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e-briefing document - Herbert Smith Freehills
エネルギー・インフラ・鉱業ニュースレター (第 61 号) ケニアにおける地熱エネルギー ∨ はじめに ∨ 主な当事者 ∨ 資金調達の選択肢 ∨ 規制 ∨ 総括 ∨ 問い合わせ先 2013 年 8 月 | 東京オフィス 東京オフィスのニュースレター 東京オフィスでは、定期的に以下の各 分野に関するニュースレターも発行して おります。配信をご希望の場合は、下記 よりご希望の分野を明記の上、こちら までご連絡ください。 • 紛争回避 • 建設 • 知的財産・テクノロジー、メディア およびテレコミュニケーション いる日本企業に対して多くの機会が提示されました。なかでも、東アフリカ地域におけ • コーポレート・M&A る地熱資源の開発は、現在地熱発電プラント市場で世界的に 7 割のシェアを誇る • ラテン・アメリカ* • 競争法* • 雇用法* はじめに 第 5 回アフリカ開発会議(Tokyo International Conference on African Development:「TICAD」)では、アフリカのエネルギー市場により深く関わろうとして 日本企業にとって今後特に多大な成長が見込まれる分野であると見られています。 1 地熱エネルギーが国内電力生産量の 20 パーセント超を占めるケニア共和国は、 地熱エネルギーの分野においてアフリカをリードしています。地熱開発公社 * 不定期発行 (Geothermal Development Company:「GDC」)は、同国における地熱発電容量を 7,000-10,000 メガワットに上ると予測していますが、これは現在の地熱発電容量 (約 220 メガワット)の 40 倍を上回る規模となります。同国の発電能力の拡大を図る 関連リンク > Herbert Smith Freehills メガワットへと引き上げることを、目標として掲げています。 > Our global energy practice > Our Tokyo practice ケニアの地熱資源の多くは同国の大地溝帯に集中しており、GDC はここに地熱発電 > Our Africa group ケニア政府の長期戦略に合わせて、GDC は、2030 年までに地熱発電総量を 5,530 の候補地が 14 箇所あると見込んでいます。もっとも、これら候補地の多くは、主に 探査のための十分な技術が不足していることを理由に、まだ開発が進んでいません。 国際協力機構(「JICA」)がこのほど決定したような、GDC に対する 18 億円の資金提供などの取り組みは、これらの資源の開発に大いに 貢献すると考えられています。そこで、ケニアの地熱発電セクターへ投資をする際に検討すべき主な当事者、資金調達源および規制に ついて、以下にまとめました。 1 「政府、東アフリカで地熱発電の開発支援」日本経済新聞 2013 年 5 月 30 日朝刊より Page 1 主な当事者 エネルギー規制委員会 過去のバックナンバー 2013 年 6 月号 のサブセクターにおける経済と技術の両面の規制をその権限の対象としており、具体的な 「支払額の公表」("PUBLISH WHAT YOU PAY")-米国・EU に おける採取産業企業の開示義務に 対する最近の改正 機能および権能は 2006 年エネルギー法(Energy Act 2006、「エネルギー法」)に定めら 2013 年 4 月号 れています(後述参照)。 エネルギー石油省 エネルギー・天然資源セクターへの 外国投資をめぐる腐敗リスク:日本 の投資家向けのガイド エネルギー石油省は、ケニアにおける地熱資源の探査・開発を規制しています。同省は、 2013 年 2 月号 新たな政策の策定のほか、地熱資源地域の宣言や地熱プロジェクトの探査・開発に必要 ミャンマーが外国投資細則を導入 な様々な許可や利権の付与を担当しており、地熱資源に関連する同省の権能は、1982 2013 年 1 月号 年地熱資源法(Geothermal Resources Act 1982、「地熱資源法」)に定められています ミャンマーが第 2 次オンショア 石油・ガス入札ラウンドを発表 エネルギー規制委員会は、ケニアのエネルギー部門の規制当局となるべくして、2007 年 に設立されました。同委員会は、電力、再生可能エネルギーおよび石油業界の下流部門 (後述参照)。 地熱開発公社 2012 年 12 月号 エネルギー法の可決を機に、ケニア政府はエネルギー部門にかかる規制機能の分散化 コロンビアの官民連携に係る新法が 投資機会にもたらす影響 を図りましたが、これによって 100 パーセント政府所有の特別目的会社であり、同国の 2012 年 11 月号 すべての地熱プロジェクトを統括する GDC が設立されました。