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幹細胞から外胚葉系細胞への分化誘導活性を有 す

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幹細胞から外胚葉系細胞への分化誘導活性を有 す
JP 2013-252062 A 2013.12.19
(57)【要約】
【課題】幹細胞から外胚葉系細胞への分化誘導活性を有
する物質を見出し、これまで治療が困難であった眼疾患
や神経疾患を根本的に予防、改善又は治療するための医
薬品や飲食品等の組成物を提供する。
【解決手段】フコイダンを有効成分として含有する、幹
細胞から外胚葉系細胞への分化誘導剤である。外胚葉系
細胞分化誘導剤は、幹細胞から眼の構成細胞や神経細胞
等の外胚葉系細胞を効率的に分化誘導でき、これまで治
療が困難であった眼疾患や神経疾患を根本的に予防、改
善又は治療するための医薬品や飲食品等の組成物を提供
することができる。
【選択図】図1
10
(2)
JP 2013-252062 A 2013.12.19
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フコイダンを有効成分として含有することを特徴とする、幹細胞から外胚葉系細胞への
分化誘導剤。
【請求項2】
外胚葉系細胞が感覚器系細胞又は神経系細胞である、請求項1記載の分化誘導剤。
【請求項3】
感覚器系細胞が眼の構成細胞である、請求項2記載の分化誘導剤。
【請求項4】
眼の構成細胞が、網膜、水晶体、角膜上皮又は虹彩の細胞である、請求項3記載の分化
10
誘導剤。
【請求項5】
請求項1∼4のいずれか一項に記載の分化誘導剤を含有することを特徴とする、医薬品
又は飲食品。
【請求項6】
眼疾患又は神経疾患の治療用又は予防用の、請求項5記載の医薬品又は飲食品。
【請求項7】
フコイダンの存在下で幹細胞を培養して外胚葉系細胞へ分化誘導することを特徴とする
、幹細胞から外胚葉系細胞への分化誘導方法。
【請求項8】
20
フコイダンの存在下で幹細胞を培養して外胚葉系細胞へ分化誘導する工程を含む、外胚
葉系細胞の製造方法。
【請求項9】
請求項8記載の方法により製造された外胚葉系細胞。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、幹細胞から外胚葉系細胞への分化誘導剤、該分化誘導剤を含む医薬品、医
薬部外品及び飲食品並びに外胚葉系細胞の製造方法に関する。
【背景技術】
30
【0002】
幹細胞は、様々な細胞に分化できる多分化能と、細胞分裂を経ても多分化能(未分化状
態)を維持できる自己増殖能とを併せ持つ細胞である。なかでも、体性幹細胞は、生体内
の各組織に存在しており、障害若しくは疾患又は老化等に伴って組織の細胞が失われた場
合に、新たな細胞を供給することにより組織の恒常性を維持している。また、ES細胞(
胚性幹細胞)やiPS細胞(人工多能性幹細胞)等の多能性幹細胞は、人工的につくり出
された幹細胞であり、生体を構成する全ての細胞種に分化できる能力(多能性)と無限増
殖性を有している。
【0003】
近年、再生医療をはじめとする先端医療の分野において、これらの幹細胞の性質を臓器
40
や組織の再生に応用する研究が活発に進められている(非特許文献1)。例えば、哺乳類
の眼、特に網膜はいったん障害を受けると自然には再生しない。このため、網膜色素変性
症等の網膜変性症には治療法がなく、失明に至ることから、幹細胞を利用した再生医療が
期待されている。このような背景の中、近年の幹細胞技術の進歩により、マウスやヒトの
ES細胞やiPS細胞から網膜(網膜色素上皮、神経網膜)や水晶体等の眼組織・細胞を
誘導することが可能となっており、将来的にはこれらの誘導された眼組織・細胞の移植に
より従来有効な治療法がなかった眼疾患の治療が可能となることが期待されている(非特
許文献2、3)。
【0004】
また、日本には約10万人の脊髄損傷患者が存在し、毎年新たに約5000人の受傷者
50
(3)
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が生じていると言われている。重症の場合には手足がほとんど動かず、寝たきりや車椅子
の生活を余儀なくされている。現在のところ、脊髄損傷によって失われた機能を回復する
ために有効な治療法は確立されていない。その理由としては、中枢神経系では損傷後の神
経再生が非常に起こりにいことが挙げられる。このため、脊髄損傷にもやはり幹細胞によ
る再生医療が期待されており、すでに幹細胞から中枢神経系への様々な分化誘導技術が確
立されている(非特許文献4)。一方で、上記幹細胞を利用した再生医療を実現するため
には、幹細胞から効率的に目的細胞への分化を制御する物質や技術の開発が必須である。
【0005】
脊椎動物の初期胚の発生過程では胚葉形成と呼ばれる細胞の系統分化が起き、外胚葉、
中胚葉、内胚葉の三種類の細胞集団が形成される。このうち、外胚葉は神経系細胞、感覚
10
系細胞、表皮を生み出す。よって、幹細胞から外胚葉、さらには、外胚葉を由来とする細
胞や組織を分化誘導することができれば、上記の眼疾患や脊髄損傷の治療への応用の可能
性が広がる。
【0006】
一方、フコイダンは、硫酸多糖の一種であり、コンブ、ワカメ、モズク等褐藻類の粘質
物に多く含まれる食物繊維である。フコイダンは、主にL−フコースがα1−2、α1−
4結合で数十から数十万個も繋がった化合物である。これまでに、このフコイダンに様々
な生理活性機能が見出されている。例えば、特許文献1には、フコイダンがヒト皮膚線維
芽細胞おいて、typeI pro−collagen産生増強作用及びTGF−β1産
生増強作用を示すことが記載されている。また、特許文献2には、フコイダンが、in 20
vivo及びin vitro試験において、大腸上皮細胞におけるIL−6の産生抑制
作用を示し、大腸炎病変の改善効果を示すことが記載されている。しかしながら、これま
でに、フコイダンが未分化の幹細胞に及ぼす影響については殆ど検討されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−313131
【特許文献2】特開2003−146888
【非特許文献】
【0008】
30
【非特許文献1】西川伸一ら、実験医学増刊、2008年、26巻、第5号、pp.74
−80
【非特許文献2】Eiraku M, Takata N, Ishibashi H,
Kawada M, Sakakura E, Okuda S, Sekiguch
