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スライド 1
セミナー発表資料
これからのレポート作成実務に求められること
~いかに“統合”を実のあるものにするか~
2013年10月1日
株式会社アイディアシップ / ideaship
後藤 大介
1
本発表の狙いと内容
統合/CSR報告を
より実り多いものとするための
実務的なアプローチ方法を提案する
第1章
第2章
第3章
第4章
第5章
基本を
押さえる
分析する
組み立てる
プロセスを
設計する
説明する
2
はじめに

本発表資料は、株式会社 星和ビジネスリンクが2013年10月1日に開催したセミナー
「最新!CSR/統合レポート作成のための実務セミナー」で発表者が使ったものです(一部加筆修正)。

本発表資料の内容は、発表者個人の見解に基づいています。引用部分以外の内容についての責任は、
発表者が負います。

統合報告のフレームワーク(バージョン1.0)の発行は今年12月に予定されており、現時点では最終的な
内容は未確定ですが、基本線としてほぼ確かだと考えられる内容を中心にご紹介しています。

本発表資料における「国際統合報告<IR>フレームワークコンサルテーション草案」の和文引用箇所は、
日本公認会計士協会がIIRC(国際統合報告評議会)の許可の下で作成・公表したものを参照しています。
(http://www.hp.jicpa.or.jp/specialized_field/post_1681.html)

本資料内では、IIRCが発行している以下の資料については簡略に表記しています。


国際統合報告<IR>フレームワークコンサルテーション草案(2013年7月公表)・・・「コンサルテーション草案」
ディスカッションペーパー「統合報告に向けて -21世紀における価値の伝達-」(2011年9月公表)・・・「ディスカッションペーパー」

本資料におけるGRIガイドライン第4版(G4)の和訳は、発表者が作成したものです。

本発表資料内で紹介している企業事例は、掲載について個別企業の事前了解を得ていませんが、
ベストプラクティスを広めるという趣旨からご理解をいただきたいと考えております。
第1章
第2章
第3章
第4章
第5章
基本を
押さえる
分析する
組み立てる
プロセスを
設計する
説明する
第1章
基本を押さえる
Q. 統合報告とは何なのか?
Q. 統合報告は、誰のために/誰に向けて行うものなのか?
4
[演習1]統合報告とは
あなたは上司に、「統合報告って、一言でいうと何なの?」と聞かれました。あなたなら、どのように答えますか。(1分)
5
統合報告の定義
IR=integrated reporting
〈IR〉は、
組織による、長期的な価値創造に関する
コミュニケーションをもたらすプロセスであり、
定期的な統合報告書という形で最も明示的に表される。
(コンサルテーション草案1.2)
統合報告書は、
組織の外部環境を背景として、
組織の戦略、ガバナンス、実績及び見通しが、
どのように短、中、長期の価値創造につながるかについての
簡潔なコミュニケーションである。
(コンサルテーション草案1.3)
6
“価値創造”を起点とする
統合報告の目的
組織の長期にわたる価値創造能力に強く影響する
あらゆる要因を伝達する組織の報告に関して、
より纏まりのある効率的なアプローチを促す。
また、他の様々な報告を結び付ける。
(コンサルテーション草案1.5)
“価値創造のキー要因を包括する”ことがメインで、
“結び付ける”ことはサブの位置づけ
7
原則主義
原則主義アプローチ
本フレームワークの要求事項は、原則主義によるものであり、
個々の課題又は特定の主要業績指標(KPI)の測定又は開示に
関する規則に焦点を当てるものではない。
したがって、上級経営陣及びガバナンスに責任を負う者は、
どの事象が重要性を有するかを決定するための
総合的な判断を下す必要がある。
(コンサルテーション草案1.13)
統合報告は、実質が全てであり、形式の定めはない
8
提案①
“フレームワークへいかに合わせるか”ではなく、
“フレームワークをどう使うか”を考える
9
想定読者は、株主・投資家+α
統合報告の利用者
統合報告書は、財務資本の提供者に向けて、
その財務資本配分の際の評価に資することを目的として、
作成されるべきである。
報告書の主たる想定利用者は財務資本の提供者であるが、
〈IR〉に基づく統合報告書と他のコミュニケーションは、
従業員、顧客、サプライヤー、ビジネスパートナー、地域社会、
立法者、規制当局、並びに政策立案者を含む
組織の長期にわたる価値創造能力に関心を持つ
全てのステークホルダーにとって有益である。
(コンサルテーション草案1.6、1.7)
