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 第 1 編 行政法総論
第 1 章 行政法の内容と重要性………………………………………………
6
第 2 章 行政法のかたち………………………………………………………
7
第 3 章 行政法の特色・重要度………………………………………………
8
第 2 編 行政組織法
第 1 章 行政主体と行政機関…………………………………………………
10
第 2 章 行政機関の権限………………………………………………………
12
第 3 編 行政作用法
第 1 章 行政作用法のかたち…………………………………………………
14
第 2 章 行政行為………………………………………………………………
15
第 3 章 その他の行政活動……………………………………………………
26
第 4 章 行政の実効性の確保…………………………………………………
28
第 4 編 行政救済法
第 1 章 行政救済法のかたち…………………………………………………
36
第 2 章 行政不服審査法………………………………………………………
38
第 3 章 行政事件訴訟法……………………………………………………… 62
第 4 章 国家補償……………………………………………………………… 84
第 5 編 行政手続法
第 1 章 総 論………………………………………………………………… 94
第 2 章 申請に対する処分…………………………………………………… 98
第 3 章 不利益処分…………………………………………………………… 100
第 4 章 聴 聞………………………………………………………………… 102
第 5 章 弁明の機会の付与の手続…………………………………………… 108
第 6 章 行政指導……………………………………………………………… 110
第 7 章 届 出………………………………………………………………… 112
4
行
政
法
第 6 編 地方自治法
第 1 章 地方自治法の基本原則……………………………………………… 116 第 2 章 住 民…………………………………………………………… …118 第 3 章 議 会……………………………………………………………… 124 第 4 章 執行機関……………………………………………………………… 130 第 5 章 普通地方公共団体の長と議会との関係…………………………… 134 第 6 章 監 査……………………………………………………………… 136 第 7 章 財 務……………………………………………………………… 142 第 8 章 公の施設……………………………………………………………… 144 第 9 章 国と地方公共団体の関係…………………………………………… 148 第 10 章 紛争処理……………………………………………………………… 152 5
1. 内 容
行政法とは、行政を行う組織や行政活動そのもの、またはそれらをめぐる法的紛争に関す
る法をいう。
具体的には、次の3つの種類に分けられる。
①行政組織法……行政を営む組織や機構について定めるもの
ex. 国家行政組織法・内閣法・国家公務員法・地方自治法 etc.
②行政作用法……行政組織が実施すべき行政の内容・権限を定めるもの
③行政救済法……違法な行政活動により不利益を受けた国民が救済を求めるための
手続を定めるもの
ex. 行政事件訴訟法・行政不服審査法・国家賠償法 etc.
6
行
政
法
【設 例】
行政法は一体、どんなかたちをしているのか。
【考え方】
行政法とは、行政についての法であるので、どのように行政がなされているのかを考え
てみればよい。
↓
まず、行政は、行政機関によってなされている。それゆえ、行政機関がどのような組
織をなしているのかについて学習する必要がある。これを行政組織法という。そして、
行政書士試験ではこのうち、特に、①組織の上下関係と②官公庁舎などの公物について、
出題されるので、この点をしっかり押さえることが重要となる。
↓
次に、この行政機関が国民に対して様々な作用を行うことがまさに行政といえる。それ
ゆえこの作用として、どんなものがあるのか、この作用が十分なしえない場合には、ど
うやって、その実効性を確保してゆくのか、などについて学習する必要がある。これを
行政作用法という。
↓
さらに、これらの作用によって、時には国民の権利利益が侵害される場合がある。その
ような場合、いかにして国民の権利利益を救済してゆくのかが重要となる。これを行政
救済法という。
↓
なお、これらの行政法規には総則的規定が存在せず、行政上の法律関係と私法上のそれ
の区分は曖昧である。それゆえ、法規の実務上の扱いは、判例の集積によってその指標
が与えられてきた。それゆえ、今後の行政書士試験では、公法上の法律関係に関する判
例の理解は、行政法規を学ぶ上では重要となろう。
【結 論】
↓
以上により、行政法は以下のかたちをとる。
行政組織法
行 政 法 行政作用法
行 政 救 済 法 以下、この順に学習する。
7
私法法規 ex. 民法・商法
行政法規
私的自治
公益の実現
国民と国民との間を規律
↓
互いに能力的に平等
↓
各国民の自由な意思が実現できる
ように法規は働く
国家と国民の間を規律
↓
国家は巨大な権力を有するので、これによ
って国民の幸せが害される危険性がある。
↓
国家の権力濫用を防止するように、行政法
規は働く
①裁判規範(裁判の準則である法規
範)として働く
