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次の事案を読み、下の問に答えなさい。 【事案】 1 Xは、20*0 年に多国籍
2014 年度入学前指導(未修者コース・プログラム)事前課題 憲法 次の事案を読み、下の問に答えなさい。 【事案】 1 Xは、20*0 年に多国籍企業による世界の民衆の搾取に反対する武装闘争組織Aを結成し、仲 間とともに海外進出企業等に対する爆破などのテロ行為の計画・実行にあたってきた。武装闘争 組織Aは、国際テロリスト団体とも連携し、海外における数々のテロ事件にも関与し、拘束され たメンバーの釈放を求めるためのハイジャック事件なども引き起こしてきた。 2 Xは、20*1 年 8 月 30 日、M重工本社ビルにプラスチック爆弾を仕掛け、通行人等8名を死 亡させ、少なくとも百数十名に重軽傷を与えた事件の被疑者として、20*2 年 5 月 19 日、警視庁 三田警察署に逮捕された。 3 Xは、前記M重工本社ビル爆破事件について爆発物取締罰則違反等の罪名で起訴され、一、 二審で死刑判決を受け上告したが、20*7 年 3 月 24 日、上告棄却の判決を受け、右判決は同年 4 月 21 日に確定した。死刑判決確定後、Xは東京拘置所(以下、本件拘置所)に収容されている。 4 Xは、第一審判決において、 「再三出廷を拒否し、訴訟指揮に従わず何回も退廷させられ、 監置の制裁を受けるなどの法廷闘争を続け、改悛の情のないことを裏書している」と指摘されて いる。実際、Xは、 「矯正施設に対する組織的・大衆的闘争を展開しこれを解体する」ことを究 極の目的として組織された「刑事施設収容者組合」や「刑事施設の処遇改善を闘う会」の構成員 となって規約作りを行うなど積極的にその運営に参画し、施設の処遇の改善を求めるとして各種 の不服申立てを多数行ったばかりでなく、他の被収容者と呼応して大声を発したり、ハンガース トライキを行うなどして、再三懲罰を科されていた。 5 Xの支援者らも、Xの前記M重工本社ビル爆破事件の判決確定の見通しがたってからは、 「死 刑攻撃阻止」や「判決粉砕」等のスローガンを掲げ、ビラや信書によって死刑執行阻止に向けて 共に闘う旨の意思を原告に伝えたり、本件拘置所に対する抗議行動等をたびたび行っていた。ま た、Xの死刑が確定してからは、 「死刑制度撤廃」 、 「死刑執行阻止」といったことをスローガン にマスコミヘの投書、国会議員や関係機関への陳情を行ったり、パンフレットに同様の趣旨のス ローガンを記載するなどしていた。 6 Xは、20*7 年 11 月当時、本件拘置所内において、日刊紙B新聞(以下「B新聞」という。 ) を自弁で講読していた。同年 11 月 27 日から 30 日にかけて、B新聞に、アメリカ合衆国の収容 施設における囚人の暴動について、当該暴動が収拾のつかないまま拡大している時点において、 暴動の具体的な状況を記述した記事(以下、 「暴動記事」という)や、武装闘争組織Aの幹部の 一人で、海外におけるハイジャック事件に関与した乙川一郎が逮捕されたこと、その逮捕に関す る一連の経緯、武装闘争組織AがXらいわゆる連続企業爆破事件関係者の身柄の奪還を画策して いるとの情報があるとの記事(以下、 「乙川関連記事」という)が掲載された。 7 そこで、本件拘置所長Yは、右暴動記事について、右記事が刑事施設内での具体的な暴動の 方法等を記述したものである上、当該暴動が収拾のつかないまま拡大している時点での報道であ ったことから、右記事をXにそのまま閲読させた場合は、右暴動記事に触発されて、暴動等を契 機とする逃走への期待感を抱かせる等極度の精神的不安定状態を招来し、その心情を害してXの 拘禁目的を達成する上で障害を生ずるおそれが認められるだけでなく、記事の内容と類似の行為 あるいは逃走を企てる等して拘禁目的に障害を与え、かつ右障害による施設の規律及び秩序の維 持上放置しがたい程度の障害を生ずるおそれがあるとして、右暴動記事部分全部を抹消し、乙川 1 2014 年度入学前指導(未修者コース・プログラム)事前課題 憲法 関連記事についても、これをそのままXに閲読させた場合には、右暴動に関する記事を閲読させ た場合と同様、Xの拘禁目的を害するおそれが認められるとともに、施設の規律及び秩序の維持 上放置しがたい程度の障害を生ずるおそれも認められるとして、同様に全部抹消したうえでXに 交付した(以下、 「本件抹消措置」という) 。 8 Xは、自弁で購読する新聞の記事について刑事施設の長に記事の抹消を認める「刑事収容施 設及び被収容者等の処遇に関する法律」第 70 条及び「被収容者の書籍等の閲覧に関する法務大 臣訓令」第 4 条、そして本件抹消措置が憲法第 21 条に違反したものであると主張し、当該違憲 な措置により精神的損害を被ったとして国家賠償請求訴訟を提起した。 問 Xは、本件においてどのように憲法第 21 条違反の主張を行うべきか、それに対するY側の反 論を想定しつつ、具体的に論じなさい。 ※ 以下の点に留意して、答案(完全なものでなくてもよい。 )を準備すること ① 参考となる最高裁判例はなにか ② どのような権利の侵害を主張すべきか ③ 権利侵害をもたらしているのは、法律か施設の長の処分か ④ 記事の抹消の理由はなにか ⑤ 記事の抹消の行き過ぎの点があるとすればどのような点か ⑥ Y側の反論にはどのようなものがありうるか ⑦ ⑥の反論についてどのように考えるべきか 資料 刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律 第 70 条 刑事施設の長は、被収容者が自弁の書籍等を閲覧することにより次の各号のいずれか に該当する場合には、その閲覧を禁止することができる。 一 刑事施設の規律及び秩序を害する結果を生ずるおそれがあるとき。 二 被収容者が受刑者である場合において、その矯正処遇の適切な実施に支障を生ずるおそれが あるとき。 三 被収容者が未決拘禁者である場合において、罪証の隠滅の結果を生ずるおそれがあるとき。 2 (略) 2