10
主体的選択としての統合報告
統合報告には、短期視点が強い金融市場を改革する
“運動”としての側面が色濃くある
現時点で、各社にとって重要な株主・投資家が
統合報告を強く求めているとは限らない
日本企業にとって、義務化の見通しがない現時点では、
統合報告に取り組むかは主体的選択の問題
第1章
第2章
第3章
第4章
第5章
基本を
押さえる
分析する
組み立てる
プロセスを
設計する
説明する
第2章
分析する
Q. 統合報告書に求められる要素は何なのか?
Q. その要素は、どのように用意すればよいのか?
12
統合報告の根幹
イントロダクション
<IR>は、以下の内容についての示唆を提供することを
目的とする:
•
組織に影響を与える外部環境
•
本フレームワークの中で資本として言及されている、
組織が利用し、影響を与える資源及び関係
•
短・中・長期に価値を創造するために、
組織がどのように外部環境及び資本と関わるか
(コンサルテーション草案2.2)
13
キーポイント①
統合報告は、示唆/洞察(insight)を
提供するもの
14
組織(の価値創造能力)に影響を与える外部環境
外部環境として説明すべき内容の例
•
組織のステークホルダーの正当なニーズ、関心及び期待
•
マクロ及びミクロの視点からの経済状況:
経済的安定性、グローバル化、業界動向など
•
市場動向:
競合他社の強みと弱みや顧客ニーズなど
•
技術変化のスピード及び影響
•
社会問題及び変化する社会的期待:
人口及び人口動態の変化、人権、健康、貧困、共有された価値、教育
システムなど
•
環境問題:
気候変動、生態系の毀損、地球資源の制約に伴う資源不足など
•
組織が事業を営む地域における法規制環境
•
組織の戦略実行能力に影響を与え得る、事業地その他の国における
政治環境
(コンサルテーション草案4.9)
15
外部環境に関する記載の例(ベネッセ)
人口の変動と、それに伴う主要市場
(校外学習、介護)における変化の
見通しについて解説している。
(Benesse One Report 2013、p62~63)
16
外部環境に関する記載の例(スキポール空港)
空港および関連事業
を取り巻くトレンドを
10項目にまとめ、戦
略の背景として簡潔
に示している。
(Schipol Group Annual Report 2012、p26~27)
17
組織が利用し、影響を与える資源及び関係(資本) + 関連する基本概念
資本
ビジネスモデル
価値
全ての組織は、成功のために多様な形態の
(財務、製造、知的、人的、社会・関係、自然)
「資本」に依存する
これらの資本は、価値の蓄積であり、
組織のビジネスモデルのインプットとなる
短、中、長期に価値を創造することを目的と
したインプット、事業活動、アウトプット及び
アウトカムについて組織によって選択された
システム
財務資本の提供者への財務リターン、
さらには、他の資本及びステークホルダーへの
ポジティブな影響とネガティブな影響という形で
現れる
(コンサルテーション草案2.12、2.26、2.37)
•
相互に関連する
•
いずれの概念も
従来の/一般的な
語用とは異なる!