①行為規範として働く⇒行政主体等に一定
の作為・不作為を命じる
②行為より前に法がある(法治主義・法律
による行政の原理)⇒実定法規があって
はじめて行為をすることができる。
③強行法規性を有する
∵行政法規は公益の実現を目的とするため
画一的かつ平等に適用することが要求さ
れるから
④総則的規定が存在しない
∵行政の内容は複雑ゆえ、総則的規定を定
めることは困難ゆえ
⇒判例の集積によって公法上の法律関係が
定まってきた。
目 的
視 点
②行為が法より先にある。
特 色
③原則として強行法規性を有しない
④総則的規定が存在する
行政法規は、人権保障と公益の実現との調和が重要となる。
国
公法(行政法規)
国
公法(行政法規)
調 和
民
弱 者
8
家
国
私 法
民
弱 者
行
政
法
9
重要度C
1.行政主体
自己の責任で行政権を行使し、その法的効果の帰属主体となることができる、法人格を有
する者。 ex. 国、地方公共団体
2.行政機関
種 類
行政(官)庁
国のために(内部的)意思決定をし、これを外部(国民)に表示する権
限を有する機関(意思機関とも言う)。
行政庁は行政主体の手足となって公法上の意思決定と表示を行い、そ
の法律効果は行政主体に及ぶ。つまり、行政官庁は法律関係の主体とは
ならない。行政官庁には、大臣等のように一人からなるもの(独任制)
のほか、委員会という複数人からなるもの(合議制)もある。
補助機関
行政官庁を補助することを任務とする機関。
諮問機関
行政官庁の諮問に応じ又は自ら進んでこれに意見を陳述することを主な任
務とする機関。その意見・勧告は法律上行政官庁を拘束するものではない。
参与機関
自ら単独に国の意思を決定表示する権限を有するわけではなく、だから
といって、単に行政官庁を補助し、又はその諮問に応えるだけでもなく、
行政官庁が意思決定するための前提要件として議決をし、これに基づい
て国の意思が決定される意味において、国の意思決定に参与する機関。
その議決がなければ有効な意思決定とならない。
執行機関
行政官庁の命を受け、実力を持って執行することを任務とする機関。
企業機関又は
営造物機関
監査機関
10
定 義
国の企業の経営又は営造物の管理を任務とする機関。
行政機関の行う行政を検査し、その正否を監査することを任務とする機関。
行
政
法
3.行政組織
府または省
委 員 会
庁
内 閣 府
国家公安委員会
公正取引委員会
①金融庁②防衛庁③宮内庁④警察庁
総 務 省
公害等調整委員会
消防庁
法 務 省
①司法試験管理委員会
②公安審査委員会
公安調査庁
外 務 省
財 務 省
国税庁
文部科学省
文化庁
厚生労働省
中央労働委員会
社会保険庁
農林水産省
①林野庁 ②水産庁
経済産業省
①資源エネルギー庁 ②特許庁
③中小企業庁
国土交通省
船員労働委員会
①気象庁 ②海上保安庁
③海難審判庁
環 境 省
【行政機関の具体例】
行政(官)庁
大臣、知事、市町村長などの人や委員会などの人の集団を意味する
※役所の建物を指すのではない
補助機関
各省の政務次官・事務次官・局長・課長等、地方公共団体の副知事助役・
収入役・部長・課長・その他の吏員など
※常識的に「公務員」と考えるものの大半が、行政法での補助機関である
諮問機関
各種審議会・協議会・調査会
※情報公開・個人情報保護審査会など
参与機関
電波管理審議会、中央鉱山保安協議会、検察官適格審査会、公認会計士審
査会等
執行機関
警察官、国税の徴収職員等
企業機関又は
営造物機関
監査機関
造幣局、印刷局等
会計検査院、総務省行政評価局等
11
重要度C
1.権限の代理と権限の委任
権限の
代理とは?
権限の代理
権限の委任
12
行政庁の権限は、行政庁自身が行使するのが原則であるが、なんらかの
理由で不可能な場合に、権限を他の機関に代わって行使させる場合があ
る。これを権限の代理という。
授権代理
代理される行政庁の権限の付与行為(=授権)によって、代
理関係が発生する場合。
法定代理
代理される行政庁の授権ではなく、法定事実(機関たる人の
病気や旅行など)の発生によって、代理関係が発生する場合。
これはさらに下記の2つに分けられる。
①狭義の法定代理
法定事実の発生により、直ちに代理関係が生ずる場合
②指定代理
法定事実の発生に加えて代理者の指定行為によってはじめ
て代理関係が生じる場合
種 類
代理の範囲
被代理者の指揮・監督
授権代理
権限の一部についてのみ可
可
法定代理
権限の全部について可
不可
代理可能な
権限の
範囲
権限の委任
とは?
行政庁の権限そのものをそっくり他の行政機関に移してしまうことをい
う。
権限の代理
との違い
権限の代理の場合
権限の委任の場合
権限行使
の仕方
代理者は他人の権限を他人
に代わって行使するにすぎ
ない
受任者は受任権限を自らの権
限として行使する
法律効果
の帰属
被代理者に帰属する
受任者に帰属する
するため
の要件
法の根拠はなくてもよく、 法に明示の根拠があり、かつ
外部への表示も不要
外部(国民)への公示が必要
行
政
法
【権限の代理と委任の対比】
権限の代理
権限の委任
授権代理
法定代理
法律の根拠
不要
必要
必要
権限の移転
なし
なし
あり
指揮・監督
可
不可
可(※)
全部委任
不可
可
不可
委任した行政庁の権限行使
可
可
不可
※権限の委任は、上級官庁から下級官庁に対してなされることがほとんどであり、上級官庁
としての権限に基づき指揮監督をなしうる。
13
【設 例】
行政組織が実施すべき行政の内容・権限を定めるものを、行政作用法というが、これは
一体どんなかたちをとるか?
