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17 B.ムチン(沈着)症 mucinosis

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17 B.ムチン(沈着)症 mucinosis
B.ムチン(沈着)症 299
2.反応性 AA アミロイドーシス reactive(AA)amyloidosis
血 清 中 ア ミ ロ イ ド A 蛋 白(serum amyroid A protein; SAA)
が前駆蛋白となるアミロイドーシスで,慢性の炎症性疾患や感
染症(関節リウマチ,SLE,結核など)に続発して発症する.
皮疹の形成はきわめてまれである.
3.家族性全身性アミロイドーシス familial systemic amyloidosis
異型トランスサイレチン(ATTR)により生じる家族性アミ
図 17.6 透析アミロイドーシス(dialysis-related
amyloidosis)
ロイドポリニューロパチーに代表される.常染色体優性遺伝で
あり,アミロイドが神経,胃,心臓などの諸臓器に沈着し機能
障害をきたす.
4.透析アミロイドーシス dialysis-related amyloidosis
同義語:b2 -ミクログロブリンアミロイドーシス
長期血液透析患者でみられる.血液透析で除去されにくい
b2 -ミクログロブリンがアミロイドとして沈着する.手根管滑
膜,関節,心臓,血管,消化管,腎などが障害される.皮膚症
状としては,紅斑,丘疹,紫斑,皮下結節,巨大舌などを呈す
る(図 17.6).
B.ムチン(沈着)症 mucinosis
定義・病因
ムチン(粘液に含まれる糖蛋白)が皮膚に沈着する疾患の総
称である.ムチンは通常,ムコ多糖類とコア蛋白の複合体から
構成され,線維芽細胞で産生される.アルシアンブルー染色,
コロイド鉄染色,トルイジンブルー染色で青色を示す.真皮に
存在するムコ多糖には,ヒアルロン酸,デルマタン硫酸,コン
ドロイチン硫酸,ケラタン硫酸などがある.
ムチンが膠原線維間に異常に沈着した結果,膠原線維の膨化
や断裂,離開が生じ,皮膚は浮腫状となる.ムチン沈着は,膠
原病の皮膚病変でも病理組織学的にみられやすいほか,甲状腺
疾患や糖尿病,腫瘍などを誘因として特徴的な皮疹を生じる.
本項ではそのような皮膚ムチン沈着症について述べる.
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300 17 章 代謝異常症
表 17.2 ムコ多糖症(mucopolysaccharidosis)の分類と特徴
また,先天的にムコ多糖分解酵素に異常があり,全身臓器に
ムコ多糖が沈着するものをムコ多糖症(mucopolysaccharidosis)
という(表 17.2)
.
1.浮腫性硬化症 scleredema
同義語:成年性浮腫性硬化症(scleredema adultorum)
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急性感染症を契機として発症することが多い.顔面,頸部,
肩,上背部の皮膚に硬化が生じ,上肢や体幹にまで及ぶことも
ある(図 17.7).圧迫にて圧痕を残さない.初期には自覚症状
はないが,しだいに軽い運動障害を訴えるようになる.四肢末
端が侵されることはない.病変部では真皮が肥厚し,膠原線維
間にムチンが沈着する(図 17.8).本症は糖尿病性浮腫性硬化
症(p.312 参照)との異同が議論となっており,糖尿病の検索
図 17.7 浮腫性硬化症(scleredema)
が必要である.数か月から数年後に自然治癒する.
後頸部から上背部にかけての皮膚に著明な硬化を認
める.
2.汎発性粘液水腫 generalized myxedema
甲状腺機能低下により生じる.全身の皮膚にムチンが沈着し,
とくに顔面や四肢に浮腫状変化が目立つ.皮膚は冷たく,乾燥
して蒼白を呈する.つまむと軟らかく圧痕を残さない(non-pitting edema).顔面に特徴があり,全体に腫れぼったく,鼻の幅
が広がり,巨大舌と口唇の肥厚がみられる.頭髪および眉毛外
側 1/3 の脱毛や脆弱性を認める.
図 17.8 浮腫性硬化症の病理組織像
ムチンの沈着がみられる.
C.黄色腫 301
3.脛骨前粘液水腫 pretibial myxedema
両側の脛骨前面から足背にかけて好発し,淡紅褐色調の局面,
皮下硬結,結節を呈する.毛孔の開大や多毛を認める.甲状腺
機能亢進症やその治療後の機能低下状態で生じることが多い.
4.粘液水腫性苔癬 lichen myxedematosus
類義語:硬化性粘液水腫(scleromyxedema)
,丘疹性ムチン沈
着症(papular mucinosis)
図 17.9 網状紅斑性ムチン沈着症(reticular erythematous mucinosis)
顔面,手指,前腕伸側などの四肢を中心に,直径 1 〜 3 mm
のやや黄色調の丘疹が多数集簇,融合し,局面を形成してオレ
ンジの皮様の外観を示す.丘疹が単発ないし散在することもあ
る.甲状腺機能異常は通常みられない.多発性骨髄腫ないし形
質細胞の形成異常(plasma cell dyscrasia)
,糖尿病,膠原病,肝
障害などの原疾患が存在することが多い.
5.網状紅斑性ムチン沈着症 reticular erythematous mucinosis;REM
中年女性の前胸部や背部に,自覚症状に乏しい網状紅斑を生
じる(図 17.9)
,真皮へのムチン沈着に加え,血管周囲への単
核球浸潤が強いことが特徴的である.
6.毛包性ムチン沈着症 follicular mucinosis
常色〜紅色の丘疹が主に顔面・頭部に集簇融合し,隆起した
局面となる(図 17.10)
.脱毛を伴うことが多い.外毛根鞘と
脂腺に浮腫とムチン沈着を認める.また,毛包部の液状変性と
リンパ球浸潤がみられる.数か月で自然消退するものと,慢性
に経過するものとがあり,後者のなかには悪性リンパ腫を合併
するものがある.
C.黄色腫 xanthoma
定義
ほう まつ
脂質を貪食した組織球である泡沫細胞(foam cell)が皮膚や
粘膜に集簇したもので,肉眼的に黄色調を呈する(図 17.11 〜
14).一般に,黄色腫は全身性のリポ蛋白代謝異常(脂質代謝
異常)に伴うが,脂質代謝異常を認めないこともある(正脂血
図 17.10 毛包性ムチン沈着症(follicular mucinosis)
比較的境界明瞭な直径 3 ∼ 4 cm の紅色浸潤を伴う局
面.脱毛を伴っている.
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