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タイトル:あれ? これってデートだよね? 著者 :キロナ うーん、ちょっと違う

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タイトル:あれ? これってデートだよね? 著者 :キロナ うーん、ちょっと違う
タイトル:あれ? これってデートだよね?
著者
:キロナ
うーん、ちょっと違うかなー。こんな感じ?
だけど、この服も変な感じだし、こっちのほうがいいかなー。
迷う……って俺迷い過ぎ!
ああ、どうしようかなー
「心の声、聞こえ過ぎ……」
どうやら、そのまま声に出していたらしく、人間で明るい髪と明るい鳶色の目の男性のクラ
メンの一人が苦笑いを浮かべている。
「デートなんて適当に済ませてくればいいんじゃね?」
今度は人間の肩の辺りまで流された茶色の髪に青い目の男性のクラメンが話している。だが
こいつは女遊びがパネェので放っておくことにする。
「何を言う。麗しの……俺にとっては姫のような人なんだぞ。適当なんて言語道断!」
反論したところで、何がどうなるかもしれないが……とりあえず言ってみる。
「姫ね~。どちらかと言うと女王様だけど……」
紅茶を注ぎながら人間の女性のクラメンが困ったような声を出す。
「女王様かー。一理あるが、
『姫』ということで」
とか何とか話していると、アジトの裏で素材を作っていた双子のドワーフがやってくる。
「デートとは、よくそこまでたどり着いたのう~」
「若いうちは弾けるといい」
若いうちねー……そちらさまは五百歳超えているというのに……
「ヘイヘイ、弾けまくっちゃいますよー」
こっちの服でいいか! とばかりに部屋に行って速攻で着替えて再び同じリビングにやって
きた。そこにはさっき見ていた姿見がある。
三メートル位ある大きいものだ。盟主がオークメイジなので、それくらい無いと姿見として
の意味がないとか何とか……
おっといけない、時間に間に合わなくなる。
俺の心よ、彼女のもとへ~。
「じゃ! 行ってきますー!」
扉を開けるとダッシュで外に飛び出した。
「行ってらっしゃいー」
「せいぜい、頑張れよー」
棒読みをするクラメンの声に、反応する余裕はなかった。
ギランに来た。商業都市らしく、商人達が客寄せに必死だ。そして、道端には露店がひしめ
き合っていた。そんなのに気を回す余裕なんて俺にはない。
が、とある場所で足を止めた。すると、目線の先にいた商人の恰幅のいい女性がニッコリと
ほほ笑む。
「お兄さん。そんな恰好して、彼女のところに行くのかい?」
良くおわかりで……
「ちょっと見ていきなよ。いいもの揃っているわよ」
ほほう、これはなかなか……
「これを持っていけば彼女も喜ぶわよ」
うん、買っちゃう、買っちゃう。
「毎度ありー!」
よし! いざ、彼女の元に~! 行っちゃうよ! 行っちゃうよ!
さてと、ギランの中央広場の中央の像の所で待ち合わせになっているんだっけ……どこかな
~~
「ん~っと、いた!」
どうやら待たせてしまったらしい。彼女は良く見えない位置にいたが、殺気立っているのが
わかる。
やばいな~。お店で長く居てしまったらしい……仕方ない、ここは俺の力量で!
「やあ、ゴメン~。待った~~?」
遠くから駆け寄る俺。振り返った彼女の顔が明らかに驚いているのがわかる。
「なんて恰好してるのよ!」
え? 格好? 普通だけど?
「この服いいでしょー。オーダーメイドの礼服だぜ!」
黒を基調とした渋い物だ。作るの大変だったんだぜー。
「礼服って、そんな恰好してこないでよ! それに何その花は、数多すぎよ!」
彼女は私服というか、魔法力アップのデーモンチューニックの姿……あれ? デートだった
よね? 間違ってないよね?
花は多いほうが喜ぶと言われて赤いバラ五十本買っちゃったんだ。これで許して~。
「いいじゃないかー!」
「よくない!」
手にしていた B グレードのエビルスピリットスタッフがスピリットショットの魔法陣の光を
吸収する。え? それ魔法力増加アイテムなんですけど……?
そして、駆け寄る数メートルの時に何やら口を開き杖を振る。
「ハリケーン!」
彼女からつむぎ出されたのは呪文だった。風属性の……攻撃魔法!!!
それが俺に向かって高速でぶち当たった。数メートル飛ばされて花もグシャグシャに……あ
~俺の愛の形よ~
ダメージは魔力増加のおかげで地面とお友達になった。これが愛の鞭ならぬクリティカルヒ
ットか……
そこに、彼女がゆっくりとやってきた。走ってくれば胸が大きく揺れるのに~と思ったらヒ
ールが俺の頬にグリグリと……ああ、そんなに激しくしないでー!
「早く着替えてきなさい!」
やっとヒールが離れた。もっとして欲しかった……が、俺はマゾではない!
