養護教諭の専門性を活用した集団保健指導の学習環境デザイン

学生発表会
養護教諭の専門性を活用した集団保健指導の学習環境デザイン
教育デザインコース　心理学領域
岡本　弥生
１. 問題と目的
養護教諭の主な役割の一つに保健教育が挙げられる（中
央教育審議会答申 , 2008）
。現在、特に高等学校において
度以降も実施可能な保健教育の型の確立、といった養護
教諭独自の視点と立場を活かした保健指導の特徴を見出
すことができた。
は、この役割について積極的ではない現状がある（日本学
校保健学会，2012）
。このことの背景には様々な要因があ
ると考えられるが、時代とともに大きく変化してきた養護
教諭の職務とその専門性を養護教諭自らが自覚し、保健教
育を充実させるという積極性を持つことが必要であると考
える。本研究では、
「養護教諭の専門性」を『養護に関わ
る専門的知識技能をもとに、心身の健康という観点から児
童生徒のケアと支援という教育活動を 関係者と共に積極
図 1. 事前打ち合わせメールからみた打ち合わせの構造
的に実践する資質』と定義する。本研究は、これまで筆者
が実践してきた保健教育（集団保健指導）の記録を分析す
ることで、養護教諭の専門性が授業作りにどう活かされる
かについて検討し、養護教諭が積極的に保健教育を実践し
ていく価値を見出すことを目的とした。
２. 方法
神奈川県立 A 高校において 1 年生を対象に、同校養護
教諭と外部講師（筆者）の共同による性に関する指導講
図 2. 事前打ち合わせメールからみた打ち合わせの流れ
話（集団保健指導）が実施された。本実践研究では、A
高校養護教諭と外部講師及びアドバイザーによる実践前
の打ち合わせメールと実践後の振り返りビデオの逐語録
２点を研究対象とし、それぞれを KJ 法により分析した。
３. 結果と考察
KJ 法によるカテゴリの分類を行った結果、打ち合わ
せメールは 9 のカテゴリに、振り返りビデオの逐語録
図 3. 振り返りビデオの逐語録からみた振り返りの構造
は 8 のカテゴリに分けられた。
事前打ち合わせメール、振り返りビデオの逐語録それぞ
れを分類したカテゴリから、図 1、図 3 のような構造が示
され、
図 2、
図 4 のようにその流れを整理することが出来た。
本実践からは、1）生徒の課題や特徴、学校体制の把握、
2）生徒に必要かつ興味・関心を持てる教育内容の検討、
3）動機づけの高い授業デザインの試み、4）講話後も
個別保健指導へとつなげる教育の継続可能性、5）次年
図 4. 振り返りビデオの逐語録からみた振り返りの流れ
教育デザイン研究　第６号（2015年１月）　73