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13.利根川河口堰の緩傾斜魚道の整備と効果について[PDF:759KB]

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13.利根川河口堰の緩傾斜魚道の整備と効果について[PDF:759KB]
利根川河口堰の緩傾斜魚道の整備と効果について
利根川下流河川事務所
調査課
髙口 強
1.利根川河口堰緩傾斜魚道の必要性
河口から18.5kmに位置する利根川河口堰は、塩害の軽減と新規利水の供給を目的に昭和
46年に建設された河川管理施設である。利根川河口堰により、塩害により苦しんでいた当
地の農業が塩害に苦しむ事が殆ど無くなった。
その一方で、水産業における影響が懸念され、階段式魚道が設けられた。
当時の魚道は、アユなどの比較的遊泳力が強い魚に対して一定の効果が得られていたが、
小型遊泳魚や底生魚など遊泳力の弱い種は遡上できない課題があり、それに加え老朽化も
進んでいたことから、最新の研究を取り入れて魚道の改築及び新設が必要となった。この
ような背景から、河川環境の本来あるべき姿を少しでも取り戻すため、堰の機能に影響を
与えない範囲で既設階段魚道の隣に緩傾斜魚道整備を進め、多様な魚類相の回復を図るも
のとした。
常陸利根川
魚道設置箇所
利根川河口堰
常陸川水門
18.0k
利根川
写真1
利根川河口堰と魚道設置位置
2.利根川河口堰緩傾斜魚道の整備
図1に利根川河口堰緩傾斜
魚道の概要を示す。当該魚道
は、干満の影響による水位変
動、本体ゲートの操作等に伴
階段式魚道
う上流側の水位変化と複雑に
流況が変化する。
多自然(緩勾配)魚道におけ
る水理解析は等流及び不等流
計算による手法が一般的であ
緩勾配魚道
る。今回は、自由水面の存在
と水路底及び側壁に沿う摩擦
から50~200%の範囲で変化す
る等流流速分布を考慮し、魚道
汽水~淡水へ連続して変化
多様な水深・流速が形
成でき、様々な魚の遡
上力に応じた遡上経路
が選択できる。
水生植物等は、捕
食鳥類対策とな
る。
(階段式の隔壁)
(階段式の底面)
内流速の一次評価をした。さら
に、表層を移動する遊泳魚、底
層を移動する底生魚の遡上可
淡 水
汽 水
能領域を精度良く予測、評価す
ることが第一であると考え、新
たな技術として、非定常三次元
流モデルを魚道用に構築し、水
石や木杭等の配置で、
変化のある流れが形成
される。底生魚やカニ
の休憩場所、隠れ場所
になる。
図1
深みをつくることで流
れに変化ができる。魚
道に水が流れなくなっ
た時は、避難場所とな
る。
階段式魚道よ
り勾配を緩く
し、流速を抑
える。
利根川河口堰緩傾斜魚道の概要
理解析を通じて、魚類の移動の
し易さからみた最適流況を再現させ、魚道の平面、縦・横断計画及び構造検討を行った。
緩勾配魚道
図2
階段式魚道
標準横断図
写真2
完成写真
3.整備後の効果(遡上モニタリング調査結果)
3.1
捕獲調査
魚道内にトラップを設置し、遡上する魚等を捕獲する。
魚類が 6 目 9 科 23 種(モツゴ、ボラ、ウグイ属、アユ、ボウズハゼ、ウキゴリ、
アシシロハゼ、ヌマチチブ等
1/4 が回遊魚)を確認。魚類以外に、テナガエビ、ス
ジエビ、アメリカザリガニ、モクズガニの 4 種を確認。体長は 10cm 以下の小さな魚
類が多く確認された。
魚道にヒレ等を切った標識魚を放流して遡上状況を確認したところ、標識魚の遡
上が確認された。魚道が対象としている底生魚やエビ、カニの生息に適した設計が
なされているため、これらが遡上経路だけでなく生息場として使われていることが
伺える。
3.2
目視調査
目視で、遡上する魚種や個体数をカウントする。
6 目 8 科 15 種の魚類を確認。主な確認種は、コイ科、ボラ、ウキゴリ属、アシシロハ
ゼ、ヨシノボリ属、ヌマチチブ等であった。魚類以外は、テナガエビ、スジエビ、モ
クズガニの 3 種であった。
遡上数は 6,620~17,502 個体、降下数は 4,062~14,482 個体であった。最も多く確認
された種は、ボラであり、ついでウキゴリ属、アシシロハゼ、ヌマチチブなど、ハゼ
科魚類の遡上数が多い傾向にあった。
魚類以外の遡上数をみると、遡上数は 25~41 個体、降下数は 20~21 個体であった。
3.3
ビデオ撮影
ビデオ撮影で、遡上する魚種や個体数をカウントする。
確認種は捕獲調査や目視調査と同じような種が確認された。昼間は魚類、夜はエビ、
カニなど時間帯により遡上傾向に差が見られた。
捕獲調査
目視調査
ビデオ撮影
ビデオ撮影画面
写真3
各種調査状況
4.今後の課題
4.1
鳥類による食害対策
当初から予測されたが、本魚道でも鳥類による食害がある。そこで、魚道上部に釣
り糸を張り巡らせている。その効果の評価方法について検討中である。
写真4
4.2
緩傾斜魚道内での鳥類食害
密漁対策
魚道完成後、現在まで、特に漁協及び水産行政担当機関から、特に密漁に関する連
絡は無いが、今後、緩傾斜魚道により稚魚やエビ、カニ類の遡上降下の改善に伴う水
産資源の回復が見込まれる事から、関係機関との会議で検討したい。
5.まとめ
利根川河口堰緩傾斜魚道により、これまで、利根川上流への遡上が難しかった稚魚、
ハゼ類等の底生魚類、エビやカニ類等の遡上が確認できた。今後、学識者や水産関係機
関と連携を図り、魚道の効果を確認する。
また、鳥類の食害対策、密猟対策の検討、さらに、平成23年3月11日の地震の影
響により、魚道内の水路形状が変形しており、モニタリング調査において、稚魚やハゼ
類等の底生魚、エビ・カニ類の遡上への影響について調査する予定である。
震災前
震災後
写真5
震災後の魚道状況把握
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