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私募不動産ファンドガイドライン

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私募不動産ファンドガイドライン
私募不動産ファンドガイドライン
THE ASSOCIATION FOR REAL ESTATE SECURITIZATION
ARES Best Practice Guideline for Private Real Estate Fund
ARES 私募不動産ファンドガイドライン
目
次
第 1 部 総則
Ⅰ. 目的等
………………………………
1
Ⅱ. 適用範囲等
………………………………
1
Ⅲ. 留意事項
………………………………
2
………………………………
3
………………………………
8
………………………………
9
第 2 部 発行開示 -Placement
Ⅰ.
記載事項及びその内容等
第 1 章 発行概要
第 2 章 ファンドの概要情報
第 3 章 組入不動産の概要
第 4 章 ファンドの詳細情報
第 5 章 出資契約・関連契約の概要
第 6 章 投資上の留意事項
Ⅱ.
記載上の留意事項
第 3 部. 継続開示 -Reporting
Ⅰ.
記載事項及びその内容等
1. 運用状況等の推移
2. 出資・分配等の状況
3. ファンドの収支概況
4. 投資不動産の状況
5. 管理・修繕・資本的支出等の概況
6. 投資不動産の売買の状況
7. AM 報酬及び利害関係人等との主な取引状況
Ⅱ.
記載上の留意事項
……………..…………………
11
Ⅲ.
記載例(AM 報告書)
……………..…………………
13
第4部
主な用語の定義
………………………………
22
共通 Q&A
………………………………
25
第 2 部発行開示関連 Q&A
………………………………
27
第 3 部継続開示関連 Q&A
………………………………
32
Q&A
2012 年 3 月 27 日制定
一般社団法人不動産証券化協会
第 1 部 総則
Ⅰ.
1.
目的等
ARES 私募不動産ファンドガイドライン(以下「本ガイドライン」)は、第 1 部総則、第 2
部発行開示(Placement)、第 3 部継続開示(Reporting)、第 4 部主な用語の定義等、
および Q&A から構成される。本ガイドラインの目的は、国内不動産等を裏付資産とす
る匿名組合出資や特定目的会社が発行する優先出資証券など、原資産が不動産の
パフォーマンスに関連する投資資産である私募不動産ファンド(以下「ファンド」)にお
いて、エクイティやデットに投資する出資者等(以下「投資家」)へ提供される開示書
面・情報等に関し、作成・記載内容等の指針を示すものである。
2.
本ガイドラインは、投資家に対し、類似するファンドの比較可能性を容易ならしめるた
めの、実務におけるミニマムスタンダードを企図するとともに、標準・推奨事項などの
記載事項を通じ、投資家への情報開示を充実させていくためのベスト・プラクティスの
推奨を企図している。したがって、本ガイドラインにおける記載の有無にかかわらず、
作成者が、記載内容の更なる充実やグラフ・写真などを活用した視覚的な見易さの
向上を図るなど、ディスクロージャーに関する創意工夫を行うことを阻害するものでは
ない。
3.
本ガイドラインの制定・廃止は理事会の承認を得て行うものとする。ただし、法令や会
計制度等の変更、実務慣行を踏まえた見直し、その他軽微な修正等に基づいて、本
ガイドラインの一部を改訂する際には、制定・廃止に準ずる大幅な改訂を行う場合を
除き、本ガイドラインを所管する委員会の承認を得て改訂することができる。本ガイド
ラインを所管する委員会は、市場整備委員会とする。なお、「ARES アセットマネジメン
ト報告書ガイドライン」(2011 年 1 月 20 日制定)については、その内容が本ガイドライ
ンに統合されたため、これを廃止する。
Ⅱ.
1.
適用範囲等
本ガイドライン第 2 部における商品概要書とは、ファンドが発行する出資証券(ABS 等
のデット性のものを除く)の私募に際し、ファンドの基本的な仕組み、運用方針、関係
者の役割、ガバナンス、報酬、組入物件の概要等のファンドの情報を提供することを
目的として、アセットマネジメント会社(以下、「AM 会社」)または私募の取扱者等によ
り、ファンドへの投資を検討する投資家に交付・提出される書面をいう。なお、商品概
要書には、目論見書、商品概要説明書、商品ストラクチャー概要書、PPM(Private
Placement Memorandum)、インフォメーション・メモランダムなどの名称を含むがこ
れらに限られない。
2.
本ガイドライン第 2 部では、法令等により投資家への目論見書の作成・交付が義務
付けられていないファンドの出資証券の私募に関し、投資家に対し作成・交付されて
いる商品概要書の作成に関する指針を定めている。なお、商品概要書が金融商品取
引法の広告等に該当する場合、または金融商品販売法等その他の法令に該当する
場合においては、当該法令に即した記載が求められることに留意すべきである。
1
3.
本ガイドライン第 3 部における AM 報告書とは、AM会社が、ファンドの特定の運用期
間に関する運用実績を、約定等にもとづいて定期的・継続的に投資家に報告を行う
際における報告書をいう。なお、AM 報告書には、運用報告書、AM レポート等の名称
を含むがこれらに限られない。
4.
本ガイドライン第 3 部では、法令等により投資家への運用報告書等の作成・交付が
義務付けられていないファンドの運用報告に関し、投資家に対し作成・交付されてい
る AM 報告書の作成に関する指針を定めている。したがって、投資信託及び投資法
人に関する法律(以下「投信法」)その他の法令等に該当する場合は、本ガイドライン
の対象としていない。
5.
本ガイドラインは、ファンド設定当初に一定の物件が組入れられている物件固定型ま
たは物件追加型のクローズド・エンド・ファンドにおける利用を想定しているが、コミッ
トメント方式によるブラインド型のファンド等においても、本ガイドラインの主旨を踏ま
えて適宜読み替えて利用されることが期待される。
6.
本ガイドラインの適用は任意であることから、適用開始時期についても同様に任意で
あるが、投資家の要請や実施上の負担等を踏まえた作成者による適切な判断が期
待される。
Ⅲ.
1.
留意事項
作成者は、ファンドに関与する形態に係らず、投資家に報告・提出される開示書面
(商品概要書及び AM 報告書)の作成に際し、善良なる管理者の注意をもって、記載
内容の正確性を確認しなければならない。
2.
記載数値は、ファンド規模や物件数により異なるが、原則として千円単位または百万
円単位で記載すること。また、数値の記載は、原則として切捨表示とし、各段階での
数値の合計が合致しないことを容認する。また、利回りについては、その内容(利益
ベースか、キャッシュベースか、所有期間利回りか等)を明確に表示するとともに、目
標や予想の利回り等を表示する場合には、確定利回りと誤認されない様、十分に留
意する必要がある。
3.
本ガイドラインでは、記載することが推奨される項目については、「推奨」項目として
適宜表示している。また、ファンド毎の個別性の反映や記載項目の充実、グラフや写
真などを活用した視覚的な見易さの追及によるディスクロージャーの充実は常に推
奨されるものである。
2
第 2 部 発行開示 (Placement)
Ⅰ.
記載事項及びその内容等
1.
商品概要書の構成等
商品概要書は、第 1 章から第 3 章までのファンドの「概要情報」、第 4 章以降の「詳細
情報」および別途添付・提出される「参考・補足情報」により構成される。
2.
商品概要書の記載事項及びその内容等
記載事項及びその内容等は次のとおりとする。なお、以下に掲げる事項及びその内
容については、ファンドの性格やスキームにより、記載事項及びその内容が字句どお
り当てはまらない場合や項目が不足するような場合がありうるが、各項目の趣旨を勘
案の上、適切な読み替え、ファンドや物件等の個別性の反映、項目の追加等の工
夫・充実により適宜適切に対処されるべきものである。一方、記載される項目の順序
については、原則として遵守すべきものである点に留意する。
【記載事項およびその内容等】
項目
第1章
発行概要
1.
ファンドの名称
2.
発行体の名称
3.
発行形態
4.
ファンドの運用目的
5.
AM 会社・FM 会社の名称
等
6.
運用期間
7.
当初出資の発行概要
(1) 発行価格
(2) 発行総口数
内容・留意事項等
ファンドに名称があれば記載する。
ファンドの法的骨格となる発行体(匿名組合営
業者(SPC)等)の社名を記載する。
匿名組合出資等、発行される出資証券の法的
形態を簡潔に記載する。
安定したインカムの獲得を目的としたコア型な
ど、当該ファンドの運用目的を(クローズド・オ
ープンエンドの別、運用戦略による分類、物件
の組入方針による分類等)簡潔に記載する。
<参考例>
国内不動産コア投資型(物件固定型/クロー
ズド・エンド型/東京圏オフィス特化型)
ファンドに関与する AM 会社・FM 会社の名称、
契約の形態等(投資一任、助言等)を簡潔に
記載する。
出資契約上の契約期間、期中償還の内容等
を記載する。
<参考例>
当初出資日から 20XX 年 YY 月 ZZ 日までの約
5 年間
ただし、運用期間中であっても投資対象不動
産にかかる不動産信託受益権の売却等により
本件匿名組合事業が終了し、期中償還のペナ
ルティなしに出資金元本の一部または全額が
繰上げ償還される場合がある。
出資持分に価格が付されている場合は、1 口
当たりの単価を記載する。
出資持分に口数の定めがある場合は、その発
行される総口数を記載する。
3
(3) 発行総額
(4) 申込単位
(5) 申込期間
(6) 委託証拠金等
(7) 申込取扱場所
(8) 出資契約締結日
(9) 出資金払込日
(10) 出資の払込方法
(11) 私募の取扱者
(12) 申込手数料
(13) 譲渡制限
(14) その他
8.
第2章
資金使途
ファンドの概要情報
1.
運用方針の概要
(1) ファンドの基本的な性
格
(2) 運用シナリオの概要
2.
