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新しい南海トラフ巨大地震・津波の想定にみる国難

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新しい南海トラフ巨大地震・津波の想定にみる国難
比較防災学ワークショップ No.13,2013.1
新しい南海トラフ巨大地震・津波の想定にみる国難
鈴木 進吾(京都大学防災研究所巨大災害研究センター 助教)
国難チームから発表させていただきます。まず、国難チームでやっていることが二つあ
ります(図表1)。一つはグループでやっている研究、もう一つは個人でやっているテーマ
です。今日はその二つについて、今、取りあえずやり始めていることをご紹介させていた
だきます。
グループの研究では、社会機能に発生する被害・影響・状況を評価するグループに入っ
て、研究を行っています。地震動・津波の想定が新しく出ましたが、それによって市町村・
都道府県、あるいは被災地がどういう様相になるのか。災害対応機関がどのくらい外力に
曝露されているのか。それから、社会機能として重要な流通(生産~輸送~小売)の外力
への曝露、それから流通シミュレーションなどを行っています。
もう一つは、個人に与えられているテーマで、巨大津波が発生する最悪の被災シナリオ
の導出と減災対策の提案です。先日、巨大な津波の想定が出ましたが、本当にそれで十分
なのかというところから、
さまざまな津波波源を考慮して津波の危険度を評価しています。
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1.社会機能被害・影響・状況の評価
社会機能の被害・影響・状況の評価は(図表2)、永松先生を中心に、中林先生、浦川先
生、それから流通経済研究所の協力をいただいて進めています。巨大災害時の流通がどの
ようになるかということで、
今年は東日本大震災での流通に関する調査を行ってきました。
国難となる首都直下地震、東海・東南海・南海地震などの巨大地震災害発生時の最悪シナ
リオを構築していくために、震災の実例からどういうことが分かるか。生活必需品などの
流通の復旧を阻害するボトルネックが特定できるかどうか。それから、巨大地震災害発生
時に流通で発生すると思われる課題を議論してきました。
そこで挙げられた課題が 7 点です(図表3)。一つは在庫不足で、今はかなり効率化を図
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って、在庫が尐なく抑えられています。特に店頭の在庫は売り場にあるものだけで、一部
の高回転商品のみを店舗に持っておく。実際に、店舗で保管する場所がかなり尐ないこと
から、店頭の在庫は非常に尐なくなっています。そのほかにも、流通経路にある在庫も、
何日も在庫から供給できる状況ではなく、かなり尐ない状況です。さらに、スーパーマー
ケットなどにヒアリングに行くと、行政に支援物資を提供しなければならず、店舗への供
給が減ってしまったということがありました。
さらに、高度な物流システムによる問題も挙げられました。電子的に受発注を行う EDI
が停電や通信断により停止する。マテリアルハンドリング機器が停止する。建物自体は影
響を受けていなくても、かなり高密度に倉庫を作っていて、尐しでも積荷がずれると、積
み荷を取り出す機械が動かなくなってしまう。そうなると、まずは、揺れによって積み荷
がずれたものを自社内で直して、その後に専門業者が修理に来て、使えるようにしていく
というようなことが必要であったということも分かってきました。さらに、小売りセンタ
ーでは専用の特別なシステムがあり、個別に運用しているサーバが外部からリカバリーで
きず、復旧に非常に時間を要したこともあったそうです。
調達先の絞り込みという問題もありました。一つの物を作る上で、材料が必要になりま
す。いろいろなものをいろいろな工場から取ってきて、製品を作って売るということにな
るのですが、そのうちの一つの資材メーカーが被災地にあり、そこからの部品が供給され
ないためにその製品が生産できなくなった。原材料表示シールを書き替えないとこの製品
の供給ができないという事態になった。さらに、燃料車両がなくて動けないという問題も
ありました。地域の卸店までは到達できたが、そこから先の小売店舗まで配送する燃料が
不足していたり、車両が不足していたということがあったそうです。さらに、高速道路の
閉鎖で、
緊急用車両の許可が下りず、
店舗への配送を妨げたという問題があったそうです。
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私はこのチームに入り、問題を定量化していくことを考えています(図表4)。流通は、