i K, Adachi T, Sasai Y. (2011) Nature 7;
472 (7341):51−6
【非特許文献3】Osakada F, Jin ZB, Hirami Y, Ike
da H, Danjyo T, Watanabe K, Sasai Y, Tak
ahashi M. (2009) J Cell Sci. 122 (Pt 17)
:3169−79
40
【非特許文献4】Ueno M, Matsumura M, Watanabe K,
Nakamura T, Osakada F, Takahashi M, Kaw
asaki H, Kinoshita S, Sasai Y. (2006) Pr
oc Natl Acad Sci USA. 20:9554−9
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本願発明の目的は、幹細胞から外胚葉系細胞への分化誘導活性を有する物質を見出し、
これまで治療が困難であった眼疾患や神経疾患を根本的に予防、改善又は治療するための
医薬品や飲食品等の組成物を提供することにある。
50
(4)
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【課題を解決するための手段】
【0010】
本願発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、フコイダンを幹細胞の
培養系に添加することにより、幹細胞において外胚葉系細胞特異的マーカー遺伝子の発現
が亢進することを見出すとともに、神経細胞又は眼様構造体への分化が促進されることを
確認し、本願発明を完成させるに至った。
【0011】
すなわち、本願発明は以下の発明を包含する。
(1)フコイダンを有効成分として含有することを特徴とする、幹細胞から外胚葉系細胞
への分化誘導剤。
10
(2)外胚葉系細胞が感覚器系細胞又は神経系細胞である、(1)に記載の分化誘導剤。
(3)感覚器系細胞が眼の構成細胞である、(2)に記載の分化誘導剤。
(4)眼の構成細胞が、網膜、水晶体、角膜上皮又は虹彩の細胞である、(3)に記載の
分化誘導剤。
(5)(1)∼(4)のいずれかに記載の分化誘導剤を含有することを特徴とする、医薬
品又は飲食品。
(6)眼疾患又は神経疾患の治療用又は予防用の、(5)に記載の医薬品又は飲食品。
(7)フコイダンの存在下で幹細胞を培養して外胚葉系細胞へ分化誘導することを特徴と
する、幹細胞から外胚葉系細胞への分化誘導方法。
(8)フコイダンの存在下で幹細胞を培養して外胚葉系細胞へ分化誘導する工程を含む、
20
外胚葉系細胞の製造方法。
(9)(8)に記載の方法により製造された外胚葉系細胞。
【発明の効果】
【0012】
本願発明によれば、幹細胞から外胚葉系細胞への分化誘導剤が提供される。本願発明の
分化誘導剤は、幹細胞から外胚葉系細胞、例えば水晶体や網膜等の眼の構成細胞、神経細
胞への分化を誘導することができるので、白内障、緑内障、網膜剥離及びその他の眼疾患
や脊髄損傷等の神経障害を根本的に予防、改善又は治療するための医薬品や飲食品として
利用できる。また、本願発明の分化誘導剤を用いて幹細胞から分化誘導することにより作
製された外胚葉系細胞は、眼や神経の損傷部位に移植してその機能を回復させる再生医療
30
への応用が可能となる。さらに、本願発明の分化誘導剤は、水晶体及び網膜等の眼の構成
細胞や神経細胞の分化の基礎研究用試薬としても利用できる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本願発明について詳細に述べる。
本願発明の幹細胞から外胚葉系細胞への分化を誘導する分化誘導剤(以下、「外胚葉系
細胞分化誘導剤」と称する場合がある)は、フコイダンを有効成分とする。
【0014】
本願発明における「幹細胞から外胚葉系細胞への分化誘導」とは、生体レベルで又は培
養レベルで幹細胞から外胚葉系細胞の分化を誘導及び促進し、外胚葉系細胞を増加させる
40
ことをいう。
【0015】
本願発明において「幹細胞」とは、外胚葉系細胞に分化しうる各種の幹細胞をいい、胚
性幹細胞(ES細胞)、骨髄、皮膚、皮下脂肪、脳、網膜、鼻臭球、その他の組織に存在
する未分化な状態の細胞(総称して、「体性幹細胞」という)、人工多能性幹細胞(iP
S細胞)等を含む。ES細胞としては、例えば、着床以前の初期胚を培養することによっ
て樹立されたES細胞、体細胞の核を核移植することによって作製された初期胚を培養す
ることによって樹立されたES細胞、及びそれらのES細胞の染色体上の遺伝子を遺伝子
工学の手法を用いて改変したES細胞が挙げられる。このようなES細胞は、例えば、公
知の方法によって作製することができるが、所定の機関より入手でき、さらには市販品を
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購入することもできる。また、これら幹細胞は、初代培養細胞、継代培養細胞、凍結細胞
のいずれであってもよい。
【0016】
本願発明の外胚葉系細胞分化誘導剤は、幹細胞の分化の方向性、及び、分化の過程等に
ついて同等の特性を持っていれば、全ての哺乳動物に応用が可能である。例えば、ヒト、
サル、マウス、ラット、モルモット、ハムスター、ウサギ、ネコ、イヌ、ウマ、ウシ、ヒ
ツジ、ヤギ、ブタ等の哺乳動物の幹細胞に対して効果を発揮することができる。
【0017】
外胚葉は、主に表層外胚葉と神経外胚葉に分けられるが、本願発明において、「外胚葉
系細胞」とは、表層外胚葉性細胞と神経外胚葉性細胞の両者をいい、初期胚の細胞やES
10
細胞等の多能性細胞から分化の初期段階で形成される外胚葉細胞(神経や皮膚の共通前駆
細胞等)、さらには外胚葉から分化・発生する神経や感覚器を構成する細胞、皮膚の細胞
等を含む概念である。外胚葉由来の細胞としては、感覚器系細胞(網膜や内耳の細胞等)
、神経系細胞(神経幹細胞、神経細胞(例えば、前脳神経細胞、中脳神経細胞、小脳神経
細胞、後脳神経細胞、脊髄神経細胞等)、神経管細胞、神経堤細胞等)、表皮系細胞(表
皮細胞、水晶体上皮細胞等)等が挙げられる。
【0018】
本願発明の分化誘導剤により分化誘導された細胞が、上記の外胚葉系細胞であるか否か
は、例えば、各種の神経系細胞マーカーや感覚器系細胞マーカーの発現により確認できる
。本願発明において用いることのできる神経系細胞マーカーや感覚器系細胞マーカーとし
20
ては、例えば、Otx2(外胚葉・神経細胞・眼の分化マーカー:W02005/123
902、Nature 1992 Aug 20;358(6388):687−90.
