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20答申第1号(情報公開審査会)

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20答申第1号(情報公開審査会)
20答申第1号
平成20年
久留米市長
江藤
守國
8月29日
様
久留米市情報公開審査会
会
長
小原
清信
久留米市情報公開条例第18条第1項の規定に基づく諮問について(答申)
平成20年6月6日付け20総第168号による下記の諮問について、別紙のとおり答申
します。
記
「健康福祉部保護課に設置された情報系端末毎の庁内LANサーバーに対するアクセス履
歴」に関する公文書不開示決定に対する異議申立てについて
別
紙
答
第1
申
審査会の結論
「健康福祉部保護課に設置された情報系端末毎の庁内LANサーバーに対するアクセス
履歴」につき、公文書不開示決定を取り消し、電磁的記録として、アカウント名及びIPア
ドレス以外の部分の文書を開示するのが妥当である。
第2
異議申立てに係る経緯
年
月
日
経
緯
等
平成20年
4月23日
総務部にて公文書開示請求がなされる
平成20年
5月
7日
公文書開示請求に対して、公文書不開示決定を行った
平成20年
5月
8日
請求者に対して不開示決定の説明通知を行った
平成20年
5月27日
第3
異議申立人の主張
1
異議申立ての趣旨
請求者から異議申立書が提出される
異議申立ての趣旨は、久留米市情報公開条例(以下「条例」という。)第6条第1項
の規定に基づく公文書開示請求に対し、平成20年5月7日付け20総第94号によ
り久留米市長(以下「実施機関」という。)が行った公文書不開示決定(以下「本件不
開示決定」という。)について、これを取り消し、事務又は業務の適正な遂行に支障
のある情報(アカウント名及びIPアドレス)以外の部分の文書を開示するとの決定
を求める、というものである。
2
異議申立ての理由
異議申立人が平成20年5月27日に、実施機関に提出した異議申立書の記載によ
ると、異議申立人が不開示決定に対する異議申立ての理由として挙げているのは、
「電磁的記録の開示方法については、久留米市情報公開条例施行規則第7条により、
その全部を開示する場合に限り行うものとするとなっているが、『当分の間』であり、
当該施行規則の施行から約6年を経過しており、部分的な開示が容易にできるのであ
れば、久留米市情報公開条例第3条により積極的に開示すべきである。当該公文書か
ら事務又は業務の適正な遂行に支障のある情報(アカウント名及びIPアドレス)を削
除するのは技術的に容易であり、その作業を行ったとしても、いわゆる〈文字化け〉
等の開示できる情報に関し、原本性を損なうようなこともない。」というものである。
第4
実施機関の説明要旨
実施機関が平成20年6月23日付けで当審査会に提出した「処分理由説明書」の記
載によれば、実施機関の説明は次のようなものである。
異議申立人からの平成20年4月23日付公文書開示請求に対して、総務部情報政策
課で管理する情報系端末の庁内LANサーバーに対するアクセス履歴を公文書として特
定した。特定した文書には不開示情報(アカウント名及びIPアドレス)を含んでおり、
今回の請求は、電磁的記録媒体での交付を求めるものであったことから、久留米市情報
公開条例施行規則第7条第2項により当該文書すべてを不開示とし、平成20年5月7
日付で公文書不開示決定を行うとともに同5月8日に異議申立人に説明を行ったところ
である。
今回の公文書開示請求において、特定した文書に含まれるアカウント名及びIPアド
レスについては、これらを公表することによって、庁内への侵入者等による久留米市の
庁内LANへの不正アクセスの危険性が増すとともに、外部からのインターネット等を
通じた不正アクセスに対するセキュリティも著しく低下することとなる。したがって、
久留米市情報公開条例第7条第4号の「市の機関若しくは久留米市土地開発公社又は国、
独立行政法人等、他の地方公共団体若しくは地方独立行政法人が行う事務又は事業に関
する情報であって、公にすることにより、当該事務又は事業の性質上、当該事務又は事
業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるもの」に該当する不開示情報であると判断
