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高校地理教材についての一私見:“地域と社会生活” と “

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高校地理教材についての一私見:“地域と社会生活” と “
Kobe University Repository : Kernel
Title
高校地理教材についての一私見:“地域と社会生活”と“
水産業”を例にして
Author(s)
二木, 敏篤
Citation
兵庫地理,13:47-53
Issue date
1969-03-20
Resource Type
Journal Article / 学術雑誌論文
Resource Version
publisher
DOI
URL
http://www.lib.kobe-u.ac.jp/handle_kernel/90002259
Create Date: 2017-03-29
4?
高 校 地 理 教 材 に っ い て の 一私 見
一"地
域 と社 会生 活"と"水
産 業"を 例 に して 一
二
・木
敏
篤
毎 年 、4月 にな る と希 望 に満 ちて入 学 して くる新八 生 を迎 え る。最 初 の 地理 の
時 間 は 、彼 らの 緊張 と期 待 の入 り混 った異様 な寡 囲 気が 教場 に漂 うものだ が・そ
の期 待 に応 え ・地 理 に興味 を抱 か せ る た めの オ リエ ンテ ー シ ョ ンにい つ も腐 心す
る のは教 師 の誰 もが経験 す る と ころで あ ろ う。
・
高 等 学 狡 の地理 に 澄け る オ リエ ンテ ー シ ョン には 百人 百様 の 方法 が あろ うが、
学 習指 導 要領 にの っ とれ ば ダ地域 と社会 生 活タ が 「全 体 の序 論 的 な役 割 を なす も
の で、 世 界 観(国 土観)の 具体 的 な拡 大 、それ に伴 う人 間 と 自然 との関 係 を歴 史
的 に と らえ て ・ まず学 習 意欲 を刺 戟 す る ことか ら始 め 、次 いで 、 地理 学 習 の最 も
大 きな 目標 は人 間 の各 方 面 の生活 に現 われ て い る地 域 性 のは あ くに あ る こ と;一そ
の た め には 地理 で は これ を 環境 との関 係 に澄 い てみ る こと を理 解 さ せ る」 とい う
目的 で 、 この 内容 を充足 さ せ うるオ リエ ンテ ー シ ョンを お こ な うこ とは 私 には 至
難 のわざ に思 えて ぐる。℃ の指 導要 領 についてめ疑 問 を寺沢 正 己氏 が 雑誌"地 理"
f3}(3)
で と りあ げ 、 更 に そ の 反 論 も出 さ れ た ぷ 、 そ れ 以 上 に 論 議 が 発 展 さ ぜ られ な か っ
た よ うで あ る.寺 沢 氏 は 穐 域 と掻
生 活 〃の 内容 がオ し
・エ ンT一 シ 。 涯
して
妥 当 で な く、1年 の総 ま とめ と して 最終 単 元 に こそふ さわ しい と論 じて い られ る
よ うで ある 。指 導 要領 に正 面か ら取 り組 めば氏 の意 見 に共 鳴で きる ところ も多 い。
しか しオ リエ γテ ー シ ョンは 生徒 に地理 に たいす る興 味 を鞄 か せ 爭れ ば そ れ な り
に一 つ の意義 を認 めて よい と思 って い る し・ この教 材 が ・後 に述 ざ るが批 判 的 精
神 を養 ううえ に格 好 の材 料 を含 ん でい る と思 わ れ る ので ある ・ ただ私 に と っては ・
そ の 内卻 準 間 髄
改 の鰈
縣
の砂
璽
・ 自獺
着 とな 碇
齢
われ⑫
り、 しか もそ れ を 自覚 す らせ ぬ場合 が多 い こと を本 稿 で 問題 と した い ので ある。.
