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先端研究助成基金助成金(最先端・次世代研究開発

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先端研究助成基金助成金(最先端・次世代研究開発
 様式20
先端研究助成基金助成金(最先端・次世代研究開発支援プログラム)
実績報告書
本様式の内容は一般に公表されます
研究課題名
病原体媒介節足動物におけるトレランス機構の解明
研究機関・
部局・職名
東京慈恵会医科大学・医学部・教授
氏名
嘉糠 洋陸
1.研究実施期間 平成23年2月10日~平成26年3月31日
2.収支の状況
(単位:円)
交付決定額
直接経費
間接経費
合計
134,000,000
40,200,000
174,200,000
交付を受け 利息等収入
収入額合計
執行額
た額
額
134,000,000
0 134,000,000 134,000,000
40,200,000
0 40,200,000 40,200,000
174,200,000
0 174,200,000 174,200,000
未執行額
既返還額
0
0
0
0
0
0
3.執行額内訳
(単位:円)
費目
平成22年度 平成23年度 平成24年度 平成25年度
物品費
旅費
謝金・人件費等
その他
直接経費計
間接経費計
合計
0
0
31,659,478
395,280
8,904,922
78,610
41,038,290
13,344,598
54,382,888
41,363,230
2,174,312
12,923,825
1,767,903
58,229,270
14,548,265
72,777,535
合計
12,134,353 85,157,061
4,456,770
7,026,362
17,184,399 39,013,146
956,918
2,803,431
34,732,440 134,000,000
12,307,137 40,200,000
47,039,577 174,200,000
4.主な購入物品(1品又は1組若しくは1式の価格が50万円以上のもの)
物品名
仕様・型・性
能等
単価
(単位:円)
数量
金額
(単位:円)
納入
年月日
設置研究機関名
超音波画像診断装置
Vscan
1
980,000
980,000
2011/7/28 東京慈恵会医科大学
ルーチン倒立顕微鏡
DMIL LED
三眼・蛍光仕
様
1
1,509,217
1,509,217
2011/8/9 東京慈恵会医科大学
高感度デジタルカラーカメラシステム
DFC310FX
1
1,922,445
1,922,445
2011/8/9 東京慈恵会医科大学
1
3,096,954
3,096,954
2011/8/25 東京慈恵会医科大学
1
2,850,750
2,850,750
2011/8/25 東京慈恵会医科大学
1
2,499,000
2,499,000
2011/8/25 東京慈恵会医科大学
1
1,837,500
1,837,500
2011/9/1 東京慈恵会医科大学
1
2,940,000
2,940,000
2011/9/16 東京慈恵会医科大学
1
1,481,550
1,481,550
2011/10/5 東京慈恵会医科大学
1
1,608,600
1,608,600
2012/5/17 東京慈恵会医科大学
No.5181
000.041IN
Color
コロニーカウンター
Qcount
CQ530
Autoplate
スパーラルプレーター
AP5000
Milli-Q
超純水製造装置
Direct8
170ChemiDoc XRS Pulus
8265CAM
GENE PREP
核酸自動分離装置 PI-80X用 STAR オプ
ション
ダルトン
バイオハザード対策用キャビネット NSD-IIA21200A
マイクロインジェクションセット
様式20
超微量パーソナル分光光度計
NanoDrop
Lite
1
926,100
926,100
2012/5/17 東京慈恵会医科大学
共焦点レーザー顕微鏡SP5用超高速ハイブリッドディテクタ-
Leica HyD
1
6,825,000
6,825,000
2012/5/21 東京慈恵会医科大学
1
2,539,162
2,539,162
2012/5/21 東京慈恵会医科大学
2
2,310,000
4,620,000
2012/7/27 東京慈恵会医科大学
1
1,018,500
1,018,500
2012/7/27 東京慈恵会医科大学
1
5,995,500
5,995,500
2012/9/6 東京慈恵会医科大学
9,975,000 2012/12/26 東京慈恵会医科大学
顕微鏡用高感度・高速冷却モノクロデジタルカメラ
