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当日配布資料(8.25MB)
セルロースからの簡単な エコ・バイオマテリアル製造法� 生命生命科学部�� バイオナノエレクトロニクスリサーチセンター� 長谷川 輝明 番外編! !・他の多糖への応用(イヌリンの機能化)! !・カードランを出発原料とする6位修飾グルコース誘導体の製造法! 材料としてのセルロースの可能性� セルロースの長所� ・植物細胞壁などとして自然界に大量に存在� ・生分解性� �→エコマテリアルとして有用� ・分子内に多数のキラル炭素� ・テープ状もしくは伸びたらせん状構造� ・安価に入手可能� �→キラルマテリアルとして有用� セルロースの短所� ・構造材としての堅牢性の他には機能を有さない� ��→「機能」の欠如� 地球環境に優しい「機能性エコマテリアル」! としてセルロースを活用するためには、! セルロースに対する化学修飾! (機能性基の導入)が必須� R = H or 機能性ユニット� 長所 ・合成が簡便で、短い合成ステップで目的物が得られる ・多様な機能性基が導入可能 (シクロデキストリンのような嵩高い機能性基も導入可能) ・高分子量のセルロース誘導体が得られる� 短所 ・位置選択性が乏しい (分子内水素結合 & 立体構造が破壊される) ・繰り返し単位ごとに構造が異なる (得られた誘導体の詳細な構造が不明)� 加水分解酵素� 加水分解酵素� S. Kobayashi et al., MRC, 1994, 751! 長所 短所 ・明確な多糖構造が構築できる ・構造を自在にデザインできる ・周期構造も構築可能� ・モノマー合成に多段のステップが必要 (糖合成の専門家のみ参入可能) ・修飾基の位置やサイズによっては酵素反応の基質とならない (メトキシ基等の小さな官能基のみ導入可能) ・高分子量の機能性多糖が得られない (酵素の逆反応により重合度が低い)� 位置特異的な多糖修飾法確立に向けた我々のアプローチ! ! �カードランに対する取り組み� ! Cu+, ascorbic acid, ! propylamine� T. Hasegawa, S. Shinkai et.al, Carbohydr. Res. 2006, 341, 35 ! Top 25 most cited article�(2005-2008)� 完全なる6位選択性 & 100%の転化率! !→�構造の明確な多糖誘導体! 直接修飾による簡便な合成経路! !→サンプル瓶内で混ぜるだけ! !→脱水&脱酸素等、シビアな反応条件は不必要! 様々な機能性ユニットに応用可能(DMSO中で反応可能)! !→イオン性基から疎水性残基、シクロデキストリンやポルフィリン等の嵩高いものまで! CUR-αCD! CUR-βCD! (非イオン性・親水性)! ドラッグデリバリー 超親水性 CUR-N+(イオン性・親水性)! 蛍光性 CUR-Pr(非イオン性・疎水性)! 細胞・ウィルス認識 CUR-Lac(非イオン性・親水性)! レドックス活性 CUR-Fc(非イオン性・疎水性)! 太陽光捕集 CUR-Por(非イオン性・疎水性)! これらはすべてセルロースにも導入可能� アジド化セルロースの合成! Cel�(DPn = 280)! (1) LiCl, in DMAc, 80 ℃! (1) DMAc, 70 ℃! (2) PPh3, DMAc, r.t., 4 h! (3) CBr4, 60 °C, 24 h! (2) NaN3, in DMAc → in DMAc/DMSO, 85 ℃, 42 h! Cel-Br! Cel-N3! Cel-N3! in DMSO-d6, 60℃! セルロースに対するオリゴ糖ユニットの導入� CuBr2, ascorbic acid, propylamine, DMSO, r.t., 14 h� Cel-N3! Cel-benz-Lac! Cel-benz-Lac! in DMSO-d6, 60℃! 糖修飾セルロースの水溶性� 実験手順� 最大溶解度! 糖修飾セルロース� &� 脱イオン水� 60 ℃, 12 h! 遠心分離� 上清� 沈殿� フェノール硫酸法� による糖濃度測定� Cel-benz-Mal! オリゴ糖の導入により高い水溶性を示した� Cel-Mal! マルトース修飾セルロースのタンパク質認識能� 実験手順� FITC-ConA! Cel-Mal滴下� 蛍光強度が変化! Cel-Mal を加えると FITC-ConA の蛍光強度が減少� ConA! ConA! Cellulose! 相互作用なし! ConA! Cel-Mal! 強く相互作用! オリゴ糖の導入により選択的なタンパク質結合能を付与できた� 結論� ・セルロース6位を選択的かつ定量的にアジド化した「6-アジド-6-デオキシセルロース」を 簡便に合成し、末端アルキンを有するオリゴ糖モジュールとの環化付加反応により、オリ ゴ糖修飾セルロースを得た。� 6位に100%� 明確な構造� 簡単に合成可能(混ぜるだけ!)� ・オリゴ糖修飾セルロースは、オリゴ糖由来の選択的かつ強い糖認識タンパク質認識能 を有し、導入したモジュール由来の「機能」をセルロースに付与可能なことが分かった。� 機能基に由来した機能を付与� ・本手法は様々なオリゴ糖やその他の機能性基(蛍光性・レドックス性・・・)に適応可能で あり、これにより多様な機能性セルロース群が創成できる。� 無限の発展性� シアル酸導入→�インフルエンザウィルスを認識するセルロース� Gb2糖鎖������→�病原性大腸菌O157由来ベロ毒素を捕捉するセルロース� 他にも、「キラル分割剤」や「高分子蛍光塗料」・・・� 出願特許:�「セルロース誘導体」(特願2008-162015)! !出願人:学校法人東洋大学 ! !