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Nepal Morocco Niger Yemen
[基礎教育]
日本の協力と展開 ●[基
礎教育]
ニジェール
教育へのアクセスの確保
開発途上国の就学率を向上させるためには、学校の建
Niger
技術協力
みんなでつくるみんなの学校
顕著で、こうした問題に十分に配慮することも重要です。
ニジェールは世界でも最も貧しい国の
を通じて、学校への認識
一つで、UNDP(国連開発計画)の人間
を変えていくことが必要
開発指数は世界177カ国中176位(2004
です。そのためニジェー
設や修復はもちろんのこと、親や地域住民の子どもへの教
日本は、世界の未就学児童の6割を占めている女子の教育
育の意識を高めることが重要です。貧しい家庭では、経済
について、男女別トイレを整備するなど、女子が安心して
年)
、初等教育の総就学率は40%(2001
ルでは教師、保護者、コ
的余裕がなく家事労働を子どもに負担させるため、親が子
通える環境を整備する工夫をしています。
年)
と世界最低水準にあります。ニジェ
ミュニティの代表による
学校整備や教員配置が困難な農村地域では、テレビや
ールは、「教育開発10カ年計画」で総就
学 校 運 営 委 員 会
備などのハード面と、親や住民への啓蒙活動や学校運営委
ラジオなどを使った遠隔教育支援も始まっています。正規
学率を2000年の34%から2013年には
(COGES)
を作り、住民
員会支援などのソフト面の両方から、子どもの教育機会の
の学校教育以外のノン・フォーマル教育*も、教育の機会
91%まで向上させることを目標としてい
が学校運営の中心的な役
改善に協力しています。学校建設では計画段階からの住民
を逃した子どもや大人に基礎的教育の機会を与える、有効
ますが、教育に対するニーズはあるもの
割を担うことを目指して
の、学校数の絶対的不足と、学校に対
います。
参加により、学校は自分たちのものという意識を高め、学
な手立てです。日本は、一種の寺子屋といえる、コミュニ
する親の強い不信感から子どもを学校に
校を大事にし、運営に積極的に貢献するなどの効果を生ん
ティ学習センターによる識字支援などを積極的に行い、
行かせないことが問題となっています。
では2004年1月から「住
でいます。
2003年からの「国連識字の10年」にも貢献しています。
どもの通学を勧めない場合も多いのです。日本は、学校整
貧困層、少数民族、女子など社会的に不利な立場の子
*正規の学校教育制度の枠外で組織的に行う教育活動。たとえば成人や青年を対象と
どもたちの未就学率は特に高く、都市部と地方との格差も
した識字教育、正規の学校教育を受けていない子どもに対する代替的教育、保健衛
生教育などが含まれる。
ネパール
Nepal
一般プロジェクト無償資金協力
JICA(国際協力機構)
学校不足に対しては世界銀行や各国の
民参画型学校運営改善
支援で約20,000教室が建設される予定
計画(みんなの学校プロ
で、日本もこれまでに23億1,500万円の
ジェクト)」を実施し、COGES運営モデ
施して、学習環境の改善がみられ、教育
無償資金協力により、144校の学校建設
ルづくり、地方教育行政官の能力向上を
機会の拡大に貢献しています。また、開
を支援しました。
通して、住民みんなの手による学校づく
発された研修マニュアルがニジェールの
一方、親の学校に対する不信感を取り
りを支援しています。すでに、住民自ら
公式マニュアルのベースになるなど、全
除くには、地域住民の学校運営への参加
が学校をよくするための活動を計画・実
国レベルでも大きな効果をあげています。
Ye m e n
万人のための教育に向けて
ネパールは、初等教育への機会拡大、
イエメン
パールは、
「万人のための教育2004-2009」
質的向上、教育行政の運営実施能力の
計画により、さらに初等教育の普及と質
改善を目指して、1999年から2004年ま
の向上を行おうとしています。
技術協力
女子教育のモデルづくり