18
提案②
自社にあてはめて言葉を整理し、混乱を防止
時には必要最小限の“言い換え”も行う
[言い換えの例]
• 資本 → 資源
• ビジネスモデル → 事業活動の全体像
• 価値 → 影響
19
資本の分類と内容
※この分類にこだわる必要はない
財務資本
製造資本
知的資本
•
•
•
建物
•
設備
•
インフラ
資金
(特許、著作権、ソフトウェア、
各種権利、ライセンスなど)
•
•
•
社員の能力、経験
•
イノベーションへの意欲
•
ガバナンス、危機管理、
倫理的価値への支持
社会・関係資本
•
•
•
組織的資本
(暗黙知、システム、手順、
プロトコルなど)
(道路、港、橋、廃棄物・水
処理工場など)
人的資本
知的資産
ブランド・評判
自然資本
共有された規範、共通の
価値・行動
•
空気、水、土地、鉱物、
森林
主要なステークホルダー
との関係
•
生物多様性、生態系の
健全性
社会的操業許可
(コンサルテーション草案2.17をもとに発表者が整理)
20
[演習2]貴社の資本
貴社の資本(競争力を支える基本要素)を、箇条書きで大まかにあげてください。
時間の余裕がありましたら、各々の重要度、不足状況(5年後までに)、対策の充実度をA~Cの3段階で評価してください。(3分)
資本
重要度
不足状況
対策
留意点
21
キーポイント②
外部環境と資本の分析が、
示唆/洞察の基礎になる
22
皆様にお尋ねします
“今まで、レポートではあまり取り上げて/掘り下げて
こなかったけれども、本当は重要なこと”は、
何かありませんか?
23
研究開発に光を当てる例(大林組)
「技術の大林」としての技術開発の
主要な成果をわかりやすく報告。
(OBAYASHIコーポレートレポート2013、p29~30)
24
研究開発に光を当てる例(オムロン)
研究開発の重点領域を示し、戦略的
焦点と結び付けている。
(統合レポート2013、p62~63)
25
オペレーションに光を当てる例(アングロアメリカン)
強みとしての優れたオペレーションを
戦略的に強化するための多角的な
取り組みを説明。
(Anglo American plc Annual Report 2012、p20~21)
26
基本原則と内容要素
戦略的焦点と将来志向
組織概要と
外部環境
機会とリスク
戦略と
資源配分
ビジネスモデル
実績
※内容要素は、統合報告書に
含まれていればよく、これを
目次項目にする必要はない。
ガバナンス
将来の見通し
重要性と簡潔性
(コンサルテーション草案、p7)
27
ビジネスモデルを示す例(サソール)
バリューチェーンを基礎にインプット、事業活動、
アウトプットを示し、主要なアウトカムに関連する
取り組みも紹介している。
(annual integrated report 30 June 2012、p24~25)
28
ビジネスモデルを示す例(マークス・アンド・スペンサー)
主要な資本、事業活動の鍵となるもの(顧客インサイト)、
アウトプット、販売チャネル・場所を概括的に示しながら、
その基礎に理念的価値とCSR(Plan A)を位置付け。
(Annual report and financial statements 2013、p7)
29
内容要素についての「7つの問い」
組織のビジネスモデルは何か、
またそれはどの程度の
レジリエンスを有するか。
組織は何を行うか、
組織がどのような環境において
事業を営むのか。
組織概要と
外部環境
組織の短、中、長期の
価値創造能力に影響を
及ぼす具体的なリスクと
機会は何か、
また、組織はそれらに
対しどのような取組みを
行っているか。
機会とリスク
ガバナンス
ビジネスモデル
実績
組織は戦略目標をどの程度達成したか、
また、資本への影響に関する
アウトカムは何か。
組織のガバナンス構造は、
どのように組織の短、中、長期の
