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スタッフ
解凍みかん☆
もづく
スター
みーくん
木塚共笠
スペシャルサンクス
⑨子
吉岡栄一先生
大学院生 唯(仮名)
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フィリピン沖
フィリピン沖
海戦激闘編
10/25(増刊号)
増刊号)
表紙原画担当者コメント
表紙原画担当者コメント:
コメント:⑨子
えーと、
今回はこんな奴に表紙絵描かせて頂きありがとうございます!
とても楽しかったです><
今年度から
今年度から作者名
から作者名が
作者名が実名から
実名から PN に変更されました
変更されました。
されました。
変更後の
変更後の名前については
名前については、
NGN-WEB 会員紹介にて
会員紹介にて
については、NGN確認することができます
確認することができます。
することができます。
「イキマスカ?」
空白の物語 ~alive~
――prologue――
寒風吹きすさぶ病院の屋上。風が煙草の煙と俺の体温を否応なく奪っていく。
「一年……か」
二日ほど前、俺は突然心臓発作を起こして病院に運ばれた。心臓を直接握りつぶさ
れているかと思うほどの激痛だった。病院に運び込まれたころには治っていたが。
念のため、検査入院という形で俺はあらゆる検査を受けた。結果、俺は世界でも発
症例の少ない難病ということがわかった。
『カウントダウン』、それが俺の病名らしい。
最初の発作が発症の証で、それから六ヶ月後に再び激しい発作に見舞われるらしい。
そしてそれから三ヶ月後、二ヶ月後、二週間後、一週間後、と段々発作の間隔が短く
なり、最後には死亡するという。まさに死の『カウントダウン』という訳だ。
この病気は原因も、治療法も、何も見つかっていない。一年以内になんかしらの治
療法が見つからない限り、俺の寿命はあと一年ということらしい。
俺は辟易していた。残りの命があと一年しかないということにではない、――それ
を聞いても何も感じなかった自分に対してだ。
俺はあらゆることに関して執着が薄かった。生きているのは肉体だけで既に魂は腐
り落ちてしまっているかのように。
別に死にたいわけじゃない。だが生きていたい訳でもなかった。“死ぬ”のならばそ
れでもいいと受け入れてすらいた。
唯一、そんな自分が少し嫌だった。
――*――
俺がそのまましばらく紫煙を燻らせていると
「こん、のっ――開けぇっ!!」
屋上の入り口が凄まじい轟音を響かせて開いた。驚いて銜えていた煙草を落として
しまった。もったいない。
俺は新しい煙草を取り出しながら轟音を響かせた犯人に目を向ける。
女の子だった。高校生くらいだろうか、色素の薄い髪を肩辺りまで垂らしている。
陶器のように白い肌と小柄な体躯から華奢な感じを受ける。淡いピンクのパジャマを
着ているし、ここの患者だろうか。
まぁ、とりあえず俺には関係ないと煙草に火を点けようとしたとき、
「ちょっとアンタ何してんのよ」
彼女がこちらに向けて鋭い眼光を放っていた。いつの間にか近づいてきていたよう
だ。
「……煙草吸ってる」
そういうや否や、彼女の手が俺の口から煙草をかっさらった。
「病人が煙草なんか吸っていいと思ってるの? こんなもん“ひもじい時にまずいも
のなし”よ」
……それは空腹のときなら何でも旨いという意味じゃなかったか?
