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資料 1 勤務校では年度末に授業評価を生徒に書かせています。65 期
資料 1 勤務校では年度末に授業評価を生徒に書かせています。65 期(昨年度高 1)アンケートで置村の厳し い生徒叱責態度が批判され、それに対して回答をしました。中だるみの時期の生徒全員に強制的に聴 かせる授業を行った意図を述べた文章の一部です。 …(前略)…「今後、国際人として外国で教育を受けた教養人と共に活躍する六甲生に現代史、20 世紀史を教 える。20 世紀とは人類の歴史において未曾有の世界大戦があった世紀であるから、この点につい ては可能な限り詳述する。特に次の 2 点に留意する。アジア人としての日本人を意識してアジア 太平戦争における被害と加害の問題を教える。これが学校で受ける世界史授業が最後になるであ ろう多くの理系進学者を想定して、医療・核の問題について、倫理的側面を意識して教える。」 私が上記のような考えに至ったのは 1995 年夏の体験である。戦後 50 年の年、私はポーランド語を学習す べく、1 か月ポーランドの大学の寮で過ごした。そこで各国留学生と話した経験が大きい。…(中略)…アジ ア人のみならずヨーロッパ人ともあれこれと議論した。印象深いのは日本人の大学教授から言われたことで ある。 「今時の大学生は歴史、現代史を全く勉強していない。そもそも高校の授業で教えられていない。地理 や公民科しかしていない。高校の歴史教員は何をしているのか。」 65 期生は中 3 で 2 単位、高 1 で 2 単位、必修授業としての世界史授業を受けた。上記下線部のように多く の理系進学者にとってこれで世界史授業は終わりである。ここで学ばなければ学ぶ機会はないのである。 「い つか本人の自覚が出てきてからでよい」では遅い。…(中略)…日本の若者が現代史を知らないことを痛感 するのは外国人、特にアジアの人から責められた時である。その時「知らない」と居直ることがどれ程、再び 被害者を傷つけることになるかはアウシュヴィッツ冊子冒頭のシマンスキ氏の言葉を読めば分かる。一人の 日本人青年の無知無関心は個人の問題に止まらない。…(後略)… 資料 2 勤務校では定期考査後に生徒の学習状況や定期考査の講評などについて、各学年会が保護者宛の通信 を発行しています。以下に 64 期(現高 3)の学年通信における拙稿の一部を紹介します。 中 3 学年末(2004 年 3 月) 今学期は ①アウシュヴィッツ ②沖縄戦 ③核問題 の三大テーマを学習しました。20 分程度に編集したビデ オを見る授業が中心でした。生徒諸君が見たビデオは以下の通りです。 1/13:1 月 8 日放送のフジテレビ「白い巨塔」アウシュヴィッツ訪問場面(約 5 分) 1/15:関西学院アウシュヴィッツ展(1988 年)で使われていたビデオ(約 15 分) アウシュヴィッツの紹介・ナチス台頭の説明・アンネの日記 1/20:(1)ポーランド国立アウシュヴィッツ博物館で使われているビデオ(約 20 分) (2)ドキュメンタリー映画『夜と霧』(約 25 分) 1/22:1999 年度アカデミー賞短編映画賞受賞作『ビザと美徳』 (約 22 分、杉原千畝の話を映画化した作品) 1/29:「沖縄戦 1 フィート運動」「映像の 20 世紀、沖縄県」を編集したもの(約 20 分) 2/19:「その時歴史が動いた トルーマン大統領の原爆投下決断」(約 20 分) 2/24:ETV 特集「ポーランド人女性が見たヒロシマ」(約 20 分) 被爆者の残した日記から被爆体験を聴き取り調査するポーランド人留学生 2/26:「その時歴史が動いた アインシュタインの悲劇」(約 20 分) ①~③のテーマに関して、以下の資料を配りました。①映画『戦場のピアニスト』関係(パンフレットの抜粋、 主人公の息子のインタビュー記事、ポランスキ監督の記事)、1995 年の『マルコポーロ』(アウシュヴィッツの 嘘の記事で廃刊になった雑誌)事件の記事 ②『琉球・沖縄史』(沖縄の高校社会科の副教材)の抜粋、映画 『GAMA 月桃の花』パンフレットの抜粋、沖縄戦全国巡回展のパンフレットの写し ③1995 年 8 月 6 日のポー ランド日刊紙の原爆特集記事、本年2・3 月の新聞記事(普天間等の米軍基地問題・原爆投下民衆裁判・第五福竜 丸事件関係・6 か国協議)、近年の核関係新聞記事(臨界前核実験・東海村臨界事故)、『平和・環境教材集』の 抜粋、2000 年度六甲中学入試問題の抜粋。関学アウシュヴィッツ展パンフレットも生徒諸君に貸し出しました。 64 期生は来年沖縄へ研修旅行に行きます。ご参考までに見ておかれたらよいと沖縄映画を挙げます。