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明治宮殿の内部装飾−常御殿の襖・張付画を中心に− 恵美 千鶴子

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明治宮殿の内部装飾−常御殿の襖・張付画を中心に− 恵美 千鶴子
5 月 28 日(土)
9:20∼10:00(第 2 分科会)
明治宮殿の内部装飾−常御殿の襖・張付画を中心に−
恵美 千鶴子
明治宮殿は、1888(明治 21)年に完成し「宮城」と称して使用されていた。1945(昭和 20)年
に焼失する際、奥宮殿の杉戸だけ運び出されて、宮内庁と東京国立博物館で保存されている。明治
宮殿の内部装飾については、
現存する杉戸絵に関して関千代氏による研究がある。
杉戸絵以外では、
山崎鯛介氏が明治宮殿に関する建築史的研究の中で内部装飾に触れている。本発表では、これまで
に研究されなかった天皇・皇后常御殿の襖画と長押上の張付画(以下、襖・張付画とする)の新し
い様式に注目したい。この襖・張付画には、京都御所に見られる具象的絵画ではなく模様的な絵画
が採用された。このような襖画は、武庫離宮(1914 年)や宮家の邸宅で継承されていくことになる。
現存しない襖・張付画の図像は、宮内庁書陵部に残る造営当時に制作された縮図(
『皇居御造営
内部諸装飾明細図』
)で確認できる。宮内庁書陵部には、ほかにも『皇居御造営誌』や『皇居造営録』
等の膨大な資料が残されており、これらから、常御殿襖・張付画画題の決定過程を明らかにする。
襖・張付画は、京都御所のような具象的絵画の計画もあったが、変更となった。その要因の一つと
して、赤坂仮皇居の御座所(1879 年)が先例として参照されていた可能性を指摘したい。御座所の
襖・張付画は金砂子蒔で雲が表現されており、明治宮殿常御殿の原型と推測できる。明治宮殿常御
殿には暖炉や釣ランプ等の設置が計画されており、京都御所とは違った新しい空間が創り出されよ
うとしていた。
赤坂仮皇居御座所をふまえて明治宮殿常御殿の襖・張付画は計画されたと推測され、
それは、当時農商務権大書記官であった山高信離に任されたと考えられる。
明治宮殿内部装飾の制作について、従来の研究において山高の関与が指摘されているものの、具
体的な状況は明らかにされていない。そこで発表者は、先に述べた宮内庁書陵部の資料等から、山
高の仕事の詳細を考察する。1898 年から行われた二条離宮(現二条城)の修繕では、二の丸入側の
長押上・天井張付画に新たな図案が採用されたが、それは山高の考案によるものであった。二条離
宮張付画は明治宮殿内部装飾と共通性が高く、正倉院の宝物や平家納経等の図像や意匠が数多く引
用されている。明治宮殿造営以前から山高はこれらの図像を見ることのできる位置にいた。また山
高が編纂した『工芸百図』は、明治宮殿内部装飾の制作時に資料として購入されている。山高は龍
池会にも関係し、欧米への輸出を意識した工芸作品の制作のための『温知図録』にも関わっていた。
これらの業績を前提に、明治宮殿内部装飾や二条離宮張付画の分析を行い、明治宮殿内部装飾の制
作過程における山高の関与の実態を解明し、明治宮殿常御殿襖・張付画の新しい様式の歴史的位置
付けを試みる。
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