企業利益を拡大させ、 経営基盤の安定・強化につながるからである。近年は情報通信技術(ICT)の技術革新 が進んでおり、これらの技術を活用したアンケート調査を行うことにより、欲しい情報が すぐに安価に手に入るようになってきている。マーケティング・リサーチは、多くの民間 企業にとって、サービス品質を高めるうえで欠かせないツールとなっている。 民間企業は、会社存続や利益向上に向けて様々な経営手法を用いているが、それらの手 法を導入するにあたり、いかにその手法が企業の目的達成のための手段として有効に活用 し得るか、という点において労を要しているのである。つまり、新たな経営手法を導入し さえすれば、企業経営が成功するとは限らないのである。自社の問題点を十分に研究し、 その課題に見合った手法の開発が不可欠なものとなっている。 17 第4章 民間企業における経営改善の取組みの活用 第3章では、民間企業の経営改善の取組みについての事例を紹介してきた。民間企業に より課題は様々であるが、その取組みには共通点も見られ、組織運営上、必要不可欠な視 点でもあると言える。本章ではこの視点に基づき、民間企業の経営改善の取組手法の導入 について考察してみる。 考察に入る前に、民間企業の企業経営と市町村の行政運営の共通点と相違点について整 理してみる。 1 民間企業と市町村 (1) 理念 民間企業の理念は、その企業の成立ち、業種等により様々である。しかし、民間企 業に概して共通する理念は、顧客を満足させるサービスや商品を提供することにより、 継続的に利潤を追求していき、サービス等の提供により何らかの形で社会へ貢献する ことである。そして、その理念達成のため創意工夫している。一方、市町村の理念と は、地方自治法に謳われているように、まさに住民の福祉の増進を図ることである。 その理念実現のため、総合計画等を策定し、法律等により定められたいわば受動的な 行政サービスや条例等の制定により行う市町村独自の能動的な行政サービスを住民に 提供することで、計画的に住民の福祉の増進に努めている。 市町村では民間企業のように利潤を追求することはないが、住民(顧客)へ行政サ ービス(サービス等)を提供し、その対価として税金や手数料等(料金)を受け取る。 そこに共通することは、いかに住民・顧客を満足させるかという視点である。民間企 業と市町村では、そもそもその存在意義が異なるものではあるが、お互い目指すべき 方向には大きな共通点がある。 (2) 組織の構成 【図表5】組織構成の比較 18 組織の構成をみてみると、民間企業(ここでは株式会社を例とする。)と市町村も大 きな違いはみられない。違いといえば、民間企業では、顧客やその企業に関心のある 人は株式を取得し、株主として経営に参加するが、市町村では、住民が選挙を通じて 首長と議員を選べることである。又民間企業では、株主総会において株主と経営陣と の利害関係があるが顧客同士では利害関係はない。一方、市町村では、住民同士、住 民と首長、住民と議会及び首長と議会と利害関係が成り立つことである。 その他に、民間企業ではある特定の目的のために事業を特化することができるが、 市町村は多目的な組織とならざるを得ない。 (3) サービスの提供 【図表6】サービス提供関係の比較 サービスや商品の提供方法では、サービス等を提供して対価を得るという点では同じ であるが、民間企業であれば顧客が誰なのかがはっきりしており、サービス等の提供 と対価の支払いがしっかりと対応している。又その成果は売上げに反映される。一方、 市町村では顧客の範囲が広くなる。そして行政サービスの対価としての税を先取りし ており、サービスは必ずしもその税金を支払った者に提供されるとは限らない。そも そも、ある種のサービスをしていることすらわかりにくいといった点がある。又民間 企業の場合であれば、顧客は企業を自由に選べる環境にあるが、市町村の場合では、 住民の退出は容易には行いにくい環境にある。逆の見方をすれば、民間企業では顧客 層(例えば若年層又は高齢者層等)を絞り込むことにより、サービス等を売り込んで いくが、市町村ではそのような絞込みは困難であり、住民全員が行政サービスの対象 者となり得る。 サービス等の提供方法に関して、提供する者とされる者の関係性は必ずしも同様で はないが、一定の対価(料金や税)が発生するという意味においては共通点がある。 