「“百害あって一利なし”じゃないのか?」
「!!」
彼女の顔が紅く染まる。結構恥ずかしかったようだ。
「と、とにかくこんなの吸っちゃダメ。ていっ!」
俺の煙草が歪な放物線を描いて地上へと落下していく。最後の一本だったのに……
「……で、これで満足か」
溜息ひとつ、彼女と再び向き合う。先程は突然の接近に驚いて気付かなかったが顔
の造形も整っている。何より、吸い込まれそうなほど透きとおった瞳がとても綺麗だ。
「もう持ってないわよね」
「……あれが最後の一本だった」
「そう。全く、病人のくせにあんなもの吸って、早死にしたいの?」
早死にも何も。
「俺、あと一年の命だし」
彼女の顔が凍りついた。しまった、気軽に他人に話すことではなかった。
「……からかってるの?」
彼女は唇を噛みしめ、その表情は明らかに怒りに染まっていた。
「ふざけて言っているのなら今すぐアンタをぶっ叩くわよ」
「……からかってなんかない、ふざけてもいない。俺は本当にあと一年の命だ」
彼女の瞳から放たれる殺気が増す。理由はわからないがさらに激昂させてしまった
らしい。
「……なんっで、アンタそんなに他人事みたいに言えるのよ」
「別に死のうが生きようがどうでもいいからな」
売り言葉に買い言葉のようになってしまう。ここでやっと俺は自分が苛ついている
ことに気付く。
・ ・ ・ ・ ・ ・
「どうでもいい
?」
彼女の雰囲気が一変する。両手で俺の胸倉を乱暴に掴み体ごとぶつかってきた。俺
の体が落下防止用のフェンスに叩きつけられる。
「ふざけるな!! 死んでもいいって、アンタ本当にそう思ってんの!? だとしたらアン
タは最低のクズ野郎よ。反吐が出るわ。今生きている人達に向かって土下座して謝ま」
「――うるせぇ」
俺の沸点も超えた。
「てめぇに何がわかる、俺のなにが……」
「私の命もあと一年よ」
時が、凍りつく。呼吸すら忘れる。
「私の命もあと一年。治療法は見つかっていないし、原因もわからないわ」
彼女は先程と違い静かに語る。しかし話す内容と裏腹に彼女の瞳は強い意志を放っ
ている。
「でも、私は生きてみせる。治療法が見つかるまで生き抜く、治療法が見つからない
のなら自分で見つけ出す。なにがなんでも私は生きる」
自分が苛ついていた理由がわかった。
俺は羨ましかった。ここまで生きたい思える彼女に、そこまで生に執着できる彼女
に嫉妬していたのだ。
「だから私の前で軽々しくそんな事を言わないで。ぶっ飛ばすわよ」
彼女はひらりと俺に背を向け去っていく。
『その無茶……お叶えいたしましょうか?』
「!?」「え!?」
俺と彼女は同時に振り向く。視線の先は屋上を囲うフェンスの向こう側、足場が存
・ ・ ・
在しない宙空にソイツは立って
いる。
皺ひとつない燕尾服、純白の蝶ネクタイに白手袋。そして頭にはシルクハットを被
っている。服装だけならば立派な紳士だがこいつは普通では無かった。
まず足場の無い宙に立っていること、そして――、ソイツの頭は羊だった。デフォ
ルメされた着ぐるみなどでは無い。濁った眼をした羊の顔が薄い微笑を浮かべている。
「なんなの、こいつ……」
『申し遅れました。私、“案内人”と申します』
「……案内人?」
ソイツ、“案内人”は、男性の声のようでもあり、女性の声のようでもある、そんな
矛盾した声をしている。
『はい。あなた方を案内すべく参上した次第でございます』
俺達を案内する?
『僭越ながらあなた方の会話を拝聴させていただきました。あなた方は難病を抱えて
らっしゃるとか』
「……だから、なによ」
コ コ
『あなた方のご病気を治す術はこの世界
には存在しないのです』
「……それぐらい知ってるわよ」
そんなことは既に知っている。彼女の病気についてはわからないが、俺に関して言
えば不治の難病である。
『でしたら……、他の世界では?』
「「!?」」
『この世界には無くとも、他の世界にならばあるかもしれませんよ?』
他の世界だと?そんなもんがあるわけ――
『無い、ですか?』
「!!」
『信じられないかもしれませんが、それは大変視界が狭い。広い世の中、何があって
もおかしくはない。今、あなた方の目の前に私がいるように』