鱒 要 領 ぬ る と"孅
と社 会 生活"は ."地理 的 欄 の拡 大 と纏 思想 の 発達"
"社 会生 活 り地 域 的 相違""自 然 環境 と社会 生 活"の 三 つ の小 項 目ゆ らなって 吟 る。
この うちは じめの"地 理 的視 野 の拡 大 と地 理 愚想 の 発達"は35年
度9改 訂 で新
た に と りあげ られ た もの で あ る。 「世 界観 の具体 的 な拡 大の 過 程 を歴 史 的 な地図
な どを 利用 して理 解 させ る こ とに重 点 をお・
き、地 理 学 史的 記 述は なる べ く簡単 に
ふ れ る程 度 に と どめた い 」 と断 り参 して あ るが 、ヒ の うち"地 理 的 視 野 の拡 大"
48
に つ いて はほ とん どの 教科 書 が大 同小異 で 、 バ ビロニ ア、 ギ リシア 時代 の 地 図 か
らボル トラノ、OTマ
ップ に つ づい て メJLカ トル 図 な どが 図示 され ・ 本 文 は これ
ら諸 地 図の 説 明程 度 の記 述 が なさ れ る にす ぎない よ うで あ る。一
この ほか 、 よ く取
り上 け られ て い るの が 「ヨー ロ ヅパ 人の地 理 的 世界 の拡大 を示 した 地 図 で あ る・
教 科 書 の取h扱 いは 指導 要 領の 精 神 が よ く生 か され て 雜 り・実 際の 授業 で も地 図
を うま く利用 す る こ とが生 徒 に具 体性 を もたせ る うえ に も有 効 で あ り・地 図 を教
材化 して 補 充 す る こ とが望 ま しいが ・そQ選 択 に問 題 が あ る・ 教科 書 を みて よ く
一
ζれ ま でに とLさ
せ られ るの は、ど れ も共 通 して ・ は て これは 日本 の 教科 書 だ
ρた⑱か と首 をか しげ た くなる 内容で ある。 自分 をそ れ ほ ど偏 狭 な国粋 主義 者 と
も,鬯
、
ってい ない が、 これ らの教 材 を通 じて ・ ア ジア に住 む 日本人 が 、歴 史 の流 れ
の なか で どの よ う・
に地理 的 視野 を ひろげ て きたか を どれほ ど埋解 し うる で あろ う
か と悲 しく毒 ρて くる 。勿 論 どの 教科 書 に も行基 図 ・伊能 図 に長 久 保赤 水 の 目本
図 な どが とhあ げ られ ・ 中国 の地 図 な ど もまれ には 示 さ れ てい て 日本や 東 ア ジア
に つい て ご く簡単 にはふ れ て い る」 それ は ま るで刺 身 の つま とい った扱 い方 で、
あ くまで 「ヨ_Qッ
パ 的立 場 」 が中 心 どな って い る。 生徒 も.こち らが 話 して は じ
めて これは 変 だ と気 付 くの で あ る・ ここか ら論 義 を発 展 させ る と教 科 書 中 心 主義
的 教 育 を受 け て き た もの には興 味 を もつ よ うで ある。 しか し自分 な りの 教 材化 を
た て る とな る と資 料 不 足で ど うに もな らず たん なる批 判 に終 って しま うの で ある。
未 だ 日本人 の 祝 点 か ら体 系 的 に ま とめ うる まで研 究 が進ん で い ない どい うの か 、
現 状 で 十 分 と い うの か わ か ら なや が 。 似 た こ とは 世 界 史 に?い
思 わ れ る 。 次 に"地
理 思 想 の 発 達"の
て も矯 え る よ うに
取 りあ げ 方 も指 導 要 領 に した が い ・ 近 代 地
理 学 創 始 者 で あ る フ ン ボ ル ト、 リ ッ ター か ら ラ ッ ツ エ ル 、 ブ ラ ー シxを