発明者:長谷川輝明・山下恵里佳� 核酸塩基部位と四級アンモニウム塩部位のセルロースへの同時導入 ・核酸塩基 ����→�SWNTとの強い相互作用 ・N+側鎖 ����→�高い水溶性 dT! N+! SWNT! ・セルロース主鎖から 交互に側鎖部分が配置 SWNT+Cel-N+/dT! Cel-N+/dT! N+ Cel-N3! Cel-N+/dT! Cel-N+/dTとSWNTの相互作用 AFM image (mica)� Cel-N+/dT sonication� SWNT� Water� SWNT only SWNT分散水溶液� N+ Cel-dT Cel-N+40%/dT60% dT Cel Cel-N+20%/dT80% まとめ� ・セルロースにデオキシチミジンを導入した 多糖に規則正しく核酸塩基を導入した初めての例� ・デオキシチミジンと、四級アンモニウム基を共導入したCel-N+/dTを合成 ・Cel-N+/dTはSWNTと相互作用してSWNTを水溶化する� SWNT水溶化剤� 生体適合性?� 出願特許:�! 「親水性基とπ平面性構造を有する分子の残基が導入されたセルロース誘導体」! (特願2009-288235) ����出願人:学校法人東洋大学����発明者:長谷川輝明、川越奈津美� セルロース6位にピレンを導入したらどうなる?� 【フラーレン】 多数の炭素原子で構成されるクラスターの総称 (C60,C70,C82,C84) 【一次元配列化したC60】� 連続的な電荷分離状態の形成 電子の連続的な移動が可能� ナノレベルの電線として利用可能 ?� David S. Dwak et al. J. Am. Chem. Soc. 2006, 128, 13976-13977.! Yoko Izumi et at. Chem. Commun. 2010, 46, 1293-1295.� セルロースを利用したフラーレンの一次元配列化(概念) 3位の水酸基と環酸素の間の水素結合��→���規則正しいテープ状直鎖構造� 規則正しい繰り返し構造を持った化合物の合成が可能� フラーレン直径� =� ピレン残基間距離� フラーレンと親和性の高いピレンの導入により、フラーレンの一次元配列化が可能では?� フラーレンとピレン修飾セルロースの相互作用� 蛍光スペクトル� ピレン修飾セルロースから フラーレンへの 蛍光共鳴エネルギー移動 (FRET)� 両者が近接� フラーレンがピレン残基に挟まれて セルロース骨格上で一次元配列 Ex = 349 nm! d = 10 nm! Temp = 20 ºC ! まとめ� 我々の手法を用いると、ピレンを規則正しく多糖へ導入できる! セルロース骨格上の隣接ピレン残基間距離はフラーレン直径とほぼ等しく フラーレンに対する親和性が高い。ピレン修飾セルロースにフラーレンを 添加することで、両者からなる高分子複合体ができた。! フラーレンが2セルロース骨格上に一次元配列していることが示唆される。! =� フラーレン直径� ピレン残基間距離� フラーレン添加� ピレン修飾セルロース 複合体� セルロースに関する研究の総括� 構造の明確なセルロース誘導体! !・セルロース由来の生体適合性�→ 医療材料・! ! !〃 !立体規則性�→ 光学材料・キラル分割剤! ! !〃 !生分解性 → エコマテリアル! 簡便な合成経路! !・サンプル瓶内で混ぜるだけ! !・脱水条件や脱酸素条件等、シビアな反応条件は不必要! 幅広い応用! !・様々な機能性ユニットに応用可能(DMSO中で反応可能)! !・イオン性基から疎水性残基! !・シクロデキストリンやポルフィリン等の嵩高いものまで! 問題点! !・明確な構造制御は可能だが、化学修飾のために大量の有機溶媒が必要! !本手法は環境に対する負荷�&�生産コストが高い! !→�「高付加価値製品」に応用が限定! カードランを出発原料とする6位修飾グルコース誘導体の製造法� 糖誘導体の使い道� ○ 酵素の生理活性解明のための基質� ○ 薬剤製造のための原料�� 糖誘導体と価格� 6-Azido-6-deoxy-D-glucose! 6-Amino-6-deoxy-D-glucose! 10 mg: ¥ 16,000! 25 mg: ¥ 29,000! 250 mg: ¥ 57,000� 50 mg: ¥ 18,000! 150 mg: ¥ 29,000! 250 mg: ¥ 61,000� 6-(4-Azido-2-hydroxybenzamido)-6-deoxy-D-glucose! 1 mg: ¥ 38,000! 5 mg: ¥ 113,000! 10 mg: ¥ 184,000� 糖誘導体は非常に高価� 従来の合成方法(単糖から合成)! 60 %� 50 %� 58 %� シリカゲルカラムクロマトグラフィーによる精製� �→ mg スケールでの合成が限界� 50 %� Total yields: 8 %� 50 mg: ¥ 18,000! 150 mg: ¥ 29,000! 250 mg: ¥ 61,000� 本研究で開発した合成方法� メタノールを用いた再沈殿による精製� !→�5�g�以上のスケールで合成が可能� Total yields: 86 %� 出願特許:�! 1. 「セルロース誘導体」! (特願2008-162015) �出願人:東洋大学 �発明者:長谷川輝明・山下恵里佳� 2. 「親水性基とπ平面性構造を有する分子の残基が導入されたセルロース誘導体」! (特願2009-288235) �出願人:東洋大学 �発明者:長谷川輝明・川越奈津美� 連絡先! 東洋大学! 知的財産・産学連携推進センター知財管理アドバイザー! 野原�時男! Tel: 03-3945-7008 e-mail: [email protected]� !Fax: 03-3945-7906!