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R - 駿河台メディアサービス
ICT利活用教育研究分科会,NPO法人 人材育成マネジメント研究会,
中央区立日本橋公会堂(東京),2013年3月30日
未来を拓くための
能力の評価と育成とは
Ver. 2.2 2013年3月30日(土)
[email protected]
明治大学法学部教授 阪井和男
資料URL:
http://www.kisc.meiji.ac.jp/~sakai/presen/hrdm-innovation-abilities-20130330.pdf
<役職等>
略歴
明治大学震災復興支援センター(センター員)
明治大学東北再生支援プラットフォーム副代表
明治大学文明とマネジメント研究所所長
明治大学サービス創新研究所所長
明治大学死生学・基層文化研究所研究者
明治大学社会イノベーション・デザイン研究所事務局長
本日のシナリオへ戻る
明治大学法学部教授
<公職等>
(理学博士)
サービス学会(Society for Serviceology)設立時発起人
阪井和男 Kazuo Sakai
情報コミュニケーション学会会長
[email protected]
facebook.com/saka1kaz
<プロフィール>
http://rwdb2.mind.meiji.ac.jp/Profiles/7/0000657/profi
le.html
<最近の発表資料>
http://www.kisc.meiji.ac.jp/~sakai/presen/
<略歴>
1952年 和歌山県和歌山市生まれ
1971年 和歌山県立桐蔭高校卒業
1977年 東京理科大学理学部物理学科卒業
1979年 同大学院理学研究科修士課程物理学専
攻修了
1985年 同大学院理学研究科博士課程物理学専
攻退学(6年間在籍)
ソフトハウスに勤務
1987年 理学博士(論文,東京理科大学)取得
サイエンスライター(フリー)
1990年 明治大学法学部専任講師
1993年 明治大学法学部助教授
1998年 明治大法学部教授
2012年11月14日
電子情報通信学会 思考と言語研究会(TL)研究会委員長
ドラッカー学会理事
サービスデザイニング研究所所長
次世代大学教育研究会事務局長
新世代デジタル教育研究会代表幹事
オープンソース&リソース戦略研究会共同代表
日本語プログラミング研究会会長
DPCマネジメント研究会理事
Ja Sakai Community運営委員(設立発起人)
大学情報サミット初代代表幹事
早稲田大学メディアネットワークセンター講師(非常勤)
早稲田大学メディアネットワークセンター 教育の情報化:
連携と支援研究部会 特別研究所員
早稲田大学情報教育研究所招聘研究員
早稲田大学商学学術院総合研究所WBS研究センター ド
ラッカー経営思想研究部会WG座長
<NPO等>
ネクストワールド・サミット第1回大会審査委員長(一般社
団法人日本儀礼協会)
一般社団法人CSスペシャリスト検定協会理事
NPO実務能力認定機構理事
NPO法人 人材育成マネジメント研究会理事
NPO法人 日本地域活性力創出機構評議員
特定非営利活動法人防災・市民メディア推進協議会理事
本日のシナリオ

第1部

イントロダクション





<休憩>
講師紹介 
参加者の自己紹介と受講動機
本講座のテーマ 
能力開発のレシピ 

第2部



パフォーマンスで能力は測れるか?



能力評価の陥穽
ブレークスルー事例:トヨタ生産方
式における5つのなぜ
パラダイム破壊のプロセス
<シェア> 3人×3G[10分]
 評価を歪ませるもの


感情の意味と重要性


成果を出す集中と開放の原理
複数課題のKnowing-Doing Gap
能力開発のレシピ 
<結晶化ワールドカフェ>



ハロー(後光)効果†
まぐれの効果 砂山モデル


†フィル・ローゼンツワイグ,『なぜビジネス書は間違うのか(ハロー
効果という妄想)』,桃井緑美子訳,日経BP社,2008年5月15日.
原著:Philip Rosenzweig, "The Halo Effect", Free Press, 2007.
知性復権のレシピ
可視化の視点
評価における感情の意味

セッション [10分]
チェンジ
[10分]
結晶化
[10分]
シェア
[10分]
おまけ
3
未来を拓くための能力の評価と育成とは
能力にかかわる次の疑問:
なぜ能力不足が問題になるのか
 なぜ能力評価をするのか
 評価の限界とは何か
 何を育成できるのか
 未来とどう関係するのか
――を皆さんとワールドカフェを使いながら考えて行
きましょう。

本日のシナリオへ戻る
2013年3月30日
明治大学 阪井和男
4
能力開発のレシピ
能力開発の問題点

能力開発の天才
成果を出す=集中できること!


能力を向上させることではない(←これは結果論)
能力開発の困難性
 能力の潜在性:能力=潜在的なもの 現場からの創発
必要とされる状況のなかではじめて開発され顕在化する!
∴能力が必要となる状況で、能力が不足していて当たり前

 成果の偶発性:成果=偶発的なもの 砂山モデル
同じ努力が同じ成果を上げるとは限らない!
∴努力が実らないのは、努力や能力の不足とは限らない

2012年10月12日
明治大学 阪井和男
6
能力はどう開発できるか

阪井説
1.
2.
強い動機
みずから制約し集中する
板に穴を開けるには、先を細くとがらせた錐が必要
a.
情動の安定(不安からの解放=能力の分散を避ける)
b.
前段階としての能力の解放
c.
集中領域の限定(制約条件を明らかにする=能力の分散を避ける)
d.
リハーサル(能力の準備体操)
e.
能力の集中(一気に能力を集中させる)
3.
能力のすばやい解放
(結果に引きずられない=次の能力集中への準備)
2012年11月14日
明治大学 阪井和男
7
自分の資源に集中して成果を出す
2013年3月30日
※自分を知る

自分の資源と使い方を知る


(1) 悩みの正体を知る
できないことをやろうとして悩む
 「使命」「自分」「制約条件」を知る
 悩みの正体は何か

※前提知識を知る

どんな問題を解こうとしているのか、
気にしていることは何か

正しい苦しみと間違った苦しみを峻別する

悩みを生み出す「壁」の正体は何か

常識の壁から抜け出す方法 (技術的→物理的矛盾)


使命から動機を探る
何のために私たちは生きるのか
動機があなたの強みを生む

原初的欲求と実存的欲求を考える 








理念に惑わされない科学的な態度 
すでに起こった未来を知る 
気高い妄想(崇高な使命)が未来を創る (芸術思考)
正しい場所に力を集中しすばやく解放
知性復権のレシピ 
現場から創発するイノベーション 
気づきに追い込む交流制約法 
システムの理解、ばらつきに関する知識、
知識の理論、心理学に関する知識(デミング)

行為の対象を感じられるか 
脳を使い倒すためのサイクル 
イノベーションを知る(イノベーション・コンテンツ)



イノベーションは幸せをもたらすか 
「なぜ」を問うことはなぜ重要なのか 
分析と直感を組み合わせる学習と想起 
因果関係を知る 
※制約条件を知る

評価の原理的問題を知る (技術的→物理的矛盾)

動機はどんな知的能力を駆動するか 
(3) 自分を知る※
(4) 前提知識を知る※
(5) 制約条件を知る※
(6) 正しい苦しみと対峙する


「命」を「使」ってでもやりたいことは何か

深遠なる知識 

(2) 使命を知る

自分の資源は何か:自分を知る(ドラッカー)
自分にできるものできないものを区別しているか
自分が変えられるものに集中しているか




なぜ能力の有無が問題になるのか
成果につながる行動特性はあるか
理想の教育はパフォーマンスを上げることか
評価に合わない能力は不要か
能力の集中原理を知る(管理的矛盾)


能力開発のレシピ 
能力を知識と峻別する



干物の知識をどう戻すか
知的能力は可視化できるか 
能力が出せない理由は何か







わかっているのにできない理由 
なぜ同時に2つできないか 
なぜ愚かな決断をしてしまうのか 
なぜ状況に流されてしまうのか 
なぜ理性脳を間違って使うのか 
努力は報われるか? 
なぜ成長しなくなるのか 
能力開発のレシピ
成果を出すメニューへ戻る
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本日のシナリオへ戻る
能力評価の陥穽
Ver. 1.0 2010年4月12日
Ver. 1.1 2011年1月21日
「パフォーマンスで能力は測れるか?」
http://www.kisc.meiji.ac.jp/~sakai/presen/hrdm2011performance-20110121.pdf
自由な知的能力

行
為
 出発点としての知識の
任意性
 能力の大きさと向きの
任意性
行
為
行為

2012年11月14日
自由な知的能力
明治大学 阪井和男
なぜ能力の有無が問
題になるか?
11
自由な知的能力
価
値
づ
け
ら
れ
た
評
価
軸
2012年8月24日

自由な知的能力
 出発点としての知識の
任意性
 能力の大きさと向きの
任意性

なぜ能力の有無が問
題になるか?
 価値づけられた評価に
合う?合わない?
 評価軸の存在を意味し
ている!
阪井和男・森憲一
12
知的能力の評価
価
値
づ
け
ら
れ
た
評
価
軸

仮定

ハイパフォーマンス ◎

ローパフォーマンス ○
努力が足りない
ノーパフォーマンス ×
努力していない

出発点の知識が同一
能力の大きさが同一
効率の向上法
1.
評価軸上で選別する


合:◎、○
否:×、××、×××
ネガティブパフォーマンス ××
アンチパフォーマンス ×××
要注意人物だ
2012年8月24日
阪井和男・森憲一
13
コンピテンシーとは?

コンピテンシー(competency)
成果につながる行動特性

高いレベルの業務成果を生み出す特徴的な行動特性
 コンピテンシーの設定
高い成果を安定的・継続的に上げている社員の特徴的
な行動特性(どのような環境で、何を、どのようにやったか)を具
体的に取り上げて分析し、積み上げる
 組織や職種にとっての評価システムにおける座標軸

「コンピテンシー」,MBA用語集,Globis Management School,GLOBIS Corporation
http://gms.globis.co.jp/dic/00647.php (2010年3月21日アクセス)

2012年11月14日
成果につながらない潜在的・顕在的能力から、
成果をもたらすと期待される具体的な行動で評価!
明治大学 阪井和男
14
知的能力の評価
価
値
づ
け
ら
れ
た
評
価
軸

仮定

ハイパフォーマンス ◎

ローパフォーマンス ○
努力が足りない

効率の向上法
1.
ノーパフォーマンス ×

2.
アンチパフォーマンス ×××

阪井和男・森憲一
合:◎、○
否:×、××、×××
評価軸方向に揃わせる
スピンに磁場

要注意人物だ
2012年8月24日
評価軸上で選別する

努力していない
ネガティブパフォーマンス ××
出発点の知識が同一
能力の大きさが同一
磁場=文化、制度、報
酬、教育・研修、… etc.
制度の厳格な運用
15
教育の効果
価
値
づ
け
ら
れ
た
評
価
軸
「始状態」
「終状態」
■■■ハイパフォーマンス
■■ハイパフォーマンス
■■■■ローパフォーマンス
■■ローパフォーマンス
■■ノーパフォーマンス
教
育
■ノーパフォーマンス
■ネガティブパフォーマンス
■■ネガティブパフォーマンス
■アンチパフォーマンス
■■アンチパフォーマンス
両者の差分が教育効果!
理想の教育とは・・・?
2012年11月14日
明治大学 阪井和男
16
理想の教育???
価
値
づ
け
ら
れ
た
評
価
軸
「始状態」
「終状態」
■■■■■■■ハイパフォーマンス
■■ハイパフォーマンス
■■■ローパフォーマンス
■■ローパフォーマンス
■■ノーパフォーマンス
教
育
ノーパフォーマンス
ネガティブパフォーマンス
■■ネガティブパフォーマンス
アンチパフォーマンス
■■アンチパフォーマンス
両者の差分が教育効果!
2012年8月24日
阪井和男・森憲一
17
評価に合わない能力は不要か?
価
値
づ
け
ら
れ
た
評
価
軸
ハイパフォーマンス ◎
ローパフォーマンス ○
ノーパフォーマンス ×
ネガティブパフォーマンス ××
エ
ク
セ
レ
ン
ト
パ
フ
ォ
ー
マ
ン
ス
へ
の
道
アンチパフォーマンス ×××

仮定



出発点の知識が同一
能力の大きさが同一
効率向上の犠牲

創造性

効率性と創造性はトレード
オフ!
∴エクセレントパフォーマン
スへの道を閉ざす!
 20%ルール

義務付けられた制度と
して運用されている例
http://googlejapan.blogspot.com
/2007/07/20.html (2010年4
月13日アクセス)
2012年8月24日
阪井和男・森憲一
18
エクセレントパフォーマンスへの道
価
値
づ
け
ら
れ
た
評
価
軸

大前提

ハイパフォーマンス
知的能力は評価に関わらず対等


アンチパフォーマンス
ノーパフォーマンス

出発点としての知識の多様さ
努力の方向としての能力の多様さ
合力
ハイパフォーマンス+アンチパフォーマ
ンス+ノーパフォーマンス
=ノーパフォーマンス
∴評価軸方向の成分=0

評価されない活動だけが残る!
価値づけられない活動や能力を
生かすには・・・?
2012年11月14日
明治大学 阪井和男
19
エクセレントパフォーマンスへの道
価
値
づ
け
ら
れ
た
評
価
軸

ハイパフォーマンス
価値づけられない能力を生かす
二項対立の解消法から・・・
 次元を上げる

アンチパフォーマンス
空間次元を追加


ノーパフォーマンス

ノーパフォーマンスの評価軸?
直行する軸とは・・・
 なんら影響しない活動
 コストセンター?
時間次元を導入


空間のなかで活かす軌跡を描く
タイミングをずらせて生かす!
∴評価は短期的価値しか対象にできない!
2012年11月14日
明治大学 阪井和男
20
エクセレントパフォーマンスへの道
価
値
づ
け
ら
れ
た
評
価
軸
場

価値づけられない能力の生かし方

3つの推論法から

演
繹
1.
帰
納
理念にもとづき具体化

2.
場
2012年8月24日
アブダクション
必ず行き詰る
外部評価から失敗の理由を問う

3.
演繹帰納アブダクション(宮原諄二,2001年)
外部から学ぶ(テーラー,2009年)(デミング,1996年)
まぐれを生かして意味を発見
タレブ(2008年,2009年)
「1」に戻る

宮原諄二、「創造的技術者の論理とパーソナリティ」、『イノベーション・マネジメント入門』、一橋大学イノベーション研究センター
編、日本経済新聞社、第8章、pp. 218-244、2001年12月21日.
フレデリック W.テイラー, 『新訳 科学的管理法』,有賀裕子翻,ダイヤモンド社,2009年11月28日.
デミング,W・エドワーズ,『デミング博士の新経営システム論』,NTTデータ通信品質管理研究会,NTT出版,1996年3月21日.
原著:W. Edwards Deming, "The new economics for industry, government, education", Second Edition, Massachusetts Inst
Technology, April 1994.
ナシーム・ニコラス・タレブ、『まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか』、望月衛訳、ダイヤモンド社、2008年2月1日.
ナシーム・ニコラス・タレブ、『ブラック・スワン[上・下]―不確実性とリスクの本質』、望月衛訳、ダイヤモンド社、2009年6月19日.
阪井和男・森憲一
21
能力評価の陥穽
成果を出すメニューへ戻る
索引へ戻る
本日のシナリオへ戻る
ブレークスルー事例:
トヨタ生産方式に
おける5つのなぜ
トヨタ生産方式における5つのなぜ

トヨティズム(トヨタ生産方式)の基本の一つ
One of the basic method of Toyotism
 「源流方式」(problem solving at the source)




「なぜを5回問い」,Ask ‘why’ five times
ものの流れの「源流」にさかのぼって問題を発見,解決し,
課題を創出して実現する
そのアプローチ自体を,サプライチェーンの全員に繰り返して教え,
改善していくこと
 創案した人


トヨティズムの父・大野耐一(Taiichi Ohno)
工場現場での度重なる試行錯誤を通して見出した経験的な知恵
西口敏宏,『遠距離交際と近所づきあい(成功する組織ネットワーク戦略)』,NTT出版,pp. 89-95,2007年1月30日.
2012年9月11日
阪井和男・栗山健
24
トヨタ生産方式での事例

事件(1980年代中盤) Case (Mid-1980s)
 顧客の苦情
Customer complaint
「カーステレオが不良品だから,車ごと交換しろ!」



“It was a defective car stereo. Should be replaced with a new car!”
純正カーステレオのFM自動受信チューニングが壊れた
Despite the genuine car stereo, the automatic FM tuner is broken
 トヨタの最高車種に搭載されていた
It had been installed in Toyota's best car
日本の大手音響機器サプライヤーが開発・製造
The car stereo was manufactured by a major Japanese supplier
トヨタに納入していた同社製品のなかでも最高機種
It was the best models in the product delivered to Toyota
西口敏宏,『遠距離交際と近所づきあい(成功する組織ネットワーク戦略)』,NTT出版,pp. 89-95,2007年1月30日.
25
阪井和男・栗山健
2012年9月11日
知の具現化(Realization of Knowledge)
トヨタの純正カーステレオ
2012年9月11日
純正カーステレオの
FM自動受信チュー
ニングが壊れた
大手音響機器
サプライヤー (How)
の最高機種
阪井和男・栗山健
26
トヨタ生産方式での事例

1回目のなぜ
 トヨタがサプライヤーとの合同対策会議を開く
根本原因の究明「なぜ不良が発生したのか」
トヨタ:品質管理,購買要員
 サプライヤー:設計,製造,品質管理,セールス担当者

 サプライヤーの回答

不良原因

たまたまそのカーステレオのプリント基板の一部に異常な高圧
電流が流れて,半導体が飛んでしまったらしい
西口敏宏,『遠距離交際と近所づきあい(成功する組織ネットワーク戦略)』,NTT出版,pp. 89-95,2007年1月30日.
27
阪井和男・栗山健
2012年9月11日
知の具現化(Realization of Knowledge)
1回目のなぜ
2012年9月11日
純正カーステレオの
FM自動受信チュー
ニングが壊れた
1回目のなぜ(Why1)
プリント基板の一
部に異常な高圧
電流が流れて,
半導体が飛んだ
阪井和男・栗山健
28
知の具現化(Realization of Knowledge)
1回目のなぜ
2012年9月11日
(How) コンデンサーを
大容量で耐性の
あるものに交換
1回目のなぜ(Why1)
プリント基板の一
部に異常な高圧
電流が流れて,
半導体が飛んだ
阪井和男・栗山健
29
知の具現化(Realization of Knowledge)
1回目のなぜ
2012年9月11日
対処療法だ!
(How) コンデンサーを
大容量で耐性の
あるものに交換
プリント基板の一
部に異常な高圧
電流が流れて,
半導体が飛んだ
1回目のなぜ(Why1)
対象への棲み込み
問題を再発させては
ならない!
阪井和男・栗山健
30
知の具現化(Realization of Knowledge)
2回目のなぜ
2012年9月11日
1回目のなぜ(Why1)
2回目のなぜ(Why2)
設計ミスでも部品
の不良でもない
製造工程か物流
かのいずれか
阪井和男・栗山健
31
知の具現化(Realization of Knowledge)
3回目のなぜ
2012年9月11日
1回目のなぜ(Why1)
設計ミスでも部品
の不良でもない
製造工程か物流
かのいずれか
2回目のなぜ(Why2)
3回目のなぜ(Why3)
製造工程のデザ
インにも,工員の
作業にも問題ない
阪井和男・栗山健
32
知の具現化(Realization of Knowledge)
4回目のなぜ
2012年9月11日
1回目のなぜ(Why1)
2回目のなぜ(Why2)
製造工程のデザ
インにも,工員の
作業にも問題ない
3回目のなぜ(Why3)
4回目のなぜ(Why4)
工場内ではなく,
「輸送中」にあり
そうだ
阪井和男・栗山健
33
知の具現化(Realization of Knowledge)
5回目のなぜ
1回目のなぜ(Why1)
2回目のなぜ(Why2)
3回目のなぜ(Why3)
工場内ではなく,「輸
送中」にありそうだ
4回目のなぜ(Why4)
5回目のなぜ(Why5)
下請けが組み立てたプリント基板
を本工場へ輸送する際に発生!
2012年9月11日
阪井和男・栗山健
34
知の具現化(Realization of Knowledge)
5回目のなぜ
1回目のなぜ(Why1)
2回目のなぜ(Why2)
3回目のなぜ(Why3)
下請けが組み立てた
プリント基板を本工場
へ輸送する際に発生!
4回目のなぜ(Why4)
5回目のなぜ(Why5)
プリント基板を輸送する「通い箱」にハンダや電線
の細かい切れ端が付着.輸送中の振動で導電物
の切れ端がプリント基板に付着し回路をショート
2012年9月11日
阪井和男・栗山健
35
知の具現化(Realization of Knowledge)
5回目のなぜ
(Why1)
(Why2)
(Why3)
プリント基板を輸送する
「通い箱」にハンダや電線
の細かい切れ端が付着.
輸送中の振動で導電物
の切れ端がプリント基板
に付着し回路をショート
(Why4)
(Why5)
アブダクション
パラダイム破壊型ブレークスルー
拍子抜けす
るほど単純
知の創造(Creation of Knowledge)
2012年9月11日
阪井和男・栗山健
36
知の具現化(Realization of Knowledge)
5回目のなぜ
無駄な部品交換に一円も
費やすことなく問題を根治
将来発生したであろう信用
の失墜も未然に回避
(Why1)
(Why2)
(How) 毎日「通い箱」をきれ
いに掃除するだけ
(Why3)
プリント基板を輸送する
「通い箱」にハンダや電線
の細かい切れ端が付着.
輸送中の振動で導電物
の切れ端がプリント基板
に付着し回路をショート
(Why4)
(Why5)
アブダクション
パラダイム破壊型ブレークスルー
拍子抜けす
るほど単純
知の創造(Creation of Knowledge)
2012年9月11日
阪井和男・栗山健
37
トヨタ生産方式における5つのなぜ
根治療法
対処療法
知
の
具
現
化
コンデンサーを大容量で
耐性のあるものに交換
(How)
毎日「通い箱」をきれいに掃除
するだけ
純正カーステレオのFM自動
受信チューニングが壊れた
無駄な部品交換に一円も
費やすことなく問題を根治
将来発生したであろう信
用の失墜も未然に回避
(Why1)
プリント基板の一部に異常な高圧
電流が流れて,半導体が飛んだ
(Why3)
製造工程のデザインにも,工員の
作業にも問題ない
(Why5)
下請けが組み立てたプリント基板
を本工場へ輸送する際に発生!
2012年9月11日
(How)
(Why2)
設計ミスでも部品の不良でもなく,
製造工程か物流かのいずれか
(Why4)
工場内ではなく,
「輸送中」にありそうだ
(アブダクション)
プリント基板を輸送する「通い箱」
にハンダや電線の細かい切れ端
が付着.輸送中の振動で導電物
の切れ端がプリント基板に付着し
回路がショート
拍子抜けする
ほど単純
知の創造
38
トヨタ生産方式での事例

5つのなぜの効果
 同じ問題は二度と発生しなくなった!
根本原因が分かり,問題の根を源流で摘み取ったため
 最初の解決策では,いずれ同じ問題が再発していたはず
 別の機種に別の現れ方をして,当事者を右往左往させたであろう
 当事者双方にウィン・ウィン状況
1.
2.
3.
サプライヤーは無駄な部品交換に一円も費やさずに問題を根治
将来発生したであろう信用の失墜も未然に回避
重要な教訓を学んだ
 深い信頼関係
「トヨタさんのようなお客様には,私どもは自然についていきます。そのほうが
得だからです」(西口,2007年,p. 95)
西口敏宏,『遠距離交際と近所づきあい(成功する組織ネットワーク戦略)』,NTT出版,pp. 89-95,2007年1月30日.
39
阪井和男・栗山健
2012年9月11日
対処療法から根治療法へ
根治療法
知の具現化(Realization of Knowledge)
対処療法
コンデンサーを
大容量で耐性の
あるものに交換
毎日「通い箱」をきれ
いに掃除するだけ
異常な高圧電
流が流れ,半導
体が飛んだ
「通い箱」の細かい
切れ端が輸送中に
プリント基板に付着
アブダクション
拍子抜けす
るほど単純
知の創造(Creation of Knowledge)
2012年9月11日
阪井和男・栗山健
40
トヨタ生産方式における5つのなぜ
根治療法
対処療法
知
の
具
現
化
コンデンサーを
大容量で耐性の
あるものに交換
毎日「通い箱」をきれ
いに掃除するだけ
異常な高圧電
流が流れ,半導
体が飛んだ
「5つのなぜ」
対象への棲み込み
重大な事実の発見
ブルートファクツ
「通い箱」の細かい
切れ端が輸送中に
プリント基板に付着
2012年9月11日
問題を再発させては
ならない!
アブダクション
アブダクションが
アフォードされる
阪井和男・栗山健
=ブルートファク
ツに至るための
苦悩のプロセス
拍子抜けす
るほど単純
知の創造
41
知の具現化(Realization of Knowledge)
5回目のなぜ
(Why1)
収
束
思
考
(How)
発
散
思
考
(Why2)
(Why3)
(Why4)
発散思考
(Why5)
アブダクション
パラダイム破壊型ブレークスルー
拍子抜けす
るほど単純
知の創造(Creation of Knowledge)
2012年9月11日
阪井和男・栗山健
42
ブレークスルー事例:
トヨタ生産方式に
おける5つのなぜ
成果を出すメニューへ戻る
索引へ戻る
本日のシナリオへ戻る
パラダイム破壊の
プロセス
閉塞感の正体

日本社会の閉塞感
 日本社会の「過剰適応」がもたらしたもの

何が過剰だったか:
 経済原理という価値基準への徹底的な集約化によって、
日本社会が過剰に効率化!

