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フォレスター招聘事業報告書 [1499KB pdfファイル]
アウグスブルク市フォレスター 招聘事業概要書 Augsburg Forester Invitation Program in Nagahama 2015.10.18-10.23 長浜市 1 招聘の経過について 昭和34(1959)年、長浜市とアウグスブルク市は、ヤンマーディーゼル株式会社の初代社長山岡 孫吉氏と西ドイツ(当時)総領事のご尽力により、姉妹都市を提携しました。 山岡社長は、ディーゼルエンジンに深く感銘を受けておられ、アウグスブルク市にディーゼルエンジンの発明家、 ルドルフ・ディーゼル博士の顕彰碑を建立したことがアウグスブルク市民に感謝され、縁となったものです。 その後両市は、友好姉妹都市関係を継続しており、近年では、青年使節団が相互訪問を行い、交流を 深めているところです。 平成18年、21年と相次いで、長浜市は広域合併を行いました。これにより市は、広大な森林面積を 有することとなり、森林の維持管理、林業の活性化が、課題としてクローズアップされてきました。 こうした中、アウグスブルク市が、日本がモデルとする林業先進国ドイツにあり、フォレスター(森林官)が在 籍していることから、長浜市林業の活性化のアイデアを探るとともに、両市の交流を深化させるため、フォレスタ ーを招聘することとなりました。 【招聘に至る経緯の概要】 H23 年度 担当課より、フォレスターを招聘の事業提案 H24 年 1 月 ア市経済局長が来庁。企画部長からフォレスター派遣を提案 H24 年 9 月 市長がア市へ訪問。フォレスター派遣を依頼 H24 年 11 月 市企画部長からア市へフォレスター派遣の依頼状送付 H25 年 3 月 フォレスター訪問時期の仮確定。長浜市の森林現状等資料送付 H25 年 7 月 ドイツで起こった森林災害の影響で、日本訪問は暫時見送りとなる。 替わりに長浜市からのア市視察派遣団の受け入れの提案がある。 H26 年 3 月 長浜市から、ア市に森林視察団4名を派遣した。 H27 年 4 月 市長からア市市長あて、フォレスター派遣の依頼状を送付。 H26.3 月の アウグスブルク訪問 -1- 2 フォレスター(森林官)とは 中欧諸国は、日本と同様に所有規模が零細ですが、林業が産業として成り立っています。その理由として は、作業路網などの充実、林業機械の発達と効率的活用、流通システムの整備が進んでいることなどが挙げ られています。 特にドイツでは、フォレスター(森林官)と呼ばれる森林管理の専門家が、林業を進めるにあたっての困難 要因となっている所有構造を調整によって克服しています。フォレスターは、林業専門の国家資格保有者。現 場密着型の林業の推進者であり、森林管理から木材生産にわたる林業全般を一体的にコーディネートするマ ネージャーであり、ドイツにおける社会的地位は大変高く、多くの若者が憧れる職業の一つです。 2009年、林野庁が日本の森林・林業再生の指針として公表した「森林・林業再生プラン」において も、森林施業に必要な人材育成等に重点的に取り組むこととしており、ドイツの林業体系やフォレスター制度 は、大いに参考にしているところです。 3 招聘フォレスター 派遣を要請したところ、森林管理署から、2名のフォレスターの招聘が実現しました。 ユルゲン・キルヒャー氏(47 歳) ユルゲン・シュピンドラー氏(46 歳) バイエルン州州立森林管理局勤務 森林管理局管理長、経営士 南ドイツ所在大型製材会社購買物流担当 専門:森林不動産、自然利用、管理法 専門:営林生産指導、市場販売調整、物流 狩猟法に関する法律助言、資金調達 なお、通訳として、アウグスブルク市在住の原修子氏に来日いただき、期間中同行・協力を頂きました。 -2- 4 招聘スケジュール 5泊6日の行程にて、精力的に視察、指導をいただきました。 10月18日 ① 長浜市着 ~ 長浜市民国際交流協会との交流会 10月19日 ② 長浜市森林情勢説明 ③ 市長表敬訪問 ④ 原木市場視察(株式会社スンエン長浜営業所) ⑤ 製材所視察 (鳥居木材株式会社) ⑥ 施業現場視察指導(滋賀北部森林組合管内:谷口林業地) ⑦ 市産材活用施設見学(湖北幼稚園) 10月21日 ⑧ 施業現場視察指導(長浜市伊香森林組合管内:余呉町坂口) 10月22日 ⑨ ドイツフォレスターシンポジウム 10月23日 ⑩ 市内見学(木造建造物を中心に) ⑪ 長浜市発~離日 10月20日 4-① 長浜市民国際交流協会との交流会 このたびのフォレスター招聘の礎となったのは、両市の市民レベルの交流でした。 