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はじめに

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はじめに
2014/7/28
国際的に注目された
化学物質のリスクに関する話題
安全情報部第三室 畝山 智香子
はじめに
安全情報部について
1室 医薬品の安全性に関する情報
• 医薬品安全性情報(隔週報)
2室 食品の安全性に関する情報
• 食品安全情報(隔週) 微生物
• 食中毒関連情報
3室 食品の安全性に関する情報
• 食品安全情報(隔週) 化学物質
• 食品添加物・残留農薬ADI等データベース
4室 化学物質の安全性に関する情報
• 国際的化学物質評価文書(IPCSドキュメント等)
• 毒物及び劇物取締法に関する情報
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2014/7/28
「食品安全情報」について
• 海外の食品安全関係の情報を紹
介(公的機関による報告が中心)
• 2週間に1回発行
• 微生物と化学物質の二部構成
• 化学物質については、汚染物質・
農薬・添加物・いわゆる健康食
品・遺伝子組換え食品などが守
備範囲
• リスク管理機関(基本的に厚生労
働省)向け情報提供という意味合
いが強い
• HPで一般公開
「食品安全情報」
http://www.nihs.go.jp/hse/food-info/foodinfonews/index.html
本日の話題
• 欧米の消費者製品リコールや回収
近年問題になった化合物の事例
• リスク評価に関する科学
鉛を例に 健康影響評価の変遷とリスク管理の考え方
• 欧米で問題になっているものと日本との関係
窒息リスクを巡る欧米と日本の違い
新規/新興リスク
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2014/7/28
EU-RAPEX
• The Rapid Alert System for Non-Food Products
(RAPEX) 食品以外の製品の迅速警報システム
• 現在31ヶ国(EU28ヶ国、ノルウェー、 アイスランド、リヒテン
シュタイン)
• 2004年以降の通知について、データベース検索と毎週の報
告 (Weekly Notification reports)をwebに掲載
• リスクにより分類 Serious riskとその他
• 年次報告書、月ごとの統計も発表
• 圧倒的に中国産製品が多いのでRAPEX-CHINAが別に
あった
近年問題になった化合物の事例
フマル酸ジメチル
DIMETHYL FUMARATE
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•
革製品等に使われた防カビ剤
皮膚炎を誘発
EUで使用禁止
衣服等そのものではなく小袋
RAPEXデータベースには2014年7月時点で211件
全てSerious
最近でも通知は続いているが低濃度で、移行した残留分と考
えられる
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2014/7/28
衛研HPから提供している情報
米国:消費者製品安全委員CPSC
Consumer Product Safety Commission
• 2006年Reebokが子ども用ブレスレットをリコール
• 4才の子ども死亡(血中鉛濃度180μg/dL、胃から出てきた金
属の鉛含量99.1%)
• 全米で約30万個回収(鉛含量は67.0%~ 0.04%とばらばら)、
罰金100万ドル(鉛含量規制0.06重量% )
• 靴のおまけ、日本でも回収(出荷総数2903、回収率2割未満)
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鉛について:健康影響評価
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鉛の健康影響は古くから知られている
血中鉛濃度300μg/dL :脳症
50 ~ 300 μg/dL:運動機能障害、認知機能等への影響
CDCは10 μg/dLをひとつの目標として対策してきた
有鉛ガソリンの禁止等順調に成果を上げてきた
10 μg/dL を超える子ども
の数と割合
Steady Decline in Number of LeadPoisoned Children
Lead Poisoning Prevention Program
Annual Report 2009 NYC
新しい知見
• 10 μg/dL以下でもIQや血圧への影響がある
• 血中鉛濃度が1 から10 μg/dLに増加することと平均IQが3-5
ポイント低下することが関連する
• 有害影響が観察されない暴露量が設定できない(閾値がな
い)
• ALARA (As low as reasonable achievable:合理的に達成
可能な限り低く)の適用
• 2010年、欧州食品安全機関(EFSA):小児の発達神経毒性
についてBMDL01 (IQが1ポイント下がる鉛濃度の95%信頼
下限)を0.50 μg/kg体重に設定
• それ以前はJECFAが設定したPTWI 25 μg/kg 体重を追認
• 欧州での食事暴露量の平均は1日あたり0.68 μg/kg体重、幼
児1.32μg/kg体重/日と推定、暴露マージンは1を下回る
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2014/7/28
鉛によるIQ低下の集団への影響
• 平均的個人にとってIQの数ポイントの低下はほとんど影響がない
• 集団レベルでは両極に大きな影響が出る
正規分布を仮定し全体が数ポイントずれると考える
IQ70以下の増加
(援助の必要性増加)
IQ130以上の減少
(革新のチャンスが失われる)
リスク管理の考え方
• 閾値がない、ALARAの場合の目標値の設定は?
