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本当の幸せとは・・・
2010 青年ボランティア・アクション in フィリピンに参加して 本当の幸せとは・・・ フィリピン・・・そう聞いて連想するのは、貧しい人々がたくさんいるということ、スモ ーキーマウンテンがあるということだった。高校1年生のとき、私たちのクラスには DJ というフィリピン人の男の子が留学生として来ていた。そのこともあり、フィリピンの貧 困層の人々について学び、フィリピンの人々が厳しい生活を強いられていることは、 知識として知っていた。しかしそれは、現実味を帯びている訳でもなく、ただ遠いどこ かで起こっている出来事としかとらえてなかった。フィリピンでのこの一週間はそんな 私にたくさんの衝撃、感動、そして何より、生きていく上で本当に大切なことは何かを 教えてくれたように思う。 2日目、マニラのホテルをバスで出発して少しすると、そこには、今まで写真でしか 見たことのなかった世界が広がっていた。私は、言葉が出なかった。今まで遠い世界 のことだと思っていたことが、目の前に広がっていた。粗末な家、大量のゴミ・ハエ、生 ゴミの腐ったような悪臭、そして、やせ細り薄汚れた服を着ている子供たち・・・。こん な生活を強いられている彼らはかわいそう、そう思ってしまった。しかし、交流を通して、 子供たちの暖かくてキラキラした眩しい笑顔に、最初はこわばっていた顔が自然と笑 顔になっていくのが分かった。無邪気に笑い手を振ってくれる彼らに、私はたくさんの 元気をもらった。 特にホームステイという貴重な体験は、一番印象に残っている。急遽参加させてい ただくことが決まったこともあり、迷惑じゃないか、とても心配だった。しかし、ホストフ ァミリーであるジェニファーの家族はそんなわたしも暖かく迎えてくれた。9人兄弟とい う大家族で、終始笑顔の絶えない、一緒にいるだけで楽しく、明るくなれる、そんな家 族だった。みんなでカラオケをしたり、チョコラテを踊ったり、バスケしたり、鬼ごっこし たり・・・。食事もとてもおいしくて、おいしいおいしいといいながらみんなでずっと笑っ ていた。家族のそれぞれの将来の夢の話もした。お父さんは毎日3回食事をすること。 ジェニファーは会計士。妹はキャビンアテンダント。自分の夢を恥ずかしがりながらも 笑顔で答えてくれたことがとても嬉しかった。お金がないから夢を持つことが出来ない、 そんな話を聞いたことがあったが、みんなすばらしい夢を持っていて、そんな彼らの夢 を心から応援したくなった。また、ジェニファー一家のすぐ近くには、スモーキーマウン テンがある。後から聞いたことだが、ジェニファーもそこで母の手伝いをしながら、学 習支援を受け大学に通っている。学歴社会のフィリピンでは、大学を出ないとちゃんと 就職が出来ない。ジェニファーは、学習支援がなくなったら私は大学に行くことが出来 なくなり、夢も叶わなくなってしまう、と言っていたそうだ。底抜けの笑顔の裏に隠され た悲しい事実。夢を叶えるためにはお金が必要という現実。SYD の活動がどれだけ 子供たちに夢と希望を与えているのか、痛感した瞬間だった。 私はこの1週間を通し、本当の幸せとは何か考えさせられた。確かに日本人は恵ま れている。綺麗な服を着て、大きな家に1人1部屋、毎日の食事にも困らない。学校に 行き、好きなことを勉強して、みんなそれぞれなりたいものや夢も持っている。しかし そんな生活が当たり前になって、親や他人に対しての感謝を忘れ、人と人、また家族 の間の結びつきが薄れている。食べものも平気で残し、粗末にする。対照に、お金が ない、家も狭くぼろぼろ、毎日の食事にも困るが、両親を尊敬し、家族みんなで協力し、 支えあいながら生きているフィリピンの人々。どちらが本当の幸せなのかと聞かれた ら、今の私は後者のように思う。恵まれた暮らしと幸せは一緒ではないと気づかされ た。フィリピンに行く前は、お金がない=かわいそう、という偏見が自分の中にあった。 多くの日本人の中にはこのような考えがあるのだろう。しかし今、自分の目でフィリピ ンの現状を見て来て、お金がなくても、そんなの関係ないかの様にキラキラした笑顔 で笑う子供たち、ジェニファー一家の家族の絆を目の当たりにし、自分の今までの考 え方が 180 度変わった。そんな大切なことに気づかせてくれたフィリピンの人々にとて も感謝している。また、今回この活動に参加するに従って、許可をくれた両親にも、心 からありがとうと言いたい。 これから私は、「見た責任」を果たさなければならない。今私に出来る事、それを見 つけることが第一歩だと思う。1人でも多くの人を笑顔にする、そのために私もなにか 出来るはずである。これからの生活の中で、今回このフィリピンでの1週間で学んだこ と・感じ取った事を忘れず、自分に出来ることを捜して「幸せの種まき」をしていきた い。 2010 年 3 月卒業 SS (国際教養科 6 期生)