Nested expression domains of four homeo
box genes in developing rostral brain. S
imeone A, Acampora D, Gulisano M, Storna
iuolo A, Boncinelli E. SourceInternation
al Institute of Genetics and Biophysics,
CNR, Naples, Italy.)、Sox1(神経細胞・眼の分化マーカー
:W02005/123902)、Six3(前脳領域・眼の分化マーカー:Cereb
Cortex. 2008 Mar;18(3):553−62. Epub 200
30
7 Jun 18. Six3 controls the neural proge
nitor status in the murine CNS. Appollon
i I, Calzolari F, Corte G, Perris R, Mal
atesta P.)、Pax6(神経前駆細胞、眼の分化マーカー:W02005/1
23902)、Tuj−1(神経細胞マーカー:Mod Pathol. 2007 J
ul;20(7):742−8. Epub 2007 Apr 27. Expres
sion of Sox2 in mature and immature tera
tomas of central nervous system. Phi JH,
Park SH, Paek SH, Kim SK, Lee YJ, Park CK, Cho BK, Lee DH, Wang KC.)、Map2(成熟神経細
40
胞マーカー:W02005/123902、J Neurosci Res. 2002
Nov 1; 70(3):327−34. Expression pattern
s of immature neuronal markers PSA−NCAM,
CRMP−4 and NeuroD in the hippocampus of
young adult and aged rodents. Seki T.)、
Crystalin(水晶体、レンズマーカー)等が挙げられる。
【0019】
本願発明に用いるフコイダンは、硫酸多糖の一種である。本願発明に使用できるフコイ
ダンとしてより具体的には、U−フコイダン、F−フコイダン、G−フコイダン等が挙げ
られるがこれらに限定はされない。また、これらのフコイダンは市販品を用いてもよい。
50
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【0020】
本願発明において用いるフコイダンは、植物体から分離した上記のフコイダンであって
もフコイダン含有物であってもよい。フコイダン含有物としては、モズク、クロメ、カジ
メ、アラメ等の昆布目、ひばまた目、ながもつも目等に属する藻類が挙げられる。また、
棘皮動物由来のフコイダン、例えばウニ、ヒトデ、ナマコ等由来のフコイダンを使用して
もよい。
【0021】
フコイダンは、幹細胞から外胚葉系細胞への分化を培養レベル又は生体レベルで誘導す
る作用を有する。従って、本願発明の外胚葉系細胞分化誘導剤は、その有効量を添加した
幹細胞分化誘導培地にて幹細胞を培養することによって、又は、ヒトを含む哺乳動物に投
10
与することによって、幹細胞から外胚葉系細胞への分化を誘導することができる。
【0022】
幹細胞から外胚葉系細胞への分化誘導を幹細胞の培養により行う場合、培地に上記外胚
葉系細胞分化誘導剤を添加する以外は、培養方法の条件及び操作は、当該技術分野で常套
的な条件及び操作に従って行うことができる。外胚葉系細胞分化誘導剤の培地への添加量
は、フコイダンの濃度として1∼1000μg/L、好ましくは50∼200μg/Lで
ある。
【0023】
幹細胞の培養には、幹細胞の維持又は分化誘導の目的に適する組成の培地を使用する。
幹細胞分化誘導培地としては、具体的には、細胞の生存増殖に必要な成分(無機塩、炭水
20
化物、ホルモン、必須アミノ酸、非必須アミノ酸、ビタミン)を含む基本培地(例えば、
Dulbecco’s modified Eagle’s medium(D−MEM
)、Minimum Essential Medium(MEM)、RPMI1640
、Basal Medium Eagle(BME)、Dulbecco’s modi
fied Eagle’s medium:Nutrient Mixture F−1
2(D−MEM/F−12)、Glasgow Minimum Essential Meidum(Glasgow MEM)、ハンクス液(Hank’s balance
d salt solution)、MCDB15培地)に、塩基性線維芽細胞増殖因子
(bFGF)、上皮細胞増殖因子(EGF)、白血球増殖因子(LIF)等の増殖因子を
少なくとも1種添加した培地が用いられる。また、当該培地には、細胞の増殖速度を増大
30
させるために、必要に応じて、腫瘍壊死因子(TNF)、ビタミン類、インターロイキン
類、インスリン、トランスフェリン、ヘパリン、ヘパラン硫酸、コラーゲン、ウシ血清ア
ルブミン(BSA)、フィブロネクチン、プロゲステロン、セレナイト、B27−サプリ
メント、N2−サプリメント、ITS−サプリメント等を添加してもよく、また、抗生物
質を添加してもよい。培地の各成分は、各々適する方法で滅菌して使用する。
【0024】
また、上記以外には、1∼20%の含有率で血清が含まれることが好ましい。しかし、
血清はロットの違いにより成分が異なり、その効果にバラツキがあるため、ロットチェッ
クを行った後に使用することが好ましい。
【0025】
40
幹細胞の培養は、未分化状態を保つために、マイトマシンC処理したMEF細胞等をフ
ィーダー細胞として用い、幹細胞維持用培地(基本培地にLIF、L−グルタミン酸等を
添加した培地)にて行い、また、幹細胞の外胚葉系細胞への分化誘導は、未分化状態を維
持し培養した幹細胞を、改めて別のフィーダー細胞上に播種し、分化を促すような種々の
因子を加えて培養することにより行う。フィーダー細胞としては、特に限定されないがマ