【考え方】
行政組織が実施する最も重要な活動は、たとえば小学校を建てるために、土地を地主か
ら強制買収するというような行政行為である。それゆえ、この行政行為についてまず学
習することが必要である。
↓
また、現代においては、生まれながらにして貧富の差があるため、各国民の幸せを実現
するためには、行政庁が様々な活動をすることが要求される(行政国家現象)。それゆえ、
①行政行為のほか、②行政立法 ③行政契約 ④行政計画 ⑤行政指導という行政活動
も生じるに至っているので、これについても学習しなければならない。
↓
さらに、このような行政作用の実現が困難な場合、行政上の義務の実効性を確保するため
の手段が必要となる。それゆえ、この各種手段についても学習しなければならない。
【結 論】
↓
以上により、行政作用法は以下のかたちをとる。
14
行
政
法
重要度C
第1節 行政行為の意義
1.まとめ
誰 が?
行政庁が
誰 に?
国民に対して…行政機関の内部命令(通達・職務命令)は行政行為にはあ
たらない。
何について?
どのように
する?
具体的事実に関して
cf. 一般的・抽象的事実に関する行政立法とは異なる
①法令に基づき(法律による行政の原則)
②優越的な意思の発動により…行政主体が契約の一方当事者となる場合や
行政契約は対等的ゆえ行政行為にはあたらない。
③一方的に権利を制限したり、義務を課すこと…法的効果を生じない道路
の修築や清掃のような事実行為は行政行為にあたらない。
2.行政行為についての学習事項
この行政行為については
①行政行為とは一体何か(行政行為の意義)?
②どんな種類の行政行為があるか(行政行為の種類)?
③行政行為に条件等がつく場合があるが、それはどんなことか(行政行為の附款)?
④行政行為にはどんな効力が認められるか(行政行為の効力)?
⑤行政行為に瑕疵があった場合、どうするか(行政行為の瑕疵)?
⑥行政行為をした後、都合が悪くなった場合、撤回しえないか(行政行為の撤回)?等が
問題となるので、順に学習する。
15
重要度B
第2節 行政行為の種類
分 類
種類
下命
禁止
命令的行為
法律行為的行政行為
具体例 *名称と分類のズレに注意
①違法建築物の除去命令
作為を命じる行為を下命といい、
②営業の停止
不作為を命じる行為を禁止とい
③道路の通行禁止
う。
④性病患者への治療命令
許可
一般的な禁止を特定の場合に解除
し、適法に一定の行為をすること
を得させる行為。
①風俗営業の免許
②火薬類製造の許可
③自動車運転の免許
④医師の免許
⑤建築の許可
⑥質屋営業の許可
⑦酒類製造の免許
⑧旅館業経営の許可
⑨公衆浴場経営の許可
免除
特定の場合に、作為・給付・受忍
の義務を解除する行為。
①租税の免除・猶予
②予防接種の免除
特許
①鉱業権設定の許可
②公企業の特許
直接相手方のために、権利能力、 ③公務員の任命
行為能力、特定の権利または包括 ④河川の占有許可
的法律関係を設定する行為。
⑤帰化の許可
⑥公有水面埋立の免許
⑦道路の占有許可
形成的行為
準法律行為的行政行為
16
定 義
認可
第三者の行為を補充して、その法
律上の効力を完成せしめる行為。
①地方債起債の許可
②公共組合(土地改良区等)設立の
許可
③農地の権利移動の許可
④特許企業の運賃および料金等の認
可
⑤河川占用権の譲渡の承認
代理
第三者のすべき行為を国が代わっ
てした場合に、第三者自らがした
のと同じ効果が生じること。
① 臨 時 代 理 者 の 選 任( 地 方 自 治 法
247 条)
確認
特定の事実または法律関係に関し
疑いまたは争いがある場合に、公
の権威をもってその存否または真
否を確認する行為。いわば判断の
表示である。
①所得額の更正決定
②建築物の違法性の確認
③当選人の決定
④発明の特許
⑤審査請求の裁決
公証
特定の事実または法律関係の存否
を公に証明する行為。
①選挙人名簿・土地台帳その他の公
簿への登録
②各種の証明書・鑑札の交付
通知
特定または不特定多数の人に対し
特定の事項を知らしめる行為。
①特許出願の公告
②納税の督促
③代執行の前提としての戒告
受理
他人の行為を有効な行為として受
領する行為。
①各種申請の受理
行
法律行為的
行政行為
行政行為
命令的行為
下命・禁止
許 可
免 除
形成的行為
特 許
認 可
代 理
確 公 通 受 準法律行為的行政行為
政
法
附款○
認
証
知
理
附款×
○法律行為的行政行為
行政庁の意思表示をその要素とし行政庁が一定の効果を欲するが故に、その効果を生じる行
為
○準法律行為的行政行為
行政庁の意思表示以外の精神作用の発現を要素とし、行政庁がその効果を欲するゆえでは
なく、一定の精神作用の発現について、専ら法規の定めるところにより法的効果の付せら
