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有機資源部門
Organic Resources Division ナノ空間触媒化学 有機資源部門 夢を実現する触媒化学 ─ 地球環境改善を目指して ─ 講 師 石谷 暖郎 キーワード : バイオマスリファイナリー、有害物質除去、グリーン有機合成 地球環境問題やエネルギー問題を解決し持続可能な工業体系を構築することは、人類の大きな夢であり、 課題でもあります。私達は、地球に対する負荷を軽減し 、 最小のエネルギーで最大の効率を発揮させるため、 「触媒」をキーワードとして物理化学、無機、有機化学の視点から研究を続けています。現在 、「有害廃棄物 を排出しないグリーン有機合成」 、 「担持ベースメタル系高機能触媒」、 「全触媒化バイオマスリファイナリー」 の研究に取り組んでいます。 有害廃棄物を排出しないグリーン有機合 成化学 私達の生活を支えている化学製品、医薬品や先端科学 材料を原料から供給するためには、多くのエネルギーが 必要です。またそのプロセスには、様々な廃棄物が排出 さ れ ま す。 私 達 は、 固 体 触 媒 を 用 い る 収 率・ 選 択 率 100%の反応が実現できれば、必要とするエネルギーや 廃棄物を大幅にカットでき、地球環境にかかる負担を軽 減することができると考えています。最近ほぼ純粋なシ リカが、ナノ多孔体構造を形成すると固体酸触媒として 機能することを見出しました。これは、ナノ多孔体が反 応剤と弱く相互作用しながら、その細孔の中で効率の良 い反応場を提供していることの表れです。現在、これら の触媒作用の有機合成化学への展開、酸特性発現機構の 解明を目指しています。 担持ベースメタル系高機能触媒の開発 シリカナノ多孔体の均一で平坦な表面は、精密有機合 成のための金属活性点の構築に適していると考えられま す。私達は、チタンや銅を担持したメゾ多孔体上に不斉 環境を構築できることを見出し、これを高機能な不均一 4 系不斉触媒として広く展開することを試みています。す でに、銅担持体を用いて、パラジウムやロジウム錯体な どの貴金属均一系触媒に匹敵する不斉選択性を獲得して おり、現在はこの触媒系でのみ可能な新反応の開発に取 り組んでいます。 全触媒化バイオマスリファイナリーの構築 地球温暖化防止や石油枯渇問題から、再生可能なバイ オマスを原料とする化学工業の構築が世界的に喫緊の課 題になっています。私達はすでにバイオエタノールを選 択的にプロピレンに転換する触媒プロセスの開発に成功 し、バイオマス資源からバイオプラスチックが生産でき ることを示しました。最近では、 杉の鉋屑(かんなくず) のような木質系バイオマスそのものを触媒によって処理 するとリグノセルロース全量を水溶液化できること、ま たその方法を工夫すると、構成成分であるリグニンやセ ルロース、ヘミセルロース成分に分離できること、さら に気相に水素を共存させると種々の炭化水素へ直接変換 できることを世界で初めて明らかにしています。これら の成果は、食糧と競合しない新しいバイオマスリファイ ナリーの構築や持続可能な社会の実現に貢献できると考 えています。