ストラクチャー概要
(1) ストラクチャー概要図
発行される出資持分の発行価格の総額を記
載する。
ただし、発行価格の総額が、商品概要書の発
行時点で未確定である場合には、見込額の記
載で足る。
申込単位の定めがあれば記載する。
<参考例> ○円以上○円単位
申込期間があれば、その日付を記載する。
出資契約に関して、投資家が預託すべき委託
証拠金その他の保証金があれば記載する。
申込取扱場所の定めがあれば具体的な申込
取扱場所を記載する。
出資契約を締結する場合は、その契約締結日
を記載する。
出資金の払込日を記載する。
一括・分割の別、申込金の有無、銀行送金等
の払込方法等を記載する。
ファンドが委託する私募の取扱者を記載する。
出資金に加えて、投資家が申込みに当たり別
途直接・間接に支払う手数料の有無及びその
概要を記載する。
<参考例>
無手数料(ただし、発行体は私募の取扱者に
対し、私募の取扱委託手数料として発行総額
の○%の手数料を支払う。)
譲渡制限の有無、制限がある場合にはその概
要について記載する。
その他私募発行に関連する事項があれば記
載する。
出資金の資金使途(何に、どのようにして投資
されるか等)を簡潔に記載する。
ファンドの運用方針や運用目標などの基本的
な性格の概要について簡潔に記載する。
<参考例>
安定的な賃貸収入が期待できる東京圏の優
良立地のオフィスへ投資を行うことにより(物
件固定型)、安定した分配を目指すとともに、
出資元本の確保を目標とします。
運用シナリオの定めがあれば、例えば、ファン
ド設定当初、運用期間中、期間終了時等の期
間別、メインシナリオ、サブシナリオ等のシナリ
オ別等により、ファンド全体の運用シナリオを
記載する。
なお、終了時については、出口戦略、リファイ
ナンスの可能性、運用期間の延長の可否等を
記載する。
ファンドに関連する主要な関係人(AM・FM 会
社、SPC、レンダー、信託会社、PM 会社、会計
事務所、監査人)の契約関係等を示すストラク
チャー概要図を簡潔にわかりやすく記載する。
4
(2) 関係人の役割・名称
3.
運用調達計画の概要
(1) 運用調達計画
ファンドの主要な関係人の役割・名称、利害関
係人等である場合にはその旨を簡潔に記載す
る。
ファンド設定当初の運用調達計画の概要表を
記載する。
(参考例)
運用
不動産信託受益権
(○○ビル
(○○ビル
調達
XXX
%
YYY
%)
シニアローン
%
YYY
%)
メザニンローン
%
消費税
%
イニシャルコスト
%
リザーブ
%
計
(2) 借入の概要・借入方
針
4.
分配方針
5.
目標利回り
6.
主要な投資リスク等
7.
手数料等及び税金
(1) 手数料等
100%
借入金
%
%
匿名組合出資
%
%
計
100%
外部から調達する予定の借入金(シニア・メザ
ニン等)・社債の主要な借入条件(借入先、年
限、金利、変動・固定、ヘッジ等)を記載する。
また、追加取得型等で運用期間中に新規借入
が想定される場合には、レバレッジの上限、借
入の決定方法などの借入方針を簡潔に記載
する。
分配方針(分配可能原資、剰余現金の分配、
出資の戻しの取扱など)、分配時期を記載す
る。
ファンドが目標とする利回りがあれば、その内
容を記載する。
なお、利回りの記載にあたっては、明確な表現
を旨とするとともに、確定利回りと誤解されな
いよう十分に留意すること。
<参考例>
A. 運用期間中
分配利回り(利益分配金利回り、金銭分配
利回り等)を記載する。
B. 所有期間全体
IRR(EXIT までの金額加重収益率)、エクイ
ティマルチプル等を記載する。
投資リスクに関する投資者の判断に重要な影
響を及ぼす可能性のある主要なリスク特性の
概要について、具体的、かつ、分かりやすく簡
潔に記載する。
併せて、投資リスクに関する管理体制の概要
について、具体的、かつ、分かりやすく簡潔に
記載する。
なお、その他の投資リスク等については、「第
6 章 投資上の留意事項」に記載される。
ファンドが負担する AM 報酬、FM 報酬等の運
用報酬、その他会計・監査報酬等の SPC 維持
コスト等(組入れ不動産の賃貸事業費用、売
却費用等の直接コストを除く)について、その
概要を簡潔に記載する。
5
(2) 課税上の取扱
第3章
第4章
組入不動産の概要
1.
物件概要
2.
不動産信託受益権の概
要
3.
賃貸借の概要
4.
その他参考となる事項
ファンドの詳細情報
1.
運用方針
2.
発行体の概要
3.
ファンドの管理及び運営
(1) 資産評価
(2) 保管
(3) 計算期間
ファンドに出資が見込まれる投資家の課税上
の取扱について、分配時・終了時・譲渡時に分
ける等により簡潔に記載する。
ファンドの組入物件の所在地、用途、面積、権
利の態様、取得予定年月日、取得予定価格、
鑑定評価額等の基本的な情報を表形式等に
より簡潔に記載する。
不動産信託受益権の場合は、受託会社、信託
報酬、信託期間、その他特記すべき契約条件
等があれば記載する。
主な賃借人や賃貸借の状況等に関する主な
内容を記載する。
エンジニアリングレポートが取得される場合、
調査機関、および主な内容(遵法性、耐震性、
PML 値等)を簡潔に記載し、また、その他投資
家に開示されるべきリスク情報等があれば、
当該事項を簡潔に記載する。
追加取得物件の投資基準(もしあれば)、物件
の期中管理運営方針や売却方針等を記載す
る。
A. 追加取得物件の投資基準
追加取得期間、用途、エリア、立地、物件ス
ペック、耐震・環境、プライシング水準、フォ
ーワードコミット、関係者選定などに関する
方針・基準等
B. 期中管理運営方針
リーシング方針・体制、物件の維持管理方
針等
C. 売却方針
・期間満了時の出口戦略、物件売却のプロセ
ス、売却不調時の対応(リファイナンスの可
能性)等
・期中売却の有無、賃料収入や時価の著しい
低下・下落等の対応等
発行体の名称・住所、役員の状況、出資の状
況(資本金の額、出資者の名称等)、設立日、
その他発行体の属性(合同会社、特定目的会
社等)に応じて主要な事項を記載する。
不動産鑑定評価(継続)の取得先、時期、投資
家への提供方法を記載する。また、出資金の
NAV の算出方法及び投資家への提供方法等
を記載することが推奨される。
ファンドの資産の保管方法・分別管理の内容
を記載する。
未分配利益算定のための計算期間の概要、
監査の有無等を記載する。
6
(4) 分配・運用報告
4.
5.
6.
取引制限
出資者の権利等
ファンドの運用体制
(1) 運用会社の名称等
(2) 運用組織・体制等
(3) 意思決定プロセス
(4) 内部管理体制
(5) 利害関係人取引
(6) 反社会的勢力への対
応方針
第5章
出資契約・関連契約等の概要
1.
出資契約の概要
2.
3.
第6章
金銭消費貸借契約の概
要
AM 契約の概要
投資上の留意事項
1.
その他の投資リスク
2.
その他の留意事項
参考・補足情報(参考例※)
1.
ファンドの収益計画
分配通知の内容・方法、ファンドから提供され
る AM 報告書、鑑定評価等ファンドのパフォー
マンスに係る資料について、投資家への提供
時期・方法等を記載する。
A. 利害関係人との取引制限
利害関係人等の範囲、投資家への事前開
示などの利益相反の防止に関する方針・内
部規則等を簡潔に記載する。
B. その他
その他法令、出資契約、運用方針、AM 会
社の内規等による取引制限がある場合は、
その内容を記載する。
出資者の主要な権利・義務を簡潔に記載す
る。また、投資委員会等への諮問等ファンドの
ガバナンス体制があれば記載する。
運用会社(AM および FM 会社)の名称、資本
金の額、大株主の状況
ファンドの運用に従事する主たる運用責任者
の氏名・略歴等、キーマン条項の内容(もしあ
れば)、運用に関連する組織等を簡潔に記載
する。
運用会社の取得や売却の際の主要な意思決
定プロセス、外部専門家との連携等を簡潔に
記載する。
運用会社のコンプライアンス体制等の内部管
理体制を簡潔に記載する。
当初の利害関係人取引の有無・概要、運用開
始後の利害関係人取引の検証・牽制体制の
概要を記載する。
反社会的勢力への対応方針があれば簡潔に
記載する。
匿名組合契約等出資契約の主要な条項・条件
等を簡潔に記載する。
金銭消費貸借契約の主要な条項・条件等を簡
潔に記載する。
AM 契約の主要な条項・条件等を簡潔に記載
する。
その他の投資上のリスク(第 2 章 6.主要な投
資リスク等に記載された事項を含むこともでき
る。)の特性について、具体的、かつ、分かり
やすく簡潔に記載する。
上記以外に投資にあたって留意すべき事項
(例:販売や換金方法、保管等)があれば記載
する。
目標利回りの根拠となる収益・キャッシュフロ
ー計画表等
7
2.
テナント関連情報
稼働率推移やレントロールその他重要なテナ
ントとの契約条件等
※上記は参考例を示したもので、参考・補足情報は、ファンドや組入不動産の内
容に応じて、または投資家の要望等に応じて提供されるものです。
作成指針の表示
本ガイドラインに準拠して商品概要書を作成した場合には、巻頭または末尾等に
下記記載例のような作成基準を表示する。
「本商品概要書は、一般社団法人不動産証券化協会が制定した私募不動産ファ
ンドガイドラインに従って作成しております。」
Ⅱ. 記載上の留意事項
1.
作成にあたっては、発行者の説明不足等のリスク回避の観点から、各項目の内容が
網羅的に記載され、ともすれば膨大・複雑な資料・内容になることにより、投資家の理
解や利便性が損なわれる懸念があることに十分留意する必要がある。したがって、
作成者には、簡潔さ、一覧性、重要性を十分に考慮の上、可能な限り全体としてコン
パクトに作成され、投資家に理解されやすい商品概要書の作成が期待される。なお、
Ⅲ.2.記載事項およびその内容・留意事項において、「簡潔に」とされている場合は、
表形式や図示などにより、こうした点に特に留意すべきである。
2.
記載される文字については、明瞭かつ正確に表示する必要があるとともに、リスクに
関する事項については、それ以外の事項の文字のうち、最も大きなものと、著しく異な
らない大きさで表示する必要がある。
8
第3部
継続開示 (Reporting)
Ⅰ.
1.
記載事項及びその内容等
AM 報告書の構成等
AM 報告書は、「AM 報告書本文」と添付される「補足資料」により構成される。本文に
は、下記 2 に掲げる事項を、原則としてその順序に沿って表示するものとする。補足
資料とは、ファンドの当期の財務諸表、各種証憑(バウチャー)、AM 報告書本文の補
足説明など、適宜または投資家の要望に基づいて添付されるものをいう。
2.
記載事項およびその内容等
記載事項及びその内容は次のとおりとする。なお、以下に掲げる事項及びその内容
については、ファンドの性格やスキームにより、記載事項及びその内容が字句どおり
当てはまらない場合があるため、その趣旨を勘案の上、適切な読み替え、ファンド・
物件等の個別性の反映、ディスクロージャーの工夫・充実により適宜適切に対処され
るべきものであるが、記載される項目の順序については、前項に記載したとおり、原
則として遵守すべきものである点に留意する。
【記載事項およびその内容等】
項目
1. 運用状況等の推移
(1)
運用実績の推移
A. 営業成績の概況
B. 財産等の概況
C. 収益率等の概況
D. 分配等の概況
(2)
2.