れる行為
○命令的行為
国民が生まれながらにして有している活動の自由を制限したり、一定の行為をする義務を
命じたり、その義務を解除したりする行為
○形成的行為
権利能力、行為能力、特定の権利の付与または包括的な法律関係の設定等、法律上の効力
を発生・変更・消滅せしめる行為。いずれも人が本来有していない自由を行為の対象とす
る点で、命令的行為と異なる。
【許可、特許、認可】
許 可
特 許
認 可
命令的行為
形成的行為
形成的行為
②受けないでした
行為の効果
原則として有効
無 効
無 効
③法律関係
申請者と行政庁
(二者関係)
申請者と行政庁
(二者関係)
法律行為の当
事者と行政庁
(三者関係)
①行為の分類
17
重要度B 第3節 行政行為の附款
種
類
(1)行政行為の効果を制限したり、あるいは特別な義務を課すため
に、主たる意思表示に付加される行政庁の従たる意思表示。附
款とは、
「付随する約款」(付帯する定め)を縮めたもの。
(2)法定附款(行政行為の効果の制限が法令によって定められてい
どんなことか?
るもの)は、行政庁の意思表示を要素としないため、ここでい
う附款ではない。
〔イメージ〕
主たる意思表示 + 従たる意思表示
法律行為的行政行為 附 款
(1)明文で附款を付することができる旨の規定のある場合。
(2)法律で明示されていなくても、行政行為の内容について、行政
附款を付し
庁に裁量権が認められている場合。
うる場合
(3)法律行為的行政行為に限る。準法律行為的行政行為には附款を
付すことはできない。
∵準法律行為的行政行為は意思表示を要素としないから (1)行政目的とは無関係に付することはできない。
①目的の範囲を超えて付されたものは違法であるが、直ちに無効
にはならず、附款が重大かつ明白な瑕疵を有する場合のみ無効。
限 界
②附款が無効な場合
・本体たる行政行為の重要な要素であれば :全体が無効
・ でなければ:附款のみ無効
(2)必要最小限のものであること。
①原則有効
(∵行政行為の一部なので公定力あり)
。よって取消しうる。
②附款だけの取消を求めることができるか?
・附款と本体が 可 分:できる
瑕疵ある附款
不可分:できない
③附款が無効な場合
・本体たる行政行為の重要な要素であれば :全体が無効
・ でなければ:附款のみ無効
行政行為の効果を発生不確実な将来の事実にかからしめる意思表示
をいう。その条件たる事実の成否の未定の間は、行政行為の効力の
条 件
発生は不確定の状態にあり、条件の成就により、当然にその効力を
生じ(停止条件)
、または、その効力を失う(解除条件)。
ex. 会社の成立を条件に河川の使用を許可する。
行政行為の効果を将来到来することの確実な事実にかからしめる意
思表示をいう。期限の到来によってその効力を生じることがあり(始
期 限
期)
、期限の到来によってその効力を失うこともある(終期)。
ex. 5 月 1 日までに予防接種を受けよ
主たる意思表示に付随して、行政行為の相手方に対し、これに伴う
特別の義務を命ずる意思表示をいう。義務の不履行の場合には、別
の行政行為により、先の行政行為を撤回するとかその他相手方に不
負 担
利益を課することはあるが、義務上の不履行によって当然にその行
為の効力が消滅することはない。
ex. 道路の占有許可⇒許可にあたり占有料を払いなさい。
主たる意思表示に付加して、特定の場合に行政行為を取消得べき権
利を留保する意思表示。但し、行政庁が自由に取消権を行使できる
取消権の留保
というわけではなく、条理上の限界が存する。ex キャバレー営業の
(撤回権の留保)
許可を与えるにあたって善良の風俗を害するおそれがある時には、
営業許可を撤回する。
主たる意思表示に付加して、法令が一般にその行為に付した効果の
法律効果の
一部の発生を除外する意思表示。
一部除外
ex. 公務員に出張を命じながら旅費を支給しない。
18
行
政
法
19
重要度A
第4節 行政行為の効力
①行政行為が成立し、②相手方に告知し、③相手方が行政庁の意思
表示を了知することができる状態になった時に効力が発生する。
行政行為が、相手方や第三者に対してのみならず、行政庁に対して
も拘束する効力。この拘束力は法律に由来する。
拘束力
ex. 相手方に権利を与える行政行為は、同時に、それに対応する義務
が行政庁に対して課される。
行政庁の事実認定および法令解釈は一応適法・有効と推定され、仮
に客観的には違法であっても、行政庁の職権によって否認され、ま
たは一定の争訟手続によって公定力が除去されるまでは、相手方だ
けでなく、国家機関も独自の判断でこれを否認することが許されな
い効力。但し、行政行為に「重大かつ明白な瑕疵」がある場合には、
公定力
