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11 巨赤芽球性貧血
DNA合成 障害 Me mo 巨赤芽球性貧血 Megaloblastic anemia (MA) 骨髄に巨赤芽球が出現する貧血の総称で DNA合成障害 に基づく核の成熟障害、 無効造血*を特徴とする。RNA・蛋白合成の障害は軽いため、細胞のサイズは 大きくなり、これにより核と細胞質間の成熟不一致がみられる。 成因は、①VB12欠乏と②葉酸欠乏に大別される。 葉酸欠乏では、貧血症状+消化器症状が、VB12欠乏では、さらに神経症状が加 わる。原因としては、自己免疫が関与する胃粘膜萎縮による貧血(悪性貧血)と 胃全摘によるものが大部分を占める。 VB12や葉酸の欠乏は、DNA倍増を遅延させるため、細胞分裂の時期を失い、 分裂により2個の細胞になるべきものが1個として存在する結果巨赤芽球になる。 巨赤芽球性貧血 VB12欠乏性貧血 自己免疫が関与する胃粘膜萎縮に よる貧血(悪性貧血) 葉酸欠乏性貧血 胃全摘による貧血 *核の発育の未熟な細胞は成熟の過程で早期崩壊し(無効造血)、 産生低下による汎血球減少を生ずる. 巨赤芽球性貧血 Me mo 巨赤芽球性貧血のなかに自己免疫が関与する胃粘膜の委縮による内因子分泌 不全が原因のものを 悪性貧血 とよぶ。貧血症状、消化器症状、神経症状がみられ、 放置すると2∼3年で死亡するとされるがVB12の補充療法が確立されている。 貧血症状 ①息切れ ②易疲労感 ③めまい ④眼瞼結膜蒼白など 消化器症状 ①舌炎 ②舌乳頭委縮 ③Hunter舌炎 神経症状 ①年齢不相応な白髪 ②四肢末梢のしびれ ③深部知覚障害 貧血 ①大球性正色素性貧血(MCV>120fl) ②WBC減少 ③血小板減少 ④大型赤血球 ⑤過分葉好中球 無効造血 ①網赤血球の減少 ②LDHの上昇 ③間接ビリルビン上昇 ④ハプトグロビンの低値 自己免疫 ①抗壁細胞抗体の陽性 ②抗内因子抗体の陽性 ③VB12の低値 ④委縮性胃炎 DNA合成 障害 ①骨髄にて巨赤芽球性変化 ②後骨髄球、桿状核球の巨大化 治療 VB12に対してはVB12製剤の筋注、葉酸は禁忌 (神経症状の悪化をきたすため) 巨赤芽球性貧血の 検査の進め方 VB12 欠乏性 病歴・臨床症状・検査 (末梢血、骨髄、生化学、血清) VB12低値 葉酸正常 VB12正常 葉酸低値 葉酸 欠乏性 胃全摘 あり なし 胃粘膜の萎縮・抗壁細胞抗体 抗内因子抗体 アルコール中毒 薬剤性 あり 胃全摘による 巨赤芽球性貧血 悪性 貧血 なし 吸収不全症候群 吸収不良症候群 妊娠や悪性腫瘍に 伴う需要増大 Blind loop症候群 広節裂頭条虫症 菜食主義者などの摂取不足 DNA合成 障害 巨赤芽球性貧血の形態像 PB-MG 大球性正色素性貧血 (MCV>120fl) BM-MG DNA障害による赤芽球の巨大化 成熟乖離(核の遅延現象)がみら れる. PB-MG DNA障害による好中球の核過分葉 (5∼6分葉以上)が多くみられる. BM-MG DNA障害は好中球の巨大化も引き起こす. 上列の赤芽球の形態もおかしい.