中 心.とL
て ご く簡単 に扱 われ 古 い時 代 につ い ては 余 りふ れ られ て い な"。 一
比 藪 的壽 しい独
社 の もの を示 す と 「ラ ッ ツ ェル はく 自然 的環 境 は人 間生 活 に決 定的 な影 響 を 与え
て いる 〉 とと き、 ブ ラ山 シェは ラ ッツエル の 『環境 決 定 論 』 を修正 して 〈 自然豪
境 の可能 性 を人 間 が利 用す る〉 とい う『可能 論 』を 唱 えた 。 そ してく 人 間 生 活 に
鋤 く自然環 境 の 影響 は決定 的 な もの で は な く、社 会環 境 の果 たす 役割 が 重 要 で 、
社 会環境 を と診 して 自然環 境 と入 間 との相 互関 係 を考 え るべ きで あ る〉 と主 張 し
た 」 とあ って 、 これ だ け で ラ ヅLル
、 ブ ラー シ ェの地理 的 左考え 方 を知 る こ と
は 無理 な話 で、 問題 は 単 純 に これ ら地 理 学者 を批 判 が ま し く取 り扱 わ な い こ とで
あ ろ う。 菊地 利 夫 氏は ・環 境 論 は科 学 的 に正確 な理論 では な くボ環 境 論 で 地理 学
i4;
を研 究 して い る人 は ない の で簡単 にふれ る だけ で よい と云 わ れて い る・ 幸 匝 に も
ブ ラー シェの"人 文 地 理 学原 埋"は 容 易 に入 手 で き るの で、文 学書 とち が って 読
49
まれ る ごとの 少 ない 地理書 の唯一 とい って よい古 典 と して深 遠 な地 理 学 の一端 を ・
生 徒 に読 書 指 導す るだけ で意 味 が あ る と考 え て い る。 しか しフ ンボ ルh。 リ ッタ
ー や ラ ッツ ェルの 著 作 を部 分的 に もせ よ知 る こ とが で き ないの だ か らい これ ら先
学 をど の よ うに指 導 すれ ば よい の で あ ろ う.か、環 境論 にた いす る批 判 的論 考 を屡
々発表 され た飯 塚 浩 二氏 がr環 境 論 とか地 理 的 決定 論 とい うと き、人h.は 恐 ら く
殆 ん ど反射 的 に ラ ッツ ェル を聯 想 す る に違 い ない っ新 う した聯 想 を起 こさ せ る罪
の大半 は実 は 通 俗的 な地理 学概 論 の執 筆者達 に ある ので あ るが 、 これ は大 きな間
違 いで 」 あ り 厂所謂 素朴 な環境 論 の批 判者 一 この場 合 ・批 判 者 は環境 論 の 素朴 さ
を批 判 したつ も りで い る、然 し、吾 々か らみれ ば ・.ラッツ ェル の藁 人形 を勝手 に
作h上 げ 、得 々 と してそ れ をや りこめて い る所 謂批 判 者 の方 が素 朴 ・ 改い うよh
は 澄粗 末 に みえ る」 とラ ッツ ェルを環 境 決定 論 者 と して か たづ け る者}ぞ巌 しい批
15)
判 をされ て い るの に注 意 したい 。そ れ に して 亀他 の学 問 で は主要 な古典 作 品 はほ
とん ど邦訳 で接 す る ζ とが で きる が、地 理 学 で は地 理 学 史そ の他 で ほん の さわh
を知 り うるのみ で あ る δ これ らの邦 訳 を渇 望す るの は私 だけ で は ない と思 わ れ る。
"地 域 と社会 生 活"の な1かで の環 境 の取 り扱 いに当 然 の こ となが ら自然 環境 偏
重 の考 え 方 は み られず 飯 塚氏 の 心配 も今は 杞 憂 にす ぎ ない か も知れ ぬ。 ところ が
農牧 業 か ら林業 。水産 業 と進 ん でい くとあ ち こ ちで 環境 決定 論 の娠 怪 が あ らわれ