GDC は基本的に、民間 インドネシアの裁判所による判決に より、インドネシアの石油・ガス部門 の法的基盤に暗雲が立ち込めて いる 部門に対するケニア政府側の窓口となっており、地熱プロジェクトの探査・開発に要する 様々な許可や利権のためにエネルギー石油省、エネルギー規制委員会の各当局と連携 する役割を担っています。 GDC の主な役割は、探査、評価および試掘など、地熱プロジェクトの初期段階における 資源アセスメントに絡む先行投資費用を賄うことにあります。GDC は、その後で、これらの プロジェクトを電力発電のために独立系発電事業者(「IPP」)やケニア国家発電公社 (Kenya Energy Generating Company)に売却します。 ケニアにおける資源アセスメントは、候補地ごとに最大で 1 億米ドルかかると言われてい ます。この費用を賄うために、GDC は、国会の定める歳出、早期発電からの収益、IPP や ケニア国家発電公社に対する蒸気の売却益および国内外からの融資などによって資金 を調達しています。 ケニア国家発電公社 ケニア国家発電公社は、ケニア有数の発電会社として同国で供給される電力のおよそ 8 割の発電を担っており、ケニアの大多数の発電プラントの開発、経営および操業に関与 2012 年 11 月号(特報) Special Myanmar update – Myanmar introduces new foreign investment law (英文のみ) 2012 年 10 月号 赤道原則、拡張・強化されるも 依然として採択は任意 2012 年 8 月号 新インコタームズに関する注意 事項:国際売買契約での使用を 目的とした ICC 規則 2012 年 8 月号(特報) してきました。 2012 年 6 月 7 日に署名された 日・イラク投資協定について 同公社は、全国的な送電網に繋がっていない一部地域に対して電力を供給するオフグリ 2012 年 7 月号 ッド・ステーションの操業も行っており、ケニアにおいて送電事業を担うケニア電灯・電力 欧州連合におけるガス・電力業界の 第三国認証取得義務発効へ 公社(Kenya Power and Lighting Company)に電力を売却しています。 最後に、ナイロビ証券取引所に上場をしているものの、ケニア国家発電公社はケニア政府 が 70 パーセント保有する国営企業であることには注意が必要でしょう。同公社のような ケニアの国営企業が、国際仲裁やその他外国投資家に通常認められている保護措置に応じる能力を有するのかという点は、これらの法 人を相手にする上で検討すべき重要な要素です。 資金調達の選択肢 ケニアにおける地熱エネルギー開発のための主な資金源には、多国間開発銀行、プライベート・エクイティ・ファンドおよびソブリン・ファン ドが挙げられます。後述するように、クリーン開発メカニズム(「CDM」)など炭素取引市場を利用した取り組みや、地熱リスク軽減ファシリ ティ(Geothermal Risk Mitigation Facility:「GRMF」)のような国際開発基金を通じても、ケニアでの地熱プロジェクトのための追加資金を 調達することができます。 Page 2 クリーン開発メカニズム 現在、ケニア国内では二件の地熱プロジェクトが CDM による認証を受けており、この二つのプロジェクトにより認められる温室ガス排出 削減量は、二酸化炭素換算で年間 30 万超に達しています。炭素金融がケニアで今後計画されるプロジェクトに関してどれだけ有効な 資金調達先となるのかという点は、欧州連合(「EU」)の排出権取引制度における炭素クレジットの市場価格の安定度合いに左右されるで しょう。 地熱リスク軽減ファシリティ GRMF は、地熱エネルギー関連のプロジェクトに対する投資家に補助金を提供するために、アフリカ連合と EU とが設置した制度で、 ケニアはエチオピア、ルワンダ、タンザニアおよびウガンダと並んで同制度の設立当初から財務支援の対象となっています。補助金は、 政府系および民間の開発業者が地表調査とそれに続く調査用の掘削や地熱貯留層を確認するための掘削を行うための資金を支援する ことを目的としており、探査作業に伴う初期投資やリスクを幾らか軽減しています。GRMF は、設立に当たって 5000 万ユーロの出資を (うち 2000 万ユーロはドイツ経済協力・開発省から、残りは EU-アフリカ・インフラ信託基金(EU-Africa Infrastructure Trust Fund)から) 受けました。 規制 1982 年地熱資源法 地熱資源法は、1990 年地熱資源規則(Geothermal Resources Regulation 1990、「地熱資源規則」)によって補完され、地熱資源の 開発と利用について規定していますが、同法は、抽出される前の地熱資源はすべてケニア政府に帰属し、ただし既にその他の当事者に 帰属する一切の権利は除く、と定めています。 