E. 投資不動産の概況
運用概況
出資・分配等の状況
(1)
出資の異動・残高等の
推移
(2)
出 資 の NAV の 推 移
(推奨)
(3)
収益率等の実績・推移
内容・留意事項等
下記の A~E の項目について、当期及び当期以
前の営業期間に係るファンドの運用実績の推移
を報告書のサマリーとして表示する。
賃貸事業収益、賃貸事業費用、賃貸 NOI、賃貸
事業損益、売買損益、当期損益等を表示する。
投資不動産(不動産信託受益権等を含む。ま
た、必要に応じて売却等により保有しないものと
なった投資不動産を含む。以下、同様。)、借入
金、出資等を表示する。
インカム利回り、キャピタル利回り、総合利回り
等を表示する。
利益分配金、出資の戻し、金銭分配額、利益分
配金利回り、金銭分配利回り等を表示する。
投資不動産の物件数、稼働率等を表示する。
当期の資産の運用の経過、今後の運用方針、
対処すべき事項、決算後に生じた重要な事実等
を表示する。
出資の異動・残高、及びコミットメントがある場合
にはその状況の推移を記載する。
投資不動産の評価損益を考慮した出資の額(出
資の NAV)について、投資家の要請に基づき、ま
たは投資家と合意した評価方法により記載する
ことが推奨される。
インカム利回り、キャピタル利回り、総合利回り
等の収益率(会計ベース)について、当期実績
及び推移を記載する。上記「(2)出資の NAV の
推移」(鑑定ベース等)を記載している場合、NAV
を構成する評価損益の増減額をキャピタル損益
9
(4)
3.
分配等の状況
ファンドの収支概況
(1)
損益計算書・貸借対照
表の概況・推移
(2)
キャッシュフロー等の
概況・推移(推奨)
A. キャッシュフローの
推移
B. 期中の口座別の入
出金の状況
(3)
借入金・社債等の状況
A. 借入の状況
B. 社債の状況
4.
投資不動産の状況
(1)
投資不動産の明細
(2)
投資不動産の運用状
況等の推移
投資不動産の運用概
況
(3)
5.
管理・修繕・資本的支出等の
概況
に加減算した収益率等を追加表示することが推
奨される。
ファンドの利益分配金、出資の戻し、金銭分配
額等の推移を記載する。
ファンドの損益状況や財産状況の概要として、
損益計算書と貸借対照表の主要な項目の推移
を記載する。なお、損益の記載に当たっては、賃
貸事業の損益、不動産の売買損益、及び、SPC
に係る損益を区分して表示する。
ファンド全体の現金収支の概要等を表示する。
ファンドの現金収支の概要として、賃貸事業、投
資活動(投資不動産の売買)、財務活動(その他
SPC に係る収支等を含む)により生じるキャッシ
ュフローから、金銭分配可能額や留保額を経
て、当期の金銭分配額が算出される過程を表示
することが推奨される。
ファンドの主要な口座について、前期末の残高、
当期の増減、当期末残高を表示することが推奨
される。
借入金・社債等の概要とこれに関連する内容を
表示する。
当期末において資金の借入残高がある場合に
は、借入先、期末残高、借入日、返済期限、金
利、条件(固定・変動の別)、返済方法等を表示
する。その際、当期の異動および当期以降に計
画する重要な異動に関するコメントを付記する。
また、必要に応じ、優先劣後の別、金利スワッ
プ・キャップなどについて項目を追加する。なお、
DSCR テスト、LTV テスト等があれば、必要に応
じ、当期実績及び推移を記載することが推奨さ
れる。
当期末において発行した社債の残高がある場
合には、上記借入の状況に準じて表示する。
当期末において保有する投資不動産について、
その状況を表示する。
当期末において保有する投資不動産につい
て、名称、所在、取得日、取得価格、帳簿価
格、鑑定評価の価格時点と評価額、評価損益
率等を表示する。
当期末において保有する投資不動産の賃貸
NOI、稼働率等の推移を表示する。
当期における賃貸運営の動向・異動状況とリー
シング活動内容等について AM 会社としての運
営方針・課題等を記載する。また、必要に応じ、
主要な投資不動産について、当期の賃貸運営
の動向等を表示する。
当期における資本的支出の状況を中心に、必要
に応じて、投資不動産の管理等の状況を表示す
る。
10
(1)
管理・修繕等の概況
(2)
主要な資本的支出等
の概況(推奨)
(3)
修繕積立金の推移(推
奨)
当期における物件管理・修繕等の主要な状況、
次期以降の AM 会社の方針(費用削減やバリュ
ーアップ計画など)等を記載する。
当期の主要な資本的支出に分類される物件毎
の主要な工事実績、その他工事、および当期の
工事支出総額を記載するとともに、次期以降の
資本的支出等に係る実施計画について、主要な
計画工事、その他工事、および計画工事総額を
記載することが推奨される。
前期末の修繕積立金残高、各営業期間の積立
額と取崩額、各期末における次期繰越額を表示
することが推奨される。
6.
投資不動産の売買の状況
7.
AM 報酬及び利害関係人等との主な取引状況
(1)
AM 報酬
ファンドの運用に係る AM 報酬・FM 報酬等、及び
必要に応じてその内訳、推移等を記載する。
(2)
利害関係人 等との主 当期中における AM 会社の利害関係人等との主
な取引状況
な取引状況を表示する。
当期中における投資不動産の売買状況並びに
損益を表示する。
[補足資料]
・財務諸表(貸借対照表、損益計算書、資本等変動計算書、監査証明など)
・その他投資家への補足開示資料
[作成指針の表示]
本ガイドラインに準拠して AM 報告書を作成した場合には、巻頭または末尾等に
下記記載例のような作成基準を表示する。
「本報告書は、一般社団法人不動産証券化協会が制定した私募不動産ファンド
ガイドラインに従って作成しております。」
Ⅱ. 記載上の留意事項
1.
後記「Ⅲ.記載例(AM 報告書)」では、投資物件を保有する SPC に投資家が出資を行
なうシンプルな単独型が想定されている。したがって、投資家が出資する SPC と物件
を保有する SPC が異なるいわゆる複層型構造のファンドの場合は、記載例のフォー
マットによる表示が困難な場合が考えられる。この時、記載例とは異なる形により、適
宜、必要な報告を行うことは差し支えないが、その際には、例えば、損益計算書・貸
借対照表に関する内容については、子 SPC の同一科目を集計して表示する等、収益
の源泉や財産状況が単独型と同水準に明らかにされることが望ましい。
2.
利回りは、原則として年換算しない数値(小数点 2 桁未満を切捨て)により記載する。
なお、利回りについて、年換算の数値を記載する場合には、括弧書きで併記する。
3.
「推移」を記載するとした項目については、当期以前の営業期間について、当期と比
較されるべき同程度の営業日数の営業期間を 4 期程度以上記載されることが望まれ
るが、営業期間の経過や投資家の見易さ等を勘案の上、適宜適切に表示するものと
11
する。また、ファンド毎の個別性の反映や記載項目の充実、グラフや写真などを活用
した視覚的な見易さの追及によるディスクロージャーの充実は常に推奨されるもので
ある。
4.
各項目の内容を完全ないし網羅的に記載すべきか否かについては、対象となるファ
ンドの規模や物件数により異なるものであり、膨大・複雑な資料による報告は、かえ
って投資家の利便性を損ねる懸念もある。したがって、作成者には、一覧性(投資家
の見易さ)や重要性を考慮の上、「主要なもの+その他=合計」の順に表示する、当
期の異動がなく説明が不要な内容については記載を省略する等の対応等により、可
能な限り全体としてコンパクトに作成することが望まれる。
12
Ⅲ.