19 (4) 組織の運営 【図表7】組織運営体系の比較 図表7の流れに沿って組織を運営して、その組織の存在目的を達成しようとする点 においては、その運営方法にそれほど大きな違いは見られない。 これまでの市町村の行政運営は、 「後手、前例踏襲、先送り」などと揶揄されてきたが、 これは、 「後手=環境の変化に対応できていない、前例踏襲=住民ニーズを把握しようと していない、先送り=責任をとろうとしない」と言えるのではないか。市町村の行政運 営には、経営、戦略、マネジメント、マーケティング等といった経営概念は重要視され ていなかった。市町村は、営利組織の民間企業と非営利組織の市町村では組織の存在目 的が異なるとして、民間企業の経営手法を導入することに積極的ではなかった。利潤を 生みださない公共事業ということで赤字を厳しく追及されることのなかった行政運営は、 バブル経済崩壊以降、財政収入の伸び悩みと財政需要の増大によって、主に財政部門主 導での管理型の行政手法へと変化している。そして現在では、行政管理から行政経営へ の転換が急務の時代となってきている。又地方分権が進展する中、多くの市町村が行政 改革に取組んでおり、そのメニューの中には「経営」という文字が多くみられる状況で ある。 民間企業と市町村は違うと言われてきたが、上記のように比較すれば、細かい違いは あるにしろ、それよりも組織の運営上は、共通点の方が多いと思われる。違いを気にす るより参考になるものは参考とし、問題があれば実践の中で創意工夫を行い解決してい けばよいのである。時代の変化に敏感に対応して、まずは行動を起こすことが大切であ る。 20 2 民間企業の取組みを行政に活かす手法の検討 第2章のおわりに、市町村の抱える課題について3点、①「手法の目的化」、②「施策 と住民ニーズの乖離」及び③「改革意識の欠如」を挙げたが、次に、この3点について、 第3章で概観した民間企業の経営手法と対比し、参考となる点について考察する。 (1) 手法の目的化 手法が目的化することは何も市町村に限った話ではないが、単なる経営手法の導入 では課題を改善するどころかかえって余計な問題を引き起こすことにもなりかねない。 これについては、職員が目的と目的達成の方法を意識すること以外に根本的な解決策 はない。 組織全体として目的意識を共有するためには、目的達成のために導入された手法の 意図・意義等について、現場の職員に深く認識させる必要がある。第3章(1)「組織が 目標に向かうための手法」において、CEOが新入、幹部等問わず、全社員に対する 研修に講師として参加する民間企業の例を紹介した。そこでは経営理念や指示をトッ プ自らが伝えることで、伝えるべきことを肌で感じ取り、末端の社員であってもトッ プの考え等を共有し、モチベーションの向上にも寄与する事例であった。この事例は、 市町村でも比較的導入しやすいものではないだろうか。現在、市町村でも職員の研修 は行われているところであるが、例えば実際に市町村が抱える政策課題をテーマとし て、各部署から職員を階層に関係なく集め、議論させる。本来業務ならば、階層上位 の者が最終判断を行うところであるが、この研修ではその区別なく公平な議論の場と する。そして、その結論を首長が最終判断の材料とする。このような方法であれば、 首長の思いを職員に伝えることもでき、職員が所属部署以外の政策に触れる機会にも なる。さらに階層の別をなくすことにより、経験豊富な職員の考え方や若い職員の新 しい考え方を職員同士お互いに肌で感じることもできる。 また、目的意識を共有し持続させるには、職員の異動による目的意識の希薄化にも 留意しなければならない。流動性が激しい組織構成であった場合、この弊害はより顕 著となる。この点について、第3章(3)「長期的な課題に対する対処法」において、異 動サイクルを伸ばすことで、長期的な課題への動機付けとその解決に寄与した事例を 挙げた。市町村における人事異動サイクルについては、若手をはじめとした短期のジ ョブローテーションを行っている団体も多い。確かに、短期間で多くの経験を積ませ ることのメリットも多いが、業務に関する長期的な視点の醸成という観点からの人事 異動についても検討する価値はあると思われる。