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1 - 国際課税における Active income と Passive(Mobile)income の意義

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1 - 国際課税における Active income と Passive(Mobile)income の意義
第 15 回国際課税委員会
平成 20 年 2 月 18 日
(説明用)
報告資料
古賀敬作
国際課税における Active income と Passive(Mobile)income の意義
∼米英の国外所得免税/CFC 税制に係る最近の議論より∼
【もくじ】
1.はじめに(1頁)
2.アメリカ(2頁∼6頁)
3.イギリス(6頁∼12頁)
4.むすび(12頁∼13頁)
1.はじめに
近年にみる米英における国外所得免税移行論の基軸になっているともいえる Active
income 及び Passive(Mobile)income の考えについては、何を以て所得が Active である、若
しくは Passive であるといえるのであろうか、また、このような区別若しくは考えの導入は
意味があることなのであろうか、といったさまざまな疑義が生ずる。たとえば、
z
Passive income の定義付けの出発点としてファイナンス理論を加味する Zoltab
Gerendy は「passive income の広範な経済上の定義は,継続する時間的な関与なし
に得られるキャッシュ・フローである。換言すれば,ホームに居ながらにして、
passive income は、ノン・ストップで生み出される。これは、当該所得の種類の主
たる性質をあらわす非常に簡易な定義ではあるが、租税目的上、さまざまな種類
の passive income を同一視するにはあまりにも広範である」とする1。
z
米国は、Active income 及び Passive(Mobile)income の考えを、その国内租税法に
包摂する(列挙主義)。
z
英国の Active(income)及び Passive・Mobile(income)の考えは、英国財務省と英
国歳入庁が共同で2002年8月に公表した協議文書「法人税改革(Reform of
Corporation Tax)」に、それを一部みることができる2。当該協議文書は、ビジネス
環境の実態を反映するためにスケジュール制度の合理性を検討している。そこで
は、profits の租税に関する定義付けのし方は経済効果に影響するとの認識のもと、
その租税上の定義は事業所得と投資所得とをそれぞれ別個に考えているのだが、
「経済的な意味合いでは投資は『passive』であり得る一方、租税目的上、投資会社、
とりわけ大規模なポートフォリオをおこなう投資会社として扱われる多くの事業
者は、まさに『active』である。経済上の議論は、事業活動と投資活動との取り扱
いの中立性を求める」(パラ 2.6)と言及する。
1 Zoltab Gerendy, The future of source taxation at passive income, TAX TREATY POLICY AND DEVELOPMENT 377 (2005).
2 HM Treasury and Inland Revenue, REFORM OF CORPORATION TAX A consultation document (2002).なお、当協議文書に
ついては、2007 年 12 月にオックス・フォード大学で行われた、
「Taxing Foreign Profits」をテーマにした Winter
Conference での Michael P. Devereux 教授による 2007 年公表の英国の「海外利益課税(taxation of companies’foreign
profits」討議文書に関する報告レポートによりその存在を知った。
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第 15 回国際課税委員会
平成 20 年 2 月 18 日
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古賀敬作
2.アメリカ
(1)議論・背景
諮問委員会の提案
2005年11月公表の連邦租税改革大統領諮問委員会報告書(所得税簡素化プラン)
が提案するテリトリアル税制(国外所得免税)は、米国法人の被支配外国法人(CFC、国外
関連者)及びその国外支店が国外で稼得する所得を、(1)国外所得免除の適用対象とする
「国外事業所得(foreign business income)」と(2)外国税額控除の適用対象とする「可動
性所得(mobile income)」とに分類する3。これらの(1)と(2)とについて,提案されて
いる事項を鳥瞰してみると、以下の表1の通りである。
[表1]
国外事業所得
可動性所得
・CFC(国外関連者)が積極的事業の遂行(the
・受動的(passive)かつ可能性の高い所得
Conduct of an active business)から稼得す
(highly mobile)である。
る所得(それが配当として償還された時)。
・ 外国人的持株会社所得(FPHCI)。
・ 国外支店の所得(国外関連者所得と擬制/
・ 積極的所得であっても,外国の課税管轄区