記載例(AM 報告書)
AM 報告書について、匿名組合型ファンドを想定した記載例を示すと次のとおり。
[表紙]
アセットマネジメント報告書
ファンド名称: ABC ファンド○号
201X 年第 2 四半期 (201X 年 7 月 1 日~201X 年 9 月 30 日)
SPC 名: ABC 合同会社
アセットマネジャー: XYZ 投資顧問株式会社
[本文]
1. 運用状況等の推移
(1) 運用実績の推移
(税込/税別)
期
決算期末日
運用日数
営業成績
賃貸事業収益
賃貸事業費用
賃貸 NOI
賃貸事業損益
売買損益
匿名組合損益
第○期
201X/6/30
XX
当期
第○期
201X/9/30
XX
通期
第○期
201X/3/31
XXX
財産等
投資不動産
現金その他資産
総資産
借入金
敷金その他負債
総負債
出資
剰余金等
純資産
収益率等
インカム利回り
キャピタル利回り
総合利回り
%
%
%
%
%
%
%
%
%
分配等
利益分配金
出資の戻し
金銭分配額
利益分配金利回り
金銭分配利回り
%
%
%
%
%
%
○件
%
○件
%
投資不動産の概況
物件数
稼動率
13
(記載上の留意事項)
a. 主な指標の算出の考え方(計算式等)は、原則として、「第 4 部 主な用語の定義」に記載したとおりであ
るが、これと同一であるか否かを問わず、算出の考え方(計算式等)を注記等にて明示し、誤解が生じな
いように努めること。
b. 当期予算対比による記載を行う場合は、4 期程度の実績の推移、当期の計画・予算、当期実績の順に
記載されることが望ましい。
c. (税込/税別)を明記することが可能な場合には、いずれによるものであるかを明記する。項目によって
異なる等、明記することができない場合には、注釈を付す等により対応し、誤解を生じないよう留意す
る。
(2) 運用概況
【主として、当期のマーケットの概況、ファンドの運用実績の概況や次期以降の見通し
(市場環境についての見通しを含む)、AM 会社の活動方針などを記載する。また、運
用に関わる定性面の変更(運用体制や担当者の変更等)や決算日後に発生した重
要な事実(物件売却、大口テナントの異動等)があれば記載する。】
(記載上の留意事項)
a. 運用実績は、不動産の賃貸と売買による不動産関連損益、ファンド関連損益、ファンド全体の損益等に
区分して要因分析などについて簡潔に記載すること。決算後の重要事実や次期以降のパフォーマンス
に主要なインパクトを与える可能性のある事実などがある場合には、可能な限り記載すること。計画に基
づいた次期以降の予想利益・配当についても定量的(当期並みの○%程度など)若しくは定性的(減益・
利回り減など)に記載されることが望ましい。
b. 別途提出される事業計画において記載される場合には、「次期以降の予想(市場環境についての見通
しを含む)や AM 会社の活動方針など」の記載は省略しても差し支えない。
2. 出資・分配等の状況
(1) 出資の異動・残高等の推移
出資日
金額
資金使途等
出資総額
当初出資額
追加出資額
追加出資額
追加出資額
・・・・・・
当期追加出資額
出資実行総額
①
②
②
②
XXXX/YY/ZZ
XXXX/YY/ZZ
XXXX/YY/ZZ
XXXX/YY/ZZ
ファンド設立・○物件取得
○月○日○○物件取得
○月○日○○物件取得
○月○日○○物件取得
③
④=①+②+③
201X/YY/ZZ
○月○日○○物件取得
出資の戻し
前期末累積出資戻し額
当期出資戻し額
期末累積出資戻し額
⑤
⑥
⑦=⑤+⑥
期末出資残高
⑧=④-⑦
コミットメント総額
出資実行総額
コミットメント残額
⑨
④
⑩=⑨-④
201X/YY/ZZ
金額
比率
%
%
%
14
(記載上の留意事項)
a. コミットメントの概況については、該当する場合のみ記載すること。なお、「比率」の欄には、「コミットメン
ト総額」に対する「出資実行総額」や「コミットメント残額」の割合を記載する。
(2) 出資の NAV の推移 (推奨)
当期
第○期
第○期
①
②
③=①+②
④
⑤
⑥=⑤-④
⑦=③+⑥
⑧=⑦/③-1
前期末出資の残高
当期出資の増減額
当期末出資の残高
投資不動産の帳簿価格
投資不動産の鑑定評価
投資不動産の評価損益
出資の期末 NAV
出資の評価損益率
(記載上の留意事項)
a. 鑑定評価額は、直近の再鑑定評価額によること。
(3) 収益率等の実績・推移
第○期
201X/4/1
201X/6/30
XX
自
至
運用日数
インカム損益
キャピタル損益
当期損益
出資の平均残高
インカム利回り
キャピタル利回り
総合利回り
当期
第○期
201X/7/1
201X/9/30
XX
通期
第○期
201X/4/1
201X/3/31
XXX
①
②
③=①+②
④
①/④
②/④
③/④
(記載上の留意事項)
a. 収益率等の定義 (計算式等)は、原則として、「第 4 部 主な用語の定義」に記載したとおりであるが、こ
れと同一であるか否かを問わず、算出の考え方(計算式等)を注記等にて明示し、誤解が生じないように
努めること。
b. 上記「(2) 出資の NAV の推移」を記載している場合、NAV を構成する評価損益の増減額を、キャピタル
損益に加減算して算出した収益率等を追加表示することが望ましい(推奨)。
(4) 分配等の状況
第○期
201X/4/1
201X/6/30
XX
自
至
運用日数
当期損益
前期末留保利益・累積損失
当期分配可能匿名組合損益
金銭分配額
利益分配金
出資の戻し
利益分配金利回り
金銭分配利回り
当期
第○期
201X/7/1
201X/9/30
XX
通期
第○期
201X/4/1
201X/3/31
XXX
①
②
③=①+②
④=⑤+⑥
⑤
⑥
※1
※2
15
※1 利益分配金利回り = ⑤÷出資の期中平均残高
※2 金銭分配金利回り = ④÷出資の期中平均残高
(記載上の留意事項)
a. 設定来の経過年度の推移、設定来の累積分配金等のデータの記載が望ましい(推奨)
3. ファンドの収支概況
(1) 損益計算書・貸借対照表の概況・推移
自
至
第○期
201X/4/1
201X/6/30
第○期
201X/7/1
201X/9/30
通期
201X/4/1
201X/3/31
【損益計算書】
賃料収益
その他収益
賃貸事業収益 計
建物管理費
水道光熱費
修繕費
PM 報酬
公租公課
損害保険料
その他費用
賃貸事業費用 計
賃貸 NOI
減価償却費
賃貸事業損益 ①
売買収益
売買原価
売買損益 ②
受取利息
その他収益
SPC 収益計
信託報酬
AM 報酬
支払利息
償却費
その他費用
SPC 費用計
SPC 損益 ③
当期利益 ①+②+③
【貸借対照表】
現金・預金等
前払費用等
未収入金
投資不動産
長期前払費用・繰延資産
資産合計
借入金
敷金その他負債
負債合計
出資金
匿名組合未分配損益
純資産合計
16
(記載上の留意事項)
a. 記載項目の定義等(計算式等)は、原則として、「第 4 部 主な用語の定義」に記載したとおりである。こ
れと異なった取扱いを行う等、必要と認められる場合には、適宜、注記等で計算式を明示すること。
b. 全体として、上記の記載例と同程度の情報が表示されていれば、損益計算書、貸借対照表の個々の項
目については、ファンドの個別性や金額の有無等により、必要に応じて増減・修正して差支えない。
c. 重要な会計方針の変更等があった場合にはその旨を注記すること。
(2) キャッシュフロー等の概況・推移
(推奨)
A. キャッシュフローの推移
第○期
第○期
通期
自
201X/4/1
201X/7/1
201X/4/1
至
201X/6/30
201X/9/30
201X/3/31
信託配当前現金残高
①
賃貸事業収支(信託収支)
賃貸収入
賃貸支出
リザーブ積立・取崩等
信託収支(信託配当)
②
投資事業収支(SPC 収支)
信託不動産の取得
信託不動産の売却
投資事業収支
③
財務・ファンド収支(SPC 収支)
還付消費税
その他収入
出資金の増減額
借入金の増減額
支払利息
AM 報酬等
その他支払
財務・ファンド収支
④
当期 CF 増減額
⑤=②+③+④
分配可能現金残高
⑥=①+⑤
○○支払留保・リザーブ等
その他留保額
留保額合計
金銭分配額
⑦
⑥-⑦
(記載上の留意事項)
a. 賃貸事業からの CF(信託配当のみの記載でも差し支えない)、投資事業(信託不動産の売買等)からの
CF、財務・ファンド CF と 3 つに区分して表示されていれば、個々の項目はファンドの個別性や金額の有
無等に応じて柔軟に増減・修正して差し支えない。
b. 「財務・ファンド収支」における「出資金の増減額」は、金銭分配に係る出資の戻しではなく、当期の現金
の増減要因となる追加出資による出資金の増加や不動産の売却に伴う出資金の償還など、臨時的に発
生する出資金の増減額を記載する。
c. 財務計算書類としてキャッシュフロー計算書を作成している場合等においては、キャッシュフロー計算書
および現金分配計算書の主要項目を表示することが望ましい(推奨)。
17
B. 期中の口座別の入出金の状況
リリース口座
XYZ 銀行
XXX 口座
XYZ 銀行
元利金支払口座
XYZ 銀行
前期末残高
当期の増加額
当期の減少額
当期末残高
(記載上の留意事項)
a. 複層型構造のファンドなど多数の口座がある場合には、出資 SPC と物件 SPC の種類ごとに合算する等
の方法により異動が分かりやすいように表示すること。
b. 上記の口座はファンドが有するものに限定し、信託口座に留保しているリザーブ金額は含めない。
(3) 借入金・社債等の状況
A. 借入の状況
借入先
XYZ 銀行
ABC 銀行
期末残高
借入日
返済期限
金利
条件
固定
固定
返済方法
期限一括返済
(記載上の留意事項)
a. 当期の異動および当期以降に計画する重要な異動に関するコメントを付記すること。また、必要に応じ
て、優先劣後の別、金利スワップ・キャップなどについて項目を追加すること。
b. スキームや借入条件により、上記の例とは異なった記載をすることが適切な場合においては、ガイドラ
インの記載項目を踏まえつつ、適宜適切な方法により記載するものとする。例えば、複層構造型のファン
ドの場合、ビークル単位等で表示することが考えられる。
c. DSCR テスト、LTV テストがあれば当期実績及び推移を記載すること (推奨)
B. 社債の状況
【当期末において発行した社債の残高がある場合には、上記借入の状況に準じて
表示する。】
4. 投資不動産の状況
(1) 投資不動産の明細
投資不動産
の名称
所在
取得日
取得価格
帳簿価格
鑑定評価
価格時点
評価額
評価損益率
合計
18
(記載上の留意事項)
a. 評価損益率の定義については、「第 4 部 主な用語の定義」を参照。
b. 上記鑑定評価を行った鑑定業者を表示または注記すること。
(2) 投資不動産の運用状況等の推移(物件毎の賃貸 NOI・稼働率)
投資不動産の名称
第○期
NOI
第○期
NOI
第○期
NOI
第○期
稼働率
第○期
稼働率
第○期
稼働率
合計
投資不動産の名称
合計
(記載上の留意事項)
a. 稼働率の定義については、「第 4 部 主な用語の定義」を参照。
b. 必要に応じて、推移のグラフなどの図示が推奨される。
(3) 投資不動産の運用概況(リーシング・賃貸の動向等)
【当期における賃貸運営の動向・異動状況とリーシング活動等 AM 会社としての運
営方針・課題等を記載する。】
投資不動産の名称
XYZ ビル
主要なテナントの動向
○階 XXX 坪 XYZ 社新規申込
○階 XXX 坪 XYZ 社解約申入 ○年○月退去
ABC ビル
・・・
(記載上の留意事項)
a. 主要なテナントの動向は、投資家へ開示すべき重要性の観点から、テナントの入退去等の主要な動向
を記載すること。
19
5. 管理・修繕・資本的支出の概況
(1) 管理・修繕等の概況
【管理・修繕等の概況については、当期における物件管理・修繕等の主要な状況、
次期以降の AM 会社の方針(費用削減やバリューアップ計画など)を記載する。】
(2) 主要な資本的支出等の概況
(推奨)
主要な資本的支出の当期実績および次期以降の計画は、以下の通りです。
投資不動産の名称
【当期実績】
XYZ ビル
ABC ビル
・・・・
その他
合計
工事内容
時期
金額
XXX 工事
YYY 工事
その他
【次期以降の計画】
XYZ ビル
ABC ビル
・・・・
その他
合計
XXX 工事
YYY 工事
その他
(記載上の留意事項)
a. 資本的支出とは、原則として、貸借対照表において資産計上されるものをいう。なお、次期以降の計画
については、計画時点では、修繕費と資本的支出の区分ができない場合も多いことから、修繕費として
費用計上される金額を含んだ金額にて計画金額を表示することも容認される。
(3) 修繕積立金の推移
(推奨)
第○期
実績
第○期
当期実績
第○期
計画
第○期
計画
前期末残高
当期積立額
当期取崩額
期末残高
(記載上の留意事項)
a. 上記修繕積立金については、原則として、ファンドの合計金額として積立額を表示する。
6. 投資不動産の売買の状況
当期における投資不動産の取得・または売却の実績は以下の通りです。
【物件取得】
投資不動産の名称
相手先
取得日
取得価格
備考
合計
20
【物件売却】
投資不動産の名称
相手先
売却日
売却価格
売却原価
売買損益
合計
(記載上の留意事項)
a. 投資不動産の売買を行なった場合に記載すること(取引がない場合は、該当なし)。
b. 売却原価は、原則として、帳簿価格に主要な売却経費(媒介手数料等)を加算したものをいう。
c. 投資不動産の売買にあたり不動産鑑定評価を取得した場合は、当該鑑定評価額及び鑑定業者名を表
示すること
7. AM 報酬及び利害関係人等との主な取引状況
(1) AM 報酬
相手先
ABC アセットマネジメント
DEFアセットマネジメント
委託内容
AM 報酬の支払
FM 報酬の支払
備考
○○の○%
円
(2) 利害関係人等との主な取引状況
当期における AM 会社の利害関係人等との主な取引状況は以下の通りです。
相手先
XYZ ビルマネジメント
XYZ 住宅サービス
XYZ 不動産販売
委託内容
ビル管理報酬の支払
PM 報酬の支払
物件売却に伴う仲介手数料
備考
○○の○%
円
合計
(記載上の留意事項)
a. 記載された利害関係人等の範囲を記載すること。なお、「利害関係人等」については、原則として、金商
法上の利害関係人等を想定しているが、社内ガイドライン等により、上記以外にも開示すべき内容があ
る場合には、併せてこれを開示する。
b. 委託内容としては、その内容に加え、金額若しくは報酬支払に関する設定条件等を表示する。
21
第 4 部 主な用語の定義
1.