マウス飼育用アイソラック
卓上型バイオロジカラセーフティキャビネット
Leica
DFC365FX
オリエンタル
技研MS-712-84
日本エアー
テックBHCT700IIAI
マルチモードプレートリーダー EnSpirre
マクロ共焦点レーザー顕微鏡
ライカTCS
LSI
1
9,975,000
サーモラインローケーター6一式
CY09109
1
946,942
946,942
2013/6/10 東京慈恵会医科大学
1
2,945,250
2,945,250
2013/7/4 東京慈恵会医科大学
1
1,049,895
1,049,895
2013/7/24 東京慈恵会医科大学
リアルタイム濁度測定装置一式
キアゲンTissueLyser Ⅱ 一式
Loopamp
EXIA
TissueLyser
Ⅱ
5.研究成果の概要
蚊やマダニは、吸血を介して寄生虫やウイルスなどの病原体をヒトの体の中に残し、病気(感染症)を引き起こす。マラリア
や日本脳炎のみならず、SFTS(重症熱性血小板減少症候群)などの新しい感染症も出現している。蚊やマダニは病原体を
効率よく運ぶが、自身は病気にならない特徴的な性質(トレランス)に着目し、腸管微生物叢やJAK/STAT経路等による腸
管バリアによる病原体侵入阻止メカニズムを明らかにした。これらの知見を基盤に技術開発することにより、SFTSウイルス
を媒介するマダニなどを制御する新しい感染症対策につなげると期待される。
様式21
課題番号
LS002
先端研究助成基金助成金(最先端・次世代研究開発支援プログラム)
研究成果報告書
本様式の内容は一般に公表されます
研究課題名
病原体媒介節足動物におけるトレランス機構の解明
(下段英語表記)
Tolerance system in pathogen-transmitting vectors
研究機関・部局・
東京慈恵会医科大学・医学部・教授
職名
(下段英語表記)
Professor, The Jikei University School of Medicine
氏名
嘉糠 洋陸
(下段英語表記)
Hirotaka Kanuka
研究成果の概要
(和文):
蚊やマダニは、吸血を介して寄生虫やウイルスなどの病原体をヒトの体の中に残し、病気(感染症)
を引き起こす。マラリアや日本脳炎のみならず、SFTS(重症熱性血小板減少症候群)などの新しい
感染症も出現している。蚊やマダニは病原体を効率よく運ぶが、自身は病気にならない特徴的な
性質(トレランス)に着目し、腸管微生物叢や JAK/STAT 経路等による腸管バリアによる病原体侵
入阻止メカニズムを明らかにした。これらの知見を基盤に技術開発することにより、SFTS ウイルスを
媒介するマダニなどを制御する新しい感染症対策につなげると期待される。
(英文):
Hosts employ a combination of two distinct yet compatible strategies to defend themselves
against parasites: resistance, the ability to limit parasite burden, and tolerance, the ability to
limit damage caused by a given parasite burden. A critical stage in pathogen transmission
occurs in the vector midgut, when the pathogens ingested with blood, first makes contact
with the gut epithelial surface. The tolerance mechanisms within the midgut environment,
including those influenced by resident microbiota against pathogens were investigated, and
we identified a midgut bacteria species' intra-specific variation and JAK/STAT-mediated
signaling that confers diversity to the vector's competency for pathogen transmission. These
findings point to new strategies for controlling infectious diseases through genetic
manipulation of midgut bacteria within the vectors.