また、上述のとおり、地熱資源法は地熱資源に関連するエネルギー石油省の権限を規定していますが、これには次の権限が含まれます。 • 国内のあらゆる地域に対する、地熱資源地域の指定の宣言 • 地熱資源の探索のための探査、調査、試験および測量の承認 • 地熱資源に関する許可の付与、更新および失効の宣言 • 地熱資源開発のためのフィー、借地料およびロイヤルティの徴収 • 地熱発電事業の検査とモニタリングの実施 掘削、ボアリング、探査、資源の利用およびプラント・機器の建設をする場合には、地熱資源に関する許可が必要とされていますが、地熱 資源法では、その期限は 30 年以下とすることが定められています。当初の期限が満了した後は、期限を 5 年以下とするときに限り更新が 認められており、更新の回数については制限がありません。また、地熱資源に関する許可を譲渡することは可能ですが、これにはエネル ギー石油省の書面による同意が必要です。なお、地熱資源に関する許可の取得やその更新に関する申請は、すべて地熱資源規則が 定める様式に則らなければなりません。 2006 年エネルギー法 エネルギー法は、2007 年 7 月 7 日付で施行されました。同法は、ケニアのエネルギー部門に対する規制の改革をその趣旨としており、 これには、既存の 1997 年電力法と 1948 年石油法の統合や、GDC、地方電化庁(Rural Electrification Authority)およびエネルギー 規制委員会のような専門機関の設立などが含まれています。 上述のとおり、エネルギー規制委員会は、エネルギー法に基づいてケニアの電力業界の主たる規制機関として設立されましたが、その 主な機能には次のようなものがあります。 • 電力の取引、発電、供給および利用の規制 • 石油およびガスの取引、輸送、精製、備蓄および売買の規制 • 再生可能およびその他の形態による電力の発電、配電、供給および利用の規制 • 利害当事者、消費者および投資家の利益の保護 • エネルギー規制委員会が認定するエネルギー監査人名簿の維持 • 指標となる国家エネルギー計画の策定 Page 3 エネルギー規制委員会は消費者その他に対する電力エネルギーの発電、取引、送配電および供給に関連する許認可の発行、更新、 停止および取消を管轄します。各種許認可の付与やその更新、譲渡に関する条件はエネルギー規制委員会の裁量に委ねられており、 エネルギー法には明文の規定がありません。 また、許可を受けた事業者間やこれら事業者と大型小売事業者との間で電力の売買および送配電に関する契約(売電契約書)を締結 する場合も、エネルギー規制委員会の承認が必要です。許可事業者が売電契約書を締結しようとする場合には、エネルギー規制委員会 に対し、電気料金が「公正かつ妥当」であることと、エネルギー石油省が定めるその他の最低要件が満たされていることを証明しなければ なりません。 エネルギー規制委員会の決定に対するすべての不服申立ては、これもエネルギー法によって設立された機関である、エネルギー裁判所 によって処理されます。 総括 先般の TICAD では、アフリカ大陸の地熱エネルギーへの投資を模索している日本企業に対して多くの機会が提示されました。とくに ケニアは膨大な資源と比較的安定した規制制度を有する国であると目されています。今回 JICA が、GDC が目標とする 2030 年までに 同国の地熱発電容量を 5,530 メガワット相当に引き上げるという計画のために 18 億円もの資金援助を決定したことは、同機構がこの地域 に対して寄せている信頼を物語っているでしょう。 問い合わせ先 ディヴィッド・ローレンス パートナー(東京) アンドリュー・ブレイコー パートナー(東京) 外国法事務弁護士 T +81 3 5412 5422 [email protected] 外国法事務弁護士 T +81 3 5412 5455 [email protected] レベッカ・メージャー パートナー(パリ) T +33 1 5357 7070 [email protected] ご住所・ご連絡先に変更がある場合はお手数ですが [email protected] までご連絡ください。 配信停止をご希望の場合はこちらまでご連絡ください。 本稿の内容またはその他貴社の事業に係る法的事項につきご質問がございましたら、お気軽にこちらまでお問い合わせください。 © Herbert Smith Freehills LLP 2013 上記日付現在の本稿の内容は、あくまでも参考情報の提供を目的としております。これは法的助言を構成するものではなく、法的助言として依拠 すべきものではありません。本稿にてご提供する情報に基づいて行為をされる場合には、必ず個別の事案に沿った具体的な法的助言を別途 お求めください。 Page 4