公定力は認められず、当然無効なものとされる。この公定力は取消
訴訟制度に由来する。
∵円滑な行政の遂行のため
ex. 国民が税務署長の違法な課税処分により、本来納めるべき税額以
上に納税した場合でも、直ちに過誤納金の返還を求めることはで
きず、課税処分の取消を求める争訟手続きを踏む必要がある。
違法な行政行為であっても、一定の期間(行政事件訴訟法の出訴期
間または行政不服審査法の不服申立期間)経過後は、行政庁が誤り
を認めて職権で自発的に取り消してくれない限り、その行政行為は
不可争力
もはや争うことができず、その結果、国民は違法な行政行為による
(形式的確定力)
拘束を免れることができないという効力。これは取消訴訟の不服申
立期間・出訴期間に由来する。
∵一定期間経過後にも不服を言えるのでは、円滑に行政を行えないから
行政行為の職権による取消・撤回は原則として自由であるが、その
性質または一定の手続を経た結果として、その行政行為を行政庁が
職権により取消・撤回をすることができないという効力。これは行
不可変更力
政不服審査制度に由来する。
(実質的確定力) 公平な第三者的立場にある行政庁により、裁判手続に準じた慎重な
手続にもとづいて行なわれる行政行為に限ってのみ認められる。
∵紛争の平和的解決の見地から
ex. 建築基準法 94 条に基づく建築審査会の裁決
行政行為によって命ぜられた義務を、国民が履行しないときは行政
庁が裁判所に訴えて判決などの債務名義を得なくても、自ら強制執
行をすることができる効力。これは行政上の強制執行制度に由来す
る。
但し、①義務を命じた行政行為に「重大かつ明白な瑕疵」があって
無効な場合には、自力執行力は認められず、また、②自力執行力が
自力執行力
認められるのは行政行為のうち、国民に対して義務を命じる下命行
為(命令・禁止)に限られ、さらに法文上の根拠が必要である。
∵人権保障のため
ex. 国民が税金を支払わないときは、行政庁である税務署長は、国税
徴収法の定めに従って、裁判手続を経ることなく、滞納者である
国民の財産を差押え、競売に付して税金を取り立てることができ
る。
行政庁の行政処分に対して相手方より処分の取消しの訴えが提起さ
行政事件訴訟法と
れても、処分の効力、処分の執行または手続の続行に影響はない(執
の関係
行不停止の原則、行政事件訴訟法 25 条 1 項)。
行政庁の違法な行政行為により受けた損害につき、国家賠償を求め
国家賠償
る場合、予めこの行政行為の取り消し訴訟を起こして取消判決を得
との関係
ておかなくても損害賠償を求めることができる。
効力発生時期
種
類
20
行
政
法
【行政行為の効力】
税務署がA氏に納税を命令 A氏に告知=行政行為の効力発生 A氏のみならず、税務署も、これに拘束される(拘束力) この行政行為は適法か?
No
行政行為は違法
でもA氏は支払わない
しかし、これをそのまま主張す
ることはできない(公定力)
そこで課税処分の取消を求める
争訟手続を起こしたか?
No
Yes
税務署は自ら強制執行
できる(自力執行力)
認められれば過誤納金の返還が
なされる。
何もしないで一定期間経過す
れば、もうA氏はこれを争え
ない(不可争力)
21
重要度B
第5節 行政行為の瑕疵
行政行為の
不存在
基準
①法の定める行政行
為の成立要件を全
く欠き、外観上も
未だ行政行為と称
するに値するだけ
の形態を備えない
場合
②行政行為として外
部に表示されるに
至らない場合
公定力
争い方
無
そもそも、行政行為
が存在しないので争
いも生じない
主張
権者
効果
瑕疵の治癒
無効(違法)
行為の転換
違法性の承継
22
違法な行政行為
取消しうべき
無効の行政行為
行政行為
行政行為が内在す 瑕 疵 が 無 効 と し な
る瑕疵が、重大な け れ ば な ら な い 程
法規違反で、かつ ではない場合
その瑕疵の存在が ※ 公 務 員 に 詐 欺、
外観上明白である 強 迫 等 に よ る 意 思
場合
の瑕疵がある場合
または賄賂その他
cf. 何らかの行政行 不 正 行 為 に 基 づ い
為 ら し き 外 形 て行った行政行為
が 存 す る 点 で は「 無 効 」 で は な
行 政 行 為 の 不 く取消しうるにと
存在と異なる
どまる
無
有
取消訴訟による必
要はない。
↓
期間や形式に拘束
されず、争いうる
取消訴訟によらな
ければならない
∵公定力を排除す
るため
↓
期間制限や争い方
に制限がある
不当な
行政行為
行政行為につ
き法定の要件
は充たしてい
る が、 そ の 公
益目的におけ
る裁量を誤っ
た場合
有
①原則
取消訴訟で
は争えない
(不服申立で
争う)。
②例外
逸 脱・ 濫 用
にわたる場
合は取消訴
訟で争える
①行政行為の相手方
