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セラミックス講義第 06・07・08回目 5月15・22・29日(火)スライド
セラミックス 第 6, 7, 8 回目 ( 新2号館 2301教室 ) 2012 年 5 月 15 , 22 , 29 日(火) 材料工学科 教授 永山 勝久 CZ法による単結晶Siの製造法 MCZ (Magnetic field applied CZ)法 :Si中融液中の対流制御を目的に 融液Siに磁場を印加する手法 CZ法を用いた単結晶Siの引き上げ機構 大口径単結晶SiとSiウエハー 日本は世界第1位の大口径単結晶Siの生産量を有している 現在は、99.999999999%(11N)の超高純度と30cmの直径かつ長さ約 1mの大型単結晶Si製造に成功し、0.5~1mm程度に薄くスライスし、IC, LSI等の高密度集積回路をSiウエハー上に作製する (単一元素) (2) 無機材料 [半金属B,Si,C・・・,酸化物,窒化物,ホウ化物,塩化物] の結合形式 “セラミックス” [ 定義 ] ◎ 「イオン結合」 ⇒陽(+)イオンと陰(-)イオン間の電気的引力に起因 2つの (静電引力 = クーロン力) 代表例):NaCl = Na+ - Cl結合形式 する化学結合様式 ◎ 「共有結合」 11Na:1s22s22p6 3s1 e※ [Ne] 17Cl:1s22s22p63s2 3p5 ○ イオン間に働く力 ◎3つのクーロン力・・・ [Ar] 1) 陽イオン-陰イオン : 引力 2) 陽イオン-陽イオン : 斥力 ( 反発力 ) 3) 陰イオン-陰イオン : 斥力 ( 反発力 ) 同種イオン間 イオン性結晶 ・・・ 全体として引力が斥力よりも大きくなる ( 図1,図2参照) : +,- イオン間のクーロン引力 結晶を構成 ( 静電引力 ) により,結晶を形成する ( 引力=斥力 ) (核外電子全て) イオン間距離が極端に近くな ると,両原子 (両イオン) が 有する電子と原子核の陽電 荷間におけるクーロン引力が 増大し,ポテンシャルエネル ギーは急激に増大する ポテンシャルエネルギー kcal/mol 引力≧斥力 100 NaCl結晶のイオン間距離 Clの電子 親和力 Naのイオン化 ポテンシャル 最適距離 0 2 4 6 -100 -e2/r 8 10 12 結合力=引力 弱い (両イオン間の 距離が遠い) -200 ∞ ( イオン間距離 ) e 2 e : 電荷 クーロン引力:F r 2 r : イオン間距離 ポテンシャルエネルギー r e2 : F r 0 図1 Na+とCl-との クーロン引力によるポテンシャルエネルギー 斥力 (同種イオン間のポテンシャルエネルギー) 陽イオン,陰イオンの電子雲が重なり合う r (:イオン間距離) = イオン間距離 合成ポテンシャルエネルギーの 極小値 陽イオン,陰イオンが離れている 引力 ・最も安定な位置 = ポテンシャルエネルギー 引力と斥力の 合成 ポテンシャル エネルギー ・斥力+ 引力の最小値= “イオン間距離” 陽イオン,陰イオンがくっついている ・・・ 引力と斥力の最適距離 図2 イオン間距離と 引力 , 斥力 の関係 (引力と斥力の平衡関係) (安定) イオン結合の特徴(:熱伝導機構) ( 高熱伝導性セラミックスと非熱伝導性セラミックス ) ◎イオン結合性結晶 (セラミックス) の熱伝導機構 自由電子が 熱の伝導体 熱伝導媒体 ・・・ 『フォノン(phonon)』 ○結晶中で規則配列する原子を “格子” と考え,格子位置での 原子の振動エネルギーを 「フォノン」 と定義 ( フォノン ・・・ “格子の振動” をエネルギーを持った 粒子 と仮定) = cf. 