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『風景と記憶』 西欧文化史を織り成す記憶の褶曲と断層 樹木と水流と
一冊の本との確かな出会 い 国 紀伊國屋書店 稲賀繁美 さ‘貪VO●ヽおやミ 旧大 陸と 新大 陸 を跨ぐ 森 の 錯 綜 に続 いては 、河 川 の水 流 が意 識 の流 れと輻 湊 さ れ る。 始源 とし て のナ イ ルを巡 る 神 話的 な 自 然 哲学 は 、キ リ スト ベル ニー ニの手 によ って ロー 教 水利 学 に流れ 込 み 、 やが て マの泉 に繋 がる伏 流 水 へと変 貌 する 。 さら に アーヴ エレ 川 は大 英帝 国 の政 治史 と 国 情 と さ れ 、 南 米 は オ リ ノ コ川 への を映 す テ ム ズの 流 れ へと 変 奏 黄金 郷探 索も 合流 し て 、 そ の ォー タ ー ・ロー リ ー ほ か 、 巻 名 も ﹁水 ﹂ と 同 音 ︵P ︶ の ウ き 込 ま れ た 幾 多 の 人 々 の 運命 を翻弄する生命 の血流とな る。 ス大 王 の事 績 を ア ト ス 山 に 刻 の内 的 自然た る ﹁ 頭 脳と 臓 腑 る始 源 の活 力 が 探ら れる 。 西欧 文化 史 が培 って きた 人類 の沼﹂ ︵ソ ロー︶、 その夢 を 司 そ の 傍 ら で アレ ク サ ンド ロ も う とした デイ ノ ク一 フ アス か 四人 の建 国 の 父 の 傍 ら に 女 権 ら 、 ラ シ ュモ ア 山 に 刻 ま れ た 論 者 ス ー ザ ン ・ア ン ソ ニー の 顔 を添 えよ う と 孤 軍 奮 闘 し た 去と 現在 が記憶 の 圧縮作用 の 描く 豊饒 な る軌跡 で あ り 、 過 と 文 明と の定 かな ら ぬ境 界が 。摺 々 と 語 ら れ る の は 、 野 生 膨大な 紙 面を費 や し て 細 密 か に 織 り込 ま れ る 。 対す る 西欧文化 史 の 変容 のな 思 想 と 対 比 され つ つ、 山 岳 に ルに 至る系 譜が 、中 国 の山水 した バ イ ン ンが 、動物 界 の ア の森 。 一時は 絶 滅 の危 機 に 瀕 ラ ンド 領 ビ ャウ ォヴ ィエジ ャ リト ア ニアに 属 した 、現 ポ ー ﹁ 森﹂ だ ろ う。 舞 台 は か つて を見 せ つけ る のは 、 第 一部 の ・シ ャー マ。 そ の語 りの オ 能 の教鞭 をと る著者 、 サイ モ ン ピ ア大 学 で ﹁ 美術 史 と 歴 史 ﹂ 現在 ニ ュー ヨー クは コ ロン 原英 雄 の 印 を 帯 び る が、 そ の 復興 さ れ る べき グル マ ニア の ウ ス、グ ル マン名 ヘル マンは 、 の ﹃年 代 記 ﹄ の描 く アルミ ニ る様 を凝 視 す る。 タキ ト ゥス て 、歴 史 の主 人 公 へと変容 す グ ル マ ニア 再 生 の 夢 を 担 っ は ヘルシ ニアの森 の風 景が 、 られ た 絵 画だ が、 ここに著 者 龍﹄ は 、 原典 のカ ヴ ァー に採 ロー ズ oア ー ノ ル ド ・パ ウ エ な か で 変 成 し て 織り 晟 一 す紋様 スパ ー ・ダ ー フ ィ ット ・フリ ッテ ン 三百 年 祭を 記 念し て カ ード リ ッヒ鮎 フ ッテ ンの基 ﹄ 神 格化 に 加 担し た フ ォン ・フ て いた ユダ ヤ 人た ちが 虐 殺 さ を 描 く ︵一八 二 三︶。 そ れ に だ 。析 出 し た 結 晶 の 露 頭 に は 、 ーリ ア種と し て 保護 さ れ る の れる 。 