②権限のある行政庁
行政行為の
の職権による取
相手方
消
権限ある行政庁ま
たは裁判所により
取 消 さ れ る ま で、
有効なものとして
はじめから全く法
扱 わ れ る。 取 消 し
同 左
律効果を生じない
た 場 合、 効 力 は 遡
及 し、 は じ め か ら
なかったものとさ
れる
下記の場合に、その効力を否認することは不合理なので、行政行為を有
効なものとして取り扱うこと。
①瑕疵の程度がきわめて軽く、それを取り消すと相手方の信頼を裏切り、
法的安定性を害するような場合。
ex. うっかり営業許可書に日付の記載を忘れた場合
②後に事情が変化したために、あえて非難するには値しなくなったよう
な場合。ex. 招集手続に瑕疵があったが、たまたま全員が出席した場合。
無効(違法)な行政行為を、
他の有効な行為としてとらえ、有効とすること。
ex. 死者に与えられた営業許可を、その相続人に対する許可とみなす。
①先行行為に瑕疵があっても、その後続行為に違法性は承継されない。
②ただし、一連の手続を構成するような場合には承継が認められる。
何人も無効を主張
しうる
行
政
法
【行政行為の瑕疵】
瑕疵ある行政行為
行政行為の不存在
無効な行政行為
違法な行政行為
取消しうるべき行政行為
不当な行政行為
権限の濫用・逸脱が著しく不当(取消可)
不当だが裁量内の行為(取消不可)
無効行為の転換:行政行為が違法あるいは無効であっても、別個の行政行為として見れば適
法で、瑕疵のない行政行為として扱えるような場合に無効行為を有効なも
のに転換することである。
例えば、すでに死亡したものに対して、国がこの事実を知らずに固定資産
税を課する課税処分をしても、納税者がいない以上原則的には無効である。
しかし、相続人がいる場合には、相続人は不動産を相続で得たために、こ
の固定資産税を積極的・能動的に払う場合もあるはずである。そこで、死
者に対する課税処分を無効と扱わずに、相続人に対する課税処分として有
効とするのである。本来であれば相続人を相手方として課税処分をやり直
す必要があるのが原則だが、課税内容は実質的には同一である以上、手続
の便益から、無効な行政行為の有効なものへの転換を認めようというので
ある。
23
重要度C
第6節 行政行為の撤回
24
撤 回
取 消
意 義
瑕疵なく成立した行政行為につい
て、その後の事情の変化により、そ
の効力を維持することが妥当でない
として、処分庁がその効力を将来に
向かって消滅させること。
行政行為が成立当初から瑕疵を有するた
めに、その行政行為の効力を消滅させる
ことが公益上要求される場合に、そのこ
とを理由に、その効力を遡って消滅させ
ること。
原 因
後発的事情
原始的瑕疵
①関係人の申請
②行政庁の職権
契 機
①行政庁の職権
行使者
①原則として原処分を行った行政庁
(処分庁という)
②原処分を行った行政庁の上級監督
①裁判所
行政庁であっても、法令上代執行
②処分庁
権が認められている場合その他明
③上級監督行政庁
文の規定のない限り撤回の権限は
認められない
③裁判所も撤回の権限はない
効 果
原則として将来効
その他
下記の行為については制限を受ける。
①不可変更力の生ずる行為
②授益的行政行為(国民に利益を与える
①撤回の撤回は認められない。
行政行為)については、既得の権利ま
②公益上の必要があれば、たとえ法
たは利益の侵害を正当化するだけの公
律規定がなくても撤回しうる
益上の必要がある場合等に限り、その
目的に必要な限度においてのみ、取消
ができる。
原則として遡及効
行
政
法
25
重要度C
行政立法
行政計画
行政契約
行政指導
26
意 義
行政機関が、法文のような形で一般的、抽象的な定めをすること。
必要性
国民の権利義務に関する法規は、原則として国会の制定する法律の
形成によるべき
(憲法 41 条)。しかし①行政に関する立法の量的増加、
②立法内容の専門化・技術化、③情勢変化への適応性の必要などから、
法律では一般的・抽象的な根拠・基準を定めるにとどめ、その具体的・
実質的な内容は、行政立法に委任する例が増加してきた。
(1)法規命令:国民の権利義務に直接変動を及ぼすもの
①執行命令
憲法・法律その他上級の法令の実施に必要な具体的細目や手続
的事項を定めるもの
②委任命令
法律その他上級の法令に基づいて、その委任された事項につい
て定めるもの
※独立命令(法律から独立して行政庁自らの判断に基づいて国民の
種 類
権利義務に関する命令を発すること)は現行法上認められない。
(2)行政命令:国民の権利義務に直接影響を及ぼさないもの
① 告示
公示を必要とする行政措置の表現形式
② 訓令
上級官庁が、その下級官庁またはその職員に対して発する命令
③ 通達