多種のシステムからなる複雑なものです。その中のボトルネックがどこにあるか。次に巨
大災害が起きたときにどこがボトルネックになるかを知りたい。原材料工場があって、仕
入れ先の選択と集中がある。製品工場は小ロット生産、尐量在庫。それから物流センター
に物が行く。ここも尐量在庫化で、自動倉庫・高速ソーターなど、さまざまな高度な機械
が入っており、それに専用のセンターシステムが入っている。さらに、電子的発注、短期
間納品、欠品ゼロという、非常に高度な物流がある。そこに大きな地震が来たときに、い
ろいろなところで問題が生じていく。こういった中で、どのような問題が次の南海トラフ
の巨大地震で顕在化するかを、定量化して考えていくべきではないかと思っています。
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このために、GIS データを集めて分析しています(図表5)。流通に関するさまざまなデ
ータを災害想定データと重ね合わせることによって、震度が大きい地域、津波の大きい地
域にはどのようなものが集積しているのか。流通のどこがボトルネックになるのか。さら
に逆転の発想をすると、重要なものが集積している地域、ボトルネックになるものを選択
的に破壊するような断層、地震があるのか。そういう可能性がどれだけあるのかという、
逆転の想定ができていくのだろうと考えています。
図表6は、首都直下地震発生時の流通関係事業所の建物被害を簡単に計算してみたもので
す。飲食料品の小売や医薬品の小売、スーパー、コンビニエンスストア、ドラッグストア、
飲料品卸売、それから製造業、倉庫業と、流通に関係するいろいろなものが、それぞれど
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れだけ震度の大きい地域にあるか、被害を受けるかを計算しています。
小売業ではこのような分布になっています
(図表7)。全半壊率としては首都圏平均 12.7%、
東京都で 18.7%です。同様に、医薬品・化粧品小売業(図表8)、食品スーパー(図表9)
、
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コンビニエンスストア(図表10)
、ドラッグストア(図表11)、飲食料品卸売業(図表12)、食
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料品製造業(図表13)
、倉庫業(図表14)と、いろいろなマーケティング用のデータを集め
て、それに対してどのくらいの被害が発生していくのか、どういうところに流通業が存在
しているのかというデータを作り始めています。
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もう一つ、国難となる南海トラフの巨大地震が、検討会から出されています(図表15)。
基本ケース、東側ケース、西側ケース、陸側ケース、経験的手法の五つがケースとして挙
げられていて、その重ね合わせによって、その地域で最大どのくらいの震度になるのかが
呈示されています。
この想定をもう尐しよく分析しようということで、いろいろなことをやっています。図
表16は震度曝露量で、それぞれの震度階にさらされているものの量を計算しているもので
す。どのケースにおいても、全国市町村のうち 1000 を超える市町村が 5 弱以上になる。最
悪の震度 7 という市町村も最低で 70、最大で 128 という非常に膨大な数になります。東日
本大震災でも震度 7 は一つで、震度 6 強以上が 38 という量でしたので、これがものすごい
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量であることが分かります。重ね合わせた最大震度、その市町村で最大どこまでいくかと
いうものに基づいて計算するとこのようになります。逆に、その市町村で最低どれだけの
振動が来るかも計算してみると、
最低でも震度 7 という市町村が 18 市町村あることが分か
ってきました。
さらに災害対応機関についてさまざまなデータを取ってきて、それぞれの震度にどれだ
けさらされているかを表示しています(図表17)。赤が 5 弱、緑が 5 強、紫が 6 弱、水色が
6 強、オレンジが 7 を示しています。消防本部などは 6 弱以上が結構多くなっています。
福島県以南の消防本部のうち、25%程度が震度 6 弱以上にさらされます。
具体的に言うと、
静岡県庁、静岡・三重・和歌山・徳島・高知の市役所・地方整備局・農政局・法務局・国