そ の 記憶 の痕 跡 を 掘り 半 世 紀遅れ 、 フ ォン ・バ ンデ と裏 腹 に、 森 を生 活 の糧 と し 起 こ す こと か ら 始 め た 著 者 ル が ヘル マン記 念碑 を完 成 し ツ民 族 の自 然 誌﹄ 三冊を 刊 行 イ ンリ ッヒ ・リー ルが ﹃ド イ は 、 ついで ナ チス親 衛 隊 が タ 抵抗 の痕跡 か ら、ド イ ツ民 族 もそ も 一五世紀 後半 以 来 の こ して いる 。 こうし て 辿ら れ る た のは 一八七 五年 。そ の 間 、 主 義 の温床 とな った ﹁ 土地と の書物 の復権 が 、高 景 な る森 キト ゥスの ﹃ゲ ル マ ニア﹄ 手 大絵 巻 と いえ るだ ろ う。 古典 血﹂ の物語 を経て 、 新大 陸 の 森 の 中 の 一筋 の 道 ︵〓o︸ 社 会 学者 、ヴ ィル ヘル ム ・ハ 時代 以前 に湖る 古 代 の神 話 か 新 興 国家 に聖な る過 去 の刻 印 の野 人とし て のグ ル マ ニア像 にな った 顛 末 を重 説す る 。 そ ら 、パ クスト ンの ﹁ 大温室 ﹂ の 形 成 と 密 接 に 絡 ま って い 稿 を祖 国 に回 復しよ ・ つと 血 眼 や ニ ュー ヨークは セ ント ラル を与 えた ヨセ ミテ の 巨木 に い ・パ ーク を構想し た オム ステ ︻2 面 へ ⋮ ⋮ ⋮ ⋮ ∴ ︼ 径﹄ への給 晦 にま で 至る 、 森 N■o¨︶。 ハイ デ ガ ー の ﹃樵 アル ト ド ル フ ァーが 鬱 蒼 た た。 織り 成す織 物 の上 に ﹁ 土地 の 霊 ﹂が 招喚さ れ る 。 る森 を 描 いた ﹃聖 グオ ル ク と た る 地誌 の緯 糸 。そ の交 錯が ﹃風景 と 記憶 ﹄ と ある が 、 軌跡 にして 、 歴史 を貫く 記 憶 ッド に 至る 近代 都 市 公園 計画 こ の大 著は まずも って 、 西欧 の堆 積 と その摺 曲や 断 層 の地 まで の時 間の経 糸 。ポ ーラ ン 文化 が験し た 自 然 と の交 渉 の 勢学 を縦 横 に描 き上 げ た 、 一 ド の森 林 に秘め られ た民族 的 樹木と水流と岩山 に投影された 間 の想像 カ 提喩としての風景 ▼ サイモ ン・ シ ャー マ著 風 景 と 櫂薔置高 山 宏 ・ 栂 正 行 訳 、2 ● 爛 刊 、A 5 判 七 七 四 頁 , 本 体 九 五〇 〇 円 o 河 出 書 房新 社 フリード リ ッヒ の ﹃ 森 のな 犯的 重ね 描き の仕事と な る 。 が ゆえに 看過 し難 い ︱︱ 確信 ・キ ーフ ァー の︱︱ 不快なる 闘 い﹄ に結 実す る アンゼ ルム を 示 した の が 、 ﹃ヘル マン の を背 けま いと の決然 た る意志 た い結び 付き ︱︱ そ こか ら 目 主 義的 国家 主義と の否定しが の神 話的 記憶と ドイ ツの軍国 ︻⋮ ⋮ ⋮ ⋮ 1 面 か ら ︼ 運命を 、見る者 に突 き付け る 。 し よ う とす る あ た り か ら 、 人 れ 、 風景神 話 が近 代 に辿 った の 林 道 の 一角 に 黒 々 と 綴 ら だ。 そ の名 が、 血塗 られた 雪 哀 れ な る ロー マ の 将 軍 の 名 と 銘打 つ。