1. 執行金額
(うち、直接経費
174,200,000 円
134,000,000 円、 間接経費 40,200,000 円)
1
様式21
2. 研究実施期間
平成 23 年 2 月 10 日~平成 26 年 3 月 31 日
3. 研究目的
フィラリア、バベシア症、マラリア、西ナイル熱お
よび日本脳炎等の疾患は、蚊やダニ、ハエなどの
節足動物によって媒介される病原体由来の感染
症であり、人間に対して世界的に大きな脅威とな
っている。これらの感染性疾患の多くは、その病
原体保有動物(リザーバー)が家畜や野生動物で
あることから、節足動物(ベクター)によって橋渡し
されるカテゴリーの人獣共通感染症として注目さ
れている。これら寄生虫やウイルス、細菌の感染
拡大の可能性は否定できず、それらに関わる基
盤研究の重要性は年々増している。この病原体
媒介節足動物を生物学的に俯瞰すると、極めて興味深い生命現象が見出される。それは、病原性
微生物を体内に有するにも拘わらず、自身は病気にならないという点である。本研究は、ベクター
が不顕性感染や潜伏感染を示す状態であることに着目し、モデル生物を駆使して新規感染防御
反応「トレランス」のメカニズムを解明することより、新しいベクターコントロール法開発の基盤とす
るものである。
なぜ病原体が媒介節足動物の免疫などの生体防御反応から逃れ、またその病原体を持つベク
ター自身が病気にならないのか、長らく不明のままであった。ヒトや節足動物の感染防御応答は大
きく二種類の異なる性質に分類される。一つは、病原体を積極的に排除するための「レジスタンス
(resistance)」、もう一方は、感染個体に与えられる病原体によるダメージを制御するための「トレ
ランス(tolerance)」である(本項図)。病原体を媒介する節足動物では、このトレランス機能が他の
動物よりも優れていると予想されるため、逆にこのトレランス能力を人為的に減弱させることに成功
すれば、病原体の伝播をコントロールすることが可能になると考えられる。本研究は、ベクターが不
顕性感染や潜伏感染を示す状態であることに着目し、モデル生物を駆使して新規感染防御反応
「トレランス」のメカニズムを解明することより、新しいベクターコントロール法開発の基盤とするも
のである。ホン研究課題では、トレランス制御を『場』として捉え、その 1.部品(シグナル伝達)2.挙
動(経時的観察)3.外挿(ベクター種での保存性)を対象とした研究を展開する。また、この『場』を
ウィンドウに 4.場のスペクトラム(特異性・多様性)を検証し、各種媒介節足動物の性状、および各
種病原体との相互作用を新しい角度から検証する。以上の研究により得られるベクター・病原体間
相互作用プロセスの分子基盤は、蚊、ハエ、ノミやシラミなど節足動物を媒体とした疾病に対し、ベ
クター自体が保有するトレランス機構を調節する方法の探索を通して、感染症の制圧を目指す基
礎研究プラットフォーム形成につながることが期待される。
4. 研究計画・方法
(1)《場の部品》トレランスシグナル伝達経路の網羅的同定:節足動物が有するトレランス反応関
連遺伝子を同定する目的で、ショウジョウバエ個体内でゲノム中の遺伝子をランダムに強制発現さ
せる“遺伝子強制発現ライブラリー”(異所発現トラップ法)を採用する。これらのショウジョウバエに、
病原微生物を感染させ、その致死性または増殖を指標にスクリーニングを実施する。
(2)《場の挙動》トレランス状態にある節足動物における病原体動態解析:①発光・蛍光 in vivo イ
メージング装置により、トレランス状態にある病原体の増殖様式と体内動態を経時的かつ非侵襲的
に観察する。病原体の挙動と感染表現型との相関を指標に、トレランス時における病原体の
spatio-temporal な動態マップを作成する。②FRET 共焦点レーザー顕微鏡を用いて、主にベクタ
2
様式21
ー側の動的生理状態の解析を行う。pH やカルシウム、cAMP の変化を検出する蛍光インディケー
ターにより、通常感染とトレランス状態の感染時の細胞応答をリアルタイムに比較解析する。
(3)《場の外挿》病原体媒介節足動物におけるトレランスの機能解析:上記実験により同定された
他のシグナル因子に着目し、ハマダラカ(Anopheles stephensi)、フタトゲチマダニ(Haemaphysalis
longicornis)、およびコクヌストモドキ(Tribolium castaneum)を用いた媒介節足動物モデルにおける
トレランス機構の解析を行う。全身性 systemic RNAi 法に加え、組織特異的 miRNA 発現トランスジ
ェニック節足動物や培養細胞系における生化学的解析などの併用を通じて、病原体感染時にお
けるトレランス状態の有無、組織特異性、および表現型との関連性を解析する。特に、トレランス状
態にあるベクターからの病原体排除可能性を検討するため、中腸バリアの作用を重点的に調べる。
