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Succession of Professional Technology and Bringing

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Succession of Professional Technology and Bringing
シリーズ 未来を担う人づくり
専門技術の伝承と後継者の育成
─日産自動車パワートレイン生産技術本部における森田塾教育体系─
日産自動車 ㈱ 森 田 司
エキスパートリーダーとして専門領域のあるべき姿を描き、個々人の専門性を中長期視点で高め、
継続的な成長に繋がることを目的とし、強い専門家集団を形成するための教育を紹介する。
1.はじめに
(1)会社概要
会社概要を表 1、主要製品を図 1 に示す。
表 1 会社概要
沿革
1933 年
横浜市に自動車製造㈱として設立し、翌年、日産自動
車㈱に社名を変更
1935 年
横浜工場組立 1 号車(ダットサン 14 型)オフライン
日本初の自動車一貫生産工場として稼動開始
1956 年
日本初のエンジン加工用トランスファーマシン設置
1965 年
座間工場完成に伴い、横浜工場はエンジン、サスペン
ションなどユニット生産の専門工場化
1968 年
東京・東銀座に本社機能が移転
1977 年
触媒製造工場が操業開始
1982 年
久里浜工場完成
1986 年
アルミ部品用製造工場が完成
1992 年
世界最大級の 8,000 トン鍛造プレスライン設置
1997 年
エンジン生産累計 3,000 万基達成
日本プラントメンテナンス協会の TPM 特別賞授賞
1998 年
YD 型直噴ディーゼル・エンジンの生産開始
国際規格「ISO9002」(品質保証)、「ISO14001」(環境
マネジメント)の認証取得
新型プリメーラ用 QR 型エンジンの生産開始
高速マシニングセンターを使った FTL(フレキシブル・
トランスファー・ライン)が稼動
新型シーマ用 VK 型エンジンの生産開始
2001 年
新型スカイライン用に日本初のアルミ溶接構造のサス
ペンション・メンバーの生産開始
2002 年
久里浜分工場の生産停止、横浜工場へ生産集約
生産廃棄物のリサイクル率 98.9%達成
2003 年
ゲストホール・エンジン博物館完成
神奈川県地域共生工場表彰を受賞
2004 年
新型ラフェスタ用 MR 型エンジンの生産開始
横浜市より「環境保全活動賞」受賞
2006 年
横浜市より「ヨコハマは G30」行動推進事業者受賞
2007 年
新型 NISSAN GT-R 用 VR 型エンジンの生産開始
ゲストホールの建物と収蔵品が経済産業省より近代化
産業遺産の認定を受ける
図 1 主要製品
当社は 1933 年この横浜の地に創立し、1935 年に当
工場の稼動を開始した。現在の横浜工場はエンジンや
サスペンション・アクスル部品を一貫生産する主力ユ
ニット工場である。
サスペンション・アクスル技術 Gr は開発から生産
準備立ち上げまで一気通貫でものづくりを実施してい
る部署である。軽量化や操縦安定性などのニーズにこ
たえるべく革新的な技術を提供し続けている。
(2)教育の理念
私たちサスペンション・アクスル技術 Gr. は業務領
域の拡大に伴い、一人一人が知識の幅を拡大する必要
があり多能技術員化を目指している。
また、高度専門家を育成するにあたり、バランス感
覚や長期的なビジョン、組織のアウトプットを重んじ
る人づくりに力を入れている。
(3)教育の歴史
いままでは各固有技術の教育を重点におき、人材を
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図 2 森田塾教育体系
育成してきたが、全体最適で見る人材育成ができな
業務を表わしており、ひとつの専門性だけでなく、全
かった。2006 年エキスパートリーダー制導入にあた
体を見る視点でものを考える必要があり、そこでプロ
り、専門性が高く、商品軸を視点として捉えることが
セスと共に人材を回しながら専門的な知識を拡大して
できる人材育成をタスクとして森田塾を開講するこ
いくことを実施している。
とにした。
講義内容については森田塾の講義についてパート1
2.教育の内容
図 2 に森田塾の教育体系を示す。森田塾では各教育
の内容をサイマル編、プレス編、溶接編、塗装編、圧
入編、加工・組み立て編に分けて講義を行っている。
多能技術員化を目指す理念のもと、どの技術員に対し
ても同様に一貫した教育を行っている。図 3 は Gr. の
から3にかけて講義を受けた受講者の意見を取り入れ
内容を充実させている。
(1)サイマル編
コストの 80%は図面で決まる。製品開発の段階で
コストの源流管理とコストのつくり込みのプロセスが