表示項目等の定義
【収益率等】
原則として損益ベースの数値として算出するものとし、「期中平均残高」とある場合に
は、原則として当該期中の日数で加重平均するものとする。
なお、原則として年換算しない数値(小数点 2 桁未満を切捨て)により記載する。年換
算の数値を記載する場合には、括弧書きで併記する。
インカム損益
キャピタル損益
ファンドベースのインカム損益額を意味する。
賃貸事業損益+SPC 損益(*1)
= 当期匿名組合損益-当期キャピタル損益
ファンドベースのキャピタル損益額を意味する。
= 当期売買損益(*1)(*2)
インカム利回り
当期インカム損益÷出資の期中平均残高(*2)
キャピタル利回り
当期キャピタル損益÷出資の期中平均残高(*2)
総合利回り
インカム利回り+キャピタル利回り
匿名組合損益÷出資の期中平均残高(*2)
(*1) 不動産売却処分に係る AM 報酬等、不動産売却の直接コストとなる AM 報酬や信託報酬などが
ある場合には、かかる費用を SPC 損益に加算し、同額を当期売買損益から控除したキャピタル
損益によることが望ましい。
(*2) 不動産の評価損益(未実現損益)を考慮した収益率等を表示する場合(推奨項目)、キャピタル
損益に「当期評価損益増減額」を加減算し、「出資の期中平均残高」を、「出資の NAV の期中平均
残高」に置き換えて算出する。
【分配等】
金銭分配に関する数値を表示する。計算期との対応については、原則として、実際に
分配を行った時期ではなく、分配の源泉となる計算期に対応する分配を当期の分配
として認識するものとする。
なお、原則として年換算しない数値(小数点 2 桁未満を切捨て)により記載する。年換
算の数値を記載する場合には、括弧書きで併記する。
利益分配金
金銭分配のうち、当期の利益に相当する額
(未分配の利益が無い場合、匿名組合利益に一致)
金銭分配額
利益分配金+出資の戻し
利益分配金利回り
当期利益分配金÷出資の期中平均残高
金銭分配利回り
当期金銭分配額÷出資の期中平均残高
【賃貸 NOI】
損益ベースの数値として算出する。
賃貸事業損益+減価償却費 または
賃貸 NOI
賃貸収益-賃貸費用(減価償却費除く)
22
【売買損益】
売買損益
売却価格-売却原価(帳簿価格+仲介手数料等のそ
の他売却経費)
【SPC 損益】
SPC 損益
SPC 収益-SPC 費用
SPC 損益は、不動産投資自体から発生する賃貸事業損益や売買損益以外に、ファン
ド(SPC)に発生した損益を意味する。したがって、SPC 収益・費用には、SPC で発生し
た収益(受取利息、雑益等)・費用(支払金利、AM 報酬、会計費用、雑費等)が計上さ
れ、賃貸事業損益や売買損益に属する収益・費用は含まれない。なお、信託報酬に
ついては、SPC 費用に計上する。
【評価損益率】
投資不動産の評価損益率
鑑定評価額÷帳簿価格-1
【稼働率】
稼働率
総賃貸面積 ÷ 総賃貸可能面積
なお、戸数や収入実績など面積ベースと異なる場合は、面積ベースを表示した上で
追加的に表示する。
【売却価格/取得価格】
契約上の売買価格(取得価格についても、取得に要した経費を含まない。)を意味す
る。
23
2. 「第 3 部 Ⅲ.記載例(AM 報告書)」における損益計算書の項目とその内容
記載例の損益計算書における収支項目等とその記載内容
<鑑定評価基準におけるDCFシート構成項目>
項目
(a) 貸室賃料収入
(b) 共益費収入
(c) 共益費込貸室賃料収入(a)+(b)
(d) 水道光熱費収入
(e) 駐車場収入
(f) その他収入
① (c)+(d)+(e)+(f)
(g) 空室等損失 合計
(h) 貸倒損失
② 運営収益 ①-(g)-(h)
(i) 維持管理費
(j) 水道光熱費
(k) 修繕費
(l) プロパティマネジメントフィー
(m) テナント募集費用等
(n) 公租公課
(o) 損害保険料
(p) その他費用
③ 運営費用 (i)~(p)の合計
④ 運営純収益
<記載例の損益計算書>
項目
賃料収益
各項目ごとの記載内容
「貸室賃料収入」、「共益費収入」を計上
その他収益
「駐車場収入」、「水道光熱費収入」等を計上
違約金収入(テナントの早期退去等)も本項目に計上
賃貸事業収益 計
建物管理費
水道光熱費
修繕費
PM報酬
「テナント募集費用等」は「その他費用」に計上
公租公課
損害保険料
その他費用
賃貸事業費用 計
賃貸NOI
減価償却費
賃貸事業損益
売買収益
(帳簿価額)
(その他売却費用)
売買原価
売買損益
受取利息
その他収益
SPC収益 計
信託報酬
AM報酬
支払利息
償却費
その他費用
SPC費用 計
SPC損益
賃貸事業費用に含まれる「その他費用」
=賃貸事業収益-賃貸事業費用
賃貸事業費用に含まれる「減価償却費」
=賃貸NOI-減価償却費
=譲渡価額
=償却後簿価
売買に伴う「その他費用」
=仲介手数料等
=帳簿価額+仲介手数料等のその他売却費用
=売買収益-売買原価
SPCレベルの「その他収益」
受取利息等、賃貸・売買以外にSPCで生じる収益
SPCレベルの費用として計上
SPCレベルの「償却費」
=融資手数料償却等
SPCレベルの「その他費用」
上記のようなSPCで生じる賃貸・売買以外のSPC費用
=SPC収益計-SPC費用計
当期利益(=匿名組合損益) =賃貸事業損益+売買損益+SPC損益
24
共通 Q&A
【Q1-1】
本ガイドラインは、どのような性格のものか。何らかの法令に基づいたものである
のか。ARES 会員企業は遵守することが求められるのか。
【A1-1】
本ガイドラインの目的は、ガイドラインに記載のとおり、投資家が私募不動産ファンド
に投資を行う場合における類似ファンドの比較可能性を高め、投資の利便性を向上
し、市場をより発展させるためのインフラを提供することにあります。あくまでも、当協
会が任意で策定したものであり、何らかの法令に基づいて作成されたものではありま
せん。したがって、各事業者が当協会の会員であるか否かに関わらず、AM 報告書の
作成にあたり、本ガイドラインを適用するか否かの判断は、各事業者に委ねられてお
ります。
本ガイドラインの各項目は、「標準項目」と「推奨項目」に区分されています。「標準項
目」は、本ガイドラインを適用する場合、原則として表示すべき項目であり、「推奨項
目」は、本ガイドラインを適用する場合に、表示することが推奨される項目です。した
がって、本ガイドラインに従って商品概要書や AM 報告書を作成しているという場合、
原則として全ての標準項目を表示していることも意味します。なお、上述のように、基
本的に本ガイドラインの適用が任意であることから、「標準項目」であるか「推奨項目」
であるかに関わらず、各事業者の判断において、一部の項目を表示しないことはあり
得ますが、その場合には、通常、本ガイドラインに従って商品概要書や AM 報告書を
作成しているとはされないものと考えます。
【Q1-2】
【A1-2】
本ガイドラインの適用範囲、及び、適用開始時期はどうなるのか。
本ガイドラインは、私募不動産ファンドの比較可能性の向上等を目的として実務上の
要請に基づいて策定したものであり、法令に基づいて定められたものではありません。
したがって、新規で組成するファンドから適用するか、既存のファンドにも適用するか、
あるいは、マネジメントしているファンドの一部について適用するか、全てのファンドに
ついて適用するか等を含め、個々のファンドについて本ガイドラインを適用するか否
かは、基本的にAM会社または私募の取扱者等にて任意で判断いただくものです。
投資家の要請、スキーム、運用戦略(コア、コアプラス、バリューアッド、オポチュニス
ティック)、投資対象不動産の違い等により記載すべき項目が異なる場合があるもの
と思われることから、厳密な適用範囲を定めるものではありませんが、主として、日本
国内の年金が投資を行う場合を想定し、匿名組合出資を活用したいわゆるGK-TKス
キーム(単独型 SPC)によるコア型ファンドを念頭に置いて策定しております。
また、適用開始時期についても、ガイドラインで触れているとおり、作成者において判
断いただくことになりますので、特に、発効期日や適用開始に係る経過期間等は設定
しておりません。
ただし、本ガイドラインで定めた記載事項は、年金以外の機関投資家に報告を行う場
合にも、概ね活用可能なものであると考えております。また、GK-TKスキーム(シング
ル SPC 型)によるファンド以外においても、それに合わせた読み替えを行った上で、本
ガイドラインを適用して商品概要書及び AM 報告書が作成されることにより、ファンド
間の比較可能性が高まり、投資家の利便性の向上に資するものと考えられます。
【Q1-3】
記載事項や記載例において、重複する内容が見受けられる。この点について
は、整理・簡素化するべきではないか。
【A1-3】
本ガイドラインは、商品概要書については、①ファンドの概要的な情報(第 1 章~第 3
章)、②より詳細なファンドの情報(第 4 章~第 6 章)、③参考・補足情報により構成さ
25
れており、AM 報告書については、①サマリー(1.運用状況等の推移)、②本文(2.出
資元本・分配等の状況~7.利害関係人等との取引状況)、③添付資料により報告書