長期化させるメリットは、第3章で も述べたが、短期のサイクルを前提とした業績に特化するという弊害の払拭、長期的 課題への注力である。市町村について言えば、勤務評価や職員の希望等を勘案し、異 動サイクルをそれまで以上に伸ばすことも検討に値する。特に職員の希望という点で は、どの市町村でも異動希望を聴取する制度があると思われる。その中で、異動の希 21 望だけでなく積極的に残留を希望する職員には、長期的にその部署の核となる人材に 育成する、あるいは関連の部署に異動させ「福祉」や「税」といった大きな括りで専 門性を持った職員に育成することにより、全庁的な経験の蓄積ができると考える。 ただ、長期の異動サイクルによる弊害には留意しなければならない。異動のサイク ルは全庁的な視点で、短期・長期の組合せが必要であろう。 (2) 施策と住民ニーズの乖離 2点目は、行政改革の目標達成を重視する余り住民ニーズへの柔軟な対応が欠ける 点を挙げた。もちろん目標は達成されるべきものではあるが、住民ニーズを無視した ものであれば本末転倒となる。 「サービス」と「ニーズ」は近ければ近いほど「満足度」は高まるものであるが、 それを掘り起こす方法についてはサービスが利益に直結する民間企業に倣うところが あると思われる。第3章(6)「マーケティング・リサーチの実施」において、2社の手 法について概観した。いずれも嗜好調査により成功した事例であるが、単なるアンケ ートのようなものは市町村においても実施しているところである。ただ、その規模に ついては市町村のそれより大きい。その膨大なデータの裏づけがあってこそ、ヒット 商品の誕生に至ったものと思われる。 民間企業のマーケティングは、当初は販売促進のための活動が主体であったが、次 第に顧客のニーズが多様化してくると、顧客のニーズを把握して満足を与える活動へ と変化してきた。さらに顧客のニーズや意識が高度化してくると、顧客に価値を享受 してもらうという視点でマーケティングが行われることとなる。いずれにしても、民 間企業にとってプラスの効果を上げるために行われる活動である。市町村においても、 住民やある種の政策対象者に対して同様の活動を行うことになる。しかし、現在の市 町村は厳しい財政事情の中で公共的課題を解決していかなければならず、時には住民 にとってプラスの効果ではなく、マイナスの効果を受け入れてもらうことが必要にな ることもある。つまり、住民にとって好ましくないことを受け入れてもらうことであ る。そういった場面では、新たな関係作りのため、このマイナスの効果を受入れるこ とへの意義や重要性について、公共の視点からのマーケティング活動を粘り強く実施 して住民等に十分に理解されることが必要である。そのためにも、マーケティング活 動こそ、市町村にとっては重要な経営ツールとなるものである。 市町村としても、このような特有の事情があり、民間企業の手法をそのまま導入す るわけにはいかないが、結局「アンケート調査をしただけ」という状況にならないよ う、結果によって予算措置が得られるような「制度」にしていかなければならない。 そのためにも、担当課のみに任せるものではなく、専門部署を設置し、必要な分析と 具体的な実施をすることも一つの方法である。情報の「発信」については一般的に広 報担当課が設置されていることが多いと思われるが、情報の「フィードバック」につ 22 いても特化するというものである。これにより、住民ニーズの把握に専門的に注力で きることとなる。 (3) 改革意識の欠如 改革意識の欠如の考えられる原因として、意識の共有がなされていない、意識が希 薄となる環境が考えられる。意識の共有と希薄化については前記(1)の「手法の目的化」 で触れているところであるが、その他に考えられる要因として、組織の横断的な取組 みが進んでいないことが挙げられる。 この点、第3章(5)「財務体質の改善への取組み」において、事業部制の弊害、いわ ゆるセクショナリズムによって全体的な調整が困難となり、組織横断的な委員会の設 置によって解決を図った事例を挙げた。市町村においてもこの弊害を認識し、部局間 の調整会議等も設置しているところではあるが、環境が変わることで機能しなくなる ことも当然意識しておかなければならない。 また、行政サービスの提供範囲は広範囲にわたるため、組織運営上どうしても縦割 り組織になりがちである。