した。
開示方法が文書によるものであれば、アカウント名及びIPアドレスの部分のみを不
開示情報として、公文書部分開示決定を行うところである。しかし、今回は異議申立人
の希望する開示の方法が電磁的記録媒体による交付であった。久留米市情報公開条例施
行規則第7条第2項によると電磁的記録媒体に複写したものの交付を行う場合は、「当
分の間、当該電磁的記録の全部を開示する場合に限り行うものとする」と定められてい
るため、今回の請求の場合は文書すべてが不開示になると判断した。
このため、異議申立人には、開示方法が電磁的記録媒体による交付であれば特定した
文書すべてが不開示となってしまうこと、特定した文書を紙に出力したものであれば部
分開示による写しの交付は可能であることの説明を行った。しかし、異議申立人の希望
する開示方法は、電磁的記録媒体での交付のみであったため、久留米情報公開条例施行
規則に基づき特定した文書全てを不開示とする決定を行ったものである。
第5
1
当審査会の判断
本件公文書の性質について
(1)当審査会は、実施機関の行った不開示決定の適否を審査するにつき、まず、本件
で問題となっている公文書、すなわち、「健康福祉部保護課に設置された情報系端末
毎の庁内LANサーバーに対するアクセス履歴」(以下「本件公文書」という。)が、
そもそも果たして条例第7条第4号に定める不開示情報に該当するか否かについて検
討した。
その結果、本件公文書は、その一部に、アカウント名及びIPアドレスが含まれて
おり、このアカウント名及びIPアドレスは、上記「処分理由説明書」においても説
明されているように、「これらを公表すると、庁内への侵入者等による久留米市の庁
内LANへの不正アクセスの危険性が増すとともに、外部からのインターネット等を
通じた不正アクセスに対するセキュリティも著しく低下することとなる」ことが認め
られるから、このアカウント名及びIPアドレスそのものについては、条例第7条第
4号の「公にすることにより、当該事務又は事業の性質上、当該事務又は事業の適正
な遂行に支障を及ぼすおそれがあるもの」に該当する「不開示情報」である、と考え
られる。
そうすると、本件公文書は、上記「不開示情報」と、「不開示情報」にはあたらな
い情報の二種が混在している公文書である、ということになる。
(2)異議申立人は、異議申立ての理由として、上記アカウント名及びIPアドレスが
「事務又は業務の適正な遂行に支障のある情報」すなわち「不開示情報」に該当する
ことを前提としつつ、本件公文書から上記「不開示情報」の部分を「削除するのは技
術的に容易であ」ることを挙げており、異議申立ての趣旨も不開示情報以外の部分開
示を求めているのであるから、そもそも、本件公文書において、アカウント名及びI
Pアドレスの部分を分離除去することが技術的に可能なのかどうか、また、その作業
の難易度・困難さはどの程度のものなのかについて検討する(「異議申立書」中の記
載からは判然としないが、この点は条例第8条第1項において「不開示情報が記録さ
れている部分を容易に区分して除くことができるときは、請求者に対し、当該部分を
除いた部分につき開示しなければならない」と規定されていることに関わる指摘であ
ろうと判断した。)。
実施機関からの説明によれば、①本件公文書からアカウント名及びIPアドレスの
「不開示情報」に該当する部分を分離除去することは、技術的に可能である、また、
②電磁的記録媒体に複写したものの交付という方法でもってこれを開示するとして、
分離作業の方法さえ間違えなければ、分離除去したアカウント名及びIPアドレスが
復元する可能性はない、③分離除去に要する作業の難易度・困難さについて、技術そ
のものは、一般の情報処理に要する技術と比して、例えば専門家に依頼しなければ出
来ないというほどのものではない、ということであった。
(3)
したがって、当審査会としては、本件公文書から、アカウント名及びIPアド
レスという不開示情報の部分を「区分して除くこと」につき、過大な時間と費用がか
かるとまでは言い難いので、「容易に区分して除くことができるとき」(条例第8条
第1項)に該当する、との結論に達した。
2
条例施行規則第7条第2項の規定について
(1)
本件不開示決定において、本件公文書を開示しない理由として実施機関が述べ
たのは、つまるところ、本件公文書は電磁的記録であるところ、その場合の開示方法