確かに、俺の常識の中にこんな奴はいない、明らかに常識を超越している存在だ。
「その世界に行けば……、私は助かるの?」
『それはわかりません。私は文字通り“案内人”。あなた方をその可能性のある世界へ
と案内するだけでございますので』
「……それによるお前のメリットは? 慈善事業とは言わないよな」
羊が笑みを深くする。正直いって不気味でしょうがない。
『私があなた方を案内する理由は――、あなた方の物語を食べさせていただきます』
「は?」
羊が右手を水平に伸ばす。するとそこには一冊の本が握られていた。
『私の主食は物語でして、今まであらゆる書物を食してまいりました』
『貴族と平民の大恋愛、血沸き肉踊る冒険活劇、心の奥底まで冷え切ってしまうかの
ようなホラー。いずれも素晴らしい味でございました』
『しかし、いかんせん。この世にある書物はあらかた食べ尽くしてしまいまして、新
しい味に出会いたいのです』
「それで、私の治療法を見つけるまでの過程の物語を食べるってわけ?」
『そのとおりです。あなた方を案内する世界は今、私が手にしている下地はあれどま
だ空白なこの世界』
羊は俺たちに向けて見えるように本を広げる。ハードカバーのその本は白紙ばかり
だった。表紙と装飾はあれどタイトルも物語も綴られてはいない。
『この本の中、あなた方には生きるための方法を探す旅に出ていただきます。もちろ
ん物語なのですから波乱万丈、あらゆる困難にも立ち向かっていただきます。私も美
味しい物語を食べたいですから』
「……その中で私の生きる方法が見つかるの?」
『それはあなた方次第でございます。私がこの世界に干渉できるのはほんの僅か。エ
ンディングまで決める事は出来ませんし、結末を知ってしまうことほどつまらないこ
とはありません。あくまであなた達の行動次第なのです』
「……」
彼女の瞳は強い意思と疑惑で揺れている。
「戻ってこれるのか、この世界に」
『物語が終わりを迎えれば。それがどんな終わりなのかは私にもわかりませんがね。
ただ一つだけ――』
『あなた方の世界では生きる方法は見つかりません』
「……なんで分かるのよ」
『それはただ“分かる”からとしか言いようがありません。信じるか信じないか、そ
れもあなた方次第です』
「……行くわ」
「!?」
彼女は一歩踏み出す。瞳に既に迷いは無く、決意に満ちている。
「……本気か」
「本気よ、言ったでしょ。何が何でも生き抜くって」
「……」
『あなたはどうしますか?』
羊と彼女、両方の視線が俺に向く。
「俺は……」
俺自身のことは未だによく分からない。特に生きたいともまだ思えなかった。
けどこいつは違う。生きたいという思いに対してまっすぐ突き進んでいる。
「行く」
俺はどうでもいい。だけど彼女は生かしてやりたい。
「……どっちでもいいんじゃなかったの?」
厳しい言葉と違い、その表情はやさしい。
「少しだけ……、考え方が変わったのさ」
俺も彼女に笑顔を返す。久々に笑った気がした。
『では最終確認です』
『イキマスカ?』
「「行く」」
『承りました』
突如、空白の本を中心に突風が吹き荒れる。
タイトル
『これはあなた方の物語です。著者のお名前と、題名
を』
みかみ しんご
「三上
慎吾」
なみわか ゆ か
「波若
結花」
タイトル
『題名
は』
彼女と目が合う。自然と口から零れ落ちた。
「「alive」」
―――――*―――――
~ブタイウラ~
ドモ、人呼んで締切ブレイカー、もづくです。もずくではありません、もづくです(お
約束にしようと目論んでます)。つか今回も締切ブッチギッテしまいました。本当に申
し訳ない。
さて今回のお話ですが、ぶっちゃけ何も考えてません。プロット? 何それ美味し
いの、てな感じです。よって私にもこの物語の終わりがわかりません、正に主人公の
お二人次第ですね。それでは今回はこの辺で
お礼のお礼/スター
ある日、きつねが山で遊んでいると、数枚の紙切れを見つけました。
山では見かけない珍しいものです。きつねは早速物知りのカラスのところへ見せに行
きました。
カラスの巣まできたきつねは大声で
「カラスさーん、いるかーい」
ぴょんぴょん飛び跳ねながら巣に向かって叫び、その声を聞いたカラスはあいよーと
