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自動車試験台上での操縦性安定性試験
第14巻 第6号 197 HUIII川川111UIIII川llMl川11111111川川il川llllllTlllll川ll川ll川ll川lllllr川1111川11川1川11!1川lll川川lllll[llllllll川川Mllllmll川lrlrlrlll川1川川川川lllllll川limhit研 究 速 報 自動車試験台上でのi操縦性安定性試験 Car Control and Stability Test on Chassis Dynamometer 伊 藤 1. 自動車試験台 従来,動力性能・振動乗心地・強度試験等に用いられ 新・梅 沢 晴 二 等の利点が得られる一方 ・路面実走行との近似度がどの程度か という問題が生じる. てきた自動車試験台上で,操縦性安定性試験をも行なう 生研平尾研究室にある試験台に実験車をセットした状 ことがこの研究の目的である.通常,屋外での路上実走 態を第1図に示す.前輪下ドラムは電動機により駆動さ 行により行なわれる操縦性安定性試験2)を試験台上で行 れ,後輪下2軸ローラーは実験車により駆動されて走行 なうことにより, 状態に近似される。この試験台および実験車に装置され ・計測が容易になること ている測定装置ブロック線図を第2図に示す. ・外部影響による因子を単純化できること 路面実走行との近似度については,この試験台では後 輪下仮想走行路面として2軸ローラF−一を用いる ために,試験台の特性として,操縦性安定性に 関係ある車の挙動の一つであるヨーイング(重 心まわり回転運動)に対して第3図に示す通り, かなりの大きさの復元モーメントを有する.こ のことからすれば動的な操縦性安定性試験に対 しては,前後輪ともドラム式が望ましい. この試験台を用いて行なった実験は, 復元モーメント 30 第1図 試験台上での実験車 キャンA“一測定用 20 ゴ0 ホ゜テンショメーダー 6 θ f2 前そ姿輪才黄変位i則定F目 書巻蘇型麦位計 第3図 試験台の特性 ・ロt・一一・リングが車のサイドフォース・モーメントのバ ハンドル繭う則定用 ローダリーポテンショメーダー ランスに及ぼす影響を知る実験 ・操舵系ギヤレシオの適性値を求める実験 目標値記録用 の二種である. ホ゜テンショメーター 2. ローリングの影響3) 左右前輪舵角測定用 ポテンショメーダー 自動車の重量をバネ上とバネ下とに分割して,バネ上 重量のロール軸の運動による影響を考えるとき,タイヤ において生じるサイドフォースの変化を無視すると,全 操舵力測定用 ストL一ンゲージ 体を剛体として考えた場合と大差ないことが数値計算で 示されている4).このタイヤで生ずるサイドフォースの 言E録用12チャンネル 俺磁オンシログラフ 変化は重要で具体的には,ロールに伴うキャンパー角の 変化・後輪ロールステア・前輪操舵系統との干渉による 舵角の変化・左右車輪の分担荷重の変化によるコーナリ 第2図 測定計器ブロック線図 ングパワーの変化のアンバランス等によるものである. t{lllltMIIIIMHIIIHHII川lllllllHlllll]IIII川UlllllllHl川1川llllllllllll川MIIIIII川川llll川llliUlll]IMIIilllMll]lllll川lllllllllll川lllHMililll川il”Mll川11111MIllllill11111111tMIIUIMllllllMlll1川lllllllil川ll川IHIH川lllll川lilllll 23 生 産 研 究 198 研究速報IIUIIHIIIIIIIIIII[llllllllllllllllllllllllllllllllilll[lllil[lllllltllllllilllflll[IMI[111111111illlMllllllllltlllilllrlllllHIIILIiililMlllllitlllllHllltllllllllllllltllllHlllllllllllllillllllllllllllllllHlll”111111t 結局,U一ルにより,車のサイドフォースおよび重心ま 台上で行なえば,アンダー・オーバーステア特性の各成 わりのモーメントの釣合いが変わってくることになる. 