る。 これ は教 科 書 に 出 てい る とい うの では ない 。地 理 が変 動す る社 会 に即 応す る
た めに は新 しい 生 きた教 材 を用 意せ ね ば な らぬA新 奇 を求 め るば かhが 重 要 と も
い え ぬ が 、新現 象の 原 因を 生徒 と共 に考 え る こ と も授業 内 容 を豊 か に し収獲 も多
N。 昨年 の ノー トが 今 年 も通用 しないの も地 理教 師 の苦 しみで あ 亘楽 しみで もあ
る が。 さて 新 しい 問 題 に接 して 既成 知 識 の枠 に はま りきれ ぬ ときに屡 々環 境 決定
論 が頭 を もたげ る よ うに思 う・この具 体例 と して数 年 前 か ら問題 に な った"ペ ル
ー 漁業"を 中 心 とす る 水産 業 を と りあげ た い。
1963年
・永年 世 界 水産 業 の王 座 を 占め てい た わが 国 を追 い越 して ペ ルー が最
大の 漁 獲高 を あげ た ことは地理 教育 者 に と って シ ョ ッキ ングな事件 で あ った とい
え る。 それ まで 南半 球 の海 は熱 帯 と並 ん で漁場 と して は余 り恵 まれ ない とい うの
が教 科書 な どに通 じる噌貫 した既 成概 念 で あ った ・そ れ が 「突如 と して 」世 界 の
トップ にお・ど り出 た のだか らそ の驚 き も当 然 で あ った。 しか しよ く注 意 して い れ
ば そ の数 年 前か らペ ルー の漁 獲量 が 著 増 しつ つ あ った こ とがわ か る。島 田正 彦 氏
の"南 米 の 漁業"で チ リー 沿岸 か らペ ル ー沿岸 にか けて は大 陸 棚 こそ狭 い がペ ル
is)
一海流 と湧 昇流 の もた らす プラ ンク トンで カ ツオ 。マ グ ロな ど外洋 性 魚族 に富 み ・
近 年合 衆国 の漁 船 が ペ ル ー水域 で 多量 の漁 獲 をあげ、 これ に刺戟 され て1939年
50
の4800ト
ンか ら47年36600ト
ン・52年113000ト
ン とめ ざま し く増加 し
て きてい る こ とを述 べ て い る。 これ は第 二 次大 戦 中 に は じま った 合衆 国 向 け のか
ん 詰 、冷 凍 マ グ ロを主 とす る輸 出 が契機 とな ってい る。戦 後 の経 済 の混乱 期 を脱
す る よ うにな る と 日本 な ど との競 合 に敗 れ そ の輸 出が 大打撃 を うけ る。 これ に代
わ って ア ンチ ョビー(ア ンチ ョベ ー タ).と 呼 ばれ る イ ワシの一 種 か ら生 産 され る
魚粉 の需 要 が大 き くな って くる。 これ は戦後 の ヨー ロッパ で家 畜 の飼 料 に 混入 さ
れ る よ うに な った こ とに起 因 す る 。ほか に養 魚用 飼料 ・肥料 な どに も利用 され て
いる 。ペ ル ーで かん 詰 製造 時 の 魚屑 利 用 と しては じま った 魚粉 加 工 が脚 光 を あび
る よ うにな った ので あ る。今 は わが 国 もこれ を輸 入 して い る。 ペ ル ー漁 業 にρ い
ては 田嶋 久氏 な どが発 表 されてい るので ごく簡 単 にふ れ る に とどめ るが 、約i300
{7}{8,{9}UO)cis),
隻嬾
雪3㎞
以 内 の沿 岸 でわ が 国全 漁獲 量 の1.24倍(1965年)に
あた る漁 獲 を あ
げ(う ち.,が
ア ンチ ョ ビー)、 獲 られ た魚 が 港 に ある ポ ンプ船 に吸 い上 げ られ ・
海 底 を通 ず る パ イ プで 陸上 の魚粉 工 場 に送 られ加 工 され る とい う近代 的 生 産方 式