ゆっくり起き上がると、埃を払う。
「俺の一張羅なのに~」
「戦闘服でいいじゃない! どうせブルーウルヴズレザーアーマーなんだから」
「えー! デートですよー。で・え・と」
すると、彼女は顔をしかめている。
「その格好でデートしたくないわ。それに私が最初に言ったことは、デートではなくて私の新
しい武器を探すことでしょ。勝手に解釈しないで頂戴」
「えー!」
彼女は黒く長い髪をかき上げた。青褐色の肌が日差しにまぶしく俺の瞳に映る。
そう! 俺の彼女はダークエルフだ。胸もたわわ~んで、お尻も引き締まって俺には最高の
彼女!
「
『えー!』じゃないわよ。時間が余ったらギランを回ろうというだけでしょ。勝手に決めない
で頂戴」
「じゃあ、早く武器買ってデートだ!」
善は急げと言うことで、武器屋に直行~。まあ、彼女は不機嫌だったが……
その前に着替えて来いと言われて、戦闘服に……俺の一張羅が~~~
「着替えてきましたよ~」
「まったく……」
運良く傷のないバラを手にして彼女の髪につけてやる。無論、トゲは省いた状態だ。
うん、似合う! どんな花の前では君の美貌の前では無いにも等しい! でもあった方がも
っと綺麗だ!
ん? 柄にもなく赤くなってる? そういうとこ可愛い~
「綺麗だよ。良く似合ってる」
うんうん、俺の前では素直でいて。
「……人の視線感じるんだけど」
「いいじゃないか、そのうち慣れる」
「やっぱり、一人の方がいいわ」
えー。俺じゃ不服?
「心の声聞こえてるわよ」
おっと失礼。
「不服じゃないけど、デートじゃないからね」
冷たい視線が俺に……しょうがないなーまだデートじゃないとしておこう。
「わかりました。お姫様には敵いません」
「わかればよろしい」
と言うことで、店を回り出した俺達。バラの花をまだつけてくれているということは、ちょ
っと意識してくれていると思っていいんだろうか。ちょっと嬉しい。
武器の方はしばらくかかりそうだ。露店も見渡したが彼女に見合う武器が見つからない。は
て困ったぞ。
ここは俺の出番かな~?
「アピールするしかない!」
「え?」
俺はアインハザード神殿の階段を駆け上がると、大きく息を吸った。
「A グレードのメイジ用の両手杖を売ってくれる方いますかーーーーーー!」
「ちょっと! 叫ばないでくれる!」
慌てる彼女だが、俺は動じないぞ。
「こうでもしないと売ってくれる人いないじゃないかー。どなたか! 売ってくれる人います
かー!」
何回か叫んだ時、どこからか声がかかった。売ってくれる人が居るみたいだ。
「行こう!」
「わかったわよ」
俺は彼女の腕をとって走り出す。彼女は慌てた感じだったが、段々と歩幅を合わせた。
俺達は声の主と会って、交渉を始めた。最初は高い値段だったが、しぶとく喰らい付くと相
手は観念したのか言い値で売ってくれることになる。
良かった。まずは一安心。という事で、ハグを……
それを察知したのか、彼女は手に入れたばかりの世界樹の杖を装備すると、短く呪文を唱え
た。
「オーラバーン……!」
無属性の接近魔法が俺に振りかかる。そんな~! 俺が交渉したのに~~!!
見事に地面に倒れる俺に向かって、靴のヒールを頬に当ててグリグリしてくる~……
ああ~ん! 俺愛されてるのね~~!
「少しでも気を許すとすぐこれなんだから!」
もっと~~! って俺マゾじゃない……かな?
「これが……俺への愛?」
思わず声に出したら、彼女は呆れ顔で靴を離す。
「嫌がってるのがわからないみたいね。少しは察しなさいよ」
「俺の愛は懐深いんだよ~。包容力あるって感じ?」
立ち上がって交渉していた人物を見る。彼は固まって口が開いたままになっていた。まあ、
当り前か。
「照れ屋な彼女なんで、武器見つけられたからこれからデートです」
「だから、デートじゃないって言っているでしょ」
わかりましたよ~。武器は手に入ったので、ギラン観光とまいりましょうか……
売主と別れた俺達は、まずは空腹を満たすために飲食店に入って食事をすることに……
時間的には昼ちょっと前なので、比較的空いていた。
俺はステーキのセットでビール。彼女は魚のムニエルのセットとワイン。
先に来た酒を飲み干した。いやーうまい!