税局・労働局・海上保安本部、静岡県警本部が震度 7 にかかってくるような施設です。
さらに、物流の方に戻って、出荷額ベースで、それぞれの産業がどのような震度にさら
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されるかという割合を、同じように福島以南を全体として表示しています(図表18)。特に、
6 弱以上を見ると、輸送用機械器具や木材・木製品、家具・装飾品、繊維工業というとこ
ろが高い震度にさらされていることが分かっています。ただ、これはベースの統計がかな
り古く、今はもっと変わっていると思います。
さらに、重要社会基盤施設、特に物流に関係するところとして、運ぶ道となる高速道路、
鉄道、駅、港湾、空港、それから運ぶための燃料、集積するための学校などをピックアッ
プしています(図表19)
。このように、震度 6 弱以上をとってみても、全国の 20%は震度が
大きい地域に存在しています。さらに、それだけではなくて土砂災害危険箇所も、これだ
けの膨大な数がさらされている。具体的に、震度 7 になるのが東名高速道路、近畿道、四
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国横断道、四国の高速道路、東海道新幹線、東海道線、土讃線、牟岐線、紀勢線というよ
うなところが入ってきます。
さらに、物が届いたとして、小売店舗に被害が発生するとどのくらいになるか。やはり
これも、どこも同じような程度に分布していることが分かります(図表20)
。20%程度が震
度 6 弱以上になるため、これらの事業所が緊急時に使えなくなる可能性も考えておくとい
うように、さまざまなデータを震度に重ね合わせて見ています。
さらに津波の方では、いろいろなところに高いすべり量を設定して 11 パターン計算され
ています(図表21)
。これも同様に、曝露量を出しています(図表22)。特にものすごい津波
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がやってくる、最大となるようなケースが最も集中しているのが、ケース 1 です。ケース
1 が起きると、124 市町村には最大の津波がやってきます。東日本大震災では、津波高が
10m を超える津波は 32 市町村でしたが、南海トラフの巨大地震の想定では、それより 10
~20 程度多くなとされていますし、20m を超える市町村も 18 となっています。
さらに、被害想定が出ています(図表23)。これと阪神・淡路大震災、東日本大震災を比
較しています。兵庫県、宮城・岩手県レベルの全壊 10 万棟というところが各ケースで 4~
8、最大で 8 個同時に出てきます。さらに、岩手県同様の津波死者 5000 人のケースがこの
ように出てきています。特に大分など、今まで出てきていなかったようなところが結構入
っています。津波死者 1 万人は宮城県レベルですが、最大で五つ出てくるというケースも
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あります。
同様に、それぞれの全ケース中の最大浸水深に対して、いろいろなものがどのくらい集
中しているかも計算しました(図表24・25・26)
。
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さらに、人口がどれだけ変わったかを表示しています(図表27)。ジオポータルに蓄積し
たデータから簡単に作成できるのですが、2003 年には震度 7 が 35 万人、震度 6 強が 300
万人、震度 6 弱 800 万人だったものが、基本ケースではそれが倍になります。陸側ケース
では 4 倍近くになる想定です。基本ケースと東側ケースは大体同じですが、東側ケースの
方が、若干、震度 7、6 強の人口が多くなります。ただし、震度 6 弱の人口は尐なくなりま
す。この中でも一番マイルドなのは西側ケースで、震度 6 弱は結構出てきますが、震度 7
は比較的尐なくなります。東日本大震災では、総計で 6 弱以上が 720 万人、以前計算した
東京湾北部は 6 弱以上で 2500 万人でしたので、東京湾北部とほぼ同じなのが基本ケースで
す。東側、西側になると、若干それより減ります。陸側は 1.5 倍程度になります。
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さらにこのような、いろいろなデータをそろえると、いろいろなことができるようにな
ります。こちらは南海トラフの巨大地震のざっくりとした流通シミュレーションです(図
表28)