で「第2次基礎初等教育プログラム」を実
日本は、2003年10月からの「『万人の
UNDP(国連開発計画)の『人間開発報
イエメンは2002年に10カ年国家計画
学校関係者の学校運営能力、地域の教
施しました。この結果、開始時に70%だ
ための教育』支援のための小学校建設計
告書2004』によれば、イエメンは、世界で
「基礎教育開発戦略」を策定し、基礎教
育への取り組みはまだ十分とはいえない
った初等教育純就学率は、2004年には
画」により、その需要や地域の貧困度、
最も基礎教育についての男女格差が大き
育の拡充、特に男女格差の是正に本腰
84%に改善されました。
通学状況などを考慮して選ばれた15郡
い国です。初等教育の就学率は合計67%
を入れて取り組み始めました。しかし、
しかし、教育機会の拡大と質の向上が
を対象として、教室や学習リソースセン
に対し女子は47%、成人識字率も全体
行政の地方分権化が始まったばかりなの
予定で実施している「タイズ州地域女子
依然として課題となっており、施設不足
ターの建設を支援しています。日本は必
の49%に対し女性は28%にすぎません。
で、地方教育行政官の計画立案能力、
教育向上計画」は、地方行政官、学校関
による入学希望者の受け入れ拒否、雨期
要な資機材を調達し、建設は周辺地域
の休校、野外での授業などの対応をやむ
の住民参加によって行われています。
をえず行う学校もあります。そのためネ
モロッコ
有償資金協力(円借款)
状態が続いています。
JICAが2005年6月から2008年11月の
係者、地域住民の三者が参加する活動
を通じて、学校と地域住民が主体となっ
た女子教育を促進する地方教育行政モデ
日本の支援で建てられたネパールの小学校の教室
Morocco
ルの開発を目的としています。
農村に中学校を
女子教育の重要性
モロッコは基礎教育に力を入れてお
り、1990年度53%だった小学校の就学
建設し就学率を向上することは、モロッ
開発途上国では未就学児童の約6割が女
子であるなど、教育の男女格差は大きな問
コの優先課題のひとつです。
このため、日本はJBIC(国際協力銀
題です。女性が字を読めるようになり教育
一方、中学校教育は校舎建設も小学校
行)
を通じモロッコに、
「地方部中学校拡
程度が向上すると、保健知識が高まり妊
卒業生の急増に追いつかず、就学率は
充計画」円借款(約89億円)
を供与しまし
63%にとどまります。特に地方農村部で
た。これは5地域の地方農村部に中学校
は近隣に中学校がないために就学率
101校を新設して機材や図書を整備する
わかっています。そして女性の教育は仕事
は42%にすぎません。また女子の
ものです。さらに実施機関の教育・人材
の機会や自立、開発への参加や自己決定に
就学率が、2001年度は都市の
育成地域アカデミーの組織能力強化も計
つながります。宗教・文化のちがいはあっ
79%に対して地方農村部は33%
画されています。これにより貧困層の多
ても、すべての人が公平に教育を受ける機
と低いことも問題です。地方
い地方に中学校教育が普及し、都市・地
会を手にすることが、公平で平和な社会の
農村部の各市町村に中学校を
方間や男女間の格差是正が期待されてい
実現のために必要です。
率は2001年度には90%に達しました。
10
学校運営委員の選挙
中学校で学ぶ子どもたち(©JBIC)
ます。
娠・出産時の病気を防ぎ、乳幼児の死亡率
を減少させるといわれます。また、妊産婦
死亡率と出生率の減少にも貢献することが
タイズ州の女子教室
11
[基礎教育]
ベトナム
Vietnam
草の根技術協力
少数民族に識字を
ベトナムでは、地域住民が運営・管理
では、地域住民が自力でこのようなセン
するコミュニティ学習センター
(CLC)
を
ターを普及させることは難しく、モデルと
通じて、さまざまな理由から学校教育を
なるセンターの設置が求められていました。
アフガニスタン
開発途上国では、学校などの不足だけでなく、教育の質
ラムの未整備などがあげられます。このようなさまざまな要