を構成されています。こうした性格上、①、②、③の間では必然的に重複する内容が
出てくることから、ご指摘の点については認識しておりますが、このような記載事項に
て設定しているものです。
【Q1-4】
【A1-4】
複層構造型のファンドの場合等、スキームによっては、参考例や記載例の様式
のままでは対応できない箇所が見受けられる。こうした場合には、どのように本ガ
イドラインを適用すればよいのか。
本文にもあるとおり、参考例や記載例はあくまでも例示と位置付けられるものです。し
たがって、個々のファンドのスキーム、戦略、投資対象不動産の相違等により、その
様式のままでは適切な表示ができない場合においては、適宜適切な方法により表示
を行うことが期待されております。この結果として、参考例や記載例と異なる様式によ
り表示を行うことは、本ガイドラインの趣旨に反するものではありません。
なお、表示方法について検討する際には、本ガイドラインが、比較可能性等の観点か
ら記載項目の順序を重視している点には特に留意が必要であると考えます。
また、複層構造型ファンドの場合、マザーSPC に関する情報を開示するのみでは、運
用状況を十分に示すことが難しいことから、何らかの方法により、単独型と同水準程
度に収益の源泉や財産の状況を把握するに足る開示がなされることが期待されます。
具体的な対応については個々のファンドの状況に応じて判断いただくことになります
が、一例として、P/L・B/S に関する内容については、子 SPC の同一科目を集計して表
示する等の対応が考えられます。
【Q1-5】
ANREV(アジア非上場不動産投資家協会)でも同様のガイドラインを作成してお
り、海外投資家の一部から「ANREV のガイドラインに基づきファンドを運営して欲
しい」という要請を受けることがある。ARES のガイドラインについても、将来的に
は ANREV その他の機関が公表している基準と整合するものとなることを視野に
入れているのか。
【A1-5】
ARES が策定するガイドラインは、主として国内年金を始めとする日本の機関投資家
のニーズを念頭に、不動産投資市場の特性や実際のディスクロージャー・会計報告
実務、J-REIT の目論見書や資産運用報告等との平仄を踏まえて策定しています。
一方、ANREV のガイドラインは、主として、欧州や中近東(EMEA 圏)の機関投資家の
ニーズを踏まえて作成された INREV(欧州非上場不動産投資家協会)のガイドライン
に準拠されています。ARES では、これらとの整合も検討いたしましたが、上記のよう
な日本の機関投資家のニーズや日本市場の実務慣行等を反映している訳ではなく、
無理に整合させようとすると、非常に使いづらい、あるいはニーズとかけ離れたものと
なる虞があると考えております。なお、米系の投資家には別の指針等があり、INREV
ガイドラインへの準拠を求めてはいない等、グローバルにも統一された指針があるわ
けではありません。したがって、ARES が策定するガイドラインは、ANREV 等のガイドラ
インとの整合性を考慮しておらず、また、現段階では、整合ないし統一させる具体的
な計画があるものではありません。
【Q1-6】
本ガイドラインにおいては、投資パフォーマンスに関する国際的な基準である
GIPS®への準拠が意識されていない。この点を考慮した内容とするべきではな
いか。
【A1-6】
本ガイドライン検討の過程においても、GIPS との関係についての論点は議論されて
おり、準拠が意識されていない点については認識しております。しかしながら、GIPS
26
準拠は本来、GIPS 準拠を必要とする投資家との投資一任契約や運用目的の信託契
約を締結する受託運用機関に求められるものであり、本ガイドラインが想定する私募
不動産ファンドの開示の際、AM 会社に直接的に求められるものではありません。ま
た、GIPS 準拠は、AM 会社個社が準拠表明した場合、全てのファンドのパフォーマン
ス報告を GIPS に準拠する必要があり、また、GIPS に部分的に準拠するようなことも
認められません。したがって、現時点では各AM会社において検討すべき課題である
といった見解から、現状においては、このような形で整理をさせていただいているもの
です。
準拠を目指すことが必要であれば、そのために備えるべき内容や論点に関し、別途、
検討を行うことが求められるものと思われます。
【Q1-7】
本ガイドラインの内容が、現時点において妥当であったとしても、策定後の市場
環境の変化により、内容の妥当性が低下することも考えられる。こうした場合に
は、どのような対応を考えているのか。
【A1-7】
ご指摘のとおり、市場環境や慣行の変化により、内容の妥当性が低下したり、また、
実務上の負担と有用性等に鑑みて見直しが必要な内容が生じたりしてくることは想定
されます。本ガイドラインの内容や妥当性について定期的に見直しの要否を確認し、
必要に応じて改訂を行うべきであると認識しております。現在のところ、アンケート調
査等により状況を把握した上で、ガイドラインの策定について検討を行った年金不動
産投資小委員会及びディスクロージャーWG において改訂の必要性について検討を
行う方針です。
第 2 部 発行開示関連 Q&A
【Q2-1】
本ガイドラインは、商品概要書等が金融商品取引法上の広告として取り扱われる
可能性がある場合も視野に入れているのか。
【A2-1】
本文にも記載のとおり、本ガイドラインは、私募という性格上、法令等による特段の定
めが無い商品概要書の作成に関する指針を提供し、投資家が私募不動産ファンドへ
の投資を検討する場合における類似ファンドの比較可能性・利便性を高め、市場の
透明性をより向上させるためのインフラを提供することを目的としています。したがっ
て、本ガイドラインに準拠していることのみをもって、何らかの法的な定めを充足する
ことを意図している訳ではありません。
このため、本ガイドラインへの準拠の有無に関わらず、商品概要書等が、金商法上の
広告規制を含む何らかの法令等の適用を受ける場合には、当該法令等に即した記
載が求められることにご留意ください。
【Q2-2】
「運用戦略による分類」とあるが、具体的にはどのような分類で記載すればよい
のか。
例えば、「コア」という用語については、インカム・キャピタルという収益指標で定
義することが望ましい場合と、エリア・物件規模・物件特性等、総合的要因を勘案
して定義することが望ましい場合があり、必ずしも運用戦略を分類する用語として
のみ使われている訳ではないのではないか。
<第 1 章発行概要/4.ファンドの運用目的>
【A2-2】
「コア」という用語が、実務上、ご指摘のようにいくつかの側面を捉えて異なった使わ
れ方をしている場合があることは認識しておりますが、本ガイドラインにおいては、混
同を避け、ファンドの性格を端的に示せるよう、「コア」という用語を、ファンドの運用戦
27
略を分類する用語として用いることを推奨するものです。具体的に想定しているファン
ドの分類を例示すれば次のとおりです。
なお、これらの分類は、グローバルにも実務的に多く用いられている分類を示したも
のですが、これらの分類に厳密に当てはまらない、中間的なファンドもあります。この
ような場合、投資家をミスリードすることがないよう、十分な説明を行うなどの対応が
期待されます。
<運用戦略による分類>
名称
コア型
内容
ファンドの主要な期待リターンの源泉が、不動産賃貸から
の生じるインカム・リターン(以下「賃貸インカム」)の獲得
を目的として運用されるファンド
※この場合、キャピタル・リターンについては、主要な期待
リターンではないが、低~中リスクの不動産市場の変動リ
スクを負う。
コアプラス型
ファンドの主要な期待リターンの源泉が、コア型と同様、
賃貸インカムの獲得を目的とするが、一部についてはキャ
ピタル・リターンの獲得をも目的として運用されるファンド
バリューアッド型
ファンドの主要な期待リターンの源泉が、賃貸インカムの
獲得に加えて、割安に取得した不動産等について、積極
的に収益性を高め、不動産価値を増加させることによりキ
ャピタル・リターンの獲得を目的として運用されるファンド
※ 投資対象によっては、現状の収益性が陳腐化等によ
り劣後している不動産等に投資されることも多く、一般に、
コア、コアプラス型より、リスクが高い
オポチュニスティック型 ファンドの主要な期待リターンの源泉が、市場動向予測に
基づいた不動産の売買により、キャピタル・リターンの獲
得を目的としたファンド
※賃貸や売買市場動向の予測に基づく転売利益、または
バルクセールの買収処分、M&A など多様な形態がある
が、上記よりもリスクが高いもの
<物件の組入方針による分類>
名称
内容
物件固定型
ファンド設定時より、ファンドの全ての組入れ物件が明示
されており、運用期間中に、追加取得されることがないも
の
物件追加型
ファンド設定時より、ファンドの組入れ物件が明示されてい
るが、運用期間中に、別途追加取得されることが想定され
ているもの
ブラインド型
ファンド設定時には、ファンドの組入れ物件が明示されて
おらず、運用期間中に、全ての物件が取得されることが想
定されているもの
【Q2-3】
「運用シナリオの概要」としてどのような内容を記載するのか?