を とって い る。 ペル ー の世 界一 とい うのは 漁獲 量 で あ って 金額 に換 算 すれ ば 日本
の5.4%に
す ぎぬ とい うこ とは蛇 足 だが付 記 して 澄 く。
、
・
この ペル ー 漁業 の 躍進 を、 どの教 科 書 に も必ず あげ られ て い る漁場 の成 立条 件
か らど う説 明 すれ ば よいの で あろ うか 。 中学 で よ く教 え られ て い るのか 漁 場 の成
立条件 とか こ の条 件 の最 も適 した世 界の三 大 漁場 とか 四大 漁場 につ いて は よ く知
って い る。 四 大漁場 とな る と北 太 平洋 東岸 漁場 が含 ま れ 、最近 の 停滞 ぶhか
ら問
題 だが 、ほ とん どの 教科 書 が三 大 漁場 を使 って 問題 は な くな ってい るaい ず れ に
して も北半球 の中 高緯 度 に あ って 南半 球や 熱 帯 の海 は 比較 的 条件 に恵 まれ ない と
い われ て きた 。最 近 は それ ほ どで もない が 授業 の展 開 の なか で 「なぜ熱 帯 に 、南
半球 の海 に漁場 が発達 しない のか 」 と質 間 して い く と魚 が少 ない とい う自然 条 件
だ けが 前面 に出 て くる ので ある 。そ こで 地 図帳 な どを示 して大 陸棚 の 分 布 は?潮
目は?と 追求 して い くと答 が しど ろ もど ろに な って くる 。今 は熱 帯 や 南半 球 の 漁
獲高 が 伸び て い るの で い く らか 扱い 易 くな って きて い るが。 い つ も思 うこ とだが
"漁 場"な る 語 は 自明 の理 とい うの か何 の 説 明 もな され て い ない
。 世 界大 百 科 事
典 に漁 場 とは 「一 定 の 水域 に ある種 の 水産 生物 が多量 に生 息 して い た り丶 一 時 と
どま って い るか 、通 過 して も次 々に 新 しmが
現 わ れ る な ど して、特 定 期 間 中相
当 多量 の群 が あ って適 当 な方法で 漁 獲 で き 、経 費や 労 力 に対 して 漁獲 物 が 十 分引
き合 うほ ど取 れ る場 合 、 そ の水域 を漁場 と呼ぶ 。漁場 とそ の生 物 の 分布 とは 必ず
し も一 致 しない 。 多量 に生息、して い る場 所 で も遠 くて経 費が 多 くか か 」,価 格 の
安 い場 合 などは経 済的 に引 き合 わ な いので 、漁場 と な りえ な い か らで あ る'(市 餌
sr
龍 資)」 とあ って 、 自然 条件 に左 右 され易 い魚 類 の豊 冨 な とζろの ほ か に重 要 な
ご とで 見落 さ れ て い る のが経 済的 な要 因 で ある。 魚類 で も人 問 に よって有 用 な こ
と、経 済 的 に採取 で きて は じめて 水 産盗 源 と唾 び うる と私 は考 えて い る。 極 論す
れ ば・ た とえ そ の数 は 少 な くて も高価 な もの は採 取 され る な らばそ こが 漁場 と な
り うるの で あ る。"資 源"な る語 も 丁そ れぞ れ の時 代 に澄 いて 人間 労 働 を加 え る
こ とに よ って 有 用 と認 め られ 利用 され てい る 自然 物 」 をさ す もの で一 つ に人 間 が
「つ くる」 もの,:つ ま り人 間 がそ の 存在 に 価値 を与 え ては じめて資 源 となる ので
ある0私 は使 用 す る用 語 を厳 密 に概 念規 定 す る こ とが大 切 で 、 この こ とで混 乱 の
多 くが防 がれ る と考 え る。ペ ルeの 漁業 を例 に とれ ば 沿岸 には 栄養 塩 に富 むぺJk
