Comments
Transcript
Uozumi Children`s Gallery Press 色の3原色と光の3原色
Uozumi Children's Gallery Press ■色の3原色と光の3原色 ◆今回は、少しアカデミックな内容で、色の3原色 と光の3原色のおはなしを…。 ◆色の3原色 色には3原色があります 。「赤・青・黄」です。 この3つの色があれば、白・黒・灰色以外の色をつ くりだすことができます。例えば 、「青×黄=緑」 や「赤×青=紫」のように。小学校での図工では絵 の具を使い始める頃に、この3色の絵の具だけを使 って混色の学習をします。1年生や2年生で「かた つむり」や「お魚」の絵を描くときに色彩豊かに「か たつむりの殻」や「お魚のうろこ」を絵の具で塗り 分けたりして仕上げる作品がそうです。混色体験に よって様々な色がつくられていくことを感覚として 身につけていきます。高学年ぐらいになると、単純 に「青×黄=緑」だけではなくて、その調合の程度 を工夫してさらに色彩豊かに表現できるように挑戦 します。人の顔の「肌色」づくりに四苦八苦しなが らも深みのある表現ができたりしています。どんど ん混色をすすめていくと、どんどんと絵の具は汚く 濁りを増し、やがては黒に近づいていきます。こど もたちが色塗りでつまずいてしまう要因に、この過 度な混色による失敗というのがあります。 ◆光の3原色 光にも3原色があります。色の3原色が「赤・青 ・黄」なのに対して、光の3原色は「赤・青・緑」 です 。この3色であらゆる光の色をつくりだします 。 身近な例が「カラーテレビ」です。今のテレビはス イッチをOFFにすると、瞬時に画面は真っ黒にな りますが、昔の(私が子どもの頃の…)テレビだと スイッチをOFFにしてもなかなか真っ黒にはなり ませんでした。ジワーっと中心に向かって暗くなっ ていき、やがてはテレビの中心に3つの点が残り、 そして消えていきました。その3つの点が「赤・青 ・緑」に輝いていました。この3つの光の各々の光 の強さを調整して瞬時に様々な色をつくりだされる ことがテレビの仕掛けです。光の3原色はそれぞれ を同じように強く光らせ重ねると白色に輝きます。 色の3原色との違いはこの点でも性格が違います。 ◆6年生の 年生の図工作品『 図工作品『かがやく鳥 かがやく鳥、かがやく魚 かがやく魚』 これは6年生が図工の時間に制作した作品のタイ トルです。自分がデザインした鳥(または魚)の姿 が「色彩豊か」に「かがやく」ことがキーワードと なりますが、こどもたちには最後まで種明かしをし ませんから、自分で鉛筆を走らせながらも、その絵 がどうして「色彩豊か」に「かがやく」のか不思議 でしょうがありません。下描きが終わり、第2ステ ージにすすむ時ひとつの謎が解明されます。デザイ ンされた鳥や魚の姿は、白の画用紙から黒のケント 紙へと写します。そのときは筆記具を使わずに、ニ ードル(先が針になっている千枚通しみたいなもの) で一個ずつ穴を空けながら、点(穴)をつなげて線に していきます。黒ケント紙の裏から光がこの穴を通 り抜けて絵が浮かび上がってきます。これが「かが やく」仕掛けです。こどもたちは自分の絵が穴から 通り抜けてくる光によって輝いてくるのですから驚 き、大喜びです。しかしながら、四つ切り大の絵を すべて点だけで表現する(点描画)ために何百個と いう穴をひたすら開け続けるのですから相当の忍耐 が必要となってきます。この辛抱が後の作品完成の 達成感とつながる重要な要素です。 ◆「かがやく」仕掛けが分かり、こどもたちは制作 途中の作品を何回もガラスに押し当てて輝き具合を チェックします。しかし、太陽光だけでは作品は白 色にしか輝きません。蛍光灯にかざしても同じです。 どうすれば「色彩豊かに」かがやくのかがもう一つ の謎です。完成した全員の作品を相互鑑賞します。 そのときに初めてその謎が解明されるわけです。一 人ずつの作品がテレビの画面に重ねられ、作品の絵 を構成している無数の穴からあらゆる色の光が通り 抜けてきます。まさに色彩豊かに輝く鳥や魚の姿に 感動にも似た喜びの声が上がる一瞬です。そしてそ の種明かしによって光の3原色を体感します。白・ 黒・灰色にしか見えない「砂嵐」の画面でも作品を 重ね通してみると小さなひとつひとつの点は「赤・ 青・緑」の点の集合体であることがわかります。 ◆「どうして」という疑問(?)が「なるほど」と いう納得(!)にかわるとき、それが学習の成果と なります。この「?」から「!」に至る道筋がどれ だけ不思議であったり、苦労の連続や楽しい経験で あるかによって学習効果はより高度なものになるも のです 。「光の3原色」をただ知識として注入する のであればインターネットで検索すれば「あっ」と いう間に解決です。でもそれにはなんの体験として の醍醐味は存在しなくて、ただ簡単でお手軽なだけ です。こどもたちには例えば「ものづくり」などの 経験を通して「やっとこさ」たどり着いた上での知 識なり感動が味わえたらいいなと思います。 ギャラリー通信 035号 2008年06月19日発行 発行:明石市立魚住小学校 明石市魚住町清水570番地 TEL:078-918-5760 発行人:河合 健次 Uozumi Children's Gallery Press