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CarpeDiem 第 2 回:量子論 担当:Oura Mitsuaki
[1]
コメント:物理は、宗教みたいなもん (ニュートン力学という宗教とか)
今回は量子論をざーっと俯瞰しました。具体的な計算には踏み込まなかったし、触れることもな
以下,敬体と常体がごっちゃですが許してちょ
かったと思います。
うだい。
①
力学とその発展
普段ぼくらが生活しているような常識的な範囲ではニュートン力学 (つまり F = ma 教) は正
しかった。
しかし,物体が光速に近い速度で動く場合や,非常にミクロな物体を扱う場合には,ニュート
ン力学の式だとズレをきたすようになっていた。
つまり,普段僕らが生活しているような常識的な範囲では気づけなかったニュートン力学の破
綻が「光速に近い」
「非常にミクロ」といった極端な場合において顕在してきたのである。
前者を正しく扱うために,相対論が発展し,後者を正しく扱うために量子論が発展した。
こうしてニュートン力学は発展解消を遂げた。ニュートン力学が間違っているというわけでは
なく,相対論や量子論の一近似形態がニュートン力学だと判明した。
ちなみに,ミクロな物体でしかも光速に近い動きをするやつらは「相対論的量子力学」で扱わ
なくてはいけない。
②
量子とは
飛び飛びの値のこと。
電気量には電気素量 e という最小単位があるように,エネルギーにも最小単位が見つかった
(Max Planck)。それは Planck の名前をとった Planck 定数を h として,定常波の波長 ν を用
い hν と表される。
クオークの発見によりのちに電気量の最小単位は
1 e になったわけだが,エネルギーの方は
3
1 hν となっている。
2
電子軌道 1234...spdfg... が飛び飛びのエネルギー状態だというのも量子論の結論。
(プルーストの定比例の法則が「連続体元素などない」と言ったいう点で特異だったこととの
アナロジーが感じられる。)
③
粒子と波動の二重性、確率波という考え方(光子と電子、剛体に至るまで)
すべてのものは粒子性と波動性を併せ持つ。本当は違う話なのだが,納得してもらおうとし
たら川の波を考えてみるのが手っ取り早い(繰り返すように,本当は少し違う話なのだけれど)。
川の水自体が流れていく速さ(群速度)と,川の水面にできる波の速さ(位相速度)は違うで
しょ,っていう。
ものが大きくなればなるほど粒子性が高くなり,ものが小さくなればなるほど波動性が強く
なる。
ヤングの実験に見られるように光(質量ゼロ)は波動性が優位。しかし光電効果でのように粒
子性がみえることもある。
だんだん大きくして,電子は普通粒子としてみるわけだけど,ヤングの実験ぽいこともできて
CarpeDiem 第 2 回:量子論 担当:Oura Mitsuaki
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波動性も観れる。電子線を単スリット→複スリットの順に通すと,その先のスクリーンには一つ
一つの電子が点として映る(粒子性)。しかし,たくさん電子をうちこんでいくと,全体的なト
レンドとしてヤングの干渉縞っぽいのがちゃんと映る(波動性)。このことは,点として写り観
測されるまでは電子は確率の波として進んでいるからだ,と解釈される(ボルン)
。
サッカーボールとかいう大きめの剛体も,実は確率波としての性質はもっている。しかしほぼ
日常生活で観測できないぶれしか生まない。
④
波の虚数振幅(cf. 虚数・初期の分子説など都合優先のサイエンス)
光など物体がなんでも波動(sin 波の重ね合わせ)だというのはわかったが,そうは言っても
sin 関数には 0 になる点があるんだよね。光の強度が一定だとすると,振幅が 0 になる点があ
ると困ってしまう。そこで振幅の絶対値を常に 1 にしておくために,虚数部分をつけくわえて
cosx+isinx みたいな波だ,ってしちゃったわけ。
そうすると都合がいいから,という都合優先の導入です。
その虚数部分が物理的に何を意味しているのか直感的に説明するのは難しそうです。
考えてみれば,虚数だって,初期の分子説だって,虚数・分子というものを仮定すると都合が
いいからといって導入されただけでしたし。あとで分子というものが実際にみつかるまで分子は
「単なる便利な概念」なのか「実在」なのかはわかっていなかったわけでしょ。
⑤
シュレーディンガーの波動方程式
[
]
~
2
∇ + V ψ = Eψ
−
2m
というのを使って解いていくんです。量子論の問題って。これがまあ F = ma に代わる式っ
てことな。
⑥
