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建設年度から見る筑波大学周辺地域の 学生向け賃貸アパートに関する

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建設年度から見る筑波大学周辺地域の 学生向け賃貸アパートに関する
建設年度から見る筑波大学周辺地域の
学生向け賃貸アパートに関する研究
-春日4丁目を事例として200311066
都市計画専攻
1.
研究の背景と目的
まちに大学が立地されると、その周辺には学生のための賃
弓削
吉田
宏樹
友彦
トが学生向けである可能性が高いと考え、全てのアパートの
調査を行った。
貸アパートや飲食店などが建設され、いわゆる学生街という
そして入手したデータを Excel・ArcGIS といったソフトに
ものが形成される。筑波大学の周辺にもそのような様子を見
よって分析を行い、学生向け賃貸アパートの変遷と今後につ
ることができる。しかし、筑波大学の周辺地域の場合、一般
いての考察を行った。
的な学生街とは若干異なり、学生向けの民間賃貸アパートが
多く建設されており、学生の数が極めて高い。
しかし近年、筑波大学周辺地域を取り巻く環境に様々な変
化(一昨年のつくばエクスプレスの開業や、近年の筑波大学
分析では主に現存するアパートを 1983 年以前・1992 年以
前・2002 年以前・2002 年以降といった4つの建設年代ごと
に分類し、その上で他の項目の傾向をみた。また入手したデ
ータとその方法については表1のとおりである。
学生宿舎及び宿舎地域のリニューアルなど)が起こっている。
また、1980 年に比べると現在では総学生数は増えているもの
表1
入手方法とアパートに関するデータ項目
の、筑波大学周辺に住む学生の割合というものは減ってきて
国勢調査からのデータ:居住人口、居住学生数
いるということも統計データから読み取ることができ、学生
現地調査によるデータ項目:アパートの名称・部屋数・階数・
の居住地選択の範囲の変化も起こっていると考えられる。こ
駐車場の設置数台数と形態、敷地全体の状況、構造(木造・
のような様々な変化の中で、学生向け賃貸アパートにも変化
非木造、)
があると考えられ、今後の学生向け賃貸アパートについて考
住宅情報誌「JAMJAM」から入手したデータ項目:家賃・共益
えていく必要があるといえる。
費・駐車場賃料・管理不動産会社
先行研究では、学生街の役割と問題点について両角(1975)
「ゼンリンの住宅地図」の 1983 年・1992 年・2002 年のもの
によって検討がなされている。また、土肥ら(1982)によっ
による調査から入手したデータ:4分類された建設年度
て 1980 年当時の筑波研究学園都市における学生の居住環境
「電子地図帳 Z Professional5」で入手したデータ:推定建
についての調査結果が明らかにされ、その結果をもとに関根
築面積
(2002)によって筑波大学学生宿舎との比較のために、2000
年と 1980 年の民間賃貸アパートの変化についての調査・分
3.
対象地の概要
析が行われている。先行研究においては地方大学周辺の学生
春日4丁目は筑波大学の西側に位置し、大学敷地から 1km
向け賃貸アパートの変遷を見たものはないため、本研究では
圏内の地域である。大学への自動車通学が認められないため
筑波大学の周辺地域における学生向け賃貸アパートについ
居住する学生の多くは自転車通学者である。また、人口に対
ての変遷を見る。
する学生数が約 6 割となっており、筑波大学の周辺地域の中
そこで本研究では、現存する学生向け賃貸アパートを建設
でも学生が多く住む地域である。また、学生数は約 1800 人
年代ごとに分析し、学生向け賃貸アパートの変遷を把握する
であり、筑波大学生約 15000 人に対して 12%の学生が居住し
ことで、筑波大学周辺地域の学生向け賃貸アパートが今後ど
ているということも特徴の一つである。
うなっていくのかを考察することを目的とする。
表2
2.
研究の方法
筑波大学周辺の学生が住んでいると考えられる地域を先
行研究から約 40 ヶ所抽出した。それらの統計データを平成
人口(人) 学生数(人) 人口に対する学生数の割合(%)
2964
1774
59.9
表3
12 年度の国勢調査から入手し、学生数などの変遷を見た。そ
の結果、本研究の対象地を、学生数が多く学生向けのアパー
トも多いと考えられる春日 4 丁目とした。
次に対象地におけるアパートの調査を行った。春日4丁目
においては大学に近接しているということで全てのアパー
春日4丁目の人口と学生数
建物
春日4丁目のアパートの概要
棟数(戸)
平均家賃(円)
総戸数(戸)
平均戸数(戸)
平均階数(階)
木造
構造(棟)
非木造
261
40253
3746
14.3
2.34
18
243
4.