ほ かな ら ぬトイト て ﹃ウ ァル ス ﹄ 2 九 七 六 ︶ ーは 同 一の絵 柄 を換 骨奪 胎し 校 の姿だ ったな ら 、キ ー フ ァ 宣告 を受 ける 一フラ ンス人将 立し 、 ワタリ ガラ スから 死 の ︵第 二部 ︶ と を 経 巡 って 、 よ の大著 の森 ︵ 第 一部 ︶ と 水 流 が 縦 横 に 経り合 ろ さ れ た 、 こ 史的﹂大敗 を喫 し て自 刃した 、 述 と 、 原 型 論 的 集 合 的 記 憶 と ブル ク の森 で グル マンに ﹁ 歴 うや く 第 二 部 ﹁ 岩山 ﹂ に登 頂 逸 話 た っぶ り の 事 件 史 的 記 獣 に う ち 跨 が った リ リ パ ット ン ニバ ル ﹄ に 、 ﹁極 微 の 巨 大 ウ ィリ ア ム ・ タ ー ナ ー 描 く ﹃ハ う か のよ う に 。 こ の 述 懐 は 、 て 行 く 。 人 間 の 傲慢 を あ ざ 笑 プ と ハサ ミ ム シ が 悠 然 と 歩 い 身悶 えす る自 分 の 眼前を 、 ア 落 ち て 窮 地 を 脱 す べく 懸 命 に 新 境 地 を 拓 く 。 ク レ ヴ ァス に ン テ ー ヌ プ ロー の 森 を 、 庶 民 知 ら ず 乗 って 、 つ い に は フ ォ し て 帰 還 だ が そ の後 の郊外 。 鉄 道 の 発 達 と い った 時 流 に 我 野 心に 同調 した も の の廃兵 と ク ー ル 。 ナ ポ レ オ ン の 軍事 的 ク ロー ド ・フ ラ ン ソ フ ・ド ヌ 旅 行 に 先 鞭 を付 け た 、 文 字 通 ・ク ック の ア ル プ ス 定 期 観 光 プ ス ﹂、 無 名 の 森 を 名 所 の 万 ングを発明した ﹁ 森 の コ ロン させ た起業 家 であり 、 ハイキ 者 。 彼 こそ は 、 ﹁ 森 の孤独﹂ カデ ィア ヘと変貌さ せた 立役 の憩 い のメ ッカ、民 衆 の アル 谷 験 に は行程 を延 ばさ な い ︵ 行が 齋ら した 低温と 氷 山 の体 らも 、北 極や南 極 への探検旅 う ひとり のキ ャプ テ ン ・ク ッ 誘 う ことはし な い。また 水流 神 殿 に生まれ 変わ ら せて 、﹁ も 田博 幸 ﹃ 極北 の迷宮し 。 アル ク ﹂と まで 謳わ れた 傑物 だ っ の隠喩 学は縦 横 に 開陳 しなが そし て極め 付き は 、 ﹁ 森 神 ﹂ を 観光産 業と い う商 いに変貌 り の大 山師 。 た。 プ スの氷河 形成 史に関 す るヴ ・デ ル ・ポ スト ︶ へと 読者 を ナ や ﹃内 奥 への 旅 ﹄ ︵ヴ ァン た 風 や 、 アフリ カ のサヴ ァン 景。 一方 で本書 は沙 漠 の乾 い こ こに 描 か れ て い な い 風 よ うと の希 望を 託す 。 識 のた め の手掛 かり を提供 し る べく 構 想し 、読者 に自 己認 人 ﹂ ジ ョン ・テ イ ラ ー が 演 出 は 避 け て い る 。 自 称 ﹁水 の 詩 の 風 景 を 正 面か ら 論 じ る こと 山に恋し て﹄ はみ せず 、噴 火 ーザ ン ・ ソ ン タ ク の よ う に ﹃火 ジ スに 触 れ な が ら 、 本 書 は ス 訪れ 、 海 洋 火 山 を 描 い た ホ ッ ク の 航 海 に 従 って タ ヒ テ ィを 国で の流行 に筆 を向 け 、 ク ッ サ ル ヴ ァト ー ル ・ロー ザ の 英 た エ ン ペド ク レ ー ス を 描 い た る 。 エト ナ の 火 口に 身 を 投 じ や終末論の語る業火ともな 災厄 の源でも あれ ば 、 黙 示録 ピ エー ル ・ノ ラ ︶で も ぁ り 、 ︵ 幾世代をも経て堆積した記憶を 過去の腐葉土とし、 そこに現在を生かし、 、 未来 の培養基となる糧を見いだす。 そして本書を行動 への処方箋というよりは思考 への 誘いたる べく構想し、 読者に自 己認識 のため の手掛かりを提供しようと の希望を託す。 か の猟 歩 兵 ﹄ 盆 八 一三︶ の 間 奥 くも 魅 力 的 な人 物 た ち が し たテ ムズ川 で の火 薬仕 掛 け 慧眼 にも提案 する 。 