その各組織を繋ぎ有機的な連携と調整を行う横断的組織や スタッフ部門の設置は有効であると考える。又前記(1)でも述べたような研修制度を活 用するなど、職員に組織横断的な視点を持つ教育をしていくことは、部署間のスムー ズな連携にも寄与するのではないだろうか。 (4) その他 第3章において民間企業の参考となる経営改善事例をいくつか挙げているところで はあるが、ここまで考察したものを除いて、残りの事例について、市町村での活用に ついて触れてみる。第3章(2)「グローバル企業の人材評価」における「キャリアコー チ」、同章(4)「システム効率化の取組み」における「TPM活動」である。 「キャリアコーチ」は、従来の人事担当部署だけでは掴みきれない社員の実態等を 把握し、これを具体的な人事に反映するものであるが、これはその性質上市町村にも 十分に活用可能なものである。職員の評価については評価者の主観的要素を排除でき ないことから多元的なものでなければならないのは言うまでもないが、キャリアコー チによる人材発掘は、従来の所属長の評価に依存するのみの人事制度の枠を超えた、 より積極的な人材活用のツールであるものと思われる。 「TPM活動」は、あらゆる「ロス」を排除することを目的に教育訓練を充実させ、 それによって従業員の多能工化に貢献したものである。多能工化によるメリットは全 体を見渡すことができることにある。市町村においても業務等の細分化が著しく、単 能工化している部門に活用できると考える。例えば税務部門において、課税担当と徴 収担当とに分かれている場合である。納税者から見れば一連のサイクルではあるが、 それぞれが自己の担当業務を優先することで他方に支障を与える可能性も少なくない。 23 そんな中でも多能工化による一体的な視野の醸成により、全体的な課題への対処とい う意味では有用な手段であると思われる。又慢性的に嘱託、臨時職員等短期的な雇用 形態の職員で対応している業務については、引継ぎを含め業務の効率化と質の維持・ 向上に寄与すると考える。 3 行政経営へ ここに挙げた例は一例に過ぎないが、その他にもICT化や電子商取引については、 民間企業では当たり前のように行われており、他社との差別化を図るため激しい競争が 繰り広げられている。市町村では、ようやく一部の業務で電子申請が始まりだしたとこ ろであり、これらの経営手法についても導入の余地はあると思われる。 また、民間企業の企業活動を報告する会計制度では、連結経営や企業の時価を高めよ うとして貸借対照表の改善が進んでいる。さらには、経済活動の国際化に伴い国際会計 基準の導入まで検討されている。一方、市町村は経営という概念がなかったため、単年 度主義、現金主義の単式簿記であり、取引関係などは不明で現金の増減だけにとらわれ ることになり、結果、経営感覚が養われてこなかった。最近では、ようやく市町村で貸 借対照表等の財務諸表の作成が始められているところである。 企業経営とは、何のために行うのかというビジョンを持ち、継続的に成長していくた めの戦略・手法を講じ、ヒト・モノ・カネ・情報という経営資源を効率的・効果的に使 用して、組織が持続的に利益を得ることにより発展させていくことである。民間企業は、 社会経済環境の変化に応じて経営手法の改善・改革に取り組んでいる。一方、行政経営 とは、地方自治の本旨に基づき、地域住民のために、社会資本の整備及び教育・保健・ 福祉などの行政サービスの提供を行い、福祉の増進を持続的に図っていくとともに、行 政主体として時代の変化に対応していくことである。社会経済環境の変化は、民間企業 にも市町村にも等しく訪れる。ならば、市町村の行政運営の手法についても、民間企業 の経営手法を参考とし、実情に応じて工夫をして導入し、独自の行政経営手法を確立す ることがこれからの地方分権社会では必要となってくるものと思われる。そのためにも、 首長と意識を共有し、高いモチベーションを持った職員が「経営」に関わっていくこと が求められる。 24 第5章 持続可能な行政経営について ここまで、市町村の課題と民間企業の事例を参考にした対応策を個別に述べてきた。そ して市町村においても首長と意識を共有し、高いモチベーションを持った職員が「経営」 に関わっていく必要があるという結論を得た。