金属材料 (振動子) 『量子』 熱伝導機構 ・・・ 「 アインシュタイン・モデル(バネ・モデル)」 (図 参照) ① 物体を端面 (片側) 加熱 ② 加熱面での原子振動の増大 (軽元素ほど大きい) ③ 隣接正負イオン間でのイオン結合を介して,格子振動が伝播 ( ⇒ フォノンの伝播) ・・・ “ 格子振動による伝播 ” ◎ 軽元素ほど格子振動は大きく、その伝播は容易 熱伝導率 : Al2O3 (約20W/m・K, Al原子量 : 27 ) ZrO2 (約 4W/m・K, Zr原子量 : 91 ) 5分の1 アインシュタイン・モデル(イオン結合性結晶の熱伝導機構) バネ 端面 バネ (a) (b) 加 熱 加 熱 軽元素 ・・・ 格子振動は大 熱伝導は容易 端面 重元素 ・・・ 格子振動は小 <熱伝導率 : 小> 図3 熱伝導のモデル (アインシュタイン・モデル) : 結晶の左端から右端への 加熱に伴う格子振動に伴う熱伝導現象の説明 (a) 軽元素 (振動大,高熱伝導性) , (b) 重元素 (振動小) 共有結合の特徴 : 特定の原子・原子間 での強い結合力であるため、方向によって 結合力は異なる(・・・異方性が大きい結合力) 共有結合>イオン結合,金属結合 【 共有結合性結晶の特徴 】 : ① 融点が高い ② 硬度が大きい ③ 高強度 ④ 原子間結合に異方性があるため,特定面で割れる ⑤ 拡散係数が小さい(・・・物質中の原子移動が困難) 【 代表的な共有結合性物質 】 ・・・ Ⅳ族元素 : C,Si,Ge,Sn 原子配列 : ダイヤモンド構造 [ : 図4 参照 ] ・・・一つの原子の周囲に4つの原子が存在し,正四面体を形成 中心の原子と四面体頂点の各原子が互いに4個の外核電子を出し合って, かつ,スピンが逆向きの電子対を形成 = 『sp3混成軌道』 [ :図5 参照 ] sp 配位数 2 図4 ダイヤモンド構造 sp2 3 sp3 4 sp3d 5 sp3d2 6 sp3d3 7 図5 sp3 混成軌道 (配位数と幾何学的な原子結合状態) 半導体物質 ← (共有結合性物質の代表) ◎半導体の推移 ・最初のトランジスタ ; Ge (Ⅳ族元素) : Ge4+ 共有結合性結晶 ・現在の半導体 ; Si (Ⅳ族元素) : Si4+ ・今後の半導体 ; GaAs,InP (化合物) (Ⅲ‐Ⅴ族化合物) Ga,In ・・・ 3族元素 As,P ・・・ 5族元素 平均の原子価 : 4価 ⇒ Ge,Siと同様 = GaAs,InP ・・・ 立方硫化亜鉛構造 <4面体構造を4つ有する> (InSb) (四面体構造を構成要素にもつ,立方晶型結晶) ダイヤモンド結晶に類似 共有結合性結晶 四面体構造 が構成要素 “4配位構造” ( 図6 立方硫化亜鉛構造 :Ⅲ族原子位置, (・・・Ga,In) :Ⅴ族原子位置 ) (・・・As,P) 『ニューセラミックスの概要』 『ニュ-セラミックス』・・・金属,プラスチックスに次ぐ第3の工業素材 歴史的背景:伝統的セラミックスからニュ-セラミックスへの変革[:図1.1参照] ① 伝統的セラミックス・・・『セラミックスの石器時代』 :石器(:地球が作った天然のセラミックス)→土器(:火の発見(~800万年前)に 起因して人間が人工的に作った最初のセラミックス) → 陶磁器( 窯業製品、珪酸塩工業製品 ) ② ニュ-セラミックス(ファインセラミックス)・・・『ニュ-石器時代(現代社会)』 ① と ② の決定的相異点 [:表1.1参照] ・・・伝統的セラミックス・・・天然原料, ニュ-セラミックス・・・人工原料 『ニュ-セラミックスの概念的定義』 精製,精密に調整された化学組成かつ微細均一粒子からなる人工原料を 使って、高度に制御された成形法及び焼結法による焼成品 新しい機能を有する次世代高機能材料(構造的特性,機能的特性)に発展 表1.1 ニュ-セラミックスとオールドセラミックスの比較 原 料 熱処理 (焼成) 加 工 (製品化) 石 器 伝統的 セラミックス ニュー セラミックス 天然 天然 人工 天然 人工 人工 天然 人工 人工 図1.1 伝統的セラミックスから ニュ-セラミックスへの変革 『セラミックス』 の学術的定義 ・・・ 『非金属無機固体材料』[:表1.2参照] 【元素の分類】:(1)金属性元素 (ex.Al,Zr,Ti,Pb など) (2)半金属性元素(ex.B,C,Si など) (3)非金属性元素(ex.O,N,F,S,Cl など) 『非金属無機固体材料の定義と分類』 :①半金属性元素により構成される物質 (ex.