過剰適応の機能:
 イノベーションに必須の多様性を排除しつくした
 経済原理以外のあらゆる価値基準を侵食し、日本社会の
「知性の劣化」をもたらした
2012年9月11日
阪井和男・栗山健
45
「常識」を超越

知性
 軋轢や矛盾に真っ向から対峙し、
自らの頭脳を使い倒して知恵を絞って乗り越えようと決意し
た人や組織だけが獲得できる能力

能力獲得の前提条件
 過去の成功体験や既存の価値観がもたらす束縛、諦めや
不安から脱却し自由になれること

既存の価値観から脱却する原理
 「パラダイム破壊型イノベーション」(山口栄一)
イノベーション・ダイアグラム
2012年9月11日
阪井和男・栗山健
46
土壌から育つイノベーション
(MPU・RAM発明)
知
の
具
現
化
ノイス:
バイポーラ
IC/1959
ショックレイ:
固体への置換
失敗/1946
合成法
/
3 ド
極・
フ
真ォ
空レ
管ス
ト
19 :
06
科:
Ge点接触トラン
なバ
学 ぜ ー ジスタ/1947
的失デ
成長法で
解敗ィ
ー
実現/1951
明?
ン
パラダイム破壊
パラダイム破壊
/
阪井和男・栗山健
/
Si
Ge
山口(2006年,p.177,図3-9)から修正して一部引用
山口栄一,『イノベーション 破壊と共鳴』,NTT出版,2006年3月3日.
2012年9月11日
クリツィン:
量子ホール
効果の発見
/1980
発電
見界
ティール:
ショックレー: 予 ト
効
スト
言 ラ 接 SiのCZ成長 タ ラ 接 カーン・タラーラ: 19 果 2
pn接合の
60 界
Si-SiO2界面
合
の
量子力学
19 ン
19 ン 合
ジ型
物理の研究
ジ
面
型
49 ス
53
の
タ
/
発増
見幅
19 効
47 果
の
カーン・アターラ:
Si-MOSFET
/1960
選択拡散
法/1955
パラダイム破壊
/
/
バーディーン・
ブラッテン:
表面準位の
実験研究
ヘルニ:
プレーナー
法/1959
ノイス:
MOS-IC
/1965
Si-SiO
パラダイム破壊
力表
学面
19 の
47 量
子
MPU
RAM
知の創造
47
土壌の中で繰り返し・・・
(トランジスタ発明)
知
の
具
現
化
ショックレイ:
固体への置
換失敗/1946
ド・フォレスト:
3極真空管
/1906
知の土壌
表面の量子
力学/1947
バーディーン:
なぜ失敗?科
学的解明
Ge点接触トラン
ジスタ/1947
パラダイム破壊
バーディーン・ブラッテン:
表面準位の実験研究
増幅効果の
発見/1947
知の創造
山口(2006年,p.177,図3-9)から修正して一部引用
山口栄一,『イノベーション 破壊と共鳴』,NTT出版,2006年3月3日.
2012年9月11日
阪井和男・栗山健
48
イノベーション・ダイアグラムの最小単位
(
エ知
ンの
ジ
ニ具
ア
リ現
ン化
グ
)
A(価値づけられた知識や技術)
知の土壌
S(既存の知)
山口栄一,『イノベーション 破壊と共鳴』,NTT出版,2006年3月3日.
2012年9月11日
阪井和男・栗山健
P(創造された知)
知の創造(サイエンス)
49
原初的な欲求を実現させる
具体化
how
2012年9月11日
阪井和男・栗山健
50
具現化の達成を目指す
具体化
how
2012年9月11日
阪井和男・栗山健
51
評価軸が設定される
知
の
具
現
化
具体化
how
具現化の評価軸は,
暗黙のうちに設定される
2012年9月11日
阪井和男・栗山健
52
具現化を達成させる
知
の
具
現
化
実現!
自己効力観の高揚
喜
具体化
how
・スーパーマン症候群
凡例
知識
「わかる」
能力
「できる」
2012年9月11日
阪井和男・栗山健
53
具現化が行き詰まる
知
の
具
現
化
2012年9月11日
行き詰まり
苦
喜
具体化
how
阪井和男・栗山健
54
努力不足か? 能力不足か?
知
の
具
現
化
あと少しなのに!
2012年9月11日
苦
喜
具体化
how
阪井和男・栗山健
55
イノベーション・プロセス
なぜ行き詰るのか?
知
の
具
現
化
ここにはない!!?
2012年9月11日
目標
具体化
how
阪井和男・栗山健
56
なぜ行き詰るのか?
視野狭窄
知
の
具
現
化
目標
具体化
how
1.
具体思考の限界(Smith, 2007)
視点を硬化させる
 詳細を重視し自由に発想できない

2.
演繹推論の限界

演繹による理論体系は必ず破綻!

2012年9月11日
Smith, P. K. et al., “Abstract thinking
increases one’s sense of power”,
Journal of Experimental Social
Psychology (2007),
doi:10.1016/j.jesp.2006.12.005
ゲーデルの不完全性定理
阪井和男・栗山健
57
努力した方向にはなかった!
知
の
具
現
化
2012年9月11日
具体化
how
×
阪井和男・栗山健
目標
58
リンゴを見つけたボス猿
http://www.hisuinosato.com/
mt/archives/IMG_3263.jpg
(2012年8月24日アクセス)
2012年9月11日
http://img.4travel.jp/img/tcs/t/pict/lrg/11/67/24/lrg_116724
06.jpg?20100812110309 (2012年8月24日アクセス)
阪井和男・栗山健
59
ボス猿の演繹推論
大前提:「枝」は
つながっている
http://www.hisuinosato.com/
mt/archives/IMG_3263.jpg
(2012年8月24日アクセス)
2012年9月11日
http://img.4travel.jp/img/tcs/t/pict/lrg/11/67/24/lrg_116724
06.jpg?20100812110309 (2012年8月24日アクセス)
阪井和男・栗山健
60
努力不足の子猿?
努力が
足りんのじゃ!
手が届かない!?
現
実
の
「
枝
」
http://www.hisuinosato.com/
mt/archives/IMG_3263.jpg
(2012年8月24日アクセス)
落ちた
ら死ぬ!
http://img.4travel.jp/img/tcs/t/pict/lrg/11/67/24/lrg_116724
06.jpg?20100812110309 (2012年8月24日アクセス)
サルのイラスト
http://www.civillink.net/esozai/img/pics1523.gif (2012年8月24日アクセス)
2012年9月11日
阪井和男・栗山健
61
唯一の方法は?
http://www.hisuinosato.com/
mt/archives/IMG_3263.jpg
(2012年8月24日アクセス)
2012年9月11日
http://img.4travel.jp/img/tcs/t/pict/lrg/11/67/24/lrg_116724
06.jpg?20100812110309 (2012年8月24日アクセス)
阪井和男・栗山健
62
どうやって見つけるか?
知
の
具
現
化
2012年9月11日
唯一の
方法は?
目標
具体化
how
阪井和男・栗山健
63
現実を受け入れて理由を考える
対象への棲み込み
知
の
具
現
化
行動観察
目標
(エスノグラフィ)
具体化
how
抽象化
why?
苦
抽象的思考
・具体的思考を抑える
・自由で柔軟に思考できる
Smith, P. K. et al., “Abstract thinking
increases one’s sense of power”,
Journal of Experimental Social
Psychology (2007),
doi:10.1016/j.jesp.2006.12.005
2012年9月11日
阪井和男・栗山健
64
2つのwhy’s
知
の
具
現
化
0. why
0. why ・・・ 「評価」に焦点
知
の
具
現
化
 なぜ目標が達成できないのか?
1. why
暗黙の含意:
 努力が足りないからだ!
 能力がないからだ!
(親が子どもを叱るとき・・・)
1. why ・・・ 「存在」に興味
 なぜこれが「存在」するのか?
暗黙の含意:
 まず事実を受け入れましょう!
 根拠をもとに科学的に追究しよう!
阪井和男,「知的能力は移転可能か」,サイエンティフィック・システム研究会,知的能力
の可視化WG,『知的能力の可視化WG成果報告書』,pp. 77-79,2012年5月11日.
2012年9月11日
阪井和男・栗山健
65
「評価」指向のwhy


「なぜ・なぜ・なぜと、理不尽な問題の原因を追求しす
ぎると、足が止まってしまいます。新たな失敗を恐れ
て、動けなくなってしまうのです」
組織の理不尽な問題の特徴は、問題を抱える人に、
自己矛盾や葛藤をもたらすことです。思わず「どうして
なんだ?」「なぜなんだ?」とつぶやかせてしまう。そう
した場面で原因をさらに追求しても、かえって苦しさが
増すだけです。思考の悪循環、ネガティブ・サイクルが
回り始めるのです
加藤雅則,『自分を立てなおす対話』,日本経済新聞出版社,p. 39,2011年6月1日.
2012年9月11日
阪井和男・栗山健
66
「なぜ」存在するかを問い続ける
対象への棲み込み
行動観察
知
の
具
現
化
目標
(エスノグラフィ)
具体化
how
抽象化
why?
苦
抽象的思考
・具体的思考を抑える
・自由で柔軟に思考できる
Smith, P. K. et al., “Abstract thinking
increases one’s sense of power”,
Journal of Experimental Social
Psychology (2007),
doi:10.1016/j.jesp.2006.12.005
サイクルに
閉じない!
閉じるとPDCAサイクル!
2012年9月11日
阪井和男・栗山健
67
猿のPDCAサイクル
努力が
足りんのじゃ!
勢いをつけて
飛び出そう!
現
実
の
「
枝
」
http://www.hisuinosato.com/
mt/archives/IMG_3263.jpg
(2012年8月24日アクセス)
落ちて
死ぬ!
http://img.4travel.jp/img/tcs/t/pict/lrg/11/67/24/lrg_116724
06.jpg?20100812110309 (2012年8月24日アクセス)
サルのイラスト
http://www.civillink.net/esozai/img/pics1523.gif (2012年8月24日アクセス)
2012年9月11日
阪井和男・栗山健
68
知の土壌へもぐる
目標
知
の
具
現
化
具体化
how
抽象化
why?
矛盾
1. 技術的矛盾
2. 物理的矛盾
3. 社会的矛盾
(TRIZ,5つの壁®)
知の土壌
IT知識
ビジネス知識
人間系知識
美学,哲学,芸術
2012年9月11日
阪井和男・栗山健
69
新しい知と出会う
目標
知
の
具
現
化
具体化
how
抽象化
why?
矛盾
1. 技術的矛盾
2. 物理的矛盾
3. 社会的矛盾
(TRIZ,5つの壁®)
知の土壌
IT知識
ビジネス知識
人間系知識
美学,哲学,芸術
2012年9月11日
阪井和男・栗山健
70
意味が創発する
目標
知
の
具
現
化
具体化
how
知の土壌
IT知識
ビジネス知識
人間系知識
美学,哲学,芸術
共
鳴
場
抽象化
why?
矛盾
1. 技術的矛盾
2. 物理的矛盾
3. 社会的矛盾
(TRIZ,5つの壁®)
喜
創発 what!
(アブダクション)
喜
知の創造
2012年9月11日
阪井和男・栗山健
71
短期目標を超え
た「崇高な使命」
が必要!
革新が実現!
革新
改善
知
の
具
現
化
抽象化
why?
具体化
how
(演繹)
(帰納)
矛盾
1. 技術的矛盾
2. 物理的矛盾
3. 社会的矛盾
(TRIZ,5つの壁®)
具体化
how
(演繹)
知の土壌
IT知識
ビジネス知識
人間系知識
美学,哲学,芸術
共
鳴
場
創発 what!
(アブダクション)
異質な活動と交
流する場が必要!
イノベーション・ダイアグラム(山口栄一,2006年)
山口栄一,『イノベーション 破壊と共鳴』,NTT出版,p. 70,2006年3月3日.
2012年9月11日
阪井和男・栗山健
共
鳴
場
知の創造
72
パラダイム破壊の
プロセス
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本日のシナリオへ戻る
成長する砂山モデル
~自己組織化臨界現象~
努力は報われるか?

努力すれば期待した成果は得られるか?
 Yes?
 No?
2012年12月15日
阪井和男・内藤隆・栗山健
75
努力は報われるか?

努力すれば期待した成果は得られるか?
 Yes?
悪魔のささやき:
 「成果がないのは、努力が足りないからだ」

因果関係の逆転!
 No?
努力をしても、成果が得られるとは限らない
努力以外にも成果に結びつくものがある
 第3の要因:(例)まぐれ、たまたま、偶然、幸運、・・・etc.
 真摯な努力は、成果を得るチャンスを最大化する!

2012年12月15日
阪井和男・内藤隆・栗山健
76
成長する砂山モデル

砂山モデルによる自己組織化臨界現象
努力のあとに結果が現れる例として,わかりやすい
モデル
1.
2.
3.
4.
板の上に砂粒を一粒ずつ落として山を作っていく
山が徐々に高くなる
十分に山が高くなると傾斜がきつくなる
たった一粒の砂で雪崩が発生
マーク・ブキャナン, 『歴史は「べき乗則」で動く(種の絶滅から戦争までを読み解く複雑系科学)』, 水谷淳訳,早川書房,2009年8月21日.
Bak, P., Tang, C. and Wiesenfeld, K. (1987). “Self-organized criticality: an explanation of 1/f noise”. Physical Review Letters 59: 381–384.
doi:10.1103/PhysRevLett.59.381.
2012年12月15日
阪井和男・内藤隆・栗山健
77
砂山モデル
砂
粒
A
砂山
2012年12月15日

自己組織化臨界現象
1.
2.
砂粒を一粒ずつ落とす
砂山ができる
Bak, P., Tang, C. and Wiesenfeld, K. (1987). “Self-organized
criticality: an explanation of 1/f noise”. Physical Review
Letters 59: 381–384. doi:10.1103/PhysRevLett.59.381.
阪井和男・内藤隆・栗山健
78
砂山モデル
砂
粒
B

自己組織化臨界現象
1.
2.
3.
砂粒を一粒ずつ落とす
砂山ができる
斜面の傾きが大きくなる
地殻変動
砂山
2012年12月15日
Bak, P., Tang, C. and Wiesenfeld, K. (1987). “Self-organized
criticality: an explanation of 1/f noise”. Physical Review
Letters 59: 381–384. doi:10.1103/PhysRevLett.59.381.
阪井和男・内藤隆・栗山健
79
砂山モデル
砂
粒
C
大変動

自己組織化臨界現象
砂粒を一粒ずつ落とす
2. 砂山ができる
3. 斜面の傾きが大きくなる
4. 突如、「なだれ」が起きる
 「なだれ」は砂粒Cのせい!?
1.
砂粒Cが引き金を引いた
 そもそも砂山が不安定
因果関係の錯誤

砂山
2012年12月15日
どの砂粒でも、いずれ「な
だれ」は起こる!
阪井和男・内藤隆・栗山健
80
臨界状態にある「場」
砂
努力・・・ 粒
C
成果・・・

自己組織化臨界現象
 砂山の雪崩=創発
営々と続けてきた「行為」が,新
たな「特定の行為」のために,
ひと塊の「新しい意味」をえて「
創発」を起こした

場の機能:異なる「行為」を連
携させ意味を創出

砂山
2012年12月15日
「場」は臨界状態か?
 場の中で行為の束が自
己組織化する
阪井和男・内藤隆・栗山健
81
自己組織化臨界現象
(SOC : Self Organized Critical Phenomena)

砂山モデル
多数の要素が密接に関連しているシステム
 砂粒を落とすだけで勝手に(自己組織化)臨界状態になる
∴変化の規模や時期は原理的に予測不可能


地震や経済危機等の予測も不可能
べき乗則という秩序
 「なだれ」の大きさ(=転がる砂粒の数)と起きる回数
 大きさが2倍で1/2.14
∴どんな大規模ななだれでも起きる可能性はゼロではない!
マーク・ブキャナン, 『歴史は「べき乗則」で動く(種の絶滅から戦争までを読み解く複雑系科学)』, 水谷淳訳,早川書房,2009年8月21日.
Bak, P., Tang, C. and Wiesenfeld, K. (1987). “Self-organized criticality: an explanation of 1/f noise”. Physical Review Letters 59: 381–384.
doi:10.1103/PhysRevLett.59.381.
2012年12月15日
阪井和男・内藤隆・栗山健
82
べき乗則の例

地震のグーテンベルグ・リヒター則


破片


壁にたたきつけた凍ったジャガイモの破片の大きさが2倍の大きさにな
ると頻度が1/6
山火事


2倍の大きさの地震は頻度は1/4
規模が2倍になると頻度は1/2.48倍
戦争の戦死者

世界人口にたいする戦死者の比率が2倍になると頻度は1/2.62倍
変化の規模や時期は原理的に予測不可能
∴どんな大規模ななだれでも起きる可能性はゼロではない!
マーク・ブキャナン, 『歴史は「べき乗則」で動く(種の絶滅から戦争までを読み解く複雑系科学)』, 水谷淳訳,早川書房,2009年8月21日.
2012年12月15日
阪井和男・内藤隆・栗山健
83
自己組織化の条件と感知

自己組織化の条件
同じ場所に ・・・ 集中力
落とし続ける ・・・ 根気
↓
予測不能な大変動!

努力しなくては成果は出ない!
チャンスの扉は目前に開かれる!
縁:「人事を尽くして天命を待つ」
真摯な努力
帰納推論中立変異の砂山拘
束条件の緩和アブダクション
大変動を感知するには?
 どんな地殻変動が起きつつあるかを感じ取ること

これこそドラッカーがなしてきたこと*
「感じる」ことは無理なので、
現実を観察して推測する
*阪井和男,「ドラッカーの社会生態学」,2012年10月12日.
http://www.kisc.meiji.ac.jp/~sakai/presen/la-pfd-social-ecology-sakai-20121012.pdf (2012年12月15日アクセス)
84
阪井和男・内藤隆・栗山健
2012年12月15日
成長する砂山モデル
~自己組織化臨界現象~
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知性復権のレシピ
「知性の劣化」への道

本源的自己中心性
 人の痛みを感じられない

情動脳の機能低下
 感情で色付けされた方向へ思考が向く

理性脳の機能低下
 固定観念にとらわれる
 根拠をもとに科学的な思考ができない

知性の劣化の果てに・・・
不和・いさかい・緻密な破壊的行為・計画殺人・戦争・・・etc.
2012年9月11日
阪井和男・栗山健
87
「知性の復権」へのレシピ

人への興味関心を失ってはならない!
本源的自己中心性
孤立してはいけない
 人の痛みを感じられない

情動脳の機能低下
情動と理性の華麗なるダンスを!
互いをダイナミックに生かし合う
 感情で色付けされた方向へ思考が向く

理性脳の機能低下
干物*の知識は能力で戻せ!
 固定観念にとらわれる
なま物*としての知識へ戻す能力育成
 根拠をもとに科学的な思考ができない

知性の復権
知性の劣化の果てに・・・
教養=公的な生活と私的な
知識としての倫理
生活の衝突という難問を巧み
不和・いさかい・緻密な破壊的行為・計画殺人・戦争・・・etc.
能力としての倫理へ
に解決する能力*
*清水真木,『これが「教養」だ』,新潮新書 361,新潮社,p. 15, p. 19, 2010年4月20日.
2012年9月11日
阪井和男・栗山健
88
*岩崎夏海がドラッカーのマネジメントを論ずるときに用いた比喩(第6回ドラッカー学会大会,旭川ターミナルホテル(旭川市),2011年9月11日)
能力としての倫理
伊藤正男, 『脳の不思議』,
岩波 科学ライブラリー 58,
岩波書店,1998年
なま物*としての知識
能力としての倫理
前頭前連合野
(司令部)
思考
干物*としての知識
(内部ループ)
ポスト近代型能力
頭頂側頭連合野
理性脳
注
意
・
抑
止
(内部世界)
新皮質
(250万年前)
近代型能力
日本社会の知性の劣化
視覚
視覚野
感覚運動野
味覚
情動脳
嗅覚
情動(態度)
大脳辺縁系等
反応
(2億年前)
反射脳
(5億年前)
脳幹・脊髄
刺激
2012年9月11日 (外部世界)
知識としての倫理
反射
反
応
が
速
行動
(外部世界) い
伊藤正男(1998年,第2章)を参考に作図
阪井和男・栗山健
89
*岩崎夏海がドラッカーのマネジメントを論ずるときに用いた比喩(第6回ドラッカー学会大会,旭川ターミナルホテル(旭川市),2011年9月11日)
伊藤正男, 『脳の不思議』,
岩波 科学ライブラリー 58,
岩波書店,1998年
脳と知的能力の4要素
なま物*に戻す「意志」
能力
倫理(意志)
前頭前連合野
(司令部)
思考
知識
(内部ループ)
頭頂側頭連合野
理性脳
注
意
・
抑
止
(内部世界)
新皮質
(250万年前)
視覚
視覚野
感覚運動野
安定した感情による「態度」
情動(態度)
味覚
情動脳
嗅覚
大脳辺縁系等
反応
(2億年前)
反射脳
(5億年前)
脳幹・脊髄
刺激
2012年9月11日 (外部世界)
反射
行動
(外部世界)
伊藤正男(1998年,第2章)を参考に作図
阪井和男・栗山健
90
*岩崎夏海がドラッカーのマネジメントを論ずるときに用いた比喩(第6回ドラッカー学会大会,旭川ターミナルホテル(旭川市),2011年9月11日)
知的能力の4要素
能力
演繹推論
帰納推論
アブダクション
知識
倫理(意志)
情動(態度)
2012年9月11日
阪井和男・栗山健
91
演繹推論(Deduction)

(仮説)
機械的推論
赤い玉だけが入った箱がある
仮説が真ならば、論理
の飛躍はなく、結果は必 (事例)
その箱の中から玉を取り出した
ず正しい
(結果)
特徴



その玉の色は、当然赤色である
一般から特殊へ
1.
2.
3.
「仮説」を大前提にし
個々の「事例」に当てはめ
「結果」を導く
[問題点]



(宮原諄二,2001年)
2012年9月11日
現実には、大前提そのものが真で
あるかどうか明確でない場合も
ごくわずかの青い玉が入っている
かも知れない
その場合は誤った結論に!
宮原諄二、「創造的技術者の論理とパーソナリティ」、『イノベーション・マネジメント入門』、一橋
大学イノベーション研究センター編、日本経済新聞社、第8章、pp. 218-244、2001年12月21日.
阪井和男・栗山健
92
帰納推論(Induction)



(事例)
科学的推論
結果から仮説形成のプ
ロセスには必ず思考の
飛躍がともなう
2.
3.
玉を取り出したらいずれも赤色
箱には赤い玉だけが入っている
特殊から一般へ
1.
(結果)
(仮説)
特徴

机の上に玉が入った箱がある
個々の「事例」を出発点
「結果」の考察を経る
「仮説」の形成へ進む
[問題点]



(宮原諄二,2001年)
2012年9月11日
事例が多いほど仮説が真であ
る可能性が高い
最後に青い玉が出るかも
青い玉が出るまで仮説は正しい
宮原諄二、「創造的技術者の論理とパーソナリティ」、『イノベーション・マネジメント入門』、一橋
大学イノベーション研究センター編、日本経済新聞社、第8章、pp. 218-244、2001年12月21日.
阪井和男・栗山健
93
アブダクション(Abduction)



