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特色選抜「生命科学探究類型」「理数探究類型」

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特色選抜「生命科学探究類型」「理数探究類型」
特 色 選 抜 「 生 命 科 学 探 究 類 型 」「 理 数 探 究 類 型 」
兵庫県立明石高等学校
主幹教諭
1
東田
純一
はじめに
30 余 年 も 続 け ら れ て き た 総 合 選 抜 に よ る 入 試 制 度 が 廃 止 さ れ 、明 石 学 区 に 複 数 志 願 選 抜
制 度 が 導 入 さ れ る 平 成 20 年 度 に 、 本 校 は 特 色 選 抜 「 生 命 科 学 探 究 類 型 」 を 設 置 し た 。 こ
の類型は「国際社会・地域社会の最先端で活躍できる人材育成」を理念とし、実験を通じ
て医学・薬学・バイオテクノロジー等の先端科学を総合的に学習し、科学的思考力や問題
発 見・解 決 能 力 を 養 う こ と を 目 指 す “生 命 科 学 ”、生 命 の 尊 厳 を 学 び 、 倫理 観 の 育 成 を 目 指
す“ 倫 理 ”、国 際 社 会・地 域 社 会 を 意 識 し 、将 来 に 必 要 と さ れ る プ レ ゼ ン テ ー シ ョ ン 能 力 や
コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 能 力 を 育 成 す る “ 社 会 ”。 こ れ ら の 3 つ の 柱 に し た 教 育 を 実 施 し て い
る 。 そ の 後 、 平 成 25 年 度 に 「 生 命 科 学 探 究 類 型 」 の 成 果 を 基 盤 に 「 理 数 探 究 類 型 」 に 名
称変更した。これらについて報告する。
2
「生命科学探究類型」教育理念
本 類 型 の 教 育 目 標 と し て「 大 学 な ど の 上 級 学 校 に つ な が る 自 然 科 学 教 育 」を 掲 げ て い る 。
これは単に大学に入るための学力養成でなく、大学入学後に真に役立つ学力を養成するこ
とを意味する。具体的には、高大連携事業の活用を重視し、常に最先端、本物のサイエン
ス に 触 れ る こ と が で き る よ う に す る 。 同 時 に 「 科 学 的 思 考 力 」「 問 題 解 決 能 力 」「 レ ポ ー ト
作成能力」
「 プ レ ゼ ン テ ー シ ョ ン 能 力 」を 身 に つ け ら れ る よ う に 学 校 設 定 科 目「 生 命 科 学 基
礎 」( 2 単 位 )「 生 命 科 学 実 験 」( 2 単 位 )「 生 命 科 学 講 読 」( 1 単 位 ) を 設 置 し た 。
また、基礎学力を充実させるために国語、数学、英語の授業では1クラスを2展開し少
人 数 制 の 授 業 を 取 り 入 れ た 。し か も 1 年 生 に お い て 国 語 総 合 、数 学 Ⅰ 、理 科 総 合 A を 標 準
単位数より1単位増やすことにより、基礎的な学力の充実を図るとともに、発展的な内容
を取り入れるようにした。このことにより1年生、2年生は週当たりの授業時間数が33
時間になった。下に1期生から3期生が学んだ教育課程を示した。
学年 1
1年
2
3
4
5
国語総合
2年 現代文
3年 現代文
6
7
8
現社
9
10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33
数学Ⅰ
古典 世界史A 地理B
数学A 理科総合A
数学Ⅱ
数学Ⅲ
地理B
数学Ⅰ 数学B
古典
数学B
数学C
数学Ⅱ
体育
生命科学基礎
物理Ⅰ/生物Ⅰ
物理Ⅱ/生物Ⅱ
生命科学実験
生命
科学
講読
保健
芸術Ⅰ
化学Ⅰ
化学Ⅱ
英語Ⅰ
体育
保健
体育
OCⅠ 情報A
英語Ⅱ
総合
HR
英語W 家庭基礎 HR
英語W 総合学習 HR補習
英語R
週 3 3 時 間 。こ れ は 他 の ク ラ ス よ り 7 時 間 目 の あ る 日 が 1 日 多 い と い う こ と を 意 味 す る 。
このことによって、学校行事、生徒会活動、部活動や清掃活動にいたるまでさまざまな弊
害が現れた。そこで、4期生より普通科のクラスと同じように週当たり32時間とした。
それに伴って、学校設定科目の見直しも余儀なくされた。1年次の生命科学基礎を1単
位とした。2年次に行われていた生命科学実験を3年次の総合的な学習の時間に「生命科
学探究」として行うことにした。2年次には生命科学応用(1単位)を設置した。
学年
1年
1
2
3
4
国語総合
5
6
現代社会
2年
現代文
古典
世界史A
3年
現代文
古典
地理B
7
8
9
10
数学Ⅰ
地理B
12
数学A
数学Ⅱ
数学Ⅲ
数学Ⅰ
11
数学B
13
14
数学Ⅱ
16
17
18
生命
科学
基礎
体育
物理Ⅰ/生物Ⅰ
生命
科学
応用
理科総合A
数学B
数学C
15
物理Ⅱ/生物Ⅱ
19
20
保
健
化学Ⅰ
化学Ⅱ
21
22
23
芸術Ⅰ
体育
体育
24
25
26
英語Ⅰ
保
健
27
28
OCⅠ
英語Ⅱ
リーディング
29
30
31
32
情報B
総合
学習
HR
ライテイング 家庭基礎 HR
ライティング
生命
科学
探究
HR
3
「生命科学探究類型」学校設定科目
(1)生命科学基礎(4期生から5期生)1単位
「 生 命 科 学 基 礎 」で は 次 の 三 つ を 学 ば せ る 。一 つ 目 は「 SPP 講 座 型 探 究 活 動 」を は