この交流の担い手である「長浜市民国際交流協会」の会員と、長浜の国際交流協会の拠点である 「GEO」において、交流会を計画しました。 フォレスターの二人には、両市の国際交流関係への理解とともに、日本文化を体験いただきました。 -3- 4-② 長浜市森林・林業情勢の説明 フォレスターに対し、森林整備課職員から長浜市の森林・林業情勢の説明を行いました。 事前に長浜の情勢を理解いただくことで、現地視察やシンポジウムが、より有意義なものとなりました。 当日は、市庁舎ロビーで「市内森づくり活動の各種展示」も行っており、あわせて見学いただきました。 4-③ 市長表敬訪問 フォレスターのお二人が、長浜市長を表敬訪問されました。 意見交換、記念品交換を行うとともに、アウグスブルク市長あての親書を手渡しました。 -4- 4-④ 原木市場視察(株式会社スンエン長浜営業所) フォレスターが、原木の集積市場を見学されました。 営業所長からの説明により、長浜市域の木の流通の流れについて理解を深めていただきました。 4-⑤ 製材所視察(鳥居木材株式会社) フォレスターからのたっての希望により、製材所の視察を行程に組み入れました。 ドイツでは、大規模製材所への集約と、独自技術を持つ小規模製材所の選別が進んでいるとのこと。 製材状況を視察したフォレスターからは、木の特性を一つひとつ吟味した上で、ムダ無く木を用いる作 業に対して、感嘆の声があがっていました。 -5- 4-⑥ 施業現場視察指導(滋賀北部森林組合管内:谷口林業地) 代々林業が営まれ、良好なスギが生育している「谷口林業地」の視察が行われました。 森林組合員、行政関係者など30名あまりが参加。 滋賀北部森林組合員から、「谷口スギ」の特性の説明、林内作業道敷設を含めた施業計画全体の 説明がそれぞれあり、フォレスターは、良質な木々の生育状況に目を向けると同時に、将来を見越した 「次の世代の若い木が少なく、それらを植え育てる必要性」について言及されました。 地元田根小学校生の校外学習(地元住民から林内作業の説明)との交流もありました。 4-⑦ 市産材活用施設見学(湖北幼稚園) 長浜市では、平成24年に「公共建築物長浜市産材利用促進基本方針」を策定しています。 整備を行う公共建築物については、市産材調達管理基金を用い、市産材を積極的に利用し、森林 保全の推進、地域経済の活性化及び木の香る温かみのある空間を創出しています。 この日訪れた湖北幼稚園では、木々がふんだんに使われており、フォレスターからは、「市産材供給のし くみは素晴らしく、アウグスブルクにもこのような幼稚園がほしい」との声があがっていました。 -6- 4-⑧ 施業現場視察指導(長浜市伊香森林組合管内:余呉町坂口) 林内作業道の敷設等が計画的に進められている「余呉町坂口」の視察が行われました。 昨日に引き続き、25名あまりが参加。 フォレスターからは、ドイツ国内の大半の山々とは異なる急峻な地形における作業道敷設について、 「地形に合ったベストな道をつけられている」との感想をいただきました。 また、現場で作業中の各種作業機器や、獣害対策の状況について逐一質問を受けるとともに、 参加者との質疑応答、意見交換も積極的に行われました。 施業現場視察におけるフォレスターからの提案 ●若い木、次の世代の木が少なく、齢級構成に偏りがある。 今後、更新していく上で、新たに木々を植えていく必要がある。 ●現在は取り入れておられないが、地形条件等を考え、 架線系集材による搬出も検討していくべきである。 -7- 4-⑨ ドイツフォレスターシンポジウム ドイツ:アウグスブルク市にゆかりのある、「ヤンマーミュージアム」にてシンポジウムを開催しました。 森林組合員、行政関係者、山主、NPO関係者など100名の参加がありました。 前半は、フォレスターを始めとする講師による講演を行い、後半はシンポジウム形式をとりました。 シンポジウムでは、参加者から受け付けた質問カードをもとに質疑応答が活発に行われました。 終了後のアンケートには、多くの感想、提言をいただきました。 アウグスブルク市(Augsburg)*長浜市(Nagahama)姉妹都市交流 since1959(昭和34年) ドイツフォレスター シンポジウム ドイツの林業は、日本で活かせるか? 平成27年10月22日(木) 13:00~16:30 参加無料(先着順) 会場 ヤンマーミュージアム(長浜市三和町) バイオマス活用や自伐型林業などが注目を集めている中、滋賀県・湖北地 域の広大な森林は、地域の資源として、その可能性は大きく広がっています。 今回、長浜市の姉妹都市であるドイツ・アウグスブルク市より、森林の専 門家であるフォレスター(森林官)2名にお越しいただく機会を得ました。 