6.
調査の結果
賃貸アパートに関する調査の結果を建物部分、駐車場部分、
学生向け賃貸アパートの今後
これまでのように大規模・高層なアパート建設が行われて
敷地全体という3つの観点に分けて分析を行った。結果は、
いくと考えられる。規模によっては困難であるが、工夫して
以下の通りである。
建設が行われる。しかし、工夫の分建設費がかかるため、全
○建物部分
好なアパートが増え、居住者にも変化が現れてくることが予
体的に家賃等が上がることが考えられ、地域全体としては良
・建設棟数と戸数は 80 年代がピーク
測される。
・一棟当たりの平均戸数と平均階数の増加
・一部屋当たりの平均延べ床面積の増加
・建築面積があまり変化していない
・特に新しいアパートでは家賃が平均よりも高めである
7.
今後の課題
学生向け賃貸アパートの今後をより詳細に考察するため
に、筑波大学周辺地域における賃貸アパートにどのような人
が住んでいるのかといった居住者の実態を明らかにするこ
と。また、今回は現存するアパートだけを対象としたが、変
○駐車場部分
・「引き込み型」駐車場を持つアパート建設は増加
遷を見る上で過去に存在していたアパートについても調査
・「直接型」駐車場を持つアパート建設は減少傾向
が必要であるということが考えられたため、建て替えで消え
・駐車場のないアパート建設は行われていない
たアパートの調査をするということが今後の課題である。
・駐車場の平均設置台数・設置率は増加
・平均駐車場賃料は増えていたが近年はわずかに減少
補注
・学生向け賃貸アパート:筑波大学周辺の賃貸アパートが集
積する地域における 1R,1K、1DK、2K、2DK などの間取りを
○敷地全体
アパートの今後をより詳細に考察するために、敷地全体の
様子についても調査を行った
持つタイプのアパートのこと
・一階駐車場:アパートの一階部分にある駐車場
・細長い敷地では直接型駐車場をもつものが多く見られた
・昇降式駐車場:駐車スペースが立体的になっている駐車場
・一階駐車場をもつアパートや昇降式駐車場を持つアパー
・引き込み型駐車場と直接型駐車場:一度敷地に入って駐車
するタイプのものが「引き込み型」、敷地に入らずに接する
トが見られた
道路を使って駐車するものが「直接型」駐車場である
5.
学生向け賃貸アパートの変遷
これまでの学生向け賃貸アパートは、高まってきた学生の
要求を満たしてきたのではないだろうか。足りない居住施設
を十分に補ってきたし、一部屋当たりの延べ床面積の増加に
見られるような質の向上もさせてきた。そして駐車場の設置
一度敷地内に
入ってから駐車
も十分になされるようにもなった。
図3
駐車場の種類
使接
っす
てる
駐道
車路
を
左:「引き込み型」右:「直接型」
参考文献
文献
図1
これまでの学生向けアパートのイメージ
・土肥博至他(1982)「筑波研究学園都市における市街化と
住宅供給に関する研究(2)」住宅建築研究所
また、敷地の規模の大小は様々であるが工夫して建設を行
・JAMJAM HOUSE(2006)「JAMJAM 2006.10 アパート情報号」
っている。例えば、いくつかの小規模なアパートを壊して一
・加藤義明(1991)『住みごこちの心理学
つの大規模なアパートを建設するという建て替えも見られ
に』日本評論社
た。
・国土交通省住宅局『住宅需要実態調査平成 15 年度』
快適居住のため
・両角光男(1975)「大学と学生用居住施設整備に関する研
究-熊本市における大学街の考察-」
熊本大学工学部
日本都市計画学会学術研究発表会論文集
・関根路未(2001)「つくば研究学園都市における学生の居
住環境整備に関する研究」学位論文
・筑波大学概要(2006)
図2
建て替えのイメージ
・谷田部の歴史編さん委員会(1970)『谷田部の歴史』
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