ウスストローマ細胞であるST2細胞やPA6細胞が好ましい。分化を促すような種々の
因子としては、DEX(DEXAMETHASONE)、bFGF(basic Fib
roblast Growth Factor)、CT(Cholera toxin)
、EDN3(Endothelin−3)が挙げられるが特に限定されるものではない。
【0026】
50
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幹細胞の培養及び幹細胞から外胚葉系細胞への分化誘導に使用する容器としては、使い
捨てのシャーレが好ましい。なお、培地の交換は2∼3日に1回行うことが好ましいが、
毎日行うことがより好ましい。また、幹細胞から角膜や水晶体(レンズ)及び網膜を含む
眼組織への分化誘導は12日以上行うのが好ましい。
【0027】
本願発明の外胚葉系細胞分化誘導剤は、生体内にそのまま投与することも可能であるが
、本願発明の効果を損なわない範囲で適当な添加物とともに医薬品、医薬部外品、飲食品
等の組成物に配合して用いることができる。
【0028】
本願発明の外胚葉系細胞分化誘導剤を医薬品として提供する場合は、フコイダンに、医
10
薬品の製剤上許容され、かつ剤型に応じて適宜選択した製剤用基材や担体、賦形剤、希釈
剤、結合剤、滑沢剤、コーティング剤、崩壊剤又は崩壊補助剤、安定化剤、保存剤、防腐
剤、増量剤、分散剤、湿潤化剤、緩衝剤、溶解剤又は溶解補助剤、等張化剤、pH調整剤
、噴射剤、着色剤、甘味剤、矯味剤、香料等を適宜添加し、公知の種々の方法にて経口又
は非経口的に全身又は局所投与することができる各種製剤に調製すればよい。
【0029】
経口投与用製剤には、例えば、デンプン、ブドウ糖、ショ糖、果糖、乳糖、ソルビトー
ル、マンニトール、結晶セルロース、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、リン酸カル
シウム、デキストリン等の賦形剤;カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセル
ロースカルシウム、デンプン、ヒドロキシプロピルセルロース等の崩壊剤又は崩壊補助剤
20
;ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピ
ロリドン、アラビアゴム、ゼラチン等の結合剤;ステアリン酸マグネシウム、ステアリン
酸カルシウム、タルク等の滑沢剤;ヒドロキシプロピルメチルセルロース、白糖、ポリエ
チレングリコール、酸化チタン等のコーティング剤;ワセリン、流動パラフィン、ポリエ
チレングリコール、ゼラチン、カオリン、グリセリン、精製水、ハードファット等の基剤
等を用いることができるが、これらに限定はされない。
【0030】
非経口投与用製剤には、蒸留水、生理食塩水、エタノール、グリセリン、プロピレング
リコール、マクロゴール、ミョウバン水、植物油等の溶剤;ブドウ糖、塩化ナトリウム、
D−マンニトール等の等張化剤;無機酸、有機酸、無機塩基又は有機塩基等のpH調整剤
30
等を用いることができるが、これらに限定はされない。
【0031】
本願発明の医薬品の形態としては、特に制限されるものではないが、例えば錠剤、糖衣
錠剤、カプセル剤、トローチ剤、顆粒剤、散剤、液剤、丸剤、乳剤、シロップ剤、懸濁剤
、エリキシル剤等の経口剤、点眼剤、注射剤(例えば、皮下注射剤、静脈内注射剤、筋肉
内注射剤、腹腔内注射剤)、点滴剤、座剤、軟膏剤、ローション剤、噴霧剤、経皮吸収剤
、経粘膜吸収剤、貼付剤等の非経口剤等が挙げられる。また、使用する際に再溶解させる
乾燥生成物にしてもよい。なお、本願発明の医薬品には、動物に用いる薬剤、即ち獣医薬
も包含される。
【0032】
40
上記製剤中のフコイダンの含有量は特に限定されないが、製剤全重量に対して、フコイ
ダン固形分換算で、0.001∼30重量%の範囲が好ましく、0.01∼10重量%が
より好ましい。
0.001重量%未満では効果が得にくく、30重量%を超えても効果に大きな増強はみ
られにくい。又、製剤化における有効成分の添加法については、予め加えておいても、製
造途中で添加してもよく、作業性を考えて適宜選択すればよい。
【0033】
上記医薬品の形態の中でも点眼剤の形態とすることが好ましい。フコイダンの含有量は
適応疾患等に応じて適宜変更することができる。点眼剤には、通常点眼剤に配合され得る
各種の添加剤を適宜配合することができる。添加剤としては、例えば、緩衝剤(ホウ酸塩
50
(8)
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緩衝剤、クエン酸塩緩衝剤、酒石酸塩緩衝剤等)、等張化剤(ブドウ糖、マンニトール、
ソルビトール等の糖類、グリセリン,ポリエチレングリコール,プロピレングリコール等
の多価アルコール類、塩化ナトリウム等の塩類等)、保存剤(塩化ベンザルコニウム、グ
ルコン酸クロルヘキシジン、パラオキシ安息香酸メチル等)、増粘剤(ヒドロキシエチル
セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセル
ロース等)、安定化剤、抗酸化剤、pH調整剤、キレート剤等が挙げられる。
【0034】
また、点眼剤は、公知の水溶液剤の製法に従い調製できる。例えば、医薬品の製剤上許
容される溶媒(例:滅菌精製水、滅菌緩衝液等の水性溶媒)に、上記の各種添加剤を添加
した後、フコイダンを溶解して均質な水溶液剤とする。点眼剤の調製は、無菌操作法によ
10
り行うか、あるいは適当な製造工程で滅菌処理を施すことにより行われる。
【0035】
本願発明の外胚葉系細胞分化誘導剤は、有効成分であるフコイダンが幹細胞から外胚葉
系細胞への分化を促進する作用を有するので、眼疾患又は神経疾患を改善及び予防するた
めの医薬として有効である。
【0036】
眼疾患としては、水晶体、角膜、網膜、視神経の変性や損傷による疾患であれば特に限
定はされないが、例えば、網膜疾患(網膜剥離、網脈絡膜炎、網膜動脈閉塞症、網膜静脈
閉塞症、糖尿病性網膜症、高血圧網膜症、加齢黄斑変性症、網膜色素変性症、中心性漿液
性網脈絡膜症等)、視神経疾患(緑内障、乳頭浮腫、視神経炎、視神経萎縮等)、角膜疾