(結果)
直観的推論
仮説形成の飛躍は、帰
納的推論よりも著しく大
きい不安定な推論
特徴
1.
2.
3.
(仮説)
箱にはすべて赤い玉が入っていて、
赤い玉がそこから取り出された
(事例)
「結果」を出発点
赤い玉の存在は納得できる
いきなり「仮説」を導く
[問題点]
仮説が正しければ「事例」
 箱の中が赤い玉だけか?
は納得できる
 別の場所から赤い玉をもって
きただけかも
(宮原諄二,2001年)
2012年9月11日
机の上に箱と赤い玉がある
宮原諄二、「創造的技術者の論理とパーソナリティ」、『イノベーション・マネジメント入門』、一橋
大学イノベーション研究センター編、日本経済新聞社、第8章、pp. 218-244、2001年12月21日.
阪井和男・栗山健
94
能力としての推論の3要素
1. 動機:存在
2. 事実認識:
知
の
具
現
化
事実(としての記述)を把握し認識する
エスノグラフィ,ブルートファクツ,
行動観察,暗黙知の顕在化
3. 演繹推論
Deduction
2. 大前提の設定:
神話,理念,信念,文化,
常識,他の推論結果
3. 帰納推論
Induction
似たものや異質なものから
創発されて
新しい意味を創造する
ひらめき(気づき),アナロジー,
異質なものの新結合
1. 動機:評価
2012年9月11日
1. 動機: 3. アブダクション
Abduction
意味
2. 共鳴場:
知の創造
阪井和男・栗山健
95
倫理的な面への制約
非
倫
理
的
な
空
間
2012年9月11日
阪井和男・栗山健
96
学力ダイアグラムの対象知能
学力ダイアグラム
能力
演繹推論
帰納推論
アブダクション
知識
倫理(意志)
情動(態度)
2012年9月11日
阪井和男・栗山健
 学力の前提
97
知性復権のレシピ
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可視化の視点
知的能力の4要素と3つの推論
能力
演繹推論
帰納推論
アブダクション
知識
倫理(意志)
情動(態度)
阪井和男・鈴木克明・原田康也・小松川浩・戸田博人・多賀万里子,『知的能力の可視化WG成果報告書』,サイエン
ティフィック・システム研究会,知的能力の可視化WG,2012年5月11日.
http://http://www.ssken.gr.jp/MAINSITE/download/wg_report/pf/index.html (2012年7月27日アクセス)
2012年9月11日
阪井和男・栗山健
100
知的能力の2つの可視化法
学力ダイアグラム(プロセスモデル)
能力
イ
(
特ン
性テ
モリ
デグ
ル
)ラ
ム
演繹推論
帰納推論
アブダクション
知識
倫理(意志)
情動(態度)
 学力の前提
阪井和男・鈴木克明・原田康也・小松川浩・戸田博人・多賀万里子,『知的能力の可視化WG成果報告書』,サイエン
ティフィック・システム研究会,知的能力の可視化WG,2012年5月11日.
http://http://www.ssken.gr.jp/MAINSITE/download/wg_report/pf/index.html (2012年7月27日アクセス)
2012年9月11日
阪井和男・栗山健
101
能力としての推論の3要素
1. 動機:存在
2. 事実認識:
知
の
具
現
化
事実(としての記述)を把握し認識する
エスノグラフィ,ブルートファクツ,
行動観察,暗黙知の顕在化
3. 演繹推論
Deduction
2. 大前提の設定:
神話,理念,信念,文化,
常識,他の推論結果
3. 帰納推論
Induction
似たものや異質なものから
創発されて
新しい意味を創造する
ひらめき(気づき),アナロジー,
異質なものの新結合
1. 動機:評価
2012年9月11日
1. 動機: 3. アブダクション
Abduction
意味
2. 共鳴場:
知の創造
阪井和男・栗山健
102
倫理的な面への制約
非
倫
理
的
な
空
間
2012年9月11日
阪井和男・栗山健
103
知的能力の育成対象
学力ダイアグラム(プロセスモデル)
能力
イ
(
特ン
性テ
モリ
デグ
ル
)ラ
ム
知識
演繹推論
 論理的思考
帰納推論
 科学的思考
アブダクション  創造的思考
 近代型能力
倫理(意志)
 社会的ジレンマ
情動(態度)
 学力の前提
阪井和男・鈴木克明・原田康也・小松川浩・戸田博人・多賀万里子,『知的能力の可視化WG成果報告書』,サイエン
ティフィック・システム研究会,知的能力の可視化WG,2012年5月11日.
http://http://www.ssken.gr.jp/MAINSITE/download/wg_report/pf/index.html (2012年7月27日アクセス)
2012年9月11日
阪井和男・栗山健
104
インテリグラム
演繹
P
帰納
A
アブダクション
共通
C
教養基礎演習(2011年度)
数理と情報I(2011年度)
知識
数理と情報II(2011年度)
情報組織論I(2011年度)
倫理
情報組織論II(2011年度)
専門ゼミ(2011年度)
情動
ソフトパワー論(2011年度)
0
50
100
150
Intel-gram = Intellect Diagram
2012年9月11日
阪井和男・栗山健
105
推論分析
知
の
具
現
化
1. 動機:「存在」
2. 事実認識:
事実(としての記述)を把握し認識する
エスノグラフィ,ブルートファクツ,
行動観察,暗黙知の顕在化
演繹推論
Deduction
3. 知の共有機能:
論理的・機械的推論によ
る具体化(具現化),視点
をミクロにズームイン,知
識を詳細化し緻密化する
2. 大前提の設定:
神話,理念,信念,文化,
常識,他の推論結果
1. 動機:「評価」
3. 知の連携機能:
科学的推論による抽象化,
視点をマクロにズームアウト,
知識に汎用性をもたせる
帰納推論
Induction
1. 動機:「意味」
2. 共鳴場:
似たものや異質なものから創発され,
新しい意味を創造する
ひらめき(気づき),アナロジー,
異質なものの新結合
アブダクション
Abduction
3. 知の創発機能:
新結合による仮説生成,視点を
根本的に転換,知識を創造する
知の創造
2012年9月11日
阪井和男・栗山健
106
推論能力の関心・不安・欲求と
PACモデルの関係
推論 学力ダイアグ 生じる疑
PAC
関心の焦点
不安の駆動
能力 ラム上の向き
問
上向き:「知 how:どう使 「 評 価 」 : 暗 黙 に P 「 こ こ は ど こ ? 」 :
演繹 の 具 現 化 」 えるか
仮定されている
「評価」(あるいは
推論 軸の正方向
「評価軸」に沿っ
既存の価値観)に
た「評価」に関心
たいする不安
下向き:「知 why : ど う 「存在」:ここにあ A 「 わ た し は 誰 ? 」 :
帰納 の 具 現 化 」 な っ て い る る ド メ イン知 識そ
「存在」にたいす
る不安
推論 軸の負方向 の か 、 な ぜ の も の の 「 存 在 」
存在するか に関心
右向き:「知 what : ど ん 「意味」:この知識 C 「 こ こ に い て も い
アブダ
いの?」:「意味」に
の 創 造 」 軸 な意味があ からどんな「意味」
クショ
の正方向
るのか
たいする不安
がもたらされるか
ン
に関心
欲求の駆
PAC
動
AC 自己を高め AC
たいとする
欲求
PAC
AC 他者を愛す NP
る欲求
AC 創造する欲 FC
求
※P:親(Parent)、A:大人(Adult)、C:子ども(Child)、AC:従順な子ども(Adapted Child)、FC:自由な子ども(Free Child)、
NP:養育的な親(Nurturing Parent)
原田康也・阪井和男・栗山健,「『ポスト・エヴァンゲリオンの教理問答』再考」,情報コミュニケーション学会研究会・第69回次世代大学教育
研究会,情報コミュニケーション学会,2012年6月9日.
2012年9月11日
阪井和男・栗山健
107
知的能力の育成対象
学力ダイアグラム(プロセスモデル)
能力
イ
(
特ン
性テ
モリ
デグ
ル
)ラ
ム
知識
演繹推論  論理的思考
帰納推論  科学的思考
アブダクション
 近代型能力
倫理(意志)
 社会的ジレンマ
情動(態度)
 学力の前提
最も困
難な能
力をま
とめて
育成す
る方法
ワークショップ
芸術思考*
阪井和男・鈴木克明・原田康也・小松川浩・戸田博人・多賀万里子,『知的能力の可視化WG成果報告書』,サイエンティフィック・シ
ステム研究会,知的能力の可視化WG,2012年5月11日.
http://http://www.ssken.gr.jp/MAINSITE/download/wg_report/pf/index.html (2012年7月27日アクセス)
*阪井和男・有賀三夏,「知性と倫理 ~生きる力を育む芸術思考~」
108
http://www.kisc.meiji.ac.jp/~sakai/presen/ne71-intelligence-and-ethics-art-20120728.pdf (2012年7月28日)
可視化の視点
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複数課題の
Knowing-Doing Gap
阪井和男・栗山健,「複数課題遂行時の知的能力の限
界効用について」,第53回次世代大学教育研究会,早
稲田大学,2010年12月18日.
http://www.kisc.meiji.ac.jp/~sakai/presen/ne53-05-sakaiplural_tasks-20101218.pdf (2011年9月10日アクセス)
力を出すということ

筋肉のはたらき

筋肉=緊張して縮むことしか
できない
 手足を動かせるとは?
筋肉が緊張して手足が動く
 骨の両側に対になった筋肉
がある!
 他方が弛緩していてはじめ
て緊張が生かされる
∴筋肉がすべて弛緩した状態
でないと動かない!

2012年11月7日
能力のはたらき
能力=集中することしかでき
ない
 能力を自在に操れるとは?
能力を集中して力を出せる
 いろんな能力がある!
 他の能力が解放されていて
はじめて集中できる
∴能力がすべて解放された状
態でないと集中できない!

明治大学文明とマネジメント研究所
111
複数課題を遂行する困難

複数課題の遂行
「簡単な算数を,英語で話しながらやる」
 簡単な算数でも,英語で話しながらやらせるとまったくできな
い
原田康也(第47回次世代大学教育研究会でのディスカッションから,岩手大学, 2010年6月19日)
原田康也・前坊香菜子・坪田康・壇辻正剛(「外国語の口頭運用時における数的処理について」
,第53回次世代大学教育研究会,早稲田大学,2010年12月18日)

知的能力
1.
2.
算数をする
英語で話す
2012年11月7日
明治大学文明とマネジメント研究所
112
複数課題を遂行する困難

知的能力
算数をする
2. 英語で話す
 2つの能力は,もともと独立とみなして良いはず
1.
独立なようでいて,独立ではない!
何らかの理由で独立性が損なわれている

 複数課題の遂行可能性は何によって決定されるのか?
知的能力
脳部位
心理学
意識
意識して使う
前頭前野が主
ワーキングメモリ
顕在的領域
無意識に使う
その他すべて
2012年11月7日
潜在的領域
明治大学文明とマネジメント研究所
場の理論
場
自己的領域
場所的領域
113
ワーキングメモリ

脳の中でいくつの能力が使えるか?
 ワーキングメモリの容量

ワーキングメモリ
作業記憶、作動記憶
 情報を一時的に保ちながら操作するための構造や
過程を指す構成概念
 前頭皮質、頭頂皮質、前帯状皮質、および大脳基
底核の一部がワーキングメモリに関与
http://ja.wikipedia.org/wiki/ワーキングメモリ (2010年6月16日アクセス)
2012年11月7日
明治大学文明とマネジメント研究所
114
ワーキングメモリの容量

短期記憶に関する容量限界の定量化
「マジカルナンバー7±2」(Miller , 1956年)
 記憶すべき要素が何であれ(数字、文字、単語、そ
の他)、若者が記憶できる量は「チャンク」と呼ばれ
る塊りで約7個
Miller, G. A. (1956). The magical number seven, plus or minus two: Some limits on our capacity for processing information. Psychological Review, 63, 81-97
2012年11月7日
明治大学文明とマネジメント研究所
115
ワーキングメモリの容量

その後の研究
 容量はチャンクの種類に依存

数字なら約7個、文字なら約6個、単語なら約5個
 長い単語よりも短い単語の方が容量を取らない
 単語的内容(数字、文字、単語)は、音読にかかる時間と記
憶容量と関係し、内容の文脈的状態(その単語を知ってい
るか)にも依存(Hulme et al., 1995)
 若年成人の純粋な短期記憶容量は約4チャンクになる(子
供や老人ではもっと少ない) (Cowan, 2001)

厳密な条件の統制を行ったり適切な推定法を用いたりすることによ
って見かけ上の記憶を増やす要因をできる限り排除した場合
Hulme, C., Roodenrys, S., Brown, G., & Mercer, R. (1995). The role of long-term memory mechanisms in memory span. British Journal of Psychology, 86,
527-536.2012年11月7日
116
明治大学文明とマネジメント研究所
Cowan, N. (2001). The magical number 4 in short-term memory: A reconsideration of mental storage capacity. Behavioral and Brain Sciences, 24, 87-185
Cowanモデル(Cowan, 2005)

ワーキングメモリは長期記憶の一部
 長期記憶は3つの状態,ワーキングメモリは内2つの状態

第1の状態
 活性化した長期記憶の一部に対応
 活性化は量的には限界なく、多数の情報が活性化できる
 活性化には時間限界があり、リハーサルしないと減衰

第2の状態
 注意の焦点(focus
of attention)
 容量には限界があり、同時に注意を向けられるのは、活性
化した長期記憶の構成要素のうち最大で4つのチャンク
Cowan, N. (2005). Working memory capacity. New York, NY: Psychology Press.
2012年11月7日
明治大学文明とマネジメント研究所
117
Cowanモデル
リハーサル
チャンク
ワーキングメモリ
2012年11月7日
明治大学文明とマネジメント研究所
118
Oberauerモデル
Cowanモデルを拡張して、1つのチャンクにだけより大き
な注意を向ける第3の状態を導入(Oberauer, 2002)
 Cowanモデルの欠点
 人間は同時に4つの数字に注意を向けることができるが、そ
れら4つの数字にそれぞれ同時に 2 を足すことはできない
 ほとんどの人間は数学的な処理を並行して行うことは出来
ず、順番に1つずつ足し算するしかない

Oberauerモデルの利点
 4つの数字から1つだけを高次レベルの焦点に選んで処理
を行っていくとすることでこれを説明できる(Oberauer, 2002)
Oberauer, K. (2002). Access to information in working memory: Exploring the focus of attention. Journal of Experimental Psychology:
Learning, Memory, and Cognition, 28, 411-421.
2012年11月7日
明治大学文明とマネジメント研究所
119
Oberauerモデル
リハーサル
チャンク
ワーキングメモリ
2012年11月7日
明治大学文明とマネジメント研究所
120
能力の資源制約論

チャンク=能力
 各能力を独立なものとして、直交座標に割り当てる
能力A=x座標
 能力B=y座標
 ・・・

 能力には上限がある!
(仮定)上限は能力が使える資源の有限性から決まる
Cowanモデルに資源の有限性を導入することで、
Oberauerモデルを説明する・・・
2012年11月7日
明治大学文明とマネジメント研究所
121
資源の有限性とは

y
資源の有限性
 資源の総量=R
R
r  x2  y 2  R
(仮定)距離はユークリッド距離
で表せるとする
 座標の制約
y
x  R2  y2
r
または
y  R2  x2
0
x
2012年11月7日
R
x
明治大学文明とマネジメント研究所
122
独立性を制約する資源の有限性

y

干渉領域
R
独立領域
70%
R
2
両者が70%以下の資源しか使わな
いなら、相手に制約されない

独立領域
干渉領域

0
互いに干渉しない領域
R
x
 70%  R かつ
2
R
y
 70%  R
2
70%
2012年11月7日
R
2
R
x
互いが干渉する領域
資源を70%以上使うには、相手が
資源を節約してくれなくてはいけ
ない
明治大学文明とマネジメント研究所
123
独立性を制約する資源の有限性
y
R
y*
R
2

干渉領域

干渉領域 β: 0  y 

両者間の調整:
R2  x2

R
2

0
x*
2012年11月7日
R
2
R
x
R
α:  y  R 2  x 2
2
R
ただし 0 x
2
R2  x2
R
ただし  x  R
2
面積比で57%増の資源が利
用できる!
 xがx*以下まで節約してくれ
れば、yはy*まで使える
明治大学文明とマネジメント研究所
124
資源の有限性の含意

y
R
y*
 一つの資源を思いっき
R2  x2
り使おうとする
 他方は極端に制約され
る

R
2
脅威があると・・・
R
2

脅威があっても・・・
 力を抜け!

 多様な資源を活用して
0
x*
2012年11月7日
R
2
R
x
脅威を乗り越える
明治大学文明とマネジメント研究所
125
能力の集中と解放

能力の集中
 能力を熟練させて伸ばすことは,自在に能力を使
いこなすための独立領域の面積を増やす!

能力の解放
 使った能力を速やかに解放させないと,それ以外
の能力を使うことができない
 いかに速やかに解放するかで,複数課題遂行時の
効率が決定される!
独立領域の意味とは・・・?
2012年11月7日
明治大学文明とマネジメント研究所
126
アイドリング状態(Cowanモデル)

y
独立領域が活性化
 能力A,
R

自由にゆらいでいる

能力A
R
2

Bともに、
ゆらぎは独立領域内
低い活性度で活性化
独立領域
リハーサル
チャンク
ワーキングメモリ
0
能力B
2012年11月7日
R
2
R
x
明治大学文明とマネジメント研究所
127
能力Aが活性化(Oberauerモデル)

y
R
y*
0


R
2
能力A
R
2
R2  x2
独立領域によって、能力A
の活性化が促される
能力Bのゆらぎは抑制さ
れる
リハーサル

能力B
2012年11月7日
x*
R
2
チャンク
ワーキングメモリ
R
x
明治大学文明とマネジメント研究所
128
能力Aがフル稼働(Oberauerモデル)

y
R
y*
R2  x2

R
2
R
2
能力A
0
能力Bのゆらぎが極端
に抑制される
リハーサル

x*
能力B
2012年11月7日
R
2
チャンク
ワーキングメモリ
R
x
明治大学文明とマネジメント研究所
129
アイドリング状態(Cowanモデル)

y
R

能力A
R
2
フル稼働状態は短時間し
か活性化できない
特定の能力を使ったら即
座に開放する!
独立領域
リハーサル
チャンク
ワーキングメモリ
0
能力B
2012年11月7日
R
2
R
x
明治大学文明とマネジメント研究所
130
能力Bが活性化(Oberauerモデル)

y
R2  x2
R
R
2


独立領域によって、能力A
の活性化が促される
能力Bのゆらぎは抑制さ
れる
y*
リハーサル
能力A

0
能力B
2012年11月7日
チャンク
ワーキングメモリ
x
R x* R
2 明治大学文明とマネジメント研究所
131
能力の使いこなし
R
2
能力A
能力A
R
2
独立領域
0
能力B R
2
R
x 0
R x
2
y
y*R
2

R x
2

R
2
R
2

能力B
x*
リハーサル
R
2
R
x 0
y
R
2
R
2
R
2
能力A
y
R
y*
能力A
y
R

x*
リハーサル
能力B R
2
R
x
0
独立領域
能力B R
2
リハーサル
R
x
リハーサル
チャンク
チャンク
チャンク
チャンク
ワーキングメモリ
ワーキングメモリ
ワーキングメモリ
ワーキングメモリ
時間
複数能力

単一能力
複数能力
特定の能力を限界まで使いこなす課題には,他の能力を解
放する必要がある
2012年11月7日
明治大学文明とマネジメント研究所
132
132
能力を熟練させる意味
y
R’
R

熟練
能力を熟練させてRからR’
へ伸ばすことは,独立領
域の面積を増やすこと!
 個別に能力を熟練させる!
R
2
複数課題を遂行できるよう
になる!
0
2012年11月7日
R
2
R
x
明治大学文明とマネジメント研究所
133
バランスのとれた能力は結果論
y
R’

次にどの能力を使うかは、
状況に依存
R
 状況を限定して設定するの
R
2
が教育!
能力を使わざるを得ない十
分「複雑な」状況を設定す
べし!
熟
練
0
2012年11月7日
R
2
R
R’ x
明治大学文明とマネジメント研究所
134
知的能力の使い倒し方をどう身につけるか?


多様な知的能力を協調・連携させる
特定の知的能力に集中し,速やかに解放すること
 能力には顕在的能力と潜在的能力がある
 個別能力の熟練は複数課題遂行の可能性を高める
 能力は集中して使うべし集中する方法論・環境
 能力は速やかに解放すべし解放する方法論・時間管理

失敗ばかり繰り返す人とは:
使った能力を解放するのがヘタでいつまでも囚われる
 別の能力に囚われていて,使うべき能力が発揮できない

2012年11月7日
明治大学文明とマネジメント研究所
135
Knowing-Doing Gapの克服法
KnowingDoing Gap
克服法
単独課題 相手と交流しながら学ぶ
複数課題
英語学習法
1対1で英語を話す
思考を言語化して表現する 英語で話しながら考える*
単独能力を限界まで使う
英会話能力を限界まで使う
カランメソッド
*発話思考(Thinking Aloud)
考え事を口に出して言う
2012年10月26日
明治大学 阪井和男
136
複数課題の
Knowing-Doing Gap
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本日のシナリオへ戻る
結晶化ワールドカフェ
ワークショップの実施

ワークショップ参加者
 ファシリテータ:1名(講師)
 参加者:9名
 事務局:1名

ワークショップ実施方法
 結晶化ワールドカフェ
3グループ,3名/グループ
 「セッション」(10分)×2+「結晶化」+「シェア」

2013年3月30日
明治大学 阪井和男
139
未来を拓くための能力の評価と育成とは

Aチーム
学習する能力
1.
個人が学ぶ力を高めることと,組織がそうなることが重要

失敗を許すコンセンサス
2.
チャレンジを求める,新たな挑戦をさせる人を成長させる場につながらな
い
(Q) 失敗していいよと言われて力を出せるか?
 結果としての失敗である.

人間にたいする科学的な理解
3.
知っておくべきこと成功を導きやすい
脳科学,心理学,etc.


その他



2013年3月30日
人間性,人間力も必要
この人なら・・・という共感
明治大学 阪井和男
140
未来を拓くための能力の評価と育成とは

Bチーム
1.
集中と解放

2.
ハイパフォーマーはチームで支える

3.
4.
5.
パフォーマンスを出すには解放するコツを身につける
アメリカでの事例:ローパフォーマーの居場所はチームにある
パフォーマンスが出ないのは能力のせいではない,動機や
感情だ
感情を測定すること
動機
2013年3月30日
明治大学 阪井和男
141
未来を拓くための能力の評価と育成とは

Cチーム
集中と解放
1.
仕事が出来る人はうまい.集中しているから解放がある

不安からの解消(情動)
2.
どの程度まで許容出来るのか,鍛える必要がある
無能になると不安がなくなる
キャリアビジョンのしっかりしたひとは不安が少ない



責任の範囲と成長の範囲
3.