。震度分布から、各地域の断水日数、断水人口を計算して、断水人口がどれだけ飲料
水を必要とするかを計算します。さらに、それをミネラルウォーターでどれくらいまかな
うか。ミネラルウォーターの供給量、需要量を計算して、ミネラルウォーターがどのよう
に供給されていくか、足りなくなるかというシミュレーションも、いろいろなデータを集
めることによってできるようになってきます。
図表29は、南海トラフの巨大地震による断水人口の推移です。かなり漠然としています
が、
基本的には直下型地震のこれまでのデータを当てはめて、
断水人口を想定しています。
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これまでの直下型地震で平均的に回復したもの、それから遅かったものを適用すると、こ
れくらいの断水人口の推移になります。
ミネラルウォーターで飲料水を確保することになるとどうなるかも計算しています(図
表30・31)
。一番下を通っているのが毎日のミネラルウォーターの生産量です。その上の水色
の線が、水道が平均的な回復を示した場合の需要量です。緑と青と赤の線が、全国のミネ
ラルウォーターの在庫量が発災後どのように変化していくかです。通常どおり生産した場
合、3 日目から生産倍増した場合、生産できなかった場合を計算していますが、ほぼ 7~10
日程度で在庫量がゼロになるという計算ができます。ただ、実際には交通ができるか、そ
れほどミネラルウォーターが必要とされるかという仮定も入ってきますので、もう尐し緩
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やかな減尐にはなると思いますが、全部うまく機能した場合、このようになります。
以上が、グループでやっている研究です。
2.巨大津波が発生する最悪の被災シナリオの導出と減災
個人のテーマでは、津波の想定をどうするかを検討しています(図表32)。やはり、想定
を超えると被害が拡大する。ただし、ものすごく高い津波を想定されると、それも困る。
ではどういう津波を想定したらいいかを考えました。
まず、今回の南海トラフの新しい想定に含まれていますが、トラフ軸付近という一番深
い、1000 年に 1 回程度動くようなところで、そこだけで地震が発生して、津波が発生した
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場合にどうなるかを計算しました(図表33)。津波は波ですので、重ね合わせたり、分離す
ることができるので、取りあえずここだけで計算したらどうなるか。大きくなったのは、
太平洋側の地域だけです。いくら大きくすべったといっても、影響があるのは太平洋側の
地域だけです(図表34)
。暖色系で示しているところが、大体高い津波がやってくるところ
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です。なぜかというのも検討しています(図表35)。大阪などの内海では、比較的長周期の
波しか来ない。一方で、和歌山や高知などは、短周期の波がかなり入ってくる。トラフ軸
付近で発生する津波は、短周期の波が大部分になる。和歌山や高知などはその短周期の波
の影響を大きく受けるが、それが紀淡海峡などでフィルターされ、大阪までは入ってこな
いということが分かっています。では、もっと大阪で大きくするためにはどうするかとい
うことで、マグニチュードを上げて計算してみたり(図表36)、さらにはいろいろな制限を
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外して見ています。断層はこの七つのパラメーターで既定されるのですが(図表37)、それ
らをいろいろとランダムに作って、何十万通りの計算をすると、大阪ではこのくらいの高
さの津波がこのくらいの確率でやってくるというようなことが計算されます(図表38)
。
それから、既往の津波の想定を超える確率がそれぞれどのくらいあるかも検討できます
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(図表39)
。さらに、大阪に大津波をもたらすような波源はどういうものか(図表40)。例え
ば、このくらいの長さの津波は大阪に厳しいものがある。それから向き、すべり量がどう
だったら、あるいはどこで発生したら大阪に被害が出るということもやっています。
以上で発表を終わらせていただきます。ご清聴ありがとうございました。
質疑応答
(質問者) 病院や警察など、守ってくれる部分という所のデータの中で、自衛隊のデー
タはどこに折り込まれているのでしょうか。自衛隊は、自己完結型で、守りの組織の最初