価値創造能力を担保するのか。
戦略的焦点と将来志向
戦略と
資源配分
組織はどこへ向かおうと
するのか、
また、どのようにそこに
辿り着くのか。
将来の見通し
重要性と簡潔性
組織がその戦略を遂行するに当たり、
どのような課題及び不確実性に遭遇
する可能性が高いか、
そして、結果として生ずるビジネスモデ
ル及び将来の実績への潜在的な影響
はどのようなものか。
30
内容要素の内訳
構成要素
主に想定されている内容
(1)組織概要と
外部環境
•
•
•
•
•
•
•
使命・ビジョン
文化、倫理・価値観
所有・運営形態
主要な活動、市場、製品・サービス
競争環境、市場地位
主要な定量的情報(従業員数、収益、事業を営む国の数など)
組織が価値を創造する能力に影響を及ぼす、法・商業・社会・環境・政治的な環境
(2)ガバナンス
•
•
•
•
•
リーダーシップ構造(多様性、スキルを含む)
戦略的意思決定を行う、組織文化を確立・モニターするなどのプロセス
法的要請を超えるガバナンス慣行
リスク、資本、イノベーションなどのマネジメントのあり方
役員報酬とインセンティブ
(3)機会とリスク
•
•
•
具体的な機会・リスク要因(内部・外部)
機会・リスクの顕在化の可能性と影響度の評価
価値創造/リスク低減・管理の具体的なステップ
(4)戦略と資源配分
•
•
•
•
組織の短・中・長期の戦略目標
目標を達成するための戦略
戦略を実行するための資源配分計画
目標およびアウトカムの測定方法
(5)ビジネスモデル
•
•
•
•
主要なインプット
主要な事業活動 ※差別化要因、販売後の収益、イノベーション、変化への対応
主要なアウトプット
資本に関連する主要なアウトカム
(6)実績
•
•
•
定量的指標
資本に対する影響
ステークホルダーとの関係、関心・期待への対応
(7)将来の見通し
•
•
予測される長期的変化
環境変化による影響と、組織が講じる対策
31
キーポイント③
どの切り口/内容要素から
入ってもよい
☞ どこから入っても、自然と他の内容要素につながっていく
32
[演習3]重要課題の抽出
貴社の将来性を左右する重要な課題には、どのようなことがあると思いますか。
感覚的に、で結構ですので、最大10点まであげてください。(3分)
33
提案③
あまり難しく考えすぎず、
まず着手し、段階的に水準を高めていく
※精緻化の罠に注意
34
CSR/サステナビリティ報告における分析
戦略および分析
組織の持続可能性に関する全般的な戦略的見解を提供し、以後の詳しい報告内容の文脈を提供する
戦略的なトピックに関する示唆/洞察(insight)を示すことが意図されている
G4-1 組織にとっての持続可能性の適合性と
持続可能性に取り組むための戦略に関する
最高意思決定者の声明
G4-2 主要な影響、リスクおよび機会の説明
セクション1
(組織 → 経済・環境・社会)
•
戦略的な優先事項
•
組織の経済・環境・社会への影響とそれに伴う課題・機会
•
組織や持続可能性をめぐる幅広いトレンド
(マクロ経済、政治など)
•
課題・機会の優先度を決めるアプローチ
•
取り組みの進捗と実績
•
取り組みのための主要なプロセス
•
報告期間中の重要な出来事、成功・失敗
•
目標に対する実績についての見解
•
今後の課題・目標に関する展望
セクション2
(持続可能性のトレンド → 組織)
•
持続可能性のトレンドから生じる、組織にとって最も重要なリスク・機会
•
主要なトピックの優先順位付け
(組織の長期的な戦略、市場地位、財務的価値ドライバーへの関連性に従って)
•
目標・実績、得られた教訓、今後の目標(直近および3~5年間)
•
リスク・機会をマネジメントするガバナンス機構
(反映)
(G4ガイドライン第4版 第1部「報告原則と標準開示」〔p24〕をもとに発表者が整理)