2013年3月30日
不安の許容は,責任を与えると大きくなる
明治大学 阪井和男
142
結晶化ワールドカフェ
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索引へ戻る
本日のシナリオへ戻る
おまけ
索引














本講座のストーリー
能力開発のレシピ
すでに起こった未来を知る
芸術思考
自分を知る(ドラッカー)
行為の対象を感じられるか
脳を使い倒すためのサイクル
科学的な態度
ハラスメント的な苦しみとは?
~コミュニケーションと学習~
原初的欲求と実存的欲求を考える
成長する砂山モデル ~自己組織化臨界現象~
右脳・左脳モデルと知的記憶
OKプラトー
決断疲れ















2013年3月30日
イノベーションは幸せをもたらすか?
Knowing-Doing Gap
複数課題のKnowing-Doing Gap
知性の劣化(理性脳の機能低下)
知性の劣化(情動脳の機能低下)
知性復権のレシピ
可視化の視点
「知識」と「能力」
能力評価の陥穽
ブレークスルー事例:トヨタ生産方式に
おける5つのなぜ
パラダイム破壊のプロセス
推論分析
深遠なる知識
技術的・物理的・管理的矛盾
因果関係とは何か
明治大学 阪井和男
145
未来を拓くための態度

正しい苦しみと対峙する
正しい苦しみ vs. 間違った苦しみ
 正しい苦しみ

産みの苦しみ
 間違った苦しみ

ハラスメント的な苦しみ
ハラスメント的な苦しみとは・・・? 
2012年11月14日
明治大学 阪井和男
146
未来を拓くための態度


正しい苦しみと対峙する
正しい苦しみ vs. 間違った苦しみ
 正しい苦しみ

産みの苦しみ
 間違った苦しみ

ハラスメント的な苦しみ
相手にのみ無駄な学習を続けさせる学習過程の停止
 ハラスメントの悪魔に立ち向かう
 相互に学習過程を開いた形でコミュニケーション形成(安冨,p.210)
1. 自分の感覚を信頼すること(安冨,p.146)
2. 自分の学習過程を鍛えること(安冨,p.94)
3. 他人の学習過程の作動を促すこと(安冨,p.94)
2012年11月14日
明治大学 阪井和男
147
イノベーション・コンテンツ

知の技法としてのイノベーションダイアグラム


地域メディアとしてのケーブルテレビの役割 ~地域メディア確立に向けた
組織と業界連携~


http://www.kisc.meiji.ac.jp/~sakai/presen/catv-local-media-20111124.pdf
ソフトウェア開発プロセスのやわらかさとイノベーション


http://www.kisc.meiji.ac.jp/~sakai/presen/doshisha-innovation-contents20120121.pdf
http://www.kisc.meiji.ac.jp/~sakai/presen/os3-28-software-dev-20110830.pdf
アフォーダンスが引き起こすやわらかなイノベーション

http://www.kisc.meiji.ac.jp/~sakai/presen/isis2011-sakai-soft-innovation20110822.pdf
もどる
2012年11月14日
明治大学 阪井和男
148
課題(2012年11月19日)

不安と欲求の関係動機の分析・・・? (p. 9)
http://www.kisc.meiji.ac.jp/~sakai/presen/la-innovation-abilities-20121114.pdf
 不安:p. 307
 欲求:p. 94
 解消:p. 303
1.
「不安」を明らかにすれば、「事前期待」が明らかになるのではないか?
「不安」を語るには、「自己開示」ができるかどうかが大きなポイントで、「自己開示」してくれた人にこそ
「共感」を覚えるのではないか?
サービスを受ける前に感じていた一番大きな不安は何でしたか?
サービスを受けた結果感じた不安は何かありましたか?
サービスを受け終わった現在感じている不安はありますか?
a.
b.
c.
2.
個人的な「欲求」を探り出せれば、「解消」するために向かうべき方向が明ら
かになるのではないか?
「欲求」を探りだすためには、個人的な「生きる価値観」を聞き出せば良いのではないか?
a.
あなたが一番大事にしている価値観は何ですか?
2012年10月26日
明治大学 阪井和男
149
すでに起こった未来を
知る
社会生態学の究極の目的

社会のあらゆる機関が機能するように改善す
ること
 機能する社会をつくり、そこにいる個人がコミュニテ
ィ内での尊厳や位置づけ、社会内での意味ある居
場所を得られるようにすること
 社会の構成員を幸福にするために
(富を創出し、患者を治療し、生徒を教育するために)
行動し、社会の機関を機能させるべく活動すること
Maciariello, Joseph A. and Linkletter, Karen E., "Drucker's Lost Art of Management: Peter Drucker's
Timeless Vision for Building Effective Organizations", McGraw-Hill, New York, Chap. 7, 2011.
2012年10月12日
明治大学 阪井和男
151
社会生態学者の目標

「すでに起こった未来」を知ること
 課される要求を事前に管理したい経営陣や、社会
福祉を向上させたい政策立案者などを助けるため
 分析や警告、政策に役立つ指示を行って問題への
安易な対応を防ぎ、
思慮深い行動を取らせなくてはならないから
 それができれば、
避け難い変化の中でも、経営陣や官僚は継続性を
保つ行動方針を立てて実行することができる
Maciariello, Joseph A. and Linkletter, Karen E., "Drucker's Lost Art of Management: Peter Drucker's
Timeless Vision for Building Effective Organizations", McGraw-Hill, New York, Chap. 7, 2011.
2012年10月12日
明治大学 阪井和男
152
すでに起こった未来

まだ社会の機関にはっきりした影響を与えてい
ないが、すでに現われている、重要な変化
 「すでに起こった未来」

ピーター・ドラッカーの雑誌特集論文("The Future That Has
Already Happened", in 'The Futurist', Vol. 32, No. 8, 1998)
のタイトル
Maciariello, Joseph A. and Linkletter, Karen E., "Drucker's Lost Art of Management: Peter Drucker's
Timeless Vision for Building Effective Organizations", McGraw-Hill, New York, Chap. 7, 2011.
2012年10月12日
明治大学 阪井和男
153
すでに起こった未来
ドラッカーは、
 人々が気づくはるか以前にそれらを未来に当てはめて考え、
その変化が機関や個人にどんな機会、あるいは危険を与え
ることになるかを知らせた
 生じ始めの段階で変化を発見するため、生じた後の現実に
照らし、慎重に考査を重ねる余裕があった
 コンサルタント、教師、著作家として活動していたゆえに、経
営者が重要な変化と一時的流行を確実に区別し、生じつつ
ある変化を最大限に利用することができるよう、折に触れて
助言を与えることができた
Maciariello, Joseph A. and Linkletter, Karen E., "Drucker's Lost Art of Management: Peter Drucker's
Timeless Vision for Building Effective Organizations", McGraw-Hill, New York, Chap. 7, 2011.
2012年10月12日
明治大学 阪井和男
154
マネジメントの実践へ

ドラッカーは、社会生態学者として働く過程でマネジメン
トの実践に行き着いた
 社会の諸機関のリーダーに、未来を形成するために必要な
方針と実践、経営者としての能力を与えようとした
 ドラッカーのマネジメントに関する著書はどれも、社会生態学
研究と、組織のリーダーへの詳細な規範とを統合させたもの

『創造する経営者』(1964)を除く
 環境(人口、経済、技術、政治、社会)の変化の検証と、いか
にマネジメントの実践を通してそうした変化を利用するか、と
いう具体的助言とが分けて論じられることはほとんどない
Maciariello, Joseph A. and Linkletter, Karen E., "Drucker's Lost Art of Management: Peter Drucker's
Timeless Vision for Building Effective Organizations", McGraw-Hill, New York, Chap. 7, 2011.
2012年10月12日
明治大学 阪井和男
155
リベラルアートとしてのマネジメント

社会生態学の実践=リベラルアートとしてのマネジメントの実践
学問としてのマネジメントはあらゆる知識を動員し、その知識を
他の学問にフィードバックするが、その目的は常に行動である
 「(マネジメントの)主題はプロセスである
 それは実行することを目的に始められる。(中略)
 そして、知識の所産として最終的に得たいのは、個人と社会
に影響する価値の決定である。(中略)
 私たちが必要とするのは― 専門領域を多く含むことにはなっ
ても―決して専門的な学問ではない。(中略)
 それは真に人間主義的な学問でなければならない
Maciariello, Joseph A. and Linkletter, Karen E., "Drucker's Lost Art of Management: Peter Drucker's
Timeless Vision for Building Effective Organizations", McGraw-Hill, New York, Chap. 7, 2011.
2012年10月12日
明治大学 阪井和男
156
リベラルアートとしてのマネジメント
 共通のビジョンや価値観によって結びつき、同じ目的のため
に共に働き、かつ、個々で行動する人間のための学問である
 情報、知識、見識、価値観、解釈、予想のすべてを、決定、行
動、達成、結果に集中させねばならない
 考え、動き、感じ、評価する存在として人間を扱わねばならず
、したがって、学問的、情緒的、美的、倫理的な知識を全て動
員しなければない。(中略)
 マネジメントの学問は、人間の経験を扱う全ての知的領域か
ら学ばねばならず、さらには、新しい知識をそれら全てにフィ
ードバックしなければならないのだ」(『変貌する産業社会』)
Maciariello, Joseph A. and Linkletter, Karen E., "Drucker's Lost Art of Management: Peter Drucker's
Timeless Vision for Building Effective Organizations", McGraw-Hill, New York, Chap. 7, 2011.
2012年10月12日
明治大学 阪井和男
157
維持と変革


「社会生態学者の仕事について次に言えることは、変化が世の
中に与える影響に焦点を合わせなければならないということで
ある。社会生態学者の目的は、単なる知識の獲得ではない。
その目的とするところは正しい行動である。
そのような意味において、社会生態学は、医学、法学(中略)と
同じように実学である。その目的は、継続や維持と、変革や創
造とのバランスを図ることである。動的な不均衡状態にある社
会をつくることである。そのような社会のみが、安定性とそして
団結力をもちうるのである」(『ある社会生態学者の回想』)
動的平衡状態
Maciariello, Joseph A. and Linkletter, Karen E., "Drucker's Lost Art of Management: Peter Drucker's
Timeless Vision for Building Effective Organizations", McGraw-Hill, New York, Chap. 7, 2011.
2012年10月12日
明治大学 阪井和男
158
動的平衡状態の意味

富の創出はゼロサム・ゲームではない!
 生産性の向上やイノベーションによって新しい富が創られる



治療も、新薬と生産性の向上、医療の革新によって進歩
教育も、脳研究の発見を取り入れ、学習理論を進化させ、情報技術を
利用して学習環境を向上させることで発展
なぜイノベーションと変化が必要不可欠か?
 エントロピーの法則のように崩壊へと向かう動きに歯止めを
かけ、継続性を保つため
エントロピーの法則


物質や人間、あるいは組織の体系が自然と衰退に向かう流れのこと
この流れに反抗し前進し続けるために、イノベーションと変化が必要
Maciariello, Joseph A. and Linkletter, Karen E., "Drucker's Lost Art of Management: Peter Drucker's
Timeless Vision for Building Effective Organizations", McGraw-Hill, New York, Chap. 7, 2011.
2012年10月12日
明治大学 阪井和男
159
カオス理論からの学び

ドラッカーは、数年間、数学を研究したこともある
 社会生態学の仕事に役立つかどうかを知りたいため
カオス理論:複雑なシステムに現われる多様な相を調査する
バタフライ効果


初期条件に鋭敏なシステムの性向
時間の経過とともに予測不可能になる
世界のある場所で蝶が羽ばたくと遠く離れた場所で竜巻などが起きる

ドラッカーの学び

カオス理論は、未来を予言しようとしても無駄だという確信をドラッカーに
抱かせた。それよりも、変化をとらえ、それを自らの未来を創るチャンスと
して利用した方がよい
Maciariello, Joseph A. and Linkletter, Karen E., "Drucker's Lost Art of Management: Peter Drucker's
Timeless Vision for Building Effective Organizations", McGraw-Hill, New York, Chap. 7, 2011.
2012年10月12日
明治大学 阪井和男
160
社会の継続性への配慮

ドラッカーは、
 機関の経営者に対して常に、イノベーションを行い、チェンジ・
リーダーになり、新しい現実を利用し、それによって社会に貢
献せよと言い聞かせていた
 その一方で、長く存続した価値観を守ろうともしていた

ユリウス・シュタール論の副題、『保守的国家論』(1933/2002)からも推
察できる
 時の試練に耐えた伝統的価値観を重視することで、社会の
継続性を高めたいと望んでいた
Maciariello, Joseph A. and Linkletter, Karen E., "Drucker's Lost Art of Management: Peter Drucker's
Timeless Vision for Building Effective Organizations", McGraw-Hill, New York, Chap. 7, 2011.
2012年10月12日
明治大学 阪井和男
161
維持と変革

ドラッカーが定義する社会生態学者は、
 自由社会において不安定要素となる機関(社会的・
公共的機関を含むが、特にビジネスの組織)にはイ
ノベーションと変化を促し、
 社会を安定させる機関(家族、宗教組織、最高裁判
所など)に対しては、継続性を見出してそれを維持
できるように助力する
Maciariello, Joseph A. and Linkletter, Karen E., "Drucker's Lost Art of Management: Peter Drucker's
Timeless Vision for Building Effective Organizations", McGraw-Hill, New York, Chap. 7, 2011.
2012年10月12日
明治大学 阪井和男
162
維持機関と変革機関

『維持機関』
 社会やコミュニティや家族
 安定を求め、変化を阻止し、あるいは少なくとも減速しようと
する

『変革機関』
 ポスト資本主義社会における組織
 組織の機能は、道具や工程や製品に対し、仕事に対し、そし
て知識そのものに対し、知識を適用すること
 したがって組織は、つねに変化をもたらすように組織される
(『ポスト資本主義社会』)
Maciariello, Joseph A. and Linkletter, Karen E., "Drucker's Lost Art of Management: Peter Drucker's
Timeless Vision for Building Effective Organizations", McGraw-Hill, New York, Chap. 7, 2011.
2012年10月12日
明治大学 阪井和男
163
維持と変革のバランス論



機関の機能する社会では、ある程度の継続が必要
多くの場合、個人の利益とより大きなコミュニティのニ
ーズの間でのバランスを取ること
初期の社会生態学者たち
 大切なのは、変化に直面した際に過去のどの側面を維持し、
何を放棄すべきかを見定めること

変化と継続のバランスを取り、人間の尊厳や発展を促
す
 困難ではあるが空想的なビジョンではない
Maciariello, Joseph A. and Linkletter, Karen E., "Drucker's Lost Art of Management: Peter Drucker's
Timeless Vision for Building Effective Organizations", McGraw-Hill, New York, Chap. 7, 2011.
2012年10月12日
明治大学 阪井和男
164
バランス論の2つの解

静的バランス(静的平衡)
 つりあいの問題
自然につりあいのとれる場所を探すこと
空間の問題(新しい空間軸を見つける)


動的バランス(動的平衡)
ドラッカーの認識
 ゆらぎの問題
自然な状態がゆらいでいると認識すること
時間の問題(時間軸を導入して理解する)

2012年10月12日
明治大学 阪井和男
165
すでに起こった未来を
知る
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芸術思考
芸術思考「最終命題の達成」

芸術家は最終命題の達成から、
一般人はプロセスから考える
芸術家は最終命題の達成しか見ていない
 ルネサンスの三大巨匠、彫刻家ミケランジェロの言葉



「石を観ていると、”このように自分を彫ってくれ”と語っているような気がする」
「考えたこともない。素材が命じるままに彫るだけだ」
「彫刻は、完成形に対していらないところを削って行く作業」

芸術家が作品を作る時って、実は完成形を先に想定してからそれを具現化させる作業
を行ってるだけ。頭の中に思い描いているコンセプトとそれを物体として具現化した場
合の姿を想像し、それを自分の手によって創造していく。
「いまあるものに関して、ここはこうゆう風に改善すべき」という思考回路
は、芸術家的ではなくて、一般人の思考回路
「芸術家的な思考回路と一般人の思考回路の違い」,http://ameblo.jp/masato119/entry-11175884545.html (2012年7月25日アクセス)
2012年10月6日
阪井和男・有賀三夏
168
ビジネスにおける芸術思考

ビジネスにおける未来予測(松丘啓司,2010年, p. 98)
 未来の自分の環世界*を描くこと

*環境は人を含む生物が主観的に意味づけするものであり,主体に
よって取り巻く環境の姿は異なる(ドイツの生物学者・ヤーコブ・フォン・ユクス
キュル)
 客観的な環境がどのように変化するかを占うことではなく,
自分の「なりたい姿」とそれを取り巻く環境を描くことである.


内発的価値観に基づく自分の軸があるから,変化の意味がわかる
もし,自分の軸が何もなかったとすると,変化事態にすら気づかない
芸術思考=未来を構想し、実現に向う思考
cf.ドラッカーの社会生態学
松丘啓司,『論理思考は万能ではない(異なる価値観の調和から創造的な仮説が生まれる)』,ファーストプレス,2010年1月22日.
2012年10月6日
阪井和男・有賀三夏
169
未来を構想し実現する芸術思考

「芸術思考」=「未来を構想し、実現に向う思考」
 環境は人を含む生物が主観的に意味づけ
 主体によって取り巻く環境の姿は異なる
∴未来予測
×客観的な環境がどのように変化するかを占う
○自分の「なりたい姿」とそれを取り巻く環境を描く
内発的価値観に基づく自分の軸がある
 自分の軸があるから,変化の意味がわかる
 自分の軸が何もなかければ、変化に気づかない*

2012年10月6日
*松丘啓司,『論理思考は万能ではない』,ファーストプレス,2010年1月22日.
170
阪井和男・有賀三夏
個人と社会の動的平衡プロセス
目的
社会
社会知性
単位制
分断された知
科目・専門分野
芸術思考
知の融合
共鳴
学年学級制
分断された学年
科学
思考
相対評価
論理
思考
分断された級友
小中高・大学生
学級・クラス
ワークショップ
論理/量
根拠
審美
協働
共鳴
{6つの入口*⇔個性†}→動機
説話
経験
†多重知能
個人
*上條雅雄,「コミュニケーションにおける理解」,『メディアと文化』,第3号,pp.
89-101,名古屋大学大学院国際言語文化研究所,2007年3月.
芸術思考
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自分を知る
(ドラッカー)
セルフマネジメント

知識社会において個人に課された新たな要求
 労働の基盤が知識に移行し始めると、雇用者の研
修プログラムばかりに頼らず、積極的に自分をマネ
ジメントしなければならないと説いた
この新たな課題は、かなり早い時期から登場しているが、
初めて系統的に扱われたのは『経営者の条件』(1967)
 このテーマは、彼の死去(2005年2月2日)の一カ月前に発
表された『プロフェッショナルの条件』(2006)でも扱われて
いる

Maciariello, Joseph A. and Linkletter, Karen E., "Drucker's Lost Art of Management: Peter Drucker's
Timeless Vision for Building Effective Organizations", McGraw-Hill, New York, Chap. 7, 2011.
2012年10月12日
明治大学 阪井和男
174
セルフマネジメント


知識労働者には、
力を発揮するために自己を管理する責任がある
そのためには自分を知る必要がある
 自分の強みや弱み、価値観を知り、目的を達成する際に自
分はどんな行動をするかを知らなければならない

それが分かれば、
自分が力を発揮できる場所はどこか、
2. 成果をあげるにはどのように貢献すればよいか、
3. 関係に責任をもつためにはどうしたらよいか、
―が見えてくるMaciariello, Joseph A. and Linkletter, Karen E., "Drucker's Lost Art of Management: Peter Drucker's
1.
Timeless Vision for Building Effective Organizations", McGraw-Hill, New York, Chap. 7, 2011.
2012年10月12日
明治大学 阪井和男
175
自分を知る

自分を知ること
自分をマネジメントする第一歩
 自分の強みを知り、それを最大化するには何をすべきかを
知り、強みを十分に伸ばす妨げとなっている悪癖を改める
強みを知ることが極めて重要
 知識労働者の働くべき場所が、
何よりもその強みによって最善の貢献ができる場所だから
 他人の助けがなければ、
自分の強みを正確に把握するのは容易ではない
Maciariello, Joseph A. and Linkletter, Karen E., "Drucker's Lost Art of Management: Peter Drucker's
Timeless Vision for Building Effective Organizations", McGraw-Hill, New York, Chap. 7, 2011.
2012年10月12日
明治大学 阪井和男
176
自分の仕事の仕方を知る

自分の仕事の仕方はどのようなものか?
成果をあげるには、自分の仕事の仕方を知らなければならない

人はそれぞれ違う動き方をする
 自分はどんな仕方や手順で動くのか


自分は「読み手」か「聞き手」か、あるいは両方か
 「読み手」は文字になったメモや報告書を好み、「聞き手」は口頭
での説明や意見交換を好む
 もし、自分が「読み手」よりも「聞き手」として動くほうが得意だ、あ
るいはその反対だ、ということを知らなければ、能力を発揮できず
に失敗する
知識労働者は、自分や同僚がどちらかを知らなければならない
Maciariello, Joseph A. and Linkletter, Karen E., "Drucker's Lost Art of Management: Peter Drucker's
Timeless Vision for Building Effective Organizations", McGraw-Hill, New York, Chap. 7, 2011.
2012年10月12日
明治大学 阪井和男
177
自分の仕事の仕方を知る

自分の仕事の仕方はどのようなものか?
自分の学び方を知っておくことも必要
 学び方には様々な方法があり、一人ひとりの違いも
大きい
ある者は論点を繰り返し書き出すことで学び、
 ある者は皆とアイデアや不明点を話し合うことで学ぶ
 一方的にプレゼンテーションをした後、一人で振り返る時
間をもつ、という方法が一番だという者もいるだろう
 他人に教えることほど自らの勉強になることはない

Maciariello, Joseph A. and Linkletter, Karen E., "Drucker's Lost Art of Management: Peter Drucker's
Timeless Vision for Building Effective Organizations", McGraw-Hill, New York, Chap. 7, 2011.
2012年10月12日
明治大学 阪井和男
178
自分を知る
(ドラッカー)
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行為の対象を感じら
れるか
経験の非対称性
「自分」が感じる 「相手」が感じる
「自分」の能動性
?
?
「相手」の受動性
???
?
???  他者の受動性を感じられるか?
2012年10月26日
明治大学 阪井和男
181
他者の受動性を感じられるか?
簡単な実験をしてみましょう
1. この実験は2人いないとできないので、手近に誰か入
れば、1人誘ってください
2. 照れくさいかもませんが、2人で握手をしてください
3. 「自分」と「相手」の役割を決めてください
4. 2人で握手をしたまま、「自分」が「相手」の手をゆっく
り握り込んでください(あまり強くないように、でもしっかりと)
川田学(2007年)による浜田寿美男(1993年)の引用。
浜田寿美男,『発達心理学再考のための序説』,ミネルヴァ書房,1993年.
川田学,「『美しい』発達理論から『危うさ』をはらんだ発達理論へ」,『卒論・修論をはじめるための心理学理論ガイドブック』,
夏堀陸・加藤弘通編,ナカニシヤ出版,pp. 167-180,2007年4月25日.
2012年10月26日
明治大学 阪井和男
182
他者の受動性を感じられるか?
4.
2人で握手をしたまま、「自分」が「相手」の手をゆっく
り握り込んでください(あまり強くないように、でもしっかりと)
[Q0] このとき、あなたは「自分」(の手)が「相手」の手を<握
っている>という自己の能動性を感じることができるはずです
「自分」が感じる 「相手」が感じる
「自分」の能動性
?
○[Q0]
「相手」の受動性
???
?
川田学(2007年)による浜田寿美男(1993年)の引用。
浜田寿美男,『発達心理学再考のための序説』,ミネルヴァ書房,1993年.
川田学,「『美しい』発達理論から『危うさ』をはらんだ発達理論へ」,『卒論・修論をはじめるための心理学理論ガイドブック』,
夏堀陸・加藤弘通編,ナカニシヤ出版,pp. 167-180,2007年4月25日.
2012年10月26日
明治大学 阪井和男
183
他者の受動性を感じられるか?
5.
次に、「相手」に以下の二つを訊いてみてください
[Q1] 私が<握ってきている>という私の能動性を感じますか?
[Q2] あなたが<握られている>という受動性を感じますか?
川田学(2007年)による浜田寿美男(1993年)の引用。
浜田寿美男,『発達心理学再考のための序説』,ミネルヴァ書房,1993年.
川田学,「『美しい』発達理論から『危うさ』をはらんだ発達理論へ」,『卒論・修論をはじめるための心理学理論ガイドブック』,
夏堀陸・加藤弘通編,ナカニシヤ出版,pp. 167-180,2007年4月25日.
2012年10月26日
明治大学 阪井和男
184
他者の受動性を感じられるか?
5.
次に、「相手」に以下の二つを訊いてみてください
[Q1] 私が<握ってきている>という私の能動性を感じますか?
[Q2] あなたが<握られている>という受動性を感じますか?
※おそらく「相手」はいずれにもイエスと答えでしょう
「自分」が感じる 「相手」が感じる
「自分」の能動性
○[Q0]
○[Q1]
「相手」の受動性
???
○[Q2]
川田学(2007年)による浜田寿美男(1993年)の引用。
浜田寿美男,『発達心理学再考のための序説』,ミネルヴァ書房,1993年.
川田学,「『美しい』発達理論から『危うさ』をはらんだ発達理論へ」,『卒論・修論をはじめるための心理学理論ガイドブック』,
夏堀陸・加藤弘通編,ナカニシヤ出版,pp. 167-180,2007年4月25日.
2012年10月26日
明治大学 阪井和男
185
他者の受動性を感じられるか?
5.
次に、「相手」に以下の二つを訊いてみてください
[Q1] 私が<握ってきている>という私の能動性を感じますか?
[Q2] あなたが<握られている>という受動性を感じますか?
川田学(2007年)による浜田寿美男(1993年)の引用。
浜田寿美男,『発達心理学再考のための序説』,ミネルヴァ書房,1993年.
川田学,「『美しい』発達理論から『危うさ』をはらんだ発達理論へ」,『卒論・修論をはじめるための心理学理論ガイドブック』,
夏堀陸・加藤弘通編,ナカニシヤ出版,pp. 167-180,2007年4月25日.
2012年10月26日
明治大学 阪井和男
186
他者の受動性を感じられるか?
6.
ひるがえって、次の問はどうでしょうか。
[Q3] あなた(「自分」)は「相手」の受動を感じることができますか?
つまり、「自分」が握り込んだ「相手」の<握られている>という感覚を、
感じることができるでしょうか・・・?
川田学(2007年)による浜田寿美男(1993年)の引用。
浜田寿美男,『発達心理学再考のための序説』,ミネルヴァ書房,1993年.
川田学,「『美しい』発達理論から『危うさ』をはらんだ発達理論へ」,『卒論・修論をはじめるための心理学理論ガイドブック』,
夏堀陸・加藤弘通編,ナカニシヤ出版,pp. 167-180,2007年4月25日.
2012年10月26日
明治大学 阪井和男
187
他者の受動性を感じられるか?
6.
ひるがえって、次の問はどうでしょうか。
[Q3] あなた(「自分」)は「相手」の受動を感じることができますか?
つまり、「自分」が握り込んだ「相手」の<握られている>という感覚を、
感じることができるでしょうか・・・?
「自分」が感じる 「相手」が感じる
「自分」の能動性
○[Q0]
○[Q1]
「相手」の受動性
×[Q3]
○[Q2]
×[Q3]  他者の受動性を感じられない!
∴経験の非対称性
川田学(2007年)による浜田寿美男(1993年)の引用。
浜田寿美男,『発達心理学再考のための序説』,ミネルヴァ書房,1993年.
川田学,「『美しい』発達理論から『危うさ』をはらんだ発達理論へ」,『卒論・修論をはじめるための心理学理論ガイドブック』,
夏堀陸・加藤弘通編,ナカニシヤ出版,pp. 167-180,2007年4月25日.
2012年10月26日
明治大学 阪井和男
188
七十而従心所欲、不踰矩