米国法人が直接,外国の営業又は事業を遂行
において租税を課され得ない所得(人的役務
している)。
提供からの所得,公海・宇宙での稼得所得)4。
・
金融サービス事業者(銀行業・保険業・証券業、 ・ 原産地国及び仕向地国にかかわらず,
ある
等)が積極的事業の遂行から稼得する所得。
国に存する外国法人が関連者から購入する,
又は関連者へ販売する財産の売却に係る所得
5。
・ 外国税額控除の適用において外国の租税
を通算する所得(彼此流用に係る所得)
。
・金融サービス事業者(銀行業・保険業・証券業、
等)が受動的投資活動から稼得する所得。
3
PRESIDENT’S ADVISORY PANEL ON FEDERAL TAX REFORM, SIMPLE, FAIR AND PRO-GROWTH : PROPOSALS
TO FIX AMERICA’S TAX SYSTEM, REPORT OF THE PRESIDENT’S ADVISORY PANEL ON FEDERAL TAX REFORM
239 (2005)[hereinafter as “PRESIDENT’S ADVISORY PANEL REPORT” ]. なお、 2005 年 11 月公表の連邦租税改革大統
領諮問委員会報告書が提案する国外所得免除については、浅妻章如「国外所得免税(又は仕向地主義課税)移行論につ
いてのアメリカ」フィナンシャル・レビュー第 5 号(通巻第 84 号)157 頁(2006)、田近栄治/渡辺智之編著『アジア
投資からみた日本企業の課税』265 頁(2007)
、緒方健太郎「国際的二重課税の排除方式(外国税額控除・国外所得免除)
について」国際税制研究第 19 号 66 頁(2007)を参照。
4 人的役務の提供については、例えば、IRC§954(e)は、技術上、産業上、商業上、学術上その他類似の役務提供が関
連者のために、又は CFC 設立国以外で行われた場合には、外国基地会社役務提供所得を構成する旨を定める。もっとも、
公海・宇宙での稼得所得については、これらの所得はほぼ、外国基地会社海運所得(旧 IRC§954(f))に含まれていたが、
2004 年米国雇用創出促進法(H.R. 4520, 2nd Sess.,§415)により削除された。
5 IRC§954(d)は、CFC がその設立地国以外でその関連者と又は関連者のために行う動産(棚卸資産)の販売からの所
得を外国基地会社販売所得に含める旨を定める。
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古賀敬作
合同租税委員会報告書∼比較を踏まえて∼
2005年1月の合同租税委員会による国外事業所得に係る配当免税に関する提案に
おいては、米国の全世界所得課税主義及び米国租税制度の基本的構造上の特徴の帰結であ
る課税繰延に係る問題点として,国外事業所得の課税の繰延べ、および外国税額控除枠管
理方式(2バスケット方式)のもとでの彼此流用(たとえば、一般的類型所得のバスケッ
トに収まる CFC からの高税率の配当と別のCFCからの低税率の使用料6)を指摘する。合
同租税委員会報告書は,イグゼンプション方式の国(またはそのような国の居住者)との
比較・競争の観点から、現行法のもとでの全世界所得課税主義は米国納税者により有利(彼
此流用の利点)としながらも、他方で、現行法の下でのレパトリエーション又は複雑な課
税繰延の防止準則に基因する潜在的な課税は米国の多国籍企業にとって複雑であり、その
事業計画を歪曲させる、との理由により、配当免税を提案する7。かかる免税制度のもと,
米国法人の海外子会社の国外所得は(1)受動的所得及びその他可動性の高い所得、所謂、
サブパート F 所得か、あるいは(2)これ以外の積極的(可能性の低い)所得、サブパー
ト F 所得以外の所得かのいずれかに入り得るとされる8。上記大統領諮問委員会報告書にお
ける国外所得免除の提案ではサブパートF所得について特に言及していないのだが、可動
性所得に係るその記述をみる限り9、それは合同租税委員会のかかる提案に則したものとも
いえる10。
境界・一般論
これら2つの報告書をみる限り、Active income と Passive(Mobile)income との境界は
さしあたり、サブパート F 所得か否かということに存する、とみてとれる。サブパート F
所得の構成から除外されている所得もあることから、それらを精査していくことが Active
income、あるいは Passive(Mobile)income の境界や定義を見出すひとつの手掛かりとなろ
う。が、より広くは、米国のCFC税制の法的性質も考える必要があろう。この点、たと
えば、米国財務省が2000年11月に公表したCFCに関する報告書では、CFC税制
の策定が果たしてきた重要な役割として、租税回避の防止のほか、課税の公平、経済効果
の促進及び米国多国籍企業の不当・有害な競争の回避があげられている11(金融サービス所
得のサブパートF条項への出し入れ)。
6
STAFF OF JOINT COMM..ON TAX’N, OPTION TO IMPROVE TAX COMPLIANCE AND REFORM TAX
EXPENDITURE, JCS-02-05, 188 (2005)
7 Id.
8 Id., at 189.
9
PRESIDENT’S ADVISORY PANEL, supra note 3, at 239-240.