が低い、学習内容が生徒たちの生活環境やニーズに合って
因のなかでも、教員の資質は、特に教育の質の向上に大
受けられなかった人々へのノン・フォー
そこでJICAでは日本ユネスコ協会連
いないという問題があります。そのため、開発途上国では
きな影響を与えます。そのため日本は、理数科を中心とし
マル教育の機会普及に取り組んでいま
盟と協力し、
「北部山岳地域コミュニテ
小学校を卒業しても基礎的な読み書きや計算ができない子
た現職教員研修のモデルづくりと普及を支援して、教師の
す。センターの運営は1997年から日本
ィ学習センター普及計画」
(2003年10月
どもがかなりの割合を占めています。また、留年や中途退
授業構成力を高め、児童・生徒の理解度の促進をはかっ
ユネスコ協会連盟やユネスコ・バンコク
∼2005年6月)
を実施、北部山岳地域の
事務所の協力により開始されました。
8省各1村にモデルとなるセンターを設
学も多くなっています。
ています。また、教材や指導書の開発と普及も支援してい
しかしながら、厳しい社会・経済状況に
コミュニティ学習センターで学ぶ少女たち
教育の質の改善
置し、8省の村民、とりわけ成人非識字
置かれている北部山岳地域の8省(ソン
者や初等教育の中途退学児童を対象に、
ラ、ラオカイ、イェンバイ、ハザン、トゥエ
地域住民の生活の質の向上を進めるとと
ンクァン、カオバン、バッカン、ランソン)
もに、センターの普及を支援しました。
Afghanistan
技術協力
「寺子屋」が復興を支える
教育の質が低い要因には、訓練を受けた教師の不足、
教師の意識や技能の低さ、教科書や教材の不足、カリキュ
ケニア
ケニアは2020年までの産業の工業化
実施と教師の創意工夫をうながすASEI
を目標としており、担い手となる人材を
(Activity, Student, Experiment,
I m p r o v i s a t i o n )という授業改革を行
っています。また、授業内容や生徒の到
達度に従い授業計画を改善するPDSI
(Plan, Do, See, Improve)方式を定着
させました。こうしたケニアの経験や成
果はアフリカの近隣諸国の関心を集め、
2002年には域内連携ネットワーク
「SMASSE-WECSA」が設立され、現在
30カ国以上のアフリカ諸国が参加し、研
域の図書館、集会場としての役割を果た
育成するため、初中等教育の理数科教育
し、日本の近代教育の基礎となった寺子
ェクト」
(2004年3月∼2007年3月)
とし
し、また裁縫、ミシンなどの職業訓練も行
の改善が課題です。 日本は、現職教員
屋。寺などを利用したこの私塾は、19世
て、寺子屋をモデルとしたコミュニティ学
ったりと、識字教育と同時に、生活・生
研修によって理数科教育を改善する
「中
紀初めに1万5,000あったといわれます。
習センターの支援に取り組んでいます。
産のための手段を得て復興を目指す人々
等理数科教育強化計画」
(SMASSE)
を、
のさまざまなニーズにこたえることが期待
9地域を対象に1998年から5年間実施し、
されています。
2003年7月から2008年6月の予定でフェ
それがいま世界各地で識字教育を支え
このプロジェクトでは、カブール市内3
ています。日本ユネスコ協会連盟の「世
カ所にセンターを建設し、アフガニスタ
界寺子屋運動」は1990年の国際識字年
ンにおける新しいノン・フォーマル教育の
をきっかけに始まり、以来43カ国に寺子
モデルを構築することを目指しています。
屋を建設し、地域の人々による自主的な
センターでは、地域住民のための識字教
の関係者が知恵を出し合い、生徒中心の
識字教育のシステムを広め、日本はこの
室が開始されており、参加者は熱心に読
教授法・学習法として、実験・実習の
活動を支えてきました。
み書きを学んでいます。また、センターの
運営には、地域住民の主体的な参加が不
可欠であり、プロジェクトでは地域の長老
3分の2が読み書きができない状態にな
や男性、女性のリーダーたちへの研修に
りました。JICAと日本ユネスコ協会連