20
患(細菌性角膜潰瘍、角膜真菌症、角膜ヘルペス等)、白内障(老人性、糖尿病性、併発
性、外傷性の白内障等)等が挙げられる。
【0037】
神経疾患としては、神経系細胞の障害による疾患あれば特に限定はされないが、例えば
、脊髄損傷、アルツハイマー病、脊髄小脳変性症、ハンチントン舞踏病、筋萎縮性側索硬
化症、脊髄性筋萎縮症、パーキンソン病、多発性硬化症、脳血管障害(脳梗塞、脳卒中、
脳動脈瘤)、脳血管障害による痴呆症や運動障害、てんかん、脳外傷等が挙げられる。
【0038】
本願発明の医薬品は、上記疾患の発症を抑制する予防薬として、及び/又は、正常な状
態に改善する治療薬として機能する。
30
【0039】
本願発明の医薬品を上記の疾患の予防及び/又は治療用医薬として用いる場合、ヒト、
マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ等の哺乳動物に対して広い範囲の投与量で経口的に
又は非経口的に投与することができる。
【0040】
本願発明の医薬品の投与量は、疾患の種類、投与対象の年齢、性別、体重、症状の程度
に応じて適宜決定することができる。例えば、成人に経口投与する場合には、一日の投与
量は、フコイダンとして1∼1000mg、好ましくは5∼200mgである。
【0041】
また、本願発明の外胚葉系細胞分化誘導剤は、飲食品にも配合できる。本願発明におい
40
て、飲食品は、健康食品、機能性食品、栄養補助食品、又は特定保健用食品を含む。さら
に、本願発明の飲食品は、ヒト以外の哺乳動物を対象として使用されるペットフード、飼
料を含む。特に、アルツハイマー病等の予防や神経損傷の治療等長期にわたって服用が必
要となる場合に、日常的に摂取できる点で有利である。
【0042】
飲食品の形態は、食用に適した形態、例えば、固形状、液状、顆粒状、粒状、粉末状、
カプセル状、クリーム状、ペースト状のいずれであってもよい。
【0043】
飲食品の種類としては、具体的には、食パン、菓子パン等のパン類;そば、うどん、パ
スタ、中華麺、即席麺等の麺類;キャンディー、チューインガム、チョコレート、ビスケ
50
(9)
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ット・クッキー等の焼き菓子、ゼリー等の菓子類;アイスクリーム、アイスシャーベット
、かき氷等の冷菓;加工乳、発酵乳、ヨーグルト、バター、チーズ等の乳製品;かまぼこ
、ちくわ、ハム、ソーセージ等の水産・畜産加工食品;マーガリン、マヨネーズ、ショー
トニング、ホイップクリーム、ドレッシング等の油脂及び油脂加工食品;しょうゆ、ソー
ス、酢、みりん等の調味料;清涼飲料、炭酸飲料、美容ドリンク、栄養飲料、果実飲料、
乳飲料等の飲料(これらの飲料の濃縮原液及び調製用粉末を含む)等が挙げられるが、こ
れらに限定はされない。
【0044】
本願発明の飲食品は、その種類に応じて通常使用される添加物を適宜配合してもよい。
添加物としては、食品衛生上許容され得る添加物であればいずれも使用できるが、例えば
10
、ブドウ糖、ショ糖、果糖、異性化液糖、アスパルテーム、ステビア等の甘味料;クエン
酸、リンゴ酸、酒石酸等の酸味料;デキストリン、澱粉等の賦形剤;結合剤、希釈剤、香
料、着色料、緩衝剤、増粘剤、ゲル化剤、安定剤、保存剤、乳化剤、分散剤、懸濁剤、防
腐剤等が挙げられる。
【0045】
本願発明の飲食品におけるフコイダンの配合量は、幹細胞から外胚葉系細胞への分化促
進作用が発揮できる量であればよいが、対象飲食品の一般的な摂取量、飲食品の形態、効
能・効果、呈味性、嗜好性及びコスト等を考慮して適宜設定すればよい。
【実施例】
【0046】
20
以下、実施例により本願発明をさらに具体的に説明する。但し、本願発明はこれらに限
定されるものではない。
【0047】
(実施例1)フコイダンによる幹細胞(マウスES細胞)の外胚葉系細胞への分化誘導
(1)ES細胞の調製
ゼラチンコート処理した35mmシャーレにMMC(mitomycin C)処理済
みのMEF細胞(Mouse embryonic fibroblast)をコンフル
エントの状態で培養し、その上にマウスES細胞を10∼20×104個播種し、37℃
、5%CO2インキュベーターで前培養した。培地はDMEMにchemicon社製の
ES細胞用添加因子(L−グルタミン液、2−メルカプトエタノール液、ヌクレオシド液
30
、非必須アミノ酸液、ESGRO)を推奨濃度で添加した後、LIF(leukemia
inhibitory factor)を1000units/mL、FBS(Fet
al Bovine Serum)を15%添加したES細胞未分化維持用培地(以下、
「ES細胞用培地」という)を用いた。
【0048】
上記の方法で培養したES細胞及びMEF細胞をトリプシン処理によりシャーレから剥
がし、それらを再びゼラチンコート処理した35mmシャーレに播種した。播種後30分
間静置し、その後培地を別のチューブに回収した。このとき接着性の強いMEF細胞はシ
ャーレに残り、ES細胞のみが回収される。このようにして回収した未分化のES細胞を
用いて以下の実験を行った。
40
【0049】
(2)フィーダー細胞を用いた培養系におけるフコイダンによる幹細胞の外胚葉系細胞へ
の分化誘導
MEFから分離したES細胞を、24wellプレートで培養したMMC処理済のME
F細胞上に再び播種し(5×104 cells/well)、ES細胞用培地からLI
Fを除いた培地を用いて培養した。その際、市販のフコイダン(焼津水産化学工業株式会
社製、フコイダンYSK(NB))を25、50、100μg/mLの濃度で添加した。
【0050】
培養4日後にES細胞のみを回収し、細胞をPBS(−)にて2回洗浄し、Trizo
l Reagent(Invitrogen)によって細胞からRNAを抽出した。2−
50
(10)
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STEPリアルタイムPCRキット(Applied Biosystems)を用いて
、RNAをcDNAに逆転写後、ABI7300(Applied Biosystem