10 2005 年大統領諮問委員会と 2005 年合同租税委員会報告書との詳細に比較したものとしてさしあたり、Clifon Fleming
Jr. & ROBERT J. Peroni, Exploring the contours of a proposed U.S. exemption (Territorial Tax system), 41 Tax Notes Int’l
217(2006) がある。
11 Office of Tax Policy Department of the Treasury, THE DEFERRAL OF INCOME EARNED THROUGH U.S.
CONTROLLED FOREIGN CORPTIONS 22, 96(2000) [hereinafter as “CFC Report” ].
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(2)現行法
外国税額控除の適用上、現行の内国歳入法典(IRC)は受動的類型所得に含まれる受動
的所得(passive income)について、それを「一切の者が受領する、又は当該者に生ずる、
外国人的持株会社所得の種類の(which is of a kind which would be foreign personal holding
company income)一切の所得を意味する」と定義する(§904 条(d)
(2)
(B)
(ⅰ)
)。IRC は、
当該受動的所得には受動的外国投資会社に係る定めである、内国歳入法典1293条の下
(2)
(B)
(ⅱ))
。この受動的所得に
での総所得に含まれる額も含む、と定める(§904 条(d)
は、上述の外国人的持株会社所得の種類の所得のほか、輸出金融利子及び高率課税所得は
含まれない(§904(d)(2)(B)(ⅲ))。他方、一般的所得類型所得には、金融サービス所得
(§904 条(d)(2)(C))ほか、透視準則(ルックスルー・ルール)のもと、所定の範囲で、
従属外国法人(CFC)の分配所得(配当、利子、賃料及び使用料)、あるいはサブパート F
所得が含まれる(§904 条(d)(3))。
それでは、受動的所得から除かれる所得、あるいは一般的類型所得に所与の要件のも
とで入ってくる所得とは、どのような所得であろうか、換言すれば、その出し入れは如何
なる指標を以って行われているのであろうか。
‹
受動的所得:外国人的持分会社所得からの積極的賃料及び積極的使用料の除外
・「積極的営業又は事業の遂行(Active conduct of trade or business)」基準
(暫定規則§1.904-4T(B)(2))
○外国人的持分会社所得からの積極的賃料及び積極的使用料の除外(サブパート F に
おける適用除外要件)。結局のところ、ここでは、持分比率(関連者・非関連者)には言及
されているものの、「積極的営業又は事業の遂行(Active conduct of trade or business)」の定
義付けはなされていない。
○他方、受動的外国会社についても、その定義について、かかる基準が認識されてい
る(外国法人が積極的営業又は事業の遂行に従事している場合には、受動的外国投資会社に当
たらない12)
。IRS が1988年1月に発遣した、(米国投資家の課税の繰延べのための一つ
のビークルといえる13)受動的外国投資会社ルールに係る Notice 88-22(1988-11 I.R.B. 19)
では、受動的所得をうみだす受動的資産について、「キャッシュに直ちに転換し得るキャッ
シュ及びその他の流動資産(ワーキング・キャピタルとして性質付けられる資産も含む。)
は、受動的所得をうみだす」とする14。
12 Staff of Joint Comm. on Taxation, 99th Cong., Gen. Explanation of the Tax Reform Act of 1986 1023(1987).See also, Diane M.
Sullivan, WHY DOES TAX LAW RESTRICT SHORT-TERM TRADING ACTIVITY FOR ASSET SECURITIZATION?, 17 Va. Tax
Rev.629 (1998).
13 PFIT(受動的外国投資会社)の課税関係については、本庄資『アメリカ法人税法講義』71 頁(2006)参照。
14 See,Kevin M. Cunningham, THE PFIC RULES: THE CASE OF THROWING THE BABY OUT WITH THE BATHWATER, 21 Va.
Tax Rev. 392 (2002).
