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東京大学フューチャーファカルティプログラムに関する オブザーバーから

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東京大学フューチャーファカルティプログラムに関する オブザーバーから
2013/08/01
東京大学フューチャーファカルティプログラムに関する
オブザーバーからのフィードバック
大学総合教育研究センター 栗田佳代子
はじめに
東京大学フューチャーファカルティプログラムは,大学教員を目指す大学院生を対象に教
育への意識を高め,実践的な力を身につけるために開設されました.2013 年度夏学期には,
51 名の学生が全プログラムを修了し,履修証を手にしました.
初年度初回であった 2013 年度夏学期は,第三者の視点からプログラムを評価いただくこと
を目的として 3 人のオブザーバーをお招きしました.東京工業大学の室田先生は,東京大
学と同じく未来の大学教員を育てる国立大学の立場から,芝浦工業大学の榊原先生は,東
京大学を巣立つ大学院生を大学教員として迎え入れていただく大学の立場から,社会科学
研究所の荒見先生には,学内の特任助教の視点から,それぞれプログラムの全日程にご参
加いただきました.授業ごとの口頭による逐次フィードバックの他,プログラム終了時の 7
月中旬から下旬にかけて,フィードバックをお願いしました.終了時フィードバックの質
問項目は下記 5 項目です.それぞれについて自由記述をお願いしています.
末尾となりましたが,ご多忙の中オブザーバーとしてご協力いただきました室田先生,榊
原先生,荒見先生ありがとうございました.本プログラムの今後の方向性を考える上で非
常に有意義かつ貴重なご意見を賜りました.心より感謝申し上げます.
質問項目
1. 本プログラムの内容,進行など総合的にみていかがでしたでしょうか.
2. 改善したら良い点について教えていただけますでしょうか.
3. 本プログラムの発展の方向性についてアドバイスをいただけますでしょうか.
4. ご所属の大学との連携可能性についてはどのようにお考えでしょうか.
5. e コンテンツ化(内容,運用など)についてのご意見をお聞かせいただけるでしょう
か.
2013 年度夏学期フューチャーファカルティプログラムオブザーバーの先生方
東京工業大学 室田真男教授
芝浦工業大学 榊原暢久教授
東京大学社会科学研究所 荒見玲子助教
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オブザーバーからのフィードバック
1. 本プログラムの内容,進行など総合的にみていかがでしたでしょうか.
(室田先生)
当初から高い期待をもちオブザーバとして参加させて頂きましたが,期待していた以上の内
容のプログラムでした.構成,運用,小道具など,細部までとてもよく考えられており,非常
に勉強になりました.学生の質の高さが相乗効果となり,一体感がある理想に近い授業をされ
ていたと思います.
2 単位の授業という限られた時間のなかで,大学教員向けの授業力を総合的に上げるというの
はとても難しいと思いますが,アクティブラーニングという実践形態をとりながら,基本であ
る講義形式の授業を行うための重要な要素を履修させるというハイブリッド型授業には感心さ
せられました.
(榊原先生)
東大の FFP の出発点として素晴らしいプログラムだったと思う。
以下は、具体的な良い点である:
【1回目:ガイダンス,学生の主体的な学び】受講生にとって 3 限の自己紹介ビデオを見るこ
とは、自分がどのように学生から見えているのかを知ることができ、この後の講義を受講して
いく上での良い動機づけになっていた。この導入を経た後の 4 限の内容(motivation)だった
ので、
(狭い意味での授業デザイン以前の)何気ないことが、学生の学びの促進に少なからず関
与することを、受講生は納得することができたのではないだろうか。
【2回目:アクティブ・ラーニング,大規模一斉授業】「大人数講義」についての実態を知り、
FAQ を作成したことは、現場に出たとき、受講生にとってかけがえのない財産になる。また、授
業デザインを現実味を帯びて捉えることができたのではないだろうか。
【3回目:シラバスに関する理解と作成】受講生は模擬授業のシラバスを事前に作成してきて
おり、自分の問題として今回の授業内容を捉えることができており、この授業の 1~2 回目から
の流れがうまくデザインされていたと思う。
【4回目:学習評価の重要性,授業デザイン(1)】ルーブリック評価表の作成は、教育経験の長
い教員にとっても最初は厄介な仕事だが、博士課程在学中に評価表作成を経験したことは意義
深い。また、到達目標についての評価方法等の設定から授業デザインを始めるという点も、彼
らにとっては貴重な経験であり、このプログラムの非常に優れている点だと感じた。
【5回目:授業デザイン(2),マイクロティーチングの準備】マイクロティーチングによる模擬
授業の条件設定(各自が別々のコンテンツを作成し、別々に模擬授業を実施するのではなく、
グループごとに統一感をもたせたコンテンツをデザインし、その枠組みの中で模擬授業をして
みる)が与えられた。教員(の専門)に依存したコンテンツではなく、育成する学生像に依拠
したコンテンツによって構築される、という制約条件の中でも、良質のコンテンツを提供でき
ることがこれからの教員には求められており、その意味でとても意義深いと感じた。
【6~7回目:マイクロティーチング演習】内容がバラエティーに富んで興味深く、彼ら/彼
女らのこの学期を通しての学び・熱意がしっかりと伝わる講義だったと思う。授業後にグルー
プ模擬授業のコメントがまとめられ、共有されている点は、受講生にとって大きな財産となる
に違いない。このプログラム全体を通しても、的確で迅速なフィードバックが与えられており、
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担当教員の多大な労力と熱意が感じられた。
(荒見先生)
総合的にもとても良いプログラムだったと思います。すべてが非常によく練られていて、単
なる授業方法の学習以上に、進行面で先生方の意図や細かな心遣いやスキルがよくわかり、一
瞬一瞬大変勉強になりましたし、モチベーションがあがるように作られていたと思います。ま
た、院生にとっても、普段接しない仲間との共同作業やプレンゼンテーションスキルの向上に
もつながったと思うので、各院生の研究能力にも良い波及効果があるのではないでしょうか。
2. 改善したら良い点について教えていただけますでしょうか.