これらの実験により、ベクター側の病原体伝播能とトレランス応答の関連性について知見を得ること
を目指し、さらには人為的にトレランスを減弱させた病原体節足動物の作出を試みる。
(4)《場のスペクトラム》トレランスと病原体伝播能との相関解析:媒介節足動物のトレランスが、ど
のような病原性微生物に対して効果を発揮するか検証するために、マラリア原虫(P. berghei)、犬
フィラリア(D. immitis)、重症熱性血小板減少症候群ウイルス(SFTS)に代表されるウイルス・細菌・
原虫・蠕虫を用いて、媒介節足動物におけるトレランス状態との相関を検証する。また、研究代表
者が有する西アフリカ・ブルキナファソ国での媒介蚊生息拠点(マラリア研究・研修センター)にお
いて、トレランス要因とマラリア疾患流行度との関連性を精査する。これらの実験により、トレランス
の病原体特異性と多様性について一定の法則性を引き出し、病原体媒介節足動物の進化的な成
り立ちに対するトレランスの貢献度を考察する。
5. 研究成果・波及効果
ほぼ全ての節足動物媒介性病原体に共通する特
徴がある。それは、吸血または摂食時に節足動物
体内に取り込まれたウイルス、細菌、寄生虫などの
病原体は、一度腸管へ移行し、腸管内特異的な
生活環ステージを経て増殖・分化することである。
それらの様式を大まかに分類すると、①腸管非接
触(独立)型、②腸管細胞アンカー型、および③腸
管細胞内侵入型となる。つまり、腸管は節足動物
と病原体間の相互作用が最初に起こるエリアであ
り、その作用の結果は節足動物の病原体媒介能(ベクター・コンピテンシー)に強く影響を及ぼす。
言い換えれば、病原体を侵入者と捉えた場合、腸管バリアは生体防御の最前線であり、この上皮
性バリアでは、攻撃的病原体排除と受動的防御の協調作用によりそのポテンシャルが規定されると
考えられる。また、その能力は、相手(病原体)の生物学的性質がウイルスから多細胞真核生物ま
で多岐に渡っても柔軟に発揮されなければならない。注目すべきは、一定数の病原体はそれら生
体防御機能を備えた腸管バリアを通過し、結果として他の宿主へと媒介されることである。このよう
な背景から、研究代表者は、トレランスの場としての腸管バリアの役割を包括的に解析することによ
り、バリア機能を支える普遍的なシステムの発見と、ベクターが“運び屋”足る理由を真に理解する
ことを目指し、以下に代表される知見を得た。
【①中腸内細菌叢による腸管バリアでのトレランス制御の発見】
3
様式21
病原体媒介節足動物における生体防御反応を理
解するにあたり、“本物の”(オーセンティック)媒
介節足動物を対象に研究展開することが重要で
ある。ハマダラカ(Anopheles stephensi)体内での
マラリア原虫( Plasmodium berghei)の発育には、
蚊中腸細胞へのマラリア原虫の侵入・通過が不可
欠であり、またこの過程を経てマラリア原虫の数は
大幅に減少することが知られている。このハマダラ
カ腸内には、動物の消化管内に共生し、免疫機
能や消化機能を補助するなど、宿主の恒常性維
持に重要な役割を担っている中腸内細菌叢が存在する。研究代表者は、ハマダラカ中腸ルーメン
側に多鞭毛型セラチア菌(Serratia marcescens)が存在すると、マラリア原虫の中腸への侵入が阻
害されることを見出した。そのマラリア原虫抑制のために必要なセラチア菌側遺伝子として、flhDC
を特定することに成功した。興味深いことに、侵入に至らなかった残存マラリア原虫は依然としてル
ーメン側で生存しており、蚊個体で考えると病原体と共に存在するトレランス状態となっている。こ
の作用は自然免疫応答を介さないこと、また中腸に生着不能なセラチア菌株特異的な機能である
ことも明らかとなった。マラリア原虫の中腸組織における動態を詳細に解析したところ、原虫(オー
キネート)の中腸侵入により中腸細胞の分裂が促進されること、しかし分裂状態にない細胞を侵入
ウィンドウとして選択することが判明した。さらに研究代表者は、マラリア感染流行地域である西アフ
リカ・ブルキナファソでの蚊サンプリング調査を実施した(ブルキナファソ国立マラリア研究研修セン
タ−・N.サニョン博士との共同研究)。その結果、流行エリア2箇所から採取したハマダラカにセラチ
ア菌群が見出され、その詳細な機能解析の結果、flhDC によって制御されるセラチア菌の形質が
マラリア原虫抑制に重要であることが示された(Bando et al., Scientific Reports ((2013))。
【②腸管バリアでのトレランス分子メカニズムの解析】
腸管レベルでのトレランス機構を底支えする分子メカニズムを明らかにする目的で、ヒト感染性小
形条虫(Hymenolepis nana)と中間宿主・甲虫コクヌストモドキ(Tribolium castaneum)による感染実
験モデルを導入した。トレランス状態に関与している節足動物遺伝子を明らかにするため、甲虫遺