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○もっとも、当該基準は、現行のサブパートF条項が導入された1962年歳入法に
盛り込まれたのだが、当該サブパートF条項以外にも、この基準は法人分割に係る収益不
認識を定める法条(IRC§904 条)にも存する。また、これに類する基準やこれとは反対の準・
考(Passive activity「受動的活動」)は米国租税法の法条に見受けられる(たとえば、前者に
ついては、米国のソース・ルール(財務省規則§1.864-4(C)(3)「business-activities test」。
後者については、タックス・シェルターに係る利子費用の制限(IRC§904 条)参照)。
⇒
明確な定義は見出し難い。
○MedChem Inc.事件判決15:本件は、プエルト・リコ及び属領源泉所得に係る特別外国
税額控除の要件のひとつである「Active conduct of trade or business」の文言の解釈が争われ
た事案であるが、裁判官の意見では、活動の別個独立性が強調されている。ひとつの要素
⇒ケース・バイ・ケース
‹
一般的類型所得:積極的金融サービス所得の内包
《留意すべき点として、1986 年》
・「主として従事(predominantly engaged)」及び「実質的活動(substantial activity)」基準
(内国歳入法典§954(h)(2)(A))
CFC が U.S.のバンキング・ライセンスを有している場合
Predominantly engaged 基準
CFC の粗所得の 70%以上が非関連者の顧客との貸付・ファイナ
ンス事業から直接稼得されたものである場合
CFC が証券ブローカー又はディラーとして登録されている場合
(内国歳入法典§954(h)(2)(B))
Substantial activity 基準
CFC によるその設立国での所得創出活動(事実と状況に鑑みて判断)
(内国歳入法典§954(h)(3)(C))
かかる事実と状況の判断の要素として、CFC の所在地国に配置されている従業員の数、当該従業
員の経営上の責任の程度、当該従業員が顧客の勧誘やそれへのアドバイス、顧客との交渉、顧客
の信用分、あるいは顧客からの徴収に従事しているか否か、等の判断要素があげられるとされる
(但し、帳簿管理等のバックオフィス機能は、当該要素には含まない) 16 。総じて、かかる
Substantial activity か否かの判断の指標は CFC 所在地国と当該 CFC による銀行業、等の事業との
nexus に求められる17。
15 MedChem Inc. v. Comm'r, 116 T.C. 308 (2001).
16 Megan McLaughlin, Truly a Wolf, or Just a Sheep in Wolf's Clothing? The Active Financing Exception to Subpart F, 21 Va. Tax
Rev. 657(2002).
17 Id, at 658.
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Active income 及び Passive(Mobile)income の考え
z
前述の2000年11月公表の米国財務省報告書では、サービス活動がサブパートF
策定当時に比して、今般の米国経済にとって重要な地位を占めてきているとし、19
97年納税者救済法によりサブパートF所得から除外された金融サービス所得につき、
かかる除外は、「Active」の定義付けを進展させるのに重要であるとする18。なぜなら、
このような金融サービス所得は、通常、受動的所得として扱われるものであるからで
ある19。
z
実際、1986年租税改革法では、金融サービス所得(真正な《bona fide》積極的金融
活動所得をも含む)をサブパートF所得の対象とした。
3.イギリス
(1)討議文書上の位置付け
2007年6月公表討議文書「Taxing of Foreign Profits」20の提案
(提案の枠組み)
討議文書は、英国の内国法人(大中規模の企業)であって、国外に存するその被支配
法人の持分(議決権の有無を問うていない。)を10%以上保有する当該内国法人が当該国
外の被支配法人(Controlled Company)から収受する配当について、国外所得免税を提案する。
この免税適用に当たっては、当該配当の支払者が現行CFC税制に替わる(持分割合につ
いては、現在の25%以から上述の10%以上に軽減する)CCルールの適用対象となる
場合であるとされる(パラ 1.14 及び 3.10)。当該 CC ルールについては、現行CFC税制に
おける
エンタティ・ベース(「すべてか無か」
)から active income と mobile passive income
とを区別することに焦点を当てたインカム・ベースへの制度変更が提案されている(パラ
1.16)。もっとも、当該準則は文言通り、国内外の被支配法人に適用される。
(CCルールの所得分類)
そこで、かかる active income(免税)と mobile passive income(課税)の内容について
みてみると、下記の表2の通りである。CCルールにおける所得分類のし方(手順)につ
いて討議文書は、mobile income に焦点を当て、これを現行CFC税制の適用射程にある所
得(現行CFC税制の適用除外要件の一つである免除事業活動基準(Exemption Activities Test)