<第 2 章ファンドの概要情報/1.運用方針の概要/(2)運用シナリオの概要>
【A2-3】
運用シナリオについては、前項の「ファンドの基本的性格」の方針の下で、例えば「運
用開始時」、「運用期間中」、「運用終了時」等の期間別に記載、あるいはメインシナリ
オやサブシナリオ等のシナリオ別に記載することにより、運用期間全体に渡ってどの
28
ようなシナリオのもとに運用収益を実現していくのかを記載するものです。
運用シナリオは、個々のファンドの特性・戦略により異なるものであり、これらの例示
に捉われるものではなく、また、より分かりやすい方法で記載されることを妨げるもの
ではありません。
【Q2-4】
イニシャルコスト等、商品概要書発行段階で詳細未確定のものもある。何故、未
確定の内容まで記載することを求めているのか。
<第 2 章ファンドの概要情報/3.運用調達計画の概要/(1)運用調達計画>
【A2-4】
物件固定型のファンドでは設定時から、追加型のファンドでも定常時において、ファン
ドの収支計画の前提となる運用調達計画は、確定していなくとも概算ないし見積もり
ベースで作成されているものと思われます。こうした運用調達計画は、ファンドの概要
(資金使途や外部負債などを含む)を示すものとして、投資家の検討上、重要な内容
であると考えられるためです。したがって、仮に未確定の場合であっても、概算ないし
見積りにより記載することとしています。
【Q2-5】
商品概要書発行段階で詳細未確定のものもあるため、比較的細かい、個別の借
入内容や条件まで、商品概要書上に記載する必要は無いのではないか。
<第 2 章ファンドの概要情報/3.運用調達計画の概要/(2)借入の概要・借入
方針>
【A2-5】
物件固定型のファンドでは設定時から、ファンドの収支計画の前提となる借入計画は、
確定していなくとも概算ないし見積もりベースで作成されているものと思われます。こ
うした借入の概要については、個別借入金毎の借入先、借入条件を含めて、ファンド
の設定時に判明している事項については記載すべきという趣旨であり、投資家の検
討上、重要な内容であると考えられるためです。したがって、仮に未確定の場合であ
っても、概算ないし見積りにより記載することとしています。
【Q2-6】
目標利回りを商品概要書の記載項目とした趣旨は何か? また、記載にあたっ
て特に留意すべき点等があれば補足願いたい。
<第 2 章ファンドの概要情報/5.目標利回り>
【A2-6】
私募ファンドにおいては、大半のファンドが何らかの形で目標利回りを設定し、投資
家への提示がなされている一方で、現状では、①商品概要書とは別の説明資料等で
提示される等、必ずしも商品概要書に記載されていないこと、②目標利回りの表示の
仕方についても各社各様となっていること、が課題と考えております。
①については、商品概要書の趣旨に照らせば、こうした重要情報は商品概要書に集
約して提示されることが望ましいことから、本ガイドラインでは、標準記載項目として定
めたものです。
②については、目標利回りは、ファンドの戦略等によって多様であるため、表示の仕
方によっては、投資家の誤解を招く懸念があります。提示される目標利回りが、例え
ば以下のような点について留意しつつ、記載されることが望まれます。
・ 期中のインカムを主体とした分配利回りを示すのか、売却を含む運用期間全体の
利回りを示すのか、あるいは双方を目標としているのか
・ 分配利回りであれば、損益ベースの利益分配の利回りとキャッシュベースの利回り
の内訳はどうなっているか。利益分配分と出資の戻しや減資分が区分されている
か
・ IRR やエクイティマルチプルなどの所有期間全体の利回りであれば、インカム・リタ
ーンとキャピタル・リターンの比率はどの程度が目標とされているか
記載にあたっては、「第 4 部 主な用語の定義」における「収益率等」、「分配等」の定
29
義を踏まえ、誤解を生じることが無いよう、十分に留意してください。
【Q2-7】
「第 2 章 6.主要な投資リスク等」と「第 6 章 1.その他の投資リスク」にそれぞれ
投資リスクの記載があるが、各区分において、具体的にはどのような項目や内
容を記載すればよいか。
<第 2 章ファンドの概要情報/6.主要な投資リスク等>
<第 6 章投資上の留意事項/1.その他の投資リスク>
【A2-7】
本ガイドラインにおける商品概要書の指針は、第 1 章から第 3 章までが一通り理解す
るまでの概要事項、第 4 章以降が詳細事項という構成になっており、「第 2 章 6.主要
な投資リスク等」については、投資者の投資判断に重要な影響を与えると思われる主
要な投資上のリスクの概要を示した上で、第 6 章の詳細事項において、さらに付加的
にまたは重畳的にリスクを説明する構成になっています。
これは、現状、投資リスクの記載にあたり、リスク事項が網羅的に羅列され、かつ膨
大な分量となり、どのリスクが重要なのか等を含めて理解しづらいものが散見される
ことに対応したものです。
なお、「第 2 章 6.主要な投資リスク等」の参考例は以下の通りです。
【ファンドのリターンに影響を与える主な変動要因】
テナント市況等の変動に伴 ・経済環境の変化等により、テナント市況の変動
う賃貸収益等の変動リスク
(空室率の上昇や賃料単価の下落)、または維持
経費の変動(管理費・諸税の上昇等)により、賃貸
収益が減少し、不動産の収益性が影響を受け、フ
ァンドの分配率、不動産の評価額が影響を受ける
こと
不動産市況の変動に伴う評 ・経済環境等の変化により不動産市況が変動し、
価額の変動リスク
不動産取引の低迷等により、不動産の評価額が
影響を受け、出資元本の価値が影響をうけること
出資の流動性に関するリス ・ファンドへの出資は、流通市場が存在せず、中途
ク
で換価処分できない、または処分できたとしても大
きく元本を棄損する可能性があること
ファンド又は不動産に係る ・ファンド又は不動産に関する法律・税制・会計・環
規制環境の変化
境等の規制環境の変化により、ファンドや組入不
動産の収益性が影響を受け、出資元本の価値や
分配率等が影響を受けること
ファンドの終了・償還時のリ ・ファンドの終了・償還時に組入不動産を売却でき
スク
ず、意図せず、借入金の完済まで等、ファンドが延
長される可能性があること
借入に伴うリスク
・ファンドは、出資元本に加えて借入金を調達する
ことにより、出資元本を上回る投資(レバレッジ)を
行っており、不動産市況の下落局面では、現物不
動産投資より大きな影響を受けること
・借入金の期限時に相当する組入不動産を売却で
きず、またはリファイナンスができず期限の利益を
喪失する可能性があること(デフォルト・リスク)
・売却時の出資金の劣後性により出資元本が毀損
する可能性があること
・借入に伴う金利の変動、借入条件・コベナンツへ
の抵触等により、ファンドの価値や分配率等が影
響を受けること
30
【その他本ファンド特有の変動要因】
運用方針・戦略に伴うリスク ・インカム・リターンの獲得を主目的とした投資か、
キャピタル・リターンの獲得を主目的とした投資か
等、ファンド特有の運用戦略に起因するリスクがあ
れば記載
・ファンドの組入不動産に関する、物件数、エリア、
用途、テナント等への集中リスク等
ファンドの関係人・利益相反 ・ファンドの運営は、関与する関係人へ依存されて
に関するリスク
おり、関係人の破綻等の場合、ファンドの運営が
影響を受けること
・利害関係人等との間で、経済合理性に合わない
利益相反取引がある場合、ファンドの収益性が影
響をうけること
組入不動産に関する特記 ・組入不動産に関する特記すべき重要なリスクが
事項
あれば記載
「第 6 章 1.その他の投資リスク」については、特段参考例は設けませんが、上記主要
なリスク事項を付加的または重畳的に補完するものとして、簡潔かつ分かりやすく記
載されることがのぞまれます。
【Q2-8】
商品概要書発行段階で詳細未確定のものもある。受託条件等まで、商品概要書
上に記載する必要は無いのではないか。
<第 3 章組入不動産の概要/2.不動産信託受益権の概要>
【A2-8】
物件ごとの不動産管理処分信託に関する基本的な情報として、受託者、信託報酬、信
託期間は最低限記載すべき内容と思われます。
なお、細目について未確定の場合、予定の内容があればそれを記載し、予定の内容
も無ければ、その旨記載すれば足りるものと思われます。
【Q2-9】
「保管方法・分別管理の内容」とはどのような記載か。
<第 4 章ファンドの詳細情報/3.ファンドの管理及び運営/(2)保管>
【A2-9】
ファンドが保有する不動産、受益権、キャッシュ等がどのように AM 会社等の固有財産
と混同されず、分別管理されているかを記載することを想定しています。
【Q2-10】
第 5 章における内容は、第 4 章以前において記載されている内容のように見受
けられる。内容が重複しているのはどういった趣旨か。
<第 5 章出資契約・関連契約等の概要>
【A2-10】 本ガイドラインで指針を示している商品概要書の構成として、第 1 章から第 3 章までが
一通り理解するまでの概要事項、第 4 章以降が詳細事項という構成になっております
ので、ご指摘のような一部に重複があることを前提としたものとなっております。
なお、第 5 章の記載事項自体については、ここまでの詳細情報は必要ではないので
はないかというご意見もありましたが、実務慣行として、出資契約や関連契約の概要
が記載された商品概要書が多く作成されていることに配慮したものです。
一方、出資契約や関連契約の概要について、契約書の原文をほぼそのまま添付し、
膨大な分量となっている例も見受けられますが、表形式などにより、概要として、簡潔
な記載を旨とするべきであると思料します。
31
第 3 部継続開示関連 Q&A
【Q3-1】
本ガイドラインは、金商法における投資一任契約に際し、権利者への交付や内
閣総理大臣への届出が義務付けられている「運用報告書」(第 42 条の 7)と整
合した内容になっているのか。
【A3-1】
いわゆる GK-TK スキームを活用した私募不動産ファンドの場合、一般に、AM 会社
の顧客は SPC となっていますが、当該 SPC が適格機関投資家等特例業務の届出を
行っている場合、SPC は特定投資家として取り扱われるため、同条における運用報告
書の交付義務を免除されることになります。また、本ガイドラインの適用を想定してい
る AM 報告書は、上記スキームにおいて AM 会社から SPC に対する匿名組合出資者
に交付されるものです。
このように、前提として交付義務が免除される状況を想定しており、また、交付対象も
異なることから、本ガイドラインの策定にあたっては、同条で規定される運用報告書と
の整合について特段の検討を行っておりません。したがって、本ガイドラインを適用し
て作成された AM 報告書が同条で規定する運用報告書としても要件を満たしているか
どうかについては、別途、検証の必要があるものと考えます。
【Q3-2】
本ガイドラインは、金商法における投資運用業において適用することを想定した
ものか。投資助言業への適用はあるのか。
【A3-2】
本ガイドラインは、法令に基づいて定められたものではありませんので、投資運用業
と投資助言業のいずれの場合に適用するのかという点に関しては、策定にあたって
特段考慮しておりません。また、基本的な位置付けとして、任意適用のガイドラインと
して策定されています。
したがって、投資運用業か投資助言業かを問わず、本ガイドラインの適用の要否は
AM 会社においてご判断いただくことになります。
【Q3-3】
賃貸 NOI は、何故、現金ベースではなく損益ベースにより算出するものとしてい
るのか?