ダイヤモンド,半導体Si,カ-ボン繊維,炭化ケイ素SiC, フラーレンC60, カーボンナノチューブ など) ②半金属性元素と金属元素及び 半金属元素と非金属性元素間の化合物 (ex.炭化チタンTiC,窒化ケイ素Si3N4, 窒化ホウ素BN など) ③金属性元素と非金属性元素間の化合物[:表1.3参照] (ex.アルミナAl2O3,ジルコニアZrO2, シリカSiO2, チタニアTiO2,MOx(M=U,Pu), 窒化アルミAlN など) 表1.2 金属,プラスチックス,セラミックスの比較 呼 称 金 属 材 料 原子間結合 金 属 金属結合 共有結合 非金属・有 プラスチック ファンデルワールス結 機物 合 イオン結合 非金属・無 セラミックス 機物・固体 共有結合 表1.3 金属とセラミックスの物性比較例 物性 材料 アルミニウム 金属 Al アルミナ セラミックス Al2O3 融点 [℃] 電気比抵抗 モース硬度 [Ω cm] 660 2.8×10-8 3以下 2,030 1014以上 9 日本 アメリカ ニュ-セラミックス High Technology Ceramics (新しいセラミックス) (高い技術を有するセラミックス) ファインセラミックス Advanced Ceramics (微細緻密・精密なセラミックス) (先端技術のセラミックス) ↓ (社)日本ファインセラミックス 協会による 平成20年度 高度な技術を用いた ・産業動向調査 より 先端新素材・応用分野 (平成20年度 [:図1.2,表1.4-1~3, のデータ) 表1.6,図1.6,1.7 参照] ∴ ニュ-セラミックス ・・・知識集約的製品 ⇒図1.6 ,1.7 (高機能・高付加価値) [参考]:表1.5,図1.3, 図1.4,図1.5 ・・・ニューセラミックス 出典:(社)日本ファインセラミックス協会 http://www.jfca-net.or.jp/ の市場規模,生産高, 輸出額,原料生産額 図1.2 ファインセラミックスの応用分野別比率 表1.4-1 ファインセラミックスの分類 【 ← 表1.6 参照】 (社)日本ファインセラミックス協会・産業動向調査 より ファインセラミックスの 代表的応用分野・機能 代表的な応用例 絶縁性 集積回路用パッケーシ゚、半導体用各種基板 (電子デバイス用基板)、絶縁用製品 他 半導体 各種センサ材料、化合物半導体関連製品 ① 電・磁気 ・光学分野 導電性 磁性 誘電性 ・圧電性 光学 電極、電池用部材、発熱体、サーミスタ、 バリスタ、超電導部品、その他 フェライト磁石、フェライト磁気ヘッド、メモリ部材、 薄膜磁気ヘッド、その他 コンデンサ素子、圧電体、水晶振動子 (各種超音波振動子など)、その他 光ファイバー、レーザー発振用素子、 特殊ガラス、光変換素子(LEDなど)、他 表1.4-2 ファインセラミックスの分類【 ← 表1.6 参照】 (社)日本ファインセラミックス協会・産業動向調査 より ファインセラミックス 代表的な応用例 の代表的応用分野・機能 工具・高硬度 WC工具、サーメット1)工具、セラミック工具、 1) 金属の炭化物,窒化物等を ダイヤモンド工具、CBN工具、コーティング工具 金属と複合化した超硬質材料 (金属基材・WC基材・その他の基材)、他 ② 機械的 粉体処理装置、ポンプ, 液体処理装置、 耐摩耗性 分野 製紙装置紡錘装置、その他耐摩耗部材 その他 ③ 熱的 ・半導体 ・原子力 関連分野 精密機器部品、精密治具、食品加工装置 部品、炭素繊維複合部材、セラミック各種 複合部材、切削用セラミック部材、他 高温高強度 高温耐食性 半導体関連 原子力関連 その他 スパークプラグ、エンジン部材、その他 熱処理用治具、その他 半導体製造装置用部材、その他 各種原子力関連材料、その他 各種耐熱・断熱部材、その他 表1.4-3 