...

10 環境・食品安全・歴史遺産の経済学 寺脇 拓

by user

on
Category: Documents
23

views

Report

Comments

Transcript

10 環境・食品安全・歴史遺産の経済学 寺脇 拓
クラス番号
演習テーマ
10
PHOTO
環境・食品安全・歴史遺産の経済学
教員名
寺脇 拓
①教員紹介
専門は環境経済学です。主に環境の価値を経済学的に評価する研究を行っております。環境資源をいかに適切に管理していく
かについて大きな関心をもちますが、決してエコロジストではありません。瀬戸内海をスナメリが泳ぐ光景に価値を見出す一方で、
臨海工業地帯の上を高速道路が走る風景を美しいと感じる美意識をもちます。人となりは http://www.taku-t.com/をご覧くださ
い。
②研究テーマ
環境・食品安全・歴史遺産―これらは通常、市場で取引されないために価格がつきません。しかし、価格がつかないからといって価値が無いわけでは
ありませんよね。地球温暖化が問題になるのはなぜでしょうか。オーガニック食品が市場に出回るのはなぜでしょうか。アンコール遺跡の修復が行われ
るのはなぜでしょうか。それは個人や社会が環境や食品安全性、歴史遺産に価値を見出しているからに他なりません。当ゼミでは、こうした市場で取引
されない財、いわゆる「非市場財」の価値に注目し、それらを実際に金銭的に評価することに取り組みます。具体的には、二回生の後期に、(1)生態系
(琵琶湖、里山など)
、(2)食品属性(遺伝子組み換え、産地など)
、(3)歴史文化遺産(町屋、祭りなど)
、(4)環境・健康新商品(リサイクル素材、自然
素材など)の四つのテーマに別れてアンケート調査を実施し、その結果から非市場財の経済評価を行います。
こうした研究は、非市場財の価値を市場経済システムの中に適切に組み込むことを目的に行われます。例えば、ある経済活動が大きな経済利益を生み
出す一方で、環境に対しては大きなダメージを与えるような状況を考えてください。このとき、社会的には両者のバランスをどのようにとるのかが問題
となります。しかしそのままでは経済利益と環境へのダメージを比較することができません。なぜなら、経済利益が貨幣単位で表されるのに対して、環
境へのダメージは様々な物量単位で表されるからです。そこで環境の金銭評価が必要になります。環境へのダメージを金銭的に評価することにより、
「環
境」と「経済」が比較可能になり、それらを同じ土俵の上で戦わせることができるようになるのです。
非市場財の代表は「環境」です。こうした非市場評価の研究は、環境を金銭的に評価する研究から始まりました。そしてその「環境評価」とよばれる
研究領域は、
「環境経済学」というより大きな学問体系の中で、それを構成する一つの領域として位置づけられています。そこで当ゼミでは、非市場財
の評価を行うだけでなく、その理論的背景となる環境経済学についても幅広く勉強します。また、三回生の後期には、自分で研究テーマを決めて、論文
の作成に取り組んでいただきます。
③ゼミの運営方法
二回生前期:環境経済学のテキスト輪読(前半)
グループに分かれて環境経済学のテキストを輪読します。環境問題に対する経済学的な考え方と、非市場財の評価手法の概要を学びます。
二回生後期:非市場財の経済評価研究
非市場財の評価手法やそのための統計分析の方法について講義し、パソコンを使った演習をやりながら、非市場財の評価研究に取り組みます。現時点
では、グループを(1)生態系、(2)食品属性、(3)歴史文化遺産、(4)環境・健康新商品の四つにわけ、それぞれ具体的な対象を決めて、それらの評価に取
り組んでいただくことを考えています。
三回生前期:環境経済学のテキスト輪読(後半)
グループに分かれて環境経済学のテキストを輪読します。評価の問題からはなれて、
環境政策の経済学的な意味と国際的な環境問題について学びます。
三回生後期:論文作成
各自で三回生論文のテーマに取り組み、その結果を報告していただきます。テーマは環境、食品安全、歴史遺産に少しでも関係していれば何でも構い
ません。
課外活動
コンパ、合宿、旅行などの課外活動については、基本的にゼミ生のみなさんで自主的に取り組んでください。もちろん私も全面的に協力します。
④使用テキスト
〔テキスト〕
バリー・C・フィールド著、秋田次郎・猪瀬秀博・藤井秀昭訳『環境経済学入門』、日本評論社、2002。(Field, B. C. and M. K. Field, Environmental Economics: An
Introducton 4th ed., McGraw-Hill/Irwin, 2006.)
青山吉隆・中川大・松中亮治『都市アメニティの経済学−環境の価値を測る−』、学芸出版社、2003。
⑤前年度のゼミテーマ例・ゼミイベント等
〔ゼミテーマ〕
琵琶湖における水質改善の社会便益−支払意思額と労働貢献量の比較−
京都における LRT 導入の政策評価
自動車価格のヘドニック価格分析
歴史文化遺産の経済評価−白川郷と彦根城の事例−
〔ゼミイベント〕
白川郷で木を植える人になろう!−ついでに調査も−(旅行期間:9/20∼9/22、宿泊場所:トヨタ白川郷自然学校、活動内容:ナイトハイク、植林、アンケート調査)
⑥取得するのが望ましい科目
環境経済学は主にミクロ経済学をその基礎におく学問ですので、「分析ツール」(あるいは「経済数学」)、「基礎ミクロ経済学」の単位取得が強く求められます。また、非
市場評価の方法論として、社会調査や統計学を使いますので、「社会調査入門」、「計量経済学 I」の履修も望まれます。
⑦受講生に望むこと
あらゆる研究には客観性が求められます。客観性をもつということは、自分の考えが主観的であることを認識するところから始まると私は考えていま
す。自分の考えが全てではなく、当然違う考えがあることを認める客観性をもってください。そこが社会科学の研究の出発点です。環境が大事だと考え
る人もいれば、そうでない人もいるのです。ちなみに私はウニが嫌いです。そんな人もいるのです。
Fly UP