アウグスブルクと長浜では、気候や地形、林業の産業構造などに差異は存 在しますが、多くの先進的な取り組みの中から、学びとることができるアイ デアや共通点を探り出し、今後に活かしていくきっかけとしていきます。 ■シンポジウム概要■ 「アウグスブルク林業の視察報告」 石谷八郎氏 (滋賀北部森林組合代表理事組合長) 高橋市衛氏 (長浜市伊香森林組合参事) 「日本とドイツ、林業の違いと共通点(仮)」 中尾友一氏 (自然産業研究所上級研究員) 「アウグスブルク市におけるフォレスターの活動(仮)」 ユルゲン・キルヒャー氏、ユルゲン・シュピンドラー氏 (アウグスブルク市フォレスター) 「登壇者との意見交換」 進行: 高橋卓也氏 (滋賀県立大学環境科学部 環境政策・計画学科 教授) 主催 長浜市 後援 滋賀県 お問合せ -8- 長浜市森林整備課 ☎ 0749-65-6526 ドイツフォレスターシンポジウム アンケート集計結果 ① シンポジウムで一番印象に残った内容、関心を持たれた内容は? ・ドイツのインフラ(作業道)、理論体系の完璧さ。 ・林業に長期的な視点、明確な目標が必要であり、森の持続性が原則であること。 ・ドイツの規模の大きさ(それに対する日本の小ささ) ・ドイツ人の森林に対する関心の高さ ・お金と、人間と、森の3者のバランス維持の大切さ ・長浜が林業のことを深く考えていてくださることが理解できた。 ② 長浜市、湖北地域の森づくり、林業の活性化には何が必要だと思いますか? ・山内、林内に入り、作業と就業を容易にするための道づくり。 ・施業用重機の貸与、補助など ・市民が森林に関わり、関心を持ってもらえるような方策づくり ・境界(所有者)の明確化、不明が続く場合の突破策 ・人材育成。多様な主体が関わりながら進めていく必要性がある。 ・農業のように、個人の山を集約化して、集団で管理するような方策が必要。 ・若い人にとって魅力がある林業にする。植林に補助金を出す。 ・バイオマス発電施設とそれに伴うC材の買取り制度 ・新規林業参入者への補助 ・目先のことだけを考えるのではなく、次世代を見据えた取り組みが必要。 ③ 自由にご意見を記載ください。 ・有意義なシンポジウムであったので、ホームページなどで広く発信してほしい。 ・若い人に関心をもってもらえる方向性を考えてほしい。 ・農業、林業、漁業で住民が安定した生活ができるような地場生産に投資すべき -9- ドイツフォレスターシンポジウムの模様 4-⑩ 市内見学(木造建造物を中心に) 4-⑪ 長浜市発~離日 最終日は、森林を離れ、長浜市の街づくりを感じ取ってもらうべく、黒壁スクエア周辺の中心市街地 を散策いただきました。とりわけ、森林・木々・緑に関わっておられるフォレスターに対し、長浜市が誇る 「大通寺」「慶雲館」「安藤家」といった、木造建造物を案内しました。 最後、長浜を離れる際には、豊公園内にある「アウグスブルク記念碑」の前で、関係者一同が記念 撮影を行い、今回の交流の成功を喜ぶとともに、将来における再会を約束しました。 - 10 - 5 結び 5泊6日の短い期間ながら、アウグスブルク市フォレスター招聘が実現し、成功の内に事業を終えました。 意見交換やシンポジウムを通して、日本とドイツの林業の共通点を取り上げることができたとともに、日本: 長浜の森林業が抱える課題も、さらに明確になってきたように思われます。 それは、産業流通構造、作業道の整備状況、木材価格、人材育成、人々の森林への関心といった複雑 多岐にわたるものであり、一朝一夕に解決できるものではありません。 しかし、フォレスターの「長浜は素晴らしい森林資源を有している。現在の困難な状況を乗り越えれば、必ず 明るい将来がある」との言葉を胸に、関係者が思いを共有し、一体となって取り組んでいく必要があります。 今回、フォレスターから学んだ、「林業には長期的な視点、明確な目標が必要であり、森の持続性が原則で あること」、「経済と人間の営みと森の生態系の3者のバランス維持が大切であること」といった大切な視点 を、常に忘れないこと、これからもドイツを始めとする先進事例を吸収し、学び続けることが肝要です。 ついては、姉妹都市交流の縁がきっかけで始まった今回の取り組みを、両市関係者の協力をいただきなが ら、何らかの形で発展・継続させていくことが、大切なことであると考えています。 最後になりましたが、このたびの招聘事業の実現にあたり、長きにわたりご尽力いただきました多くの皆様に感 謝申し上げ、結びといたします。 長浜市役所 産業経済部 森林整備課 - 11 - ←京都新聞 2015.10.20 ↓中日新聞 2015.10.21 - 12 - 長浜市役所 - 13 -森林整備課