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中世寺内町の繁栄を、今に残す町
4 中世寺内町の繁栄を、 今に残す町 写真・文:藤井康照 (パナホーム株式会社 代表取締役社長) 奈良県橿原市今井町 環濠と今井町を代表する今西家。民家というよりも城郭の趣だ。漆喰の壁と八ツ棟造りといわれる外観が勇壮である慶安三年(1650)の建築 藤井康照(ふじい・やすてる) 重ね妻の棟が印象的だ。今西家 パナホーム株式会社 代表取締役社 長。1954年奈良県生まれ。1977 年大阪大学工学部電気工学科卒 業。松下電器産業株式会社(現パ ナソニック株式会社)入社。1994 年松下住設機器株式会社、2003 年台湾松下電器株式会社 総経理、 2007年ホームアブライアンス社 副 社 長 を 経 て、2010年4月 パ ナ ホーム株式会社。2010年6月より 現職。2012年 住宅生産振興財団 理事長に就任。 家とまちなみ 67〈2013.3〉 77 河合家と幾筋もの狭い通りで構成される町並み。河合家は東側屋根は入母屋造り、西側は切妻造りという珍しい造りだ 前回に続き、私のふるさと・奈良県の「伝統的建造物 幾筋もの街路も見通しがきく通りはほとんどなく、かつて 群保存地区」を紹介します。伝統的な“家屋”や“まちな この一角が独自の文化圏を築いていたことが窺われます。 み”に触れることで、現代の住まいを見直すきっかけにな 町の中心となるのは「称念寺」というお寺で、中世末期 ればと思っています。 から寺内町として発達したといわれる由緒ある町並みで 今回は、橿原市今井町です。同町は、近鉄・橿原線八 す。江戸時代中期まで南大和地方の商業の中心地として 木西口駅から徒歩約5分という立地。東西600m、南北310 発展しました。現在、約700戸ある住居のうち、国の重要 mのほぼ矩形状で周囲に環濠土居を築いた城塞都市です。 文化財が9件、さらには全体の約8割近くが江戸時代の建 築様式を受け継いでいるという貴重なエリアです。 国の重要文化財に指定されているのは、 「称念寺」の本 堂をはじめ、城郭のようなつくりの「今西家」 、金物商・ 肥料商を営んでいた 「旧米谷家」 、 豪商で鳴らした 「豊田家」 、 ツシ2階建てに改築された「中橋家」等々。ほかにも県や 市の文化財指定の建物がそこここにあります。狭いエリア にこれほどまで歴史的価値のある建物や町並みが整然と 保存されているのは全国でも珍しいと思います。かつてこ の地区だけの独自通貨も流通していたというから驚きです。 コミュニティに配慮した家屋や防災を考慮した街区な ど、現代の住まいづくりにおいても学ぶべきことがありそ 町の中核「称念寺」 。今井町は、この称念寺を中心に建設された「寺内町」だ 78 家とまちなみ 67〈2013.3〉 うな気がしました。 旧米谷家。18世紀中頃の建築 旧米谷家の内部。かまどから座敷を望む 旧米谷家の内部。通風・採光のための越し屋根 通りは、見通しを遮るように、屈折させたものが多い 中橋家。18世紀中ごろから後期にかけての建築。その後、 “ツシ2階”を増築 豊田家。寛文2年(1662年)の建築。2階壁には「丸に木の紋」 。豪商でならしたと したとみられている いう 家とまちなみ 67〈2013.3〉 79