ファインセラミックスの分類【 ← 表1.6 参照】 (社)日本ファインセラミックス協会・産業動向調査 より ファインセラミックスの 代表的応用分野・機能 化学 ④ 化学・生体生物 ・生活文化分野 生物・生体 生活文化 ⑤ 薄膜原料、 複合材料分野 代表的な応用例 濃度センサー(酸素濃度測定用 センサ-)、セラミックフィルタター、 各種耐食容器・治具等、その他 生体材料(人工骨、人工関節、 人工歯根)、化粧品・医薬部品 他 家電・住宅用材料、生活雑貨、 繊維・衣料、スポーツ・レジャー用品、 抗菌性セラミックス部材、表面処理材、 装身・装飾、その他 薄膜原材料、 セラミックス薄膜用ターゲット原料、 繊維・微粒子 複合材料添加用セラミックス繊維 ・微粒子、表面処理用溶射材、他 表面改質 表1.5 ファインセラミックスの生産総額推移(億円) 表1.3 金属とセラミックスの物性比較例 • 表1.3 金属とセラミックスの物性比較例 (2年前) ニューセラミックスの市場規模(生産総額) :~1兆7,300億円(平成21年度,2009年度) (社)日本ファインセラミックス協会・産業動向調査 より (2~4年前) 図1.3 ニューセラミックスの応用分野別・生産高の推移 (社)日本ファインセラミックス協会・産業動向調査 (2~4年前) 図1.4 ニューセラミックスの輸出総額 より (社)日本ファインセラミックス協会・産業動向調査 より 図1.5 ニューセラミックス原料の生産額 (億円) 表1.6 ニュ-セラミックスの機能・材料・応用製品 機能大分類 熱的機能 機械的性質 生物・化学的 機能 電気・電子的 機能 光学的機能 原子力関連 機能 機 能 酸化物セラミックス 非酸化物セラミックス 応用製品例 Al2O3 SiC, Si3N4 耐熱性 耐熱構造材 ZrO2, SiO2 断熱性 C 各種断熱材 伝熱性 BeO SiC(+ BeO) 基板 Al2O3 硬質・耐磨性 SiC メカニカル・シール・リング Al2O3 切削性 TiC, TiN 切削工具 B4C, ダイヤモンド 研磨性 ― 砥石,研磨材 Al2O3,アパタイト 生体適合性 ― 人工骨 坦体性 コーディライト ― 触媒担体 Al2O3 BN, TiB2, Si3N4 耐食性 耐食部品 Al2O3 絶縁性 SiC(+ BeO) IC基板,パッケージ ZrO2 SiC, MoSi2 導電性 抵抗発熱体 ZrO2, BaTiO3 誘電性 ― コンデンサ イオン伝導性 ZrO2, β -Al2O3 ― 酸素センサ,電池 SnO2, ZnO-Bi2O3 半導性 SIC ガス・センサ,バリスタ 圧電性 PZT, ZnO ― 着火素子,発振子 (Zn, Mn)Fe2O4 磁性 ― 磁心,記憶素子 Y2O3 蛍光性 ― 蛍光体 Al2O3 透光性 ― Naランプ 偏光性 PLZT ― 偏光素子 SiO2 導光性 ― 光ファイバ UO2 原子炉材 UC 核燃料 減速材 BeO C 減速材 B 4C 制御材 ― 制御材 図1.6 ニューセラミックス製品の一例 出典:(社)日本ファインセラミックス協会 http://www.jfca-net.or.jp/ 図1.7 ニュ-セラミックスの応用製品例 セラミックスの種類と用途 (-代表的なセラミックス材料-) セラミックス材料の大分類:(1)酸化物系セラミックス (2)非酸化物系セラミックス 1. 酸化物系セラミックス 『代表的な材料(金属酸化物を原料としたもの)』 :Al2O3(アルミナ),ZrO2(ジルコニア),MgO(マグネシア), SiO2(シリカ),TiO2(チタニア),Fe3O4(マグネタイト), BaTiO3(チタン酸バリウム),Pb(Zr,Ti)O3(ジルコン酸鉛), UO2(ウラニア),PuO2(プルトニウム)・・・ 核燃料 注)Pb(Zr,Ti)O3(ジルコン酸鉛)セラミックス :圧電体セラミックス材料 の代表 『圧電性(piezoelectric effect)』 とは ①ある種の材料に圧力(応力)を加える電圧を発生する現象 ②ある種の材料に電気を流す(電圧を印加)と振動(変位)する現象 【代表材料】:水晶(クオーツ),PZTセラミックス(・・・誘電体の一種) 【応用例】 ① ガスコンロ,ファンヒターの点火スイッチ ② 水晶振動子(クオーツ時計), 魚群探知機, 超音波振動子, スピーカーなど各種振動用センサ素子 アルミナAl2O3 ①Alの酸化物を精製・調整し焼結したもの ②電気絶縁性,耐熱性,耐食性に優れる ③電子材料の基板として多用される(IC基板、ICパッケージ) ④耐摩耗性を利用した軸受け,シャフト ⑤化学的安定性,生体組織適合性を利用した人工骨, 人工歯,人工関節などの 生体材料 ⑥軽量性とダイヤモンドに 次ぐ高硬度 ⑦成形・加工の容易さ (マシナブル・セラミックス) 図 アルミナ製品(一例) 図 セラミックス多層基板(左:DRAM用,右:フラッシュメモリ用) 図 電子デバイス用各種セラミックス製パッケージ ジルコニア ZrO2 Mg,Ca,希土類金属等 活性金属用溶解ルツボ ①耐熱性と耐食性に優れる(→溶融金属,ガスなどに反応しない) ②純物質状態では高温での結晶変態に伴う破壊を誘発するため、 安定化剤(酸化カルシウム)を添加して焼結し、『安定化ジルコニア』 として高温発熱体等に利用 (・・・酸素イオン伝導体⇒固体電解質:「燃料電池」) ③キュービックジルコニアCZは光の屈折率が2.17と天然ダイヤモンド の2.47に近いためダイヤモンドの代用品として用いられている 図 ジルコニア耐熱材料 図 Cubic ZrO2 ZrO2 製セラミックス包丁(ナイフ,ハサミ) 他の代表的な酸化物系セラミックス 耐高温、高強度特性 (a) マグネシア:MgO ジェット機(戦闘機) ① 透過性セラミックスの代表的材料 用窓ガラス (→ 高圧ナトリウム灯用発光管に利用) ② Pt,Niや希土類金属用の溶解用ルツボとして多用 (b) ベリリア:BeO :熱伝導率に優れかつ絶縁性が良好であるため IC回路の放熱基板に利用(ただし金属同様、毒性がある) (c) チタニア:TiO2 (⇒ 修正液、修正テープ、白色塗料 等に使用) :硬度,引張り強さが大きい ⇒ 『光触媒』 として発展 (d)フェライト:M2+O・Fe2O3 :磁性体セラミックス材料の代表 『光触媒』は、TiO2微粒子や薄膜 表面に太陽や蛍光灯などの光が当 たると、表面で強力な酸化力が生ま れ、接触してくる有機化合物や細菌 などの有害物質を除去する ことができる「環境浄化材料」 「光触媒の5つの機能」 1.大気浄化:工場や自動車から の排ガス中の窒素酸化物(NOx) や硫黄酸化物(SOx)などを除去 2.脱臭効果:アンモニア、硫化水素 等の悪臭を除去(・・・空気清浄機) 図 光触媒の5つの機能 3.浄水効果:浄水,排水処理 (地球環境保護材料) (有機塩素化合物を分解除去) 4.除菌・抗菌効果:細菌を分解 5.防汚効果:表面に付着した汚れ (=油分など)を分解除去 (d) チタン酸バリウム BaTiO3 :チタニア(TiO2)を炭酸バリウムと反応させて焼結したもの で、誘電率*)が大きく、コンデンサ材料の代表的材料として 多用 電磁気学の基礎 *) 誘電体・・・電圧を付加した時には定常電流は流れないが、 電荷を蓄積することのできる材料[:コンデンサ] 誘電率:ε(比例定数)・・・D=εE 電束密度:D(・・・誘電体により形成されたコンデンサの単位 面積当りに蓄積される電荷量) 電界:E[V/m] 図 セラミックコンデンサ (・・・電子製品、IT産業に不可欠) 2. 