描く のが 、 グル マンの森で 孤 続 々と登場 し始め る 。まず 、 ィオン・ ル・ デュックとフス 員 に も な って い た こ の 人 物 の 蟻 で しか な い ﹂ と 嘆 じ る 著 の 英 雄 も 山 を 前 に し て は 一匹 ロデ ィー と 喝 破 し つ つ 、 ﹁人 そ し て これ ら の 列 伝 が織 り 成 ド ・ソ ローも諭 す とおり ︵癒 ン﹄ の ヘンリ ー ・デイ ヴ ィ ッ に は 肯 わ な い 。 ﹃ウ ォー ル デ 歴史 を感 傷 と とも に 描く こと れ な い。 人類が 神から盗 ん だ ︿火 ﹀ は 正 面 か ら 取 り上 げ り も 、地 水 火 風 の 四大 の な か で 、 引 か れ た 序 文 が 答 え る 。 火 と 平線 に広 が る 劫 火 は 見 え て ま た 高 山 で の 山 頂 の朝 、 地 のが 通弊 だ が 、 木 灰 の 下 か ら 聞 け ば絶 滅 を 司 る も の とす る の疑似海 戦絵巻 にも 紙 面を割 の大 元 帥 ﹂ を 見 て 、 そ れ を ダ は 、自 分自 身を民主 主 義者 と す 、 これ 見 よ が し の 前 景 の 道 し の荒 野も また 、文 化と いう 希 望 を こ そ 、訴 え た い の だ と 。 火 は 、文 化 の 定 義 で も あ れ ば 、 新 芽 が 蘇 る よ う に 、 不 死 鳥 の き 、あ るいはタ ーナ ー描 く蒸 キ ン ス の卵 白 写 真 の み な ら 信 じ て 疑 わ な い、 国 土 拡 張 論 具 立 て ︵ル プ ソ フ ー ル ︶ の 背 渇 望と 枠付 け の産物だ った の 家 庭 の 籠 と い う ﹃記 憶 の 場 ﹄ キ ンと の 論 争 に 視 野 を 限 定 し ず 、 フ リ ー ド リ ッヒ の ﹃冬 の 者 、 シ ャー マ の 意 見 と 響 き 合 後 に ゆ く りな く も 浮 か び あ が だ から 。自然 に聖な る余地 を た のも 、 本 書 が あ く ま で ︵ 新 オ ー ク の木 ﹄ の 記 憶 も投 影 さ 者 の 帝 国 主 義 的 フ ァシ ス ト だ つ。 ・ 題 だ ろ う 。 ラ シ ュモ ア の 人 面 間の精神 的 潜 勢力 のあり かを 容れ る慎 み に こそ 、著 者は人 す る名称 であ った 。 そうし た こ こ に は 、 東 欧 出 身 の ユダ れ て いたと 思し い。大伽 藍と った が 、 そ う 断 じ る 著 者 の 眼 と 持て 囃 され た ア ンリ エ ット 岩 壁に 見える の は、 仮借なき ラ モ ン ・ド ・カ ル ボ ニ エ ー ル 。 劇 の傍 ら で ﹁ アルプ ス の女 王﹂ る 風 景 が 、 本 書 の 隠 さ れ た 主 差 し はなぜ か 温か い。ル イ ・ ¨ダ ンジ ュウ ィルが 、自 分よ 人 間中 心主 義 に 蹂 躙 さ れ た 、 著 で 細部 豊 か に 増 幅 さ れ て い 図と 地をな す相 互依 存 の細部 ラ シ ュモ ア 山 の 巨 人 顔 を 刻 ん こ こに 描 か れ た のは 、 いわ ヴ イ ンド の ﹃ナ ポ レ オ ン の サ ヤ人 歴史家 の出自が濃 厚 に透 開 拓 を 祝 福 す る 。 ト マ ス ・コ し て の 森 の表 象 が 、 今 や 西 部 こ の ア ル ザ ス 人 は 、 ウ ィリ ア り 二十 年 前 に女性 と して シ ャ った 。 ま た 一八 六 四 年 の 議 会 ス ー 族 の 聖な る 山 の残 骸 で あ ると いう にとど まら な い。