重要という考えの下、技術家の心構えを重点に講義を
行っている。
① デザインする者はものづくりを知るべし
② コストに挑戦する者はコストを知るべし
図 3 サスペンション・アスクル Gr. の一気通貫体制
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図 4 生産設計で考えるべき課題
シリーズ 未来を担う人づくり
写真 1 講義風景
写真 3 プレス編の講義風景
(3)溶接編
部品を接合し製品として完成させるのにもっともポ
ピュラーな溶接工法のアーク溶接を中心に、溶接方法、
溶接の種類、溶接機、溶接施工、溶接部の検査方法、
今後の溶接思想などを講義している。ここでも溶接の
みで考えることなく、過剰なプレス品品質にならない
ように配慮し、効率を向上させることを学ぶ。
写真 2 サイマル編の講義風景
③ 納期も大事だがデザインの質が大事であることを
知るべし
④ 生産現場の実態を知るべし
⑤前後工程を知るべし
各工程の考え方を当たり前から本当に必要なのか、
やめられないのか、違う方法はないのかを徹底的に教
写真 4 溶接編の講義風景
えている。現状に満足せず、変わらないと生き残れな
いと言う意識でのどこを攻めるべきかを講義している
(図 4)。
(4)塗装編
製品の防錆のために主にカチオン電着塗装を用いて
(2)プレス編
いる。この電着塗装を中心に塗装の原理、塗料、塗装
部品を作るうえでもっともポピュラーな塑性加工技
工程、前処理、規格、塗装重量の算出、塗装工程の投
術であるプレス成形をその特徴から、基礎、材料、形
資について講義している。
態、種類、圧型構造、工程、品質不具合、型表面処理、
経済性にまでおよび講義を行っている。また、製品は
プレスのみで終わることなく、溶接されて初めて完成
(5)圧入編
サスペンション・アクスル部品で車体に対する防振、
品となることを強調し、プレスと溶接で互いに補完し
操縦安定性の向上に必要不可欠なブッシュ、ボール
あい効率を向上させることをここで学ぶ。また、プレ
ジョイントの締結に使われる圧入についてその機能、
スの新しい技術の紹介やコスト削減の方法についてあ
種類、圧入力と抜け力の関係、締めしろの設定要領、
らゆる事例をビデオと現物にて見せることにより創造
品質不具合事例、これからの圧入機に求められる姿
性を高めることもあわせて行っている。
までを講義している。
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(6)加工・組み立て編
サスペンション、特にアクスル部品には機械加工が
3.教育受講者の声
用いられる。加工工具の種類、治具仕様、加工工程設
サイマル編受講者 A:製品に対するコストの考え方
計をここで学ぶ。また、どうしたら加工が減るのか、
が良くわかった。原低に対するものの優先順位等、参
減らす工夫を行った事例なども紹介している。組み立
考に出来る部分が多かった。今後のサイマル業務に活
てにおいては部品の種類削減方法や作業性などの生産
かしていきたい。
性についての講義を中心に実施している。
プレス編受講者 B:プレス品のコストの内訳が良く
以上の講義を受けることにより、サスペンション・
わかった。自分は現在溶接に携わっているが、今後の
アクスルの技術を学ぶことができ、仕事を行うにあた
業務に役に立つことが得られた。
り、自分の扱うものをすべて知ることができるように
なっている。
溶接編受講者 C:溶接の仕組み、工程、困りごとが
良くわかった。現在プレス業務を行っているが、参考
にし溶接を助ける業務を行っていきたい。
加工・組み立て編受講者 D:前後工程のことをよく
知ることにより、いままでのあたりまえの世界が当た
り前ではなくなり、発想が広がった。
4.おわりに
森田塾開講から3年が経ち、特定の固有技術だけで
はなく、その前後工程の技術知識をもった技術員も順
調に増えており、商品軸としてすべての知識を持った
ものづくり家集団を構築するために教育を推進してい
写真 5 加工・組み立て編の講義風景 1
る。森田塾は、専門知識はもとより経験談からくるブ
レイクスルーのためのアイデアや現状打破へのヒント
や気付きを与えることと技術員の柔軟な発想力を向上
させることを目的としている。ものづくりは人づくり
であるため、幅広い知識を持った人材が果敢にチャレ
ンジを行い会社に貢献していくことを期待している。
日産自動車 株式会社
パワートレイン生産技術本部 サスペンショングループ
写真 6 加工・組み立て編の講義風景 2
48
〒 220−8623 神奈川県横浜市神奈川区宝町 2 番 地
TEL 045−461−7408 FAX 045−461−6929
http://www.nissan.co.jp/
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