って、彼女の方はボトル空けちゃったの? まあ仕方ないか酒豪だもんなー。ピッチ早すぎ
ですよ。
お、肉汁滴るステーキが来ましたよー。温かいうちに食べますかね。
彼女の方にもムニエルが……それ以前に、ボトル三本目ですか……中々やりますな。
顔色変えずにというかうちのクラン酒豪ぞろいだからなー。俺は食べる方専門で、酒は楽し
む程度なんですけど……ダークエルフだけど、顔が赤くならないというのはあっ晴れです。
食事と酒を楽しみながら、俺達は楽しい時間を過ごした。
とは言っても最終的には彼女は六本のワインのボトルを空けて、平然な顔をしているんです
けどね。
食事も終わって、俺達は再びギランの中央広場に……
流石にギラン、人が多いですな。
おまけに、カップルも多い気が?
俺達カップルに見えるかな~。ムフフ……
今度は声に出さなかったぞー。俺ってすぐ言葉に出すみたいだから気をつけないと……
と、彼女と眼が合う。青に近い緑の瞳が綺麗だ。
俺の顔が瞳に映っている。黒っぽい片方の目が隠れるくらいに下ろした髪に鳶色の明るい瞳
が……
う~ん、俺ってイケメンだなー。って思っていたら、彼女の唇が綺麗に見える。
自然とした動きで俺の右手が彼女の頬に触れて、顔を近付けた。
いわゆるチューってやつですかな。
もうちょっとで唇が触れるか触れないかで押される力が……
彼女が顔を手で押したのだ。
やばい! って思ったその刹那――
「シャドウフレアー!」
闇属性の攻撃が……オーバーヒットもあるからお気をつけあれ~~~~ぇぇぇ!
近距離効きますがな。そんな事より、俺って弓職のホークアイなのになんでこんな目にあう
んだろう~~
結構俊敏なんですが……
「まったく! 気を許すとすぐ何かしてくるんだから!」
「だってー、綺麗なんだもん~~」
「黙らっしゃい! 今度したら、許さないからね!」
「えー……」
「
『えー……』じゃない!」
俺はちょっと子犬のような感じでつぶらな瞳を向けてみた。ううう……段々悲しくなってき
たぞ。
案の定……彼女はちょっとたじろいだ感じになる。こんな目に弱いというのを小耳に挟んだ
のだ。
「俺の事、もう少しやさしく扱ってよ~」
「嫌」
一蹴ですか……
「ご褒美の一つや二つやそれ以上欲しいじゃないですか~」
「あんたは気を許したら、何してくるかわからないでしょ」
「そりゃまあ……好きですから……」
一目会ったときから……ってやつですかね。
それにしても、これだけの人が居ながら魔法使っても驚きもせず去っていく。と思ったら、
試し撃ちしてる人が……グルーディオ城の町だと大騒ぎでしたけど……流石ギラン、怖ろしい
街だ。
「とにかく用事は済んだし、ギランの観光とやらも終わったわ。そろそろ時間だから帰るわね」
「とは言っても同じクランなんだからどこに帰るの?」
久々に、アジトでも帰るのかな?
「言ったらついてくるでしょ。話す義理なんて無いからね」
「まさか! 他の男の所とか! 俺は許さないぞ!」
「誰と居ようと勝手でしょ。私はあんたの事は好きじゃないの。わかったら、さっさとお家に
帰る事ね、ぼうや」
う……それは言わない約束で……そりゃ~そちらの方は俺よりはるかに年上ですが、ぼうや
じゃなくて成年男子なんですけど……
そう言った彼女は髪につけていたバラをとり、俺のズボンのポケットに入れた。
「じゃあね、武器の交渉ありがとう」
それから、近づいてきて頬に温かくて柔らかい感触が……
ほっぺにチューですか……結構嬉しかったりする。
これ位で幸せMAXなんですが、とりあえず何もせずに見送る事にする。
と思ったら、大間違いだーーーーーーーーーー!
「ほっぺじゃなくて口にも~~~!!」
「ばっかじゃないの!!!」
それから、数分後の俺は再び地面とお友達に……前のようにヒールで頬をグリグリされて去
って行った。
見物人から冷笑を浴びるが、俺の恋は終わる事ないぞー!
絶対あきらめないからなー!
そんなこんなで俺のデートは終わった。と言うより、アジトに戻ってきてみんなに笑われた
のは言うまでもない。
く……正直、結構へこむ。それを察知したのか、ディオンから帰ってきたエルフの少女はほ
ほ笑んでいた。
「大丈夫ですよ。優しい人ですから、想いは心に届いていますよ」
そう言われると、ちょっといいかな~。エルフとダークエルフの仲の悪さは知ってるが、珍
しくこの子と彼女は相性いいから、言っている事は本当かもしれない。
「そうだといいけど……」
「そうですよ。ガンバです」
ガンバか……うん、俺頑張る。
「さーて、次のミッション考えるかー!」
「その意気ですよ!」
そんな訳で、俺の一日は終わったのであった。
次こそ……次こそ、絶対デートしてやるーーーーーーーーーぅぅぅぅ!!!
するとみんながこう言った。
「
「心の声、聞こえ過ぎ!!!」
」
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