返事をしました。
「ちょっと見て欲しいものがあるんだけど」
「ほぅ、なんだい一体、早速見せてごらん」
例の紙切れをカラスに見せます。
その紙切れを見たカラスは
「こいつぁお札だぜ、しかも一万円札ってやつだ」
と言いました。
しかし、きつねにはなんのことかさっぱりわかりません。
「これはどんなふうに使うんだい?」
「こいつと物とで交換できるって仕組みだ、ま、この山ん中じゃ役立たずの紙切れだ
がな」
「なーんだ、使えないのか」
きつねは肩を落としてがっかりしました。
「ふむ、この時期寒くなってくるからな、よければそれ、くれないか?」
「別にいいよ、あげる」
巣の中にお札を放り込み、その場を去ろうとしましたが、カラスがお礼に綺麗な石を
くれました。
「うわぁ、綺麗。なんて石だい?これ」
「宝石といってな、とても貴重な石だ。俺の宝物だけど、特別にやろう」
きつねは尻尾をぴょこぴょこさせて喜びました。
宝石をもらって上機嫌のきつねは、家への帰り道を急ぎます。
すたこらすたこら
そこへ、土の中からもぐらが話しかけてきました。
「よう、どうしたんだい?そんなに急いで」
「カラスさんから綺麗な石をもらったから家に飾るんだ」
ぴかぴかに光っている石をもぐらに見せました。
「すごい綺麗だな、とても珍しい」
もぐらは宝石に見入ってしまいました。
穴が開くほど見つめてしまい、動かなくなったもぐらを見て
「・・・これ、欲しいのかい?」
「え?いいの?」
もぐらが目を大きく開いてこちらを見つめました。
ぴかぴかぴかぴか
もぐらの目もまるで宝石のように輝いています。
「カラスさんからもらったやつなんだけど、僕よりもぐらさんのほうが大切にしてく
れそうだし、いいよ」
そういってきつねはもぐらに宝石を渡しました。
「ありがとう、そうだ、少し待ってておくれ」
もぐらはぽんっと穴の中に飛び込み、何かを漁りはじめました。
数分待つともぐらは穴からなにかを持って出てきました。
「これ、さっき穴掘ってたら見つけたんだ。君にあげるよ」
もぐらが渡してきたのはひび割れている骨
「うへぇ、なんだいこれ?薄気味悪いのだけど」
きつねは少し引きぎみに言いました。
しかしもぐらは自信満々に
「なに言ってるんだい、これはとても珍しいものなんだぞ」
もぐらはたんたんとこの骨の希少性を説明していたがきつねにはさっぱりわからなか
った。
きつねは最後まで受け取るのを拒否していたがもぐらは受け取ってくれないとこちら
の気がおさまらないと言って無理やり押し付けられてしまった。
奇妙な骨をしぶしぶ持って帰ることになったきつねはとぼとぼ帰り道を歩いている
ときでした。
「おい、きつね。」
ふいに声を掛けられた方向を向くと犬がいました。
「お前何持ってるんだ?なんか珍しいそうなもの持ってるじゃないか」
犬がくんくんときつねの持っている骨に鼻を近づけます。
「これ、もぐらくんからもらったんだ。僕は要らないって言ったんだけどね」
一見ただの古ぼけた骨、しかし犬はその骨に興味を示しました。
「なんだかとても珍しそうな骨だな、いったいどこから拾ってきたのか」
犬はもう骨しか目に入っていません。
きつねは
(どうせいらないし・・・)
と思ったのでこの骨を犬にあげることにしました。
「おお、いいのかい?なんか悪いねぇ」
催促したようで悪い気がした犬は一旦家へとなにかお礼になるものはないか探しに戻
りました。
それから数十分
息を切らせ、犬が走ってきます。
「お礼だ取っときな」
そういって渡してきたのは綺麗なお花でした。
「ここらへんじゃ手に入らない珍しい花だぜ、家の花瓶からちょっくら取ってきてや
ったぜ」
なぜか誇らしげに語ります。
「そんなことして怒られないの?」
大丈夫、大丈夫と犬、きつねは
(ダメじゃないかな・・・)
と思いながらもその花の可憐さに心を奪われました。
「じゃ、じゃあせっかくだしもらおうかな」
花を受け取ると犬と別れ、帰り道に戻りました。
きつねは花をもらって大そう嬉しそうでした。
早速家に飾って見ようと思っていたのですがそこにたぬきが困り顔でやってきました。
「きつねくん、少し困ったことがあるんだが・・・」
困り顔のたぬきは申し訳無さそうに顔色をうかがってきました。