膨 ー ・ク ル ック ス ・ク ラ ン の 一 ン ・ベル ナ ー ル 峠 越 え ﹄ の パ だ ガ ト ソ ン ・ポ ー ク ラ ム 。 ク 視 さ れ る が 、 そ れは ま だ 本 書 ー ル を 始 祖 と す る ハド ソ ン 川 ム ・コ ック ス の ﹃ス イ ス の 自 モ ニー に初 登 頂し た マリ ・パ 栂 正行と 本書 を 共訳し た高 大 な情 報 を優雅な 名 文 に 圧縮 ロン ド ン の 大 火 に 事 寄 せ な が の 一面 に 過 ぎ な い 。 著 者 幼 少 派 が こうし て 継 承 した ﹁ 植物 然 と 文 化 と 政 治 史 概 要﹄ と い ラデ ィに ﹁ 姉事 ﹂ する 出会 い 山 宏は 、 いかにも この大 仕事 気船 や蒸気 機関 車 、あ る いは の 地 、 イ ン グ ラ ンド に 目 を 転 神 学﹂ が 、神 話的 形象 の復 活 う無 味 乾 燥 な 英 語 種 本 を 、 宿 は 、幾 世代 をも経 て 堆積した を 楽 し ん で いる 。 ﹃目 の な か 世 界は 合 め て も ︶ 西 欧 世 界 の ず れ ば 、 ロビ ン ・フ ッド が 森 っ 。再 生 で あ た こ と を 、 ア ビ 主 を 食 い 尽 く す寄 生 虫 よ ろ し 記憶 を 、過去 の腐 葉土 とし 、 と は 、 定 期 的 な 野 焼 き に よ っ あ まり に容 易 いだろ う 。本書 叙 述な が ら 、思わ ず涙 を誘 う 。 と し て 成 立 し た ﹁ヨ セ ミ テ ﹂ と別 れの場 面は 、 淡淡 とし た て こ の 聖地 の 環 境 保 全 に 尽 く そ こに 現在 を生 かし 、未来 の を、著 者は 忘れ ず描 き 出 す。 と いう 反世 界から齊さ れた 、 ヴ ァー ル プ ル ク を 引 き 合 い 。 く 略 奪 し た 仏 語版 を 出 版 し 、 そして アル バート ・スミ ス。 し な が ら 、 そ こか ら 追 放 の 憂 尾よく 切り 抜 けて学士 院 会 員 し て大 当 たり を 取り 、ト マス マ仕掛 け の講演 会 を添 付 興行 空 の偽 造登 攀 記に 、デ ィオラ ︵ヨ ・チ ョ ・マ ニ ア︶ に 出 来 ﹁殺 し 屋 ﹂ た ち を 呪 った 言 葉 ー族 が 、自 分た ち を追 放し た と いうよ り は 思考 への誘 いた そし て本書 を 行動 への処方箋 培 養 基とな る 糧を 見 いだ す。 学 への展 開が 、 シ ャー マの大 チ ャレ スク趣味 か ら崇 高 の美 の劇 場﹄ で自 ら素 描した ピ ク 論 を進 め、 連想 に身 を委 ね た しつつ悠揚せまりぬ歩饉で議 それ には 、日 本語版 の帯 に は 回避 して いる のか 。 と な り 、 ロ マン派 の悦 惚 忘 我 化 ﹂規定 だと 断罪 する ことは 、 法 に よ って 秘 境 の ﹁ 庭 園 渓 谷 ﹂ 主義 の、 文 度し 難く 西洋 臭 い ﹁ ら 、 な ぜ 炎 を 主 題 と す る こと さ か し ま の 世 界 の調 停 者 で あ に 復 習す る 著 者 は 、 こ こか ら そ れ が 英 語 に 逆 翻 訳 ︵一八 〇 このヴ ィクト リ ア朝 人は 、 モ き 目 に 会 った ア ー ワ ー ネ ー チ 風景 に拘泥し た 証拠と 言 える る こ と が 雲雪りれ 、 そ の 森 林 の ﹁ 緑 の 十 字 架 ﹂ と し て の生 命 三︶ さ れ 、 ス イ ス プ ー ム に 火 ン ・プラ ン登 頂 以 前から 先 刻 継 が れ る図像 だ が 、 これも 死 と は 好 対 照 の 、 山歩 き 随 想 に だ ろ う。 