を定めている条例施行規則第7条第2項(以下「本件規則」という。)によれば「・・・
開示は、・・・全部を開示する場合に限り行うものとする」とされている、しかるに、
本件公文書は、その内に不開示情報(条例第7条第4号)を含んでおり、上記「全部
を開示する場合」にはあたらない、したがって、全部を開示する場合ではないから開
示そのものを行わない、ということであった。
これに対して、異議申立人は、異議申立ての理由の中で、概要「本件規則は、その
中に『当分の間』という文言が入っていることに鑑み、本件規則の施行から現在まで
約6年が経過しているのであるから、部分開示が容易にできるのであれば条例第3条
により積極的に開示すべきである」旨述べているのでこの点を検討する。
(2)
思うに、条例第16条第2項は、「公文書の開示は、文書、図画、写真又はフィ
ルムについては閲覧若しくは視聴又は写しの交付により、電磁的記録についてはその種
別、情報化の進展状況等を勘案して実施機関が定める方法により行う。」と定めており、
条例施行規則第7条第2項は、条例第16条第2項の規定する「電磁的記録については
その種別、情報化の進展状況等を勘案して実施機関が定める方法」の委任を受けて定め
た委任立法であると見ることができる。しかしながら、条例は第8条で部分開示を定め
ているが、そこでは、紙媒体と電磁的記録の場合との区別を設けてはいない。そして、
条例は、一般に、紙媒体上の情報であれ、電磁的記録上の情報であれ、開示請求権を付
与したものである。したがって、条例施行規則第7条第2項は、紙媒体の場合には、容
易に分離削除しうる場合には部分開示を認めるが、電磁的記録の場合には、容易に分離
削除しうる場合であっても部分開示を認めず全部不開示とする趣旨であって、それ以外
の解釈を一切許さないものであるというのであれば、かかる解釈は、条例第8条が定め
た部分開示の制度の趣旨を没却することになり、ひいては「公文書の開示の方法」を定
めることを委任した条例第16条第2項の委任の範囲をこえ、無効であるといわざるを
えない。また、条例第37条は、「この条例の施行に関し必要な事項は、実施機関が別
に定める。」と規定しており、条例施行規則第7条第2項は、条例第37条の「必要な
事項」を定めたものということができるが、その場合でも、条例施行規則は条例を施行
するために「必要な事項」を定めることを委任されて制定されたものであり、条例で部
分開示を可能にするという原則を掲げながら、電磁的記録に限って部分開示を全く認め
ず、全部開示できないのであれば全部不開示とするとするルールとしての運用を固定す
ることは、同様に、上位規範たる条例を施行規則が変更させる効果をもつものであって、
委任の限度をこえるものである。
そこで、かかる解釈の不都合を避けるため、電磁的記録であっても不開示情報を容易
に分離削除しうる場合には、部分開示を禁じるものではなく、これを容認する趣旨を含
むものと解するのが相当である。
結局、電磁的記録の場合で、条例施行規則が列挙している従来からの録音テープ、ビ
デオテープなどは、特に部分開示が困難な記録に該当する典型例であり、一方で、電磁
的記録に関する情報処理技術の進展の見通しに不透明なものも多く、施行規則はそれが
制定された平成14年の時点では「当分の間」という留保を付して部分開示を制約した
ものということができるが、「容易に分離削除しうる場合」には例外的に部分開示を認
める運用がむしろ条例の趣旨に鑑みより適切であると考えられるのである。
3
以上のことから、当審査会としては、本件においては、条例施行規則第7条第2項の規
定にかかわらず、部分開示することが可能であり、かつ妥当であると考えるものである。
したがって、冒頭のように結論する。
第6 審査の経過
当審査会は、本件異議申立てについて次のとおり審査を行った。
年
月
日
経
平成20年
6月23日
第1回審査会
平成20年
7月
7日
第2回審査会
平成20年
7月15日
第3回審査会
平成20年
8月21日
第4回審査会
第7
久留米市情報公開審査会委員
役
職
名
氏
名
会
長
小
原
清
信
委
員
武
藤
知
之
委
員
井
手
国
夫
委
員
春
田
久美子
委
員
古
賀
義
幸
委
員
河
野
孝
子
委
員
稲
吉
義
弘
過
等
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