(室田先生)
以下に,何点か書かせて頂きますが,単位を増やすなど,授業時間数を増やさなければ難しい
ものも含まれています.ご容赦下さい.
 受講者(大学院生)は,教員が持つべき知識や技能をほとんど学んできていないと思うので,
TPACK などのフレームワークを紹介しながら,教員が持つべき知識の全体像を示していくの
も良いと思います.あるいは,学習や授業方法を考える上で,様々な工夫は,行動主義的,
認知主義的,
(社会)構成主義的に分類できるなどの大枠も有効かもしれません.受講者のレ
ベルが高いので,学んだスキルや知識の位置づけが分かると,さらにオリジナルな工夫を進
めていくベースになると思います.
 大学の専門の授業では専門知識を教えることが最も重要ですが,学士力ではないですが,21
世紀型スキルも会わせて伸ばすことも求められるようになると思います.実践までは難しい
と思いますが,最新動向の紹介等があるとよりよいと思います.
 現状でも ICT 機器や環境を効果的に活用されていると思いますが,どちらかというと教える
側の活用に留まっていたと思います.受講生が自分の授業のなかでどの様に ICT 機器を活用
したら良いかについて問いかけ,考えさせる機会があるとさらに良いと思いました.例えば,
受講者が作った自分の専門に関する模擬授業実践を行うことはできませんでしたが,それを
各自にビデオ化してもらい,反転授業形式で,グループ内で相互評価するというのも良い方
法かと思います.
(榊原先生)
 1回目の 2 コマ分は内容が多かったので、プレワークショップを VOD 視聴に切り替えるなど
して、3コマで実施するという方法もある。
 マイクロティーチングの留意点については経験を積むとともに改善していくと思うが、各自
が話す題材が何かは本質的ではないとしたら、学生からのフィードバックもそれ以外に焦点
をあてても良い。
(荒見先生)
いずれも強いて言えば、という程度のお話ですが・・・
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・ 中堅大学の入門講座というレベル設定について、プレワークショップなどで、何らかの形で、
実体的に感覚をつかむチャンスがあったらよいと思う。学生の姿勢や理解度や興味関心とい
ったものがどの程度か、研究大学とそうでない大学が求められるものがどのように違うのか、
等は耳で聞いても実際は自分の経験に即して判断しがちなので、知らず知らずに基準が高く
なっている可能性がある。授業の最初に、うまくいかない教員の事例のペーパーを読んだが、
実感を持って体感できると、教えられている内容についてより吸収できると考える。
・ 東大(できれば他の大学のほうがいいかとは思うが)の 1 年生などに授業をしてみる体験実
習的なものがあるとよいと思う。
・ 担当教員の属人的な高い能力にも依存しているような気がしたので、今の雰囲気を壊さない
ようにしつつ、同じとは言わないまでも同等の FFP を提供できる人を複数そろえるか、複数
まわすことが可能なオペレーション(FFP 講座の卒業生などの TA などの有効活用)を考え
るとより多くの人にプログラムを提供できるのではないか。
・ また全体的に時間が不足気味なので、単位数も増やして時間も増やすのはどうだろうか。も
しくは、スライドで提供している知識的な部分を予習にするなどして、フィードバックやデ
ィスカッションの時間、ワークの時間を増やすのがよいのではないか。そうすると自然と複
数のワークのやり方などを体験することができメリットデメリットがわかると思う。
・ しいて言えば日程が変則的で若干大変だった。マイクロティーチングの回以外は毎週 1 コマ
または集中講義の形態も検討してもよいかもしれない。
3. 本プログラムの発展の方向性についてアドバイスをいただけますでしょうか.