右する資源問題の根幹をな の 樹 の 系 譜 を 辿 る 。 ジ ャ ック を 付 け る 。 三文 文 士 変 じ て 枢 書き 上げ て いたと 思しき 、 架 だが しか し、 著者 は喪 失の し 、 英 国 史 を 貫 いて いた 様 が ・カ ロの ﹃戦 争 の 惨 禍 ﹄ に 収 機卿 秘書 に抜擢 され 、危 うい ば﹁ 風景︼ 営0り o Sこ の生 成に尽力した ﹁ 人︲景ヨRT の曇請といってよい。 ﹂ 88o 一方 、 新 大 陸 で 解 明され る 。 ゆ麟ツヽ置b曇 日 の木﹂は、 醜間 にも巻き 込 まれ るが 、首 と 再生 の神 秘的 象 徴体 系 に則 そ うし た 男性 的 妄想 の悲 喜 の巨木信 仰は 、 欧州 の古典 古 本 邦 は丸木位 里 ・ 俊夫 妻 の﹃ア 探る 。それ を しも 、 人間中心 代 を も 稜駕する自 負を 新世 界 ウ シ ュウ ィ ッツ﹄ にま で受け が 、 画 家 ア ル バ ー ト ・ビ ア ス し て 再解 釈す べき 、と 著者 は 管 理 が 仏 。蘭 と の 建 艦 競 争 に あ って 、 木 材 帝 国 の 国 運 を 左 ﹁ 若 々 し い老 齢 ﹂ を約 束 し た に 植 え付 け る 天 寵 と な り 、 タ ット の 描 い た 神 樹 の 肖 像 の よ うな 素 振 り を 見 せ な が ら 背 景 に は 、 カ ー ル ト ン ・フ ト ば 、 突 如 論 調 を変 じ 、 気 の 利 を払 い 、 伏 線 を 張 る か と 思 え も、 全 体 の構 想に 細 心 の 注意 ロ ー の 森 の 散 策 路 一番 の 名 物 し に 使 って 、 フ ォ ン テ ー ヌ ブ シ 捕 獲 の 名 人 、 グ リ ニー を 出 足 に追わ れ る 人物 の いる 風 に仕 立 てた 段 に、プ ーサ ン の 景﹄ を添 えて 議 論 を 進 め る の いた 対 句 や 警 句 を 挟 む 見 事 な 酒 落 を 交 え つ つも 、 原 著 者 が 文体 。 そ れ を 時 に悪 乗り の駄 の 真 骨 頂 だ が 、 そ の Z フン ス も し か り 。 い か に も シ ャー マ 古典 主 義 絵 画 の画 面 に蛇 状 の 日本 語 遣 い な ら ば か く や と い 道筋 を読み 取る論者 の眼力 う創 意 工夫 を随 所 に 織 り 込 み へと 移 し 替 え た 訳 者 の 技 葛 つ つ、 間 然 す る 所 な い 日 本 語 タ を 目 ざ レリヽ認 め た 高 山 宏 に ィク ー ラ ・セ ル ペ ン テ ィナ ー こ れ は 、原 文 と 比 較 す る だ に 、 も 、 本 邦 は 北 斎 の 風 景 画 に フ ガ ラ スの さ ら に本 書 には ﹁ は や名 人 芸 と呼 ぶ ほ かな い。 向 だ った ろ う 。 ま こ と ﹁こ の 本 、 ぼく に 出会 え て 、 本 当 に と って は 、 思 わ ず 膝 を 打 つ 趣 よ か った ﹂ と は 、 訳 者 冥 利 の アル カ デ ィア ﹂ な ど と い う 節 幸 福 ﹄ の 著 者 に は 我 が意 を 得 も あ って 、 ﹃ガ ラ ス の よ う な た りと の 行 文 も 少 なく な い 。 告 自 で も あ った は ず だ 。 