何を意味するのか
 七十にして心の欲する所に従って、矩を踰えず
七十になってからは、心のおもむくままに行動しても、道理
に違うことがなくなった
一人ひとりが心の感じるままに行動すればよい?×

ワールドカフェで話し合ってみましょう・・・
「自分」が感じる 「相手」が感じる
「自分」の能動性
○[Q0]
○[Q1]
「相手」の受動性
×[Q3]
○[Q2]
2012年10月26日
明治大学 阪井和男
189
経験の非対称性

相手との決定的な非対称性
他者の<受動>はかくも遠い!
 握られたほうは、相手の<握ってきている>という能動をか
なり明確にかんじることができる
 握っているほうは、相手の<握られている>という受動を感
じることが難しい
<私>は相手の被害性という意味での受動性をうまくキャ
ッチすることができないでいる

逆に、私たちは他者の加害性(≒能動性)については、想像以上に
敏感なようです
川田学(2007年)による浜田寿美男(1993年)の引用。
浜田寿美男,『発達心理学再考のための序説』,ミネルヴァ書房,1993年.
川田学,「『美しい』発達理論から『危うさ』をはらんだ発達理論へ」,『卒論・修論をはじめるための心理学理論ガイドブック』,
夏堀陸・加藤弘通編,ナカニシヤ出版,pp. 167-180,2007年4月25日.
2012年10月26日
明治大学 阪井和男
190
経験の非対称性

本源的自己中心性
 自己中心性は個別の身体をもつ人間にとって避けようのな
い運命のようなもの
 私たちが抱えたこの身体というシステムに宿命的な構図なの
だ(浜田寿美男,1993年)


「私は私のこの身体を通して生きているのであって、決定的にこの身
体に自分の中心をおかざるをえない」(浜田寿美男,1993年,p. 25)
「他者から見た光景、他者に聞こえている音の世界、他者の皮膚で触
れている世界がどうなっているのか、またその人がどんな思いをもち
、どんな悩みを抱いているか、こうしたことはみな、結局のところ、私
にとっては想像の域をでないこと」(浜田寿美男,1993年,p. 25)
川田学(2007年)による浜田寿美男(1993年)の引用。
浜田寿美男,『発達心理学再考のための序説』,ミネルヴァ書房,1993年.
川田学,「『美しい』発達理論から『危うさ』をはらんだ発達理論へ」,『卒論・修論をはじめるための心理学理論ガイドブック』,
夏堀陸・加藤弘通編,ナカニシヤ出版,pp. 167-180,2007年4月25日.
2012年10月26日
明治大学 阪井和男
191
経験の非対称性

経験の非対称性
 能動の立場にあるあなたには相手の受動を感じにくいが、受
動の立場にある相手にはあなたの能動をありありと感じる
 あなたが「鈍い」という能力の問題ではなく、
私たちが見る現実というものが、
つねにそれを体験する固有の視座(立場)とともに現れる
というきわめて原理的な問題
パースペクティブ性(浜田寿美男,1993年)
 私たちは、それぞれがさまざまな状況のなかで、互いのパースペクテ
ィブ性を絡ませながら生きている(発達心理学で考慮されなかった視点)
川田学(2007年)による浜田寿美男(1993年)の引用。
浜田寿美男,『発達心理学再考のための序説』,ミネルヴァ書房,1993年.
川田学,「『美しい』発達理論から『危うさ』をはらんだ発達理論へ」,『卒論・修論をはじめるための心理学理論ガイドブック』,
夏堀陸・加藤弘通編,ナカニシヤ出版,pp. 167-180,2007年4月25日.
2012年10月26日
明治大学 阪井和男
192
経験の非対称性

人間理解のための基本的枠組の再整備
 人間の本源的な個体性こそが、人間の関係性の前提条件の
一つなのだという逆説


個体能力的な発達観を批判
物語的な発達観を提案
 個人がある能力を「もっている」ことよりも、それが他者や状
況との関係においてどのような意味をもつ行為としてなされ
たり、なされなかったりするのかを重視


能力が個体のレベルでは成就しない
実際になにが起こるかは、個体の能力の範囲を超えている
川田学(2007年)による浜田寿美男(1993年)の引用。
浜田寿美男,『発達心理学再考のための序説』,ミネルヴァ書房,1993年.
川田学,「『美しい』発達理論から『危うさ』をはらんだ発達理論へ」,『卒論・修論をはじめるための心理学理論ガイドブック』,
夏堀陸・加藤弘通編,ナカニシヤ出版,pp. 167-180,2007年4月25日.
2012年10月26日
明治大学 阪井和男
193
経験の非対称性が意味するもの
「行為する側」(加害者)⇔「行為される側」(被害者)
1. 「行為する側」は自分の「感じるまま」を超えて、行為
される側の「感じ」を想像する必要!
 「被害者」の能力不足が問題なのではなく、
「加害者」の能力(創造力)不足こそ問題である!
2.
自分が行為される側にもたびたび立つ必要!
 一方的に行為する側に立ち続けることの問題
3.
「行為する側」に居続けることは、「行為される側」にた
いするハラスメント(学習の停止)構造に嵌り込む危険!

リーダーが陥りやすい陥穽「悪魔のささやき」
2012年10月26日
明治大学 阪井和男
194
経験の非対称性:本部と現場
緊張関係が最高潮に達したシーン
青木刑事の台詞
事件は会議室で起きているんじゃない
現場で起きているんだ
犯人確保のタイミング
本部
会議室から指示
する特捜本部
ニ絶
ケ望
障ー的
壁シな
ョコ
ンミ
のュ
現場
現場で張り込む
所轄の刑事
金井壽宏・田柳恵美子,『踊る大捜査線に学ぶ組織論入門』,かんき出版,2005年9月5日.
2006年4月17日
明治大学 阪井和男
195
行為の対象を感じら
れるか
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脳を使い倒すため
のサイクル
脳と知的能力の4要素
能力,倫理
前頭前連合野
(司令部)
思考
(内部ループ)
頭頂側頭連合野
理性脳
(内部世界)
新皮質
(250万年前)
視覚
視覚野
感覚運動野
嗅覚
知識
注
意
・
抑
止
情動(態度)
味覚
情動脳
伊藤正男, 『脳の不思議』,
岩波 科学ライブラリー 58,
岩波書店,1998年
大脳辺縁系等
(2億年前)
反射脳
(5億年前)
脳幹・脊髄
刺激
2012年10月26日(外部世界)
行動・反応
(外部世界)
伊藤正男(1998年,第2章)を参考に作図
明治大学 阪井和男
198
演繹推論(Deduction)

(仮説)
機械的推論
赤い玉だけが入った箱がある
仮説が真ならば、論理
の飛躍はなく、結果は必 (事例)
その箱の中から玉を取り出した
ず正しい
(結果)
特徴



その玉の色は、当然赤色である
一般から特殊へ
1.
2.
3.
「仮説」を大前提にし
個々の「事例」に当てはめ
「結果」を導く
[問題点]



(宮原諄二,2001年)
2012年10月26日
現実には、大前提そのものが真で
あるかどうか明確でない場合も
ごくわずかの青い玉が入っている
かも知れない
その場合は誤った結論に!
宮原諄二、「創造的技術者の論理とパーソナリティ」、『イノベーション・マネジメント入門』、一橋
大学イノベーション研究センター編、日本経済新聞社、第8章、pp. 218-244、2001年12月21日.
明治大学 阪井和男
199
帰納推論(Induction)



(事例)
科学的推論
結果から仮説形成のプ
ロセスには必ず思考の
飛躍がともなう
2.
3.
玉を取り出したらいずれも赤色
箱には赤い玉だけが入っている
特殊から一般へ
1.
(結果)
(仮説)
特徴

机の上に玉が入った箱がある
個々の「事例」を出発点
「結果」の考察を経る
「仮説」の形成へ進む
[問題点]



(宮原諄二,2001年)
2012年10月26日
事例が多いほど仮説が真であ
る可能性が高い
最後に青い玉が出るかも
青い玉が出るまで仮説は正しい
宮原諄二、「創造的技術者の論理とパーソナリティ」、『イノベーション・マネジメント入門』、一橋
大学イノベーション研究センター編、日本経済新聞社、第8章、pp. 218-244、2001年12月21日.
明治大学 阪井和男
200
アブダクション(Abduction)



(結果)
直観的推論
仮説形成の飛躍は、帰
納的推論よりも著しく大
きい不安定な推論
特徴
1.
2.
3.
(仮説)
箱にはすべて赤い玉が入っていて、
赤い玉がそこから取り出された
(事例)
「結果」を出発点
赤い玉の存在は納得できる
いきなり「仮説」を導く
[問題点]
仮説が正しければ「事例」
 箱の中が赤い玉だけか?
は納得できる
 別の場所から赤い玉をもって
きただけかも
(宮原諄二,2001年)
2012年10月26日
机の上に箱と赤い玉がある
宮原諄二、「創造的技術者の論理とパーソナリティ」、『イノベーション・マネジメント入門』、一橋
大学イノベーション研究センター編、日本経済新聞社、第8章、pp. 218-244、2001年12月21日.
明治大学 阪井和男
201
推論分析
知
の
具
現
化
1. 動機:「存在」
2. 事実認識:
事実(としての記述)を把握し認識する
エスノグラフィ,ブルートファクツ,
行動観察,暗黙知の顕在化
演繹推論
Deduction
3. 知の共有機能:
論理的・機械的推論によ
る具体化(具現化),視点
をミクロにズームイン,知
識を詳細化し緻密化する
2. 大前提の設定:
神話,理念,信念,文化,
常識,他の推論結果
1. 動機:「評価」
3. 知の連携機能:
科学的推論による抽象化,
視点をマクロにズームアウト,
知識に汎用性をもたせる
帰納推論
Induction
1. 動機:「意味」
2. 共鳴場:
似たものや異質なものから創発され,
新しい意味を創造する
ひらめき(気づき),アナロジー,
異質なものの新結合
アブダクション
Abduction
3. 知の創発機能:
新結合による仮説生成,視点を
根本的に転換,知識を創造する
知の創造
2012年10月26日
明治大学 阪井和男
202
倫理的な面への制約
非
倫
理
的
な
空
間
2012年10月26日
明治大学 阪井和男
203
頭を使い倒す
仮説
rule
事例
case

 仮説事例結果
結果
result

仮説
rule
演繹的推論(Deduction):
帰納的推論(Induction):
 事例結果仮説
事例
case
結果
result

仮説
rule
事例
case
アブダクション(Abduction):
 結果仮説事例
結果
result
宮原諄二、「創造的技術者の論理とパーソナリティ」、『イノベーション・マネジメント入門』、一橋
大学イノベーション研究センター編、日本経済新聞社、第8章、pp. 218-244、2001年12月21日.
2012年10月26日
明治大学 阪井和男
204
創造プロセスの3つのステップ
C
第1ステップ:アブダクションによる仮説の形成
結果仮説事例
P
第2ステップ:演繹的推論による仮説の一般化
仮説事例結果
A
第3ステップ:帰納的推論による仮説の検証
頭
を
使
い
倒
す
事例結果仮説
創造へ
C.S.パースの「発見における探求の三段階」(宮原諄二、2001年)
宮原諄二、「創造的技術者の論理とパーソナリティ」、『イノベーション・マネジメント入門』、一橋
大学イノベーション研究センター編、日本経済新聞社、第8章、pp. 218-244、2001年12月21日.
2012年10月26日
明治大学 阪井和男
205
3つの推論能力の関係
1. 動機:「存在」
2. 事実認識:
事実(としての記述)を把握し認識する
エスノグラフィ,ブルートファクツ,
行動観察,暗黙知の顕在化
3. 知の連携機能:
科学的推論による抽象
化,視点をマクロに
ズームアウト,知識に
汎用性をもたせる
3. 知の共有機能:
論理的・機械的推論による
具体化(具現化),視点をミ
クロにズームイン,知識を
詳細化し緻密化する
演繹推論
帰納推論 Deduction
2. 大前提の設定:
Induction
アブダクション
1. 動機:「意味」 Abduction
2. 共鳴場:
似たものや異質なものから創発されて
新しい意味を創造する
ひらめき(気づき),アナロジー,
異質なものの新結合
2012年10月26日
神話,理念,信念,文化,
常識,他の推論結果
1. 動機:「評価」
3. 知の創発機能:
新結合による仮説生成,
視点を根本的に転換,
知識を創造する
明治大学 阪井和男
206
イノベーション・ダイアグラム
知
の
具
現
化
知識
凡例
知識
演
繹
推
論
能
力
知識
共鳴場
知識
帰
納
推
論
能
力
知識
抽
象
化
創発
演
繹
推
論
能
力
具
体
化
アブダクション能力
知識
共鳴場
能力
演繹
アブダ
クション
帰納
スキル
知の創造
山口栄一(2006年,p.70)をもとに改変
山口栄一,『イノベーション 破壊と共鳴』,NTT出版,p. 70,2006年3月3日.
2012年10月26日
明治大学 阪井和男
207
知的能力のプロセスモデル
外にオープン1
近所づきあい**
知
の
具
現 内にオープン
創発的分業*
化
抽象化
why?
具体化
how
(演繹)
知の土壌
IT知識
ビジネス知識
外にオープン2
人間系知識
遠距離交際**
美学,哲学,芸術
革新
改善
共
鳴
場
スモールワー
ルド**の実現
(帰納)
矛盾
具体化
how
1. 技術的矛盾
2. 物理的矛盾
3. 社会的矛盾
(TRIZ,5つの壁®)
(演繹)
まぐれ
共
鳴
場
創発 what!
(アブダクション)
知の創造
*加藤浩,「協調学習環境における創発的分業の分析とデザイン」,ヒューマンインタフェース学会論文誌、Vol.6, No.2, pp. 161-168, 2004.
**西口敏宏,『遠距離交際と近所づきあい(成功する組織ネットワーク戦略)』,NTT出版,2007年1月25日.
2012年10月26日
明治大学 阪井和男
208
脳を使い倒すため
のサイクル
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科学的な態度
科学的な態度

科学的な態度とは、
互いに理念で争って、正しい理論を打ち立てようとすることではない
 前提:自然の中にあると信じるある種の美しさを追い求める強い動機が必要
 事実や事実としての記述から出発して現実を拒否せずに受け入れて、
これを思い込みや主観を排して冷静に観察し、
その事実がなぜあるのかという意味を探る帰納推論へと続く一連のプロセス
これら全体からなる


この科学的な態度を採用するならば
すべての経験は私たちに何らかの意味をもたらすはずだという強い信念が必要
経験から意味を読み取ろうとする強い動機が必要
 事実を冷徹に見つめて現実を受け入れ、
思い込みや主観を排して観察し、
その事実の意味を推測する

阪井和男,「科学的な態度でニュースソースを読み解く」, 『AFPWAA Japan one year after 3.11 AFP通信が世界に配信した
東日本大震災』 ,阪井和男監修,AFPWAA,2012年4月10日.
2012年10月26日
明治大学 阪井和男
211
科学的な態度
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ハラスメント的な苦しみとは?
~コミュニケーションと学習~
朝の食卓での夫婦の会話

お父さんとお母さんは、どこかへ出かける予定がある。
そして、朝食をとっている。食卓で向い合せに座っている。
お父さん「雨が降ってきたようだね」
お母さん「行くの、やめましょうか?」
お父さん「・・・そうしようか、・・・」
お母さん「ええ」
石井淳蔵,『ビジネス・インサイト(創造の知とは何か)』,岩波新書 1183,岩波書店,p. 216, 2009年4月21日.
2009年11月28日
明治大学 阪井和男
214
意図せざる結果

お父さんとお母さんは、どこかへ出かける予定がある。
そして、朝食をとっている。食卓で向い合せに座っている。
お父さん「雨が降ってきたようだね」

ふと窓の外を見て雨が降ってきたのに気がつく。
お母さん「行くの、やめましょうか?」

「お父さん、出かけるのが嫌なんだ」と思う。
お父さん「・・・そうしようか、・・・」

「そういうつもりで言ったわけではないのに」とちょっと驚く。
しかし、「お母さんは行きたくないのかも」とお母さんに配慮する。
お母さん「ええ」

「やはりお父さん、出かけたくなかったんだ」と思ってうなずく。
石井淳蔵,『ビジネス・インサイト(創造の知とは何か)』,岩波新書 1183,岩波書店,p. 216, 2009年4月21日.
2009年11月28日
明治大学 阪井和男
215
場とコミュニケーション
 「わたくし」に事前に意図があり,
それがなんらかの行為へと変換されて「あなた」に渡され,
それを「あなた」が解釈する,
というコミュニケーション像は不十分(安冨歩,p.65)

場があり,そこに行為が生成されると
同時に意図と解釈が生まれ(創発),
コミュニケーションが実現し,
それが場を再生産する(安冨歩,p.65)
 意図と解釈が一致するかどうかは問題外(安冨歩,p.68)
 「通じたことにする」ことでコミュニケーションが成立(安冨歩,
pp.68-69)
安冨歩,『複雑さを生きる(やわらかな制御)』,フォーラム 共通知をひらく,岩波書店,2006年2月22日.
2009年11月28日
明治大学 阪井和男
216
場の形成と学習

場の形成
 互いに相手についての理論を作り続けるという努
力(=学習)が不可欠

このような学習過程が背後で作動することで、
コミュニケーションは事後的に成立し続ける(安冨歩,p.72)
安冨歩,『複雑さを生きる(やわらかな制御)』,フォーラム 共通知をひらく,岩波書店,2006年2月22日.
2009年11月28日
明治大学 阪井和男
217
コミュニケーションの危険性

ハラスメント=学習過程の悪用
 相手にのみ無駄な学習を続けさせること(安冨,p.75)

コミュニケーションが持つ本質的な危険性(安冨,p.74)


ひとがコミュニケーションを実現するために形成する信念(相手
も自分と同じ世界をもっているだろう)と、その信念を基盤として
相手を理解するための理論を構築しようという努力とを悪用し、
他者を操作しようとすること(安冨,p.74)
人々を苦しめ、社会を崩壊させるのは、学習過程の停止
である(安冨,p.210)

自分の感覚を裏切り、他者の心の動きに対する感覚を失った人
間は、他者を支配しようとしてハラスメントを行う(安冨,p.210)
安冨歩,『複雑さを生きる(やわらかな制御)』,フォーラム 共通知をひらく,岩波書店,2006年2月22日.
2009年11月28日
明治大学 阪井和男
218
ハラスメントへの対応

ハラスメントの悪魔に立ち向かう
 相互に学習過程を開いた形でコミュニケーションを
形成すること(安冨,p.210)

方法:
自分の感覚を信頼すること(安冨,p.146)
2. 自分の学習過程を鍛えること(安冨,p.94)
3. 他人の学習過程の作動を促すこと(安冨,p.94)
1.
安冨歩,『複雑さを生きる(やわらかな制御)』,フォーラム 共通知をひらく,岩波書店,2006年2月22日.
2009年11月28日
明治大学 阪井和男
219
やわらかな制御

やわらかな制御
 リアルタイムの柔軟な処理(安冨,p.123)
cf. リアルタイムの創出知(清水博,1996年)

共生的価値創出(安冨)
 働きかける側と対象となる側を、相互に依存し、影響しあう
一つのシステムとして認識する姿勢(安冨,p.128)
cf. ブリコラージュ(レヴィ=ストロース)

教える側と教えられる側がすでに持っているものを繋ぎ合わせ、そ
こにひとつのコミュニケーションの運動を創り出し、そこから新しい動
きを生み出していく(安冨,p.129)
安冨歩,『複雑さを生きる(やわらかな制御)』,フォーラム 共通知をひらく,岩波書店,2006年2月22日.
清水博,『生命知としての場の論理(柳生新陰流に見る共創の理)』,中公新書 1333,中央公論新社,1996年11月25日.
2009年11月28日
明治大学 阪井和男
220
共鳴場

共鳴場とは




異質な活動が連鎖する接点
創造性が発揮され、ブレークスルーが起る!
ブレークスルーの連鎖がイノベーションを起こす!(山口栄一、2006)
なぜ共鳴場がよいか?

相手が嫌いでも共鳴できる


相手に従わなくても共鳴できる


「共感」ではない!
「支配」ではない!
相手に頼らなくても共鳴できる

「依存」ではない!
∴ 自律性を失わずに互いの力を生かしあえる!
∴ 個人が問題なのではなくて、場の活動が問題!(伊丹、2005)
山口栄一、『イノベーション 破壊と共鳴』、NTT出版、東京、2006年
伊丹敬之,『場の論理とマネジメント』,東洋経済新報社,2005年12月29日.
2009年11月28日
明治大学 阪井和男
221
ハラスメント的な苦しみとは?
~コミュニケーションと学習~
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原初的欲求と実存的
欲求を考える
はじめに

高い満足感を生むには
 顧客の顕在的な欲求を満足させることではない
 潜在的な欲求を実現する道へ導きともに歩むこと
2010年4月24日
明治大学 阪井和男
224
顧客の琴線に触れるには?