s)により、下記の各プライマーセットを用いてリアルタイムPCR(95℃:15秒間
、60℃:30秒間、40cycles)を実施し、Nanog(未分化マーカー:Ce
ll Res. 2007 Jan; 17(1):42−9. Review. Na
nog and transcriptional networks in embr
yonic stem cell pluripotency. Pan G, Tho
mson JA.)、Otx2(外胚葉・神経細胞マーカー)、Sox1(神経細胞マー
カー)、Six3(前脳領域、眼の分化マーカー)の各マーカー遺伝子の発現を確認した
。その他の操作は定められた方法に従って行った。
10
【0051】
Nanog(未分化マーカー)用プライマーセット:
ATGCCTGCAGTTTTTCATCC(配列番号1)
GAGGCAGGTCTTCAGAGGAA(配列番号2)
Otx2(外胚葉、神経細胞マーカー)用プライマーセット:
GAAAATCAACTTGCCAGAATCCA(配列番号3)
GCGGCACTTAGCTCTTCGAT(配列番号4)
Sox1(神経細胞マーカー)用プライマーセット:
GCCGAGTGGAAGGTCATGT(配列番号5)
TGTAATCCGGGTGTTCCTTCAT(配列番号6)
20
Six3(前脳領域)用プライマーセット:
CCCTAGATCTCTATTCCTCCCACTTC(配列番号7)
GAAGTAGGGAGCAGTGGTGAGAA(配列番号8)
GAPDH(内部標準)用プライマーセット:
CCGTGTTCCTACCCCCAAT(配列番号9)
TGCCTGCTTCACCACCTTCT(配列番号10)
【0052】
各細胞のマーカー遺伝子の発現については、フコイダンを添加せずに培養した細胞にお
ける各遺伝子mRNAの発現量を内部標準であるGAPDH mRNAの発現量に対する
割合として算出した相対発現量(各遺伝子の発現量/GAPDH発現量)の値を1.0と
30
し、これに対し、フコイダンを添加して分化誘導した各細胞における各遺伝子相対発現量
の値を算出し、評価した。その結果を表1に示す。
【0053】
【表1】
40
【0054】
表1に示されるように、未分化マーカーであるNanogはフコイダンの濃度依存的に
発現が抑制された。一方で、外胚葉や神経細胞マーカーであるOtx2やSox1に関し
てはその発現が促進されることが明らかとなった。また、外胚葉の中でも初期胚の発生過
程で、前脳領域で発現が促進される遺伝子であるSix3の発現も促進された。
【0055】
(3)フィーダー細胞を用いない培養系におけるフコイダンによる幹細胞の外胚葉系細胞
への分化誘導
50
(11)
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MEFから分離した未分化のES細胞をゼラチンコート処理した24wellプレート
に直接(MEF細胞なしの状態で)播種し(5×104 cells/well)、上記
方法と同様にES細胞用培地からLIFを除いた培地を用いて培養し、各濃度のフコイダ
ンを添加した。培養4日後にRNAを回収し、Nanog(未分化マーカー)、Otx2
(外胚葉・神経細胞マーカー)、Sox1(神経細胞マーカー)、Six3(前脳領域マ
ーカー)の各マーカー遺伝子の発現を確認した。各マーカー遺伝子の発現をリアルタイム
PCRにより解析した。その結果を表2に示す。
【0056】
【表2】
10
【0057】
表2に示されるように、(2)の場合と同様、Nanogの発現抑制、Otx2、So
x1、Six3の発現促進が確認された。
20
【0058】
(4)EBを形成する培養系におけるフコイダンによる幹細胞の外胚葉系細胞への分化誘
導
MEFから分離した未分化のマウスES細胞を、LIFを除いたES細胞用培地に懸濁
し、2000cells/20μLの細胞濃度でhanging dropを形成し、E
B(embryoid body)を作製した。その際、各濃度のフコイダンを添加し、
培養4日後にRNAを回収し、Nanog(未分化マーカー)、Otx2(外胚葉・神経
細胞マーカー)、Sox1(神経細胞マーカー)、Six3(前脳領域マーカー)の各マ
ーカー遺伝子の発現をリアルタイムPCRにより解析した。その結果を表3に示す。
【0059】
30
【表3】
【0060】
40
表3に示されるように、(2)の場合と同様、Nanogの発現抑制、Otx2、So
x1、Six3の発現促進が確認された。
【0061】
上記(表1∼3)のように、いずれの培養系(フィーダー細胞を用いた培養系、フィー
ダー細胞を用いない培養系、EBを形成する培養系)においてもフコイダンはマウスES
細胞の未分化維持を抑制し、一方で外胚葉系細胞への分化を促進した。
【0062】
(実施例2)フコイダンによる幹細胞(マウスES細胞)の神経細胞への分化誘導
無血清培養下、ES細胞を各種のストローマ細胞と共培養することにより、成熟した神
経系細胞を分化誘導する技術が確立されている(特許4294482号; Kawasa
50
(12)
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ki H, Mizuseki K, Nishikawa S, Kaneko S,
Kuwana Y, Nakanishi S, Nishikawa SI, Sa
sai Y., Neuron 2000 Oct;28(1):31−40. Ind
uction of midbrain dopaminergic neurons from ES cells by stromal cell−derived in
ducing activity)。本神経分化誘導系にフコイダンを添加したところ、
成熟した神経細胞への誘導が促進された。
【0063】
MEFから分離したマウス未分化ES細胞を、24wellプレートでコンフルエント
まで培養したST2細胞(マウス骨髄由来ストローマ細胞)上に500cells/we
10
llの濃度で播種し、G−MEMに10% KSR(KnockOut. Serum Replacement)、2mM L−グルタミン、1mM pyruvate、0.