も力を入れています。寺子屋は同時に地
Kenya
生徒のための教え方と学び方
盟は、
「ノン・フォーマル教育強化プロジ
アフガニスタンでは長い内戦と爆撃で
改善するために、教員養成大学の整備を行っています。
技術協力
江戸時代、庶民の教育機関として普及
教育システムが壊滅状態となり、人口の
ます。そして、教員の絶対数不足や無資格教員の問題を
ーズ2が始まっています。
このプロジェクトでは、ケニアと日本
修やネットワークづくりを行っています。
SMASSE-WECSAはアフリカ開発の
ための新パートナーシップ(NEPAD)の
最重要プロジェクトと認定されており、
ケニアと日本の成果がアフリカ域内に広
がっていくことが期待されています。ま
た、SMASSEはアフリカ教育開発連合
(ADEA)理数科ワーキンググループの活
動の中心的役割も担っています。
勉強の楽しさ伝える協力隊
青年海外協力隊は、約70カ国で7分野
ノン・フォーマル教育のワークショップ
120以上の職種でボランティアを行い、教
育文化部門での活動が45%を占めていま
エチオピア
一般プロジェクト無償資金協力
Ethiopia
数えます。開発途上国の地方農村部では教
師の絶対数が不足しており、また教員養成
ないため、教師の力量も不足しています。
協力隊員は、カリキュラム作成や現地教師
エチオピアでは、教師、教科書がとも
各々選択した地方語で行うことができる
への助言とともに、実験や観察などを通じ
に不足し、初等教育就学率は低く、地方
と定めています。これにより遠隔教育放
て、生徒たちに理数科の楽しさを伝えるこ
格差もきわめて大きい状況です。こうし
送も各州の教育局による独自のカリキュ
とが最も期待されています。2001年度か
た状況に対し、遠隔教育は教育へのアク
ラムに基づき、地方の言語を使用した番
らは、公立学校の教師がそのままの身分で
セスを広げ、地域間格差を是正するため
組が必要になりました。
に有効とされ、エチオピアでも採用され
ています。
12
く、2004年度春・秋期募集では100件を
システムが未整備で理科の実験などが行え
地域主導の遠隔教育
放送機材の実習
す。特に「理数科教師」への募集要請は多
日本は「遠隔地教育機材計画」により、
活動できる「現職教員特別参加制度」も始
まりました。
各州のラジオスタジオ
(8カ所)
とテレビ
エチオピアでは数多くの言語が使用さ
スタジオ
(2カ所)の番組制作機材の整備
れていますが、これまでは英語を教授言
を支援しています。また、テレビとラジ
語とした統一プログラムを放送してきま
オ教育番組制作の専門家を派遣し、ハー
した。1996年の「教育セクター開発計画
ドとソフトの両面から、全国の遠隔教育
プログラム」では、初等教育を各地方が
システムの確立を支援しています。
理科の実験をする生徒
13
[基礎教育]
ホンジュラス
Honduras
技術協力
算数を教える力を高める
バングラデシュ
Bangladesh
技術協力・一般プロジェクト無償資金協力
子どもにわかる教え方を
ユネスコなどの報告によれば、中南米
た。これを受けてJICAは、2003年に現
教育関係者にも伝わり、2003年の中米
バングラデシュは、1990年以降、初
2004年からは、第2次初等教育開発計
連携し、地域での学校運営の強化や、貧
諸国では、初等教育の純就学率は平均
職教員の指導力向上を目標として「算数
教育大臣会合でも取り上げられ、今後中
等教育の完全普及を目指して義務教育
画の枠組みのなかで、教員研修、特に教
困層、少数民族、障害を持つ子どもなど
して90%を超えていますが、留年や中途
指導力向上プロジェクト」を開始しまし
米地域の広域的協力として実施されるこ
化を進めた結果、総就学率は91年の
員の授業実践力の向上に重点をおいた
の社会的弱者教育支援のため、2005年
退学の問題が深刻で、教育の地域・階
た。このなかで小学校1年生から6年生
とが決まるなど、15年以上にわたる青年
76%から96年には96%にまで改善され
「小学校理数科教育強化計画」を実施し