「そんなに焦ってどうしたんだい?」
「実は今日家のじい様のお墓参り行かなきゃ行けないんだけどさ、お花を用意しとく
の忘れてたんだよ、今から隣里まで行って取ってくる時間もないしどうしよう」
頭を抱えて座り込んでしまいました。
きつねはどうしようか迷いました。
(今、この花をあげればたぬきくんは助かるんだろうけど、こんな綺麗な花滅多にお
目にかかれないし・・・、どうしよう)
2 人の間に沈黙が流れました。
2 人がどうしようどうしようと悩んでいるうちに数分の時間が経ちました。
きつねはごくりとつばを飲み込んで
「たぬきくん、よかったらこのお花持って行って」
と、花を差し出しました。
たぬきはその花の美しさに目を奪われました。
「え、これ本当にいいの?こんな綺麗な花、この近くじゃ見たこともないよ」
「いいよ、たぬきくんが困っているのを見過ごせないよ」
ガシっときつねの手を握るたぬき
「ありがとう、この恩は忘れないよ」
そういって花をきつねからもらうと、慌てて走っていきました。
後日
「きつねくん、いるかい?」
たぬきがきつねの家を訪ねてきました。
「どうしたの?」
きつねが家から顔を出すと外にはたくさんの果物が置いてありました。
「なんだい、こんなに果物持ってきて」
きつねは目を疑いました。
「この前のお礼だよ、いっぱい果物が取れたからきつねくんと一緒に食べようと思っ
て」
そのとききつねは清清しい気持ちになりました。
(あぁ、あの時花を渡してあげて本当によかったなぁ、後悔もせず、大事な友達も無
くさなくて)
そのあと、きつねとたぬきは他の動物たちも呼び、楽しく、賑やかに騒ぎましたとな
ここまでのあらすじ:瑞希が上の空であることに気づき、遊びに誘った景と有紀。その帰
り道、瑞希は黄昏に会う。
こいつ☆かっ!
木塚共笠
通算第 4 話:真実と虚像
「どうして…」
瑞希は、驚きが隠せなかった。それもそのはずだ、一日中、目の前にいる人のことを考
えていたのだから、そして、目の前にいる人に思いを伝えるために、蘇ったのだから。
黄昏は、学校の制服に黒の革靴といった、いたって普通の高校生の格好をしていた。
「誰かが後ろを付けてきているのに気づいただけだよ」
そういうと、黄昏は瑞希に歩み寄った。その場は、静まっていた。そのためか、革靴と
アスファルトの接触している音しか聞こえなかった。
瑞希との距離が、大体 3 メートルぐらいのところで、黄昏は止まった。
「君が何を考えているかわからないが、僕に近寄らない方がいいよ」
「何で?」
「だって…」
瑞希だけに聞こえるように、小声で言った。
「えっ!?」
瑞希は、頭が真っ白になった。何を言われたのか良く理解が出来ない状態になっていた。
そのまま、黄昏は瑞希の横を通り路地を出た。
路地を出たところには、有紀と景がいた。
今の様子を見ていた有紀が、声を上げた。
「瑞希に何をした!」
黄昏は、声のしたほうを振り返り、
「何って?」と真顔で言ってきた。
有紀は、怖くなって震えた。
「何って?じゃないでしょ!瑞希があんな状態になったのは、あんたのせいよ!」
黄昏は、場所を考えずに大声で笑った。
「何がおかしいの!?」
ビックリしながらも聞いた。
「いやー、僕のせいかもね」
笑みを浮かべながら、そんなことを言ってのけた。
「わ、わかっているなら、謝ってきなs」
「だけど、僕は僕の使命を全うするのみ、邪魔をするなら、許さない」
有紀がしゃべっているところに割り込んで言った、黄昏。その言葉を聴いた有紀と景は、
もう何も言葉で無い状況となった。そのときだった。
路地の方から、『バタッ』という音が聞こえてきた。そこには、瑞希が倒れこんでいた。
有紀と景は、急いで、瑞希のもとに駆け寄った。
「しっかりして、瑞希!」
「有紀、瑞希の家まで運んだ方が…」
「そうだな」
瑞希は、すぐに起きそうにない状態であった。景は、その辺りを察知して、助言をした。
黄昏は、その様子を不敵な笑みを浮かべ見ていた。そして、一言「憐れだ」と誰にも聞
こえないくらいの声量で言い放った。
何とかして、家まで運んだ。しかし、家には人が居なさそうであった。悪いと思いつつ
