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きんき通信 学校訪問
きんき通信 学校訪問 芝生の校庭で駆け回ろう! ∼奈良県立高円高等学校∼ 学校の管理下での災害の中で最も多いのは、体 育の授業中や体育的部活動といった運動中にお ける災害です。こうした運動中のけが防止として も効果の期待される、校庭の芝生化について紹介 します。 今回訪れたのは、奈良県立高円高等学校です。 高円山のふもとの自然環境に恵まれた場所にあ ります。全校生徒650人を超える中規模校で、普 通科、音楽科、美術科、デザイン科の4科が設置 されており、県内では芸術校として有名です。 平成22年度から、奈良県の行う芝生化事業の指 定校となりました。 平城京遷都1300年の記念祭で賑わう奈良駅周 辺を抜け、奈良市東部山間に向かう道路の途中に 学校はありました。 訪れたのは11月上旬。10月に行われた体育大会 で芝生の校庭として初の大役を果たし、冬芝の種 が播かれ厳しい寒さに向けて冬支度をしている ところでした。 芝生の上で行われた体育大会の様子や普段の 授業の様子、芝生化に至るまでの経過や管理方法 について、日頃管理をされている体育の中田先生 と、事務長の柳大路さんにお話を伺いました。 芝生の上で行われた体育大会の様子はいかがでしたか? 体育大会は10月29日、芝生の完成を待っての開 催となりました。年度初めに芝生の上での開催を 生徒たちに伝えたときは歓声を上げて喜んでお り、開催当日をとても楽しみにしていたようで す。 男女問わず裸足で走る生徒が多く見られたのが 印象的でした。「玉入れ」も初めて種目に取り入 れましたが、砂埃がたたないこと、ボールが汚れ ないことから、思い切り取り組めていたようで す。 8 第6号 きんき通信 学校訪問 当日は保健室にお世話になる生徒もほとんど いませんでした。前日が雨だったため芝生が滑り やすくなっており、転倒する場面は多くみられた のですが、芝生のおかげでけがに至らずにすんだ ようです。例年見られる「擦りむく」ことによる 怪我はほとんどありませんでした。 応援に来てくださった保護者の方からも芝生 の校庭は評判がよく、喜んでいただけたようで す。 大縄を跳ぶ生徒達。 砂埃が立たないので思い切りジャンプできますね! 普段の体育の授業や部活動の様子はいかがですか? 芝生の上はクッションとなって特に下肢などのけが防止になること、砂埃がたたないこと、夏は熱 中症予防になることがメリットだと感じています。寝そべる体制を取る運動も背中を汚さずにすむの で抵抗なく取り組むことができています。冬のマラソン大会のトレーニングは芝生の上で行う予定で す。膝のけが予防になると考えています。 今年は芝生養生のために8、9月の間は芝生に 入らないよう制限をしていました。主に校庭で活 動するサッカー部、野球部においては活動場所を 他に借りるなど、不便をかけざるを得ない状況で した。それでも芝生の上で活動できることを楽し みに、苗植えや芝刈りなどの作業を部員が積極的 に行ってくれました。 苗植えの様子。 こんなに小さい苗が本当に芝生になるのだろうか… 芝生の管理について教えてください。 高円高等学校の芝生は、安価ですがとても手間 のかかる方法によって管理しています。芝刈り・ 水やり・施肥を中心とする方法です。管理は主に 体育教諭が中心となって他の先生方にも呼びかけ て行っています。苗作りや苗をグラウンドへ植え 付ける作業は全校生徒で行いました。 特に大変だったのは、ポット苗をグラウンドへ 植えた後の水やりです。スプリンクラー工事完成 までの9日間、毎日朝晩ホースで水やりを行いま した。芝生化する面積はおよそ8,000m2。半日掛 第6号 9 かりの仕事となりました。今年の夏は特に猛暑で 雨も降らなかったため、体に応える厳しい作業で した。 そして週に1度の芝刈りも手間のかかる作業で す。高校にある芝刈機は小型のものですので、往 復すること数10回。これも半日仕事になります。 冬芝を植えた後は週に2回の芝刈りが必要となり ます。夏芝が枯れて翌年5月頃再び生えそろうま での間、芝を守る役割をするのが冬芝です。夏芝 より水分を多く含むため芝刈り機に引っ掛かりや すいという特徴があります。冬芝は夏芝と違い、 毎年種を播いて育てる作業が必要です。 取材を終えて… 多くの時間を割いて芝生の管理をしている先生 方も、初年度は苦労の連続だったようです。それで も生徒達が元気に校庭を走り回る姿を見るにつ け、この青く美しい芝生をいつまでもと一層気合い が入ることでしょう。児童生徒の健康の保持増進を 担うNAASH職員として、この取組は多くの学校で 行われてほしいと願います。 NAASHにおけるグラウンド芝生化事業に対する助成事業 こちらの奈良県立高円高等学校の校庭芝生化事業には、スポーツ振興くじ助成金が活用されまし た。 NAASHが行うスポーツ振興くじ助成においては、地域住民の身近なスポーツ活動の場となるグラ ウンドや学校開放事業により地域のスポーツ活動の拠点として活用されている学校の校庭の芝生化事 業を助成対象としています。 地方公共団体や法人格を有する総合型地域スポーツクラブなどが行う天然芝及び人工芝の新設・改 設事業に対して助成されています。 平成22年度は、全国で144件(約23億円)の 事業が採択されました。 詳細はNAASHホームページをご覧ください。 http://naash.go.jp/sinko/ 10 第6号