に2億4,300万円の無償資金協力を実施
層・人種による格差も大きいことが問題
までの教師用指導書と児童用作業帳を開
海外協力隊の地道な活動がこの地域で開
ました。しかしながら、依然として児童
ています。また、ユニセフとも引き続き
となっています。
発し、これらを活用して現職教員への指
花しようとしています。
の3分の1が卒業前に中退しており、こ
ホンジュラスでは、2015年までに男
導法研修が実施されています。さらに
のような状況を改善するために、98年か
女すべての就学年齢児童について、6年
2005年には児童用作業帳が国定
ら
「第1次初等教育開発計画」、2004年
間の初等教育の完全普及と修了を達成
教科書として採用されました。
からは「第2次初等教育開発計画」を開
する目標を掲げています。 しかし現状で
こうした成果は他の援助関係
は6年時の修了率は、2000年では中退や
者の関心を集め、スウェーデンと
留年のために31.6%と停滞しています。
カナダがファスト・トラック・イニ
日本は、第1次初等教育開発計画に基
青年海外協力隊は、1989年から教材
シアティブ(FTI)のもとで指導書
づいてユニセフが進めてきた「地域別教
開発や現職教員派遣などで算数科協力
と作業帳の全国配布の費用を支
育環境集中改善計画」に対し、2002年に
を行っており、その高い評価により、ホ
援するなど、多方面での連携が
2億5,200万円の無償資金協力を行い、
ンジュラスの現職教員教育継続研修のう
始まっています。また、このプ
教室での学習の質の向上を支援するた
ち、日本へ算数科の協力要請がありまし
ロジェクトの成果は周辺諸国の
始し、バングラデシュと援助機関が協調
して教育開発に取り組んでいます。
め、学校教材、教員研修マニュアルなど
教材展示会で説明する青年海外協力隊員
EFA
(Education for All)
・ファスト・トラック・イニシアティブ
(FTI)
ファスト・トラック・イニシアティブは、
しました。
適切な教育開発計画を策定した低所得国に対
MDGsとEFAダカール目標の「2015年までの
して、援助を優先的に行うというイニシアテ
初等教育の完全普及」のための、低所得国と
ィブです。2005年9月現在、16の低所得国が
援助国・機関とのパートナーシップとして、
支援の対象となっており、日本はそのうち14
2002年に世界銀行の主導で発足しました。
カ国に支援を行っています。2004年度には
初等教育の完全普及の実現のために外部支援
これらの国への日本の基礎教育協力はほぼ倍
が必要で、貧困削減戦略と目標達成に向けた
増しています。
が供与されました。また、青年海外協力
隊員が協力して制作した算数ドリルが授
業に取り入れられるようになるなど、現場
レベルで連携した活動が行われました。
熱心に研修を受ける教員たち
マラウイ
完成した指導書と作業帳
一般プロジェクト無償資金協力
Malawi
中学校教員を育てる
マラウイでは、1994年の初等教育の
無償化で就学者数が急増し、中等教育
の需要も高まっていますが、資格を持つ
教員や施設が大幅に不足しています。初
等教員を中等教員として採用し補ってき
たため、65%が小学校教員資格しか持
っておらず、多くの中学校では正規のカ
リキュラムの授業ができません。そのた
め、2000年からの新カリキュラムを教
えられる中等教員の養成と、女子の就学
率を改善するために女性教員の増員が急
務となっています。
マラウイ最大のドマシ教員養成校も、
もともと初等教員の養成校だったため、
必要な施設や機材が不足し、新カリキュ
ラムの中等教員養成が困難です。日本
は、この施設改善と機材整備のために、
2004年7 月から無償資金協力「ドマシ教
ドマシ教員養成校で学ぶ学生たち
員養成校改善計画」を行っています。こ
れにより毎年120人の女性を含む480人
の有資格教員が育ち、中等教育の質が改
善され、女子の中学校進学が促進される
ことが期待されています。
青年海外協力隊員による教員研修
14
15
[基礎教育]
Vietnam
ベトナム 技術協力