18 CFC Report, supra note 11, at 70-71.
19 Id, at 146.
20 HM Treasury and HM Revenue & Customs, TAXATION OF COMPANIES’ FOREIGN
この英国討議文書については、緒方・前掲注 3、67 頁もまた、参照。
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PROFITS discussion document (2007).
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から除かれる事業の類から生ずる所得)であるとしつつ、上述のインカム・ベースのアプロ
ーチのもと、これはより正確に分類されるとし、mobile income の典型である passive income
(投資性所得)とその他の mobile income との2つの所得類型に分類する(パラ 4.19)
(下記
の図表1もまた、参照)
。
前者については、配当、利子及び使用料、等の投資性所得をそこに包含されるのだが、
留意すべき点のひとつとして、CCルール適用回避防止策として、実質的には passive income
である active income22や所得の転換が懸念され得る passive income を生ずる資産売却に係る
キャピタル・ゲインを当該 passive income の類型に包含している点があげられる(パラ 4.21
乃至 4.22)。いまひとつの点として、passive income の適用除外を設けている点があげられる
のだが、たとえば積極的金融所得の除外については、これは米国のサブパートFに類する
ものであるとされる(パラ 4.24)。
他方、後者については、特定の active income、グループ内の所得及び英国源泉の所得が
含まれるとされ、これらは英国から所得を流用するめに利用され得るとされる(パラ 4.19)。
したがって、その適用は外国の被支配法人のみを対象としているといえる23。討議文書は、
通常、CCの passive income は考慮する必要はないのだが、人為的な利益の配置をもたらす
active income(所謂、mobile active income)については、これをCCルールの対象とする必
要がある、という(パラ 4.28)。もっとも、この所得類型には、上述の EAT から除外される
所得が含まれる。とりわけ、英国国内への若しくは英国国外からの配達のための商品取扱
又は関連者への若しくは関連者から(グループ内で)の配達のための商品取扱から稼得す
る販売所得及びグループ内/英国国内において卸売業、小売業、金融サービス業から稼得
される所得が、当該 mobile active income に含まれるとされる(パラ 4.29)。
21 CFC 税制の適用除外要件の一つである免除活事業活動基準について、以下の4つの要件を全て充たした場合に発動さ
れる。CFC が、①その居住者としての領域を有する場合、②当該領域に事業設備を有している場合、③当該領域におい
て効率的な経営を行っている場合、④持株会社の場合を除き《もっとも、持株会社であっても所定の要件(事業施設の
保有、等)を充たせば、除外が認められる場合がる。》
、主たる事業をおこなっている場合(ICTA1988§748(1)(b))