も瑞希のカバンを開けて、家の鍵を取り出した。そして、瑞希の部屋まで、連れて行った。
「私、瑞希の家族の人に電話してみるから、ちょっと部屋出るね」
「…うん」
有紀は元気が無かった。運んで疲れたとかでは、無い。
「瑞希の様子を見ててね」
「…うん」
この元気の無さに、景は少し心配になった。
「白雪姫みたいにキスしたら起きるかもよ」
「…うん」
「それじゃ、キスしてみれば」
「…うん」
そこで、我に返った有紀。顔を真っ赤にして、否定し始めた。
「いや、その、あの、えっと~、う~んと、ぼーっとしていたというか何というか…その、
キスしたいとかそういうわけじゃなくて、つまりえ~っと」
景は、その様子をクスクス笑いながら、見ていた。
「有紀、元気出さなきゃいけないでしょ?瑞希が目を覚ましたとき、有紀がそんなんじゃ
心配するでしょ?」
「うん、そうだね」
なんとか、有紀の元気は戻ったように見えた。
数分後、瑞希の家族が帰ってきた。
事情を話すと、母親は瑞希の元に駆け寄った。
家の人も帰ってきたということで、有紀と景は帰ろうとした。すると、瑞希の母は 2 人
を見て、話をし始めた。母親の気持ちを察したかのように、2 人はその場に座った。
「瑞希は、どうして倒れたの?」
あまりにもストレートな言い方に戸惑った 2 人。しかし、ちゃんと説明をしなければと
思い、あったことを全て話した。
「その、瑞希には好きな人がいまして…その人に今日会ったのです。私たちは、路地に入
らず様子を見ていました。すると彼だけがこちらにやってきたのです。そのままわけのわ
からないことを言ってどこかに行ってしまいました。その後、瑞希は倒れてしまいました」
話し終わると、少しの沈黙が続いた。そして、この沈黙の中、母親は口を開けた。
「そう、何があったのかは知らないのね」
そういうと、立って瑞希の方を見た。瑞希の頭を撫でて、2 人にまた質問をした。
「最近、瑞希はどう?」
また、ストレートに質問をしてきた。
「いや~、ホント今日の瑞希は変わってましたよ~」
この空気だというのに、能天気に答えた有紀。それを不謹慎だと思った景は、有紀の足
をつねった。
「いたっ」
「『いたっ』じゃないでしょ、不謹慎でしょ!」
「ごめんなさい」
本当に反省しているようだ。
母親はその様子を見て、『ふふふ』と笑っていた。
「すみません」
とっさに、景は謝った。
「いいのよ、瑞希が死んだわけじゃないんだから」といい終わると、すぐに話を始めた。
「だけど、瑞希は死んでいるのかもしれない」
2 人は、キョトンとした顔を見せて、互いを見た。そして、母親の方へと顔を戻した。
「また、そんなご冗談を」
「そうですよ」
そういわれた母親は、部屋を出た。そして数分後に、部屋に戻ってきた。手には、とて
も厚い本を持っていた。
「この本は、私のおばあちゃんが書いたもの」
そういうと、表紙をパタリと開き、パラパラとめくっていった。
「ここに書いてあるのよ」
指を指した部分を 2 人は覗き込んだ。そこには、驚くべきことが書いてあった。
『第 3 章~死後の世界~ 私は驚くべきことを知った。以前、載せたときに書いた少年
が、私の目の前で死んだ。(中略) 彼は、あるものを持っていた。死後の世界についての
本であった。しかし、中身は真っ黒で、何も書いてなかった。聴くところによると、彼は、
前日から様子が変だったらしい。』
「『様子が変?』って、今の瑞希のようなのかな」
「続きを読んで見なさい」
『私は、彼から冗談のようなことを聴いていた。それは、もうすでに死んでいるとのこ
とだった。私は、彼の冗談かと思いクスリと笑った。しかし、今思うと彼の言っているこ
とを本当だったのではと思っている。理由は、私が彼のことを好きだからというものもあ
るだろうが、彼が持っていた本や前日の不可解な行動が最大の証拠では無かろうか。』
「う~ん、思い過ごしじゃないでしょうか」
「これらを手がかりに私のおばあちゃんは、研究を進めていくの」
そういうと、本を手に持ち、最後のほうのページへめくった。
『あとがき (中略)P.S.私は、彼を助けます。どのように?それは…。』
2 人は、言葉を失った。その追記文は、明らかに自信に満ちている一文だったからである。