伝子の RNAi スクリーニングによる逆遺伝学的アプローチを実施した。その結果、JAK/STAT 経路
に関与する Hopscotch(JAK キナーゼ)や STAT92E 遺伝子の機能低下により、小形条虫感染によ
りコクヌストモドキが初めて致死を示すことが明らかになった。つまり、JAK/STAT 経路は寄生虫感
染による宿主トレランスをコントロールする役割を持つことが示唆された。また研究代表者らは、表
皮性バリアが破綻した際の内因性デンジャーシグナルが腸管に伝達され、上皮性のカスパーゼ活
性化を介して液性に全身恒常性を制御することを明らかにしている(Takeishi et al., Cell Reports
(2013))。また、マラリア原虫感染ショウジョウバエモデル系による網羅的遺伝子スクリーニングによ
り、抑制性因子として膜型 C 型レクチンタンパク質である Furrowed を同定することに成功した。この
機能は、マラリア原虫媒介蚊である Anopheles gambiae において保存されていること、吸血依存性
に中腸細胞に発現が誘導されること、またそれは C 型レクチンによるマラリア原虫の直接認識を介
することなどを明らかにした。さらに、この C 型レクチンを中腸特異的かつ吸血時に発現させるトラ
ンスジェニック蚊(Anopheles stephensi)を作成し、その蚊ではマラリア原虫オーシストの保持数が
約 50%に低下するという重要な知見が得られた。これらの結果から、寄生虫の侵入により、損傷し
た腸管細胞群の修復応答が JAK/STAT 経路を介して惹起されること、また腸管特異的に発現する
C 型レクチンが保護因子として寄生虫の侵入を阻止する仕組みを想定している。
【波及効果】
以上の知見は、免疫応答などのレジスタンス機構に依存せず、病原体通過数を決定する新しい
仕組みの存在を示しており、その基盤となる「病原体の隔離」に果たす腸管バリアの重要な役割を
明示している。病原体媒介節足動物の対策は、これまで殺虫剤散布が主であったが、薬剤耐性の
出現が長らく問題となっていた。腸内などに存在する微生物叢をコントロールすることにより、病原
体伝播を抑制できれば、SFTS ウイルスを媒介するマダニなどの制御が可能になると期待される。
4
様式21
5
様式21
6. 研究発表等
雑誌論文
計14件
Kuranaga E, Matsunuma T, Kanuka H, Takemoto K, Koto A, Kimura K, Miura M. “Apoptosis controls
the speed of looping morphogenesis in Drosophila male terminalia.” Development 138(8):1493-1499
(2011)
Doi Y, Shinzawa N, Fukumoto S, Okano H, Kanuka H. “Calcium signal regulates
temperature-dependent transformation of sporozoites in malaria parasite development.” Exp
Parasitol 128(2):176-180 (2011)
横山卓也・青沼宏佳、嘉糠洋陸「病原体を運ぶ蚊の免疫システム」 化学と生物 Vol.50 196-202
(2012)
Bando H, Okado K, Guelbeogo WM, Badolo A, Aonuma H, Nelson B, Fukumoto S, Xuan X, Sagnon N,
Kanuka H. “Intra-specific diversity of Serratia marcescens in Anopheles mosquito midgut defines
Plasmodium transmission capacity.” Scientific Reports 3: 1641 (2013)
Takeishi A, Kuranaga E, Tonoki A, Misaki K, Yonemura S, Kanuka H, Miura M. “Homeostatic
epithelial renewal in the gut is required to dampen a fatal systemic wound response in Drosophila.”
Cell Reports 3(3): 919-930 (2013)
Nelson B, Freisinger T, Ishii K, Okado K, Shinzawa N, Fukumoto S, Kanuka H. “Activation of Imd
pathway in hemocyte confers infection resistance through humoral response in Drosophila.”