(室田先生)
 本プログラムの修了生のコミュニティーを維持・発展するのが,とても大事かと思います.
貴重な財産になっていくと思います.
 上記とも関連しますが,受講生が実施に他大で授業を行ったときのシラバス,指導案など,
運用側の負担にならない程度で Web ページ等に共有できると良いと思います.悩み相談等も
含めて.
 上記の様な情報を含めて,受講生がティーチングポートフォリオとして,就職活動として活
用できると良いと思います.
 今回,佐藤先生にシラバスの回を依頼されたことはとても良かったと思います.ファカルテ
ィディベロッパーネットワークを作り,様々な機関からの教員がそれぞれの得意分野で様々
な大学で話をするという分担ができると,質を維持しつつプログラム拡大に対応できるかと
思います.
(榊原先生)
改訂を重ねながら、主たる研究大学で実施する FFP の標準化を目指してほしい。また、将来
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的には、各大学で実施している FD プログラムとの互換性も視野に入れて頂けないだろうか。
(荒見先生)
・ 院生やポスドク・兼任講師レベルの需要は非常に多いと感じる。それぞれのレベルに応じて
うまく内容を分けて多様な層に提供できるプログラムになるとよい。かなりのリソースが必
要にはなるが、長期的には、大学教員を目指す院生が、選択必修でとるようになる、といっ
た形を目指していけるといいのではないか。今回も示していたように授業をよりよくし、学
習を学生に主体的に行わせるという姿勢や技術が、就職活動によい、という点と、就職した
後も、授業準備を効率的に進めることができる、学際的な交流ができる点、プレゼンテーシ
ョンスキルの向上にもなる、東大教員自身の指導負担やばらつきが減るといったメリットを
うまく全学で伝えると、各研究科の中で必修にしたり、ということが可能になるのではない
か。
・ 2 でも書いたが、実際、東大(できれば他の大学のほうがいいかとは思うが)の 1 年生など
に授業をしてみる体験実習的なものがあるとよいと思う。
・ 榊原先生も最後の授業の日おっしゃっていたが、着任した時に同じ大学の人に授業の悩みは
相談しにくいと思うので、プログラムが相談の場のプラットフォームになるとよいと思う。
卒業生が複数できると可能だと思います。
4. ご所属の大学との連携可能性についてはどのようにお考えでしょうか.
(室田先生)
東工大はまだ何もできていないのでなにも言える立場ではありませんが,東工大でも同様のプ
ログラムを実施したいと考えています.地理的にもそれほど遠くないですし,その際には,何
らかの形で連携できれば幸いです.ただし,東工大側からのメリットはたくさん想像できます
が,東大へどの様な貢献ができるかどうか不安ではあります.
(榊原先生)
高等教育機関に就職する本学の博士課程学生の絶対数が少ないので、直接的な連携は考えづ
らい。新任教員研修での連携や、本学の FDer が貴学プログラムの実施に側面から協力するとい
うのが現実的かと思う。
(荒見先生)
今のところ就職先が確定していないのでまだ何とも言えません。。。が、機会ができれば、何
らかの形で連携できれば幸いです。
5. e コンテンツ化(内容,運用など)についてのご意見をお聞かせいただけるでし
ょうか.
(室田先生)
 前 述 し ました が , 高等教 育 は 世界的 に ICT 活 用 の 流 れが急 激 に 進んで い ま すので ,
face-to-face 授業を基本にしつつ,e コンテンツ化について学生と共に考え,実践していく
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というハイブリット授業ができたら良いと思います.授業のコマ数を増やさなければなりま
せんが.
 この授業自体を e コンテンツ化することは賛成しませんが,補完知識を学べるというコンテ
ンツを充実するのであれば有効かと思います.
(榊原先生)
受講生間の協働によって得るものが非常に多いプログラムだと思うので、現状の運用が良い
のではないだろうか。
(荒見先生)
・ HP も充実していて、運用もよいと思います。
「FD を探す」という事例のページなどは充実し
ていてよいと思います。しいて言えば、字がちょっと小さいように思うのですが私のパソコ
ンの設定の問題でしょうか・・・?
・ 講義資料については、しいて言えば、第何回の授業か、ということと、内容が題目から一瞬
でわかるとより便利になると思います。
・ 授業のワークの感想やわからなかったことを議論するような掲示板的なものもあると、議論
がまた進んだりするかもしれません。
おわりに
オブザーバーの先生方にはご多忙のところ全日程にご参加いただきました.ときに,それぞれ
のご経験をお話いただいたり,学生のワークに積極的に参加するなど,授業にも多大なご協力
を賜りました.今年度スタートしたばかりのプログラムに対し,一定の評価をいただけたこと
は,授業担当者にとりまして大変に心強いものです.また,同時に今後のプログラムのあり方
についてのアドバイスもいただいておりますので,それらをもとに更なるプログラムの充実を
はかりたいと思っております.
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