一 寒流 が 流れ 、
一更 に これ が北 上 中 に南東 貿 易風 を うけ て北a向
さ せ られ 沖 へ
向 け て冷 た い低 層 流 がLL昇 して くるた め プ ランク トンが 多 く魚族 に恵 まれ て いた 。
つ ま り漁 場 と して の 自然条 件 は 決 して悪 い といえ ない海 域 だ った ので ある 。 ただ
ア ンチ ョ ビ〒 は1600万
羽 とい う海 鳥 の餌 に なるば か りで 、 そ の海 鳥 の?く る糞
が グア ノで 間接 的 に 資源 と して の価 値 を有 した にす ぎず 、ア ン チ ョ.ピー 自体 は何
ら水産 資 源 と呼 び うる もの では なか った と考 え る こ とがで きる。 これ が 近年 に な
って 魚粉 と しての 価 値 を見 出 し、e'一'tcを有 す る よ うに な ってペ ル ー漁 場 を発 展
させ た ので ある。 水 産業 とい うの は人 間 の生 産活 動 の 一部 門 で あ って 生産 の主 体
は あ くまで 人 間 なの で ある。.世界 の大 漁場 が漁場 と して の 自然条 件 に恵 まれ た こ
と も重要 だ が・人 間 の 存在 ・つ ま 多社 会条 件 を軽 視 す る な らば時 代 の推 移 に追 い
つけ ない ζとが 論 こ って くるので は あ るま いか 。 この こ とは熱帯 の 漁場 につ いて
もあて は ま る 「熱帯 の 海 は 戛塩 兮 とx;1.'含有 量 とが少 ない ので 胞魚 ρ 量 嫉少 女い
と よ くい われ て きた。 しか し、 この 見 解を そ の まま 支持 す る こ とは む ず か しい ・
とい うの はヘ ル(Herre)に
みれ ば・魚の 種類 が この東 南 アジアの深海 ほ ど豊 富 な
海域 は 、 全 世界 ど こに もな い とい うか らで ある 。…… ジ ャ ワ島の まわ りで通 常漁
獲 され て い る もの で、1500種
をあげ られて い る もので500樫
以 上 、 マ ラ イ周辺 で経 済 的 に有 用で ある と して 名
セ こえ …… 東 南ア ジアの 深海 の漁 業 は 、 日本 の
トA一 ル燈 に よって最 近 商業 的 に開 発 され た の だが 、 ζ こに も驚 くほ どた くさん
の 魚が棲 ん で いる 。 いわ しの大 群 が 、 しば しば さば 、か つ奉 の大群 とい っ し ょに
1° マ イル(1㈲
も帳
さ に な ・て い た ρ が みつ
一(12」
の緲
さ を あげ 、近年 の 漁 業 統計 か ら も漁場 と して無 視 で きえ な くな って きて い る こ と
を知 るめで あ る。
"漁 場 め条件"は
な ど と云 々 して い るの は地 埋 関 係の 者 だけ で ・わ が国 で も水
産業 者 は『195:1年の 講和条 約 調 印後 は遠 洋 漁場 を積壷 的 に開 拓 し1日 本漁 鉛 は全
52
世 界の 海域 で 漁獲 活 勣 を展 開 して診 り、 その あま りの 活躍 が 「この ほ ど ワ%,%ト
ンで開 かれ た 日米 タラバ ガニ交 渉 で ・わ が 国の 向 う二 年 間の 漁 獲量 は過 去 二 年 間
の 約半 分 に削 られ た。 昭和 三 十 八、 九年 ご ろの 実績 に比べ 約三 分の 一 で あ る。 こ
の ことにか ぎ らず ・ こ と しの春 の 日 ソ漁 業交 渉 で ・同 じタ ラバ ガニで散 々痛 めつ
け られ た あ と も、諸 外 国 との 漁業 交渉 は 苦難 の連 続 で あ る。 さ い きん イン ドネ シ