Biochem Biophys Res Commun 430(3): 1120-1125 (2013)
Saiki E, Nagao K, Aonuma H, Fukumoto S, Xuan X, Bannai M, Kanuka H. "Multivariable analysis of
host amino acids in plasma and liver during infection of malaria parasite Plasmodium yoelii." Malaria
J 12: 19 (2013)
Badolo A, Okado K, Guelbeogo WM, Aonuma H, Bando H, Fukumoto S, Sagnon N, Kanuka H.
"Development of an allele-specific, loop-mediated, isothermal amplification method (AS-LAMP) to
detect the L1014F kdr-w mutation in Anopheles gambiae s. l." Malaria J 11: 227 (2012)
Nei Y, Obata-Ninomiya K, Tsutsui H, Ishiwata K, Miyasaka M, Matsumoto K, Nakae S, Kanuka H,
Watanabe N, and Karasuyama H. “GATA-1 regulates the generation and function of basophils.”
Proc Natl Acad Sci U S A 110: 18620-18625 (2013)
Obata-Ninomiya K, Ishiwata K, Tsutsui H, Nei Y, Yoshikawa S, Kawano Y, Minegishi Y, Ohta N,
Watanabe N, Kanuka H, and Karasuyama H. “The skin is an important bulwark of acquired immunity
against intestinal helminths.” J Exp Med 210: 2583-2595 (2013)
Teshima T, Onoe H, Kuribayashi-Shigetomi K, Aonuma H, Kamiya K, Ishihara H, Kanuka H, Takeuchi
S. “Parylene mobile microplates integrated with an enzymatic release and handling of single
adherent cells.” Small 10: 912-921 (2014)
Aonuma H, Badolo A, Okado K, Kanuka H. “Detection of Mutation by Allele-Specific
Loop-Mediated Isothermal Amplification (AS-LAMP).” Methods Mol Biol 1039: 121-127 (2013)
Yoshimura A, Koketsu M, Bando H, Saiki E, Suzuki M, Watanabe Y, Kanuka H, Fukumoto S.
“Phylogenetic comparison of avian haemosporidian parasites from resident and migratory birds in
northern Japan.” J Wildl Dis 50: 235-242 (2014)
Teshima T, Onoe H, Aonuma H, Kuribayashi-Shigetomi K, Kamiya K, Tonooka T, Kanuka H,
Takeuchi S. “Magnetically responsive microflaps reveal cell membrane boundaries from multiple
angles.” Adv Mater 26: 2850-2856 (2014)
(掲載済み-査読有り) 計14件
(掲載済み-査読無し) 計0件
会議発表
計26件
(未掲載)
計0件
嘉糠洋陸「p38 ストレスキナーゼによるトレランス機構と感染抵抗戦略」第 84 回日本生化学会(京
都)平成 23 年 9 月 21-24 日
Hironori Bando, Hiroka Aonuma, Kiyoshi Okado, Naoaki Shinzawa, Guelbeogo Moussa, N’Fale
Sagnon, Shinya Fukumoto, and Hirotaka Kanuka “Midgut-based insect and parasite interaction in
malaria vector Anopheles mosquitoes” 第5回病原体媒介節足動物国際会議(ギリシャ)平成 23
6
様式21
年 7 月 23 日-30 日