分(大別して,前後輪コーナリングパワーおよび重心位 実験は台上走行状態でバネ上重量に外から強制ローリ 置による項と,ロールに伴うヨーイングモーメントのバ ングモーメントを与え,それにより生ずる全サイドフォ ランスに関する項とに分けられる5)).に分けて解析で ースおよび各部の変位を測定し解析した. きることが特長であると思われる。 3,操舵系ギヤレシオの適性値 サイド7オース 60 操舵系ギヤレシオに限らず,ハンドルの重さ・アンダ ー・ 50 Iーバーステアの程度など最終的判断は人間が下さ ねばならない問題が操縦性安定性の分野には多い.今日 40 まで,これらの問題の解決はドライバーのフィーリング 30 このように人間性をも含めて自動車の操縦安定性を検 というあいまいなものによるしかなかった. 討する場合,試験台上の実験では外的条件の単純化が可 20 9)前翰岳亡岸1喪イヒ にS5サイド7t一ス 10 ③ロールステア(後輪) 1:よ5サイドブt一ス 能であり,運転者一自動車系への入力が純粋な形で入っ てくるなど路面実走行ではできないと思われる試験方法 も取りうる. 一例として,操舵系ギヤレシオの問題を取り上げる 1° 2° 3° 4° ロール角 第4図 ロールに伴い生ずるサイドフォース (これはハンドルの重さとも当然つながりがある).い まだ結論を出す段階には至らないが,試験台上で可能な 実験例を第4図に示す.サイドフォースの各成分の値 実験方法およびその結果を示す. は,ポテンショメーターで測定した値をタイヤのデータ 実験車は,操舵歯車比は23(リンク機構をも含めて によりサイドフォースに換算したものである.したがっ 全ギャレシオは26)である.これをサイレントチェー て,これら各成分の和が,測定した全サイドフォースの ンおよびスプロケットを用い歯車比46,23,11.5の 値と一致すれば実験解析の精度が保障されることにな 3種に変えられる装置を設けた.試験台前方に正弦状目 る.この実験例では余り良いとはいえないが,現在要求 標値設定装置を置き,車体に固定した投光機のライトが されている数値の精度は一応満足していると思われる. 前方スクリーンに写るようにして目標値に追従させる. 第4図によれば,各成分ともロe−一・・ル角の一次関数で近 鉱。1.3 似しうる.次に,実験に用いた車では前輪操舵系への干 渉による項がかなりの大きさであることが注目される. 「込 しかし,この項は操舵系の幾何学的構造によってきまる 七ζ 尋ム ’◎ m ものでまだ弾性により打ち消される可能性もある.ロー ルによる重心まわりヨーイングモーメントの釣合の変化 ’ ム 一 ’ 0.1 ∫一 は,この実験車の場合,アンダーステアの傾向である。 以上の実験により,自動車の運動方程式を重心横滑り ・重心まわりの回転運動(ヨーイング)の2自由度の外 に,ロ・一ル軸まわりの運動(ローリング)の自由度が加 わる場合に導入されるロール角の関数となる各項の係数 が実験的に求められたことになる(ただし,左右両輪の 分担荷重の変化が大きくなると,荷重の大きい方でコー @興\一__ θ一〇° −10 \n9 「⊂)、、〉“R \._全、 −20 \ −30° ギヤレシオ11.5 −40 yf一入力 一50 −80 〃6 出力 ナリングパワが非線型変化をするのであらためて考え直 さなければならない). この実験の次の段階として,オーバーまたはアンダー 容 第5図 人間一自動重系の周波数応答 ステア特性を試験台上で測定することを考えてみた.単 第5図は人間一自動車系全体の周波数応答,第6図は に,オーバーまたはアンダステア特性を知るだけならば その場合の誤差絶対値をいずれもギヤレシオをパラメ… 旋回広場での実験の方が正確・簡単かもしれぬが,試験 タとして示してある.