。主
たる事業に係る適用除外については、当該主たる事業が、○
a 投資活動(株式、知的財産の保有、ブルーカー以外の株式
取引、資金課し付け、等を含む。
)でない場合、○
bイギリスから若しくはイギリスへの配達のための商品取扱、又は関連
c 主として卸売業・小売業・金融業に従事している場合
者から若しくは関連者への配達のための商品取扱でない場合、○
には、当該事業からの取引総収入 50%未満が直接又は間接に、関連者から生じている場合ではない場合、等である場合
に当該適用除外は発動される。
22 討議文書は、実質的には passive income である active income の一例として、無形資産の保有から稼得する所得を掲げ
ているのだが、当討議文書が言及する通り、これは EAT のよりカバーされている。
23 See also, Morgan, C. et al., Under control? : taxation of foreign profits, 893 The tax journal 8 (2007).
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【表2】
mobile income
passive income
other mobile income
・配当、利子、保険年金、保険年金、使用料、
・英国国内への若しくは英国国外からの配達のための商
賃料その他これらに類する性質の所得
品取扱又は関連者への若しくは関連者から(グループ内
・キャピタル・ゲイン
で)の配達のための商品取扱から稼得する販売所得及び
・実質的には passive income である active income
グループ内/英国国内において卸売業、小売業、金融サ
(一例として無形資産の保有から生ずる所得)
ービス業から稼得される所得
(passive income から除外される所得)
・真正の積極的なファイナンス事業(銀行業・保険業・
不動産投資事業)から生ずる所得
・グループ内の財務活動から生ずる利子
【図表1】
現行CFC税制適用対象所得
EAT から除外
Yes
No
mobile income
active income
人為的な利益配置の防止を加味
passive income
other mobile income (mobile active income)
米国サブパートF
CCルール回避防止を加味
excluded active income
capital gains ・substantial passive income
traditional passive income
除く
含む
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免税の対象となる配当の射程は?・・・CCの利益からの配当は全て免除の対象か24?
法人税収の推移(単位:£million)(Source:Inland Revenue, National Statistics)
全賦課税
控除外税
支払税
97∼98
38,639
5,979
21,420
98∼99
40,417
6,965
22,304
99∼00
35,998
5,924
26,626
ミキサー・カンパニー/シーリング規制策
00∼01
42,530
9,585
31,280
オンショア・プーリング税制拡充策
01∼02
38,139
9,092
28,267
02∼03
34,758
6,169
28,230
外税控除所得別枠管理方式→彼此流用
(2)背景
Cadbury Schweppes 事件判決25
本件は、英国CFC税制を低税率国であるアイルランド(法人税率10%)に設立さ
れた被支配外国法人(グループ内部の資金調達の事業に従事)に適当することが、EC条
約43条及び48条における開業・設立の自由に違反するか否かが争われた事案である。
ECJは、次の通り判示した。
曰く、「EC条約43条(開業の自由)及び48条(会社の定義)は、他方の加盟国の被支
配外国法人の利得がその支配居住者法人が設立された一方の加盟国において適用され得る課税
より低い割合で当該他方の加盟国において租税に服する場合であっても、当該居住者法人の課税
標準に当該利得を合算すことを排除するものとして解釈されなければならない。ただし、かかる
合算が、通常、支払われる自国の租税を逃れることを意図した、全体として不自然な取り極めに
のみに関する場合は、この限りではない。したがって、問題の課税上の措置(CFC税制の適用)
は、第三者により確証され得る客観的要素に基づき、租税上の動機の存在にかかわらず、被支配
外国法人が受入加盟国に現に、設立され(actually established)、かつ、当該国において真正な経済
活動(genuine economic activities)に従事しているということが立証される場合には、適用されな
い。
」(パラ 75)
24 討議文書では、この点、分明ではないように思われる。実際に、前掲注 2 の Winter Conference におけるグループデ
ィスカッション・ペーパーでは、
「たとえ、低課税国又は非課税国から生ずるものであっても、全ての配当は免税とすべ
きである。利益の還流はイギリス経済の便益に資する。
」との議論が見受けられる。
25 Case C-196/04 ,Cadbury Schweppes Cadbury Schweppes & Cadbury Schweppes Overseas Ltd, OJ C 281 of 18.11.2006, at
p.5. なお、事案を紹介するもとのとして、ケース・ヴァン・デル・ヘルム(講演録)「EUの税務及び最近のEUの判
例」租税研究第 698 号 151 頁(2007)
、川田剛 監修「欧米諸国における主要租税判例紹介 第 65 回」税務事例研究第 40
巻第 1 号 50 頁-52 頁(2008)がある。
-9-
第 15 回国際課税委員会
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[図表 2](参照:川田剛
監修「欧米諸国における主要租税判例紹介」税務事例研究第 40 巻第 1 号 51 頁(2008)
)
CFC 税制は、被支配会社の所在地国の税率が
Cadbury Schweppes plc(CS)
英国
(多国籍企業グループ英国本社)
(法人税率
30%)
英国の税率の75%未満の場合、適用され
る(英国の税率=30%であるため、22.