しかし、そんな職員達にトップダウンだけ で粛々と作業をさせるだけではなく、具体的に責任ある仕事を任せなければ、本当の経営 意識は生まれない。ましてや経営に参加などできないのではないだろうか。 本章では、職員が経営意識を持ち、持続可能な行政経営を担っていくためには、組織と してどのようなマネジメントをすべきなのか、行政経営方式の分析を試みながら考察する。 1 行政経営方式の分類と発展方向 図表8は、行政経営方式を財政主導型・企画主導型・庁内分権型・現場型の4つに分 類したものである。この分類は、これまで市町村が取組んできた行政運営の改善・改革 の活動の内容を、その活動の意識や経営方針、主導する部署等によって分類するととも に、その経営方式の発展方向についてまとめたものである。 【図表8】行政経営方式の一覧表 参考:季刊 政策・経営研究 2008vol.4「自治体経営におけるトータル・マネジメントの確立と人事マネジ メントの在り方」を基に作成(三菱 UFJ リサーチ&コンサルティング) 25 行政の危機は、まず財政の危機として表面化する。様々な要因で財政収支のバランス が崩れ、歳入不足又は歳出超過によって予算が組めなくなる。そのような事態になって 初めて財政改革として「財政主導型」の経営方式に取り組むことになる。この財政主導 型は、前述のとおり厳しい財政状況に陥っている市町村に見られる経営方式で、首長の 強いトップダウンのもとで給与カットや事業の廃止等によりスリムな行政経営を目指す ものである。その次には、多様な住民ニーズにも対応していかなければならないため、 一律の削減や減量経営では対応できなくなり、政策や事業の選択と集中が行われること となる。これは政策主導の改革となるため、 「企画主導型」とした。この企画主導型も同 じく首長の強いトップダウンのもとで、マニフェスト等に基づき組織横断的な経営課題 等に重点的に取組む経営方式である。改革もさらに進展すると、より現場に近い部局等 に権限と財源等を移譲して意思決定のスピードを上げていく、庁内での分権が進むもの と考える。この「庁内分権型」は、より現場に近い経営ミドル層(部局長)に経営資源 (ヒト・モノ・カネ・情報)にかかる裁量権を与え、地域課題や住民ニーズに対して、 部局長のリーダーシップにより成果をあげていく経営方式である。また住民に最も近い 現場においては、行政サービスと住民ニーズの乖離や住民からの苦情等を一番敏感に感 じる部署であるため、きっかけさえあれば、現場からの改善・改革の活動は起こり得る ものである。この住民に最も近い現場職員の自発的な改善・改革意識を期待するボトム アップ型の経営方式を「現場型」とした。 現在、財政主導型の取組みはどの市町村においても実施され、依然厳しい状況にある ものの行政改革による経費削減等が進み、これまで一定の効果をあげてきた。また企画 主導型の取組みも、次の段階として実施している市町村は多い。 府内市町村においても削減重視の財政主導型から企画主導型へ移行しているところも 多く、首長のリーダーシップのもとで一定の成果が見られているが、一方的なトップダ ウンの経営が長期化すると職員の経営意識はいつまでたっても醸成されない。 このような状況において、職員一人ひとりの経営意識を高め、持続可能な行政経営を 行っていくためには、部局長の経営意識に基づく「庁内分権型」の経営方式を目指して いくべきではないだろうか。これまで、首長や幹部あるいは管理部局が主導で様々な取 組みを行ってきたが、住民ニーズが多様化する中、現場の思いや行政サービスに対する 職員の考え方は今後ますます重要になってくる。より住民に近い各部局・担当課に権限 や財源を移譲し、各部局長が住民ニーズを踏まえて経営資源の効果的活用を図っていく ことで、時代や社会経済環境の変化に敏感に対応できる組織になると考える。例えば、 財政部局が各費目を個別に査定する方式から部局単位に枠として予算を分配する方式に 転換していくことで、経営資源の効率的な配分や、より住民に近い目線でニーズを取り 込んだ予算の重点配分をするなど、部局に経営意識を持たせることができる。又部局内 の人事権を部局長に移譲すれば、重要性が増した部門に集中的に職員を配置したり、緊 26 急時には部局内での応援体制の強化を行い、業務量を平準化し時間外勤務の低減を図る など、現場の状況に迅速に対応した人事が図りやすくなることも考えられる。