この場合,データに相当バラツキ 口II111川11111tl川11川11111111111111tlil[ll]111111LIItllllllllllllllMIIII川IIIIIItllliltll[llll11111111111111LIIIIIIII1腿llilUllllllllllHllHEII闘IIItl闘tllllllllllllll[IIIIIl1111tlllllllll闘llllllllllllllllltllllllllllltlll且1111tlllllllLllllllLllllllllllll田llllll麗鵬 24 第14巻 第6号 199 ImMIIIIIIII1川ll川11MlllltlltllllllllllltllllUltltllllllj川lllllSllNlllllltllltllllllllilllllSlllllllll}lllSlllllttlllmMlttlllllllllltltlllllllllMllllllllllllllllHlllllMlllMISIIIIItllllllll川llllllllllll研 究 速 報 ノ 操舵力梅 2・6 右 / 1.o 1.8 44 蕊、 ● ↓ △ △ .6 4欝 。 ギヤレシオ 捲 o 23 46 .2 ハンド〕 20 10 o .よ゜△ 3吻 右 △ o △ 一 .6 ∫吻 O・2 0.30.40.5α6αδ∼ ● 第6図 人間一自動車系の周波数 誤差絶対値 lo ( \ 第8図 1サイクルのハンドル角操舵力曲線 \ 5 目標値 8 ’、 ^’、)一’\、 、、一ア g耽馴 藷爾 第8図は同一周期・目標値を追求させた大体似た制御 成績を得た場合のハンドル角・操舵力の1サイクルの関 係である.運転者が感じるハンドルの感じ(ハンドルの 重さ・戻り・効き・慣性等)といったものを図式的ある いは数値的にある程度示しうるのではないかと思う. 4. む す び 第7図 運転者の特性 があるため相当数の平均を取っている.またこれらの結 果はいずれも目標値の振幅に対して依存性を持つことが 予想されるゆえ,このデータから結論を下すのは危険で ある. 第7図は,人間特性だけに注目し,入力にスクリーン 上の目標値の位置と車体に取りつけた投光機よりのライ トの位置の差,出力にハンドル角をとるときの両者の関 係を示す.このように入力出力を取る時,人間の動作 は,タイムラグ+比例動作+微分動作であることがいわ れており,しかも微分動作がない状態が人間にとって楽 であるといわれる6).第7図より目標値が変わっても, 試験台上で可能な実験および実験値例を列記したにと どまり解析も不十分なので,いまだ結論を出す段階では ない,次には,他の車に対しても試験を行ない,また各 実験の解析方法をさらに吟味したいと思う. (1962年4月2日受理) 文 献 1)宮本三二,‘‘自動車試験台による性能試験法”生産研究, Vol. 13 No.5(5/61) 2)東工大近藤研究室,‘‘モーターファン”誌 3)R.Eberan and Eberhorat: ‘‘Roll Angles” Auto. Engr.41(1951) 4)菊地英一‘‘自動車の運動性能に及ぼすタイヤ横剛性と車体 のロールの影響”37th.機械学会前刷 だいたい上記の関係が成立することが見られる.十分な 5)L.Sege1:‘‘Reserch in the Fundamentals of Automo. 解析は次にゆずり,この種のデータが容易に得られるこ bile Control and Stability”SAE Trans.65(157) 6)井口雅一.・藤井澄二‘‘模擬自動車による運転者の制御動作 とを示す. の基礎的研究”自動車技術論文集7,ユ960 」llllllllllillMiiiMIUIII川MlllMIIM川llill川iulM・MIII!H川lllMlllllllMllllll”lllllllllllllllll川1111川川ll川ll川IIHIIIIII川1川lllllll川・ll川UlllllMl川H川lll川”lllllMil川IUIIl 111川川川111川【1川lilllll川Hlllllllll川lllM 次 号 予 告 研 究 解 説 電子ビーム雑音パラメーターの測定……………・…・・ 磁気増幅器用磁心における磁束逆転過程について… (7月号) _._ @ .. _. 斎: 藤井本本村 成陽明啓亦 文一雄太夫 @... ._..警 .. 化学反応による自動発振系について……………・…・. ’”°°’ @ ・山 デンプン危機を救った酵素ブドウ糖…………・……… ’ …… ’… ・…中 研 究 速 報 Pb−Sn 合金の不連続析出に及ぼす微量元素の影響 o ・ ○ . ● .● . ●● ● o 曾 .. ・ ● ……… シ川精一 25