• 米国の場合子どもの主な暴露源は住宅の塗料、他に散発的
高濃度暴露源が複数ある
• CDC: NHANES(国民健康栄養調査)連続2回分の1-5才の
子どもの97.5パーセンタイルの血中鉛濃度として定義される
上限参照値を使う
• 2007-2008と2009-2010 NHANESからは5 µg/dL
• 従って血中鉛濃度が5 µg/dLを超えると高濃度と定義され、
介入を行う
• 集団全体への対策(食品や環境の基準設定等)と同時に、
濃度の高い個人を見つけて対策
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日本について
• 鉛の暴露量は比較的低い 日本人:小児(0~15 歳)の幾何平均値 1.4
μg/dL(2004~5 年) (食品安全委員会)
• 食品や環境からの広く薄い暴露:対策は難しいが重金属基準はいろいろ
なものに設定されている、技術的に可能な限り少なくする
• 散発的暴露源についてはその都度対応
• これまで海外で報告がある暴露源:食器等、おもちゃ、ろうそく、コーヒー
メーカー(ドイツ)、伝統医療(アーユルベーダ)、カージャル(アイライ
ナー)、健康食品、狩猟肉(調理法依存)
• リスク評価については課題がある
• 神経発達影響の研究が盛んでない(子どものIQを計る、生涯賃金に換算
するという手法に抵抗がある?)
• メチル水銀やPCB等の神経発達影響が同様に議論されていて、日本人
は暴露量が多い
• レギュラトリーサイエンスの進歩、データを提供することによる国際貢献
が望まれる
窒息リスクについて
• 一般製品安全指令General Product Safety Directive
• RAPEXのなかでも窒息リスク(Choking;Suffocation)が原
因の報告は多い
• おもちゃの小さい部品、衣服のボタン、等あるが、食品と似て
いる製品food-imitating productsというカテゴリーが設けら
れている
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2014/7/28
RAPEXで食品類似として通知されたもの
写真は全てEURAPEXより
RAPEXで食品類似として通知されたもの(2)
食品のチョコレート
これらはストーンキャンディに似ているという理由
で通知されたもの
園芸用の石やゲル
→「食品類似」の定義について議論がある
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Kinder Surpriseについて
• 世界中で数人は死亡している(そういう食品はたくさん
あるが)
• 米国ではFDAが輸入禁止
• 欧州域内で子どもが死亡しているが欧州では禁止して
いない(禁止要求はある)
• イタリアの企業が1970年代から販売
Kinder Surprise
チョコエッグ
窒息リスク こんにゃくゼリー
• 消費者庁が対応
• 平成22年(2010年) こんにゃく入りゼリーによる窒息事故防
止のため事業者に製品の改良を要請、消費者に情報提供
• その後継続して食べ物による窒息事故防止のための情報提
供
ミニカップゼリー:欧州で禁止
Safety labelling on these products is not enough to protect children's health
David Byrne, European Commission
April, 2004
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海外から日本にも影響した例
• 2008年 中国産乳製品のメラミン汚染
中国で乳児用粉ミルクに工業用化学物質メラミンが混入していたことによる乳児
の腎臓結石が多数報告された(30万人とも)。牛乳の品質検査を欺くため。2007年
に米国で中国産グルテンのメラミン混入によるペットの腎臓結石が報告されていた。
日本では複数の食品が回収された。
• 2011年 台湾の飲料や食品添加物に可塑剤DEHP(フタル
酸ビス-2-エチルヘキシル)
食品や飲料の乳化剤として使用、健康被害の報告はない。
日本ではインスタントラーメン回収
• 2013年 台湾産無水マレイン酸加工デンプン
タピオカボール等の弾力のある食感を出すために使われた。2010年に中国で違
法製造報告有り。
日本でも輸入業者がでんぷんを回収。
新興リスク
• 小型強力磁石を複数飲み込むことによる腸穿孔
• 米国CPSCは2007年以降対策を強化
• おもちゃの部品の一部がメインだったが強力磁石そのものの
製品による事故も
• 2011年には成人向けであり子ども向けではないという警告で
対応
• 事故は無くならなかったため2012年には販売中止を要請
• 自主的販売中止に合意しなかった企業には行政訴訟
• 日本では以前から報告はある
(磁石製品が販売されているため)
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新興リスク(2)
• 新しい商品には新しいリスク
• 常に情報の更新を
日本で販売されている商品
米国CPSCが警告している商品
最後に
安全情報部は皆様のお役にたてるよう地道に情報収集と提供
を行っています。
困った時には聞いてみて下さい。
役にたつこともあるかもしれません。
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