(図表9参 照) 【図表9】庁内分権の一例 もちろん、「庁内分権型」の経営方式を導入すれば、ただちに効率的な経営ができると 言うわけではない。経営資源の配分等、大きな権限が部局長に与えられるわけであり、 部局長には今まで必要でなかった高い経営判断能力が求められる。この能力を醸成する ために、第4章2(1)「手法の目的化」で提案した研修制度が活用できるのではないだろ うか。自部局の政策だけでなく、財政あるいは人事に至るまで幅広い分野で判断できる 能力を高めていくことなしに、部局長へ権限だけ移譲したのでは、むしろ効率的な経営 を妨げることになる。又将来、若い職員が高いレベルで判断できる部局長へなっていく ためのサイクルを生み出さなければ、持続的かつ効率的な経営とは言えない。さらに、 第4章2(4)「その他」で提案したTPM活動も、若い職員が事務レベルから業務を効率 化させ、自己の業務だけでなく部局全体を見渡し、将来的に大きな政策判断をしていく ためのトレーニングになると考えられる。あくまで、経営判断能力の備わった部局長が 常にいてこそ成り立つ経営方式であることを、忘れてはならないのである。 また、「庁内分権型」の経営方式では、住民が選んだ首長のリーダーシップが軽視され てしまうという懸念と庁内分権が進み独立性が高くなりすぎると、逆に縦割りで非効率 な組織となってしまうことに注意が必要である。これらの懸念を解消するため、部局間 27 のパワーバランスの調整や全体最適の視点からの決定等が必要である。 「庁内分権型」の 部局経営方式の真価を発揮するには、首長の強いリーダーシップの発揮があってこそ可 能となる。第3章(5)「財務体質の改善への取組み」でも少し触れたが、事業部ごとの独 立性を高めた「事業部制」を採用していた企業において、その独立性が高くなりすぎた ことによって、さまざまな無駄が出てきたという事例がある。この企業では、ヒト・モ ノ・カネ・情報を完全に事業部ごとで管理しており、それらに余剰や不足があっても横 断的な対応が困難で、すべて部局内で処理してしまうため、全体では非常に非効率な組 織となっていた。こういった状況の中でその企業がとった対策は、トップの強いリーダ ーシップによる部分最適から全体最適への転換であった。 繰り返しになるが、市町村において「庁内分権型」の経営方式を進めていくには、首 長の意識や考え方を共有した上で、出来得る限り権限を移譲し分権を進めていくことが 必要であるとともに、常に、全体最適の視点を忘れることがないような制度にしていく ことが肝要である。 2 職員の能力を結集できる組織へ 以上、現時点で考えられる市町村の経営方式について検討してきた。最後に本稿を締 めるにあたり、どのような経営方式を採用するにしても忘れてはならない点について触 れておきたい。それは「人事評価制度」についてである。組織を効果的に機能させ期待 される効果を上げるには、この制度の導入がキーポイントとなると考えるからである。 図表8では、類型ごとにさまざまな経営ツールを紹介したが、それらを導入するだけで は効果的に機能することは困難であり、どのようにして経営ツールを職員への評価と結 びつけるかが鍵である。例えば、「財政主導型」であれば、経営ツールである行政評価に おいて、削減効果を視点として評価を行ったり、「庁内分権型」であれば、部局の目標達 成度や住民満足度を視点として評価を行うなどである。又第4章2(4)「その他」で提案 したキャリアコーチ制度の導入により、上司である部局長だけでなくキャリアコーチと いう客観的な視点の2面から評価するなど、経営ツールに対する職員の貢献度が処遇と して適正に反映されることにより、職員個人の経営意識も醸成され、より効果的な経営 が実現すると考える。 民間企業のように、努力した人間が報われる人事評価制度を導入しなければ、職員の モチベーションを向上させることは困難であろう。やってもやらなくても同じと考えれ ば、財政再建も行政サービスも良い方向に向くはずがないのである。府内市町村でも、 評価制度は一通り形にして導入はしているものの、試行期間を長く続けている例も少な くない。民間企業では、試行期間は半年からせいぜい1年間としているところが多く、 早期に本格実施に踏み切る場合がほとんどである。