1mM 2−メルカプトエタノール液、0.1mM 非必須アミノ酸液を添加した神経細
胞分化誘導培地で培養した。その際、100μg/mLのフコイダンを添加した。
【0064】
分化誘導12日後にST2細胞及びES細胞を回収し、神経細胞分化マーカー遺伝子で
あるPax6(神経前駆細胞マーカー)、Tuj−1(神経細胞マーカー)、Map2(
成熟神経細胞マーカー)の各マーカー遺伝子の発現を下記の各プライマーセットを用いて
リアルタイムPCRにより解析した。
【0065】
20
Pax6(神経前駆細胞マーカー)用プライマーセット:
GCACCAAAGGGTCATCGC(配列番号11)
TGGGGGGTGGATGGAAG(配列番号12)
Tuj−1(神経細胞マーカー)用プライマーセット:
CTCAAAATGTCATCCACCTT(配列番号13)
GTGAACTCCATCTCATCCAT(配列番号14)
Map2(成熟神経細胞マーカー)用プライマーセット:
ACTCAGCAACGTCTCATCTT(配列番号15)
GTATTCACAAGCCCTGCTTA(配列番号16)
【0066】
30
リアルタイムPCRによる各マーカー遺伝子の発現の解析結果を表4に示す。
【0067】
【表4】
40
【0068】
表4に示されるように、フコイダン添加により、各神経細胞分化マーカーの発現が顕著
に促進されることが確認された。以上のように、フコイダンはES細胞から神経細胞への
分化を顕著に促進した。
【0069】
(実施例3)フコイダンによる幹細胞(マウスES細胞)の眼様構造体への分化誘導
ES細胞をストローマ細胞であるST2細胞と共培養することにより、メラノサイトを
分化誘導する系が確立されている(Yamane T, Hayashi S, Miz
oguchi M, Yamazaki H, Kunisada T., Dev D
50
(13)
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yn. 1999 Dec;216 (4−5):450−8. Derivation
of melanocytes from embryonic stem cell
s in culture.)。本分化誘導系では、メラノサイト以外にも、心筋細胞、
血球系細胞等様々な細胞が分化してくることが知られている。このような様々な細胞が分
化してくる系に、フコイダンを添加して、以下の分化誘導試験を行った。
【0070】
MEFから分離したマウス未分化ES細胞を、24wellプレートでコンフルエント
まで培養したST2細胞上に500cells/wellの濃度で播種し、α−MEMに
10%FBS、100nMデキサメタゾン、20pMbFGF、10pMコレラトキシン
、100ng/mLエンドセリン3を含む分化誘導培地で分化を促した。その際、100
10
μg/mLのフコイダンを添加した。
【0071】
図1に上記分化誘導試験の結果を示す。フコイダン無添加群では、誘導12日目には様
々な形態をした細胞が現れ始めた。一方、フコイダン添加群では、誘導12日目の時点で
コロニーの周りに色素を有した構造体が多数出現し始めた。
【0072】
ES細胞から網膜色素上皮細胞や水晶体(レンズ)を含む眼様構造体を誘導する系が確
立されている(Hirano M, Yamamoto A, Yoshimura N
, Tokunaga T, Motohashi T, Ishizaki K, Y
oshida H, Okazaki K, Yamazaki H, Hayashi
20
S, Kunisada T., Dev Dyn. 2003 Dec;228(4
):664−71. Generation of structures forme
d by lens and retinal cells differentiat
ing from embryonic stem cells.)。上記コロニーの形
態を顕微鏡観察すると、フコイダン添加により形成された構造体は、上記文献で報告され
る眼様構造体に酷似していた。
【0073】
また、分化誘導12日目において、細胞を回収し、眼の分化マーカー遺伝子であるOt
x2(前脳領域、眼の分化マーカー)、Six3(前脳領域、眼の分化マーカー)、Pa
x6(眼の分化マーカー)、Crystalin(水晶体マーカー)の各マーカー遺伝子
30
の発現を下記の各プライマーセットを用いてリアルタイムPCRにより解析した。
【0074】
Otx2(前脳領域、眼の分化マーカー)用プライマーセット:
GAAAATCAACTTGCCAGAATCCA(配列番号3)
GCGGCACTTAGCTCTTCGAT(配列番号4)
Six3(前脳領域、眼の分化マーカー)用プライマーセット:
CCCTAGATCTCTATTCCTCCCACTTC(配列番号7)
GAAGTAGGGAGCAGTGGTGAGAA(配列番号8)
Pax6 (眼の分化マーカー)用プライマーセット:
GCACCAAAGGGTCATCGC(配列番号11)
TGGGGGGTGGATGGAAG(配列番号12)
Crystalin(水晶体マーカー)用プライマーセット:
TGGCTGCTGGATGCTCTATG(配列番号17)
CCGCGACGCAGGAAGTA(配列番号18)
【0075】
リアルタイムPCRによる各マーカー遺伝子の発現の解析結果を表5に示す。
40
(14)
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【表5】
10
【0076】
表5に示すように、フコイダン添加により、眼の発生マーカー(Otx2,Six3,
Pax6,Crystalin)の発現が促進されることが確認された。
【0077】
以上のように、フコイダンはES細胞から網膜色素上皮や水晶体等を含む眼様構造体へ
の誘導を促進する。
【0078】
(実施例4)フコイダンによる幹細胞(ヒトiPS細胞)の外胚葉系細胞への分化誘導
(1)ヒトiPS細胞の調製
