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報告タイトル： 環境関連製品の貿易と中国製造業の輸出競争力
報告タイトル： 環境関連製品の貿易と中国製造業の輸出競争力 (財)電力中央研究所 星野優子 背景 2009 年の COP15 に向けて、議長国であるデンマーク政府は、貿易に関連して重点的に検討 が必要な項目として以下の６項目、①低炭素に寄与する製品についての貿易自由化、②炭素削減 のための国内政策に関する国境税調整、③貿易品に体化した炭素の国際移動、④環境技術に関す る知的財産権の保護、⑤低炭素関連の国際投資、⑥環境関連技術・製品の国際的な標準化・ラベ リング、をあげている（Cosbey／IISD(2008)）。 目的 本稿では、このうち環境関連製品の国際貿易フローの特徴を、「世界の工場」と言われる中国 を中心に整理し、低炭素に寄与する環境関連製品が南南貿易を通じて途上国へ普及していく可能 性を考察する。 概要 The World Bank, International Trade and Climate Change の環境関連の貿易品リスト（HS コード 6 桁分類）を参考に、電気・電子機械 29 品目を中心とした中国の輸出競争力の推移を整 理した。1995 年、2000 年、2007 年を比較した結果、元々高めの競争力をさらに上昇させている ものとして、 「電動機及び発電機 75KVA 以下」、 「その他の鉛蓄電池」、急激に競争力が上昇してい るものとして、 「ヒートポンプエアコン」、 「太陽熱温水器」などがある（表１）。 日本と中国の対世界輸出単価を比較すると、例えば「太陽熱温水器」では、2007 年時点で、中 国の輸出価格は日本の１割程度である。そのほか 29 品目のうち 2 つをのぞく品目で、中国の輸 出単価は、世界平均単価よりも低いことが確認された。 この価格競争力は、中国の輸出競争力の源泉でもあるが、他方で、中国が高い競争力も持つ品 目は、同じ品目として分類されながらも、より機能・性能の劣るものに集中している可能性も指 摘できる。ヒートポンプエアコンなどの省エネ関連機器では、ハイエンドの製品ほど省エネ性能 も高いことから、途上国を含めた省エネ機器の普及を考える場合に、どの程度の性能を持つ機器 が輸出されているのかは重要な論点である。そこで、本稿の後半では、ヒートポンプエアコンと その部品を例に、中国製品が他国の輸出品とどの程度競合できているのか否かについて分析した。 その結果、これら２つの製品では、先進国市場も含め、既にいくつかの市場で中国以外の国の輸 出品とも競合関係にあることがわかった（図１、表２） 。 以上の分析から、世界の工場と言われる中国は、低炭素に寄与する製品についても、その価格 競争力で輸出を増やし、途上国向けの環境関連製品の輸出基地としても、その地歩を固めている ことが確認された。他方で、マクロベースでの中国の輸出品に体化した CO2 排出量は、2000 年以 降急増しており 2004 年で中国国内の排出量の 3 割弱に相当している。中国の産業部門での CO2 原単位の削減が急務であると同時に、中国の圧倒的な価格競争力は、低所得国における低コスト での温暖化防止対策を可能とすることが示唆される結果となった。 表１中国の対先進国、対途上国での輸出競争力（1995−2007 年） 先進国 輸出特化（輸出特化指数が0.6以上） 輸出特化でない（輸出特化指数が0.6未満） 競争力上昇 輸出特化 （輸出特 化指数が 0.6以上） 途上国 競争力 上昇 競争力低下 蒸気発電ボイラー、ハイブリッドボイ ラー ギアボックス・その他変 蒸気発電ボイラー補助設備及びコン 速機のクラッチ及び軸 デンサー用部分品、調整装置付きの 継手、ギアボックス・そ 水力発電タービン用部分品 の他変速機の歯車及 び歯車電動機 ２００７年 日本 欧州 1.0 0.6 中国 5.4 光電性半導体デバイス （PV用） 5000kW未満のガスタービン 競争力 上昇 輸出特化 でない （輸出特 化指数が 競争力 0.6未満） 低下 1.0 競争力低下 1000ｋW未満水力発電用タービン、 電動機・発電機375-750KVA、エアコ ン部分品、蒸気発電ボイラー部分 品、冷蔵冷凍機・ヒートポンプ、蒸気 発電ボイラー補助設備等機器、実験 装置部分品 、1000V以下の電気制 5000kW超のガスタービ 御版（PV用）、蒸留用又は清留用機 ン 器、電動機・発電機750KVA以上、太 陽集熱器、太陽熱システム制御装 置、熱交換装置、発生炉ガス等生成 装置、加熱・調理・蒸気等他機器、実 験装置 その他の鉛蓄電池、 電動機・発電機75375KVA、太陽熱温 水器、ヒートポンプエ アコン、蛍光灯、スタ ティックコンバー ター、電動機・発電機 75KVA以下 競争力 低下 ２０００年 競争力上昇 日本 1.0 1.1 北米 欧州 3.0 1.5 中国 3.2 0.42 0.14 北米 中南米 0.48 東アジア エアコン エアコン部品 注) □は日本中国間のエアコンの純輸出金額を１としたときの、各地域（国）間の純輸出金額規模を示す。 図１エアコン、同部品の対中国貿易の純輸出金額上位３つまでのフロー 表２中国輸出は、中国以外の国の輸出と代替的か補完的か？ （プラスなら代替的：競合関係にある、マイナスなら補完的：補いあう関係にある） 841581 ヒートポンプエアコン 2000年 2007年 先進国市場 途上国市場 先進国市場 途上国市場 中国 日本 アジア EU 米国 その他世界 ＋ - + + + + + + + + + + - + + 中国 日本 アジア EU 米国 その他世界 ＋ - + + + + + + + + +/+ + + - 841590 エアコン部分品 2000年 2007年 先進国市場 途上国市場 先進国市場 途上国市場 注） ＋プラスは、中国の輸出価格上昇が行方向の地域からの輸入を増やす（代替的である）ことを示す。 −マイナスは、中国の輸出価格上昇が行方向地域からの輸入を減らす（補完的である）ことを示す。 中国の列方向の符号は、中国の輸出の自己価格弾力性で、通常、マイナスの符号が期待される。