Hironori Bando1, Kiyoshi Okado, Moussa Guelbeogo, Athanase Badolo, Hiroka Aonuma, Shinya
Fukumoto, N’Fale Sagnon, and Hirotaka Kanuka “Impact of intra-specific diversity of mosquito
midgut bacteria on Plasmodium development” 第 80 回米国熱帯医学会(フィラデルフィア)平成 23
年 12 月 4 日-8 日
岡戸清、新澤直明、福本晋也、嘉糠洋陸「ショウジョウバエハエによる病原細菌の摂食媒介」第 34
回日本分子生物学会(横浜)平成 23 年 12 月 13 日-16 日
吉村文、岡戸清、波田一誠、丹羽隆介、福本晋也、嘉糠洋陸「寄生性線虫の生活環における環境
応答性トランジション機構」第 34 回日本分子生物学会(横浜)平成 23 年 12 月 13 日-16 日
伴戸寛徳、岡戸清、Moussa Guelbeogo、Athanase Badolo、青沼宏佳、福本晋也、N’Fale Sagnon、
嘉糠洋陸「腸内細菌の“ゆらぎ”が宿主-病原体相互作用に与える影響」第 34 回日本分子生物学
会(横浜)平成 23 年 12 月 13 日-16 日
齊木選射、長尾健児、万代一翔、土井裕子、福本晋也、坂内慎、嘉糠洋陸「マラリア原虫感染と宿
主血中アミノ酸ダイナミクス」第 34 回日本分子生物学会(横浜)平成 23 年 12 月 13 日-16 日
Erisha Saiki, Kenji Nagao, Shinya Fukumoto, Makoto Bannai, Hirotaka Kanuka “Amino acid-related
host nutrition dynamics during malaria infection”第 14 回日韓寄生虫学セミナー(宮崎)平成 24 年
5 月 23-24 日
Kiyoshi Okado, Hirotaka Kanuka “Odor-based contagious transmission of pathogen by Drosophila
melanogaster”第 10 回日本ショウジョウバエ研究集会(東京)平成 24 年 10 月 13-15 日
Erisha Saiki, Kenji Nagao, Shinya Fukumoto, Makoto Bannai, Hirotaka Kanuka “Amino acid-related
host nutrition dynamics during malaria infection”Keystone マラリア国際会議(米国)平成 25 年 1
月 20-25 日
嘉糠洋陸、伴戸寛徳、岡戸清、Wamdaogo M. Guelbeogo、Athanase Badolo、青沼宏佳、福本晋
也、N’Fale Sagnon「非共生細菌の表現型揺らぎが規定するベクター・寄生虫間相互作用」第 82 回
日本寄生虫学会(東京)平成 25 年 3 月 29-31 日
齊木選射、長尾健児、福本晋也、坂内慎、嘉糠洋陸「マラリア原虫感染時の宿主血中アミノ酸イン
フォマティクス」第 82 回日本寄生虫学会(東京)平成 25 年 3 月 29-31 日
Kiyoshi Okado, Hirotaka Kanuka “Odor-based mechanical transmission of bacteria by fly feces”第
2 回アジア太平洋ショウジョウバエ研究集会(韓国)平成 25 年 5 月 13-15 日
Kiyoshi Okado, Hirotaka Kanuka “Odor-based mechanical transmission of bacteria by fly
feces”EMBO 病原体媒介節足動物国際会議(ギリシャ)平成 25 年 7 月 15-19 日
嘉糠洋陸「ショウジョウバエから知る病原体機械的媒介メカニズム」第 85 回日本遺伝学会(横浜)
平成 25 年 9 月 19-21 日
吉村文、岡戸清、波田一誠、丹羽隆介、福本晋也、嘉糠洋陸「フィラリアの生活環における環境応
答性トランジション」第 11 回分子寄生虫・マラリア研究フォーラム(長崎)平成 25 年 10 月 2-3 日
齊木選射、青沼宏佳、長尾健児、福本晋也、坂内慎、嘉糠洋陸「マラリアをモデルとした重症化と
宿主血中アミノ酸ダイナミクスの相関解析」第 73 回日本寄生虫学会東日本支部会(東京)平成 25
年 10 月 12 日
吉村文、岡戸清、波田一誠、丹羽隆介、福本晋也、嘉糠洋陸「フィラリアの生活環における環境応
答性トランジション」第 7 回蠕虫研究会(神奈川)平成 25 年 11 月 15-16 日
横山卓也、浅野和仁、渡邊直煕、友安慶典、嘉糠洋陸「中間宿主昆虫の小形条虫へのコンピテン
シーと JNK 経路の相関」第 7 回蠕虫研究会(神奈川)平成 25 年 11 月 15-16 日
岡戸清、嘉糠洋陸「ショウジョウバエをモデルとした病原体機械的媒介メカニズムの解明」第 36 回
日本分子生物学会(神戸)平成 25 年 12 月 3-6 日
齊木選射、青沼宏佳、長尾健児、福本晋也、坂内慎、嘉糠洋陸「マラリアをモデルとした重症化と
宿主血中アミノ酸ダイナミクスの相関解析」第 36 回日本分子生物学会(神戸)平成 25 年 12 月 3-6