確かに制度的に不十分なところが出 てくるかもしれないが、その場合には制度を運用するなかで走りながら考え、制度の中 身を充実させるということが実際になされている。さまざまな理由で導入に至っていな 28 い市町村も多いが、人事評価制度は他の経営ツールと結びつくことで、行政経営全体に 大きな効果があること、ひいてはそれがより良い住民サービスに繋がるということを強 く認識し、導入を進めていくべきである。 府内市町村の規模や風土は様々であり、画一的に同じ方法が馴染むとは言えない。しか し、職員の経営意識を高め、効率的かつ効果的な行政経営を行っていくことは、どの市町 村においても求められており、本章ではそれに適した経営方式として庁内分権型の行政経 営方式を提案した。もちろん、今後の社会環境の変化等により、改めて財政主導型に見直 すべき場合や複数の経営方式を組合せる場合、さらには本章で紹介していない新たな手法 が生み出されることも考えられる。ただ、国の方針や近隣の他市町村の動向を見て「右に ならえ」という考え方はもはや通用せず、実情に応じて自ら判断する組織へと変わらなけ ればならないということは間違いなく言えるだろう。一つの自治体として持続的に経営し ていくためには、職員個々の能力を結集できる組織への変革が不可欠なのである。 29 おわりに 世の中は変化する。企業経営とは、その変化に対応していくことでもある。なぜなら、 そうしなければ組織として存続し続けることができないからである。それは市町村合併の 例を見てもわかるとおり、市町村といえども同じことである。その変化はいたるところで 表面化してきており、いずれ大きなうねりとなって押し寄せてくることは間違いないであ ろう。変化を嫌い、今まで通りの運営や管理方法に固執するのではなく、変化の流れに合 わせて挑戦していくことが必要である。 「ピンチは最大のチャンス」ではあるが、ピンチになってから動き出していたのでは「ピ ンチはピンチ」でしかない。ピンチをチャンスに変えるには、いずれ訪れる分権社会に向 けて、先を見て準備をしておく必要がある。変化は成長につながる第一歩となり、変化し 続けることが存続しつづけることを可能とする。 「持続可能な行政経営」とは、行政が保有する経営資源を効率的・効果的に運用して、 住民の福祉の増進を持続的に向上させていくことである。それは社会経済環境の変化に合 わせて行政組織も変化して対応していくことにほかならない。 つまり、市町村の首長のリーダーシップと首長だけでなくすべての職員が経営に関わり、 意識を変え、運営方法を変え、政策を変え、地域社会を元気にするという使命を果たすこ とが必要なのである。 【参考文献等一覧】 ・佐々木信夫、外山公美、牛山久仁彦、土居丈朗、岩井奉信著『現代地方自治の課題』(学 陽書房・2011) ・申元東著、岩本永三郎訳、前坂俊之監修『ソニー、パナソニックが束になってもかなわ ない サムスンの最強マネジメント』(徳間書店・2010) ・坂爪一郎著『御手洗冨士夫キヤノン流現場主義』 (東洋経済新報社・2004) ・高村寿一著『経営入門〈第3版〉』(日経文庫・2009) ・上山信一著『「行政経営」の時代―評価から実践へ―』(NTT出版・2001) ・三品和広著『経営は十年にして成らず』(東洋経済新報社・2005) ・文藝春秋『最強チームの法則』(文藝春秋・2011.10 月号) ・大阪府立産業開発研究所、大阪府商工労働部雇用推進室労政課編『大阪経済・労働白書 「大阪産業の平成の軌跡と展望」平成 21 年版』(大阪府立産業開発研究所、大阪府商工 労働部雇用推進室労政課・2010) ・淡路富雄著『民間を超える行政経営~住民基点と氏名中心の最適な行政~』 (ぎょうせい・ 2006) ・淡路富雄著『首長と職員で進める「行政経営改革」 』(ぎょうせい・2005) ・日本経済新聞社産業地域研究所編『サステナブル都市への挑戦-全国都市のサステナブ ル度評価-』(日本経済新聞出版社・2010) ・産経新聞記事『「人を育てる企業が活きる」スキルレベル一覧表 サカタインクス』 (2007.8.15 大阪版夕刊) ・海野進著『政策マイナス・マーケティング』 (公職研 月刊「地方自治職員研修」 ・2009. 