「可能性は、あるかもしれませんね」
「もしも、瑞希が『彼』と同じ状況だとしたら、どうすればいいのですか?」
「もしも、同じ状況だったら2人とも『死んでいる』という語を聴いてはダメよ」
2人とも意味を理解できなかった。その様子に気づいた母親は、また本を広げ読み始め
た。
「『彼は、私に『死んでいる』という言葉を言ってきた。何故彼は、そんなことを言えたの
か。もし、誰でも言えるのだとしたら、死後の世界は空想では無く、しっかりした現実像
があるはずである。しかし、現実像は皆無である。ありえる可能性は、彼だけにその権利
を与えられた。または、何かを犠牲にして、私に伝えた、どちらかが最有力候補である。』」
言い終わると、2人の顔を見た。そんな2人の顔は、目を見開いて驚いていた。
「言ってしまったら、『死後の世界』から何らかのお咎めがあると」
景は、母親に尋ねた。察しの通りというようなそぶりを見せた。
「だから、お願い。『そのようなこと』を言いそうになったら、止めてくれない?」
2 人は、迷い無く頷いた。母親はそれを見て、安堵の表情を見せた。
「そしたら、今日はうちに泊まって行くといいわ」
母親の言葉に、あっけらかんとした表情を見せる2人。少し間があってから、有紀が口
を開いた。
「いえ、それはなんというか…その…」
断られると思ったのか、母親は泣き落としに出る。
「ダメ…なの…??」
母親は猫なで声でそんな一言を言った。
「え~っとそんなことも無いような」
「泊まっていけばいいじゃない」
景は、もう逃げられないと悟ったのか、何も口にしなかった。
結局、母親と有紀のこのやり取りは、数回続いた。無論、有紀が負けて泊まることにな
った。
「そしたら先、お風呂に入ってくださいな」
「はい」
有紀が、先にお風呂に入り、景が瑞希のそばに居ることになった。はずだった。
数分後、瑞希の部屋のドアノブが回り、ドアが動き始めた。その瞬間、有紀が入ってきた。
「ね、一緒に入ろう」
「さっきも説明したでしょ」
「何か言ってたっけ?」
景は、呆れ顔をし、有紀は、あっけらかんとしていた。
しかたなく、もう一度説明した。
「だから、もし私たち2人がこの部屋に居なかったらどうなる?」
少し間があってから、有紀は答えた。
「瑞希が1人になってしまう」
「でしょ。瑞希が黄昏を探しに行く可能性はある。それを止められるのは、私たちしかい
ないのよ」
「でも何で止めなきゃいけないの?」
無垢な質問に、景は少し考えた。
「…、何でだろう」
「ほら、問題ないじゃん」
「いやでも、外に出て問題があったりしたら…」
「大丈夫だよ、そんな早く目を覚まさないと思うし」
「いや、それはそれで問題なんだけど」
景は、有紀に連れられて、お風呂場に行った。
つづく
あとがき
すみません、ページ数は余ったのですが、お風呂シーンなんて書いても皆さん
興味ないですよね?
えっ、読みたいですか?では、続きをどうぞ!
読みたくない方は、『こいつかっ!』8 ページ目へ。
[有紀サイド]
私は、景を誘うことに成功した。瑞希倒れてくれてありがとう……っていかん
いかん、そんな不謹慎な考えは捨てねば。
脱衣所まで来て景は、モジモジしていた。
「有紀、やっぱり私瑞希が心配だから」
そういう風にいうことは、お見通しだ。
「いや、ここまで来てしまったんだ一緒に入るしかない」
「有紀怖い!目が変態っぽい」
はっ、しまったつい景のかわいらしい体が拝めると思っていたら、そんな顔に
なっていたとは。
こうなったら、奥の手を使う!
「わ、私一人でお風呂に入れないの」
どうだ、これで景は……
「そう」
へっ?何ですかそのさめた返答は!私を大事に思ってよ!
「景が一緒に入ってくれないのなら、私、景のこと嫌いになるよ!」
これでどうだ。
「しょうがないわね、わかったわよ」
よっしゃ~、景の体触り放題~。
景は、服を脱ぎ始めた。そして、大きな胸や小さめのお尻があらわになった。
とりあえず、拝もう!
「何で手合わせてるの?」
それは、景の体に敬意を表してるのだよ、なんていえない。さすがの景も怒る。
「早くしないと、先に入っちゃうよ?」
私、服脱いでないじゃん!