第1章
第2章
第3章
第4章
第5章
基本を
押さえる
分析する
組み立てる
プロセスを
設計する
説明する
第3章
組み立てる
Q. 個々の内容要素は、どのようにつなげられるのか?
Q. どのように構成すればいいのか?
Q. 他のツールとの関係は?
36
価値創造ストーリーとしての統合報告
情報の結合性(基本原則)
統合報告書は、包括的な価値創造ストーリーとして、
組織の長期にわたる価値創造能力に重要性を有する構成要素間の
組み合わせ、相互関連性、及び相互依存関係について
示すべきである。
(コンサルテーション草案3.7)
37
統合報告の全体像
変動する外部環境の中で、6つの資本をどのように充実/消費しながら、リスク回避と競争力強化を進め、
自社の短・中・長期的な価値創造(→成長・発展)を実現しようとしているか
(コンサルテーション草案、p11)
38
構成要素間の関連付け(例)
事業戦略とCSRを有機的に関連付ける
昭和シェル石油、クボタ
財務・非財務のパフォーマンス指標を併記
アステラス製薬、三機工業
(ほか多数)
広い視野でリスクを分析し、対応策を示す
オムロン
外部環境を分析し、戦略の説得力を向上
ベネッセHD、ファミリーマート
価値創造プロセスに関する分析を深める
ワコールHD
39
ビジネスモデル・戦略から展開する例①(ワコール)
自社の強みを「研究開発力」
「商品企画・開発力」「生産技
術力」「販売力」に分解し、
各々について(相互の関連
を示しつつ)具体的に説明。
(ワコールホールディングス統合レポート2013、p8~9)
40
ビジネスモデル・戦略から展開する例②(アングロアメリカン)
ビジネスモデルとして、バリューチェーンを基礎に各段
階の取り組みを紹介し、以後の報告内容にリンク。
同じページに、4つの柱による戦略も配置している。
(Anglo American plc Annual Report 2012、p8~9)
41
ビジネスモデル・戦略から展開する例②(アングロアメリカン)
戦略の4つの柱に関連するKPIの定義・説明と
実績・目標を一覧できるようにしている。
(Anglo American plc Annual Report 2012、p12~13)
42
各事業について統合的な分析を示す例(アクゾノーベル)
主要事業が扱う市場と
自社の地位、自社製品、
市場トレンド、関連する
サステナビリティ動向、
今後の戦略・アクション
の方向性について、重
要なデータも示しながら
統合的に説明している。
(AkzoNobel 2012 Report、p11)
戦略とリスクを関連付ける例(スキポール空港)
他の参考事例:
アングロアメリカン2012
アクゾノーベル2012
戦略の4つの柱と、それに関連する主要な
リスクを一覧できるようにしている。
(Schipol Group Annual Report 2012、p30~31)
43
44
戦略とリスクを関連付ける例(スキポール空港)
他の参考事例:
大林組2012
戦略的見地から、自社の強み・弱み、
機会・脅威を示している。
(Schipol Group Annual Report 2012、p32)
45
ストーリー性を強調する例(ダノン)
冒頭の目次ページで冊子全体の
中心テーマ(「70億人を超える消
費者を獲得する」)を簡潔に、魅
力的に打ち出している。
(Danone 2012 - Economic and Social Report、p2~3)
46
ストーリー性を強調する例(ダノン)
5つの主要市場において、
自社製品が暮らしの中で
利用されているシーンを、
丁寧な取材で描いている。
(Danone 2012 - Economic and Social Report、p14~15)
47
ストーリー性を強調する例(ダノン)
主要市場におけるマーケティング・事業戦略と社会性の高い
取り組みを、一つの流れの中で語っている。
(Danone 2012 - Economic and Social Report、p18~19)
48
内容要素の展開
 しっかりと“編集”する
 報告内容の取捨選択はシビアに行う
 複数の主管部門が関わる報告内容/記事も企画する
 重要課題の掘り下げを重視する
 重要課題に関する説明を十分に掘り下げられるようにする
 重要課題が変われば、目次構成も変えるのが自然
 CSR報告書の定型に囚われない
 「CSR」と「CSR以外」との線引きは不要
 「CSR」のカテゴリーがなくてもよい
 「全社/全グループ」ベースでの報告で一貫させる必要もない
→ 主要なビジネスモデルが複数ある場合は、各々(および相互関連)について説明するべき
(コンサルテーション草案4.24~4.26)
 コミュニケーションツール体系の中で考える
 統合報告に求められる役割は「基準点」
 他の媒体に、より詳細な情報や言及できない内容を掲載してよい
49