5%未満の税率の国に所在する CFC に該当。
Cadbury Schweppes Overseas Ltd(CSO)
(留保金額 860 万ポンド《CSTS の利益》)
アイルランド
Cadbury Schweppes Treasury Services(CSTS)
(法人税率
10%)
Cadbury Schweppes Treasury International(CSTI)(課税年度損失)
ファイナンス会社
2007年財政法
2007年6月19日付け2007年財政法(FA)附則 15 第 5 項により追加された
1988 年所得法人税法(ICTA1988)751A条は、Cadbury Schweppes 事件判決において判
示された「実際の設立(actually established)」および「真正な経済活動(genuine economic
activities)」の CFC 適用不可の要件を確認するため、EEA(欧州経済領域)に所在するCF
Cにつき、1)当該領域内にCFCが事業用施設(business establishments)を有しているこ
と、2)当該領域内にCFCのために労務に従事する個人が存すること、等を要件とし、
そのCFC適用の減免を定めている((1)(b)及び(1)(c))。
これら1)及び2)の要件は、ECJにおける「actually established」の要件を反映した
ものになってといえる。この点、ECJは、「
(『actually established』の判断に当たっては、
それは)CFCが建物、従業員及び設備に関して、物理的に存在するという限りにおいて、
第三者が確認し得る客観的な要素に基づ(き、判断される)」と判示している26。
他方、「真正な経済活動(genuine economic activities)」の要件については、国内法にど
のように反映されたのだろうか。751A条 4 項はいま一つのCFC税制適用減免の要件
を定め、本来であれば租税を課されたであろうCFCの課税利得が「正味の経済的価値(Net
Economic Value)」をあらわすものとして合理的に考えられる場合には、歳入庁長官がかか
る減免の適用を認める旨を規定する。NEV とは、CFCが保有する事業用施設において当
該CFCのために労働に従事する個人により直接、創出されるグループ全体の価値・利益
26 Case C-196/04, at para. 67.
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第 15 回国際課税委員会
平成 20 年 2 月 18 日
(説明用)
報告資料
古賀敬作
である(751A 条 5 項乃至 6 項)。751A条に係る草案ガイダンス27をみる限り、英国は、
「真正な経済活動(genuine economic activities)」から生ずるものとして同視し得る利益は個
人の労働により直接、創出される利益として考える28。このような考えの根底には、通常の
労働により創出される利益は当該活動が位置する場所において生ずる一方、資産の保有か
ら生ずる利益は、可動的であり、その所有から派生する、つまり、活動が行われた場所に
必ずしも結びつかない、という考えがある29。
具体例
[Net Economic Value の有無(2007 年 CFC 税制草案ガイダンス)]
説例
有無
(備考)
労働の配置(オペレーション)/・グループ従業員・カス
例 1a タマーの電話サービスの提供/・マネージメント・チーム
有
への指示/・コールセンター設備の設置
労働の配置(グループ内サービス)/・従業員の給与管理
例 1b やその作業のための人員再補充
有
・IT 設備の設置/・マネージメント・チームへの指示
例2
CFC への利益のディベート(グループ内部貸付け)
無
CFC への利益のディベート(CFC への知的財産の配置)/・
例 3a
NEV は、知的財産の法律上の所有から創出さ
無
CFC の従業員による知的財産の管理
れる
CFC への利益のディベート(CFC における所有の設定)/・
例 3b
NEV は、株式持分の法律上の所有から創出さ
無
グループの株式持分を CFC に配置
例4
内部貸付は単なる価値の移転
混合活動
れる
(例1+例2)
△
例1の限りにおいて
財務オペレーションン管理/・市場からの資金調達、グル
例5
有
ープ内の資金調達、リスクヘッジ
キャプティブ保険会社の設立/・CFC 事業所の代理人従業
例6
員による再保険の管理運営、クレーム処理/・UK 親会社
CFC の利益が従業員による再保険に係る管
△
は投資活動を CFC から第三者に外部委託し、アレンジ
りにおいて
基本となる自己資本/・CFC の資本が銀業を営むために要
例7
理運営やクレーム処理の NEV をあらわす限
CFC の従業員により行われるバンキング活
△
請される基本的な自己資本項目(Tier1)を構成
動に限る
27 英国歳入関税庁が公表した 751A 条導入に係るガイダンスは、2006 年 12 月に公表され(「HMRC Draft Guidance
CHANGES TO CONTROLLED FOREIGN COMPANIS RULES」)、その後 2007 年に、この改訂版(「2007 年 CFC 税制草
案ガイダンス」
)が公表されている。
28 英国歳入関税庁「2007 年 CFC 税制草案ガイダンス」4 頁(パラ 19)
(2007)。
29 同上、3 頁‐4 頁(パラ 17)
。
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(説明用)
報告資料
古賀敬作
サプライチェーン/・UK に所在するトレーデング・グル
ープが EEA 加盟国に取引物品の保有、UK の販売に係るイ
ンボイスの発行、UK での販売所得の受領をさせるために
例8
NEV は、従業員による管理、等による利益に
△
CFC を設立/・この CFC は、別の EEA 加盟国にクループ内
限る
部での請負、インボイスの管理、等を行う事業所を設立し、
それらをその従業員に行わせる
・このグループが CFC に位置し、UK での行われる取引活
無
動により創出される売買マージン
事業用施設(business establishments)・NEV の考えとの関係は?