4 月号、5 月号) ・村田丈二著『自治体経営改革とNPM導入 10 年の検証<前編>~自治体経営の問題点・先 送り型改革で拡大する自治体経営リスク~』(日本総研コラム「研究員のココロ」・2008) http://www.jri.co.jp/page.jsp?id=8197 ・村田丈二著『自治体経営改革とNPM導入 10 年の検証<後編>~部分最適型の改革から全 体最適型のリスクマネジメントへ~』(日本総研コラム「研究員のココロ」・2008) http://www.jri.co.jp/page.jsp?id=6934 ・社団法人経済同友会編『 「基礎自治体の経営改革」―改革の指針と施策―』(2007) http://www.doyukai.or.jp/policyproposals/articles/2007/pdf/070612a.pdf ・大住莊四郎著『ニュー・パブリック・マネジメントによる地方公共団体の経営改革』(独 立行政法人経済産業研究所「ブレイン・ストーミング最前線」・2005) http://www.rieti.go.jp/jp/papers/journal/0502/bs01.html ・岡本義朗著『特集:公共経営/新しい公共の担い手と公の責任』(三菱UFJリサーチ& コンサルティング「季刊 政策・経営研究」・2007 Vol.2) http://www.murc.jp/report/quarterly/200702/03.pdf ・高崎正有著『地方自治体における「成果重視型マネジメントシステム」の構築』 (三菱U FJリサーチ&コンサルティング「季刊 政策・経営研究」・2007 Vol.2) http://www.murc.jp/report/quarterly/200702/07.pdf ・吉田寿著『公的部門の成果主義』 (三菱UFJリサーチ&コンサルティング「季刊 政策・ 経営研究」・2007 Vol.2) http://www.murc.jp/report/quarterly/200702/41.pdf ・島崎耕一著『カイゼン運動からはじめる自治体経営革新』 (三菱UFJリサーチ&コンサ ルティング「季刊 政策・経営研究」・2007 Vol.2) http://www.murc.jp/report/quarterly/200702/65.pdf ・大塚敬、中井浩司著『「新しい公共」の可能性と課題』(三菱UFJリサーチ&コンサル ティング「季刊 政策・経営研究」・2007 Vol.2) http://www.murc.jp/report/quarterly/200702/203.pdf ・細井雅代著『地方分権社会における自治体経営』(三菱UFJリサーチ&コンサルティン グ「季刊 政策・経営研究」 ・2008 Vol.4) http://www.murc.jp/report/quarterly/200804/34.pdf ・荒川潤、大塚敬、永柳宏、平野誠也、左近靖博、高崎正有著『自治体経営におけるトー タル・マネジメントの確立と人事マネジメントの在り方』 (三菱UFJリサーチ&コンサ ルティング「季刊 政策・経営研究」・2008 Vol.4) http://www.murc.jp/report/quarterly/200804/74.pdf ・国立社会保障・人口問題研究所編『 「日本の市区町村別将来推計人口」(平成 20 年 12 月 推計)について』(2008) http://www.ipss.go.jp/pp-shicyoson/j/shicyoson08/t-page.asp ・淡路富男著『「行政経営改革基礎講座」1~11』 http://www3.keizaireport.com/file/gyousei_keiei1.pdf から http://www3.keizaireport.com/file/gyousei_keiei11.pdf まで ・淡路富男著『「行政創生:「ドラッカー」が語る住民基点の行政経営改革」1~12』 http://www3.keizaireport.com/file/pdru1.pdf から http://www3.keizaireport.com/file/pdru12.pdf まで ・地方公会計の整備促進に関するワーキンググループ編『地方公共団体における財務書類 の活用と公表について』(2010) http://www.soumu.go.jp/main_content/000057057.pdf