『オキ ナワの少年』 (基地問題を背景とした映画)、『GAMA 月桃の花』 (沖縄戦、一学期に見る予定)、『MABUI』 (基 地問題を背景とした沖縄の自然が美しい映画)、『ナビィの恋』(「ちゅらさん」の平良とみ主演の音楽映画、離 島の生活)、『ホテルはいびすかす』(『ナビィの恋』と同じ監督作品。沖縄の習俗や精神文化。) 今学期の学習を通して生徒諸君に、①~③に関する平和を求める動きが相互に結びついていること(アウシ ュヴィッツのトラウマを背負うポーランド人のヒロシマへの共感、米軍占領下の沖縄の人がビキニで被爆する 例が多かったこと)に気付いてほしかったのですが…。テーマ相互の関連づけ、ビデオ・プリント中心の授業 で極力板書なしで生徒諸君に要点をまとめさせる等々。…(後略)… 高 1 一学期末(2004 年 7 月) 一学期中間考査後しばらくは中間考査前の続きで日独比較占領史をテーマ学習しました。…(中略)…この 1か月余り、小泉首相の再訪朝に始まり、天安門事件 15 周年、レーガン元アメリカ大統領死去、ノルマンデ ィー上陸作戦 60 周年、沖縄慰霊の日、朝鮮戦争勃発の日、自衛隊発足 50 周年の日等々。冷戦やポスト冷戦の 国際政治に関係する日が目白押しでした。…(中略)…下位層に共通している特徴があります。 ②試験を受けっ放しで復習をしない。 今回もドイツの「過去の克服」に関して戦後補償の問題を出しました。今年度の都留文科大学の小論文 問題を授業で読みました。未だに個人補償と国家賠償の違いが分かっていない人がいました。 高 1 二学期中間(2004 年 10 月) 今学期前半はインドシナ戦争・ヴェトナム戦争をテーマに学習しました。…(中略)…チェチェン人ゲリラ の学校占拠事件の歴史的背景説明に関する説明で 2 時間以上費やし、テーマが中途半端になる可能性が出てき ました。今回は前述のテーマ 1 本に絞ることにしました。その結果、生じた時間的余裕を映画『プラトーン』 (35 分の編集版)鑑賞や韓国映画『ホワイトバッジ』(1992 年制作)などの背景説明にあてました。 今回もビデオを写真などの視覚教材を多用しました。ヴェトナム戦争は映像による報道が反戦世論を形成し た史上初の戦争であったからです。沢田教一など多くの戦争報道写真家の写真や NHK『映像の 20 世紀』や映 画を見てもらいました。今年度の文化祭における体験授業で私は「映像を用いた世界史授業~最近の大学入試 より~」と題して、映画『戦場のピアニスト』 (DVD)の 2 場面を見て問題に答える試験(県立長崎シーボルト 大学の特別選抜入試)を紹介しました。文章を読解するのではなく、映像を読解する能力、文字ではなく生身の 人間の言動から何かを読み取る能力も今時の学生には求められています。今時の学生はインターフェイスのコ ミュニケーション能力に欠けるからです。…(後略)… +++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++ 【参考】戦争体験聴き取り調査(65 期高 1 に冬休み課題を出した時の指示プリント) 戦争を体験されたご年輩の方々に下記の要領で聴き取り調査を行う。レポートであることを伝え、失礼のな いよう丁寧にお願いする。必要ならば会話を録音すること(もちろん相手の許可を得ること)。 対 象:お祖父さんお祖母さん・親戚の方・ご近所の方、どなたでも構わない。戦争体験をされた方で 少なくともお一人、出来れば多くの方に聴き取りを行う。同じ家族で同じような体験をされて いる方より様々な家族、様々な状況で戦争時代を過ごされた方、戦争体験をされた方に聴く方 がよい。聴き取り人数の多いものは評価を高くする。 聴き取り項目:・相手のお名前、生年、君との関係 ・相手の方が戦争中、どこで何をしていらしたか(例えば「神戸で出征した夫の留守宅を守っ ていた主婦」とか「昭和×年○月から鳥取県に疎開していた国民学校の生徒」とか「昭和△ 年□月より南方に出征していた陸軍○○部隊所属の二等兵」など所属や生活の状況)。 ・戦争中の辛かったこと、楽しかったこと、今でも印象に残っていること。 ・1945(昭和 20)年 8 月 15 日の玉音放送(昭和天皇による終戦のラジオ放送)を聴いた日の こと(どこで、どのような状況、どのような天気の下で聴いたか、など)。 ・君たち高校生へのコメント 書 式:ワープロ書きは不可。必ず手書きで六甲学院指定の B5 横書き 400 字詰め原稿用紙に書く。 注 意:上級生で同様の課題を出した時、インターネット上の戦争体験者の記事を写し書きして、まるで 自分が直接に聴き取り調査をしたかのようなレポートを書き、出した者がいた。課題を与えた 意図・狙いは諸君に戦争世代の話を直接見聞きして貰いたいからである。面と向かい合うこと から話者の表情や空気からでも何かを読み取り、感じ取ることが出来るはずである。