教育マネジメントの改善
教育の開発計画づくりを支援する
国家開発計画で教育改善を最重要政
育予算の増加、教員の量的・質的向上、
2001年に策定しました。
教育の機会と質を向上し、格差の是正を改善し、その
す。多くの途上国で進められている地方分権化の流れにそ
成果を持続させるためには、教育マネジメントの改善が不
って、教育行政も、より生徒に近い学校や地方行政に権限
可欠です。教育の現状を的確に把握して政策を策定する
が移ってきていることから、こうした地方の教育行政官や学
体制が確立されていないこと、さらに教
能力、そして政策を効果的に実施する能力や体制整備が
校の能力向上も積極的に行っています。地方の教育行政官
員人事や施設設備などに直接の責任と権
求められています。
が地域の教育ニーズを的確に把握できるように、教育分
限がある省、郡、村などの地方自治体教
析・データ整備に関する能力強化や、地域別の教育計画立
育局の能力向上の必要性が指摘されてい
日本は、教育政策や計画の作成支援を実施したり、途上
国が援助国や機関の調整を行う体制の支援を行っていま
策と位置づけるベトナムは、初等教育の
施設設備の拡充などを目標とする
「教育
しかし、具体的なプログラムが策定さ
純就学率99%達成、児童1人あたりの教
開発のための戦略的計画2001-2010」を
れていないことや、援助側の連携、支援
ました。
案なども支援しています。
そこでJICAは、2001年7月から2004
年3月まで、
「初等教育セクタープロブラ
ム開発調査」を実施し、ワークショップ
Indonesia
インドネシア 技術協力
などにより省レベルの初等教育開発計画
の策定能力を強化するとともに、それを
集約した国レベルの初等教育開発計画の
策定を支援しました。さらに援助国・機
関の会合を開催して援助側の調整も行い
住民主体の学校教育を
初等教育の全国的な普及をほぼ達成し
ました。
「地域教育支援開発調査」とそのフェ
してきました。現在は、そのモデルを他
たインドネシアでは、現在中学校教育の
ーズ2では、コミュニティと学校ごとに、
の地域に普及するために、2004年9月か
義務化を最優先課題の一つとして推し進
父母や住民代表などによる教育委員会と
ら2008年9月までの予定で「地方教育行
めています。これを受けてJICAは、「住
学校委員会を設立し、地域と学校ごとの
政改善計画」を実施し、地方教育行政官
民参加の学校運営」を柱とする中学校教
教育開発計画を作成しました。そして住
の能力強化に特に重点を置いて活動して
育のモデルを構築し普及するための協力
民への啓発、教員研修、施設改善など
います。
を1999年以降、継続的に行っています。
の活動を行い、参加型の教育行政を確立
初等教育開発計画策定のためのワークショップ
アフガニスタン 技術協力
Afghanistan
先生の指導力を高める制度づくり
アフガニスタンでは、復興過程の進展
にともない、就学児童数が爆発的に増加
しています。初等教育に新カリキュラム
が導入されることが決定し、すでに新し
い教科書も完成しています。しかし、長
く続いた内戦のために、多くの教員が教
職養成課程で学ぶ機会に恵まれませんで
した。その結果、全教員の8割近くが無
資格であるといわれています。
理数科教材で学ぶ生徒たち
教員の基礎的な能力向上に加えて、新
指導書作成のワークショップ
カリキュラムに即した教師用指導書の作
成や現職教員研修の実施が、緊急の課
題となっています。「教師教育強化プロ
ジェクト」は、新カリキュラムに対応し
た教師用指導書と研修マニュアルを作成
し、それを活用した短期現職教員研修を
実施することによって、現職教員の指導
力を向上するために、2005年6月から
2007年6月まで実施されています。この
プロジェクトでは、無資格教員への資格
付与のあり方や、教員養成・研修の中長
期的な方針策定についての提言も行う予
定です。
生活に役立つミシン実習
16
17
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