「琴線」とは?
 顧客の情動に訴える
 顧客が満たされたい欲求!
⇅欲求のコミュニケーション
 従業員が満たしたい欲求?
欲求を満たすプロセス
=学びのプロセス

何のために私たちは生きるのか?
2010年4月24日
明治大学 阪井和男
225
何のために私たちは生きるのか










もっとおいしいものを食べたい
もっと快適な生活がしたい
もっとたくさんの快楽を求めたい
富を得たい
他者の優位に立ちたい
他者に対して誠実,寛容,率直でありたい
会社の役に立ちたい。会社に評価され誉められたい
創造したい
他者を愛したい
自己を高めたい
2010年4月24日
明治大学 阪井和男
226
何のために私たちは生きるのか

原初的な欲求








もっとおいしいものを食べたい
もっと快適な生活がしたい
もっとたくさんの快楽を求めたい
富を得たい
他者の優位に立ちたい
他者に対して誠実,寛容,率直でありたい
会社の役に立ちたい。会社に評価され誉められたい
実存的な欲求



創造したい
他者を愛したい
自己を高めたい
2010年4月24日
明治大学 阪井和男
227
原初的な欲求

生理的な欲求




社会的な欲求



もっとおいしいものを食べたい
もっと快適な生活がしたい
もっとたくさんの快楽を求めたい
富を得たい
他者の優位に立ちたい
道徳的な欲求

他者に対して誠実,寛容,率直でありたい
従順・礼節・忠勇への欲求
 他者がそうあってほしいとする欲求の内面的反映


会社の役に立ちたい。会社に評価され誉められたい
山口栄一(2006年,pp. 268-270)による真木悠介(1971年)の引用
山口栄一,『イノベーション 破壊と共鳴』,NTT出版,p. 70,2006年3月3日.
真木悠介,『人間解放の理論のために』,筑摩書房,1971年.
2010年4月24日
明治大学 阪井和男
228
実存的な欲求
よりよい生への欲求
自分自身がこの世界の中で
どのような内なる価値をもっているかを問う



創造する欲求
他者を愛する欲求
自己を高めたいとする欲求
山口栄一(2006年,pp. 268-270)による真木悠介(1971年)の引用
2010年4月24日
山口栄一,『イノベーション 破壊と共鳴』,NTT出版,pp. 268-270,2006年3月3日.
真木悠介,『人間解放の理論のために』,筑摩書房,1971年.
229
明治大学 阪井和男
欲求の実現法
欲求の種類
欲求の内容
もっとおいしいものを食べたい
生理的 もっと快適な生活がしたい
もっとたくさんの快楽を求めたい
富を得たい
原
社会的
初
他者の優位に立ちたい
的
他者に対して誠実,寛容,率直
でありたい
道徳的
会社の役に立ちたい。会社に評
価され誉められたい
創造したい
実
存 よりよき生 他者を愛したい
的
自己を高めたい
欲求の実現法
How おいしいものを食べられるか?
How 快適な生活ができるか?
How 快楽を求められるか?
How 富を得られるか?
How 優位に立てるか?
How 誠実,寛容,率直であれるか?
How 会社に評価されるか?
What 創造するか? … and how 実現?
Who 愛するか? … and how 実現?
Why 自己を高めたいか? … and how ?
※山口栄一(2006年,pp. 268-270)が真木悠介(1971年)から引用・整理したものをもとに阪井和男が加筆。
2010年4月24日
山口栄一,『イノベーション 破壊と共鳴』,NTT出版,pp. 268-270,2006年3月3日.
真木悠介,『人間解放の理論のために』,筑摩書房,1971年.
230
明治大学 阪井和男
欲求の特徴と行動様式

原初的な欲求
目的優先志向
 対象が明確である
 実現法を追求しやすい
顧客の顕在的な欲求

実存的な欲求
楽しみ優先志向
 対象が明確でない
 まず対象や理由を見つけなければならない
顧客の潜在的な欲求
2010年4月24日
明治大学 阪井和男
231
欲求の特徴と行動様式

原初的な欲求
目的優先志向
 対象が明確である
 実現法を追求しやすい
顧客の顕在的な欲求

顧客への対応
実存的な欲求
楽しみ優先志向
 対象が明確でない
 まず対象や理由を見つけなければならない
顧客の潜在的な欲求
顧客の高い満足
2010年4月24日
明治大学 阪井和男
232
原初的欲求と実存的
欲求を考える
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右脳・左脳モデルと
知的記憶
右脳・左脳モデルの影響
戦略会議の形態としてすっかり定着している「ブレインストーミング」
だが、その手法の科学的根拠はすでに否定されている
最新脳科学による本当に創造的な発想法とは?


企業はどのようにしてイノベーションを起こすものなのか?
見事なイノベーション企業として広く賞賛されているグーグル
ロビーにはおもちゃが置かれ、およそオフィスにはふさわしくないカジュア
ルなデザインのビーン・バッグチェアがあり、ゲーム室まである。社員が自
分のアイディアに取り組むことのできる時間も与えられている
∵「新しい考えを思いつくには、
人間は分析的な左脳をオフにして、創造的な右脳をオンにする必要がある」


他の会社も同じようにするべきか?
「“ひらめき脳”の作りかた(たいしたアイディアが出てこない不毛な『ブレスト』はもうやめよう!)」,pp. 20-23,「人生を豊かにする『脳』
の使い方」,クーリエ・ジャポン,第8巻,第3号,Vol. 088,pp. 18-43,講談社,2012年3月1日.
2012年11月14日
明治大学 阪井和男
235
右脳・左脳モデルの影響

他の会社も同じようにするべきか?
答えは、ノーだ
 「新しい考えを思いつくには、
人間は分析的な左脳をオフにして、創造的な右脳をオンにする必要があ
る」
クリエイティビティに関する不正確な理論に基づいている
 実際、グーグルの設立者たちは、これらの手法を用いてグーグルそのも
のの基盤となるような考え方を思いついたわけではない

残念だが、グーグルは嘆かわしいほど時代遅れなイノベーショ
ン手法を採用している無数の企業の一つにすぎない
「“ひらめき脳”の作りかた(たいしたアイディアが出てこない不毛な『ブレスト』はもうやめよう!)」,pp. 20-23,「人生を豊かにする『脳』
の使い方」,クーリエ・ジャポン,第8巻,第3号,Vol. 088,pp. 18-43,講談社,2012年3月1日.
2012年11月14日
明治大学 阪井和男
236
右脳・左脳モデルの起源

右脳・左脳(右脳・左脳モデル、脳二面性説)
 1981年にロジャー・スペリーが脳を2つの側に分けた研究で
ノーベル生理学・医学賞を受賞
 右脳:創造的、芸術的、直観的
 左脳:分析的、論理的、合理的
 ビジネス世界全体に、あっという間に広がった

新しいアイデアを簡単に思いつく人となかなか思いつけない人がい
る理由を説明してくれるように思われた
「“ひらめき脳”の作りかた(たいしたアイディアが出てこない不毛な『ブレスト』はもうやめよう!)」,pp. 20-23,「人生を豊かにする『脳』
の使い方」,クーリエ・ジャポン,第8巻,第3号,Vol. 088,pp. 18-43,講談社,2012年3月1日.
2012年11月14日
明治大学 阪井和男
237
右脳・左脳モデルの応用

ハーマンモデル理論(ホールブレインモデル)
米国ゼネラル・エレクトリック社の能力開発部門責任者ネッド・ハーマン
が「右脳・左脳モデル」と「三位一体型脳モデル」の2つを統合して構築
 人間の脳の施行を司る部分は、大脳新皮質の左右と、辺縁系の左右、
計4つの部位で構成され、それぞれ異なる機能を担うという理論
A象限:論理・理性脳(左脳・大脳新皮質部分)


事実を重視し立証しながら論理的に物事を進める
B象限:堅実・計画脳(左脳・辺縁系部分)

系統立てて実行のための方法や準備を徹底する
C象限:感覚・友好脳(右脳・辺縁系部分)

精神的な面に影響を与え、人との関係から動機づけされる
D象限:冒険・創造脳(右脳・大脳新皮質部分)

新鮮で未知な要素を求め、全体的な視点で物事を直観視する
ハーマン,ネッド,『ハーマンモデル(個人と組織の価値創造力開発)』,高梨智弘訳,東洋経済新報社,2000年10月.
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8A%B9%E3%81%8D%E8%84%B3 (2012年11月11日アクセス)
2012年11月14日
明治大学 阪井和男
238
右脳・左脳モデルの応用

ハーマンモデル理論(ホールブレインモデル)


GE社教育責任者として社員教育にあたり、共通の教育プログラムを受
けた優秀なマネージャーたちに研修効果の差が出るのはなぜか、一人
ひとりのキャリアと仕事に即した研修プログラムを開発するにはどうした
らよいか、と考え続け、1977年から10年ほどの歳月をかけて作り上げた
三位一体型脳モデルとは



米国国立衛生研究所(NIH:National Institutes of Health)主任研究員ポー
ル・マクリーン(Paul MacLean)が提唱
人間の脳は「脳幹」「辺縁系」「大脳新皮質」の三層が順番に発達し、3つの
機能をもつ脳が一体となって働くという理論
思考に関する重要な部分は「大脳新皮質」「辺縁系」とされている
ハーマン,ネッド,『ハーマンモデル(個人と組織の価値創造力開発)』,高梨智弘訳,東洋経済新報社,2000年10月.
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8A%B9%E3%81%8D%E8%84%B3 (2012年11月11日アクセス)
2012年11月14日
明治大学 阪井和男
239
右脳・左脳モデルの応用

創造的ブレインストーミング
 スペリーのモデルの最も普及した応用例

左脳をオフにし、右脳をオンにして、創造的なアイディアを自由に発
想させようとするミーティング
 ブレストは世界中でほぼ普遍的なビジネス手法

戦略、意思決定、問題解決などを目指す主流のビジネス手法のど
れも重要な段階でブレストが行われている


『競争戦略』(マイケル・ポーター):「代替案をリストアップし・・・」どうや
って思いつくかは何の助言もなく、ブレスト!
戦略的アイディアを思いつくためにブレストに依存する傾向は、多く
のビジネス・イノベーションの手引書に見られる
「“ひらめき脳”の作りかた(たいしたアイディアが出てこない不毛な『ブレスト』はもうやめよう!)」,pp. 20-23,「人生を豊かにする『脳』
の使い方」,クーリエ・ジャポン,第8巻,第3号,Vol. 088,pp. 18-43,講談社,2012年3月1日.
2012年11月14日
明治大学 阪井和男
240
知的記憶の起源

1998年
 「認識脳科学と記憶の研究」(ブレンダ・ミルナー,ラリー・スクワイア,エ
リック・カンデル, 『ニューロン』誌)という画期的な論文を発表

2000年
カンデルがノーベル生理学・医学賞を受賞
 脳科学者たちは脳の二面性説を受け入れるのをやめた

「脳の二面性説」=「右脳・左脳モデル」
右脳(創造的・芸術的・直観的)⇔左脳(分析的・論理的・合理的)
 1981年にロジャー・スペリーが脳を2つの側に分けた研究でノーベ
ル生理学・医学賞を受賞
「“ひらめき脳”の作りかた(たいしたアイディアが出てこない不毛な『ブレスト』はもうやめよう!)」,pp. 20-23,「人生を豊かにする『脳』
の使い方」,クーリエ・ジャポン,第8巻,第3号,Vol. 088,pp. 18-43,講談社,2012年3月1日.
2012年11月14日
明治大学 阪井和男
241
知的記憶

知的記憶とは



学習と想起があるだけ、それが脳全体で様々な組合せで発生
どのような思考様式でも分析と直感が脳内で協力して働く
地球上で最大の目録システム
1.
2.
3.
人間が生まれた瞬間から、脳はものごとを取り込み、分類し棚に収める
 分類と収納分析
新しい情報が入ってくると、脳はすでに記憶内にしまってある他の情報
にそれが合致しないか調べる
合致するものが見つかると、前からあった記憶は棚から取り出され、新
しいものと組み合わされることで思考が生まれる
 検索と組み合わせ直感
バリー・ゴードン,リサ・バーガー,『知的記憶(より賢くなるための記憶力を強化する)』,未邦訳.
「“ひらめき脳”の作りかた(たいしたアイディアが出てこない不毛な『ブレスト』はもうやめよう!)」,pp. 20-23,「人生を豊かにする『脳』
の使い方」,クーリエ・ジャポン,第8巻,第3号,Vol. 088,pp. 18-43,講談社,2012年3月1日.
2012年11月14日
明治大学 阪井和男
242
2つの反応
1.
無意識反応
 棚から情報の欠片がスムーズに、なじみ深いパターンでとり
出される場合(例えば何度もしたことのある単純な計算など)
、人はそれが起こったことにも気づかない
2.
アハ体験
 さまざまな欠片がいくつも組み合わさって新しいパターンが生
じるとき、人はひらめきを感じる
どちらも心的メカニズムの働き方は同じ
 知的記憶は分析と直感を組み合わせて学習と想起を行う
「“ひらめき脳”の作りかた(たいしたアイディアが出てこない不毛な『ブレスト』はもうやめよう!)」,pp. 20-23,「人生を豊かにする『脳』
の使い方」,クーリエ・ジャポン,第8巻,第3号,Vol. 088,pp. 18-43,講談社,2012年3月1日.
2012年11月14日
明治大学 阪井和男
243
創造されるとき

最も優れたアイディアは
ブレストの最中にではなく、
シャワーを浴びているときや運転中、
夜眠りに就くときに生まれる
(つまり脳が特定の問題に集中するのではなく、
リラックスしてさまよっているとき)
どのような思考様式でも分析と直感が脳内で協力して働く
「“ひらめき脳”の作りかた(たいしたアイディアが出てこない不毛な『ブレスト』はもうやめよう!)」,pp. 20-23,「人生を豊かにする『脳』
の使い方」,クーリエ・ジャポン,第8巻,第3号,Vol. 088,pp. 18-43,講談社,2012年3月1日.
2012年11月14日
明治大学 阪井和男
244
右脳・左脳モデルと
知的記憶
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OKプラトー
OKプラトーの罠
能力を伸ばし続けることはできるか?
 OKプラトー(p. 31)
ある技術が納得いくレベルまで達することで生じる停滞

OKプラトーは打破できるか?(p. 31)
 できない

「人間の能力の限界を示すもの」(かつての心理学者)
 できる

「正しい努力によって打破できる」(K・アンダース・エリクソンフロリダ州立大学教授)
「“記憶力”は鍛えられる(たった1年で『記憶の超人』になる全米チャンピオンの“究極の脳トレ”)」,pp. 28-33,「人生を豊かにする
『脳』の使い方」,クーリエ・ジャポン,第8巻,第3号,Vol. 088,pp. 18-43,講談社,2012年3月1日.
フォア,ジョシュア,『ごく平凡な記憶力の私が1年で全米記憶力チャンピオンになれた理由』,梶浦真美訳,エクスナレッジ,
2012年11月14日
明治大学 阪井和男
247
OKプラトーの罠

OKプラトーの打破(p. 31)
常に目標を意識し、自分の成績に関するフィードバックを即座
に受け、戦略を発展させ続ける
 トップレベルのフィギュアスケート選手

着地で失敗しやすいジャンプを頻繁に練習
 一流になれない選手

すでに習得したジャンプばかりを練習する傾向がある
ある能力を向上させ続けるためには、
自分が限界だと感じるレベルを超えられるよう、
常に自分を追い込み、失敗の原因を追究しなければならない
「“記憶力”は鍛えられる(たった1年で『記憶の超人』になる全米チャンピオンの“究極の脳トレ”)」,pp. 28-33,「人生を豊かにする
『脳』の使い方」,クーリエ・ジャポン,第8巻,第3号,Vol. 088,pp. 18-43,講談社,2012年3月1日.
フォア,ジョシュア,『ごく平凡な記憶力の私が1年で全米記憶力チャンピオンになれた理由』,梶浦真美訳,エクスナレッジ,
2012年11月14日
明治大学 阪井和男
248
OKプラトー
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決断疲れ
決断疲れ:事例「仮釈放の決定」

「受刑者を自由にすべきか否か」
 イスラエルの刑務所で下される仮釈放の決定

スタンフォード大学のジョナサン・レバブとベン・グリオン大学のシャ
イ・ダンジガー
 1,100件/1年から発見されたパターン
仮釈放が認められたのは全体の約1/3
 下記のいずれにパターンが見られたか?
1.
民族的背景(受刑者がイスラエル系か、アラブ系か)
2.
犯罪や判決内容
3.
決定が行われた時刻
「“強い意志”を身に付ける(なぜダイエットは難しいのか?その秘密は『決断疲れ』にあった)」,pp. 40-43,「人生を豊かにする『脳』の
使い方」,クーリエ・ジャポン,第8巻,第3号,Vol. 088,pp. 18-43,講談社,2012年3月1日.
2012年11月14日
明治大学 阪井和男
251
決断疲れ:事例「仮釈放の決定」

「受刑者を自由にすべきか否か」
 1,100件/1年から発見されたパターン
仮釈放が認められたのは全体の約1/3
1.
×民族的背景(受刑者がイスラエル系か、アラブ系か)
2.
×犯罪や判決内容
3.
○決定が行われた時刻
 時刻で決まる仮釈放



午前中の早い時間に審問を受けた受刑者・・・約70%
午後の遅い時間に審問を受けた受刑者・・・10%未満
午前10時30分と昼食の前後では、明らかに仮釈放が認められる確
率が伸びた
「“強い意志”を身に付ける(なぜダイエットは難しいのか?その秘密は『決断疲れ』にあった)」,pp. 40-43,「人生を豊かにする『脳』の
使い方」,クーリエ・ジャポン,第8巻,第3号,Vol. 088,pp. 18-43,講談社,2012年3月1日.
2012年11月14日
明治大学 阪井和男
252
決断疲れ:事例「日常」



アメリカンフットボールのクォーターバックは、試合終
盤にありえない選択をする
企業の最高財務責任者は、夕方遅くに破滅的な間違
いを犯す
普段は常識的な人が、同僚や家族に怒りをぶつけ、
洋服に散財し、スーパーでジャンクフードを買い、新車
のさび止め加工を勧められると断れない
「“強い意志”を身に付ける(なぜダイエットは難しいのか?その秘密は『決断疲れ』にあった)」,pp. 40-43,「人生を豊かにする『脳』の
使い方」,クーリエ・ジャポン,第8巻,第3号,Vol. 088,pp. 18-43,講談社,2012年3月1日.
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明治大学 阪井和男
253
決断疲れ





一貫性のない判断
意思決定者であることの職業病
決断疲れは日常的にすべての人の判断を歪める
理性を保ち高潔であろうとどんなに努力しても、次々
に決断を下していけば、生物学的な代償は免れない
疲れているという自覚はないが、精神的エネルギーが
低下している
「“強い意志”を身に付ける(なぜダイエットは難しいのか?その秘密は『決断疲れ』にあった)」,pp. 40-43,「人生を豊かにする『脳』の
使い方」,クーリエ・ジャポン,第8巻,第3号,Vol. 088,pp. 18-43,講談社,2012年3月1日.
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254
決断疲れの効果
決断に伴うあらゆる変化に抵抗を感じる
 潜在的にリスクの高い行動を嫌う

「“強い意志”を身に付ける(なぜダイエットは難しいのか?その秘密は『決断疲れ』にあった)」,pp. 40-43,「人生を豊かにする『脳』の
使い方」,クーリエ・ジャポン,第8巻,第3号,Vol. 088,pp. 18-43,講談社,2012年3月1日.
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明治大学 阪井和男
255
「決断疲れ」から逃れる
回避方法
 結果を意に介さない
「この写真、ツイッターに投稿しちゃえ!別にいいじゃん!」
 決断する前に考えてエネルギーを消耗する代わりに、衝動
的に行動する

何も判断しない
 どんな決断を下すか苦悩する代わりに、選択そのものを回
避する

意思決定の回避は、長期的にみれば大きな問題を招くことも少なく
ないが、とりあえず精神的緊張をやわらげてくれる
「“強い意志”を身に付ける(なぜダイエットは難しいのか?その秘密は『決断疲れ』にあった)」,pp. 40-43,「人生を豊かにする『脳』の
使い方」,クーリエ・ジャポン,第8巻,第3号,Vol. 088,pp. 18-43,講談社,2012年3月1日.
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明治大学 阪井和男
256
「自我消耗」による決断疲れ

自我消耗
 社会心理学のロイ・F・バウメイスター
 自己統制に費やす精神エネルギー量の限界を実験で証明
 「意志の力も筋肉と同じように使えば疲労するし、過度の使
用を避ければ保存できる」(19世紀からあった考え方)を実験で
裏付け

自我消耗のプロセス研究
 我慢などの自我統制にのみ注目していた
 日常的な意思決定(アイスをチョコレートにするかバニラにするか)
も精神を消耗させることが判明
「“強い意志”を身に付ける(なぜダイエットは難しいのか?その秘密は『決断疲れ』にあった)」,pp. 40-43,「人生を豊かにする『脳』の
使い方」,クーリエ・ジャポン,第8巻,第3号,Vol. 088,pp. 18-43,講談社,2012年3月1日.
2012年11月14日
明治大学 阪井和男
257
「自我消耗」による決断疲れ



M&Mチョコレートや焼きたてのチョコチップクッキをむさぼり食
べたい衝動を抑えた被験者は、他の衝動に対する抵抗力が弱
くなる
お涙ちょうだいの映画を見ながら冷静さを保つように強制され
た後に、幾何学のパズルや固いハンドグリップを握るエクササ
イズなど自制心が必要な課題を与えられると、被験者はより早
くあきらめる
ショッピングモールで買い物をたくさんしてきた人(=多くの決
断をしてきた人)のほうが、計算問題を早くあきらめる
「“強い意志”を身に付ける(なぜダイエットは難しいのか?その秘密は『決断疲れ』にあった)」,pp. 40-43,「人生を豊かにする『脳』の
使い方」,クーリエ・ジャポン,第8巻,第3号,Vol. 088,pp. 18-43,講談社,2012年3月1日.
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258
決断疲れの実験

バウメイスターの実験
1.
2.
ペンやキャンドル、Tシャツなどを数種類ずつ用意
大学生の被験者たちにほしいものを考えさせる

3.
自己統制力を測る古典的テスト


どれか一つだけ選んで持って帰ることを「決断するグループ」と、
考えるだけで「決断しないグループ」に分ける
氷水にできるだけ長く手を入れて我慢する
実験の結果(平均我慢時間)

「決断しないグループ」=67秒 > 「決断するグループ」=28秒

さまざまな選択をしたことにより、明らかに意志の力を奪われた
「“強い意志”を身に付ける(なぜダイエットは難しいのか?その秘密は『決断疲れ』にあった)」,pp. 40-43,「人生を豊かにする『脳』の
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259
決断疲れの実験

スピアーズの実験
 プリンストン大学のディーン・スピアーズ
 インドの20の村で有名ブランドの石鹸を格安で買わせる


割引されていても、最も貧しい人にとっては高級品
実験の結果
 とても貧しい村

石鹸を買っても買わなくても、決断する行為自体が意志の力を奪う
 豊かな村

決断が意志の力に影響を与えることはなかった
「“強い意志”を身に付ける(なぜダイエットは難しいのか?その秘密は『決断疲れ』にあった)」,pp. 40-43,「人生を豊かにする『脳』の
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260
決断疲れの実験

スピアーズの実験の意味
 貧困から抜け出せない(見過ごされてきた)大きな要因


厳しい経済状況のために多くの相殺(トレードオフ)を迫られ、教育や
仕事など、中産階級に導く活動に注ぐ意志力が、少ししか残らない
別の実験
 貧しい人は、裕福な人より、出来合いのものやスナックを食
べる傾向がはるかに高い


買ってすぐ食べられる軽食よりも、家で料理を作ったほうが節約でき
て栄養価も高いはず!
スーパーの買物が、貧しい人にとって裕福な人より決断疲れが大きい
レジについた頃、棚のスナック菓子の誘惑に抵抗する意志力は残っていない!
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261
決断疲れの実験

ヘザートンの実験・結果
対象:ダイエット中の女性45人
1. 食べ物の写真に反応する際に脳をスキャンする
2. コメディー映画を見せ、笑いを我慢させる

3.
精神的エネルギーを枯渇させてから
食べ物の写真を見せると、
明らかに自我消耗の影響が見てとれた
 側坐核(報酬や快感と関係)が活発
 扁桃体(衝動の抑制を助ける)が弱まっていた
4.
グルコースを摂取すれば、消耗した脳変化を回復できる
「“強い意志”を身に付ける(なぜダイエットは難しいのか?その秘密は『決断疲れ』にあった)」,pp. 40-43,「人生を豊かにする『脳』の
使い方」,クーリエ・ジャポン,第8巻,第3号,Vol. 088,pp. 18-43,講談社,2012年3月1日.
2012年11月14日
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262
決断疲れの実験

ヘザートンの実験の意味
 ダイエットが自己統制力にとって厳しい試練の理由
生活の他の面では驚くほど意志の強い人でも、どうして
体重を減らすことがこれほど困難なのか
 一日は高潔な決意とともに始まる
 朝食を我慢し、昼食のデザートにも手を出さないが、こう
した抵抗の一つひとつが意志の力を奪っていく
 時計の針が進むにつれて自我が消耗すると、グルコー
スを補充する必要がある

「“強い意志”を身に付ける(なぜダイエットは難しいのか?その秘密は『決断疲れ』にあった)」,pp. 40-43,「人生を豊かにする『脳』の
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263
決断疲れの実験

ヘザートンの実験の意味
 ダイエットが自己統制力にとって厳しい試練の理由

栄養補給のジレンマ
食べないためには意志の力が必要
 意志の力を得るためには、食べなければならない
 自己統制が必要となると考えるだけでも、甘いものへの欲
求が生じる
 砂糖等は一時的な解決策
 一日を通してグルコースを安定的に共有するには、タンパ
ク質のほうが効果的

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264
決断疲れの実験

バウメイスターの実験(2)
ドイツでスマートフォンを使った実験
 被験者には1週間いつもどおり生活してもらう
 携帯電話が不規則な間隔でなった際に、自分がそ
の時点で感じている欲求や、直近に感じた欲求を
報告
1万件以上の報告を集計
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265
決断疲れの実験

バウメイスターの実験(2)の結果
人が欲求を感じるのは特別な経験ではなく、日常茶飯事
½:お茶を食べたい、仕事をサボりたい、上司に本音をぶつけたい
¼:30分ほど前に欲求を感じた
食欲・睡眠欲>仕事を中断して休みたいという欲求>性欲
 誘惑を払いのける工夫
気を紛らわせることを見つける、別のことをする
 欲求を押さえつけてひたすら我慢する
眠気や性欲、金を使う欲求を抑えることはかなりうまくいく
テレビを見たい、ネットサーフィンしたい、仕事をする代わりにリラック
スしたいという誘惑には弱い

「“強い意志”を身に付ける(なぜダイエットは難しいのか?その秘密は『決断疲れ』にあった)」,pp. 40-43,「人生を豊かにする『脳』の
使い方」,クーリエ・ジャポン,第8巻,第3号,Vol. 088,pp. 18-43,講談社,2012年3月1日.
2012年11月14日
明治大学 阪井和男
266
決断疲れ

現代社会におけるすべての決断は意志の力を消耗す
る
 脳の抑制力が弱まると、苛立ちを感じ、決断を下すにも非論
理的な近道を取るようになる
 安易な選択肢を選んでしまう
 本当に賢明な人は午後4時から会社の組織改革のような重
要な課題に取り組んだりしないし、立て続けに大切な会議を
行なって自我を消耗させたりしない
 最高の意思決定は「自分を信頼出来る時間帯」に下される
「“強い意志”を身に付ける(なぜダイエットは難しいのか?その秘密は『決断疲れ』にあった)」,pp. 40-43,「人生を豊かにする『脳』の
使い方」,クーリエ・ジャポン,第8巻,第3号,Vol. 088,pp. 18-43,講談社,2012年3月1日.
2012年11月14日
明治大学 阪井和男
267
決断疲れ
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イノベーションは幸せ
をもたらすか?
イノベーションは人を幸せにするか?