非酸化物系セラミックス 『代表的な材料』 (人工的に合成した新しい無機物を原料をとしたもの) :Si3N4(窒化ケイ素),SiC(炭化ケイ素),BN(窒化ホウ素), ZrC(炭化ジルコニウム),C(ダイヤモンド),炭素繊維 ・・・フラーレンC60,カーボンナノチューブ 『代表的な特性』 :共有結合が支配的であるため、高温強度・脆性に優れる 物質中最も強い化学結合 セラミックス最大の弱点 (a) 窒化ケイ素Si3N4 高温での変形が金属とは異なり小さい 金属と同程度の高い値 ① 熱膨張率が小さく,かつ熱伝導率が大きいため、熱衝撃に強い ② 高温強度は1473Kで約700MPa以上を示すため、 各種耐熱材料以外に高温用機械部品材としの応用が期待 (:切削工具,ガスタ-ビンの回転軸など ・・・cf.Niタ-ビン用基耐熱合金:1366K-300MPa (ジェット機のタービンブレード・・・金属の2倍以上) の代表材料) セラミックス高温高強度材料の代表的物質 「セラミックスエンジン材料」用構造材料 海底地震観測の現場を支えるファインセラミック材料 高い圧縮強度、耐食性、比重の小さい窒化ケイ素Si3N4は、深海用 耐圧容器,特に、世界一深いマリアナ海溝の11,000mの深海に、地震 計(自己浮上型海底地震計:海底で地震を観測・記録する装置,観測 終了後、本体のみを海面に浮かせ、船で回収し、地震データを解析) の保護用耐圧容器として使用されている (b) 炭化ケイ素SiC ① 伝熱性に優れるため、高性能IC基板に利用 ② 硬度が大きい ③ Si3N4同様,耐熱材料として期待 ④ 抵抗発熱体(通電により材料自体が高抵抗に起因して 発熱し高温になるもの)→ セラミックスファンヒーター ⑤ 次世代パワー半導体 :電力(電圧)変換機器(インバーター)用半導体素子 ⇒ 交流電圧を直流電圧に高効率に変換(ex.60Hz → 50Hz) ・・・SiをGaNやSiCといった化合物半導体で置き換える ことで,Si製パワー半導体素子(以下,パワー素子)で 実現できない大幅な効率向上や小型化が見込めるため 例えば,送電システムや電車,ハイブリッド車,工場内の 生産設備,太陽光発電システムで利用するパワーコン ディショナー,エアコンを始めとする家電,サーバー機や パソコンなどの分野で使用する次世代用高性能半導体 素子材料としてGaNやSiCが今後の発展が期待される 図 次世代パワー半導体の用途・応用分野 (電力変換効率の向上、機器の小型・軽量化が期待) (c) 窒化ホウ素 BN ① 炭素(常温・常圧:黒鉛,高温・高圧:ダイヤモンド)同様、 窒化ホウ素も、常圧相の六方晶と高圧相の立方相の 2つの構造を有する(⇒Ⅲ-Ⅴ族化合物) ② c-BN(Cubic Boron Nitride),②h-BN(Hexagonal)共に 実用材料として多用される 『立方晶BN(c-BN)の特徴』 1.ダイヤモンドに次ぐ高硬度 高温下において切削工具材料として期待 ⇒ セラミックス機械構造用材料 ※ 結晶構造がダイヤモンドに酷似し、原子間距離も ほぼ同じであるため、高硬度特性を有する 2.熱伝導もダイヤモンド同様に高い ※ c-BNの製造法 ・・・ h-BNを2273K-5000気圧の高温・高圧下で焼結 『六方晶BN(h-BN)の特徴』 1.熱的安定性に優れる (・・・2200℃付近まで使用可能) 2.熱伝導性に優れる (・・・鋼に近い高い熱伝導率) 3.熱膨張率が小さい (・・・熱衝撃性に優れる) 4.潤滑性・機械加工性が良好 (・・・精密加工が可能) 5.化学的安定性・耐食性良好 6.電気絶縁性に優れる 図 h-BNの結晶構造(正六角形の頂点 の青:B,茶色:Nで、(a)(b)(a)(b)・・・ の二層積層構造で結晶を形成 図 c-BNの結晶構造(正四面体構造) ・・・四つの頂点にBまたはN原子, 重心位置にN原子またはB原子 ニュ-セラミックスの特性支配因子 (- 特性と構造の関係 -) 『セラミックスの特性』[:図2.1参照] 「構造特性」・・・内部の気孔,粒子サイズ等のマクロ因子に依存 [:構造敏感] 「機能特性」・・・原子配列,原子価,イオン半径,電子状態等の ミクロ因子に依存 微細構造 機械的性質 超微細構造 原子 元素 電気的性質 熱的性質 化学的性質 図2.1 セラミックスの 特性支配因子 ファインセラミックスの 種々の高機能特性と 応用分野および密接 に関連する学問領域 ファインセラミックス の出発原料と製造 技術の革新的かつ 飛躍的進展に起因 http://www.jfca-net.or.jp/ より引用