<1.運用状況等の推移/(1)運用実績の推移/A.営業成績の概況 ほか>
【A3-3】
一つの理由として、比較可能性の向上という観点から、現在、J-REIT において賃貸
NOI が開示されている場合、損益ベースの考え方に基づいて算出されていることを考
慮したものです。また、損益計算書の数値から簡易に算出することが可能であること
もその理由です。
なお、賃貸 NOI に限らず、本ガイドラインで算出方法を定義している用語について、
本ガイドラインとは異なる方法により算出している場合や、算出方法に関して追加的
な説明が必要と考えられる場合等においては、適宜、必要な内容を注記すべきものと
考えます。
【Q3-4】
利回り計算の際に分母となる「出資の期中平均残高」は、例えば、減損会計の適
用により、SPC の保有物件に減損が生じ、損失を計上したことにより、「出資の残
高」が減少した場合、それ以降の期においては、減少後の「出資の残高」に基づ
いて計算することになる。「出資の残高」が減少した場合、その後の期において、
これを元に NAV や利回りを計算すると、数値が高くなり、あたかも、不動産の価
値や収益性が回復・向上したかのような誤解を与える懸念があるのではないか。
<1.運用状況等の推移/(1)運用実績の推移/C.収益率等の概況 ほか>
32
【A3-4】
本ガイドラインの定義に基づけば、ご指摘のとおり、各指標はそのような性格を有する
ことになります。したがって、減損等に限らず、指標の数値を大幅に変化させるような
事象が発生して出資の残高が大幅に変化した場合においては、それらの事象が発
生しており、指標の算出過程に影響を及ぼしていることについて、何らかの注記等が
必要になるものと思われます。
【Q3-5】
当社では、現金分配を年 4 回、損益確定による分配を年 1 回実施している。この
場合、分配金や利回りと計算期間との対応関係をどのように記載すべきか。ま
た、期中の現金分配は仮分配となるため、出資の戻しは期末で認識している。こ
の時、利回り計算の際に分母となる「出資の期中平均残高」についても、同様の
考え方により算出するものと考えて良いか。
<1.運用状況等の推移/(1)運用実績の推移/C. 収益率等の概況 ほか>
【A3-5】
分配金や利回りに関する数値については、分配の源泉となる計算期間に対応する分
配金と出資額の平均残高を対応させて、計算期間ごとに表示することを原則としてお
ります。
なお、出資残高については、匿名組合契約等のファンドの約定内容に応じて定まる帳
簿上の数値に基づいて算出されるものであることから、それに合わせた処理を行うこ
とになります。
【Q3-6】
記載例の NAV 算定式では、経過収益等の調整が考慮されていないが何故か。
<2.出資の異動・残高等の推移/(2)出資の NAV の推移>
【A3-6】
NAV に関しては、現状、算出方法についての考え方が確立されているとまでは言え
ない状況にあると思われることから、ご指摘の経過収益として様々な要素が考えられ
ることから、推奨項目と位置付けています。
こうしたことから、記載例においては、最も簡素な算定の考え方に基づいて整理して
いますが、本項目については、AM 会社が投資家と協議の上で、合意した計算方法に
より NAV を表示することが望ましいと思われます。
【Q3-7】
記載例の NAV 算定式では、ファンド立上時の長期前払費用が考慮されていない
ようであるが、これは償却によりファンドの期間損益に反映されるためと考えてよ
いか。
<2.出資の異動・残高等の推移/(2)出資の NAV の推移>
【A3-7】
ご指摘のとおりです。
【Q3-8】
例えば、ファンド立上時等、他に含み益がない状況において鑑定評価額と同額で
物件を購入した場合、諸経費込みの帳簿価格は「鑑定評価額+α」なるので「⑤
-④」はマイナスとなる。つまり、物件を鑑定評価額と同額で購入した場合、出資
したと同時にローン手数料等の諸経費分に相当する毀損が生じることになるが、
そのような理解でよいか。
<2.出資の異動・残高等の推移/(2)出資の NAV の推移>
【A3-8】
NAV に関しては、現状、算出方法についての考え方が確立されているとまでは言え
ない状況にあると思われることから、本項目については、AM 会社が投資家と協議の
上で、合意した計算方法により NAV を表示することが望ましいと思われます。ご指摘
の方法もある一方で、取得と同時に毀損や評価益が発生することは取引実態に即し
ていない面もあり、取得当初は取引価格を市場時価として、再鑑定取得時から評価
損益を加減算する方法も考えられます。
33
【Q3-9】
ここで表示する分配金等とは、単位口数あたり等ではなく、エクイティ全体と理解
してよいか。
<2.出資の異動・残高等の推移/(4)分配等の状況>
【A3-9】
ご指摘のとおりです。
【Q3-10】
損益計算書の科目名称や、費用科目名称の並び順は、記載されている内容に
完全に統一することを想定しているのか。それとも、ある程度の柔軟性を持たせ
るのか。その際にはどの程度の改変が容認されるのか。
<3.ファンドの収支概況/(1)損益計算書・貸借対照表の概況・推移>
【A3-10】
本ガイドラインの様式は記載例という位置付けですので、ある程度の改変は当然に
容認されるものと考えます。ただし、どの程度の改変をガイドラインの範囲内と考えら
れるかについて、一律の線引きはしにくく、また、改変のレベル感に関する具体的な
表現は困難であると思われますので、記載例を標準としながら、なるべくその趣旨に
即した形の表現となるよう、各社にてご判断いただくものと考えます。
【Q3-11】
同記載例では、当決算期のキャッシュの異動と決算後分配までのキャッシュの異
動が混在していると見受けられるが、どういう趣旨か?
<3.ファンドの収支概況/(2)キャッシュフロー等の概況・推移/A.キャッシュフ
ローの推移>
【A3-11】
記載例は、当期の現金分配までのウォーターフォールを示すものとして実務で慣行
として作成されているものを示しています。ご指摘のように、本来、ファンドの決算期
中の現金の異動を表す「キャッシュフロー計算書」としての事項と、決算期終了後現
金分配までの原資を示す「分配計算書」としての事項は、別々に作成されるべきもの
であり、下表のように記載することも可能です。
第○期
第○期
通期
自
201X/4/1
201X/7/1
201X/4/1
至
201X/6/30
201X/9/30
201X/3/31
【A.キャッシュフロー概況】
前期繰越金残高
①
賃貸事業 CF
前期信託配当
賃貸事業 CF 計
②
投資活動 CF
信託不動産の取得
信託不動産の売却
投資活動 CF 計
③
財務・ファンド CF
出資金の増加
借入元本の調達
消費税還付・その他収入
前期利益分配金の支払
出資金の減少
借入元利金の返済
AM 報酬の支払
その他支払
財務・ファンド CF 計
当期 CF
当期繰越金残高
④
⑤=②+③+④
⑥=①+⑤
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【B. 現金分配の概況】
当期信託配当
⑦
消費税還付・その他収入
⑧
分配可能現金残高
⑨=⑥+⑦+⑧
元利払留保額
AM 報酬等留保額
その他支払・積立留保額
留保額合計
金銭分配額
⑩
⑨-⑩
【Q3-12】
「金銭分配額」は、利益分配金と出資の戻しにより構成されているため、「財務・フ
ァンド収支」に「出資金の増減額」を記載することは、記載が重複していることにな
らないか。
<3.ファンドの収支概況/(2)キャッシュフロー等の概況・推移/A.キャッシュフ
ローの推移>
【A3-12】
記載例のように、当期の金銭分配額までのウォーターフォールとして記載した場合
(A3-11 参照)には、ご指摘の「財務・ファンド収支」の「出資金の増減額」に、前期およ
び当期の金銭分配に係る出資金の減少は含まれません。(本文「第 3 部 Ⅲ.記載例
(AM 報告書)」における該当項目の記載上の留意事項 b.参照)
当該項目は、当期の現金の増減要因として、計算期間中の臨時的な追加出資によ
る出資金の増加や不動産の売却による出資金の償還などが考えられるため、出資
金の増減額として記載しているものです。
【Q3-13】
DSCR テスト、LTV テストについては、AM 報告書に表示する各数値とは算出の
タイミングが異なる。また、別途報告書を作成していることも多い。こうした場合に
は表示の必要は無いのではないか。
<3.ファンドの収支概況/(3)借入金・社債等の状況/A.借入の状況>
【A3-13】
DSCR テスト、LTV テストについては推奨項目であることから、個別の状況や投資家
のニーズに応じて表示の要否が判断される項目であり、表示することは必須ではあり
ません。
なお、別途報告書を作成している場合においても、当該報告書がレンダーにしか提供
されないことも多いものと認識していますが、当該報告書がファンドの投資家にも交
付されており、それによって投資家のニーズが満たされていれば、表示が不要と判断
される場合も当然にあるものと考えられます。
【Q3-14】
資本的支出等の「当期実績」及び「次期以降の計画」については、どのようなもの
を想定しているのか。
<5.管理・修繕・資本的支出等の概況>
【A3-14】 ここで言う「当期」とは、当該報告書の対象とする期間、「次期」とはその後の期間を想
定している。
例えば、四半期ごとの報告が行われる場合における第 1 四半期報告書においては、
「当期実績」として第 1 四半期に実施した資本的支出を表示するとともに、第 2~第 4
四半期における資本的支出の計画を、既に計画がたっている内容に関して表示する。
同様に、年次報告書においては、「当期実績」として当該年度に実施した資本的支出
を表示し、「次期以降の計画」としては、次年度に実施する資本的支出のうち計画が
立っているも内容を表示する。したがって、当該報告書が対象とする期間や報告のス
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パンに即して、「当期」及び「次期以降」の捉え方を、適宜、それに合った形で判断す
ることになると思われます。
【Q3-15】
「Ⅴ.[本文] 3.(2) B 期中の口座別の入出金の状況」では、「信託口座は含まな
い」との注記があるが、「修繕積立金の推移」では、信託口座残高と SPC 口座残
高を合計して記載するのか。
<5.管理・修繕・資本的支出等の概況/(3)修繕積立金の推移>
【A3-15】
AM 会社は、通常、物件ごとに修繕積立金を管理しているものと思われます。この修
繕積立金について、総額がいくらか、どのくらい取り崩し、積み立てている状況にある
のかを表示することを意図した項目です。したがって、その修繕積立金が信託内か否
かに関わらず合計されることが、趣旨に即しているものと考えます。
【Q3-16】
ここでいう「取引状況」とは、「契約の状況」の記載を想定しているという理解でよ
いか。「委託内容」の記載例を見ると、当期の利害関係人への支払額を網羅的に
記載するように見えるが、利害関係人が PM の場合、PM 経由の支払額を全て記
載するのでは、金額が過剰に表示されるのではないか。
<7.AM 報酬及び利害関係人等との主な取引状況>
【A3-16】
本項目は、利害関係人等に対する支払の状況を表示することを意図したものであり、
基本的には、契約等に基づいて定められた金額等を記載すれば足りるものと考えら
れます。
また、支払額の記載については、利害関係人に対する実質的な支払額を記載する趣
旨から、第三者への再委託額等(BM 委託費など)を除いたネットの支払額を記載す
れば足りるものと考えます。一方、実務的には、利害関係人への支払額をシステム等
により抽出して集計している場合などで、グロスで記載することになったとしても、趣
旨に反するものではありません。いずれの方法で表示を行うにしても、当該項目に関
しては、利害関係人の範囲等も含め、記載内容の理解に資するよう、必要に応じて注
記を行うものとしてください。
以 上
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