日
伴戸寛徳、岡戸清、Wamdaogo M. Guelbeogo、Athanase Badolo、青沼宏佳、福本晋也、N’Fale
Sagnon、嘉糠洋陸 ”Intra-specific diversity of midgut bacteria in Anopheles mosquito defines
Plasmodium transmission capacity” 第 42 回日本免疫学会(千葉)平成 25 年 12 月 11-13 日
横山卓也、Ramila P. Parajuli、相沢智康、河野敬一、出村誠、友安慶典、嘉糠洋陸 “Innate
immune response against tapeworm infection in intermediate host” 第 42 回日本免疫学会(千葉)
平成 25 年 12 月 11-13 日
7
様式21
Kiyoshi Okado, Hirotaka Kanuka “Odor-based mechanical transmission of bacteria by fly feces”
Keystone 国際会議 Mechanisms and Consequences of Invertebrate-Microbe Interactions(米国)
平成 26 年 1 月 26-30 日
Takuya Yokoyama, Ramila P. Parajuli, Tomoyasu Aizawa, Keiichi Kawano, Makoto Demura,
Yoshinori Tomoyasu and Hirotaka Kanuka “Genetic dissection of interaction between intermediate
host and human tapeworm in red flour beetle, Tribolium castaneum” Keystone 国 際 会 議
Mechanisms and Consequences of Invertebrate-Microbe Interactions(米国)平成 26 年 1 月 26-30
日
手島 哲彦、尾上 弘晃、青沼 宏佳、嘉糠 洋陸、竹内 昌治「微小プレートを用いた寄生虫の宿
主細胞侵入過程の多角度共焦点観察」第 83 回日本寄生虫学会(愛媛)平成 26 年 3 月 26-28 日
専門家向け 計26件
図 書
一般向け 計0件
実験医学「感染症 “死の病原体”に前線で挑むサイエンス」(羊土社・企画/嘉糠洋陸)2013 年
12 月号 Vol.31 No.19
計1件
産業財産権
出願・取得
状況
(取得済み) 計0件
(出願中) 計0件
計0件
Webページ
(URL)
内閣府 最先端・次世代研究開発支援プログラム 寄生虫系3課題合同 HP
“寄生虫感染症制御への新しいタクティクス”
http://jikei-tropmed.jp/nextindex.html
国民との科
学・技術対
話の実施状
況
本事業について、寄生虫学関連3課題間(帯畜大・西川義文准教授、三重大・岩永史朗准教授)で
「高大連携やスーパーサイエンススクールの枠組みを活用し、高校生を対象とする研究アウトリー
チ活動」について以下のように協力し実施した。
・甲府南高等学校 SSH 講演会 平成 23 年 10 月 24 日(山梨県甲府市) 「感染症の拡がり方」に
関する学術講演 参加者:約 150 名(高校2年生)
・ 甲府西高等学校理数クラブ講演会 平成 23 年 10 月 14 日(山梨県甲府市) 「感染症の拡がり
方」に関する学術講演 参加者:約 20 名(高校 1-2 年生)
・三重高田高等学校 平成 23 年 12 月 22 日(三重県津市) 「感染症の拡がり方」に関する学術
講演と寄生虫観察法の実習 参加者:約 40 名(高校 2 年生)
・甲府西高等学校理数クラブアウトリーチ活動 平成 23 年 11 月 12 日(東京慈恵会医科大学) 標
本館の見学および寄生虫標本の観察法等の実習 参加者:約 20 名(高校 1-2 年生)
・帯広畜産大学オープンキャンパス講演会 平成 24 年 7 月 28 日(北海道帯広市) 参加者:30 名
(高校生とその父兄)
・東京学芸大学附属世田谷中学校課外活動 平成 25 年 9 月 13 日(東京慈恵会医科大学) 「寄
生虫に触れてみよう!」 参加者:24 名(生徒と引率教諭)
読売新聞 平成 24 年 7 月 13 日付「蚊に刺されないための防御策」
朝日新聞 平成 25 年 3 月 6 日付「季節外れの蚊」
日本経済新聞 平成 25 年 3 月 8 日付「マダニがウイルス媒介 新感染症、国内でも死者」
読売新聞 平成 25 年 5 月 23 日付「寄生虫は任せろ」
TBS JNN報道特集「マダニ感染症 SFTS とは?」平成 25 年 4 月 13 日放送(VTR 出演)
新聞・一般
雑誌等掲載
計4件
その他
8
様式21
7. その他特記事項
国立大学法人 帯広畜産大学 原虫病研究センターならびに東京慈恵会医科大学 熱帯医学
講座スタッフ等の協力により、本プログラムを推進した。
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