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積層ゴムのクリープに関する研究(その1) -
背 景 当所では高速増殖炉を対象にした建屋三次元免震構造の研究を行ってきた。ゴム 材料には粘弾性的な性質があるため、一定の鉛直荷重を支持する積層ゴムはクリー プ変形することが知られている。特に厚肉積層ゴムはゴム層の薄い水平免震用積層 ゴムと比較してクリープ変形および長期的な載荷による鉛直剛性の変化が大きいと 予想されるため、厚肉積層ゴムのクリープ特性を評価する必要がある。 目 的 厚肉積層ゴムのクリープ特性を試験により把握し、クリープおよび長期載荷後の 鉛直剛性の評価手法を開発する。 主な成果 (1)長期の載荷試験による厚肉積層ゴムのクリープ特性の評価 1) 粘弾性力学モデルによるクリープ特性の評価 これまで試験例の少ない厚肉積層ゴムの長期載荷試験を常温下(22℃)で実施し、ク リープ特性を把握した。また、積層ゴムのクリープ特性を粘弾性力学モデルによっ て、時間 t に関する対数項と線形項の和としてモデル化した。 A c = =t + > lnt + 1 ここで、 A c はクリープひずみ、α、βは粘弾性力学モデルの定数をあらわす。 2) 粘弾性力学モデルの定数 同一のゴム種で製作された一次形状係数*が3~20までの積層ゴムの設計支持荷重 下(4.9MPa)におけるクリープ特性から、載荷初期の定常的なクリープ特性をあらわ す定数βはおおよそ剛性に反比例すること、αはおおよそ一定であることがわかっ た。また、ゴム種と形状が同一で、2.45MPa、4.90MPaおよび9.80MPaと異なる載荷 荷重条件下での積層ゴムのクリープ特性から、βはおおよそ荷重に比例し、αは試 験を行った載荷荷重の範囲では一定であることがわかった。 (2)クリープおよび長期載荷後の鉛直剛性を評価可能な手法の開発 1) 数値解析手法の開発 積層ゴムのクリープ特性および長期載荷による力学特性の変化を数値解析によっ て評価するため、ゴム材料の数値モデルをユーザールーチンとして汎用有限要素解 析コードに組み込んだ数値解析手法を開発した。 2) 数値解析手法の適用性 この手法によって求めた積層ゴムのクリープ変形および長期載荷試験による鉛直 剛性の変化は試験結果と良く一致し、開発した数値解析手法の適用性を確認した。 今後の課題 積層ゴムの常温下での長期的なクリープ特性に関する試験結果は極めて少ないた め、試験データを蓄積していくとともに、数値解析手法の精度向上を図る。 * 一次形状係数S1はおおよそゴムの直径と厚さの比であらわされる定数で、ゴム層が厚いほど小さくなる。