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だと思うので、教えていただきたいです。
(鈴木) すみません、今回の分析にはまだ入れられていません。今後、自衛隊の位置等
も地図に落とし、同じようなことをしたいと思います。
(林) 今のご質問に対して、丁寧に答えてはいますが、これは結局、本来動かなければ
いけないものがどれくらい危ないかを見せている表ですよね。そういう意味で言うと、自
衛隊も動けなくなるかもしれないということが、答えとしては出てくるとご理解をいただ
いた方がいいのではないかと思います。
一生懸命やってくれている趣旨が、そういう意味だと思っていただいたらと思います。
何でも重ねられますので、いかようにでも、目的に応じて見ていただいて。今までは、内
閣府なりが出してくる揺れの分布しかなくて、それと、自分たちが持っている施設がどう
影響を受けるのかという、いわゆるインパクト分析がなかなかできませんでしたが、ここ
では公共性の高いものへのインパクトを見ているわけで、さらに、企業体であれば自分の
ところの本社、支社、営業所、工場などのインパクトも見られるし、高速道路ならどの辺
が危ないのかも見てもらえます。危なさの図だとご理解いただけたらと思います。
(河田) そういう意味では、海上自衛隊の護衛艦や保安庁の巡視船などが座礁するでは
ないですか。津波は上がるだけではなく、同じぐらい下がるので、救援に向かう船がやら
れます。それを行政の方に出してやらないと、彼らは助けに行くことばかり考えていて、
自分たちがやられることを考えていないのです。
やられないのは飛行場ぐらいですよね。飛行場も、外側は、高知などは全然駄目ですが、
伊丹などは残ります。でも、海上基地は随分被害を受けます。今、神戸港や大阪港の被害
は出ていますが、呉などの巡視船や護衛艦がいるところもやられてしまうのです。それは
液状化で岸壁がやられるだけではなくて、船そのものがやられる危険性があるから、それ
はここで計算しないと、多分、彼らはできないと思うのです。付属の情報を出すことは、
私たちのプロジェクトの大きな社会的サービスだと思いますので、よろしくお願いします。
(鈴木) ありがとうございます。そうですね。やはり自分のところがどのような外力に
さらされているかということと、全体を見ることは大事だと思います。自分のところは大
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丈夫だと思っていたけれども、全体を見ると結構ライフラインが壊れたり、サプライチェ
ーンが壊れたりするのではないか。それを全体で共有していかなければ、震災が発生した
ときに、その場で考えなければいけないという想定外が出てくるのではないかということ
で、いろいろなデータを集めて共有できるものを作っています。
(質問者) 関東大震災のときの海軍省、軍令部、陸軍参謀本部、帝国陸軍の資料がある
のですが、例えば確か 4 万人ぐらいを、関東大震災の被災地から外へ、海軍の艦艇で逃が
しているというデータがあります。次の巨大災害のときに、防衛省あるいは統幕はどう動
けるのか動けないのか。今回、東松島基地という航空自衛隊の基地が全部流されたのは、
非常にけしからんことだと思いました。ホバリングすればみんな助かったのです。ところ
が、前の政務官や総理が必死でかばうのです。これではいけませんから、今のご指摘は非
常に大事で、国家権力そのものである防衛省、自衛隊が、どう動けるのか動けないのかは、
しっかりとご研究、ご提言いただきたいと思います。
(鈴木) 逆転の発想で、そういった重要機関がやられるような地震、津波がどのように
起きるか。今回は、政府は巨大地震津波を設定していますが、そこまでしなくても、例え
ば基地を襲うような津波があれば、大きな影響が出るというシナリオも考えられると思う
ので、そういったことも考えていきたいと思います。
(越山) 時間になりましたので、これで終わりたいと思います。鈴木先生、ありがとう
ございました。
午前は 3 題の発表がありました。
今から昼食の休憩に入りたいと思います。
午後は 1 時から開始します。よろしくお願いします。
――――― 休憩 ―――――
(越山:司会) それでは、午後の部を始めます。午後も 3 題の研究の発表をさせていた
だき、その後、パネルディスカッションに入ります。発表時間は 30 分で、各発表の後に質
疑応答の時間を設けますので、活発な意見交換をさせていただきたいと思います。
それでは、兵庫県立大の木村先生よろしくお願いします。
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