じめとする甲南大学との高大連携事業において必要となる生物学の基本的内容。二つ
目は大学で行った実験内容及び実験結果から得られたことを第三者に伝えるプレゼン
テーション。そして、もうひとつは実験動物を使って研究を行っている研究者の講義
を通して学ぶ生命倫理、科学倫理である。
* SPP ( サ イ エ ン ス ・ パ ー ト ナ ー シ ッ プ ・ プ ロ ジ ェ ク ト ) と は 、 独 立 行 政 法 人 科 学 技 術 振 興 機 構 ( JST )
に よ る 、科 学 技 術 、理 科 、数 学 に 関 す る 観 察 、実 験 、実 習 等 の 体 験 的・ 問 題 解 決 的 な 学 習 活 動 を 支 援 で あ
る。
甲 南 大 学 で の SPP 探 究 活 動
マウスの解剖
大串素雅子先生
生命倫理講義
西方敬人先生
プレゼンテーション発表会
(2)生命科学探究(4期生から5期生)2単位
1期生から3期生までは2年次をおこなわれていた2時間連続の物理、化学、生物
の実験による探究活動である。1クラスを物理、化学、生物の3クラスに分けて行う
ため極めて少人数できめの細かい指導ができた。
具 体 的 に は 、実 験 は 二 人 一 組 で 行 わ せ た 。中 和 滴 定 の よ う な 実 験 は 一 人 で 行 わ せ た 。
また、可能な限り自分たちで器具を組み立てさせ、試薬を調整させた。常に試行錯誤
しながら実験をするという場を多く設定した。
また、
「中和滴定」
「ファラデー定数の測定」
「岩塩を用いたアボガドロ数の測定」
「ヘ
スの法則を用いてマグネシウムの燃焼熱の測定」など定量実験を多く取り入れた。こ
のことにより大学受験にも対応できるように配慮した。当然のことながらすべての実
験に関して実験後レポートを課し提出させた。
物理実験
4
力学実験
化学実験 中和滴定
生物実験
原形質流動の観察
卒業後の進路(1期生から3期生)
1期生から3期生卒業生114名の合格者数と卒業時の分野別進路先を下の表にまとめ
た。
合格者数
医療系
27
国立大学
23
工学系
16
公立大学
21
理学・バイオ系
15
私立大学
130
専門学校
11
合
計
186
薬学系
7
環境・栄養系
7
上 記 以 外 (含 浪 人 )
42
表からわかるように卒業生のうち3分の1強が国公立大学に合格している。また、生命
科学探究類型を象徴しているように医療系、薬学、バイオ系の分野に多く進学していると
同時に、工学系にみられるような物理系の分野にも多く進学している。
5
生命科学探究類型から理数探究類型へ
3 期 生 か ら 志 願 者 数 が 伸 び 悩 ん だ 。原 因 を い ろ い ろ 分 析 す る 中 で 、
「生命科学って何をす
る の で す か ? よ く わ か ら な い 。 中 学 生 に は 難 し そ う 。」「 物 理 は 勉 強 で き な い の で す か 」 と
いうご意見を中学生やその保護者の方からよくいただいた。広報活動を十分行っているつ
もりであったが、実際にはこちらが思っているほど中学生に理解されていないことを痛感
した。そこで、中学生にもわかりやすい名称をいろいろ模索した。また、現在、在籍して
いる生命科学探究類型の生徒の中にも数学、物理を将来学びたいと考えている生徒が多く
みられる。同時に卒業生の中にも物理系の工学部に進学した者が多い。これらのことを鑑
みて「理数探究類型」に名称変更することを決めた。
し か し な が ら 、教 育 の 理 念 は 生 命 科 学 探 究 類 型 を 大 き く 変 え て い な い 。類 型 の 目 標 も「 大
学などの上級学校につながる理数教育」である。数学・理科に対する興味・関心を高め、
科学的倫理観の醸成を図るとともに、将来理数系分野のリーダーとして社会貢献できる人
材の育成である。名称変更に伴って、学校設定科目も見直しを図った。1年次に「理数探
究Ⅰ」
( 1 単 位 )を 設 置 し た 。内 容 は「 高 等 学 校 で 学 ぶ 数 式 処 理 の 知 識・技 能 」の 育 成 に 重
きを置くと同時に、高大連携事業を活用し外部講師による授業や大学での実験及び科学プ
レゼンテーションを行うものである。
3年次には、総合的な学習の時間「理数探究」を設置し、実験・演習を通して探究活動
を行う予定である。
6
成果と課題
今年の3月に生命科学探究類型4期生が卒業した。毎年、卒業時に「この類型に入学し
たことを今どのように思っていますか」という無記名アンケートを取っている。毎年7割
以 上 の 生 徒 が「 満 足 し て い る 。」と 答 え て い る 。そ の 理 由 は と い う 問 い に 対 し て 、半 数 近 い
生 徒 が「 本 類 型 の 授 業 が よ か っ た 」と 答 え て い る 。ま た 、
「高校時代にプレゼンテーション
をやることに意義がありますか?」という問いに関しては毎年、9割以上の生徒は意義が
あると答えている。その結果、本類型が掲げる「大学などの上級学校につながる自然科学
教育」を学んだ生徒の76%の生徒が生命科学に関する分野を含む多くの理数系分野に進
学している。以上の事柄から一定の成果があったと言える。
しかしながら、本類型を志願する人数が伸び悩んでいると同時に、入学生の学力の幅が
大きくなる傾向がみられる。また、理系類型との違いも希薄になる傾向も否めない。従っ
て今後、中学生やその保護者への広報活動はいうに及ばず、本類型の教育内容の特色化、
運営方法など更なる検討を加える必要がある。
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