イノベーション事例:岩手県大船渡
 「常識」(既存の価値観)
 「ここより下に家を立てるべからず」:頻発する津波の被害による教訓
∴沿岸にあるのは漁師小屋のみだった
 パラダイム破壊型イノベーション

「常識」を破った人たちがいた


沿岸で商売を始め、家を立て、・・・沿岸は経済的大発展
その後は、津波被害復興予算経済発展津波被害復興予算・・・
アメリカのハリケーン:フロリダ海沿いは、ハリケーンの旅に破壊される地域のため法的に
保障されない地域。ところが、ハリケーンが来ると保証してしまうため、不動産業者がどん
どん開発してしまう。自己責任原則のアメリカでも、業者と政治家が結託するとこうなる。
原田康也(2012年6月9日)
 東日本大震災
 津波による市街地商業地域の壊滅
・・・イノベーションは結果として、甚大な被害をもたらした・・・
∴イノベーションは目的になり得ない!
2012年10月26日
明治大学 阪井和男
270
イノベーションは幸せ
をもたらすか?
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Knowing-Doing Gap
~なぜわかっているのにで
きないのか?~
「わかる」=「できる」?
わかっているはずなのに、うまくできない!?
 スポーツ(野球)を例に・・・
 宣言型知識

・・・ 「わかる」
Know What 「バットの握りは、右手が上で、左手が下で
ある」
 手続き型知識

・・・ 「できる」
Know How 「バットを振るときは、足を踏み込んで、腰の
回転で振りぬけばよい」
しかも、イメージトレーニングも完璧である!
2012年11月7日
明治大学文明とマネジメント研究所
273
「わかる」=「できる」?

スポーツ(野球)を例に・・・
 宣言型知識

・・・ 「わかる」
Know What 「バットの握りは、右手が上で、左手が下で
ある」
 手続き型知識

・・・ 「できる」
Know How 「バットを振るときは、足を踏み込んで、腰の
回転で振りぬけばよい」
しかも、イメージトレーニングも完璧である!
・・・ でも、ボールに当たらない!!! (阪井ゼミ・ゼミ長)
∴「わかる」≠「できる」
2012年11月7日
明治大学文明とマネジメント研究所
274
知識表現の形式

従来の知識表現の形式*
 宣言型知識
・・・ 「わかる」
Know What 「~は~と関係がある、~は~である」
静的な関係に関わる知識

 手続き型知識
・・・ 「できる」
Know How 「~するには、~すればよい」
動的な関係、すなわち行為や推論を促すもの


しかし、行為そのものではなく静的な知識とみなせる
 「わかる」≠「できる」!
*安西祐一郎・石崎俊・大津由紀雄・波多野誼余夫・溝口文雄編,『認知科学ハンドブック』,共立出版,p. 256,1992年3月1日.
阪井和男・鈴木克明・原田康也・小松川浩・戸田博人・多賀万里子,『知的能力の可視化WG成果報告書』,サイエンティフィック・システム研究
会,知的能力の可視化WG,p. 35,2012年5月11日.
2012年11月7日
明治大学文明とマネジメント研究所
275
Knowing-Doing Gap

「知識」と「能力」の峻別
 「知識」:静的な知識の宣言型知識と手続き型知識
 「能力」:実際に推論するという行為そのもの
「能力」の不全問題
知行合一でない状態を表す「knowing-doing gap」の問題
=「知識」の問題というより、
能力を使いこなすという行為ができない問題

フェファー,ジェフリー,サットン,ロバート・I,『実行力不全 なぜ知識を行動に活かせないのか』,長谷川喜一郎・菅田絢子訳,Harvard
business school press,ランダムハウス講談社,2005年12月23日.
ペッファー,ジェフリー,サットン,ロバート,『変われる会社、変われない会社―知識と行動が矛盾する経営』,長谷川喜一郎・菅田絢子訳,
Harvard business school press,流通科学大学出版,2000年9月.原著:Pfeffer, Jeffrey and Sutton, Robert I., "The Knowing-Doing Gap: How
Smart Companies Turn Knowledge into Action", Harvard Business School Press,2000.1.15.
阪井和男・鈴木克明・原田康也・小松川浩・戸田博人・多賀万里子,『知的能力の可視化WG成果報告書』,サイエンティフィック・システム研究
会,知的能力の可視化WG,p. 35,2012年5月11日.
2012年11月7日
明治大学文明とマネジメント研究所
276
単独課題のKnowing-Doing Gap

「わかる」=「できる」?
わかる
バットの
野球 握り方
できる
バットを
振る
できない
ボールに
当たらない
スイングフォームを磨く
目的ではない!
目的はボールに当てること
2012年11月7日
明治大学文明とマネジメント研究所
277
単独課題のKnowing-Doing Gap

「わかる」=「できる」?
わかる
バットの
野球 握り方
できる
バットを
振る
できない
ボールに
ボールと
当たらない の交流
スイングフォームを磨く
2012年11月7日
目的
明治大学文明とマネジメント研究所
行為
=能力
278
単独課題のKnowing-Doing Gap

「わかる」=「できる」?
わかる
できない
バットの
バットを
振る
ボールに
当たらない
英単語・
英作文・
スピーチ
話せない
野球 握り方
英語 文法
2012年11月7日
できる
明治大学文明とマネジメント研究所
279
単独課題のKnowing-Doing Gap

「わかる」=「できる」?
わかる
できる
できない
バットの
バットを
振る
ボールに
ボールと
当たらない の交流
英単語・
英作文・
スピーチ
話せない
野球 握り方
英語 文法
基本フォームを磨く
2012年11月7日
目的
明治大学文明とマネジメント研究所
相手との
交流
行為
=能力
280
複数課題のKnowing-Doing Gap

「わかる」=「できる」?
 簡単な算数を,英語で話しながらやる
「簡単な算数でも,英語で話しながらやるとまったくできない」
原田康也(第47回次世代大学教育研究会でのディスカッションから,岩手大学, 2010年6月19日)
原田康也・前坊香菜子・坪田康・壇辻正剛(「外国語の口頭運用時における数的処理について」,
第53回次世代大学教育研究会,早稲田大学,2010年12月18日)
2012年11月7日
明治大学文明とマネジメント研究所
281
複数課題のKnowing-Doing Gap

「わかる」=「できる」?
 簡単な算数を,英語で話しながらやる
「簡単な算数でも,英語で話しながらやるとまったくできない」
原田康也(第47回次世代大学教育研究会でのディスカッションから,岩手大学, 2010年6月19日)
原田康也・前坊香菜子・坪田康・壇辻正剛(「外国語の口頭運用時における数的処理について」,
第53回次世代大学教育研究会,早稲田大学,2010年12月18日)

「わかる」&「できる」
わかる
できる
できない
英語 英語はわかる 英語を話せる 英語を話しな
算数 計算はわかる 計算ができる がら計算する
2012年11月7日
明治大学文明とマネジメント研究所
282
複数課題のKnowing-Doing Gap

「わかる」=「できる」?
 簡単な算数を,英語で話しながらやる
「簡単な算数でも,英語で話しながらやるとまったくできない」
原田康也(第47回次世代大学教育研究会でのディスカッションから,岩手大学, 2010年6月19日)
原田康也・前坊香菜子・坪田康・壇辻正剛(「外国語の口頭運用時における数的処理について」,
第53回次世代大学教育研究会,早稲田大学,2010年12月18日)

「わかる」&「できる」
わかる
できる
できない
目的
英語 英語はわかる 英語を話せる 英語を話しな 思考を言語
算数 計算はわかる 計算ができる がら計算する 化する
∴Knowing-Doing Gap:単独課題&複数課題
2012年11月7日
明治大学文明とマネジメント研究所
行為
=能力 283
Knowing-Doing Gapの克服法
KnowingDoing Gap
克服法
英語学習法
1対1で英語を話す
単独課題 相手と交流しながら学ぶ
複数課題 思考を言語化して表現する 英語で話しながら考える*
*発話思考(Thinking Aloud)
考え事を口に出して言う
 英語圏:言語は思考である!
 日本語圏:言語は思考ではない!
沈黙は金なり
2012年10月26日
ワークショップが有効
第77回次世代大学教育研究会「ワークショップ・アバウト・ワークショップ:
ワークショップ型授業の開発と改善のためのメタ・ワークショップ」
http://nextedu.chiegumi.jp/com/SeminarDetail.php?ct=4345206028&cs=47
2012年12月15日(土)14:00~17:00
愛媛大学教育学部本館2階カンファレンスルーム
明治大学 阪井和男
284
Knowing-Doing Gap
~なぜわかっているのにで
きないのか?~
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知性の劣化
~理性脳の機能低下~
理性脳が弱ったら・・・
こんな症状に覚えはありませんか・・・?
 行動の秩序が乱れ、貧弱な戦略を用い、物事
に集中できない(p. 138)
 することの大半がうまくいかない(p. 138)

無気力で、状況に左右され、行動の計画や構
成・管理ができない(p. 120)
 リーダーの指示を真の動機に変換できず、必要とされた計
画は無気力に繰り返される作業や強迫的な一連の断片的
作業に置き換わってしまう(p. 133)
ジョン・ダンカン,『知性誕生(石器から宇宙船までを生み出した驚異のシステムの起源)』,田淵健太訳,早川書
房,2011年3月25日.原著:John Duncan, "How Intelligence Happens", Yale University Press, October 26, 2010.
2012年9月11日
阪井和男・栗山健
287
理性脳の機能低下

実は・・・前頭葉の機能不全!
 目標指向的な行動のシステムが妨害され、固定観
念や断片的で無関係なつながりにとらわれる(p. 134)
 能動的な支配と能動的な再構成、問題の部分への
能動的な分解が欠けている(p. 120)
混乱したり不完全な私たちのカリカチュアのよう(p. 134)
 被験者の約六分の一にこの現象が見られる(p. 154)

 社会的行動における変化(p. 157)

社会的状況にそぐわない突飛な行動をとる
ジョン・ダンカン,『知性誕生(石器から宇宙船までを生み出した驚異のシステムの起源)』,田淵健太訳,早川書
房,2011年3月25日.原著:John Duncan, "How Intelligence Happens", Yale University Press, October 26, 2010.
2012年9月11日
阪井和男・栗山健
288
理性脳の機能低下

実は・・・前頭葉の機能不全!
 流動性知能の大幅な欠損(p. 143)
行動の目標指向的構造が壊れている(p. 126)
 計画的に処理する能力の欠損(p. 129)
 指示を正しい完全な心的プログラムに変えることに失敗

(p. 154)

前頭葉を鍛える必要がある!
 頭を使い倒す!

3つの推論能力「演繹」「帰納」「アブダクション」
ジョン・ダンカン,『知性誕生(石器から宇宙船までを生み出した驚異のシステムの起源)』,田淵健太訳,早川書
房,2011年3月25日.原著:John Duncan, "How Intelligence Happens", Yale University Press, October 26, 2010.
2012年9月11日
阪井和男・栗山健
289
知的能力とは

3つの推論能力
 演繹推論(Deduction)

「前提」にもとづく「論理」  論理的(批判的)思考
 帰納推論(Induction)

「事実」にもとづく「科学」  科学的思考
 アブダクション(Abduction)

「共鳴」にもとづく「創造」  創造的思考
2012年9月11日
阪井和男・栗山健
290
知性の劣化
~理性脳の機能低下~
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知性の劣化
~情動脳の機能低下~
情動脳のフォーカス機能
伊藤正男, 『脳の不思議』,
岩波 科学ライブラリー 58,
岩波書店,1998年
前頭前連合野
(司令部)
思考
(内部ループ)
頭頂側頭連合野
理性脳
理性脳が働くには、
情動脳が安定して
いなくてはいけない!
注意・抑止
(内部世界)
新皮質
(250万年前)
視覚
視覚野
感覚運動野
味覚
情動脳
嗅覚
大脳辺縁系等
反応
(2億年前)
反射脳
(5億年前)
脳幹・脊髄
刺激
2012年9月11日 (外部世界)
反射
伊藤正男(1998年,第2章)を参考に作図
阪井和男・栗山健
反
応
が
行動
速
(外部世界) い
293
情動脳の機能低下
伊藤正男, 『脳の不思議』,
岩波 科学ライブラリー 58,
岩波書店,1998年
前頭前連合野
(司令部)
思考
(内部ループ)
注
意
・
抑
止
頭頂側頭連合野
理性脳
(内部世界)
新皮質
(250万年前)
視覚
視覚野
感覚運動野
味覚
情動脳
反
応
が
速
い
嗅覚
(2億年前)
反射脳
大脳辺縁系等
刺激
(5億年前) (外部世界)
脳幹・脊髄
反応
反射
伊藤正男(1998年,第2章)を参考に作図
2012年9月11日
阪井和男・栗山健
行動
(外部世界)
294
情動脳の機能低下
伊藤正男, 『脳の不思議』,
岩波 科学ライブラリー 58,
岩波書店,1998年
前頭前連合野
(司令部)
思考
(内部ループ)
注
意
・
抑
止
頭頂側頭連合野
理性脳
(内部世界)
新皮質
(250万年前)
視覚
視覚野
感覚運動野
味覚
情動脳
情動脳が安定せず
理性脳の焦点が不安定!
嗅覚
(2億年前)
反射脳
大脳辺縁系等
刺激
(5億年前) (外部世界)
脳幹・脊髄
反応
反射
伊藤正男(1998年,第2章)を参考に作図
2012年9月11日
反
応
が
速
い
阪井和男・栗山健
行動
(外部世界)
295
情動脳のフォーカス機能
伊藤正男, 『脳の不思議』,
岩波 科学ライブラリー 58,
岩波書店,1998年
理性脳
新皮質
反
応
が
速
い
(250万年前)
視覚
味覚
情動脳
情動脳が安定せず
理性脳の焦点が不安定!
嗅覚
(2億年前)
反射脳
反応
刺激
(5億年前) (外部世界)
脳幹・脊髄
反射
伊藤正男(1998年,第2章)を参考に作図
2012年9月11日
阪井和男・栗山健
行動
(外部世界)
296
情動脳のフォーカス機能
伊藤正男, 『脳の不思議』,
岩波 科学ライブラリー 58,
岩波書店,1998年
理性脳
新皮質
反
応
が
速
い
(250万年前)
視覚
味覚
情動脳
情動脳が安定せず
理性脳の焦点が不安定!
嗅覚
(2億年前)
反射脳
反応
刺激
(5億年前) (外部世界)
脳幹・脊髄
反射
伊藤正男(1998年,第2章)を参考に作図
2012年9月11日
阪井和男・栗山健
行動
(外部世界)
297
理性脳の機能低下
こんな症状に覚えはありませんか・・・?
 行動の秩序が乱れ、貧弱な戦略を用い、物事
に集中できない(p. 138)
 することの大半がうまくいかない(p. 138)

無気力で、状況に左右され、行動の計画や構
成・管理ができない(p. 120)
 リーダーの指示を真の動機に変換できず、必要とされた計
画は無気力に繰り返される作業や強迫的な一連の断片的
作業に置き換わってしまう(p. 133)
ジョン・ダンカン,『知性誕生(石器から宇宙船までを生み出した驚異のシステムの起源)』,田淵健太訳,早川書
房,2011年3月25日.原著:John Duncan, "How Intelligence Happens", Yale University Press, October 26, 2010.
2012年10月26日
明治大学 阪井和男
298
理性脳の機能低下

実は・・・前頭葉の機能不全!
 目標指向的な行動のシステムが妨害され、固定観
念や断片的で無関係なつながりにとらわれる(p. 134)
 能動的な支配と能動的な再構成、問題の部分への
能動的な分解が欠けている(p. 120)
混乱したり不完全な私たちのカリカチュアのよう(p. 134)
 被験者の約六分の一にこの現象が見られる(p. 154)

 社会的行動における変化(p. 157)

社会的状況にそぐわない突飛な行動をとる
ジョン・ダンカン,『知性誕生(石器から宇宙船までを生み出した驚異のシステムの起源)』,田淵健太訳,早川書
房,2011年3月25日.原著:John Duncan, "How Intelligence Happens", Yale University Press, October 26, 2010.
2012年10月26日
明治大学 阪井和男
299
理性脳の機能低下

実は・・・前頭葉の機能不全!
 流動性知能の大幅な欠損(p. 143)
行動の目標指向的構造が壊れている(p. 126)
 計画的に処理する能力の欠損(p. 129)
 指示を正しい完全な心的プログラムに変えることに失敗

(p. 154)

前頭葉を鍛える必要がある!
 頭を使い倒す!
ジョン・ダンカン,『知性誕生(石器から宇宙船までを生み出した驚異のシステムの起源)』,田淵健太訳,早川書
房,2011年3月25日.原著:John Duncan, "How Intelligence Happens", Yale University Press, October 26, 2010.
2012年10月26日
明治大学 阪井和男
300
脳の機能不全がもたらしたもの

人類による戦争の特徴
 動物にはない残虐性
 親族丸ごと抹殺
 皆殺し
 復讐のための殺人、殺人を目的とした猟奇殺人

BC1700-1984 (3,684年間)*
 戦争の件数:1,638件
 2年3ヵ月に1件の戦争
*コーン,ジョージ・C.,『世界戦争事典』,鈴木主税訳,河出書房新社,1998年3月3日.原著:George C. Kohn, ”Facts on File”, New York 1986.
2012年10月26日
明治大学 阪井和男
301
知性の劣化
~情動脳の機能低下~
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「知識」と「能力」
知的能力の4要素と3つの推論
能力
演繹推論
帰納推論
アブダクション
知識
倫理(意志)
情動(態度)
阪井和男・鈴木克明・原田康也・小松川浩・戸田博人・多賀万里子,『知的能力の可視化WG成果報告書』,サイエン
ティフィック・システム研究会,知的能力の可視化WG,2012年5月11日.
http://http://www.ssken.gr.jp/MAINSITE/download/wg_report/pf/index.html (2012年7月27日アクセス)
2012年9月11日
阪井和男・栗山健
304
知的能力の2つの可視化法
学力ダイアグラム(プロセスモデル)
演繹推論
帰納推論
アブダクション
能力
知識
倫理(意志)
情動(態度)

「知識」と「能力」の
関係とは・・・?
阪井和男・鈴木克明・原田康也・小松川浩・戸田博人・多賀万里子,『知的能力の可視化WG成果報告書』,サイエン
ティフィック・システム研究会,知的能力の可視化WG,2012年5月11日.
http://http://www.ssken.gr.jp/MAINSITE/download/wg_report/pf/index.html (2012年7月27日アクセス)
2012年9月11日
阪井和男・栗山健
305
教師主導型:知識の体系
干物*としての知識
具
体
的
抽
象
的
Teacher-directed
Richmond (1993)のFig. 2を参考に大幅に修正加筆して作図。
Barry Richmond, "Systems thinking: critical thinking skills for the 1990s and beyond", System Dynamics Review,
Vol. 9, no. 2 (Summer 1993), John Wiley & Sons. Ltd., pp. 113-133.
http://www.clexchange.org/ftp/documents/whyk12sd/Y_1993-05STCriticalThinking.pdf (2009年8月2日アクセス)
*岩崎夏海がドラッカーのマネジメントを論ずるときに用いた比喩(第6回ドラッカー学会大会,旭川ターミナルホテル(旭川市),2011年9月11日)
2012年9月11日
阪井和男・栗山健
306
現代心理学の動向
教師主導型から学習者主導型へ
行動主義
1913年 行動主義宣言(ワトソン)
行動主義的学習観
・客観的な評価基準を設定し,学習者の反応が評価基準
を満たしたかどうかで学習を判定する考え方
・行動をすべて刺激と反応の「条件づけ」で説明
個人能力主義
1960年代 知的活動の情報処理過程のモデル
・学習者個人の能力の向上が志向されている
1960年代後半 認知心理学
学習は理解を通した知識獲得
個人能力主義
・学習者個人の能力の向上が志向されている
認知主義
社会構成主義
教師主導型
1910
1920
1930
学習者主導型
1940
1950
1960
1970
1980年代 ヴィゴツキー(1896-1934)心理学に注目
学習や発達は社会的な関係の中で育まれる
1991年 状況論(レイヴ・ウェンガー)
1999年 拡張された学習論(エンゲストローム)
協調学習,学習環境デザイン,関係論
1980
1990
2000年
佐伯胖(2008年,pp. 2-5)をもとに作図
佐伯胖監修,『学びとコンピュータ ハンドブック』,CIEC編,東京電機大学出版局,2008年8月1日.
2012年9月11日
阪井和男・栗山健
307
学習者主導型:知識の獲得
なま物*としての知識
具
体
的
Learner-directed
凡例
知識
能力
能力=既知から新しい知識を生み出す力
能力の始点と終点には知識がある!
抽
象
的
∴能力は知識と独立に存在しない
「移転可能な能力」は幻想にしかすぎない・・・?
Richmond (1993)のFig. 2を参考に大幅に修正加筆して作図。
Barry Richmond, "Systems thinking: critical thinking skills for the 1990s and beyond", System Dynamics Review,
Vol. 9, no. 2 (Summer 1993), John Wiley & Sons. Ltd., pp. 113-133.
http://www.clexchange.org/ftp/documents/whyk12sd/Y_1993-05STCriticalThinking.pdf (2009年8月2日アクセス)
*岩崎夏海がドラッカーのマネジメントを論ずるときに用いた比喩(第6回ドラッカー学会大会,旭川ターミナルホテル(旭川市),2011年9月11日)
2012年9月11日
阪井和男・栗山健
308
ストーリー化知識の記憶効果
95.2%
93.0%
94.1%
93.7%
93.7%
94.8%
94.8%
94.1%
93.3%
80.0%
80.4%
80%
84.4%
100%
なま物*としての知識
エピソード記憶
「大人の教育学(andragogy)」
ストーリー群
8.1%
8.5%
18.9%
11.5%
9.3%
4.4%
3.7%
3.0%
20%
20.4%
14.4%
ストーリーのない群
13.7%
40%
27.8%
60%
干物*としての知識
意味記憶
「こどもの教育学(pedagogy)」
0%
0
2
4
6
8
10
12
松波晴人(2011年,p. 197)による森敏明・他(1995年)からの引用を修正して加工.
松波晴人,『ビジネスマンのための「行動観察」入門』,講談社現代新書 2125,講談社,2011年10月20日.
森敏明・他,『グラフィック認知心理学』,サイエンス社,1995年. (Bower & Clark, 1969)
*岩崎夏海がドラッカーのマネジメントを論ずるときに用いた比喩(第6回ドラッカー学会大会,旭川ターミナルホテル(旭川市),2011年9月11日)
2012年9月11日
阪井和男・栗山健
309
「知識」と「能力」
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推論分析
可視化の6要素