上級官庁が下級官庁に対して発する命令、これに違反しても
その処分は有効
意 義
行政が総合的視野のもとで、将来の一定期限内に到達すべき目標を
設定し、そのための必要な諸手段を調整する作用
具体例
国土利用計画法による国土利用計画、土地利用基本計画 etc
意 義
行政庁が他の行政庁や私人と対等な立場で締結する契約
具体例
公営住宅への入居・公営交通機関の利用 etc
意 義
行政庁が行政目的を達成するために、助言・指導等の非権力的な手
段を行使することにより、国民を行政庁の意図する方向へ誘導する
事実的行為(法的効力はない)
(1)助成的行政指導
農業指導・経営指導・保健指導など給付行政の一環として行わ
れるもの
(2)調整的行政指導
分 類
建築主と近隣住民との間の紛争の調整など関係者の利害の対立
を調整し、好ましい秩序を作り出すもの
(3)規制的行政指導
違法建築物是正の指導・物価の値上げ抑制の指導など公益実現
に障害となる行為を予防し、抑制するもの
問題点
行政指導は法律の不備を補充するために行われるものであり、法的
な効力はない。しかし、現実には行政庁が公の権力を背景として、
国民の服従を強制しているのが実態であり、法律による行政の原理
に反するとの批判がある。
救 済
国民が不利益をこうむった場合いかなる救済手段があるか?
①行政指導は法的効力を有しないので、行政不服審査・行政訴訟(取
消訴訟)の対象とはなりえない。
②しかし、国家賠償法による損害賠償請求は為し得る。
行
政
法
【行政作用の分類】
基準設定作用
執行作用
行政立法
行政計画
行政行為
その他の行政行為
行政契約
行政指導
27
重要度B
1.行政強制
意 義
①「他人が代わってすることができる作為義務」(代替的作為義務)
が履行されない場合であり
②他の手段によってその履行確保が困難であり、かつ、その不履行
を放置することが公益に反する場合に
③行政庁が自ら義務者が行うべき行為を行い、または第三者にこれ
を行わせ
④その費用を義務者から徴収すること
※1 他人が代わってすることのできない「非代替的作為義務」や
「不作為義務」については、代執行をすることはできない。
※2 一般的な根拠法として、行政代執行法(P30 参照)、個別法
として土地収用法などがある。
具体例
①違法建築物の強制的取り壊し
②収用された土地の明渡の強制
意 義
①行政法上の、他人が代わって履行することができない義務(非代
替的作為義務)または不作為義務の履行がない場合に
②この執行罰(過料)を科することを予告することにより義務者に
心理的圧迫を加え
③その履行を将来に対して間接的に強制しようとするもの
具体例
現在では、砂防法 36 条のみにあるにすぎない
意 義
①行政上の義務の不履行がある場合に
②義務者の身体または財産に直接に実力を加えて義務が履行された
と同一の状態を実現する行政庁の作用のうち
③代執行を除いたもの
※基本的人権尊重の見地から法律で特に規定している場合以外には
できない。
具体例
出入国管理令に基づく退去強制のための収用
意 義
①国民が国または地方公共団体に対して負う公法上の金銭給付義務
を履行しない場合に
②行政庁が強制手段によって、その義務が履行されたのと同様の結
果を実現するための作用
具体例
国税徴収法による滞納処分・地方税法による地方税滞納処分
意 義
①義務の履行を強制するためではなく
②目前急迫の障害を除く必要上、義務を命じる暇のない場合、また
はその性質上義務を命ずることによってその目的を達しがたい場
合に
③行政法規の根拠に基づいて、直接に私人の身体や財産に実力を加
えて行政目的を達する作用
具体例
①予防接種の強制
②風俗営業法による営業所への立入
代執行
行政上の強制執行
執行罰
直接
強制
強制
徴収
行政上の
即時強制
28
行
政
法
・行政強制:行政上の目的を達するために人の身体または財産に実力を加え、もって行政
上必要な状態を実現する作用
・行政上の強制執行:行政法上の義務の不履行に対し、行政権の主体が将来に向かい、実力
を持ってその義務を履行させ、またはその履行があったのと同一の状態を実現する作用
・非代替的作為義務:他人が代わってなしえない義務。ex. 予防接種を受ける義務
・不作為義務:
「∼しない」ことを義務とする場合。ex. 許可なく危険物を売らない義務
前 提
強制執行
即時強制
相手方の
義務の不
履行を前
提
相手方の
義務の不
履行を前
提としな
い
種 類
強制に適した義務
強制の仕方
代執行
代替的作為義務
文書で戒告⇒通知⇒代執行
の実施⇒費用の徴収
執行罰
①非代替的作為義務
②不作為義務
金銭の納付を命じ、心理的
圧迫を加え、間接的に義務
の履行を強制する手段
直接強制
代替的・非代替的