→あるのではないか。
4.むすび∼所論
(ミシガン大学 Avi-Yonah 教授)・・・区別の意味・区別があらわれる局面
~その1∼30
国家間における課税管轄権・所得の配賦のあり方を論じる Avi-Yonah は、国際課税における
Active income と Passive /Mobile income との差異は以下の3つの点にあらわれるという。
1)経済的分析の見地から、active business income は企業の利益に対する課税をしめし、
passive income は企業における投資家間の利益分配に対する課税をしめす。
2)活動行使に係る支配の程度
3)世界の active income は公開企業・多国籍企業により稼得される一方、世界の passive
income は個人、閉鎖法人またはパス・スルー法人によりその大部分が稼得される。
∼その2∼31
また、Avi-Yonah は、国際課税における規範・原則を単一課税主義《クロス・ボーダー取引から稼
得される所得については、1 回かぎりの課税》(Single
Tax principle)と応益主義(Benefits principle)
と考え、かかる主義に基づくクロス・ボーダー取引から稼得される所得の課税管轄区間で
の分け方を議論する。
「active income (ほとんど法人が稼得する所得)と passive income (ほとんど個人が稼得する所得)
との区別・分類は、意味がある。なぜなら、それは単一課税原則と一致するからである。これは、
30 Reuven S. Avi-Yonah, The Structure of International Taxation : A Proposal for Simplification, 74 Tax L. Rev. 1308,1309
(1996).
31 Reuven S. Avi-Yonah, Tax Competition, Tax Arbitrage, and The International Tax Regime, Public Law and Legal Theory
Working Paper Series No.73, at 24
(2007).
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(説明用)
報告資料
古賀敬作
法人税率が(諸国で)収斂する一方、課税管轄区間における税率の格差は個人の所得税率におい
て生じていることみてとれる。(中略−引用者補注)このような格差は単一課税原則の目的上、
許容され得る。なぜならば、応益原則のもと、クロス・ボーダー取引において個人が稼得する所
得は、通常、居住地国課税にのみに服する投資所得であるからである。したがって、居住地国の
税率が投資所得に係る税率のみを決定することは一般的である。」
(ミシガン大学 James Hines 教授)32・・・区別の指標
○ Ownership を指標とする。←active
・ Ownership(所有)の変更は事業の決定・遂行及び生産力向上に対する急進的効果を有
する。
・ 対外直接投資は、新規所有により生産性が高まる可能性がある場所に行われる
(透視準則(ルックスルー・ルール)使用)
(ウェリントン・ビクトリア大学 Kevin Holmes 教授)33・・・区別の効果
・ 事業者・納税者のコンプライアンス・コストを減少させる。
(コメント)
“Generally, the active/passive approach reduces the compliance costs of a business (c.f. a CFC regime)
because businesses that fully satisfy the active business test are totally exempt from the regime and
therefore do not need to account for their foreign sourced income to the tax authority of their resident
state. Under a CFC regime, such income is returned in the home state; thus, the incurrence of compliance
costs. The active/passive approach is particularly effective in reducing taxpayer compliance costs where
the test of an active business tolerates a negligible amount of passive income accompanying the
offshore business income because in most cases the compliance costs of attributing passive income to the
taxpayer in the residence state outweigh the risks to the residence state's tax base arising from incidental
amounts of passive income accumulating in otherwise active offshore activities.”
[了]
32 前掲注 2 の Winter Conference での「Modern Economic Principles the Taxation of Foreign Income 」をテーマと
した James R. Hines Jr.教授の報告レポート。
33 Kevin Holmes, INTERNATIONL
TAX POLICY AND DOUBLE TAX TREATIE 15 (2007).
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