壁をすりぬける電子(井戸型ポテンシャル・トンネル効果)
量子論の一つの面白い結論として。
エネルギー的に到達するのが無理だとニュートン力学的には予期されるような場所にもミクロ
な奴らは侵入する確率があるってことですね。
確率波の波動関数がそこにも染み出すんですよ。
トンネル効果なんてのはその最たる例で,電子が絶縁体をジャンプして回路の隣の導線に飛ん
じゃうことがあるのね。それって,普通困るんだけど,うまく逆用してやるとより効率的なダイ
オードが作れるのね。それがノーベル賞とったエサキダイオード。
大きい剛体だってごくごくわずかには波動性あるわけなんで一応僕らが壁をすり抜ける確率も
ある。でもそんなのは無視していいくらいゴミすぎる確率。
⑦
相対論的量子力学とディラック方程式(水銀はなぜ常温で液体か)
ミクロな物体でしかも光速に近い動きをするやつらは「相対論的量子力学」で扱わなくてはい
けない。
その計算をしようと思ったらシュレディンガー方程式のさらなる発展系,ディラック方程式を
使ってガリガリ計算することになる。
水銀がなんで常温で液体かを議論しようと思ったら,電子が原子核の極近傍を飛んでしゅごい
スピードで飛ぶ場合の考慮がいるらしくこの相対論的量子力学の守備範囲になるんだそうな。
CarpeDiem 第 2 回:量子論 担当:Oura Mitsuaki
⑧
[3]
第二量子化=場の量子論
ニュートン力学で粒として扱ってきた電子を波として扱うようにしたのが今まで見てきたシュ
レディンガー方程式なわけだけど,やっぱり粒としての性質を研究したいときもある。しかも
ニュートン力学じゃなくて量子論的に。だとするともう一回量しかしてやればいい。そんだけ。
⑨
電子レベルのスケールを扱うときの「道具」として(金属・半導体・レーザー・超伝導)
電子レベルのミクロなスケールの設計をしようとおもったらニュートン力学はあんましつかい
ものにならないわけで,量子力学的にやってやるひつようがある。
だから量子論の理論的裏づけや基礎はおいといてとりあえず使わなきゃやばい,という工学系
の人たちはかなりいる。半導体やレーザーの設計をしようと思ったら必須の手技になる。とい
うわけで,とにかく量子力学を使う人のための量子力学の使い方マニュアル本みたいなのは結構
売ってる。
⑩
研究対象として(量子コンピュータ、量子色力学、M 理論 etc. 素粒子物理学)
その一方,量子論はいまだ物理の最先端でもある。発展解消しちゃったニュートン力学とち
がってね。
素粒子物理学者とかががっつり研究してる。
ちなみに,量子コンピュータっていうのは 1bit に 0/1 のバイナリ値をいれるのではなく
hν,2hν,3hν,4hν,. . . と任意の整数値を入れることで処理能力を飛躍的にあげようというもの
です。
M 理論は,超ひも理論という大統一理論候補の,1つの形態です。
⑪
くりこみと都合優先サイエンス
シュディンガー方程式を解いていると,解の値の発散をみることがある。そういうとき,現実
の現象で解の値が発散していないな,という場合には発散から発散を引いて意味のある値を抜き
出す,という「くりこみ」をやることがある。数学屋からしたらこんな適当なことやっていいの
かよ w みたいな感じかもしれないけどそれで現実の現象にあうんならいいだろーっていうのが
都合優先サイエンスの発想。
ちなみにくりこまないで済む理論を構築しようと頑張ってる人はいる。
⑫
ゼロ点振動
すべてのものは静止しないで動いている,というのがまたこれも量子論の結論。
エネルギーの最小値が
1 hν だったんだよね。それが運動エネルギーに使われるから動いちゃ
2
う。絶対零度は達成できないのだ。絶対零度は下限であって最小値ではないってわけな。
⑬
ハイゼンベルグの不確定性原理、確率性と「神はサイコロを振らない」
すべてのものの位置と速度を同時に定めることはできない,というのがハイゼンベルグの不確
定性原理の一表示で,これも量子論の結論。
「神はサイコロを振らない」って言ってた人はいるけどでもやっぱり量子論を信じると物事は
確率的に動いているわけですよ。決定論的世界観は粉砕されちゃう。勉強しようか迷って結局勉
強したとして,
「迷って勉強する,というところまで実は決まっていた」
,という世界観は量子論
的には成り立たない。勉強するかしないかは確率的に決まるので,迷っている最中には,まだ勉
CarpeDiem 第 2 回:量子論 担当:Oura Mitsuaki
強するかしないかは決まっていなかった,というのが量子論的解釈。
ただ自分の勉強しなきゃという意思が反映されたかどうかは知らない。
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