作為・不作為義務
のどれでも可
義務者の身体・財産に直接
実力を加え、義務の内容を
実現する。
強制徴収
金銭給付義務
義務者の身体や財産に実力
を加えて、直接に目的を達
成する。
①急でやむを得ない事 情があり、相手方に義
務を課してその履行を
求める余裕のない場合
②その性質上、あらかじ
め義務を課することに
よっては目的を達する
ことができない場合
身体・財産に直接実力を加
え、必要な状態を作り出す。
29
2.行政代執行法 適 用
行政上の義務の履行に関しては、別に法律で定めるものを除いては、この法律
の定めるところによると規定し、行政代執行法は代執行に関する一般法である
ことを規定している。
代執行の
要件
①代替的作為義務の不履行。 ex. 違法建築物を除去しない。
②他の手段によってその履行を確保することが困難であること。
③その不履行を放置することが著しく公益に反すること。
代執行の
手続
①相当の履行期限を定め、その期限までに履行がなされないときは代執行をな
すべき旨を、あらかじめ文書で戒告。
②代執行令書をもって、時期・執行責任者の氏名・費用の見積額を義務者に通知。
但し、非常または危険切迫の場合で、緊急の必要があるときは、戒告・代執
行令書の手続を経ないでよい。
③代執行 ex. 行政庁または第三者が建築物を除去
④義務者に対し、文書で費用納付を命令
⑤費用は国税滞納処分の例(督促⇒差押え⇒換価⇒代金配当)により徴収できる。
⑥徴収した費用(徴収金)は、事務費の所属に従い、国庫または地方公共団体
の経済の収入となる。
その他
①執行責任者は、証票を携帯し、要求があるときは呈示しなければならない。
②費用については、行政庁は国税・地方税に次ぐ順位の先取特権を有する。
3.行政罰
意 義
行政法上の義務違反に対し刑法にある刑罰(懲役・禁錮・罰金・拘留・
科料(とがりょう)を科す場合
内 容
特別の規定のある場合のほか、原則として刑法総則が適用され、手
続きは刑事訴訟法による⇒成立には故意・過失が必要
意 義
行政上の義務違反ではあるが、単純かつ形式的なもので(届出・通知・
登録義務違反)
、直接的には社会的法益を侵害しないが、行政上の秩
序を乱し、行政目的の達成に障害を与える危険を生ぜしめる場合に、
制裁として過料(あやまちりょう)を科すもの。
内 容
刑法総則の適用はなく、特別の定めがある場合を除くほか、非訟事
件手続法により裁判所が科す⇒成立には、故意・過失は不要
行政刑罰
秩序罰
根 拠
二重処罰
(併科)禁 二重処罰
止の原則 に当たる
か問題と
なる場合
30
何人も同一の犯罪について、重ねて刑事上の責任を問はれない。
(憲法 39 条後段)
①
②
③
④
行政罰 +懲戒罰 ⇒○
秩序罰としての過料+行政刑罰⇒○
代執行 +行政罰 ⇒○(そもそも二重処罰ではない)
行政刑罰 +行政刑罰⇒×(二重処罰の禁止)
行
政
法
行 政 罰:①法律上の根拠がある場合に⇒罪刑法定主義
②過去における義務違反に対して制裁を加えることを目的として
③一般統治権に基づき制裁として科せられる罰
なお、行政罰は、実際の違反行為者(自然人)の他にその使用者や事業主または雇用者であ
る会社(法人)を罰する場合がある。これを両罰規定という。
【行政強制と行政罰の比較1】
義務を前提とするか
行政上の強制執行
即時強制
行政罰
内容・手段
義務の不履行を前提とする
その義務を実現する
義務を前提としない
身体・財産に実力を加える
(義務の不履行がある)
過去の義務違反に対する制裁
【行政強制と行政罰の比較2】
強制執行
行政罰
共通点
行政法上の義務の履行を確保する手段
相違点
①過去の義務の不履行に対する制裁。
①現在の義務の履行を目的とする。
②威嚇効果により義務違反を予防す
②罰則というより、履行強制である。
る。
【行政刑罰と秩序罰の比較】
行政刑罰
秩序罰
種 類
懲役・禁錮・罰金・拘留・科料
過料(≠刑罰)
処罰の
対象
重大な義務違反
軽微な義務違反
刑法総則
適用あり
適用なし
手 続
原則:刑事訴訟法
(検察官の起訴に基づき、裁判
所が科する)
特例:通告処分・即決裁判手続
原則:非訟事件手続法
(地方裁判所が科する)
例外:長の行政処分で科す
(地方自治法上の過料)
根 拠
①法律
②条例
①法律
②条例または規則
【執行罰と行政罰の比較】
執行罰
行政罰
共通点
行政法上の義務の履行を確保する手段
相違点
将来にわたり義務の履行を求める。そ 過去の義務違反に対する制裁。それ
れゆえ、現在義務が履行されていれば ゆえ、現在履行されているか否かは
もはや、執行罰を科すことはできない。 問題とならない。
31
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