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Senior English Workshop 文献要約 2003UA0047 岩松真由 文献

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Senior English Workshop 文献要約 2003UA0047 岩松真由 文献
Senior English Workshop 文献要約
2003UA0047 岩松真由
文献:田中仁彦「ケルト神話と中世騎士物語」中公出版
第一部 ケルト人と他界
三. 謎の巨石文化民族
巨石遺跡
アイルランドにはケルト人以前に謎の民族が存在し、新石器時代に属する彼らは何らか
の高度な技術で巨石を運び、遺跡を造った。それは現代の科学技術をもっても不可能だが、
数千年を経ても残る遺跡は、彼らが力の釣合を計算できたことを思わせる。また彼らは何
か独特の宗教を中心に組織を作っていただろう。立ち並ぶメンヒルの列石遺跡にはいくつ
かの説があり、地下水脈の分岐点である聖地に立つという説、太陽崇拝に関するという説、
あるいはメンヒルには精霊が宿るという説もある。また、クロムレック( ストーン・サーク
ル )は何かの神殿を象徴すると言われている。
共同の墓地ドルメン
葬礼に関する遺跡としては、巨石を並べて囲った玄室と通路を併せ持ったドルメン、そ
れを砕石の山で包んだケルン、またドルメンを盛土の墳丘内に収めたテュルミスがある。
共同墓地ドルメンに備えられている通路は、死者が戻る可能性を象徴しているのかもしれ
ない。ピラミッド創造以前に存在し、不思議な技術と高度な宗教に組織された社会を持っ
たと思われるこの民族は何者であろうか。
「ダナの息子たち」
ケルト人以前の種族の興亡を目撃した男の話、「トアン・マッカラルの話」にはアイルラ
ンドに到着した種族が順に紹介されている。
無人のアイルランド沖にセラの息子率いる 24 組の男女が到着したが、数年後の災厄に
よりトアン・マッカラルを残して滅亡してしまう。その後トアンは雄鹿に変身し、第 2
代目侵入者ネヴェと 4 組の男女たちの繁栄と絶滅を見届けた後、狼になる。3 代目フィ
ル・ボルグ族は次の侵入者「ダナの息子たち」に敗れ、その彼らは次の「ミレシアの
息子たち」に滅ぼされる。トアンは最終的に鮭となり、「ミレシアの息子たち」の王カ
ラルの妻に食され息子マッカラルとして人間に戻る。
この「ダナの息子たち」が巨石文化を持つ謎の民族で、敗北した彼らは地下を支配する
こととなり、ドルメンや墳丘から妖精や小人の姿で現れると考えられている。
アトランティスか、極北人か
正体不明なこの古代民族は、高度な文明をもつアトランティス民族か、極北人ではない
かと想像されている。プリニウスによると極北人とは北の果てのユートピアに住む神秘的
な民で、この「ダナの息子たち」も極北の地からアイルランドにやって来たのである。
四.地下の神々
地上と地下との交流
地下を支配する「ダナの息子たち」は、地上を支配する「ミレシアの息子たち」である
ケルト系ゴイデル族によって彼らの神々とされ、地上とのたえざる交流を保ちながら暮ら
すこととなる。つまり神話で活躍する神々はケルト人の神々である。アイルランド神話「マ
ー・トゥーラの合戦」で「ダナの息子たち」は、闇の力であるフォモール族と同盟を結び、
先住民フィル・ボルグに勝利する。しかし「ダナの息子たち」はフォモールに敵対して敗
れたため、アイルランドは闇に覆われるが、銀の腕を取り戻した王ヌアザは再びフォモー
ルと戦う。
「マー・トゥーラの合戦」
第二次マー・トゥーラの合戦は、「ダナの息子たち」の医術神の息子と、フォモール王バ
ラールの娘との間に生まれた万能の神ルーグによって「ダナの息子たち」の勝利に終わる。
この物語で語られる神々たちはケルト人の神であり、謎の民族が持っていたと思われる
神々は地上から消えてしまった。
大地母神
アイルランドの「他界」は現世のすぐそばに存在し、人々はそれらと日常的交流を持ち
ながら暮らしているため、妖精や小人の神話が生まれ、サワンの祭りとなった。11 月 1 日
は地下の住人が地上に、地上の住人が地価に連れ込まれるといわれる日で、各種の宗教行
事が行われるが、もとは「ダナの息子たち」への鎮魂の儀式だったのではないか。
「ダナの息子たち」とはケルト人の大地母神ダナの息子であるが、ダナは形象化される
ことなく隠れた存在だった。大地母神は 4 つの分身として現れ、第一は「豊饒と多産をも
たらす女神」
、第二は「土地の主権者としての女神」
、第三は「戦いと殺戮の女神」
、第四は
「死者を運ぶ女神」である。
四種類の女神
ガリア地域に出土する神像の多くは第一の「豊饒と多産をもたらす女神」であり、それ
はケルト人最大の関心ごとだった。ケルト神話では、国の王が第二の「土地の主権者とし
ての女神」と結婚したり性行為をもつことによって、土地の権利を与えられ国が繁栄する
といわれている。第三の「戦いと殺戮の女神」たちは、荒れ狂い飢餓や天災により人々を
絶滅させる大地を象徴している。そして第四の「死者を運ぶ女神」は大地母神の使者で、
魂を大地母神の国へ導く。
女人の国
ケルト人の「他界」は女人たちの国であり、隠れた存在である大地母神が支配している。
この事を物語る「サイグの物語」では、貧しい靴屋サイグが、実は女神であったカテル婆
さんに親切にしたことで、小人たちのいるドルメンの洞窟に通されるが、この国では王の
権力より大地母神カテルの権力が勝っている。
五.遍在する他界
他界はどこにあるのか
地下にあるべき他界を海の彼方に設定しているのは、海に囲まれるケルト人が水平線の
彼方に幸せな国を想像したからかもしれない。
「他界への旅」の物語がアイルランド独特で、
ウェールズの古代記において「他界」は現世と陸続きであり、現世と同じ場所で重なり合
っているように思われる。
異次元の「他界」
アーサー王が登場する物語群における他界像も同じで、すぐ近くに見えても近づくこと
ができない異次元空間としての他界が現れる。ケルト系物語に出てくる海は、地下に広が
る海、あるいは地下世界にあるものを地上に重ね合わせたものかもしれない。このように
時間と空間の異質性がケルト的「他界」の性格で、現実と超現実は結びつき、様々な物語
や民話が生み出された。
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