「待ってよ~景」
脱衣所を抜け、お風呂場に着くとどこかの温泉を思わせるような景色が目の前
に広がっていた。
しかし、私はそんなものに全く興味がなかった。そう、目の前に景の体がある
のだから。
「では、さっそく」
後ろから、文章に出来ないほどすごいことを行った。
…景は、ものすごく怒った。
「有紀、私に何がしたいの?」
「いえ、私はその日々成長している景を見てそして体感しようかと……」
「へぇ、そう?」
それだけを言うと黒いオーラが見えた。
「ひぃ!」
私は、そんな悲鳴を上げることしか出来なかった。だけど、吹っ切れたように
私は、ある言葉を言った。
「女の子同士だから恥しくないもん!」
予想通り、景は久々に切れた。
「女の子同士でも恥ずかしいわよ!!」
「やりたいようにやればいいじゃん」
「私は、そんなことはやりたくないわよ~」
その後、私は景の○○○を見つけ出し、事なきを得た。
その話は、後日。18 斤になりそうだから、出来ないかも。
あとがき
どうも、木塚です。「こいつか」の第 4 話ですが、いかがでしたでしょうか?
私自身、話が急転したので最終回に持ち込みやすくなったなぁと感じています。
おまけっぽいお風呂シーンは、本来カットすべきなんですけど、カットしませ
んでした。というか、したらページ数が 6 と中途半端なので。第 5 話冒頭をと思
ったんですが、場面も全く違うのでそれは出来ませんでした。
ここから、違う作品情報とか。
木塚共笠 3 作目『うららかクライシス』の『嘘つくり』が NGNG10 月号に載
ってます。ぜひ読んでください。こちらは、最初の方が面白いです。
『こいつかっ』は、10 話までに最終回を迎えます。というのも、『うららかク
ライシス』が、連載形式を取れるものになりそうなので、さっさと『こいつか』
を終わらせたいな~、というのもありますし、『こいつか』をこのままやると何
年かかるのかわからないので、このまま終焉を迎えるべきかな~と。
木塚共笠新ストーリー発足。いや、まだわからないけどね。タイトルは『RETU
ЯИ-リターン-』。うん、これないかもな。
ということで、こんな駄文をお見せしてすみませんでした。
※このチラシはフィクションです。実際に「NGN48」プロジェクトは存在しません。多分。
NGN 会員が
会員が選ぶオススメ小説紹介
オススメ小説紹介
注文の
注文の多い料理店 (新潮文庫
(新潮文庫)
新潮文庫) 宮沢 賢治 (著
(著)
今回は他の小説を紹介する予定でしたが今
回私が書いた小説を書くきっかけになった
こちらをご紹介したいと思います。
こちらの作品は注文の多い料理店というタ
イトルになっていますが実際のところ宮沢
賢治短編集のようなもので何本かの宮沢作
品が載っています。
一話一話の量がそれほど多くなく、小説は途
中で飽きてしまう人にもオススメできるも
のになっています。
タイトルの注文の多い料理店を知っておら
れるかたは数多くいらっしゃいますでしょ
うが、それ以外にも中々冗談のきいた作品が
あり、通勤、通学の最中に読むには最適だと
思います。(コメント:スター)
ひとひら (アクションコミックス
(アクションコミックス)
アクションコミックス) 桐原 いづみ (著
(著)
この物語は、緊張すると声が出なくなるほどの極
度の上がり症の持ち主の浅井麦が、
ひょんなことから演劇をすることになる。
口癖は、『無理です』というもので、超ネガティブ
思考の持ち主である。
彼女は、違う自分に出会うことが出来るのか!?
私は、このひとひらという漫画に出会い感銘を受
けた。
自分に自信がなくても人が後押ししてくれれば出
来ないことなんて無いんだなと。
なりたい自分になるのに怖がってはいけない。も
し、怖がっている人を見つけたのなら、
少しでも手助けできるようになるべきでは無いだ
ろうか?と思わせてくれた。
上がり症の彼女が、どのような演劇活動をするの
か気になるのなら読むべきです。
そして、自分に自信が無くネガティブ思考だとい
う方も読むべきです。
そうは言っても重いストーリー展開はしておりま
せんので、軽い気持ちで読んで見てもいいのでは
ないでしょうか?
最後に一言、きっかけさえあれば、人は変われる!
以上!! (コメント: 木塚共笠)
NGNG フィリピン沖海戦激闘編
2008/10/24 第 1 刷発行
木塚共笠
著者:もづく、スター、
発行所:NGN
千葉県千葉市若葉区御成台4-1
編集:解凍みかん☆
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