ゼラチンコート処理した60mmシャーレにMMC(mitomycin C)処理済
20
みのMEF細胞をコンフルエントの状態で培養し、その上に解凍したヒトiPS細胞の細
胞塊を播種し、37℃、5%CO2インキュベーターで前培養した。培地はカルディオ社
製のiPSellonに5ng/mLの濃度でbFGFを添加したiPS細胞未分化維持
用培地(以下、「iPS細胞用培地」という)を用いた。
【0079】
上記の方法で培養したiPS細胞をinvitrogen社製のEZPassageを
用いてコロニーを切断し、回収した後、24wellプレートで培養したMMC処理済の
MEF細胞上に再び播種し、iPS細胞用培地からbFGFを除いた培地を用いて培養し
た。その際、フコイダンを100μg/mLの濃度で添加した。
【0080】
30
培養4日後にRNAを回収し、Nanog(未分化マーカー)、Otx2(外胚葉・神
経細胞マーカー)、Sox1(神経細胞マーカー)の各マーカー遺伝子の発現を下記の各
プライマーセットを用いてリアルタイムPCRにより解析した。その結果を表6に示す。
【0081】
Nanog (未分化マーカー)用プライマーセット:
CCTTCCTCCATGGATCTGCTT(配列番号19)
AAGTGGGTTGTTTGCCTTTGG(配列番号20)
Otx2(外胚葉、神経細胞マーカー)用プライマーセット:
TTCACTCGGGCGCAGCTAG(配列番号21)
CCATACCTGCACCCTCGACTC(配列番号22)
40
Sox1(神経細胞マーカー)用プライマーセット:
GGTCAAACGGCCCATGAAC(配列番号23)
TGATCTCCGAGTTGTGCATCTT(配列番号24)
Six3(前脳領域)用プライマーセット:
GTATTCCGCTCCCCCCTAGA(配列番号25)
TGGTGAGAATCGGCGAAGTT(配列番号26)
GAPDH(内部標準)用プライマーセット:
TGCACCACCAACTGCTTAGC(配列番号27)
TCTTCTGGGTGGCAGTGATG(配列番号28)
【0082】
50
(15)
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【表6】
10
【0083】
表6に示されるように、マウスES細胞を用いた場合と同様、Nanogの発現抑制、
Otx2、Sox1、Six3の発現促進が確認された。
【0084】
以上のように、フコイダンはヒトiPS細胞に対しても外胚葉分化誘導促進効果を示す
。
【0085】
(実施例5)
ヒトやマウスの体性幹細胞から神経細胞を分化誘導する系が確立されている(Stem
Cells Dev. 2008 Oct;17(5):909−16.Neuron
20
al differentiation potential of human ad
ipose−derived mesenchymal stem cells. An
ghileri E, Marconi S, Pignatelli A, Cife
lli P, Galie M, Sbarbati A, Krampera M, Belluzzi O, Bonetti B.SourceDepartment o
f Neurological Sciences and Vision, Univ
ersity of Verona, Verona, Italy.)。これらの分化
誘導系にフコイダンを添加したところ、神経細胞への分化が有意に促進され、フコイダン
はES細胞やiPS細胞を用いた場合と同様に、体性幹細胞に対しても外胚葉への分化を
顕著に促進した。
30
【0086】
また、フコイダンの代わりにフコイダンを含有することが知られる植物の抽出物を用い
て実施例1∼5に記載の分化誘導試験を行ったところ、同様に幹細胞から外胚葉系細胞、
眼の構成細胞、神経細胞への分化促進効果を示した。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本願発明の外胚葉系細胞分化誘導剤は、幹細胞から眼の構成細胞や神経細胞等の外胚葉
系細胞を効率的に分化誘導できる。分化誘導された眼様組織や神経細胞は、損傷部位への
移植、人工神経・人工網膜としての利用等、再生医療分野において利用できる。また、白
内障、緑内障、網膜剥離等の眼疾患や神経疾患の根本的治療を目的とした医薬品、医薬部
外品、機能性食品やサプリメント等の飲食品の製造分野において利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】図1は、フコイダンによるES細胞から眼様構造体への分化誘導試験結果を示す
(最上段:フコイダン無添加群の培養12日後の培養シャーレの実体顕微鏡像、上から2
段目:フコイダン無添加群の培養12日後の培養シャーレの光学顕微鏡像(位相差(左)
と明視野(右))、上から3段目:フコイダン添加群の培養12日後の培養シャーレの実
体顕微鏡像、最下段:フコイダン添加群の培養12日後の培養シャーレの光学顕微鏡像(
位相差(左)と明視野(右))。
40
(16)
【図1】
【配列表】
2013252062000001.app
JP 2013-252062 A 2013.12.19
(17)
JP 2013-252062 A 2013.12.19
フロントページの続き
(51)Int.Cl.
FI
テーマコード(参考)
A61P 27/02
(2006.01)
A61P 27/02
4C090
A61P 25/00
(2006.01)
A61P 25/00
C12N 15/09
(2006.01)
C12N 15/00
A
C08B 37/00
(2006.01)
C08B 37/00
H
Fターム(参考) 4C086 AA01 AA02 EA24 MA01 MA04 NA14 ZA01 ZA33
4C090 AA09 BA61 DA23
10
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