目次構成のパターン例
事業・CSR並置型
基盤拡張型
事業・CSR合体型
ビジネスモデル起点型
融合型
現在は最も一般的
(例)オムロン
(例)アステラス製薬
(例)ワコールHD
(例)スキポール空港
企業概要
企業概要
企業概要
企業概要
ビジネスモデル
企業概要
ビジネスモデル
パフォーマンス指標
パフォーマンス指標
パフォーマンス指標
パフォーマンス指標
戦略
戦略・事業
戦略・事業
戦略・事業
+
CSR
CSR
基盤
(研究開発、知財、品質、
人財、環境など)
戦略
実績
経営体制/ガバナンス
経営体制/ガバナンス
経営体制/ガバナンス
経営体制/ガバナンス
経営体制/ガバナンス
CSR
財務・非財務データ
財務・非財務データ
財務・非財務データ
財務・非財務データ
財務・非財務データ
50
ツール構成のパターン例
統合報告書
+
統合報告書のみ
統合報告書詳細版
+
ウェブサイト
(例)三機工業
(例)第一三共グループ
統合報告書
+
データブック
(補足資料)
+
ウェブサイト
(例)大成建設
統合報告書
ダイジェスト
統合報告書
統合報告書
+
+
CSR詳細資料
IR詳細資料
+
+
+
CSR報告書
ウェブサイト
ウェブサイト
+
+
統合報告書
ウェブサイト
(例)武田薬品工業
(例)オムロン
(例)マークス・アンド・スペンサー
51
他の報告との関係
レファレンスポイント
“基準点”としての統合報告
他の報告との相互関係
組織は、コンプライアンスを目的として、さらには、
広範なステークホルダーの特定の情報ニーズを満た
すために、追加的な報告書及びコミュニケーション
(例えば、財務諸表と持続可能性報告書)を提供する
場合がある。統合報告書はこれらの他の報告書及び
コミュニケーションへのリンクを含むことがある。
経営者による
説明
統合報告
ガバナンス・
役員報酬
サステナビリティ
報告
財務諸表
(コンサルテーション草案、p15~16)
(ディスカッションペーパー、p6~7)
52
統合報告への道筋
サステナビリティ報告書 + アニュアルレポート
• CSR/サステナビリティ報告書をアニュアルレポートと組み合わせる
※情報の結合性への理解を深めながら、段階的に統合していく
統合報告書を新たに発行
• 簡潔な単体の統合報告書を、義務的に発行している報告類に追加する形で発行
※サステナビリティ報告書を未発行だが、ニーズが高まってきている場合に適する
統合報告
サステナビリティ報告書を改修
• サステナビリティ報告書を、統合報告の基本原則と内容要素に照らし改修する
社内版を試行的に作成
• 経営層向けに、社内版の統合報告を試行的に作成する
(ディスカッションペーパー〔p20〕をもとに発表者が整理)
第1章
第2章
第3章
第4章
第5章
基本を
押さえる
分析する
組み立てる
プロセスを
設計する
説明する
第4章
プロセスを設計する
Q. 統合報告を、どのような段階を踏んで進めるべきか?
参考:
GRIガイドライン
第2版(2002)
統合報告のメリット(報告組織にとって)
パイロットプログラム参加企業を
対象とする調査の結果として、
5つのメリットが見出されている。
54
各部門を
結び付ける
ステークホルダーに
価値をもたらす
内部プロセスの
改善が、事業への
よりより理解を生む
価値創造の促進
経営者が
より明確な焦点と
より高い意識を
持つようになる
自社の戦略と
ビジネスモデルを
よりよく説明できる
ようになる
(Black Sun plc 〔2012〕”Understanding Transformation – Building the Business Case for Integrated Reporting”〔p2~3〕の記述をもとに発表者が整理)
55
キーポイント④
統合/CSR報告がどれほどのメリットを生むかは、
どのようなプロセスを組めるかによる
56
プロセス設計上の留意点
 時間を十分に確保する
 分析を“やっつけ作業”にしないための時間を確保する
 遅れも見越したスケジュールを組む
※報告書の制作を開始する前に行うのもよい
 社内の巻き込み方を工夫する
 経営層への最善のアプローチ方法を計画する
 どの範囲で、どのような形で他部門を巻き込むかは、状況によって判断する
 社内スケジュールと“同期”させる
 社内スケジュールに鑑みて、戦略的に進める
 経営ビジョンや経営計画の策定、リスクマネジメント体制の再構築といったイベントへの“便乗”も
 ステークホルダーの声を把握する
 ステークホルダーの関心・期待を把握・分析する段階を組み込む
 株主・投資家をはじめ、“貴社の将来に関心を持つ人”は読者になりうる
57
提案④
ロードマップを描く
☞ 3年後には、どのような報告を行っているべきか?
☞ どのような段階を踏めば、そこまで辿り着けるか?
☞ ポイントとなる社内外のイベントは?その影響は?