ア ・'瑳一ス トラ リア と結 ん だ 漁業 協定 で は ・そ れぞ れ 入漁 科 金 を払 うこと を義務
づ け られて 語 り、 これ か ら本 格化 する ス ペ イン・モ ー リタニア い さ らに 南米 諸 国
との漁業 交 渉 も知そ らく困 難 を きわ め る ご とに なろ う。 い うま で もな く、 交 渉 の
主題 は 掘手 国が 拡 大 した領 海 や領 海 の外 側 に設 置 した 専 管 水域 ・ さ らに 大 陸 ダナ
の 主権 宣言 など に対抗 して 、 わ が国 の漁 業権 を ど う確 保 す るか に あ る。す で に 協
定 ので ぎて い るワ メ リカ、二1ジ
ー ラ ン ド、'メキ シ コな どは ・期 限つ きな が ら
一 応 わ が国 の 実績 を認 め させ て い るが 、 イ ン ドネ シアの例 で み る よ うに ごん この
交 渉相手 が 低 開 発 国 に移 って ゆ.くにつ れ ・相 当 の代 償 を要 求 さ れ る ことは 覚 陪せ
ね ば なる まい 。・さ らに韓国 は 、'来年 初 め大陸 ダ ナ に対 す る領有 権 を宣言 す る予 定
と伝え られ ガ東 シ ナ海 ギ黄 海 の安 全操 業 や魚 類 資源 の 保 護 を取 決 めてい る 日中 民
間 漁業 協定 も、 今 月末 の期 限 切蕊 を 前 に改 訂 交渉 がで きるか ど うか あや ぶ まれ て
い る。 日本 の 漁業 を め ぐる国 際環 境 は ・一段 と暗 さ をま して 澄 り、 漁業 問 題 は ・
い まや 外交 問 題 に な って い る」 と各地 の海 で追 い つ め られ ・新 漁場 開拓 に 昨年 の
(13).
西 オース トラ リア・ 二sジ
ー ラン ドの海域 か ら本年11月 に は ペ ル_,チ
リ沖
か ら南太平 洋 にか けて 調 査船 が 送 られ た6漁 場 とは 「つ くる」 もめで あ る と との
意 床 は こ こに も よ く示 され てい る。"地 域 と社 会 生活"で の と りあげ 方 に茅 盾 す
る実例 を"漁 場 〆の なか に見た が 、 こ うした危 険 は農 業 や拡 産 資 源 痊ど第 一
∴次産
品 を と り扱 う塲 合 に よh多 い よ うに思 わ れ留意 す べ きで ある 乏思 ってら る。
参考 文 献
(1).寺 沢 正 己
(2}加 々美 謹
高 校地 理 オ リエンテ=ジ ョンへ の疑 問
「教 材の じ知 り」読 後 感
(3)寺 沢 正 己
読 後感 へ の私 見
(4)菊 地 利夫
地 理 の基 本的 事 項 とは なにか
(5)飯 塚 浩 二
地 理学 批 判
(6)島 田正 彦
南米 の 漁業
(7)田
タ ル ー 漁業 の概 報
嶋 久
地 理11-4(1966)
〃11-6(〃)
〃
〃(ク)
地 理 の基 本 的事 項 と計 画
.明 治 図書(1967)
、
帝 国書 院(1947)
人 文 地 理9-5(1957)
地 理9-8
、(1964)
53
(8)田
(9)〃
'鰌
(19教
鳩
久
〃
旨)地
理 学 評 論37-12(1964)
ペ ルー 漁業 の発 展
近 年 の ペル ー 漁業
材 の資 料
〔1オ ドビー
小 掘厳 訳
(13)朝
ペ ル ー 漁 業 の 概 報(要
ペ ルaの
東 南ア ジア
日新聞 社 説
水産 業
〃38-4(1965)
地 理 の 研 究26号(1965)
,地
理 月報129号(1967)
ー
追 い つ め られ る わ が 国 の 漁 業1968年12肩'6・
古 今(,1861)
日・
朝劉
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