情動(態度)
 情動に訴えかけること


高い志をもつ,自分と異なる意見に腹を立てない,人の意見を尊重
する,人前で臆しない,追究しつづける,体感する,美と捉える
倫理
 倫理的な行動規範に関わること


崇高な使命を打ち立てる,自分の倫理に落としこむ
知識
 授業内容に固有の知識


ルーブリックが有効
能力=演繹推論,帰納推論,アブダクション
2012年9月11日
阪井和男・栗山健
312
推論分析
知
の
具
現
化
1. 動機:「存在」
2. 事実認識:
事実(としての記述)を把握し認識する
エスノグラフィ,ブルートファクツ,
行動観察,暗黙知の顕在化
演繹推論
Deduction
3. 知の共有機能:
論理的・機械的推論によ
る具体化(具現化),視点
をミクロにズームイン,知
識を詳細化し緻密化する
2. 大前提の設定:
神話,理念,信念,文化,
常識,他の推論結果
1. 動機:「評価」
3. 知の連携機能:
科学的推論による抽象化,
視点をマクロにズームアウト,
知識に汎用性をもたせる
帰納推論
Induction
1. 動機:「意味」
2. 共鳴場:
似たものや異質なものから創発され,
新しい意味を創造する
ひらめき(気づき),アナロジー,
異質なものの新結合
アブダクション
Abduction
3. 知の創発機能:
新結合による仮説生成,視点を
根本的に転換,知識を創造する
知の創造
2012年9月11日
阪井和男・栗山健
313
演繹推論(Deduction) =親の心(P)
大前提から出発して→論理的に推論
 出発点

大前提の設定:神話,理念,信念,文化,常識,他の推論結果
 機能

知の共有機能:論理的・機械的推論による具体化(具現化),視点を
ミクロにズームイン,知識を詳細化し緻密化する
 特徴

論理の飛躍なし:人を説得できる,大前提が真なら結果は必ず正し
い,大前提が間違っていればすべて誤りとなる,状況やトピックスへ
のこだわり
2012年9月11日
阪井和男・栗山健
314
帰納推論(Induction)=大人の心(A)
事実(としての記述)を根拠として→科学的に推論
 出発点

事実認識:事実(としての記述)を把握し認識する,エスノグラフィ,ブ
ルートファクツ,行動観察,暗黙知の顕在化
 機能

知の連携機能:科学的推論による抽象化,視点をマクロにズームアウ
ト,知識に汎用性をもたせる
 特徴

思考の飛躍がともなう:枚挙的帰納法から全称命題へ飛躍的に一般
化,人に納得してもらいやすい,事例が多いほど仮説が真である可能
性が高いという「確証性」やいつでも(時間)どこでも(空間)今のまま
変わらないという「自然の一様性(斉一性)」の原理にもとづく,たった
一つの事例でひっくり返る「帰納の問題」に弱い
2012年9月11日
阪井和男・栗山健
315
アブダクション(Abduction)=子どもの心(C)
既知のものを結合させて→新しい仮説を生成
 出発点

共鳴場:似たものや異質なものから創発されて新しい意味を創造する
:ひらめき(気づき),アナロジー,異質なものの新結合
 機能

知の創発機能:新結合による仮説生成,視点を根本的に転換,知識
を創造する
 特徴

飛躍が著しく大きい不安定な推論:仮説の根拠が人には理解できな
い,制御不能で無意味な思考と見られやすい
※広義の帰納法から枚挙的帰納法を除きアナロジーを含める
2012年9月11日
阪井和男・栗山健
316
推論能力の関心・不安・欲求と
PACモデルの関係
推論 学力ダイアグ 生じる疑
PAC
関心の焦点
不安の駆動
能力 ラム上の向き
問
上向き:「知 how:どう使 「 評 価 」 : 暗 黙 に P 「 こ こ は ど こ ? 」 :
演繹 の 具 現 化 」 えるか
仮定されている
「評価」(あるいは
推論 軸の正方向
「評価軸」に沿っ
既存の価値観)に
た「評価」に関心
たいする不安
下向き:「知 why : ど う 「存在」:ここにあ A 「 わ た し は 誰 ? 」 :
帰納 の 具 現 化 」 な っ て い る る ド メ イン知 識そ
「存在」にたいす
る不安
推論 軸の負方向 の か 、 な ぜ の も の の 「 存 在 」
存在するか に関心
右向き:「知 what : ど ん 「意味」:この知識 C 「 こ こ に い て も い
アブダ
いの?」:「意味」に
の 創 造 」 軸 な意味があ からどんな「意味」
クショ
の正方向
るのか
たいする不安
がもたらされるか
ン
に関心
欲求の駆
PAC
動
AC 自己を高め AC
たいとする
欲求
PAC
AC 他者を愛す NP
る欲求
AC 創造する欲 FC
求
※P:親(Parent)、A:大人(Adult)、C:子ども(Child)、AC:従順な子ども(Adapted Child)、FC:自由な子ども(Free Child)、
NP:養育的な親(Nurturing Parent)
原田康也・阪井和男・栗山健,「『ポスト・エヴァンゲリオンの教理問答』再考」,情報コミュニケーション学会研究会・第69回次世代大学教育
研究会,情報コミュニケーション学会,2012年6月9日.
2012年9月11日
阪井和男・栗山健
317
推論分析
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技術的・物理的・管理
的矛盾
阪井和男,「情報組織を改善するのか、革新を目指すのか?
」,2010年度 第1回第五分科会「大学経営と情報化戦略」
私立大学キャンパスシステム研究会,富士フォーラム(静岡
県沼津市),2010年6月18日,pp. 85-93.
http://www.kisc.meiji.ac.jp/~sakai/presen/csken-dai5-01innovation-sakai-20100618.pdf
トレードオフとは

トレードオフ=技術的矛盾
 技術的矛盾

一つの面を改良しようとすると別の面が悪化する
中川徹,「創造的な問題解決の技法 TRIZ 入門」,第25回次世代大学教育研究会,明治大学
(東京),2008年6月14日.
中川徹,「TRIZ(発明問題解決の理論)の紹介 - 創造的問題解決のための技術思想 -」, 日本創造学会
第23回研究大会(2001年11月3-4日),東洋大学(東京都文京区白山),2001年11月16日.http://www.osakagu.ac.jp/php/nakagawa/TRIZ/jpapers/IntroJCS011104/IntroJCS011104.html (2008年10月18日アクセス)
320
明治大学 阪井和男
2010年5月28日
トレードオフの構造
効
率
性
原点
2010年5月28日
創造性
明治大学 阪井和男
321
技術的矛盾

トレードオフ=技術的矛盾
 技術的矛盾

一つの面を改良しようとすると別の面が悪化する
中川徹,「創造的な問題解決の技法 TRIZ 入門」,第25回次世代大学教育研究会,明治大学
(東京),2008年6月14日.

しめた!必ず解決できる!


問題を緻密に分析し,まず,「技術的矛盾」の形式に表し,さらに再定
式化を繰り返して,「物理的矛盾」の形式に導く手順を明確にした。こ
れをARIZと呼ぶ。
このような状況は,通常で言えば「にっちもさっちもいかない」解決不能
な矛盾である。ところがTRIZは,「物理的矛盾」にまで問題を突き詰め
ると,ほとんど確実に解決できることを示した。
中川徹,「TRIZ(発明問題解決の理論)の紹介 - 創造的問題解決のための技術思想 -」, 日本創造学会
第23回研究大会(2001年11月3-4日),東洋大学(東京都文京区白山),2001年11月16日.http://www.osakagu.ac.jp/php/nakagawa/TRIZ/jpapers/IntroJCS011104/IntroJCS011104.html (2008年10月18日アクセス)
322
明治大学 阪井和男
2010年5月28日
TRIZとは

「発明的問題解決の理論」


創造的な技術開発を支援


技術課題を明確にし, 創造的なヒントが多数
技術革新の歴史から, 「発明の原理」を抽出した技法


“Theory of Inventive Problem Solving (TIPS)”のロシア語の頭文字
世界の特許 250万件を内容的に分析した結果を凝縮
問題解決のために, 科学技術の体系を使える

物理・化学・数学の原理を, 技術目標から逆引き可能
中川徹,1998年11月1日,http://www.osakagu.ac.jp/php/nakagawa/TRIZ/TRIZintro.html#WhatIsTRIZ (2008年10月19日アクセス)
2010年5月28日
明治大学 阪井和男
323
TRIZとは

トレードオフでなく, ブレークスルーを目指す


常識を打破する技術革新の発想と方法


ロシア他では, 大学や高校で専門コースがある
欧州・米国・日本で注目され, 急速に導入


若い人も, 熟練の人も, 発明のための思考を身に
1946年に旧ソ連でG. Altshuller が着想し,
50年掛けて体系化


技術的矛盾を解決した真の発明, 価値ある特許
冷戦終了後から,技術革新の新しい運動に
PC上のソフトツールでTRIZ技法も

知識ベースの各情報が図入りで操作もスムーズ
中川徹,1998年11月1日,http://www.osakagu.ac.jp/php/nakagawa/TRIZ/TRIZintro.html#WhatIsTRIZ (2008年10月19日アクセス)
2010年5月28日
明治大学 阪井和男
324
TRIZにおける矛盾の定義

技術的矛盾
一つの面を改良しようとすると別の面が悪化するとい
うトレードオフの矛盾
 解消法
「矛盾マトリックス」を使って発明原理の推奨を得る
 なぜを5回尋ねる(中川徹,2004年,p. 173)

中川徹監訳,『TRIZ 実践と効用(1)体系的技術革新』,創造開発イニシアチブ,2004年6月30日.
2010年5月28日
明治大学 阪井和男
325
TRIZにおける矛盾の定義

物理的矛盾
システムの一つの面に対して、正・逆の対立する要
求が同時にあるという矛盾
 解消法
「分離原理」を使って解決する
1. 空間で分離する(どこで?)
2. 時間で分離する(いつ?)
3. 条件で分離する(どんな場合に?)
4. 代替システムの移行により分離する

(中川徹,2004年,pp. 203-204)
中川徹監訳,『TRIZ 実践と効用(1)体系的技術革新』,創造開発イニシアチブ,2004年6月30日.
326
明治大学 阪井和男
2010年5月28日
TRIZにおける矛盾の定義

管理的矛盾
期待が技術を超えて,
顧客の期待がシステムの解決能力を超えていると
きに出現する矛盾
 管理的矛盾は,革新の駆動力となる
(中川徹,2004年,pp. 268-269.)

技術が期待を超えている場合は,
クリステンセンのいう破壊的技術の市場参入の機会を導
く (中川徹,2004年,p. 269.)
中川徹監訳,『TRIZ 実践と効用(1)体系的技術革新』,創造開発イニシアチブ,2004年6月30日.
2010年5月28日
明治大学 阪井和男
327
技術的・物理的・管理
的矛盾
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深遠なる知識
深遠なる知識(Profound Knowledge™)

マネジメントの適切な原則を採用すれば、
組織は品質向上と同時にコスト削減できる


1.
無駄、再作業、訴訟沙汰を減らし、顧客満足度を向上させる
鍵は、継続的な改善を行い、製造業を断片の集まりではなくシステムと
みなすこと
システムの理解

2.
品質のばらつきの範囲と原因を知るため、統計的標本化技法を利用する
知識の理論

4.
供給業者、製造、顧客を含めたプロセス全体を理解する
ばらつきに関する知識

3.
二項対立を克
服する知恵!
知識を説明する概念と知ることができる限界(認識論)
心理学に関する知識

2012年1月21日
人間性の概念
http://ja.wikipedia.org/wiki/W・エドワーズ・デミング (2009年11月23日アクセス)
Deming, W. Edwards. 1993. “The New Economics for Industry, Government,
Education”, second edition.
明治大学 阪井和男
330
深遠なる知識(Profound Knowledge™)

体系の各部分は、別々に考えてはいけない
 これらは相互に関連している
 心理学に関する知識は、ばらつきに関する知識なしでは不
完全である

指導者は、個性があることを理解しなければならない
 それは何もランク付けするということではない
 各人に組織内での役割があり貢献していることを理解する
のがマネジメントの責任である
http://ja.wikipedia.org/wiki/W・エドワーズ・デミング (2009年11月23日アクセス)
Deming, W. Edwards. 1993. “The New Economics for Industry, Government,
Education”, second edition.
2012年1月21日
明治大学 阪井和男
331
深遠なる知識
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因果関係とは何か
因果関係の4条件
1.
先後関係(時間的順序関係)

2.
相関関係(共変関係)

3.
「原因」と「結果」に相関関係があり一緒に変化する
非擬似相関(外部変数の制御)

4.
「原因」が「結果」よりも時間的に先行している
第3の要因からの影響がなく擬似相関でない
または、「結果」に影響する他の要因が固定されている
メカニズム解明
 原因と結果を結びつけるダイナミカルなメカニズムが存在
Hyman (1955)(沼上幹,2000年,p.81を参照のこと)
1~3は、ラザースフェルド(Lazarsfeld, 1955)による
Hyman, H. H., Survey Design and Analysis, Glencoe, IL, Free Press, 1955.
沼上幹,『行為の経営学(経営学における意図せざる結果の探究)』,白桃書房,2000年3月6日.
Lazarsfeld, Paul F. 1955. "Foreword." In Survey Design and Analysis: Principles, Cases, and Procedures, by Herbert Hyman. New York: Free
Press.
図.因果関係の4条件
原因

時
刻 因果関係
結果
因果関係がある
= 先後関係がある
かつ 相関関係がある
かつ 擬似相関でない
かつ 媒介メカニズムが解明される
あっても変動しない
時
刻
原因
先後相関
結果
原因
相関関係
要因
原因
原因
メカニズム
×擬似相関
結果
結果
結果
1. 先後関係あり 2. 相関関係あり 3. 擬似相関なし 4. メカニズム解明
先後関係と因果関係

先後関係
 ある事象Aが起きた後に,事象Bが見出される関係



おみくじで凶を引いた後に、悪いことが起きた
雷が光ると、雷が鳴る
因果関係
 ある事象Aが起きることが,事象Bの発生に影響する関係


太陽が昇った後に,気温が上昇した
雷が落ちるから、雷が鳴る。雷が落ちるから、雷が光る。
先後関係と因果関係 – Wikipedia,http://ja.wikipedia.org/wiki/先後関係と因果関係 (2006年3月5日アクセス)
2006年10月2日
明治大学 阪井和男
336
図.雷光と雷鳴
時
刻
雷が光る
先後相関
雷が鳴る
1. 先後関係がある
2006年10月2日
雷が光る
相関関係
雷が鳴る
2. 相関関係がある
雷光の頻度と雷鳴の頻度など
明治大学 阪井和男
337
図.雷光と雷鳴
雷が落ちる
因果関係
時
刻
雷が光る
先後関係
雷が鳴る
雷が光る
相関関係
雷が鳴る
因果関係
擬似相関
雷が鳴る
1.
先後関係がある

第4条件の「メカニズム解明」以前に、因果関係が否定された
2006年10月2日
2. 相関関係がある
雷が光る
明治大学 阪井和男
3. 擬似相関でない
338
図.雷光と雷鳴
雷が落ちる
時
刻
因果関係
雷が光る
先後関係
雷が鳴る
1. 先後関係がある
雷が光る
時
刻 因果相関
雷が鳴る
雷が光る
相関関係
雷が鳴る
2. 相関関係がある
雷が光る
因果関係
擬似相関
雷が鳴る
3. 擬似相関でない
先後関係がある
かつ 相関関係がある
かつ 擬似相関でない
かつ メカニズムが解明
≠ 因果関係がある
メカニズム解明は必要か?

「雷光と雷鳴」の例で見たように・・・
 第4条件までいかなくても、因果関係が否定されることが多い

ところが、さらに・・・
 第4条件がなくても、因果関係が主張されることがある
 「見かけの相関が無いことという規準がしっかり確立されれば、たとえ
媒介メカニズムが分らなくても、因果関係は一般に推測される。」
 Singleton, et al. (pp.86-87, 1993)
 第4条件は「因果関係を立証する最低必要要件の一部ではない。」
 Hirschi and Selvin (1967)
上記の二つはいずれも沼上(2000年,pp.81-82)から引用
Singleton, Royce A., Jr., Bruce C. Straits, and Margaret M. Straits, Approaches to Social Research, (2nd Edition), New York, Oxford University
Press, 1993.
Hirschi, T., and H. C. Selvin, Delinquency Research: An Appraisal of Analytic Models, New York, Free Press, 1967.
沼上幹,『行為の経営学(経営学における意図せざる結果の探究)』,白桃書房,2000年3月6日.
2006年10月2日
明治大学 阪井和男
340
4条件にひそむ二つのモデル
第1~3条件と第4条件は、質的に異なる!
 カヴァー法則モデル*
 第1~3条件からなり、ダイナミクスは問わない
 前提として、時間的な先後関係を求めているだけ
 「同じ論理平面上の集合の包含関係のチェックを行う作業に集中」
(沼上,2000年,p.245)

メカニズム解明モデル*
 第4条件のみからなり、ダイナミクスを問う
 時間の概念が重要
 「時間発展を伴う、プロセスに注目」(沼上,2000年,p.246)
*沼上(2000年,pp.78-83)による命名
沼上幹,『行為の経営学(経営学における意図せざる結果の探究)』,白桃書房,2000年3月6日.
2006年10月2日
明治大学 阪井和男
341
重層的差別化の説明スタンス
カヴァー法則モデル

製品特性による差別化
市場地位の保持
チャネルによる差別化
ブランド・イメージ
メカニズム解明モデル

技術開発の成功
独自技術を武器とした
営業活動による独占的地位の確立
製品特性による差別化
顧客による評価
市場地位の保持
チャネルによる差別化
ブランド・イメージ
沼上(2000年,p.247,図8-4)
沼上幹,『行為の経営学(経営学における意図せざる結果の探究)』,白桃書房,2000年3月6日.
他社による模倣
変革シナリオの相違
社会システム変革のシナリオが異なる!
 カヴァー法則モデル*
 原因側を全面的に同時に操作すべし
 「一気に多重的差別化できるようにすべき」 (沼上,2000年,p.248)

メカニズム解明モデル*
 時間をかけて一歩ずつ、辛抱強く変革すべし
 「時間発展に伴って集中するべきポイントを移動させる提案」
 「まず技術開発に資源を投入し、その成果をもって顧客と流通
チャネルを押さえ、他社の同質化を回避する」(沼上,2000年,
p.248)
*沼上(2000年,pp.78-83)による命名
沼上幹,『行為の経営学(経営学における意図せざる結果の探究)』,白桃書房,2000年3月6日.
2006年10月2日
明治大学 阪井和男
343
メカニズム解明は必要か?

そもそも因果関係とは・・・
 「因果関係を表す『・・・ならば・・・である(ない)』
には時間が含まれているが、
論理の『・・・ならば・・・である(ない)』
は無時間的なものである。」

Bateson (1979, 邦訳,p.78)
(沼上,2000年,p.245より引用)
∴ 因果関係の立証に、メカニズムの解明は必須!
第4条件のメカニズム解明まで満足すべし
 ダイナミクスを明らかにせよ!

Bateson, Gregory, Mind and Nature: A Necessary Unity, New York, Bantam Books, 1979. (佐藤良明訳,『精神と自然:生きた世界の認識論』,
思索社,1982年)
沼上幹,『行為の経営学(経営学における意図せざる結果の探究)』,白桃書房,2000年3月6日.
2006年10月2日
明治大学 阪井和男
344
因果関係と集合論
現実の因果関係の時間発展
カヴァー法則モデル
集合X
時間を無視
集合X
集合Y
集合Y
沼上(2000年,p.246,図8-3)を一部修正して引用
沼上幹,『行為の経営学(経営学における意図せざる結果の探究)』,白桃書房,2000年3月6日.
2006年10月2日
明治大学 阪井和男
345
論理関係=集合の包含関係

論理関係の「XならばYである」が成立する二つのケース
Y
X
X≡Y
X がY の必要十分条件
X⊂Y
X ならば少なくともY である
Y だからといって、X だとは必ずしもいえない
沼上(2000年,p.242,図8-2)を一部修正して引用
沼上幹,『行為の経営学(経営学における意図せざる結果の探究)』,白桃書房,2000年3月6日.
2006年10月2日
明治大学 阪井和男
346
因果関係の考え方の相違
原因
結果
X
Y
カヴァー法則モデル
X
因果関係

経験主義的
 統計的な一般化を重視

Y
メカニズム解明モデル
X


Y
合理主義的
 必然的な因果経路の連鎖
の解明を重視
沼上(2000年,p.79,図3-1)を一部修正して引用
2006年10月2日
原因と結果の関係が、何度
くり返しても安定的に観測
できるなら、ブラックボックス
の中身を開く必要はない
明治大学 阪井和男
沼上幹,『行為の経営学(経営学における意図せ
ざる結果の探究)』,白桃書房,2000年3月6日.
347
社会科学的方法論

経営学における変遷
 解釈学的研究(解釈社会学的研究)

1950~1970年代初頭
メカニズム解明モデル
 実証主義的研究(法則定立的研究、構造機能主義的研究)

1970年代~現在
カヴァー法則モデル
 両者の対話を目指して・・・

「行為の経営学」の提案(沼上,2000年)
変数システム観から行為システム観へ
 「意図せざる結果」の復権へ

沼上幹,『行為の経営学(経営学における意図せざる結果の探究)』,白桃書房,2000年3月6日.
2006年10月2日
明治大学 阪井和男
348
図.因果関係の4条件
原因

時
刻 因果関係
結果
因果関係がある
= 先後関係がある
かつ 相関関係がある
かつ 擬似相関でない
かつ 媒介メカニズムが解明される
あっても変動しない
時
刻
原因
先後関係
結果
原因
相関関係
要因
原因
原因
メカニズム
×擬似相関
結果
結果
結果
1. 先後関係あり 2. 相関関係あり 3. 擬似相関なし 4. メカニズム解明
2006年10月2日
明治大学 阪井和男
349
討議テーマ

次の問題をよく読んで次の各点についてBBS
上で議論せよ。
因果関係が正しく示されているかどうか
2. さらに、ここで提議されている因果関係を示すに
はどのような研究結果が必要か
 次に示す新聞記事(読売新聞,1999年6月18日)
1.
によると、子どもたちが「キレる」行動を取る原
因は、バランスの悪い食事が引き起こす脳の
栄養失調であると主張されている。このことが
正しければ、食生活指導を充実させれば子ど
もたちの「キレる」行動が減ることになる。
読売新聞,「食事乱れて『キレる』?脳の栄養失調が深刻」,1999年6月18日.
2006年10月2日
明治大学 阪井和男
350
討議テーマ
◆食事乱れて「キレる」?脳の栄養失調が深刻
子供たちの乱れた食事が「キレる」行動と関係するのではないか――と文
部省は先週、食生活指導を充実させるよう都道府県教育委員会に対し通
知した。
広島県・福山市立女子短大の鈴木雅子教授も「欠食や、栄養バランスの悪
い貧しい食生活が、子どもたちをいらつかせ、生きる基盤を揺るがしている」
と警告する。その根拠となる研究報告はこうだ。
福山、尾道両市内の中学生の男女計1169人に対しアンケート調査を行っ
た。「毎朝、朝食を食べますか」「1週間に3日以上、大根、ごぼうなどの根
菜類を食べていますか」「ラーメン・カップめんはよく食べますか」など食生活
について13問を質問。一方、健康状態も「いらいらすることが多いですか」
「腹が立つことが多いですか」などと10問に答えてもらい、両者の相関関係
を比較した。
読売新聞,「食事乱れて『キレる』?脳の栄養失調が深刻」,1999年6月18日.
2006年10月2日
明治大学 阪井和男
351
討議テーマ
食生活を良い方からA―Eの5グループに分けた結果、食生活が最も悪い
Eグループの女子全員が「腹が立つ」と答えた。「すぐカッとなる」のは、食事
のバランスが良いAグループの女子は1割に過ぎないが、Eグループでは3
人に2人の割合でいた。友達らを「いじめている」人は、Eグループの男子で
4割もいるのに対し、Aグループでは1人もいなかった。
「脳の重さは全体重の2%程度だが、全エネルギーの20%も消費する大食
漢。脳活動に必要不可欠なミネラル、ビタミン、たんぱく質が不足した食事
をとっているD、Eグループは、脳における栄養失調を起こしている」と鈴木
教授。
食事改善のポイントとして、〈1〉旬の野菜や海藻を多く使い、食材の種類を
増やす〈2〉インスタント食品はできるだけ使わず、使う時は材料、添加物の
チェックする〈3〉でんぷん、たんぱく質、脂質の摂取を6・3・2の割合にする
――を挙げる。
読売新聞,「食事乱れて『キレる』?脳の栄養失調が深刻」,1999年6月18日.
FINE-club, 「 【脳の栄養失調でキレる!?】FINE-club~健康で元気な暮らし情報」,http://www.fine-club.com/child/kids/kireru.html(2006年3
月6日アクセス)
小笠原喜康,『議論のウソ』,講談社現代新書 1806,講談社,2005年9月20日.少年非行の増加、ゲーム脳の恐怖、携帯電話の悪影響、ゆと
り教育批判の4つにおけるウソを検証。
2006年10月2日
明治大学 阪井和男
352
因果関係とは何か
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おわり
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