58
[演習4]ロードマップを描いてみる
貴社における報告のロードマップを、試しに描いてみてください。どのような書き方でも結構です。(3分)
報告
↑
社内外のイベント ↑
2013
2014
2015
2016
第1章
第2章
第3章
第4章
第5章
基本を
押さえる
分析する
組み立てる
プロセスを
設計する
説明する
第5章
説明する
Q. 統合報告について、社内にどのように説明するべきか?
60
キーポイント⑤
統合/CSR報告を「いかに説明できるか」によって、
「いかに作るか/作れるか」が決まる
61
“統合”は、報告を経営に近づける
重要なことだが、組織のビジネスモデルを中心に
位置付けた報告枠組みは、本当に大切な事柄
(what really matters)をマネジメントが説明する
ためのよりよい基礎を提供し、報告(reporting)を、
企業を経営するやり方に近づけるのである。
(ディスカッションペーパー、p10)
62
社長が日々考えていること(1/2)
会社というものは、どの会社もいつもつぶれかかっています。いや、毎日毎日
つぶれています。正確に言うと今日突然つぶれることもありますし、昨日も今日も
そしてまた明日も少しずつ少しずつ、部分的に痛んでいってその傷に耐えられなく
なった日に破綻するということもあります。
また別の場合には、会社そのものは傷んでいないのですが、会社の外の様子、
つまり環境が変わってしまって、会社が立ち行かなくなることもあります。
(中略)
ですから、社長は今日も明日も次の日も会社がつぶれることばかりを考えて、
つぶれないように全神経を張り詰め、危険が迫っていないかを確かめながら、
どんな危険(リスク)の因子もこれを取り除いておかなければ安心して寝ることは
できません。
西村英俊(2009)「会社は毎日つぶれている」、p14
63
社長が日々考えていること(2/2)
 財務的に弱いところはどこか
 金融市場の変調に耐え得るのか
 今あるビジネスモデルが誰かに取って代わられないか
 会社のエースに次ぐ第二、第三のエースは育っているか
 当社のビジネスモデルはグローバル市場で十分に闘えるか
 気まぐれなマーケットは変化していないか
 技術の陳腐化は当社のビジネスモデルを否定しないか
 当社は社会的に有用か
 違法性が出る部署はどこか
 今は違法でなくとも社会的な指弾を受ける恐れはないか
(例えばパームやし油は市場で流通する一般的な商品ですが、欧州の動物愛護
運動家の極端な意見がバイオエタノールの安全性の基準に取り入れられてしまうと、
「パームやしの開発で迫害されるオランウータンを守る」ために、パーム油が原料の
エタノールが国際基準によって否定されることになったりします)
 会社内の不届きな人間が会社の評価を傷つけるようなことをして
いないか・・・。
西村英俊(2009)「会社は毎日つぶれている」、p21
64
社長が目指すこと
毎日会社をつぶれる危機から救うのが社長の責任です。その責任は
会社を成長させるという次のレベルへの責任につながっています。
(中略)
社長であるあなたが目指さなければならないのは、長期的、持続的に
成長できる会社の基礎を作って支え続けねばならないということなのです。
具体的に会社を成長させる要素や成長の目標とするところは会社の
理念として定め、中、長期計画として策定します。これらの目標なり行動の
あり方は会社によって千差万別ですが、いずれもグローバル市場における
会社の現在の位置と将来のあり方、地球社会の一員としてまた地域社会
の一員として果たすべき役割を基礎において策定されています。
西村英俊(2009)「会社は毎日つぶれている」、p192
65
事業の目標
事業の存続と繁栄に、直接かつ重大な影響を与えるすべての領域に
おいて、目標が必要である。目標を設定すべき領域は八つある。
マーケティング、イノベーション、生産性、資金と資源、利益、マネジメント
能力、人的資源、社会的責任である。
ピーター・F・ドラッカー(1954)「現代の経営」上巻、p84
(ダイヤモンド社「ドラッカー名著集」②)
66
提案⑤
経営層にも“響く”言葉で語る
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ご清聴ありがとうございました。
[本発表内容についてのお問い合わせ先]
後藤 大介
株式会社アイディアシップ / ideaship
〒266-0005 千葉県千葉市緑区誉田町2-11
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