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TOPICS 開発研究支援型リアルタイム流体可視化システム
313 日本機械学会誌 2005. 4 Vol. 108 No. 1037 TOPICS 開発研究支援型リアルタイム流体可視化システム ー入力を使う.三次元視点変 1.はじめに 流体運動に関わる製品の研究開発に 更は動画表示の際にも実行で おいて数値流体力学(Computational き,あたかも流体実験を行っ Fluid Dynamics;CFD)の適用は一 ている感覚を得られる.可視 般化しているが,CFDから得られる 化結果からはBMPおよび 速度場や圧力場などの結果を製品開発 AVI形式のファイルを自動作 研究に利用していくには,CFD解析 成でき,Web用の静止画・動 から出力される膨大な数値データと開 画作成が手軽に行える. 発者とのインタフェースをとるための 使いやすい可視化システムが必須であ 3.基本的な流れ場の可視 化の例 る.一般に,流体運動は速度や圧力と FLScopeを使って可視化し いった場の状態が時間的には非定常状 た事例を図2に紹介する.速 態にあり,空間的には複雑な三次元運 度のベクトル表示,圧力・温 動を伴うので,CFDの可視化システ 度などのスカラ量の等値線・等値面表 ムとしては,観測視点を自由に選択し 示,流脈線やパーティクルパスに加え つつ場の様相を三次元的に表示する機 能と,非定常運動のアニメーション表 図1 FLScopeの操作画面の例(2) て,サーフェイスパス・レンダリング ,ボリュームレンダリングといった (1) 示機能が必須である.製品開発研究で 高機能を備えている.CFD解析が稼動 は,解析条件を変更するたびに流体運 しているPCあるいはネットワーク接続 動への影響を調査する作業が多数回反 された別のPC上(SAMBAを介した 復されるので,CFD解析を実行しな Linux上の共有ファイルも可能)でリ がら,随時,リアルタイムに解析結果 アルタイム可視化ができる.FLScope を可視化できる機能が備わっていれば の立上げ,終了はCFD解析の進行状況 条件変更の方針を速やかに検討でき, とは独立に可能であり,CFD解析が進 非常に効果的に製品開発を進めること 行した時点までの時系列データに対し ができる.開発目標を達成した製品を て随時,動画表示ができ,可視化が不 完成した後の販売段階においては,製 要となった時点ではCFD解析のCPU利 品の高性能の根拠をユーザに的確に説 用状況を邪魔することなくCFD解析を 明する上で,Webを介した静止画・動 続行することができる. 画情報の発信が非常に効果的と考えら 4.風車設置用の風況予測への活用 図2 可視化の例(1)(2) 局地的風況予測モデル(RIAM-COMPACT)による 野間岬を過ぎる流れの Large-eddy simulation 図3 風況予測への適用例(3) れるが,そのためにはWeb掲載可能な 風車による自然エネルギー利用の重 ファイル形式での静止画・動画自動作 要性はいうまでもないが,ヨーロッパ 成機能が組み込まれている必要があ などと異なって,日本の地形は起伏が るデジタルデータにも適用できる. る.このような背景から,流体に関わ 激しく,風車の設置を計画している地 CFDや実験解析に基づいた研究成果 る製品開発研究に携わるユーザが開発 域の風況をあらかじめ理論的に予測し がWeb画像として発信され流体研究が 研究用情報から販売情報までをシーム ておくことが賢明である.弊社は風車 さらに発展することが期待される. レスにパーソナルコンピュータ(Per- を設置する地域の風況予測システムを 〔原稿受付 2004年12月5日〕 sonal Computer;PC)上で非常に手 九州大学と共同開発してきた.図3に 〔田辺正孝 (有)流体物理研究所〕 軽な操作で作成できる可視化プログラ 実際の地形へ適用した例(3)を示す. ムFLScopeを開発し(1),商品化した. 5.おわりに 2.FLScopeの概要 (2) 今回開発した先端的な可視化システ FLScopeの機能は弊社ホームページ(2) ムFLScopeは,流体関連の製品開発研 を参照いただきたい.動作環境はWin- 究に携わる会員諸氏にとって非常に強 dows 力なツールとなるものと考えている. PCである.代表的な画面操作 の例を図1に示す.操作はマウスとキ 本システムは風洞などの流体実験によ ― 59 ― ●文 献 (1) Kuzuu, K., Three-dimensional Flow Visualization of Turbulence using High Speed Volume Rendering and Surface Path Rendering. CD-ROM Proceedings of the 3rd Pacific Symposium on Flow Visualization and Image Processing, Maui-USA, (2001). (2) 流体物理研究所 http://www.ifpj.com (3) 内田孝紀 http://www.riam.kyushu-u.ac. jp/windeng/takanori/