本 も ま こと に 入 魂 の 出 来 で 、 これ だ け の紙 幅な の に、 造 い0 ま > 8 ●0す o¨0の 分 析 ﹃フ ラ イ ツ ヘ ッド ふ た た び ﹄ 所 を 除 け ば 、 目 立 つ誤 植 も ほ 印 刷 ソ フト の 暴 走 ら し い ニカ の 枕 に イ ー ヴ リ ン ・ウ ォ ー の を 振 る の も ︵定 型 だ が ︶ し か ぼ皆 無 。 マ ッタ ー ホ ル ン の 入 り 。 ま た ド ゥヌ ク ー ル が マム り 口 た る 宿 場 町 、 ツ ェル マ ー る 箇 所 な ど 、 初 版 の 瑕 疵 を敢 ト が シ ェル マ ー ト と な って い え て あ げ つら う 愚 は 犯 す ま ャウ ォヴ ィ エ ジ ャ の 森 の 地 い。 原 書で は 巻 頭 見返 し に ビ ロー の 散 策 地 図 が 収 め て あ 図 、巻末 に は フ ォンテ ー ヌプ を 綴 じ 込 む ブ ック エ ン ド と し る 。 こ れ が い わ ば 一巻 の 内 容 が 、技 術上 の都 合 か ら だ ろ う て の 役 割 を 担 って い た わ け だ た ま た ま 調 べ物 で ニ ュー コ ー 原 書 刊 行 直 後 の 一九 九 五 年 、 名う て の解説 も 必読 。 思 えば 好み の読書 案 内 や注 は完 訳 。 と は い え 、 いか に も 高 山 宏 場 が 、 ︵バ ー バ ラ 。M ・ス タ フ ォ ー ド の 一連 の 著 作 な ど と が そ の 異 才 を縦 横 に 発 揮 す る うか ら 、 桁外 れ の力 技だ 。だ か 一年 強 で訳 出 盤 T ン にと い 桁 違 い の 一冊 。 そ れ を 正 味 僅 に 選んだ な か でも 、とり わ け 日本 語 訳 書 か ら は 脱落 し た 。 か 、こ の 二 葉 の 地 形 図 だ け が 、 ク に 滞 在 し て いて 、 平 積 み さ れた新刊 の本書 を手に取 っ こ の 厚 さ と内 容 で は 、 日 本 語 本文 化 が そ の 風 景 の 記 憶 に 留 られ な いとす れ ば 、そ れ は 日 と いう大 業 の外 に は 容 易 に 得 た 。一見 し て 歴 史 的 名 著 だ が 、 並 ぶ ︶ ﹃風 景 と 記 憶 ﹄ の 翻 訳 に 訳さ れ る 日 な ど 、 未 来 永 劫 めお く べき 、 こ の う え も な く 来 な いだ ろ う 。 そ ん な 諦 念 に ーガ ン図 書館 の売盾 で 、 ず っ 贅 沢 な 不 幸 で は な い だ ろ う 事りれつつ、ビアポツト ・モ ら れ ま い が 、 翻 訳 か く ある ベ 下手 に 真 似れ ば 火 傷は 避 け しり・ こ 重い原 著 初 版 本 を購 っ か 。 爾来 十 年 の今 日 、 原 著 者 に ー ド カ ヴ ァー で も 四 〇 ド ル ー し と い う 鑑 と し て も 、原 書 ︵ハ た日 を 、今 に 思 い出 す 。 書 の醍 醐 味を 満喫 さ せる に 足 べて 、 ゆ く り な く も 、 た め つ と 日 本 語 版の 半 額 以 下 ︶ と 並 も 誇 って 見 せたいよ ヽ つな 、 読 る 日 本 語に 訳出 され た 。 そ の ・ 総 合 研 究大 学院 大 学 教 授 ︶ 日 本 文 化 研 究 セ ンタ ー 研 究 員 ︵美 術 史 。文 化 交 渉 史 / 国 際 す か め つ吟 味 賞 翫 し た い 。 幸福を噛み縮めつつ、貴重な 時 間を 投 入し て事 業 にあ た っ ど 、 い か に も 月 並 み の常 套 句 た関係者 の労を 多とす るな だ 。 こ の 二十 年 で 書 店 の 文 化 者 が 、 周 到 な る 選 球 眼 のも と 史 の 相 の 様 相 を 一変 さ せ た 訳